【文献】
J. Mol. Biol.,2009年 5月,Vol.388,pp.541-558
【文献】
Protein Engineering, Design & Selection,2004年,Vol.17, No.12,pp.847-860
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントがヒト化もしくは表面再処理抗体またはそのエピトープ結合フラグメントである、請求項1に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
前記重鎖が配列番号12から成るアミノ酸配列を含み、および前記軽鎖が配列番号14から成るアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
前記重鎖が配列番号18のアミノ酸配列に存し、および前記軽鎖が配列番号16のアミノ酸配列に存する、請求項1に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
請求項1から6のいずれかに記載の抗体もしくはそのエピトープ結合フラグメント、または請求項7から12のいずれかに記載のコンジュゲート、ならびに医薬的に許容される担体または賦形剤を含有する、医薬組成物。
医薬品としての使用のための、請求項1から6のいずれかに記載の抗体もしくはそのエピトープ結合フラグメント、または請求項7から12のいずれかに記載のコンジュゲート。
癌を処置する医薬品を作製するための、請求項1から6のいずれかに記載の抗体もしくはそのエピトープ結合フラグメント、または請求項7から12のいずれかに記載のコンジュゲートの使用。
癌が膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、子宮頸、甲状腺および皮膚の癌腫を含む;扁平上皮細胞癌腫を含む癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫を含む、リンパ系の造血器腫瘍;急性および慢性骨髄性白血病ならびに前骨髄球性白血病を含む、骨髄系の造血器腫瘍;線維肉腫および横紋筋肉腫を含む、間葉起源の腫瘍;黒色腫、精上皮腫、奇形癌(tetratocarcinoma)、神経芽細胞腫および神経膠腫を含む他の腫瘍;星状細胞腫、神経芽細胞腫,神経膠腫および神経鞘腫を含む、中枢および末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫(rhabdomyoscarama)および骨肉腫を含む、間葉起源の腫瘍;ならびに黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫(keratoactanthoma)、精上皮腫、甲状腺濾胞癌および奇形癌を含む他の腫瘍の間から選ばれる、請求項16に記載の使用。
前記モノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントのパラトープが軽鎖内に:ループ1のArg35、L2のTyr54、Arg58およびAsp60を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
前記モノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントのパラトープが重鎖内に:ループH1のThr30、Ala31、Tyr32およびTyr33、H2のAsn52、Tyr54、Asn55およびPhe57ならびにH3のGlu99、Phe100、Tyr101、Gly102、Tyr103およびTyr105を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
前記モノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントのパラトープが位置:Thr H28に変異を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
前記モノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが軽鎖上の以下の幾つかの位置:35、26から31、34から37、55、56、57、59および94から102の1つに変異を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
前記モノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが重鎖上の以下の幾つかの位置:28、54および57の1つに変異を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
EphA2受容体の細胞外ドメインからのLBDの残基Gly49、Lys50、Gly51、Asp53、Cys70、Asn71、Val72、Met73、Ser74、Gly75、Gln77、Phe108、Pro109、Gly110、Gly111、Ser113およびSer114を備えるヒトEphA2受容体のエピトープ、またはその保存的置換形に特異的に結合する、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書で別途定義しない限り、本発明に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって普通に理解される意味を有するものとする。さらに、状況によって別途要求されない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載する細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、細菌学、遺伝子学ならびにタンパク質および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションに関連して使用される用語、ならびにこれらの技法は、当分野で周知であり、普通に使用されるものである。本発明の実施は、別途指摘しない限り、当業技術の範囲内である分子生物学(組換え技法を含む。)、細菌学、細胞生物学、生化学および免疫学の在来の技法を用いる。このような技法は、文献、例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook et al,1989);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984);Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987);Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et ah,eds.,1987,and periodic updates);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al,ed.,1994);A Practical Guide to Molecular Cloning(Perbal Bernard V.,1988);Phage Display:A Laboratory Manual(Barbas et al.,2001)で十分に説明されている。
【0034】
酵素反応および精製技法は、当分野で普通に実現されるようにまたは本明細書に記載するように、製造者の仕様書に従って行われる。本明細書に記載する分析化学、合成有機化学、ならびに医薬品および医薬化学に関連して使用される用語、ならびにこれの実験手順および技法は、当分野で周知であり、普通に使用されるものである。標準技法は、化学合成、化学分析、医薬調製物、製剤および送達、ならびに患者の処置に使用される。
【0035】
EphA2受容体を特異的に結合して、前記受容体を拮抗することができる新たな抗体およびこれのフラグメントは、本明細書で提供される。特に、本発明の新規抗体またはフラグメントは、細胞表面上のEph受容体を特異的に結合するが、いずれのアゴニスト活性も優先的に欠いている。他方、本発明の新規抗体またはフラグメントは受容体の細胞機能を、受容体のリガンドの存在下でも阻害することができる。
【0036】
本明細書で使用する場合、「EphA2受容体」という用語は、Eph受容体ファミリに属して(Pasquale,E.B.et al.,2005,Nature Reviews Mol.Cell Biol.,6,462−475にて総説されている。)、例えばGenbankアクセション番号NM_004431(ヒトEphA2)、NM_010139(マウスEphA2)、またはNXM_345596(ラットEphA2)のようなアミノ酸配列を備えるチロシンキナーゼを指す。ヒトEphA2は、好ましいEphA2受容体である。「EphA2リガンド」という用語は本明細書で使用する場合、EphA2受容体に結合して、場合によりこれを活性化する(例えばEphA2受容体の自己リン酸化を刺激する)タンパク質を指す。本明細書で好ましいEphA2リガンドは、「エフリンA1」であり、これはEphA2受容体に結合して、例えばGenbankアクセションNM_004428(ヒトエフリンA1)のようなアミノ酸配列を備える。
【0037】
「アンタゴニスト」という用語は本明細書で使用する場合、標的分子の1つ以上の生物活性を阻害することができる分子、例えばEphA2受容体を指す。アンタゴニストは、受容体のリガンドへの結合およびリガンドの受容体への結合を阻害することによって、リガンドによって誘発することができるEphA2リン酸化を低下させることによって、ならびに/またはこのようなリガンドの結合により誘発される細胞内経路を阻害することによって、ならびに/またはEphA受容体のホモ/ヘテロ−オリゴマー化を阻害することによって作用し得る。アンタゴニストは、受容体−リガンド相互作用を完全に遮断し得るか、またはこのような相互作用を実質的に低下し得る。アンタゴニストによるこのような介入点はすべて、本発明の目的のために同等と見なされるものとする。このためEphA2受容体、EphA2リガンドまたはEphA2受容体およびEphA2リガンドの複合体に結合するアンタゴニスト(例えば中和抗体);EphA2受容体とEphA2リガンドとの間の相互作用を拮抗するEphA2受容体またはEphA2リガンドのアミノ酸配列バリアントまたは誘導体;免疫グロブリン領域(例えばイムノアドヘシン)などの異種分子に場合により融合する溶解性EphA2受容体または溶解性EphA2リガンド;EphA2リガンドに会合したEphA2受容体を備える複合体;EphA2受容体またはEphA2リンドに結合する合成または未変性配列ペプチドは、本発明の範囲に含まれる。好ましい実施形態において、アンタゴニストは抗体である。
【0038】
「アゴニスト」という用語は本明細書で使用する場合、標的分子の生物活性の1つ以上を活性化することができるタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、抗体フラグメント、コンジュゲート、大型分子、小型分子を含むいずれの化合物も指す。EphA2アゴニストは、タンパク質のリン酸化を刺激して、これにより前記タンパク質の分解を引き起こすことによって作用する。
【0039】
このため好ましい実施形態において、本発明は、他の特徴の中でも、抗EphA2モノクローナル抗体、抗EphA2ヒト化抗体および抗EphA2抗体のフラグメントを提供する。本発明の抗体および抗体フラグメントはそれぞれEphA2受容体を特異的に認識および結合するように設計され、EphA2受容体アンタゴニストとして作用して、EphA2リガンドによって誘発されるリン酸化を阻害する。
【0040】
EphA2受容体は、細胞質尾部のリン酸化が多種多様のアダプタおよびシグナル伝達タンパク質と相互作用するリガンド結合の後に増加して、異なる下流細胞シグナル伝達経路の活性化をもたらす、受容体のファミリに属する(Kullander,K.and Klein,R.,2002,Nature Reviews Mol.Cell Biol.,3:475−486;Noren,N.K.and Pasquale,E.B.,2004,Cell signal.,16:655−666)。本明細書で使用する場合、「EphA2介在シグナル伝達」という用語は、EphA2によるリガンド結合に応答して発生するすべての細胞イベントを指す。従来技術で開示された抗体はEphA2受容体を作動させて、特にEphA2タンパク質のチロシンリン酸化を増加させるのに対して、本発明の抗体および抗体フラグメントは、このようないずれのアゴニスト特性も優先的に欠いている。特に、本発明の抗体および抗体フラグメントはEphA2リン酸化をこれらだけで刺激することはできない。WO2008/010101に記載された抗体と同様に、本発明のアンタゴニスト抗体および抗体フラグメントは、いずれのアゴニスト活性も欠いている。詳細な実施形態において、本発明のアンタゴニスト抗体および抗体フラグメントは、従来技術に記載された他の抗体とは異なり、EphA2のチロシンリン酸化を促進することができない(Dodge−Zantek et al,1999,Cell Growth & Differ.,10:629−638;WO01/12172、WO03/094859、WO2004/014292、WO2004/101764、WO2006/023403、WO2006/047637、WO2007/030642)。
【0041】
本発明は、実際のアンタゴニスト抗EphA2抗体を提供する。本発明の抗体および抗体フラグメントは、前記EphA2受容体のリガンド、例えばエフリンA1の存在下でも、EphA2受容体の細胞機能を阻害する能力を有する。一実施形態において、本発明の抗体および抗体フラグメントは、リガンドのEphA2受容体への結合を阻害することができる。好ましい実施形態において、エフリンA1のEphA2への結合は、本発明により提供される抗体およびこれのフラグメントによって防止される。注目すべきことに、別の実施形態において、本発明の抗体および抗体フラグメントは、エフリンA1の存在下でも、EphA2受容体のチロシンリン酸化を阻害することができる。
【0042】
抗体
「抗体」という用語は、最も広い意味にて本明細書で使用され、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEなどの任意のアイソタイプのモノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む。)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体および抗体フラグメントを特異的に対象とする。特異的抗原と反応性の抗体は、ファージもしくは同様のベクター中の組換え抗体のライブラリの選択などの組換え方法により、または動物を抗原もしくは抗原コード核酸によって免疫化することにより生成することができる。
【0043】
代表的な抗体は、ジスルフィド結合によって接合された2個の同一の重鎖および2個の同一の軽鎖で構成されている。各重鎖および軽鎖は、定常領域および可変領域を含有する。本明細書で使用する場合、「V
H」または「VH」は、Fv、scFv、dsFv、Fab、Fab’、またはF(ab’)2フラグメントの重鎖を含む、抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「V
L」または「VL」への言及は、Fv、scFv、dsFv、Fab、Fab’、またはF(ab’)2フラグメントの軽鎖を含む、抗体の免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。各可変領域は、主として抗原のエピトープの結合に関与する、「相補性決定領域」(「CDR」)または「高度可変領域」と呼ばれる3個のセグメントを含有する。これらのセグメントは通常、N末端から順にナンバリングされてCDR1、CDR2およびCDR3と呼ばれる。可変領域のより高度に保存された部分は、「フレームワーク領域」(「FR」)と呼ばれる。未変性重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、ベータシート構造を結合するループを形成するおよび幾つかの場合においてベータシート構造の一部を形成する3個のCDRによって結合されたベータシート配置を主にとる、4個のFR領域を備える。各鎖中のCDRは、FR領域と近接しておよび他の鎖のCDRと共にひとまとめにされて、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5
th edition,National Institute of Health,Bethesda,MD,1991を参照)。
【0044】
定常ドメインは抗体の抗原への結合に直接関係していないが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)における抗体の関与、Fcγ受容体への結合による食作用、新生児Fc受容体(FcRn)による半減期クリアランス速度および補体カスケードのC1q成分による補体依存性細胞傷害(CDC)などの、各種のエフェクタ機能を示す。
【0045】
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、これの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(K)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの明らかに異なる種類の一方に割当てることができる。
【0046】
抗体の重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)を異なるクラスに割当てることができる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらの幾つかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに細分され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに相当する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。軽鎖および重鎖内で、可変および定常領域は約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって接合され、重鎖は約10個以上のアミノ酸の「D」領域も含む(例えばFundamental Immunology Ch.7,Paul,W.,ed.,2
nd edition,Raven Press,N.Y.,1989を参照)。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元配置は周知であり、一般に例えばAbbas et al.(Cellular and Mol.Immunology,4
th edition,W.B.Saunders,Co.,2000)に記載されている。抗体は、抗体と1個以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有または非共有会合によって形成された、より大きい融合分子の一部であり得る。
【0047】
「ポリクローナル抗体」は、1個以上の他の非同一抗体の間で、またはこの非同一抗体の存在下で産生された抗体である。概して、ポリクローナル抗体は、非同一抗体を産生する複数の他のBリンパ球の存在下でBリンパ球から産生される。通常、ポリクローナル抗体は免疫化動物から直接得られる。
【0048】
「モノクローナル抗体」は本明細書で使用する場合、実質的に同種の抗体の集団から得られた抗体であり、即ち本集団を形成する抗体は、わずかな量で存在するかもしれない考えられる天然型変異を除いて本質的に同一である。これらの抗体は単一のエピトープに向けられていて、ゆえに高度に特異的である。
【0049】
本明細書での目的の「裸の抗体」は、細胞傷害性部分または放射性標識にコンジュゲートしていない抗体である。
【0050】
「エピトープ」は、抗体が結合する抗原上の部位である。エピトープは、隣接残基によって、または抗原タンパク質の折畳みにより接近した非隣接残基によって形成することができる。隣接アミノ酸によって形成されたエピトープは変性溶媒への曝露時に通例保持されるのに対して、非隣接アミノ酸によって形成されたエピトープは、前記曝露下では通例失われる。
【0051】
本明細書で使用する場合、「K
D」という用語は、特定の抗体/抗原相互作用の解離定数を指す。「結合親和性」は一般に、分子(例えば抗体)の単一結合部位とこれの結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有相互作用の総和の強度を指す。別途指摘しない限り、本明細書で使用する場合、「結合親和性」は、結合対(例えば抗体および抗原)のメンバ間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのこれのパートナーYに対する親和性は、一般にK
Dによって表される。親和性は、本明細書に記載するものを含む、当分野で公知の一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は一般に抗原を低速で結合して、ただちに解離する傾向があるのに対して、高親和性抗体は一般に、抗原をより高速で結合して、より長期間結合を保持する傾向がある。結合親和性を測定する多種多様の方法が当分野で公知であり、これのいずれも本発明の目的のために使用することができる。
【0052】
本発明はマウス抗EphA2抗体、本明細書ではmu2H11R35R74から開始し、この抗体は軽鎖および重鎖の両方のアミノ酸配列、CDRの同定、表面アミノ酸の同定および抗体の組換え形での発現の手段に関して十分に特徴付けされている。
【0053】
本発明のマウス抗体は、例えば抗体53.2H11の部位特異的変異誘発によって得ることができる。53.2H11抗体は、ブダペスト条約の下で6月16日に米国菌培養収集所(the American Type Culture Collection)にアクセション番号PTA−7662で寄託されたハイブリドーマによって産生され、PCT出願WO2008/010101に記載されている。このため53.2H11の軽鎖および重鎖の両方のアミノ酸配列、CDRの同定、表面アミノ酸の同定、ならびに前記軽鎖および重鎖をコードするポリヌクレオチド配列はすべて、WO2008/010101に開示されている。
【0054】
抗体mu2H11R35R74軽鎖および重鎖の、ならびにこれらのヒト化型の1次アミノ酸およびDNA配列は本明細書に開示されている。一実施形態において、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6から成る群より選択されるアミノ酸配列を有する1個以上のCDRを備えた抗体またはこれのエピトープ結合フラグメントを提供する。
【0055】
好ましい実施形態において、本発明の抗体は、少なくとも1個の重鎖および少なくとも1個の軽鎖を備え、前記重鎖は、配列番号1、2、3から成る群より選択されるアミノ酸配列を有する3個の連続CDRを備え、前記軽鎖は、配列番号4、5、6から成る群より選択されるアミノ酸配列を有する3個の連続CDRを備える。
【0056】
好ましい実施形態において、前記モノクローナル抗体またはこれのエピトープ結合フラグメントのパラトープは軽鎖内に:ループL1のArg35、L2のTyr54、Arg58およびAsp60を備える。
【0057】
好ましい実施形態において、前記モノクローナル抗体またはこれのエピトープ結合フラグメントのパラトープは重鎖内に:ループH1のThr30、Ala31、Tyr32およびTyr33、H2のAsn52、Tyr54、Asn55およびPhe57ならびにH3のGlu99、Phe100、Tyr101、Gly102、Tyr103およびTyr105を備える。
【0058】
前記抗体またはこれのエピトープ結合フラグメントは変異を:
位置:ThrH28に
軽鎖の以下の位置の幾つかのうちの1つ:35、26から31、34から37、55、56、57、59および94から102に、ならびに/または
重鎖の以下の位置の幾つかのうちの1つ:28、54および57に備える。
【0059】
別の実施形態において、本発明の抗体は、EphA2受容体の細胞外ドメインからのLBDの残基Gly49、Lys50、Gly51、Asp53、Cys70、Asn71、Val72、Met73、Ser74、Gly75、Gln77、Phe108、Pro109、Gly110、Gly111、Ser113およびSer114を備えるヒトEphA2受容体のエピトープ、またはこれの保存的置換形に特異的に結合する。
【0060】
別の実施形態において、本発明の抗体は、配列番号8から成るアミノ酸配列を有するV
Hを備える。別の好ましい実施形態において、本発明の抗体は、配列番号10から成るアミノ酸配列を有するV
Lを備える。
【0061】
ヒト化または表面再処理2H11R35R74抗体
本明細書で使用する場合、「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体を指す。「キメラ抗体」は本明細書で使用する場合、定常領域、またはこれの部分が改変、置換、または交換されているので、可変領域が異なる種の定常領域に連結されている、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属している抗体である。「キメラ抗体」は、可変領域、またはこれの部分が改変、置換、または交換されているので、定常領域が異なる種の可変領域に連結されている、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属している抗体も指す。
【0062】
ヒト化の目的は、抗体の完全な抗原結合親和性および特異性を維持しながら、ヒトへの導入のためのマウス抗体などの異種抗体の免疫原性を低下させることである。ヒト化抗体、または他の哺乳動物による非拒絶に適した抗体は、表面再処理およびCDR移植などの複数の技術を使用して産生され得る。本明細書で使用する場合、表面再処理技術は、分子モデル化、統計解析および変異誘発の組合せを使用して、抗体可変領域の非CDR表面を標的宿主の公知の抗体の表面を似せて改変する。
【0063】
抗体の表面再処理のための戦略および方法、ならびに異なる宿主内で抗体の免疫原性を低下させる他の方法は、参照によりこれの全体が本明細書に組み入れられている、米国特許5,639,641に開示されている。簡潔には、好ましい方法において、(1)抗体重鎖および軽鎖可変領域のプールの位置アライメントは、重鎖および軽鎖可変領域フレームワーク表面露出位置のセットを与えるように生成され、すべての可変領域の位置アラインメントは少なくとも約98%同一であり;(2)重鎖および軽鎖可変領域フレームワーク表面露出アミノ酸残基のセットは、げっ歯類抗体(またはこれのフラグメント)について定義され;(3)げっ歯類表面露出アミノ酸残基のセットに最も厳密に同一である重鎖および軽鎖可変領域フレームワーク表面露出アミノ酸残基のセットが同定され;(4)ステップ(2)で定義された重鎖および軽鎖可変領域フレームワーク表面露出アミノ酸残基のセットは、げっ歯類抗体の相補性決定領域の任意の残基の任意の原子の5Å以内であるこのようなアミノ酸残基を除いて、ステップ(3)で同定された重鎖および軽鎖可変領域フレームワーク表面露出アミノ酸残基によって置換され;ならびに(5)結合特異性を有するヒト化げっ歯類抗体が産生される。
【0064】
可撓性残基の同定に基づく抗体のヒト化の別の好ましい方法は、PCT出願WO2009/032661に記載されている。前記方法は以下の:(1)親mAbの相同モデルを構築して、分子力学シミュレーションを実行するステップと;(2)可撓性残基を解析して、非ヒト抗体分子の最も可撓性の残基を同定し、ならびに異質性または分解反応の原因となりそうな残基またはモチーフを同定するステップと;(3)親抗体と最も類似した認識範囲の集合を提示するヒト抗体を同定するステップと;(4)変異される可撓性残基を決定して、異質性および分解の原因となりそうな残基またはモチーフも変異されるステップと;(5)公知のT細胞またはB細胞エピトープの存在を確認するステップと;を備える。可撓性残基は、シミュレーションの期間にわたる水溶媒とタンパク質原子との相互作用を説明する暗(implicit)溶媒モデルを用いた、分子力学計算を使用して見出すことができる。
【0065】
抗体は、CDR移植(EP0239400;WO91/09967;米国特許第5,530,101号;および第5,585,089号)、ベニヤリングまたは表面再処理(EP0592106;EP0519596;Padlan E.A.,1991,Molecular Immunology 28(4/5):489−498;Studnicka G.M.et al.,1994,Protein Engineering 7(6):805−814;Roguska M.A.et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,91:969−973)および鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)を含む多種多様の他の技法を使用してヒト化することができる。
【0066】
ある実施形態において、抗体、またはこれの抗原結合フラグメント、バリアント、もしくは誘導体の可変および定常領域はどちらも完全にヒトである。完全ヒト抗体は、当分野で公知である技法を使用して作製することができる。例えば、特異的抗原に対する完全ヒト抗体は、抗原投与に応答してこのような抗体を産生するように修飾されているが、内因性遺伝子座が無効にされているトランスジェニック動物に抗原を投与することによって調製することができる。このような抗体を作製するために使用できる例示的な技法は、米国特許6,150,584;6,458,592;6,420,140に記載されている。他の技法は当分野で公知である。完全ヒト抗体は同様に、各種の提示技法、例えばファージ提示または他のウイルス提示系によって産生することができる。米国特許第4,444,887号、第4,716,111号、第5,545,806号および5,814,318;ならびに国際特許出願公開番号WO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735およびWO91/10741も参照(前記参考文献は、これらの全体が参照により組み入れられている。)。
【0067】
本発明は、EphA2受容体を認識して、アンタゴニストとして作用するヒト化抗体またはこれのフラグメントを提供する。好ましい実施形態において、ヒト化抗体またはこれのエピトープ結合フラグメントは、EphA2受容体を発現する癌細胞の成長を阻害する追加の能力を有する。さらなる実施形態において、ヒト化抗体またはこれのエピトープ結合フラグメントは、EphA2受容体を発現する転移性癌細胞の移動を阻害する追加の能力を有する。
【0068】
このようなヒト化抗体の好ましい実施形態は、ヒト化2H11R35R74抗体、またはこれのエピトープ結合フラグメントである。
【0069】
別の好ましい実施形態において、本発明のヒト抗体は、本明細書でhu2H11と呼ぶhu53.2H11(WO2008/010101)をコードするポリヌクレオチド配列の部位特異的変異誘発によって得られる。
【0070】
さらに好ましい実施形態において、抗体またはこれのフラグメントの表面露出残基が公知のヒト抗体表面により厳密に類似するように軽鎖および重鎖の両方で置換されている、2H11R35R74抗体の表面再処理またはヒト化型が提供される。本発明のヒト化2H11R35R74抗体またはこれのエピトープ結合フラグメントは、改良された特性を有する。例えばヒト化2H11R35R74抗体またはこれのエピトープ結合フラグメントは、EphA2受容体を特異的に認識する。さらに好ましくは、ヒト化2H11R35R74抗体またはこれのエピトープ結合フラグメントは、EphA2受容体発現細胞の成長を阻害する追加の能力を有する。
【0071】
2H11R35R74抗体のヒト化型は、軽鎖および重鎖可変領域の両方のこの抗体のそれぞれのアミノ酸配列、軽鎖および重鎖可変領域についての遺伝子のDNA配列、CDRの同定、この抗体の表面アミノ酸の同定、ならびに組換え形でのこの抗体の発現のための手段の開示についても本明細書で十分に特徴付けられている。しかし本発明の範囲は、これらの配列を備える抗体およびフラグメントに限定されない。代わりに、EphA2受容体に特異的に結合するすべての抗体およびフラグメントが本発明に含まれる。好ましくは、EphA2受容体に特異的に結合する抗体およびフラグメントは、受容体の生物活性を拮抗する。さらに好ましくは、このような抗体はさらに、アゴニスト活性を実質的に欠いている。このため、本発明の抗体およびエピトープ結合抗体フラグメントは、2H11R35R74抗体またはこれのヒト化誘導体とはこれの足場、CDR、ならびに/または軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が異なり得て、なお本発明の範囲に含まれる。
【0072】
2H11R35R74抗体のCDRは、EphA2受容体の細胞外ドメインと複合した2H11R35R74のFabフラグメントの結晶構造を溶解(solving)することによって決定された。EphA2の細胞外ドメインと相互作用する2H11R35R74からの残基が同定された。従って、例えば本発明の抗体の親和性成熟によって産生される改良された特性を有する抗体およびフラグメントが提供される。
【0073】
53.2H11が由来しやすいマウス軽鎖IgV
KおよびJ
K生殖細胞系遺伝子ならびに重鎖IgVhおよびJh生殖細胞系遺伝子が同定され、WO2008/010101に開示された。前記生殖細胞系配列のアクセション番号はそれぞれMMU231196およびAF303833である。このような生殖細胞系遺伝子配列は、CDRを含めて抗体における体細胞変異を同定するのに有用である。
【0074】
2H11R35R74抗体の重鎖および軽鎖可変領域の配列およびこれのCDRの配列は、以前に公知ではなく、本出願で述べられている。このような情報は、2H11R35R74抗体のヒト化型を産生するために使用することができる。hu2H11の部位特異的変異誘発によって、本発明のヒト化2H11R35R74抗体を得ることも可能である。これらのヒト化抗EphA2抗体またはこれの誘導体も、本発明のコンジュゲートの細胞結合剤として使用され得る。
【0075】
このため、一実施形態において、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6から成る群より選択されるアミノ酸配列を有する1個以上のCDRを備えたヒト化抗体またはこれのエピトープ結合フラグメントを提供する。好ましい実施形態において、本発明のヒト化抗体は、少なくとも1個の重鎖および少なくとも1個の軽鎖を備え、前記重鎖は、配列番号1、2および3によって表されるアミノ酸配列を有する3個の連続CDRを備え、前記軽鎖は、配列番号4、5および6によって表されるアミノ酸配列を有する3個の連続CDRを備える。
【0076】
一実施形態において、本発明は配列番号12から成るアミノ酸配列を有するV
Hを備えるヒト化2H11R35R74抗体またはこれのフラグメントを提供する。別の実施形態において、本発明は配列番号14から成るアミノ酸配列を有するV
Lを備えるヒト化2H11R35R74抗体またはこれのフラグメントを提供する。
【0077】
好ましい実施形態において、少なくとも1個の重鎖および少なくとも1個の軽鎖を備えるヒト化2H11R35R74抗体が提供され、前記重鎖は、配列番号1、2および3によって表されるアミノ酸配列を有する3個の連続CDRを備え、前記軽鎖は、配列番号4、5および6によって表されるアミノ酸配列を有する3個の連続CDRを備え、前記重鎖は配列番号12から成るアミノ酸配列を有し、前記軽鎖は配列番号14から成るアミノ酸配列を有する。
【0078】
ポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
本発明の抗EphA2抗体をコードする核酸が提供される。一実施形態において、核酸分子は、抗EphA2免疫グロブリンの重鎖および/または軽鎖をコードする。好ましい実施形態において、1つの核酸は抗EphA2免疫グロブリンの重鎖をコードして、別の核酸分子は抗EphA2免疫グロブリンの軽鎖をコードする。
【0079】
本発明の別の態様において、配列番号1、2、3、4、5、6、8、10、12、14、16および18の群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号:7、9、11、13、15および17から成る群より選択される。本発明は、前記ポリヌクレオチド自体に限定されないが、前記ポリヌクレオチドとの少なくとも80%の同一性を提示するすべてのポリヌクレオチドも含む。
【0080】
「ポリヌクレオチド」という用語は本明細書で言及される場合、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドのどちらかの長さが少なくとも10塩基のヌクレオチドのポリマー形、またはどちらかの種類のヌクレオチドの修飾形を意味する。該用語は、DNAの1本鎖形および2本鎖形を含む。
【0081】
「単離ポリヌクレオチド」という用語は本明細書で使用する場合、ゲノム、cDNA、もしくは合成起源のポリヌクレオチドまたはこれの一部の組合せを意味するものとし、これの起源により「単離ポリヌクレオチド」は、(1)「単離ポリヌクレオチド」が天然に見出されるポリヌクレオチドの全体もしくは一部と会合していない、(2)天然では単離ポリペプチドが連結されていないポリヌクレオチドに操作可能に連結されている、または(3)より大型の配列の一部として天然には発生しない。
【0082】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを備えるベクターを提供する。一実施形態において、ベクターは、抗EphA2免疫グロブリンの重鎖をコードするポリヌクレオチドを含有する。別の実施形態において、前記ポリヌクレオチドは、抗EphA2免疫グロブリンの軽鎖をコードする。本発明は、融合タンパク質、修飾抗体、抗体フラグメントおよびこれらのプローブをコードするポリヌクレオチド分子を備えたベクターも提供する。
【0083】
本発明の抗EphA2抗体の重鎖および/または軽鎖を発現するために、前記重鎖および/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、遺伝子が転写および翻訳配列に操作可能に連結されるように発現ベクター中に挿入される。
【0084】
「操作可能に連結された」配列は、興味のある遺伝子と隣接している発現制御配列およびトランスでまたは離れて作用して興味のある遺伝子を制御する発現制御配列の両方を含む。「発現制御配列」という用語は本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチド配列であって、これらがライゲーションされるコード配列の発現およびプロセシングを行うために必要であるポリヌクレオチド配列を指す。発現制御配列は、適切な転写開始、終結、プロモータおよびエンハンサ配列;スプライシングおよびポリアデニル化シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を向上させる配列(即ちコザックコンセンサス配列);タンパク質安定性を向上させる配列;ならびに所望の場合には、タンパク質分泌を向上させる配列を含む。このような制御配列の性質は、宿主生物によって異なる;原核生物において、このような制御配列は一般にプロモータ、リボソーム結合部位および転写終結配列を含む;真核生物において一般に、このような制御配列は、プロモータおよび転写終結配列を含む。「制御配列」という用語は、存在が発現およびプロセシングに不可欠であるあらゆる構成要素を最低限含むことが意図され、存在が好都合である追加の構成要素、例えばリーダー配列および融合パートナー配列も含むことができる。
【0085】
「ベクター」という用語は本明細書で使用する場合、核酸分子であって、これが連結されている別の核酸を輸送できる核酸分子を指すことが意図される。1種類のベクターは「プラスミド」であり、追加のDNAセグメントが中にライゲーションされ得る円形2本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、ウイルスベクターでは追加のDNAセグメントがウイルスゲノム中にライゲーションされ得る。あるベクターは、これらが導入される宿主細胞(例えば細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)において自律複製が可能である。他のベクター(例えば非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中への導入時に宿主細胞のゲノム中に組み込むことができ、これにより宿主ゲノムと共に複製される。
【0086】
あるベクターは、これらが操作可能に連結された遺伝子の発現を方向付けることができる。このようなベクターは本明細書では、「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ばれる。概して、組換えDNA技法で有用な発現ベクターはプラスミドの形である。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も普通に使用される形であるため、互換的に使用され得る。しかし本発明は、このような形の発現ベクター、例えば細菌プラスミド、YAC、コスミド、レトロウイルス、EBV由来エピソーム、ならびに本発明の抗体の重鎖および/または軽鎖の発現を確実にするために好都合であることが当業者に公知となる他のすべてのベクターを含むことが意図される。当業者は、重鎖および軽鎖をコードするポリヌクレオチドが異なるベクター中へまたは同じベクターにクローニングできることを認識する。好ましい実施形態において,前記ポリヌクレオチドは、同じベクターにクローニングされる。
【0087】
本発明のポリヌクレオチドおよびこれらの分子を備えたベクターは、好適な哺乳動物宿主細胞、または当業者に公知である他のいずれの種類の宿主細胞の形質転換にも使用することができる。「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)という用語は本明細書で使用する場合、組換え発現ベクターが導入された細胞を指すことが意図される。このような用語は特定の対象細胞だけではなく、このような細胞の子孫も指すことが意図されることが理解されるべきである。ある修飾が変異または環境上の影響のどちらかのために次の世代で発生し得るので、このような子孫は実際には、親細胞と同一であり得ないが、本明細書で使用する場合の「宿主細胞」という用語の範囲になお含まれている。
【0088】
形質転換は、ポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入するためのいずれの公知の方法によってでもよい。このような方法は当業者に周知であり、デキストラン介在形質転換、リン酸カルシウム沈殿,ポリブレン介在トランスフェクション、プロトプラスト融合、電気穿孔、ポリヌクレオチドのリポソームへのカプセル化、DNAの核中への微粒子銃注入および直接微量注入を含む。
【0089】
抗体フラグメント
本発明の抗体は、上で議論した全長抗体、ならびにエピトープ結合フラグメントの両方を含む。本明細書で使用する場合、「抗体フラグメント」は、全長抗体によって認識されたエピトープに結合する能力を保持する抗体のいずれかの部分を含み、一般に「エピトープ結合フラグメント」と呼ばれる。抗体フラグメントの例は、これらに限定されるわけではないが、Fab、Fab’およびF(ab’)
2、Fd、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fvs(dsFv)およびV
LまたはV
H領域のどちらかを備えたフラグメントを含む。単鎖抗体を含むエピトープ結合フラグメントは、単独のまたは以下の:ヒンジ領域、C
H1、C
H2およびC
H3ドメインの全体もしくは一部と組合された可変領域を備える。
【0090】
このようなフラグメントは、FabフラグメントまたはF(ab’)
2フラグメントの一方または両方を含有し得る。好ましくは、抗体フラグメントは全長抗体の6個すべてのCDRを含有するが、このような領域すべてよりも少ない、例えば3、4または5個のCDRを含有するフラグメントも機能する。さらにフラグメントは、以下の免疫グロブリンクラス:IgG、IgM、IgA、IgD、またはIgEおよびこれのサブクラスのいずれか1つのメンバであり得るか、またはメンバを組合せ得る。
【0091】
FabおよびF(ab’)
2フラグメントは、パパイン(Fabフラグメント)またはペプシン(F(ab’)
2フラグメント)などの酵素を使用してタンパク質分解的切断によって産生され得る。
【0092】
「単鎖FVs」(「scFvs」)フラグメントは、抗体軽鎖可変領域(V
L)の少なくとも1個のフラグメントに連結された抗体重鎖可変領域(V
H)の少なくとも1個のフラグメントを含有するエピトープ結合フラグメントである。リンカーは、単鎖抗体フラグメントが由来している全長抗体の標的分子結合特異性を維持するために(V
L)および(V
H)領域が連結されると(V
L)および(V
H)領域の適正な3次元折畳みが確実に発生するように選択された、短い可撓性のペプチドであり得る。(V
L)または(V
H)配列のカルボキシル末端は、リンカーによって相補的(V
L)または(V
H)配列のアミノ酸末端に共有結合的に連結され得る。
【0093】
本発明の単鎖抗体フラグメントは、本明細書に記載された少なくとも1個の全長抗体の可変性または相補性決定領域(CDR)を有するアミノ酸配列を含有するが、これらの抗体の定常ドメインの一部または全部を欠いている。これらの定常ドメインは抗原結合には不要であるが、全長抗体の構造の主要な部分を構成する。単鎖抗体フラグメントはゆえに、定常ドメインの一部または全部を含有する抗体の使用に関連する問題の幾つかを克服し得る。例えば単鎖抗体フラグメントは、生体分子と重鎖定常領域との間の所望でない相互作用、または他の望ましくない生物活性を有さない傾向がある。さらに単鎖抗体フラグメントは、全長抗体よりもかなり小さく、ゆえに全長抗体よりも大きい毛細管透過性を有し得て、単鎖抗体フラグメントを局所化させて、標的抗原結合部位により効率的に結合させる。抗体フラグメントは、原核細胞において比較的大規模に産生することもでき、このためこれの産生が促進される。さらに単鎖抗体フラグメントのサイズが比較的小さいことにより、単鎖抗体フラグメントはレシピエント内で全長抗体よりも免疫応答を誘発しにくくなっている。
【0094】
単鎖抗体フラグメントは、分子クローニング、抗体ファージ提示ライブラリまたは当業者に周知の同様の技法によって生成され得る。これらのタンパク質は、例えば真核細胞または細菌を含む原核細胞において産生され得る。本発明のエピトープ結合フラグメントは、当分野で公知の各種のファージ提示方法を使用して生成することもできる。ファージ提示方法において、機能性抗体ドメインは、これらをコードするポリヌクレオチド配列を担持するファージ粒子の表面に提示される。特にこのようなファージは、レパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリ(例えばヒトまたはマウス)から発現されたエピトープ結合ドメインを提示するために利用できる。興味のある抗原を結合するエピトープ結合ドメインを発現するファージは、抗原によって、例えば固体表面またはビーズに結合または捕捉された標識抗原を使用して選択または同定することができる。これらの方法で使用されるファージは通例、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質のどちらかに組換え融合されたFab、Fvまたはジスルフィド安定化Fv抗体ドメインを有するファージから発現されたfdおよびM13結合ドメインを含む線維状ファージである。
【0095】
本発明のエピトープ結合フラグメントを作製するために使用できるファージ提示方法の例は、Brinkman et al.,1995,J.Immunol.Methods,182:41−50;Ames et al.,1995,J.Immunol.Methods,184:177−186;Kettleborough et al.,1994,Eur.J.Immunol.,24:952−958;Persic et al.,1997,Gene 187:9−18;Burton et al.,1994,Advances in Immunology,57:191−280;PCT出願番号PCT/GB91/01134;PCT公開WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;ならびに米国特許第5,698,426号;第5,223,409号;第5,403,484号;第5,580,717号;第5,427,908号;第5,750,753号;第5,821,047号;第5,571,698号;第5,427,908号;第5,516,637号;第5,780,225号;第5,658,727号;第5,733,743号および第5,969,108号に開示されているものを含み;これらのそれぞれはその全体が参照により本明細書に組み入れられている。
【0096】
ファージ選択の後、例えば下で詳細に記載するような組換えDNA技術を用いて、フラグメントをコードするファージの領域を単離し、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母および細菌を含む選ばれた宿主における発現によってエピトープ結合フラグメントを産生するために使用することができる。例えばFab、Fab’およびF(ab’)
2フラグメントを組換え産生するための技法も、PCT公開WO92/22324;Mullinax et al.,1992,BioTechniques,12(6):864−869;Sawai et al.,1995,AJRI,34:26−34;およびBetter et al,1988,Science,240:1041−1043;これらの全体が参照により組み入れられている前記参考文献に開示された方法などの、当分野で公知の方法を用いて使用することができる。単鎖Fvsおよび抗体を産生するために使用できる技法の例は、米国特許第4,946,778号および第5,258,498号;Huston et al.,1991,Methods in Enzymology 203:46−88;Shu et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,90:7995−7999;Skerra et al.,1988,Science,240:1038−1040に記載されているものを含む。
【0097】
機能的等価物
抗EphA抗体およびヒト化抗EphA2受容体抗体の機能的等価物も、本発明の範囲内に含まれる。「機能的等価物」という用語は、相同配列を有する抗体、キメラ抗体、人工抗体および修飾抗体を含み、例えば各機能的等価物は、EphA2受容体を結合するこれの能力によって定義される。当業者は、「抗体フラグメント」と呼ばれる分子の群と「機能的等価物」と呼ばれる群とに重複があることを理解する。機能的等価物を産生する方法は当業者に公知であり、例えば参照によりこれらのそれぞれの全体が組み入れられている、PCT出願WO93/21319、欧州特許番号EP0239400;PCT出願WO89/09622;欧州特許番号EP0338745;および欧州特許出願EP0332424に開示されている。
【0098】
相同配列を有する抗体は、本発明の抗EphA抗体およびヒト化抗EphA抗体のアミノ酸配列との配列相同性を有するアミノ酸配列を持つ抗体である。好ましくは、相同性は本発明の抗EphA抗体およびヒト化抗EphA抗体の可変領域のアミノ酸配列との相同性である。本明細書でアミノ酸配列に適用されるような「配列相同性」は、例えばPearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85:2444−2448に従ったFASTAサーチ法によって決定されるような、別のアミノ酸に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、または94%配列相同性およびさらに好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%配列相同性を持つ配列として定義される。
【0099】
キメラ抗体は、抗体の異なる部分が異なる動物種に由来している抗体である。例えばヒト免疫グロブリン定常領域と対になった、マウスモノクローナル抗体に由来する可変領域を有する抗体。キメラ抗体を産生する方法は当分野で公知である。例えばこれらの全体が参照により本明細書に組み入れられている、Morrison,1985,Science,229:1202;Oi et al.,1986,BioTechniques,4:214;Gillies et al,1989,J.Immunol.Methods,125:191−202;米国特許第5,807,715号;第4,816,567号;および第4,816,397号を参照のこと。
【0100】
キメラ抗体のヒト化型は、マウス抗体の相補性決定領域をヒトフレームワークドメイン中に置換することによって作製される、例えばPCT公開番号W092/22653を参照のこと。ヒト化キメラ抗体は好ましくは、対応するヒト抗体領域から実質的にまたは排他的に由来する相補性決定領域(CDR)およびヒト以外の哺乳動物から実質的にまたは排他的に由来するCDR以外の定常領域および可変領域を有する。
【0101】
人工抗体は、scFvフラグメント、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディおよびmru(Winter,G.and Milstein,C,1991,Nature,349:293−299;Hudson,P.J.,1999,Current Opinion in Immunology,11:548−557による総説を参照のこと)を含み、これらのそれぞれは抗体結合能力を有する。単鎖Fvフラグメント(scFv)において、抗体のV
HおよびV
Lドメインは可撓性ペプチドによって連結されている。通例、本リンカーペプチドは約15アミノ酸残基長である。リンカーがはるかに小さい、例えば5アミノ酸である場合、2価scFvダイマーであるダイアボディが形成される。リンカーが3アミノ酸残基未満に縮小されている場合、トリマーおよびテトラマー構造が形成され、トリアボディおよびテトラボディと呼ばれる。抗体の最小結合単位はCDRであり、通例、重鎖のCDR2は十分な特異的認識および結合を有するので、これを個別に使用することができる。このようなフラグメントは分子認識単位またはmruと呼ばれる。複数のこのようなmruは短いリンカーペプチドと共に連結することができ、ゆえに単一のmruよりも高いアビディティを持つ人工結合タンパク質を形成する。
【0102】
本出願の機能的等価物は、修飾抗体、例えばいずれかの種類の分子の抗体への共有結合によって修飾された抗体も含む。例えば,修飾抗体は、例えばグリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/封鎖基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結などによって修飾された抗体を含む。共有結合は、抗体が抗イディオタイプ応答を生成するのを防止しない。これらの修飾は、これらに限定されるわけではないが、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む公知の技法によって行われ得る。さらに修飾抗体は、1個以上の非古典的アミノ酸を含有し得る。
【0103】
機能的等価物は、異なるフレームワーク内の異なる鎖上の異なるCDRを交換することによって産生され得る。このため,例えば異なるクラスの抗体は、異なる重鎖の置換により所与のCDRのセットについて可能であり、これにより例えばIgG1−4、IgM、IgA1−2、IgD、IgE抗体タイプおよびアイソタイプが産生され得る。同様に本発明の範囲内の人工抗体は、合成フレームワーク全体の中に所与のCDRのセットを埋め込むことによって産生され得る。
【0104】
機能的等価物は、当分野で公知の多種多様の方法を使用して、特定のCDRのセットに隣接する可変および/または定常領域配列内の変異、欠失および/または挿入によってただちに産生され得る。
【0105】
本発明の抗体フラグメントおよび機能的等価物は、2H11R35R74抗体と比較したときに、EphA2への検出可能な結合度を持つ分子を含む。検出可能な結合度は、EphA2に対するマウス2H11R35R74抗体の結合能力の、少なくとも10から100%の範囲のすべての値、好ましくは少なくとも50%、60%または70%、さらに好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%または99%を含む。
【0106】
改良抗体
CDRは、エピトープ認識および抗体結合にとって最も重要である。しかし、抗体がこれの同族エピトープを認識および結合する能力を妨害することなく、CDRを備える残基への変化がもたらされ得る。例えばエピトープ認識に影響せず、さらにエピトープに対する抗体の結合親和性を上昇させる変化が生じ得る。
【0107】
このため、好ましくは親和性の上昇を有する、またEphA2を特異的に認識および結合する、マウスおよびヒト化抗体両方の改良型も本発明の範囲に含まれる。
【0108】
複数の研究が1次抗体配列の知識に、結合および発現のレベルなどの抗体の特性に基づいて、1個以上のアミノ酸変化を抗体の配列内の各種の位置に導入する効果を調査した(Yang,W.P.et al.,1995,J.Mol.Biol.,254:392−403;Rader,C.et al.,1998,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,95:8910−8915;Vaughan,T.J.et al.,1998,Nature Biotechnology,16:535−539)。
【0109】
これらの研究において、1次抗体の等価物は、オリゴヌクレオチド介在部位特異的変異誘発、カセット変異誘発、エラープローンPCR、DNAシャッフリング、E.コリの変異誘発株などの方法を使用して、CDR1、CDR2、CDR3、またはフレームワーク領域における重鎖および軽鎖遺伝子の配列を変化させることによって生成された(Vaughan,T.J.et al.,1998,Nature Biotechnology,16:535−539;Adey,N.B.et al.,1996,Chapter 16,pp.277−291,in「Phage Display of Peptides and Proteins」,Eds.Kay,B.K.et al.,Academic Press)。1次抗体の配列を変化させるこれらの方法は、2次抗体の親和性の改良をもたらした(Gram,H.et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,89:3576−3580;Boder,E.T.et al.,2000,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,97:10701−10705;Davies,J.and Riechmann,L,1996,Immunotechnolgy,2:169−179;Thompson,J.et al.,1996,J.Mol.Biol.,256:77−88;Short,M.K.et al.,2002,J.Biol.Chem.,277:16365−16370;Furukawa,K.et al.,2001,J.Biol.Chem.,276:27622−27628)。
【0110】
抗体の1個以上のアミノ酸残基を変化させる同様の定方向戦略により、本発明に記載された抗体配列を使用して、EphA2に対する改良された親和性を含む、改良された機能を持つ抗EphA2抗体を発生させることができる。
【0111】
好ましいアミノ酸置換は:(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させる、(2)酸化に対する感受性を低下させる、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を改変するおよび(4)このような類似体の他の物理化学または機能特性を付与または修飾する置換である。類似体は、天然型ペプチド配列以外の配列の各種のムテインを含むことができる。例えば単一または複数のアミノ酸置換(好ましくは保存的アミノ酸置換)を、天然型配列で(好ましくは分子間接触を形成するドメイン外のポリペプチドの部分で)作製することができる。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造的特徴を実質的に変化させるべきではない(例えば置換アミノ酸は、親配列で発生するらせんを切断する、または親配列を特徴付ける他の種類の2次構造を破壊する傾向があるべきではない。)。当分野で認識されたポリペプチド2次および3次構造の例は、参照によりそれぞれ組み入れられている、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton,Ed.,W.H.Freeman and Company,New York(1984));Introduction to Protein Structure(C.Branden and J.Tooze,eds.,Garland Publishing,New York,N.Y.(1991));およびThornton et al.,1991,Nature,354:105に記載されている。
【0112】
改良抗体は、動物免疫化、ハイブリドーマ形成および特異的特徴を持つ抗体の選択の標準技法によって調製される改良された特徴を有する抗体も含む。
【0113】
抗体の定常領域と各種のFc受容体(FcγR)との間の相互作用は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体の固定、食作用および抗体の半減期/クリアランスを含む抗体のエフェクタ機能に介在すると考えられる。本発明の抗体の定常領域に対する各種の修飾は、所望の特性に応じて行われ得る。例えばそうでなければ溶解性の抗体を非溶解性にする定常領域における特異的変異は、EP0629240B1およびEP0307434B2で詳説され、または特異的変異はサルベージ受容体結合エピトープを抗体中に包含して血清半減期を延長し得る(US5,739,277を参照のこと)。現在認識されている5つのヒトFcγ受容体、FcγR(I)、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIaおよび新生児FcRnがある。Shields et al.(J.Biol.Chem.,27:6591−6604,2001)は、IgGI残基の共通セットがすべてのFcγRの結合に関与しているが、FcγRIIおよびFcγRIIIはこの共通セットの外部の別の部位を利用することを示している。IgGI残基の1群は、アラニンに対して改変されたときに、すべてのFcγRへの結合を低下させた:Pro−238、Asp−265、Asp−270、Asn−297およびPro−239。すべてがIgGCH2ドメイン内にあり、CH1およびCH2を接合するヒンジ付近に密集している。FcγRIは結合のためにIgGI残基の共通セットのみを利用するが、FcγRIIおよびFcγRIIIは、共通セットに加えて別個の残基と相互作用する。
【0114】
幾つかの残基の改変は、FcγRII(例えばArg−292)またはFcγRIII(例えばGlu−293)のみへの結合を低下させた。幾つかのバリアントは、FcγRIIまたはFcγRIIIへの結合の改良を示したが、他の受容体への結合には影響を及ぼさなかった(例えばSer−267AlaはFcgRIIへの結合を改良したが、FcγRIIIへの結合は影響されなかった。)。他のバリアントは、FcγRIIまたはFcγRIIIへの結合の改良を示し、他の受容体への結合は低下した(例えばSer−298Alaは、FcγRIIIへの結合を改良して、FcγRIIへの結合を低下させた。)。FcγRIIIaでは、最良の結合IgGIバリアントは、Ser−298、Glu−333およびLys−334に組合されたアラニン置換を有していた。新生児FcRn受容体は、抗体クリアランスおよび組織を通じたトランスサイトーシスの両方に関与すると考えられる(Junghans R.P,1997,Immunol.Res.,16:29−57 and Ghetie et al.,2000,Annu.Rev.lmmunol.18:739−766を参照のこと)。ヒトFcRnと直接相互作用することが断定されたヒトIgGI残基は、Ne253、Ser254、Lys288、Thr307、Gln311、Asn434およびHis435を含む。本節に記載されたこのような位置のいずれにおけるスイッチも、本発明の抗体の血清半減期の延長および/またはエフェクタ特性の改変を可能にし得る。
【0115】
他の修飾は、本発明の抗体のグリコシル化バリアントを含む。抗体の定常領域中の保存位置での抗体のグリコシル化は、抗体機能、特に上記のようなエフェクタ機能に対して顕著な効果を有することが公知である、例えばBoyd et al(Mol.Immunol,.32:1311−1318,1996)を参照のこと。1個以上の炭水化物部分が付加、置換、欠失または修飾されている、本発明の抗体またはこれの抗原結合フラグメントのグリコシル化バリアントが検討される。アスパラギン−X−セリンまたはアスパラギン−X−トレオニンモチーフの導入は、炭水化物部分の酵素結合の可能性のある部位を生成し、ゆえに抗体のグリコシレートを操作するために使用され得る。Raju et al.(Biochemistry 40:8868−8876,2001)において、TNFR−IgGイムノアドヘシンの末端シアリル化は、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(galactosyltransferace)および/またはアルファ2,3シアリルトランスフェラーゼを使用する再ガラクトシル化および/または再シアリル化の過程によって増加した。末端シアリル化を増加させることは、免疫グロブリンの半減期を延長すると考えられる。抗体は、大半の糖タンパク質に共通して、通例、グリコフォームの混合物として産生される。本混合物は特に、抗体が真核、特に哺乳動物細胞で産生されるときに明らかである。定義されたグリコフォームを製造するための多種多様の方法が開発されている(Zhang et al.2004,Science 303:371;Sears et al,2001,Science 291:2344;Wacker et al.,2002,Science 298:1790;Davis et al.2002,Chem.Rev.102:579;Hang et al.,2001,Acc.Chem.Res.34:727を参照のこと)。このため本発明は、前記抗体またはこれの抗原結合フラグメントの定義された数(例えば7以下、例えば2または1などの5以下)のグリコフォームを備えた、本明細書に記載するような(IgGアイソタイプ、例えばIgGIの抗体であり得る)複数の(モノクローナル)抗体を検討する。
【0116】
ゆえに本発明による改良抗体は特に、機能特性が向上した抗体を含む。特に興味深いのは、ADCCなどの細胞傷害性エフェクタ機能に介在する能力が向上した抗体である。このような抗体は、抗体の定常フレームワークにおける単一または複数の置換を作製することによって得られ、このためFc受容体との抗体の相互作用を改変する。このような変異体を設計する方法は、例えばLazar et al.(2006,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.103(11):4005−4010)およびOkazaki et al.(2004,J.Mol.Biol.336(5):1239−49)に見出すことができる。WO03/074679、WO2004/029207、WO2004/099249、WO2006/047350、WO2006/019447、WO2006/105338、WO2007/041635も参照のこと。改良抗体を産生するために特異的に操作された株化細胞を使用することも可能である。特にこれらの株化細胞は、グリコシル化経路の調節を改変し、例えばフコシル化が不十分であるまたは完全に脱フコシル化された抗体さえ生じる。抗体を操作するためのこのような株化細胞および方法は、例えばShinkawa et al.(2003,J.Biol.Chem.278(5):3466−3473)、Ferrara et al.(2006,J.Biol.Chem.281(8):5032−5036;2006、Biotecnol.Bioeng.93(5):851−61)、EP1272527B1、EP1331266、EP1498490、EP1498491、EP1676910、EP1792987およびWO99/54342に開示されている。
【0117】
本発明のさらなる実施形態は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレンなどの非タンパク性(non−proteinaeous)ポリマーに結合された本発明の抗体またはこれの抗原結合フラグメントを含む。タンパク質のPEGへのコンジュゲーションは、タンパク質の半減期を延長すると共に、タンパク質の抗原性および免疫原性を低下させる確立された技法である。異なる分子量およびスタイル(直鎖または分枝)を持つPEG化の使用は、無傷の抗体ならびにFab’フラグメントを用いて調査されてきた(Koumenis I.L.et al.,2000,Int.J.Pharmaceut.198:83−95)。
【0118】
本発明は、細胞傷害性コンジュゲート、または抗体薬物コンジュゲート、またはコンジュゲートも含む。本明細書で使用する場合、これらの用語はすべて同じ意味を有し、交換可能である。
【0119】
これらの細胞傷害性コンジュゲートは、2つの主要な成分、細胞結合剤および細胞傷害性剤を備える。
【0120】
本明細書で使用する場合、「細胞結合剤」という用語は、細胞表面のEphA2受容体を特異的に認識および結合する薬剤を指す。一実施形態において、細胞結合剤はEphA2受容体を特異的に認識して、コンジュゲートを標的化された方式で作用させ、副作用は非特異的結合からほとんど生じない。
【0121】
別の実施形態において、本発明の細胞結合剤はまたEphA2受容体を特異的に認識するので、コンジュゲートは標的細胞と、コンジュゲートの細胞傷害薬部分を細胞に作用させるのにおよび/またはコンジュゲートが細胞により内部移行されるのに十分な期間にわたって接触する。
【0122】
好ましい実施形態において、細胞傷害性コンジュゲートは、抗EphA2抗体を細胞結合剤として、さらに好ましくはマウス2H11R35R74モノクローナル抗体を備える。さらに好ましい実施形態において、細胞傷害性コンジュゲートは、ヒト化2H11R35R74抗体またはこれのエピトープ結合フラグメントを備える。2H11R35R74抗体は、EphA2などのEphA受容体を特異的に認識することができ、細胞傷害性剤を標的化された方式で癌細胞などの異常細胞または組織に方向付ける。
【0123】
本発明の細胞傷害性コンジュゲートの第2の構成要素は細胞傷害性剤である。「細胞傷害性剤」という用語は本明細書で使用する場合、細胞の機能、もしくは成長を低下もしくは遮断するおよび/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。
【0124】
好ましい実施形態において、細胞傷害性剤は、タキソイド、DM1またはDM4などのマイタンシノイド、小型薬物、トマイマイシン誘導体、プロドラッグ、CC−1065またはCC−1065類似体である。好ましい実施形態において、本発明の細胞結合剤は、直接または切断可能なもしくは切断可能でないリンカーを介して間接的に細胞傷害性剤に共有結合される。「リンカー」は本明細書で使用する場合、共有結合を備えた化学的部分または抗体を薬物部分に共有結合する原子の鎖を意味する。
【0125】
このため本発明は、(1)EphA2受容体を認識および結合する細胞結合剤と、(2)細胞傷害性剤との間のコンジュゲートの使用を検討する。細胞傷害性コンジュゲートにおいて、細胞結合剤はEphA2受容体に対して高い親和性を有し、細胞傷害性剤はEphA2受容体を発現する細胞に対して高度の細胞傷害性を有するので、本発明の細胞傷害性コンジュゲートは有効な死滅剤(killing agents)を形成する。
【0126】
アンタゴニストEphA2抗体のコンジュゲートは先に記載されている。例えばWO2008/010101は、SPDB(4−[2−ピリジルジチオ]ブタン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)リンカーを使用した、L−DM4,N2’デアセチル−N2’(4−メチル−4−メルカプト−1−オキソペンチル)−メイタンシンにコンジュゲートされたヒト化37.3D7およびヒト化53.2H11抗体を開示した(WO2008/010101の実施例10を参照のこと;hu37.3D7−SPDB−DM4およびhu2H11−SPDB−DM4)。
【0127】
本発明の抗体は、細胞傷害性剤にコンジュゲートされたとき、従来技術の抗体を超える幾つかの好都合の特性を示す。特にコンジュゲーションは、本発明の抗体のEphA2受容体に対する親和性に影響を及ぼさないが、53.2H11のEphA2への結合は、細胞傷害性剤の前記53.2H11抗体への結合によって悪影響が及ぼされる。細胞結合剤、細胞傷害性剤およびリンカーは、下でさらに詳細に議論されている。
【0128】
細胞結合剤
本発明の化合物の治療剤としての有効性は、適切な細胞結合剤の慎重な選択によって変わる。細胞結合剤は、現在公知である、または公知になるいずれの種類でもよく、ペプチドおよび非ペプチドを含む。細胞結合剤は、特異的または非特異的な様式のどちらかで細胞を結合することができるいずれの化合物でもよい。一般にこれらは、抗体(とりわけモノクローナル抗体)、リンフォカイン、ホルモン、成長因子、ビタミン、栄養素輸送分子(トランスフェリンなど)、または他のいずれかの細胞結合分子もしくは物質であることができる。
【0129】
使用できる細胞結合剤のさらに詳細な例は:
ポリクローナル抗体;
モノクローナル抗体;
Fab、Fab’およびF(ab’)
2、Fvなどの抗体のフラグメント(Parham,1983,J.Immunol.,131:2895−2902;Spring et al,1974,J.Immunol.,113:470−478;Nisonoff et al.,1960,Arch.Biochem.Biophys.,89:230−244)を含む。
【0130】
好ましくは、ヒト化抗EphA2抗体は本発明の細胞結合剤として使用される。さらに好ましくは、ヒト化抗EphA2抗体はヒト化2H11R35R74抗体である。
【0131】
細胞傷害性剤
別の実施形態において、ヒト化抗体またはこれのエピトープ結合フラグメントは、メイタンシノイド、トマイマイシン誘導体またはデュオカルマイシン誘導体などの薬剤にコンジュゲートされて、薬物をEphA2受容体に標的化することにより抗原発現細胞に対して特異的な細胞傷害性を有するプロドラッグを形成することができる。このような抗体および小型の高毒性薬(例えばメイタンシノイド、トマイマイシン誘導体、ならびにCC−1065およびCC−1065類似体)を備える細胞傷害性コンジュゲートは、例えば,乳腺および卵巣腫瘍などの腫瘍の処置のための治療薬として使用できる。
【0132】
本発明の細胞傷害性コンジュゲートで使用される細胞傷害性剤は、細胞死を生じる、または細胞死を誘発する、または幾つかの様式において細胞生存度を低下させるいずれの化合物でもよい。好ましい細胞傷害性剤は、下で定義する例えば,メイタンシノイドおよびメイタンシノイド類似体、トマイマイシン誘導体、ならびにCC−1065およびCC−1065類似体である。これらの細胞傷害性剤は、本明細書で開示するような抗体、抗体フラグメント、機能的等価物、改良抗体およびこれらの類似体にコンジュゲートされる。
【0133】
細胞傷害性コンジュゲートは、インビトロ方法によって調製され得る。薬物またはプロドラッグを抗体に連結するために、連結基が使用される。好適な連結基は当分野で周知であり、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチダーゼ不安定性基およびエステラーゼ不安定性基を含む。
【0134】
例示的な連結基はジスルフィド基およびチオエーテル基である。例えばコンジュゲートは、ジスルフィド交換反応を使用して、または抗体と薬物もしくはプロドラッグとの間にチオエーテル結合を形成することによって構築できる。このような連結基を担持するリンカーの例は、N−スクシンイミジルピリジルジチオプロピオナート(SPDP)およびN−スクシンイミジルピリジルジチオブチラート(SPDB)を含み、これらのジチオピリジル反応性基(Bourdon M.A.et al.,Biochem.J.,173:723−737,1978;US5208020を参照のこと)は、−SHなどの細胞傷害性化学反応性基と反応して新たな結合−S−S−を形成する。N−スクシンイミジルオキシ基は次に、アミド結合を形成するために抗体に存在するアミノ基と優先的に反応する。
【0135】
別の好ましい実施形態において、細胞傷害性剤はUS6,716,821に記載されているように、ポリエチレングリコール(PEG)連結基を使用して細胞結合剤に連結される。
【0136】
例示的なPEG連結基は、一端の官能性スルフヒドリルまたはジスルフィド基および他端の活性エステルを通じて、細胞傷害性剤および細胞結合剤に結合するヘテロ2官能性PEGリンカーを含む(US6,716,821)。官能性スルフヒドリルまたはジスルフィド基を通じて細胞傷害性剤に結合しないPEGリンカーを使用することも可能である。
【0137】
式(I)の、末端活性エステルを有するポリエチレングリコール(PEG)連結基を持つ細胞傷害性剤が特に検討される:
【0138】
【化11】
式中、Zは前記細胞傷害性剤であり、前記細胞傷害性剤は、メイタンシノイドおよびメイタンシノイド類似体、トマイマイシン誘導体、ならびにCC−1065およびCC−1065類似体の群から選択され、
式中、Yは、N−スクシンイミジルオキシ、N−スルホスクシンイミジルオキシ、N−フタルイミジルオキシ、N−スルホフタルイミジルオキシ、2−ニトロフェニルオキシ、4−ニトロフェニルオキシ、2,4−ジニトロフェニルオキシ、3−スルホニル−4−ニトロフェニルオキシ、3−カルボキシ−4−ニトロフェニルオキシ、イミダゾリル、またはハロゲン原子である。別の好ましい実施形態において、細胞傷害性剤が提供され、前記細胞傷害性剤は、末端活性エステルを有するポリエチレングリコール(PEG)連結基を持ち、式(II)であり:
【0139】
【化12】
式中、Zは前記細胞傷害性剤であり、前記細胞傷害性剤は、メイタンシノイドおよびメイタンシノイド類似体、トマイマイシン誘導体、ならびにCC−1065およびCC−1065類似体の群から選択され、
式中、Yは、N−スクシンイミジルオキシ、N−スルホスクシンイミジルオキシ、N−フタルイミジルオキシ、N−スルホフタルイミジルオキシ、2−ニトロフェニルオキシ、4−ニトロフェニルオキシ、2,4−ジニトロフェニルオキシ、3−スルホニル−4−ニトロフェニルオキシ、3−カルボキシ−4−ニトロフェニルオキシ、イミダゾリル、またはハロゲン原子である。
【0140】
コンジュゲートの調製
概して、コンジュゲートは:
(i)細胞結合剤の場合により緩衝された水溶液を細胞傷害性化合物の溶液と接触させるステップと;
(ii)次に、(i)で形成されたコンジュゲートを未反応試薬および溶液中に存在し得るいずれの凝集体からも場合により分離するステップと;
を備えた方法によって得ることができる。
【0141】
一態様において、細胞結合剤は抗体である;さらに明確には、細胞結合剤は、mu2H11R35R74抗体またはこれのヒト化型である。別の態様において、細胞傷害性剤は、Zがメイタンシノイドである式(I)または(II)のどちらかの化合物である;特にZはDM4である。
【0142】
本方法によって得られるコンジュゲートは本発明の範囲内に含まれることが理解されている。
【0143】
細胞結合剤の水溶液は、例えばリン酸カリウムまたはN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(Hepes緩衝剤)などの緩衝剤によって緩衝することができる。緩衝剤は、細胞結合剤の性質によって変わる。細胞傷害性化合物は、有機極性溶媒、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)またはジメチルアセトアミド(DMA)に溶解している。
【0144】
反応温度は通常、20から40℃の間に含まれる。反応時間は、1から24時間まで変化することができる。細胞結合剤と細胞傷害性剤との間の反応は、屈折率および/またはUV検出器を備えたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって監視することができる。コンジュゲート収率が低すぎる場合、反応時間を延長することができる。
【0145】
幾つかの異なるクロマトグラフィー方法は、ステップ(ii)の分離を行うために当業者に使用されることが可能であり:コンジュゲートは、例えばSEC、吸着クロマトグラフィー(イオン交換クロマトグラフィー、IECなど)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどの混合担体クロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製することができる。透析またはダイアフィルトレーションによる精製も使用することができる。
【0146】
使用できる方法の例は、実施例I.b.1に記載されている。
【0147】
本明細書で使用する場合、「凝集体」という用語は、2つ以上の細胞結合剤の間で形成することができる会合を意味し、前記細胞結合剤はコンジュゲーションによって修飾されているか、または修飾されていない。凝集体は、溶液中の細胞結合剤の高い濃度、溶液のpH、高い剪断力、結合ダイマーの数およびこれらの疎水性特徴、温度などの多数のパラメータの影響下で形成される(Wang & Gosh,2008,J.Membrane Sci.,318:311−316およびこれで引用された参考文献を参照のこと);これらのパラメータの幾つかの相対的な影響は明確に確立されていないことに注目する。タンパク質および抗体の場合、当業者はCromwell et al.(2006,AAPS Jounal,8(3):E572−E579)を参照する。凝集体の内容は、SECなどの当業者に周知の技法を用いて決定することができる(Walter et al.,1993,Anal.Biochem.,212(2):469−480を参照のこと)。
【0148】
ステップ(i)または(ii)の後、コンジュゲート含有溶液に、限外濾過および/またはダイアフィルトレーションの追加のステップ(iii)を受けさせることができる。
【0149】
コンジュゲートは、水溶液中でこれらのステップの終わりに回収される。
【0150】
メイタンシノイド
細胞傷害性コンジュゲートを形成するために本発明に使用され得る細胞傷害性剤には、メイタンシノイドおよびメイタンシノイド類似体がある。好適なメイタンシノイドの例は、メイタンシノールおよびメイタンシノール類似体を含む。メイタンシノイドは、微小管形成を阻害し、哺乳動物細胞に対して高い毒性である薬物である。
【0151】
好適なメイタンシノール類似体の例は、修飾芳香族環を有するものおよび他の位置に修飾を有するものを含む。このような好適なメイタンシノイドは、米国特許第4,424,219号;第4,256,746号;第4,294,757号;第4,307,016号;第4,313,946号;第4,315,929号;第4,331,598号;第4,361,650号;第4,362,663号;第4,364,866号;第4,450,254号;第4,322,348号;第4,371,533号;第6,333,410号;第5,475,092号;第5,585,499号;および第5,846,545号に開示されている。
【0152】
修飾芳香族環を有するメイタンシノールの好適な類似体の詳細な例は:
(1)C−19−デクロロ(米国特許第4,256,746号)(アンサマイトシン(ansamytocin)P2のLAH還元によって調製);
(2)C−20−ヒドロキシ(またはC−20−デメチル)+/−C−19−デクロロ(米国特許第4,361,650号および第4,307,016号)(ストレプトミセス(Streptomyces)もしくはアクチノミセス(Actinomyces)を使用する脱メチル化またはLAHを使用する脱塩素);および
(3)C−20−デメトキシ,C−20−アシルオキシ(−OCOR)、+/−デクロロ(U.S.No 4,294,757)(塩化アシルを使用するアシル化によって調製)を含む。
【0153】
他の位置の修飾を有するメイタンシノールの好適な類似体の詳細な例は:
(1)C−9−SH(米国特許第4,424,219号)(メイタンシノールとH
2SまたはP
2S
5との反応によって調製);
(2)C−14−アルコキシメチル(デメトキシ/CH
2OR)(米国特許第4,331,598号);
(3)C−14−ヒドロキシメチルまたはアシルオキシメチル(CH
2OHまたはCH
2OAc)(米国特許第4,450,254号)(ノカルディア(Nocardia)から調製);
(4)C−15−ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4,364,866号)(メイタンシノールのストレプトミセス(Streptomyces)による変換によって調製);
(5)C−15−メトキシ(米国特許第4,313,946号および第4,315,929号)(トレウィア・ヌディフロラ(Trewia nudiflora)から単離);
(6)C−18−N−デメチル(U.S.Nos.4,362,663および4,322,348)(ストレプトミセス(Streptomyces)によるメイタンシノールの脱メチル化によって調製);および
(7)4,5−デオキシ(米国特許第4,371,533号)(メイタンシノールの3塩化チタン/LAH還元によって調製)を含む。
【0154】
好ましい実施形態において、本発明の細胞傷害性コンジュゲートは、正式にはN2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシンと呼ばれるチオール含有メイタンシノイド(DM1)を細胞傷害性剤として利用する。DM1は、以下の構造式(III)によって表される:
【0156】
別の好ましい実施形態において、本発明の細胞傷害性コンジュゲートは、正式にはN
2’−デアセチル−N
2’−(4−メチル−4−メルカプト−1−オキソペンチル)−メイタンシンと呼ばれるチオール含有メイタンシノイドDM4を細胞傷害性剤として利用する。DM4は、以下の構造式(IV)によって表される:
【0157】
【化14】
本発明のさらなる実施形態において、硫黄原子を持つ炭素原子上にモノまたはジアルキル置換を持つチオールおよびジスルフィドメイタンシノイドを含む他のメイタンシンが使用され得る。これらはC−3、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシ、またはC−20デスメチルに、ヒンダードスルフヒドリル基を持つアシル基を備えたアシル化アミノ酸側鎖を有するメイタンシノイドを含み、チオール官能基を持つアシル基の炭素原子は、1または2個の置換基を有し、前記置換基はCH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり、さらに置換基の1個はHであることができ、アシル基はカルボニル官能基と硫黄原子との間に少なくとも3個の炭素原子の直鎖長を有する。
【0158】
このような追加のメイタンシンは、式(V)によって表される化合物を含む:
【0159】
【化15】
式中:
Y’は
(CR
7R
8)
l(CR
9=CR
10)
p(C≡C)
qA
r(CR
5R
6)
mD
u(CR
11=CR
12)
r(C≡C)
sB
t(CR
3R
4)
nCR
1R
2SZを表し、式中:
R
1およびR
2はそれぞれ独立して、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分枝もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり加えてR
2はHであることができ;
A、B、Dは、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキルまたはシクロアルケニル、単純または置換アリールまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり;
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11およびR
12はそれぞれ独立して、H、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分枝もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり;
l、m、n、o、p、q、r、sおよびtは、l、m、n、o、p、q、r、sおよびtの少なくとも2つが一度にゼロでないという条件で、それぞれ独立して0または1から5の整数であり;ならびに
Zは、H、SRまたは−CORであり、ここでRは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分枝もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、または単純もしくは置換アリールまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルである。
【0160】
式(V)の好ましい実施形態は、式(V)の化合物を含み、式中:
R
1はメチルであり、R
2はHでありおよびZはHである。
R
1およびR
2はメチルであり、ならびにZはHである。
R
1はメチルであり、R
2はHでありおよびZは−SCH
3である。
R
1およびR
2はメチルであり、ならびにZは−SCH
3である。
【0161】
このような追加のメイタンシンは、式(VI−L)、(VI−D)、または(VI−D,L)によって表される化合物も含み:
【0162】
【化16】
式中:
Yは(CR
7R
8)
l(CR
5R
6)
m(CR
3R
4)
nCR
1R
2SZであり、
式中:
R
1およびR
2はそれぞれ独立して、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分枝もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり、および加えて、R
2はHであることができ;
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8はそれぞれ独立して、H、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分枝もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり;
l、mおよびnはそれぞれ独立して、1から5の整数であり、ならびに加えてnは0であることができ;
Zは、H,SRまたは−CORであり、ここでRは、1から10個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する環式アルキルもしくはアルケニル、または単純もしくは置換アリールまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり;ならびに
Mayは、C−3、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシまたはC−20デスメチルに側鎖を持つメイタンシノイドを表す。
【0163】
式(VI−L)、(VI−D)および(VI−D,L)の好ましい実施形態は、式(VI−L)、(VI−D)および(VI−D,L)の化合物を含み、式中:
R
1はメチルであり、R
2はHであり、R
5、R
6、R
7およびR
8はそれぞれHであり、lおよびmはそれぞれ1であり、nは0であり、ならびにZはHである。
【0164】
R
1およびR
2はメチルであり、R
5、R
6、R
7、R
8はそれぞれHであり、lおよびmは1であり、nは0であり、ならびにZはHである。
【0165】
R
1はメチルであり、R
2はHであり、R
5、R
6、R
7およびR
8はそれぞれHであり、lおよびmはそれぞれ1であり、nは0であり、ならびにZは−SCH
3である。
【0166】
R
1およびR
2はメチルであり、R
5、R
6、R
7、R
8はそれぞれHであり、lおよびmはそれぞれ1であり、nは0であり、ならびにZは−SCH
3である。
【0167】
好ましくは、細胞傷害性剤は式(Vl−L)によって表される。
【0168】
このような追加のメイタンシンは、式(VII)によって表される化合物も含み:
【0169】
【化17】
式中:
Yは(CR
7R
8)
l(CR
5R
6)
m(CR
3R
4)
nCR
1R
2SZを表し、
式中:
R
1およびR
2はそれぞれ独立して、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分枝もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり加えてR
2はHであることができ;
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8はそれぞれ独立して、H、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分枝もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり;
l、mおよびnはそれぞれ独立して、1から5の整数であり、および加えてnは0であることができ;ならびに
Zは、H、SRまたは−CORであり、ここでRは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分枝もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、または単純もしくは置換アリールまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルである。
【0170】
式(VII)の好ましい実施形態は、式(VII)の化合物を含み、式中:
R
1はメチルであり、R
2はHであり、R5、R6、R7およびR8はそれぞれHであり;lおよびmはそれぞれ1であり;nは0であり;ならびにZはHである。
【0171】
R
1およびR
2はメチルであり;R
5、R
6、R
7、R
8はそれぞれHであり;lおよびmは1であり;nは0であり;ならびにZはHである。
【0172】
R
1はメチルであり、R
2はHであり、R
5、R
6、R
7およびR
8はそれぞれHであり、lおよびmはそれぞれ1であり、nは0であり、ならびにZは−SCH
3である。
【0173】
R
1およびR
2はメチルであり、R
5、R
6、R
7、R
8はそれぞれHであり、lおよびmは1であり、nは0であり、ならびにZは−SCH
3である。
【0174】
このような追加のメイタンシンは、式(VIIII−L)、(VIII−D)、または(VIII−D,L)によって表される化合物をさらに含み:
【0175】
【化18】
式中:
Y
2は(CR
7R
8)
l(CR
5R
6)
m(CR
3R
4)
nCR
1R
2SZ
2を表し、
式中:
R
1およびR
2はそれぞれ独立して、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分枝もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり加えてR
2はHであることができ;
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8はそれぞれ独立して、H、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖環式アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分枝もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり;
l、mおよびnはそれぞれ独立して、1から5の整数であり、および加えてnは0であることができ;
Z
2は、SRまたはCORであり、ここでRは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分枝もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、または単純もしくは置換アリールまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり;ならびにMayはメイタンシノイドである。
【0176】
このような追加のメイタンシンは、式(IX)によって表される化合物も含み:
【0177】
【化19】
式中:
Y
2’は
(CR
7R
8)
l(CR
9=CR
10)
p(C≡C)
qA
r(CR
5R
6)
mD
u(CR
11=CR
12)
r(C≡C)
sB
t(CR
3R
4)
nCR
1R
2SZ
2を表し、式中:
R
1およびR
2はそれぞれ独立して、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり、加えてR
2はHであることができ;
A、BおよびDはそれぞれ独立して、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキルまたはシクロアルケニル、単純または置換アリールまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり;
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11およびR
12はそれぞれ独立して、H,CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分枝もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり;
l、m、n、o、p、q、r、sおよびtは、l、m、n、o、p、q、r、sおよびtの少なくとも2つが一度にゼロでないという条件で、それぞれ独立して、0または1から5の整数である;ならびに
Z
2はSRまたは−CORであり、ここでRは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分枝もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、または単純もしくは置換アリール、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルである。
【0178】
式(IX)の好ましい実施形態は、式(IX)の化合物を含み、式中:R
1はメチルであり、R
2はHである。
【0179】
上述のメイタンシノイドは、抗EphA抗体2H11R35R74またはこれのホモログもしくはフラグメントにコンジュゲートすることができ、ここで抗体は、メイタンシノイドのC−3、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシまたはC−20デスメチルに見出されるアシル化アミノ酸側鎖のアシル基状に存在するチオールまたはジスルフィド官能基を使用してメイタンシノイドに連結され、ならびにここでアシル化アミノ酸側鎖のアシル基は、1または2個の置換基を有する炭素原子に位置するこれのチオールまたはジスルフィド官能基を有し、前記置換基は、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子分枝もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり、ならびに加えて置換基の1個がHであることができ、ならびにここでアシル基は、カルボニル官能基と硫黄原子との間に少なくとも3個の炭素原子の直鎖長を有する。
【0180】
本発明の好ましいコンジュゲートは、式(X)のメイタンシノイドにコンジュゲートされた、または式(X)のメイタンシノイドとのコンジュゲーションによって得ることができる、抗EphA抗体2H11R35R74またはこれのホモログもしくはフラグメントを備えるものであり:
【0181】
【化20】
式中:
Y
1’は、
(CR
7R
8)
l(CR
9=CR
10)
p(C≡C)
qA
r(CR
5R
6)
mD
u(CR
11=CR
12)
r(C≡C)
sB
t(CR
3R
4)
nCR
1R
2S−を表し、
式中:
A、BおよびDはそれぞれ独立して、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキルまたはシクロアルケニル、単純または置換アリール、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり;
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11およびR
12はそれぞれ独立して、H、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分枝もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり;ならびに
l、m、n、o、p、q、r、sおよびtは、l、m、n、o、p、q、r、sおよびtの少なくとも2つが一度にゼロでないという条件で、それぞれ独立して、0または1から5の整数である。
【0182】
好ましくは、R
1はメチルであり、R
2はHであり、またはR
1およびR
2はメチルである。
【0183】
本発明のなおさらに好ましいコンジュゲートは、式(XI−L)、(XI−D)、もしくは(XI−D,L)のメイタンシノイドにコンジュゲートされた、抗EphA抗体2H11R35R74またはこれのホモログもしくはフラグメントを備えるものであり:
【0184】
【化21】
式中:
Y
1は(CR
7R
8)
l(CR
5R
6)
m(CR
3R
4)
nCR
1R
2S−を表し、
式中:
R
1およびR
2はそれぞれ独立して、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分枝もしくは環式アルキルまたはアルケニル、フェニル、置換フェニル、複素環式芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり加えてR
2はHであることができ;
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8はそれぞれ独立して、H、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分枝もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキルラジカルであり;
l、mおよびnはそれぞれ独立して、1から5の整数であり、ならびに加えてnは0であることができ;ならびに
Mayは、C−3、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシまたはC−20デスメチルに側鎖を持つメイタンシノールを表す。
【0185】
式(XI−L)、(XI−D)および(XI−D,L)の好ましい実施形態は、式(XI−L)、(XI−D)および(XI−D,L)の化合物を含み、式中:
R
1はメチルであり、R
2はHであり、またはR
1およびR
2はメチルであり、
R
1はメチルであり、R
2はHであり、R
5、R
6、R
7およびR
8はそれぞれHであり;lおよびmはそれぞれ1であり;nは0であり、
R
1およびR
2はメチルであり;R
5、R
6、R
7およびR
8はそれぞれHであり;lおよびmは1であり;nは0である。
【0186】
好ましくは、細胞傷害性剤は式(XI−L)によって表される。
【0187】
本発明のさらに好ましいコンジュゲートは、式(XII)のメイタンシノイドにコンジュゲートされた、抗EphA抗体2H11R35R74またはこれのホモログもしくはフラグメントを備えるものである:
【0188】
【化22】
式中、置換基は上の式(XI)で定義された通りである。
【0189】
R
1がHであり、R
2がメチルであり、R
5、R
6、R
7およびR
8がそれぞれHであり、lおよびmがそれぞれ1であり、ならびにnが0である、上記の化合物のいずれもとりわけ好ましい。
【0190】
R
1およびR
2がメチルであり、R
5、R
6、R
7、R
8がそれぞれHであり、lおよびmが1であり、ならびにnが0である、上記の化合物のいずれもさらにとりわけ好ましい。
【0191】
さらにL−アミノアシル立体異性体が好ましい。
【0192】
2004年5月20日に出願された係属中の米国特許出願第10/849,136号で教示されたメイタンシノイドもそれぞれ、本発明の細胞傷害性コンジュゲートで使用され得る。米国特許出願第10/849,136号の開示全体は、参照により本明細書に組み入れられている。
【0193】
ジスルフィド含有連結基
メイタンシノイドを細胞結合剤、例えば2H11R35R74抗体に連結するために、メイタンシノイドは連結部分を備える。連結部分は、特定部位での完全活性メイタンシノイドの放出を可能にする化学結合を含有する。好適な化学結合は当分野で周知であり、ジスルフィド結合、酸不安定性結合、光不安定性結合、ペプチダーゼ不安定性結合およびエステラーゼ不安定性結合を含む。
【0194】
連結部分は、反応性化学基も備える。好ましい実施形態において、反応性化学基は、ジスルフィド結合連結部分を介してメイタンシノイドに共有結合するために使用される。
【0195】
特に好ましい反応性化学基は、N−スクシンイミジルエステルおよびN−スルホスクシンイミジルエステルである。
【0196】
反応性化学基を含有する連結部分を備えた特に好ましいメイタンシノイドは、メイタンシノールおよびこれの類似体のC−3エステルであり、連結部分はジスルフィド結合を含有しおよび化学反応性基はN−スクシンイミジルまたはN−スルホスクシンイミジルエステルを備える。
【0197】
メイタンシノイド上の多くの位置は、連結部分を化学的に連結する位置として作用することができる。例えばヒドロキシル基を有するC−3位置、ヒドロキシメチルによって修飾されたC−14位置、ヒドロキシによって修飾されたC−15位置およびヒドロキシ基を有するC−20位置はすべて有用であることが予想される。しかしC−3位置が好ましく、メイタンシノールのC−3位置がとりわけ好ましい。
【0198】
連結部分を有するメイタンシノールのエステルの合成はジスルフィド結合含有連結部分に関して記載されているが、当業者は、(上記のような)他の化学結合を備えた連結部分も、他のメイタンシノイドができるように、本発明によって使用できることを理解する。他の化学結合の詳細な例は、酸不安定性結合、光不安定性結合、ペプチダーゼ不安定性結合およびエステラーゼ不安定性結合を含む。本明細書に組み入れられている米国特許第5,208,020号の開示は、このような結合を持つメイタンシノイドの産生を教示する。
【0199】
反応性基を持つジスルフィド部分を有するメイタンシノイドおよびメイタンシノイド誘導体の合成は、米国特許第6,441,163号および第6,333,410号ならびに米国特許出願第10/161,651号に記載され、これらのそれぞれは参照により本明細書に組み入れられている。
【0200】
PEG含有連結基
メイタンシノイドはまた、米国特許第6,716,821号に記載されるように、PEG連結基を使用して細胞結合剤に連結され得る。これらのPEG連結基は水および非水性溶媒の両方に水溶性であり、1つ以上の細胞傷害性剤を細胞結合剤に接合するために使用することができる。例示的なPEG連結基は、ヘテロ2官能性PEGリンカーであって、一端の官能性スルフヒドリルまたはジスルフィド基および他端の活性エステルを通じて、リンカーの対向端に細胞傷害性剤および細胞結合剤を結合するヘテロ2官能性PEGリンカーを含む。
【0201】
PEG連結基を使用する細胞傷害性コンジュゲートの合成の一般的な例として、具体的な詳細については米国特許第6,716,821号が再度参照される。合成は反応性PEG部分を持つ1つ以上の細胞傷害性剤と細胞結合剤との反応により開始して、各反応性PEG部分の末端活性エステルの、2H11R35R74抗体などの細胞結合剤のアミノ酸残基による置換をもたらし、PEG連結基を通じて細胞結合剤に共有結合された1つ以上の細胞傷害性剤を備える細胞傷害性コンジュゲートを生じる。官能性スルフヒドリルまたはジスルフィド基を通じて細胞傷害性剤に結合しないPEG連結基を使用することも可能である。
【0202】
このため本明細書でPEG4−NHAc−DM4と呼ばれる式(XIII)のメイタンシノイドは、本発明の範囲に含まれる:
【0204】
本明細書でPEG4−Mal−DM4と呼ばれる式(XIV)のメイタンシノイドも、本発明の意味に含まれる:
【0206】
本明細書でSPDB−DM4と呼ばれる式(XXIV)のメイタンシノイドも、本発明の意味に含まれる:
【0208】
本明細書でPEG4−NMeAc−DM4と呼ばれる式(XXV)のメイタンシノイドも、本発明の意味に含まれる:
【0210】
本明細書でPEG8−NHAc−DM4と呼ばれる式(XXVI)のメイタンシノイドも、本発明の意味に含まれる:
【0212】
本明細書でPEG4−アリル−DM4と呼ばれる式(XXVII)のメイタンシノイドも、本発明の意味に含まれる:
【0214】
反応性基含有メイタンシノイド、例えばDM4は抗体、例えば2H11R35R74抗体と反応して細胞傷害性コンジュゲートを産生し、該細胞傷害性(cytotoxic)は抗体に共有結合されている。これらのコンジュゲートは、HPLCまたはゲル濾過によって精製され得る。
【0215】
本発明の好ましい実施形態は、2H11R35R74抗体の、またはこれのヒト化型のコンジュゲートであり、前記コンジュゲートは前記2H11R35R74抗体に共有結合された細胞傷害性剤を備え、前記細胞傷害性剤は式(XIII)のメイタンシノイドと式(XIV)のメイタンシノイドとの間で選ばれる。さらに好ましい実施形態において、式(XIII)のメイタンシノイドの本発明の2H11R35R74抗体へのコンジュゲーションは、2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4コンジュゲートを生じる。別のさらなる好ましい実施形態において、式(XIV)のメイタンシノイドは本発明の2H11R35R74抗体にコンジュゲートされて、2H11R35R74−PEG4−Mal−DM4コンジュゲートを生じる。
【0216】
このため好ましい実施形態は、式(XV)の構造から成る構造を有する抗体薬物コンジュゲートに関する:
【0217】
【化29】
(式中、Abは本発明の抗体であり、nは1から15の間で構成される整数である。)。優先的に、nは1から10の間で構成される。なおさらに優先的に、nは5から7の間で構成される。別のさらなる好ましい実施形態において、本発明の抗体は2H11R35R74抗体またはこれのヒト化型であり、コンジュゲートは2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4コンジュゲートである。
【0218】
このため別の好ましい実施形態は、式(XVI)の構造から成る構造を有する抗体薬物コンジュゲートに関する:
【0219】
【化30】
(式中、Abは本発明の抗体であり、nは1から15の間で構成される整数である。)。優先的に、nは1から10の間で構成される。なおさらに優先的に、nは5から7の間で構成される。別のさらなる好ましい実施形態において、本発明の抗体は2H11R35R74抗体またはこれのヒト化型であり、コンジュゲートは2H11R35R74−PEG4−Mal−DM4コンジュゲートである。
【0220】
このような抗体−メイタンシノイドコンジュゲートを産生するための複数の優れたスキームは、米国特許第第6,333,410号、ならびに米国特許出願第09/867,598号、第10/161,651号および第10/024,290号で提供され、これらのそれぞれはその全体が本明細書に組み入れられている。
【0221】
上で説明したように、概してコンジュゲートは:
(i)抗体の場合により緩衝された水溶液をメイタンシノイドの溶液と接触させるステップと;
(ii)次に、(i)で形成されたコンジュゲートを未反応試薬および溶液中に存在し得るいずれの凝集体からも場合により(optionnally)分離するステップと;
を備えた方法によって得ることができる。
【0222】
さらに詳細には、水性緩衝液による抗体の溶液は、反応性基を持つジスルフィド部分を有するモル過剰のメイタンシノイドによりインキュベートされ得る。反応混合物は、過剰のアミン(例えばエタノールアミン、タウリンなど)の添加によって反応停止させることができる。メイタンシノイド抗体コンジュゲートは次に、ゲル濾過によって精製され得る。
【0223】
方法の一態様において、抗体はmu2H11R35R74抗体またはこれのヒト化型である。この方法の別の態様において、細胞傷害性剤は:
式(XVII)の化合物:
【0224】
【化31】
(式中、Yは、N−スクシンイミジルオキシ、N−スルホスクシンイミジルオキシ、N−フタルイミジルオキシ、N−スルホフタルイミジルオキシ、2−ニトロフェニルオキシ、4−ニトロフェニルオキシ、2,4−ジニトロフェニルオキシ、3−スルホニル−4−ニトロフェニルオキシ、3−カルボキシ−4−ニトロフェニルオキシ、イミダゾリル、またはハロゲン原子である。)および式(XVIII)の化合物:
【0225】
【化32】
(式中、Yは、N−スクシンイミジルオキシ、N−スルホスクシンイミジルオキシ、N−フタルイミジルオキシ、N−スルホフタルイミジルオキシ、2−ニトロフェニルオキシ、4−ニトロフェニルオキシ、2,4−ジニトロフェニルオキシ、3−スルホニル−4−ニトロフェニルオキシ、3−カルボキシ−4−ニトロフェニルオキシ、イミダゾリル、またはハロゲン原子である。)の間で選ばれる細胞傷害性剤である。
【0226】
抗体および式(XVII)または(XVIII)のどちらかの化合物と共に使用することができる方法の例を、実施例1で与える。
【0227】
抗体分子1個当りに結合されたメイタンシノイド分子の数(「薬物対抗体比」または「DAR」)は、実質的に精製された(即ちステップ(ii)の後の)コンジュゲートの溶液の252nmおよび280nmにおける吸光度の比を測定することによって分光光度的に決定することができる。特に前記DARは、抗体について280および252nmでそれぞれ測定された消衰係数:ε
A280=224,000M
−1cm
−1およびε
A252=82,880M
−1cm
−1を使用して;抗体およびメイタンシノイドの平均160,000分子量をε
D280=5,180M
−1cm
−1およびε
D252=26,159M
−1cm
−1と仮定して、分光光度的に決定することができる。)。計算方法は、Antony S.Dimitrov(ed),LLC,2009,Therapeutic Antibodies and Protocols,vol 525,445,Springer Scienceから導かれ、下でさらに詳細に記載する:
252nm(A
252)および280nm(A
280)におけるコンジュゲートの吸光度は、SEC分析の単量体ピーク(「DAR(SEC)」パラメータを計算させる。)で、または古典的な分光光度装置を使用して(「DAR(UV)」パラメータを計算させる。)のどちらかで測定する。吸光度は以下のように表すことができ:
【0228】
【数1】
式中:
c
Dおよびc
Aはそれぞれ、メイタンシノイドおよび抗体の溶液中での濃度であり、
ε
D252およびε
D280はそれぞれ、252nmおよび280nmにおけるメイタンシノイドのモル消衰係数であり、
ε
A252およびε
A280はそれぞれ、252nmおよび280nmにおける抗体のモル消衰係数である。
【0229】
2個の未知数を用いたこれらの2つの等式の解によって、以下の等式がもたらされる:
【0230】
【数2】
次に平均DARを、薬物濃度の抗体濃度に対する比から計算する:
【0231】
【数3】
UV分光光度計(spectrophometer)によって測定した平均DAR(DAR(UV))はさらに詳細には4より大、さらに詳細には4から10の間、なおさらに詳細には4から7の間、なおさらに詳細には5.5から8の間およびなおさらに詳細には5.9から7.5の間である。
【0232】
またさらなる好ましい実施形態において、本発明は、2H11R35R74抗体の、またはこれのヒト化型コンジュゲートおよび式(XVII)または(XVIII)のどちらかの化合物を備え、DARは4から7の間のメイタンシノイド分子/抗体分子で構成され、前記DARは、実質的に精製されたコンジュゲートの溶液の252nmおよび280nmにおける吸光度の比を分光光度的に測定することによって決定される。
【0233】
上の方法によって得ることができるコンジュゲートは、本発明の範囲内に含まれる。特定の態様において、このようなコンジュゲートは、Abが本発明の抗体であり、nが4から10の間で構成される式(XV)および式(XVI)の間で選ばれる構造を有する。好ましい実施形態において、nは4から7の間で構成される。別の好ましい実施形態において、前記コンジュゲートは、式(XV)の構造を有する。
【0234】
抗体のメイタンシノイド薬とのコンジュゲートは、インビトロでの各種の望ましくない株化細胞の増殖を抑制するこれの能力について評価することができる。例えばヒト類表皮癌系統A−431、ヒト小細胞肺癌株化細胞SW2、ヒト乳房腫瘍系統SKBR3およびバーキットリンパ腫株化細胞ナマルバなどの株化細胞は、これらの化合物の細胞傷害性の影響評価について容易に使用できる。評価される細胞は、化合物に24時間曝露させて、細胞の生存画分を公知の方法による直接アッセイで測定できる。次にIC
50値をアッセイの結果から計算することができる。
【0235】
トマイマイシン誘導体
本発明による細胞傷害性は、トマイマイシン誘導体でもあり得る。トマイマイシン誘導体は、DNAの副溝におけるグアニンのN2への共有結合によって、これの生物特性を及ぼす公知のクラスの化合物であるピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン(PBD)である。PBDは、アントラマイシン、ネオトラマイシンおよびDC−81などの幾つかの副溝結合剤を含む。
【0236】
高度の細胞傷害性を保持して、細胞結合剤に効果的に連結することができる新規トマイマイシン誘導体は、国際出願番号PCT/IB2007/000142に開示され、これの内容は参照により本明細書に組み入れられている。細胞結合剤−トマイマイシン誘導体複合体は、トマイマイシン誘導体の十分な細胞傷害性作用を標的化された方式で望ましくない細胞のみに対して適用されるようにし、ゆえに標的化されていない健常細胞に対する損傷による副作用を回避する。
【0237】
本発明による細胞傷害性剤は、2H11R35R74抗体などの細胞結合剤に連結基を介して連結された1個以上のトマイマイシン誘導体を備える。連結基は、トマイマイシン誘導体に在来の方法によって共有結合されている化学的部分の一部である。好ましい実施形態において、化学的部分は、ジスルフィド結合を介してトマイマイシン誘導体に共有結合することができる。
【0238】
本発明で有用なトマイマイシン誘導体は、下に示す式(XX)を有する:
【0240】
【化34】
は、任意の単結合を表し;
【0241】
【化35】
は、単結合または2重結合のどちらかを表し;
【0242】
【化36】
が単結合を表すとき、同じまたは異なるUおよびU’は独立してHを表し、同じまたは異なるWおよびW’は独立して、OH、−ORなどのエーテル、−OCORなどのエステル(例えばアセテート)、−OCOORなどのカーボネート、−OCONRR’などのカルバメート、N10およびC11が環の一部であるような環式カルバメート、−NRCONRR’などの尿素、−OCSNHRなどのチオカルバメート、N10およびC11が環の一部であるような環式チオカルバメート、−SH、−SRなどのスルフィド、−SORなどのスルホキシド、−SOORなどのスルホン、−SO3−などのスルホナート、−NRSOORなどのスルホンアミド、−NRR’などのアミン、場合によりN10およびC11が環の一部であるような環式アミン、−NROR’などのヒドロキシルアミン誘導体、−NRCORなどのアミド、−N3などのアジド、シアノ、ハロ、トリアルキルまたはトリアリールホスホニウム、アミノ酸誘導基から成る群より選択され;好ましくはWおよびW’は同じでありまたは異なり、OH、OMe、OEt、NHCONH
2、SMeであり;
ならびに
【0243】
【化37】
が2重結合を表すとき、UおよびU’は存在せず、WおよびW’はHを表し;
R1、R2、R1’、R2’は同じでありもしくは異なり、ハライドもしくは1個以上のHal、CN、NRR’、CF
3、OR、アリール、Het、S(O)
qRによって場合により置換されたアルキルから独立して選択され、またはR1およびR2ならびにR1’およびR2’は、基=Bおよび=B’をそれぞれ含有する2重結合を共に形成する。
【0244】
好ましくは、R1およびR2ならびにR1’およびR2’は、基=Bおよび=B’をそれぞれ含有する2重結合を共に形成する。
【0245】
BおよびB’は同じでありもしくは異なり、1個以上のHal、CN、NRR’、CF
3、OR、アリール、Het、S(O)
qRによって場合により置換されたアルケニルから独立して選ばれ、またはBおよびB’は酸素原子を表す。
【0247】
さらに好ましくはB=B’=、=CH
2または=CH−CH
3であり、
X、X’は同じでありまたは異なり、1個以上の−O−、−NR−、−(C=O)−、−S(O)
q−から独立して選ばれる。
【0249】
さらに好ましくはX=X’=0である。
【0250】
A、A’は同じでありまたは異なり、1個以上のHal、CN、NRR’、CF
3、OR、S(O)
qR、アリール、Het、アルキル、アルケニルによってそれぞれ場合により置換された、酸素、窒素または硫黄原子を場合により含有するアルキルまたはアルケニルから独立して選ばれる。
【0252】
さらに好ましくはA=A’=直鎖非置換アルキルである。
【0253】
Y、Y’は、同じでありまたは異なり、H、ORから独立して選ばれ;
好ましくはY=Y’である。
【0254】
さらに好ましくはY=Y’=Oアルキル、さらに好ましくはOメチルである。
【0255】
Tは、−NR−、−O−、−S(O)
q−、または1個以上のHal、CN、NRR’、CF
3、R、OR、S(O)
qRおよび/もしくはリンカーによってそれぞれ場合により置換された4から10員アリール、シクロアルキル、複素環式もしくはヘテロアリール、または1個以上のHal、CN、NRR’、CF
3、OR、S(O)
qRおよび/もしくはリンカーによって場合により置換された分枝アルキル、または1個以上のHal、CN、NRR’、CF
3、OR、S(O)
qRおよび/もしくはリンカーによって置換された直鎖アルキルである。
【0256】
Tは、好ましくは4から10員アリールまたはヘテロアリール、さらに1個以上のリンカーによって場合により置換された好ましくはフェニルまたはピリジルである。
【0257】
前記リンカーは連結基を備える。好適な連結基は当分野で周知であり、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチダーゼ不安定性基およびエステラーゼ不安定性基を含む。好ましいのはジスルフィド基およびチオエーテル基である。
【0258】
連結基がチオール、スルフィド(もしくはいわゆるチオエーテル−S−)またはジスルフィド(−S−S−)含有基であるとき、チオール、スルフィドまたはジスルフィド基を担持する側鎖は、直鎖または分枝、芳香族または複素環式であることができる。当業者は好適な側鎖をただちに確認することができる。
【0259】
好ましくは、前記リンカーは式:
−G−D−(Z)p−S−Z’
(式中
Gは、単結合または2重結合、−O−、−S−または−NR−であり;
Dは、単結合または−E−、−E−NR−、−E−NR−F−、−E−O−、−E−O−F−、−E−NR−CO−、−E−NR−CO−F−、−E−CO−、−CO−E−、−E−CO−F、−E−S−、−E−S−F−、−E−NR−C−S−、−E−NR−CS−F−であり;
ここでEおよびFは同じでありまたは異なり、直鎖または分枝−(OCH2CH2)iアルキル(OCH2CH2)j−、−アルキル(OCH2CH2)i−アルキル−、−(OCH2CH2)i−、−(OCH2CH2)iシクロアルキル(OCH2CH2)j−、−(OCH2CH2)i複素環式(OCH2CH2)j−、−(OCH2CH2)iアリール(OCH2CH2)j−、−(OCH2CH2)iヘテロアリール(OCH2CH2)j−、−アルキル−(OCH2CH2)iアルキル(OCH2CH2)j−、−アルキル−(OCH2CH2)i−、−アルキル−(OCH2CH2)iシクロアルキル(OCH2CH2)j−、−アルキル(OCH2CH2)i複素環式(OCH2CH2)j−、−アルキル−(OCH2CH2)iアリール(OCH2CH2)j−、−アルキル(OCH2CH2)iヘテロアリール(OCH2CH2)j−、−シクロアルキル−アルキル−、−アルキル−シクロアルキル−、−複素環式−アルキル−、−アルキル−複素環式−、−アルキル−アリール−、−アリール−アルキル−、−アルキル−ヘテロアリール−、−ヘテロアリール−アルキル−から独立して選ばれ;
ここで同じであるまたは異なるiおよびjは、整数であり、0、1から2000より独立して選ばれ;
Zは、直鎖または分枝−アルキル−であり;
pは0または1であり;
Z’は、H、COR、R20またはSR20などのチオール保護基を表し、ここでR20は、Z’がHであるとき、前記化合物がPBD部分の1つのイミン結合−NH=へのチオール基−SHの付加から生じる分子内環化によって形成された対応する化合物と平衡であるという条件で、H、メチル、アルキル、場合により置換されたシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたは複素環式を表す。
【0260】
等しいまたは異なるn、n’は、0または1である。
【0262】
R,R’は、等しいまたは異なり、Hal、CN、NRR’、CF3、R、OR、S(O)qR、アリール、Hetによってそれぞれ場合により置換されたH、アルキル、アリールから独立して選ばれる。);またはこれの医薬的に許容される塩、水和物、もしくは水和物塩、またはこれらの化合物の多形結晶構造もしくはこれらの光学異性体、ラセミ化合物、ジアステレオマーまたはエナンチオマーである。
【0263】
幾何および立体異性体を有する一般式(XX)の化合物も本発明の一部である。
【0264】
式(XX)のトマイマイシン誘導体のN−10、C−11の2重結合は、水、アルコール、チオール、1級または2級アミン、尿素および他の求核試薬の存在下で対応するイミン付加体に可逆的様式でただちに変換できることが公知である。本方法は可逆的であり、脱水剤の存在下、非プロトン性有機溶媒(solvant)中で真空中または高温にて、対応するトマイマイシン誘導体を容易に再生することができる(Z.Tozuka,1983,J.Antibiotics,36:276)。
【0265】
このため一般式(XXI)のトマイマイシン誘導体の可逆性誘導体も本発明で使用できる:
【0266】
【化38】
式中、A、X、Y、n、T、A’、X’、Y’、n’、R1、R2、R1’、R2’は式(XX)で定義した通りであり、W、W’は同じであるかまたは異なり、OH、−ORなどのエーテル、−OCOR、−COORなどのエステル(例えばアセテート)、−OCOORなどのカーボネート、−OCONRR’などのカルバメート、N10およびC11が環の一部であるような環式カルバメート、−NRCONRR’などの尿素、−OCSNHRなどのチオカルバメート、N10およびC11が環の一部であるような環式チオカルバメート、−SH、−SRなどのスルフィド、SORなどのスルホキシド、−SOORなどのスルホン、−SO3−などのスルホナート、−NRSOORなどのスルホンアミド、−NRR’などのアミン、場合によりN10およびC11が環の一部であるような環式アミン、−NROR’などのヒドロキシルアミン誘導体、−NRCORなどのアミド、−NRCONRR’、−N3などのアジド、シアノ、ハロ、トリアルキルまたはトリアリールホスホニウム、アミノ酸誘導基から成る群より選択される。好ましくはWおよびW’は、同じでありまたは異なり、OH、Ome、Oet、NHCONH2、SMeである。
【0267】
式(XXI)の化合物はこのため、溶媒が水であるときの水を含めて、溶媒和物と見なされ得る;これらの溶媒和物は特に有用であり得る。
【0268】
好ましい化合物は、式(XXII)または(XXIII)の化合物であり:
【0269】
【化39】
式中、X、X’、A、A’、Y、Y’、T、n、n’は、上で定義した通りである。
【0270】
式(XX)の化合物は、当業者に周知の幾つかの方法で調製され得る。化合物は例えば、後述の方法の適用もしくは改変、または当業者によって認識されるような方法に対する変形によって合成することができる。適切な修飾および置換は、当業者にはただちに明らかで周知となり、または科学文献からただちに入手でできる。特にこのような方法は、R.C.Larock,Comprehensive Organic Transformations,Wiley−VCH Publishers,1999に見出すことができる。
【0271】
本発明で使用され得るトマイマイシン誘導体を合成する方法は、国際出願番号PCT/IB2007/000142に記載されている。本発明の化合物は、多種多様の合成経路によって調製され得る。試薬および開始物質は市販されているか、または当業者に周知の技法によりただちに合成される(例えばWO00/12508、WO00/12507、W02005/040170、WO2005/085260、FR1516743、M.Mori et al.,1986,Tetrahedron,42:3793−3806を参照のこと。)。
【0272】
本発明のコンジュゲート分子は、いずれの技法を使用しても形成され得る。本発明のトマイマイシン誘導体は、抗体または他の細胞結合剤に、酸不安定性リンカーを介して、または光不安定性リンカーによって連結され得る。誘導体を、好適な配列を有するペプチドと縮合させ、続いて細胞結合剤に連結させて、ペプチダーゼ不安定性リンカーを産生することができる。コンジュゲートは1級ヒドロキシル基を含有するように調製することができ、1級ヒドロキシル基をアシル化して、次に細胞結合剤に連結させ、細胞内エステラーゼによって切断されて遊離誘導体を遊離できるコンジュゲートを産生することができる。好ましくは、誘導体は遊離または保護チオール基を含有するように合成され、次に1個以上のジスルフィドまたはチオール含有誘導体は、細胞結合剤にそれぞれジスルフィド結合またはチオールリンクを介してそれぞれ共有結合的に連結される。
【0273】
コンジュゲーションの多くの方法は、USP5,416,064およびUSP5,475,092で教示されている。トマイマイシン誘導体は遊離アミノ基を生じるように修飾され、次に抗体または他の細胞結合剤に酸不安定性リンカーまたは光不安定性リンカーを介して連結することができる。遊離アミノまたはカルボキシル基を備えたトマイマイシン誘導体は、ペプチドと縮合されて、続いて細胞結合剤に連結され、ペプチダーゼ不安定性リンカーを産生することができる。リンカー上に遊離ヒドロキシル基を備えたトマイマイシン誘導体はアシルされて、次に細胞結合剤に連結され、細胞内エステラーゼによって切断されて遊離薬を遊離できるコンジュゲートを産生することができる。最も好ましくは、トマイマイシン誘導体は遊離または保護チオール基を生成するように処理され、次にジスルフィドまたはチオール含有トマイマイシンダイマーは細胞結合剤にジスルフィド結合を介して連結される。
【0274】
好ましくは、モノクローナル抗体または細胞結合剤−トマイマイシン誘導体コンジュゲートは、トマイマイシン誘導体を送達することができる、上で議論したようなジスルフィド結合を介して接合されているコンジュゲートである。このような細胞結合コンジュゲートは、モノクローナル抗体をスクシンイミジルピリジル−ジチオプロピオナート(SPDP)によって修飾することなどの公知の方法によって調製される(Carlsson et al.,1978,Biochem.J.,173:723−737)。得られたチオピリジル基は次にチオール含有トマイマイシン誘導体を用いた処置によって置換されて、ジスルフィド連結コンジュゲートを産生する。またはアリールジチオトマイマイシン誘導体の場合、細胞結合コンジュゲートの形成は、トマイマイシン誘導体のアリールチオールの、抗体分子中に先に導入されたスルフヒドリル基による直接置換によって行われる。ジスルフィド架橋を介して連結された1から10個のトマイマイシン誘導体薬を含有するコンジュゲートは、どちらかの方法によってただちに調製される。
【0275】
さらに詳細には、2mM EDTAを含有する、pH7.5の0.05Mリン酸カリウム緩衝液による2.5mg/mlの濃度のジチオニトロピリジル修飾抗体の溶液を、チオール含有トマイマイシン誘導体(1.3モル当量/ジチオピリジル基)によって処置する。修飾抗体からのニトロピリジンチオンの放出は、分光光度的に325nmにて監視され、約16時間で完了する。抗体−トマイマイシン誘導体コンジュゲートは、未反応薬および他の低分子量材料から、Sephadex G−25またはSephacryl S300のカラムを通じてゲル濾過によって精製および遊離される。抗体分子1個当りに結合されたトマイマイシン誘導体部分の数は、230nmおよび275nmにおける吸光度の比を測定することによって決定できる。本方法により平均で1から10個のトマイマイシン誘導体分子/抗体分子を、ジスルフィド結合を介して連結することができる。
【0276】
抗原発現細胞への結合親和性に対するコンジュゲーションの効果は、Liu et al.,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,93:8618−8623によって先に記載された方法を使用して決定することができる。トマイマイシン誘導体およびこれの抗体コンジュゲートの株化細胞に対する細胞傷害性は、Goldmacher et al.,1985,J.Immunol.,135:3648−3651に記載されたような細胞増殖曲線の逆外挿によって測定することができる。これらの化合物の接着性株化細胞に対する細胞傷害性は、Goldmacher et al.,1986,J.Cell Biol.,102:1312−1319で記載されたようなクローン原性アッセイによって決定することができる。
【0277】
CC−1065類似体
本発明による細胞傷害性コンジュゲートで使用される細胞傷害性剤は、CC−1065またはこれの誘導体でもあり得る。
【0278】
CC−1065は、ストレプトミセス・ゼレンシス(Streptomyces zelensis)の培養ブロスから単離された強力な抗腫瘍抗生物質である。CC−1065は、普通に使用される抗癌薬、例えばドキソルビシン、メトトレキサートおよびビンクリスチンよりも、インビトロで約1000倍強力である(B.K.Bhuyan et al.,1982,Cancer Res.,42,3532−3537)。CC−1065およびこれの類似体は、米国特許第6,372,738号、第6,340,701号、第5,846,545号および第5,585,499号に開示されている。
【0279】
CC−1065の細胞傷害性効力は、これのアルキル化活性およびこれのDNA結合またはDNA挿入活性と相関してきた。これらの2つの活性は、分子の別個の部分に存在する。このためアルキル化活性はシクロプロパピロロインドール(CPI)サブユニットに含有され、DNA−結合活性は2個のピロロインドールサブユニットに存在する。
【0280】
CC−1065は細胞傷害性剤としてある魅力的な特徴を有するが、これは治療的使用での制限を有する。CC−1065のマウスへの投与により遅延肝毒性が引き起こされ、12.5μg/kgの単回静脈内投薬の後、第50日に死亡に至った(V.L.Reynolds et al.,1986,J.Antibiotics,XXIX:319−334).このことにより遅延毒性を生じない類似体を開発する取り組みが促進され、CC−1065でモデル化されたより単純な類似体の合成について記載されている(M.A.Warpehoski et al.,1988,J.Med.Chem.,31:590−603)。
【0281】
別の一連の類似体において、CPI部分はシクロプロパ[c]ベンズ[e]インドール(CBI)部分によって置換された(D.L.Boger et al.,1990,J.Org.Chem.,55:5823−5833;D.L.Boger et al.,1991,BioOrg.Med.Chem.Lett.,1:115−120)。これらの化合物は、マウスにおける遅延毒性を引き起こすことなく、親薬物の高いインビトロ効力を維持している。CC−1065と同様に、これらの化合物は、DNAの副溝に共有結合的様式で結合して細胞死を引き起こすアルキル化剤である。しかし、最も有望な類似体であるアドゼレシンおよびカルゼルシンの臨床評価は、期待はずれの結果に至っている(B.F.Foster et al.,1996,Investigational New Drugs,13:321−326;I.Wolff et al.,1996,Clin.Cancer Res.,2:1717−1723)。これらの薬物は、これの高い全身毒性のために、不十分な治療効果を提示する。
【0282】
CC−1065類似体の治療有効性は、腫瘍部位への標的化送達を通じてインビボ分布を変化させることによって大幅に改善することができ、非標的化組織へのより低い毒性、このためより低い全身毒性を生じる。本目標を達成するために、CC−1065の類似体および誘導体と腫瘍細胞を特異的に標的化する細胞結合剤とのコンジュゲートについて記載されている(米国特許5,475,092;5,585,499;5,846,545)。これらのコンジュゲートは通例、インビトロでの高い標的特異的な細胞傷害性およびマウスでのヒト腫瘍異種移植モデルにおける例外的な抗腫瘍活性を提示する(R.V.J.Chari et al.,1995,Cancer Res.,55:4079−4084)。
【0283】
最近、水性媒体での溶解度が向上したCC−1065類似体のプロドラッグについて記載されている(欧州特許出願番号06290379.4)。これらのプロドラッグでは、分子のアルキル化部のフェノール基は、薬物を酸性水溶液中での貯蔵時に安定にして、未保護類似体と比較して薬物に対する水溶解度の向上を付与する、官能基によって保護されている。保護基は、生理学的pHにおいてインビボでただちに切断されて、対応する活性薬を与える。EP06290379.4に記載されたプロドラッグでは、フェノール置換基は、生理学的pHにおいて電荷を所有するフェニルカルバメートを含有するスルホン酸として保護され、このため水溶解度が向上している。水溶解度をさらに向上させるために、任意のポリエチレングリコールスペーサを、インドリルサブユニットとジスルフィド基などの切断可能な連結との間にリンカーに導入することができる。本スペーサの導入は、薬物の効力を改変しない。
【0284】
本発明の細胞傷害性コンジュゲートにおいて使用され得るCC−1065類似体を合成する方法は、類似体を抗体などの細胞結合剤にコンジュゲートする方法と共に、EP06290379.4(この内容は参照により本明細書に組み入れられている。)ならびに米国特許第5,475,092号、第5,846,545号、第5,585,499号、第6,534,660号および第6,586,618号ならびに米国特許出願第10/116,053号および第10/265,452号に記載されている。
【0285】
他の薬物
メトトレキサート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メルファラン、レプトマイシン誘導体、マイトマイシンC、クロラムブシル、カリケアマイシン、チューブリシンおよびチューブリシン類似体、デュオカルマイシンおよびデュオカルマイシン類似体、ドラスタチンおよびアウリスタチンなどのドラスタチン類似体などの薬物も、本発明のコンジュゲートの調製に好適である。薬物分子は、血清アルブミンなどの中間担体分子を通じて抗体分子に連結することもできる。例えば米国特許第6,630,579号に記載されたドキソルビシンおよびダウノルビシン化合物も、有用な細胞傷害性剤であり得る。
【0286】
治療組成物
本発明は、治療的有効量の本発明の化合物および医薬的に許容される担体を備える、哺乳動物における過剰増殖障害の処置のための治療組成物にも関する。一実施形態において、前記医薬組成物は、(限定されるわけではないが)以下の:膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、子宮頸、甲状腺および皮膚の癌腫を含む;扁平上皮細胞癌腫を含む癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫を含む、リンパ系の造血器腫瘍;急性および慢性骨髄性白血病ならびに前骨髄球性白血病を含む、骨髄系の造血器腫瘍;線維肉腫および横紋筋肉腫を含む、間葉起源の腫瘍;黒色腫、精上皮腫、奇形癌(tetratocarcinoma)、神経芽細胞腫および神経膠腫を含む他の腫瘍;星状細胞腫,神経芽細胞腫,神経膠腫および神経鞘腫を含む、中枢および末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫(rhabdomyoscarama)および骨肉腫を含む、間葉起源の腫瘍;ならびに黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫(keratoactanthoma)、精上皮腫、甲状腺濾胞癌および奇形癌を含む他の腫瘍、ならびにEphA2が主に発現される未確認の他の癌を含む、癌の処置のためである。好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、肺、乳房、結腸、前立腺、腎臓、膵臓、卵巣、子宮頸およびリンパ器官の癌、骨肉腫、滑膜肉腫、肉腫、頭頸部、神経膠腫、胃癌、肝臓癌、またはEphA2が発現される他の癌腫の処置に使用される。特に癌は、転移性癌である。別の実施形態において、前記医薬組成物は、例えば全身性狼瘡、関節リウマチおよび多発性硬化症などの自己免疫疾患;腎移植拒絶、肝移植拒絶、肺移植拒絶、心移植拒絶および骨髄移植拒絶などの移植片拒絶;移植片対宿主疾患;mV感染、HIV感染、AIDSなどのウイルス感染症;ならびにランブル鞭毛虫症、アメーバ症、住血吸虫症などの寄生虫感染症などの他の疾患ならびに当業者によって決定された他の疾患に関する。
【0287】
本発明は、医薬組成物であって:
有効量の本発明の抗体、抗体フラグメントまたは抗体コンジュゲートおよび
不活性であり得るまたは生理学的に活性であり得る医薬的に許容される担体を備えた医薬組成物を提供する。
【0288】
本明細書で使用する場合、「医薬的に許容される担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、ならびに生理学的に適合性であるものを含む。好適な担体、希釈剤および/または賦形剤の例は、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1つ以上、ならびにこれらの組合せを含む。多くの場合、組成物中に糖、ポリアルコール、または塩化ナトリウムなどの等張性剤を含むことが好ましい。特に、好適な担体の関連する例は:(1)約1mg/mlから25mg/mlのヒト血清アルブミンを含有するまたは含有しないダルベッコリン酸緩衝食塩水、pH約7.4、(2)0.9%食塩水(0.9%w/v塩化ナトリウム(NaCl))および(3)5%(w/v)デキストロースを含み;ならびにトリプタミンなどの抗酸化剤およびツイン20などの安定化剤も含有し得る。
【0289】
本明細書の組成物は、処置されている特定の障害に必要であるような、さらなる治療剤も含有し得る。好ましくは、本発明の抗体、抗体フラグメントまたは抗体コンジュゲート、および補助活性化合物は、相互に悪影響を及ぼさない相補的活性を有する。好ましい実施形態において、さらなる治療剤は、線維芽細胞成長因子(FGF)、肝細胞成長因子(HGF)、組織因子(TF)、タンパク質C、タンパク質S、血小板由来成長因子(PDGF)、またはHER2受容体のアンタゴニストである。
【0290】
本発明の組成物は、多種多様の形であり得る。これらは例えば液体、半固体および固体剤形を含むが、好ましい形は投与および治療用途の意図した方式によって変わる。代表的な好ましい組成物は、注射用または輸液用液剤の形である。好ましい投与方式は、非経口(例えば静脈内、筋肉内、腹腔内(intraperinoneal)、皮下)である。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、ボーラスとしてまたは連続輸液によりある期間にわたって静脈内投与される。別の好ましい実施形態において、組成物は筋肉内、皮下、関節内、滑液嚢内、腫瘍内、腫瘍周囲、病巣内、または病変周囲経路によって、局所ならびに全身治療効果を及ぼす。これらは噴霧によっても投与することができる。
【0291】
非経口投与用の滅菌組成物は、本発明の抗体、抗体フラグメントまたは抗体コンジュゲートを要求される量で適切な溶媒に包含させて、続いての精密濾過による滅菌によって調製することができる。溶媒またはビヒクルとして、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにこれらの組合せが使用され得る。多くの場合、組成物中に糖、ポリアルコール、または塩化ナトリウムなどの等張性剤を含むことが好ましい。これらの組成物はアジュバント、特に湿潤剤、等張化剤、乳化剤、分散化剤および安定化剤も含有し得る。非経口投与用の滅菌組成物は、滅菌水または他のいずれかの注射用滅菌培地中での使用時に溶解され得る滅菌固体組成物の形でも調製され得る。
【0292】
用量は、期待される効果、処置期間および使用される投与経路によって変わる;用量は一般に成人1日当り5mgから1000mgの間であり、単位用量は活性成分1mgから250mgの範囲に及ぶ。概して、医師は、処置される対象に固有である年齢、体重および他のいずれかの因子に応じて適切な用量を決定する。
【0293】
治療的使用方法
別の実施形態において,本発明は、EphA2受容体活性を阻害する方法であって、前記EphA2受容体と拮抗する抗体を、これが必要な患者に投与することによる方法を提供する。本発明のいずれの種類の抗体、抗体フラグメント、または細胞傷害性コンジュゲートも治療的に使用され得る。本発明はこのため、アンタゴニスト抗EphA2抗体、これのフラグメント、またはこれの細胞傷害性コンジュゲートの医薬品としての使用を含む。好ましい実施形態において、アンタゴニスト抗EphA2抗体は、2H11R35R74抗体またはこれのヒト化バリアントである。
【0294】
好ましい実施形態において、本発明の抗体、抗体フラグメント、または細胞傷害性コンジュゲートは、哺乳動物の過剰増殖障害の処置に使用される。さらに好ましい実施形態において、上で開示した本発明の抗体、抗体フラグメント、または細胞傷害性コンジュゲートを含有する医薬組成物の1つは、哺乳動物の過剰増殖障害の処置に使用される。本発明の抗体、抗体フラグメントおよび細胞傷害性コンジュゲートが哺乳動物の前記過剰増殖障害を処置する医薬品を作製するためにも使用できることも、本発明の実施形態である。一実施形態において、障害は癌である。特に癌は、転移性癌である。本発明の抗体、抗体フラグメントおよび細胞傷害性コンジュゲートは、前記癌腫瘍の新生血管形成を処置するためにも使用できる。
【0295】
従って、本発明の医薬組成物は、(これらに限定されるわけではないが)以下の:膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、子宮頸、甲状腺および皮膚の癌腫を含む;扁平上皮細胞癌腫を含む癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫を含む、リンパ系の造血器腫瘍;急性および慢性骨髄性白血病ならびに前骨髄球性白血病を含む、骨髄系の造血器腫瘍;線維肉腫および横紋筋肉腫を含む、間葉起源の腫瘍;黒色腫、精上皮腫、奇形癌(tetratocarcinoma)、神経芽細胞腫および神経膠腫を含む他の腫瘍;神経芽細胞腫および神経膠腫を含む他の腫瘍;星状細胞腫,神経芽細胞腫,神経膠腫および神経鞘腫を含む、中枢および末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫(rhabdomyoscarama)および骨肉腫を含む、間葉起源の腫瘍;ならびに黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫(keratoactanthoma)、精上皮腫、甲状腺濾胞癌および奇形癌を含む他の腫瘍、ならびにEphA2が主に発現される未確認の他の癌を含む、多種多様の癌の処置または予防に有用である。好ましい実施形態において、癌は肺、乳房、結腸、前立腺、腎臓、膵臓、子宮、卵巣、子宮頸およびリンパ器官の癌、骨肉腫、滑膜肉腫、肉腫、頭頸部、神経膠腫、胃癌、肝臓癌またはEphA2が発現される他の癌腫である。別の実施形態において、前記医薬組成物は、例えば全身性狼瘡、関節リウマチおよび多発性硬化症などの自己免疫疾患;腎移植拒絶、肝移植拒絶、肺移植拒絶、心移植拒絶および骨髄移植拒絶などの移植片拒絶;移植片対宿主疾患;mV感染、HIV感染、AIDSなどのウイルス感染症;ならびにランブル鞭毛虫症、アメーバ症、住血吸虫症などの寄生虫感染症などの他の疾患ならびに当業者によって決定された他の疾患に関する。
【0296】
同様に本発明は、標的細胞、または標的細胞を含有する組織を、単独で、または他の細胞傷害性剤もしくは治療剤との組合せのどちらかで有効量の本発明の抗体、抗体フラグメントまたは抗体コンジュゲートの、または細胞傷害性コンジュゲートを備えた抗体、抗体フラグメントもしくは治療剤と接触させることを備えた選択された細胞集団の成長を阻害する方法を提供する。
【0297】
選択された細胞集団の成長を阻害する方法は、インビトロ、インビボ、またはエクスビボで実施することができる。本明細書で使用する場合、「成長を阻害すること」は、長期にわたる、または短期にわたるかにかかわらず、細胞の成長を低速化すること、細胞生存度を低下させること、細胞の死を引き起こすこと、細胞を溶解させることおよび細胞死を誘発することを意味する。
【0298】
インビトロ使用の例は、自家骨髄の、同じ患者へのこれの移植前の、疾患または悪性細胞を死滅させるための処置;骨髄のこれの移植前の、コンピテントT細胞を死滅させて、移植片対宿主病(GVHD)を予防するための処置;標的抗原を発現しない所望のバリアントを除くすべての細胞を死滅させるための;または所望でない抗原を発現するバリアントを死滅させるための、細胞培養物の処置を含む。
【0299】
非臨床的インビトロ使用の条件は、当業者によってただちに決定される。
【0300】
臨床的エクスビボ使用の例は、癌処置におけるもしくは自己免疫疾患の処置における自家移植の前に骨髄から腫瘍細胞もしくはリンパ系細胞を除去すること、または移植片対宿主病(GVHD)を予防するために移植前に自家もしくは同種異系骨髄または組織からT細胞および他のリンパ系細胞を除去することである。処置は以下のように行うことができる。骨髄は、患者または他の個体から収集され、次に本発明の細胞傷害性剤が添加される血清を含有する培地中でインキュベートされる。濃度は、約30分から約48時間にわたって約37℃にて、約10μMから1pMの範囲に及ぶ。インキュベーションの濃度および時間の正確な条件、即ち用量は、当業者によってただちに決定される。インキュベーション後、骨髄細胞は公知の方法に従って、血清を含有する培地で洗浄され、静脈内注入によって患者に戻される。骨髄の収集の時間と処置細胞の再注入との間に、患者が除去化学療法または全身照射のコースなどの他の処置を受ける状況では、処置された骨髄細胞は、標準医療装置を使用して液体窒素中で凍結貯蔵される。
【0301】
臨床的インビボ使用では、本発明の抗体、エピトープ結合抗体フラグメント、または細胞傷害性コンジュゲートは、滅菌および内毒素レベルについて試験される液剤として供給される。細胞傷害性コンジュゲート投与の好適なプロトコルの例は、次の通りである。コンジュゲートは、週ごとに静脈内ボーラスとして、4週間にわたって毎週投与される。ボーラス用量は、ヒト血清アルブミン5から10mlを添加できる生理食塩水50から100mlで与えられる。投薬量は、静脈内投与当り10μgから100mg(1日当り100ngから1mg/kgの範囲)である。さらに好ましくは、投薬量は50μgから30mgの範囲に及ぶ。最も好ましくは、投薬量は1mgから20mgの範囲に及ぶ。
【0302】
4週間の処置後、患者は引き続き週ごとに処置を受けることができる。投与経路、賦形剤、希釈剤、投薬量、時間などに関する詳細な臨床プロトコルは、臨床状況によって当業者が決定することができる。
【0303】
診断
本発明の抗体または抗体フラグメントを使用して、インビトロまたはインビボで生体試料中のEphA2を検出することもできる。一実施形態において、本発明の抗EphA2抗体を使用して、組織中または組織に由来する細胞中のEphA2のレベルを決定する。好ましい実施形態において、組織は罹患組織である。方法の好ましい実施形態において、組織は腫瘍またはこれの生検である。方法の好ましい実施形態において、組織またはこれの生検は最初に患者から切除され、次に組織または生検中のEphA2のレベルを本発明の抗体または抗体フラグメントを用いたイムノアッセイで決定することができる。組織またはこれの生検は、凍結または固定することができる。同じ方法を使用して、EphA2タンパク質の他の特性、例えばチロシンリン酸化のこれのレベル、細胞表面レベル、または細胞局在化を決定することができる。
【0304】
上記の方法を使用して、癌を有することが公知のまたは癌を有することが疑われる対象において癌を診断することができ、ここでは前記患者にて測定されたEphA2のレベルを正常な参照対象または標準のレベルと比較する。前記方法を使用して次に、腫瘍がEphA2を発現するかを決定することができ、このことは本発明の抗体、抗体フラグメントまたは抗体コンジュゲートによる処置に十分に応答することを示唆し得る。好ましくは、腫瘍は肺、乳房、結腸、前立腺、腎臓、膵臓、子宮、卵巣、子宮頸およびリンパ器官の癌、骨肉腫、滑膜肉腫、肉腫、神経膠腫、胃癌、肝臓癌、頭頸部またはEphA2が発現される他の癌腫およびEphA2が主に発現される未確認の他の癌である。
【0305】
本発明は、研究または診断用途での使用のためにさらに標識されるモノクローナル抗体、ヒト化抗体およびこれらのエピトープ結合フラグメントをさらに提供する。好ましい実施形態において、標識は放射性標識、フルオロフォア、発色団、造影剤または金属イオンである。
【0306】
前記標識抗体またはこれのエピトープ結合フラグメントが癌を有することが疑われる対象に投与され、対象体内での標識の分布が測定または監視される診断方法も提供される。
【0307】
キット
本発明は、特定の細胞種を死滅させるための、記載した細胞傷害性コンジュゲートおよび細胞傷害性コンジュゲートの使用説明書を備えるキットも含む。説明書は、インビトロ、インビボまたはエクスビボで細胞傷害性コンジュゲートを使用するための指示も含み得る。
【0308】
通例、キットは細胞傷害性コンジュゲートを含有するコンパートメントを有する。細胞傷害性コンジュゲートは凍結乾燥形、液体形、またはキットに含まれるように修正できる他の形であり得る。キットは、キット中の説明書に記載された方法を実施するのに必要な追加の要素、例えば凍結乾燥粉末を再構成するための滅菌溶液、患者に投与する前に細胞傷害性コンジュゲートと組合せるための追加の薬剤および患者へのコンジュゲートの投与を補助するツールも含有し得る。
【0309】
本発明は:
a)包装材料
b)抗体またはこれのエピトープ結合フラグメントまたはコンジュゲートおよび
c)前記抗体またはこれのエピトープ結合フラグメントが癌を処置するのに有効であることを指摘する、前記包装材料内に含有されたラベルまたは添付文書
を備えた製品にも関する。
【実施例】
【0310】
[実施例1]
コンジュゲートの調製
2H11R35R74のDM4へのコンジュゲーション
一般合成スキーム
【0311】
実施例1a:hu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4
【0312】
【化40】
【0313】
実施例1b:hu2H11R35R74−PEG4−Mal−DM4
【0314】
【化41】
【0315】
方法A:高圧液体クロマトグラフィー−質量分析(LCMS)
スペクトルは、Waters UPLC−SQDシステムにて正および/または負エレクトロスプレーモード(ES+/−)で得られている。クロマトグラフィー条件は以下の通りである:カラム:ACQUITY BEH C18、1.7μm−2.1×30mm;溶媒:A:H
2O(0.1%ギ酸)B:CH
3CN(0.1%ギ酸);カラム温度:45℃;流速:0.6ml/分;勾配(2分):1分:5から50%のB;1.3分:100%のB;1.45分:100%のB;1.75分:5%のB。
【0316】
方法B:高圧液体クロマトグラフィー−質量分析(LCMS)
スペクトルは、Waters ZQシステムにて正および/または負エレクトロスプレーモード(ES+/−)で得られている。クロマトグラフィー条件は以下の通りである:カラム:XBridge C18 2.5μm 3×50mm;溶媒:A:H
2O(0.1%ギ酸)B:CH
3CN(0.1%ギ酸;カラム温度:70℃;流速:0.9ml/分;勾配(7分):5.3分で5から100%のB;5.5分:100%のB;6.3分:5%のB。
【0317】
方法C:イムノコンジュゲートの脱グリコシル化および高分解能質量分析(HRMS)
脱グリコシル化は、グリコシダーゼによる酵素消化の技法である。脱グリコシル化は、コンジュゲート(conjugated)500μl+トリス緩衝液HCl 50mM 100μl+グリカナーゼ−F酵素10μl(100単位のフリーズドライ酵素/水100μl)から作製される。培地をボルテックス処理して、37℃にて一晩維持する。ここで脱グリコシル化試料は、HRMSでの分析の準備が整っている。質量スペクトルは、Waters Q−Tof−2システムにてエレクトロスプレー正モード(ES+)で得た。クロマトグラフィー条件は以下の通りである:カラム:4μm BioSuite 250 URH SEC 4.6×300mm(Waters);溶媒:A:ギ酸アンモニウム25mM+1%ギ酸:B:CH
3CN;カラム温度:30℃;流速0.4ml/分;定組成溶離70%A+30%B(15分)。
【0318】
方法D:分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
>カラム:TSKgel G3000 SWXL 5μmカラム、7.8mm×30cm、TOSOH BIOSCIENCE,LLC部品#:08541
>移動相:KCl(0.2M)、KH
2PO
4(0.052M)K
2HPO
4(0.107M)、iPrOH(体積で20%)
>分析条件:0.5ml/分にて30分間の定組成溶離
【0319】
方法E:質量分析(MS)
スペクトルは、システムのWATERS GCT(LCなしの直接導入)にて化学イオン化(反応ガス:アンモニア性)によって得られている。
【0320】
方法F:高圧液体クロマトグラフィー−質量分析(LCMS)
スペクトルは、Waters UPLC−SQDシステムにて正および/または負エレクトロスプレーモード(ES+/−)で得られている。クロマトグラフィー条件は以下の通りである:カラム:ACQUITY BEH C18 1.7μm−2.1×50mm;溶媒:A:H
2O(0.1%ギ酸)B:CH
3CN(0.1%ギ酸);カラム温度:50℃;流速:1ml/分;勾配(2分):0.8分で5から50%のB;1.2分:100%のB;1.85分:100%のB;1.95:5%のB。
【0321】
省略形:
AcOEt:酢酸エチル;ALK:(C
1−C
12)アルキレン基、特に(C
1−C
6)アルキレン;DAR:薬物抗体比;DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン;DCC:N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド;DCM:ジクロロメタン;DEAD:ジエチルアゾジカルボキシラート;DIC:N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド;DIPEA:N,N−ジイソプロピルエチルアミン;DMA:ジメチルアセトアミド;DMAP:4−ジメチルアミノピリジン;DME:ジメトキシエタン;DMF:ジメチルホルムアミド;DMSO:ジメチルスルホキシド;ε:モル消衰係数;EEDQ:2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン;EDCI:N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド;EDTA:エチレンジアミンテトラ酢酸;Fmoc:フルオレニルメトキシカルボニル;Hal:ハロゲン原子;HOBt:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール;HEPES:4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジン−エタンスルホン酸;NHS:N−ヒドロキシスクシンイミド;iPrOH:イソプロピルアルコール(alcool);NMP:N−メチルピロリジノン;Rf:保持因子;RP:減圧;RT:室温;SEC:サイズ排除クロマトグラフィー;TBDMS:tert−ブチルジメチルシリル;TEA:トリエチルアミン;TFA:トリフルオロ酢酸;TFAA:無水トリフルオロ酢酸;TFF:接線流濾過;THF:テトラヒドロフラン;TIPS:トリイソプロピルシリル;TLC:薄層クロマトグラフィー;t
R:保持時間。
【0322】
緩衝液含有物:
>緩衝液A(pH6.5):NaCl(50mM)、KPi(50mM)、EDTA(2mM)
>緩衝液HGS(pH5.5):ヒスチジン(10mM)、グリシン(130mM)、スクロース5%(w/v)、HCI(8mM)
【0323】
AbおよびL−DM4濃度計算のパラメータ(計算方法についての参考文献:Therapeutic Antibodies and Protocols,vol 525,445):
>抗体の平均分子量を160000と仮定した、hu2H11R35R74(280nMにて224000;252nMにて82880)およびL−DM4(280nMにて5180;252nMにて26159)のモル消衰係数。
【0324】
実施例1a
1a.1. PEG4−アセトアミドと連結されたコンジュゲートの調製:
【0325】
【化42】
【0326】
室温にて磁気撹拌しながら、hu2H11R35R74 9ml(14.36mg/緩衝液A 1ml)、次に緩衝液A 16.85ml、HEPES 1M 3.23ml、DMA 1.59ml、続いてL−DM4−AcNH−PEG4−CONHS活性化エステルの10mM DMA溶液1.64mlを添加する。室温にて1時間30分後、L−DM4−AcNH−PEG4−CONHS活性化エステルの10mM DMA溶液0.085mlをさらに添加する。室温にて1時間45分後、粗コンジュゲーション培地をHGS緩衝液60mlで希釈して、TFFによりPellicon 3カセットで精製する。試料を、試料の体積の約10倍のHGS緩衝液でダイアフィルトレーションして、次に収集する。TFFタンクおよびラインをさらに添加のHGS緩衝液10mlで洗浄する。2つの溶液を混合して、PVDF 0.22μmでフィルタ滅菌し、Amicon 15で濃縮して、PVDF 0.22μmでフィルタ滅菌する。このためhu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4イムノコンジュゲート17ml(c=5.76mg/ml)が得られた。次にイムノコンジュゲートを最終薬物負荷およびモノマー純度について分析する。
【0327】
SEC分析(方法D):DAR(SEC)=5.4;RT=16.757;モノマー純度=99.5%
HRMSデータ(方法C):図2を参照のこと。
【0328】
1a.2.L−DM4−AcNH−PEG4−CONHS活性化エステルの調製:
【0329】
【化43】
【0330】
室温にて磁気撹拌しながら、L−DM4 154.3mgをガラスバイアルに導入する。次に3−[2−(2−{2−[2−(2−ブロモ−アセチルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−プロピオン酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル90mgのDMA 0.94mlによる溶液を、続いてDIEA 36μlを添加する。室温にて23時間時間後、反応媒体をAcOEt 5mlで希釈して、水7mlで洗浄する。水相をAcOEt 5mlで抽出する。合せた有機相を硫酸マグネシウムで脱水して、減圧下で濃縮乾固する。薄黄色粘性油228mgを得て、この生成物を最小量のDMAで希釈して、フラッシュクロマトグラフィーによりC18−グラフトシリカゲル30gで精製する(溶離勾配 水:アセトニトリル 体積で95:5から5:95)。減圧下での画分2および3の濃縮後、無色粘性油を得て、この生成物を最小量のDMAで希釈して、フラッシュクロマトグラフィーによりC18−グラフトシリカゲル30gで精製する(溶離勾配 水:アセトニトリル 体積で95:5から5:95)。減圧下での画分33から35の濃縮後、L−DM4−AcNH−PEG4−CONHS活性化エステル41mgが白色メレンゲ様生成物の形で得られ、これの特徴は次の通りである:
質量スペクトル:方法B
保持時間(分)=4.06
[M+H−H2O]+:m/z 1164;[M+H]+:m/z 1182;
[M−H+HCO2H]−:m/z 1226
【0331】
NMR分析 1H(500MHz,ppmでのδ,クロロホルム−d):0,80(s,3H);1,21(s,3H);1,22(s,3H);1,25(m,1H);1,29(d,J=6,7Hz,6H);1,46(m,1H);1,57(d,J=13,4Hz,1H);1,64(s,3H);1,76 to 1,83(m,1H);1,88 to 1,96(m,1H);2,18(dd,J=2,5 et 14,3Hz,1H);2,36(m,1H);2,53(m,1H);2,61(dd,J=12,5 et 14,3Hz,1H);2,82 to 2,92(m,10H);2,98(d,J=16,7Hz,1H);3,03(d,J=9,6Hz,1H);3,15(d,J=12,9Hz,1H);3,22(s,3H);3,32(s large,1H);3,36(s,3H);3,42(m,2H);3,50(d,J=9,1Hz,1H);3,53(t,J=5,2Hz,2H);3,58 to 3,67(m,13H);3,84(t,J=6,4Hz,2H);3,99(s,3H);4,27(m,1H);4,77(dd,J=2,9 et 1 1,9Hz,1H);5,42(q,J=6,7Hz,1H);5,66(dd,J=9,1 et 15,4Hz,1H);6,23(s,1H);6,43(dd,J=11,3 et 15,4Hz,1H);6,64(d,J=1,1Hz,1H);6,74(d,J=11,3Hz,1H);6,85(d,J=1,1Hz,1H);7,08(t,J=5,2Hz,1H).
【0332】
1a.3.3−[2−(2−{2−[2−(2−ブロモ−アセチルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−プロピオン酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステルの調製:
【0333】
【化44】
【0334】
室温にて磁気撹拌しながら、3−(2−{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−プロピオン酸(CA(PEG)4,Pierce)671.4mgをガラスバイアルに導入する。ブロモ酢酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル597.4mgのジクロロメタン14mlによる溶液を次に添加する。室温にて15分後、DIC(N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド)0.396mlを添加する。1時間30分後、粗反応媒体を焼結ガラスで濾過して、濾液をフラッシュクロマトグラフィーによりCN−グラフトシリカゲル100gで精製する(溶離勾配 iPrOH部を増加させながらn.ヘプタン/iPrOH/AcOEt)。減圧下での画分30から45の濃縮後、3−[2−(2−{2−[2−(2−ブロモ−アセチルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−プロピオン酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル761mgが無色油の形で得られ、これの特徴は次の通りである:
質量スペクトル:方法A
保持時間(分)=0.74
[M+H]+:m/z 483/485
[M−H+HCO2H]−:m/z 527/529
ブロモ酢酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステルは、公開されたプロトコルに従って調製できる(Biochemistry,1974,481)。
【0335】
[
実施例1b]
1b.1. PEG4−Malと連結されたコンジュゲートの調製:
【0336】
【化45】
【0337】
室温にて磁気撹拌しながらhu2H11R35R74 4ml(14.36mg/緩衝液A 1ml)、次に緩衝液A 7.5ml、HEPES 1M 1.45ml、DMA 1.15ml、続いてL−DM4−Mal−PEG4−CONHS活性化エステルの10mM DMA溶液0.305mlを添加する。室温にて7時間後、粗コンジュゲーション培地をHGS緩衝液70mlで希釈して、TFFによりPellicon 3カセットで精製する。試料を、試料の体積の約10倍のHGS緩衝液でダイアフィルトレーションして、次に収集する。TFFタンクおよびラインをさらに添加のHGS緩衝液10mlで洗浄する。2つの溶液を混合して、Amicon 15で濃縮し、PVDF 0.22μmでフィルタ滅菌する。このためhu2H11R35R74−PEG4−Mal−DM4イムノコンジュゲート8.0ml(c=5.09mg/ml)が得られた。次にイムノコンジュゲートを最終薬物負荷およびモノマー純度について分析する。
【0338】
SEC分析(方法D):DAR(SEC)=5.3;RT=16.680;モノマー純度=99.5%
HRMSデータ(方法C):図3を参照
【0339】
1b.2. L−DM4−Mal−PEG4−CONHS活性化エステルの調製:
【0340】
【化46】
【0341】
室温にて磁気撹拌しながら、L−DM4 50mg、担持DIEA 17.2mg(3.72mmol/g)および3−{2−[2−(2−{2−[3−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−ピロール−1−イル)−プロピオニルアミノ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−プロピオン酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル36.2mg(市販、SM(PEG)4,Pierce)のDMA 360μlによる溶液を連続して添加する。室温にて1時間30分後、反応媒体を濾過して、固体をAcOEtで洗浄し、合せた濾液をフラッシュクロマトグラフィーによりCNグラフトシリカゲル14gで直接精製する(溶離勾配 iPrOHの寄与を上昇させながら、ヘプタン:AcOEt:iPrOH)。予想生成物を含有する画分の減圧下での濃縮後、L−DM4−Mal−PEG4−CONHS活性化エステル29.8mgが無色ガラスの形で得られ、これの特徴は次の通りである:
質量スペクトル:方法A
保持時間(分)=1.24/1.25(2ジアステレオマー)
[M+H]+:m/z 1293
[M−H+HCO2H]−:m/z 1337
【0342】
実施例1c:SPDBと連結されたコンジュゲートの調製:
【0343】
【化47】
【0344】
他のhu2H11抗体を用いたWO2008010101A9で前述されたのと同じプロトコルを使用して、ヒト化2H11R35R74抗体をL−DM4 N2’デアセチル−N2’(4−メチル−4−メルカプト−1−オキソペンチル)−メイタンシンにSPDB(4−[2−ピリジルジチオ]ブタン酸N−ヒドロキシスクシンイミド(hydroxsuccinimde)エステル)リンカーを使用してコンジュゲートした。簡潔には、抗体を8mg/mLにて、hu2H11およびhu37.3D7それぞれに対して5.5または6.5倍モル過剰のSPDBを用いて修飾した。反応を室温で90分間にわたって、EtOH(5%v/v)を有する緩衝液A(50mM KPi/50mM NaCl/2mM EDTA、pH6.5、95%v/v)中で行った。次に修飾抗体をSephadexG25脱塩カラムにより緩衝液Aで精製した。次に修飾抗体をSPDBリンカー上で1.7倍モル過剰のDM4と反応させた。反応を室温で20時間にわたって、2.5mg/mL抗体にて緩衝液A(97%v/v)およびDMA(ジメチルアセトアミド、3%v/v)中で行った。コンジュゲートをSephadexG25脱塩カラムにより10mMヒスチジン、130mMグリシン、5%スクロース、pH5.5で精製した。薬物対抗体比はhu37.3D7−SPDB−DM4では4.0、hu2H11−SPDB−DM4では3.1であった。
【0345】
実施例1d:コンジュゲートhu2H11R35R74−PEG4−NMeAc−DM4の調製
【0346】
【化48】
【0347】
1d.1
コンジュゲートhu2H11R35R74−PEG4−NMeAc−DM4の調製
RTにて磁気撹拌しながら、hu2H11R35R74 4ml(14.36mg/緩衝液A 1ml)、次に緩衝液A 7.5ml、HEPES 1M 1.45ml、DMA 1.05ml、続いてL−DM4−AcNMe−PEG4−CONHS活性化エステルの10mM DMA溶液0.39mlを添加する。RTにて30分後、L−DM4−AcNMe−PEG4−CONHS活性化エステルの10mM DMA溶液0.19mlをさらに添加する。RTにて3時間後、粗コンジュゲーション培地をHGS緩衝液65mlで希釈して、TFFによりPellicon 3カセットで精製する。試料を、試料の体積の約10倍のHGS緩衝液でダイアフィルトレーションして、次に収集する。TFFタンクおよびラインをさらに添加のHGS緩衝液10mlで洗浄する。2つの溶液を混合して、Amicon 15で濃縮し、PVDF 0.22μmでフィルタ滅菌する。このためhu2H11R35R74−PEG4−NMeAc−DM4コンジュゲート8.5ml(c=6.01mg/ml)を得た。次にコンジュゲートを最終薬物負荷およびモノマー純度について分析する。
【0348】
SEC分析(D):DAR(SEC)=5.5;RT=16.7分;モノマー純度=99.4%;
HRMSデータ:図14を参照のこと。
【0349】
1d.2
L−DM4−AcNMe−PEG4−CONHS活性化エステルの調製
RTにて磁気撹拌しながら、L−DM4 133.4mgをガラスバイアルに導入する。次に3−{2−[2−(2−{2−[(2−ブロモ−アセチル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−プロピオン酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル85mgのDMA 0.2mlによる溶液を、続いてDIEA 32.9μlを添加する。RTにて1時間後、反応媒体をフラッシュクロマトグラフィーによりC18−グラフトシリカゲル30gで精製する(溶離勾配 水:アセトニトリル 体積で95:5から5:95)。RPでの所望の生成物を含有する画分の濃縮後、L−DM4−AcNMe−PEG4−CONHS活性化エステル71.3mgが無色ガラス様生成物の形で得られた。
質量スペクトル(D):RT=0.98分;[M+H−H
2O]+:m/z 1178(主シグナル);[M+Na]+:m/z 1218;[M−H+HCO
2H]−:m/z 1240;
1H NMR(500MHz,ppmでのδ,クロロホルム−d):0,81(s,3H);1,20 to 1,33(m,13H);1,42 to 1,52(m,1H);1,56 to 1,61(m,1H);1,65(s,3H);1,73 to 1,83(m,1H);1,96 to 2,04(m,1H);2,19(dd,J=2,8 and 14,4Hz,1H);2,29 to 2,41(m,1H);2,55 to 2,66(m,2H);2,83 to 2,93(m,12H);3,04(d,J=9,8Hz,1H);3,12(d,J=12,7Hz,1H);3,18 to 3,25(m,5H);3,37(s,3H);3,47 to 3,54(m,3H);3,57 to 3,68(m,15H);3,85(t,J=6,6Hz,2H);3,99(s,3H);4,29(m,1H);4,79(dd,J=2,8 and 12,2Hz,1H);5,41(q,J=6,7Hz,1H);5,68(dd,J=9,3 et 15,2Hz,1H);6,23(s,1H);6,43(dd,J=11,0 and 15,2Hz,1H);6,66(s,1H);6,74(d,J=11,0Hz,1H);6,83(s,1H).
【0350】
1d.3
3−{2−[2−(2−{2−[(2−ブロモ−アセチル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−プロピオン酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステルの調製
【0351】
【化49】
【0352】
丸底フラスコ中でRTにて磁気撹拌しながら、3−(2−{2−[2−(2−メチルアミノ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−プロピオン酸115.1mg、DCM 1.5ml、ブロモ−酢酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル97.3mgを連続して導入する。2時間後、DIEA 72μlを添加して、さらにRTにて1時間後、DIC 70.2μlを添加する。粗反応媒体をRTにて4時間、−20℃にて16時間維持して、次にフラッシュクロマトグラフィーによりシリカゲル30gで精製する(溶離勾配 DCM:メタノール 体積で0:100から3:97)。RPでの所望の生成物を含有する画分の濃縮後、3−{2−[2−(2−{2−[(2−ブロモ−アセチル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−プロピオン酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル85.8mgが白色固体の形で得られた。
質量スペクトル(A):RT=0.84分;[M+H]+:m/z 497/499
【0353】
1d.4
3−(2−{2−[2−(2−メチルアミノ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−プロピオン酸の調製
【0354】
【化50】
【0355】
丸底フラスコ中のアルゴンの不活性雰囲気下にて磁気撹拌しながら、3−[2−(2−{2−[2−(2,2,2−トリフルオロ−アセチルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−プロピオン酸メチルエステル120.1mg、無水THF 1mlおよびCH
3I 59.8μlを連続して導入する。反応媒体を約0℃の氷/水浴で冷却して、NaH 16.1mg(油中50%純度)を少量ずつゆっくり添加する。0℃にて15分およびRTにて1時間後、粗反応媒体をRPにて濃縮乾固させて、THF 0.5mlおよび水0.8mlで希釈する。次に、RTにてLiOH 30.6mgを反応媒体に添加する。粗反応媒体をRTにて2時間、−20℃にて16時間維持して、次にフラッシュクロマトグラフィーによりC18−グラフトシリカゲル30gで精製する(溶離勾配 水:アセトニトリル 体積で95:5から5:95)。RPにて所望の生成物を含有する画分の濃縮後、3−(2−{2−[2−(2−メチルアミノ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−プロピオン酸115.3mgが黄色油の形で得られる。
【0356】
1d.5 3−[2−(2−{2−[2−(2.2.2−トリフルオロ−アセチルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−プロピオン酸メチルエステルの調製
【0357】
【化51】
【0358】
丸底フラスコ中のアルゴンの不活性雰囲気下にて磁気撹拌しながら、3−(2−{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−プロピオン酸230mg(CA(PEG)4,Pierce)、DCM 2mlおよびメタノール1mlを連続して導入する。RTにて、トリメチルシリルジアゾメタン1ml(ヘキサン中2M溶液)を反応媒体にゆっくり添加する。RTにて2時間後、過剰のトリメチルシリルジアゾメタンを酢酸の添加により中和する。次に粗反応媒体をRPにて蒸発乾固させる。得られた残渣をDCM 2mlで希釈して、水氷浴で0℃まで冷却し、次にTEA 363μlおよびTFAA 300μlを続けて添加する。RTにて2時間30分および−20℃にて19時間の後、TEA 363μlおよびTFAA 300μlを続けて添加する。RTにて4時間30分後、粗媒体を−20℃にて貯蔵して、次にフラッシュクロマトグラフィーによりC18−グラフトシリカゲル30gで精製する(溶離勾配 水:アセトニトリル 体積で95:5から5:95)。RPでの所望の生成物を含有する画分の濃縮後、3−[2−(2−{2−[2−(2,2,2−トリフルオロ−アセチルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−プロピオン酸メチルエステル123mgが薄黄色油の形で得られる。
質量スペクトル(A):RT=0.90分;[M+H]+:m/z 376;[M−H]−:m/z 374。
【0359】
実施例1e:コンジュゲートhu2H11R35R74−PEG8−NHAc−DM4の調製
【0360】
【化52】
【0361】
1e.1
コンジュゲートhu2H11R35R74−PEG8−NHAc−DM4の調製
RTにて磁気撹拌しながら、hu2H11R35R74 4ml(14.36mg/緩衝液A 1ml)、次に緩衝液A 7.5ml、HEPES 1M 1.45ml、DMA 1.05ml、続いてL−DM4−AcNMe−PEG8−CONHS活性化エステルの10mM DMA溶液0.405mlを添加する。RTにて30分後、L−DM4−AcNMe−PEG8−CONHS活性化エステルの10mM DMA溶液0.1mlをさらに添加する。RTにて1時間45分後、粗コンジュゲーション培地HGS緩衝液60mlで希釈して、TFFによりPellicon 3カセットで精製する。試料を、試料の体積の約10倍のHGS緩衝液でダイアフィルトレーションして、次に収集する。TFFタンクおよびラインをさらに添加のHGS緩衝液10mlで洗浄する。2つの溶液を混合して、Amicon 15で濃縮し、PVDF 0.22μmでフィルタ滅菌する。このためhu2H11R35R74−PEG8−AcNMe−DM4コンジュゲート7.0ml(c=6.95mg/ml)が得られた。次にコンジュゲートを最終薬物負荷およびモノマー純度について分析する。
SEC分析(D):DAR(SEC)=5.0;RT=16.593分;モノマー純度=99.5%;
HRMSデータ:図15を参照のこと。
【0362】
1e.f
L−DM4−AcNH−PEG8−CONHS活性化エステルの調製
RTで磁気撹拌しながら、3−{2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(3−ブロモ−プロピオニルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−プロピオン酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル65mgをガラスバイアルに、続いてL−DM4 67.7mgのDMA 0.85mlおよびDIEA 16.5μlによる溶液を導入する。RTにて48時間後、反応媒体をフラッシュクロマトグラフィーによりシリカゲル10gで精製する(溶離勾配 DCM:MeOH体積で100:0から90:10)。RPでの画分18から26の濃縮後、L−DM4−AcNH−PEG8−CONHS活性化エステル17mgが無色ガラスの形で得られた。
質量スペクトル(B):RT=4.08分;[M+H−H
2O]+:m/z 1340(主シグナル);[M+Na]+:m/z 1380;[M−H+HCO
2H]−:m/z 1402;
1H NMR(400MHz,ppmでのδ,クロロホルム−d):0.81(s,3H);1,22(s,3H);1,23(s,3H);1,26(m,1H);1,30(d,J=6,8Hz,6H);1,41 to 1,52(m,1H);1,65(s,3H);1,80(m,1H);1,89 to 1,99(m,1H);2,19(m,1H);2,37(m,1H);2,47 a 2,67(m,2H);2,81 a 2,93(m,10H);2,99(d,J=16,6Hz,1H);3,04(d,J=9,8Hz,1H);3,16(d broad,J=13,7Hz,1H);3,23(s,3H);3,32(s broad,1H);3,37(s,3H);3,44(m,2H);3,51(d,J=9,1Hz,1H);3,54(t,J=5,4Hz,2H);3,59 a 3,73(m,29H);3,86(t,J=6,6Hz,2H);4,00(s,3H);4,22 to 4,33(m,1H);4,78(dd,J=2,9 and 12,2Hz,1H);5,43(q,J=6,8Hz,1H);5,67(dd,J=9,0 et 15,2Hz,1H);6,23(s,1H);6,44(dd,J=11,2 et 15,2Hz,1H);6,65(d,J=1,5Hz,1H);6,75(d,J=11,2Hz,1H);6,86(d,J=1,5Hz,1H);7,02 a 7,13(m,1H).
【0363】
1e.g
3−{2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(3−ブロモ−プロピオニルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−プロピオン酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステルの調製:
【0364】
【化53】
【0365】
RTにて磁気撹拌しながら、3−(2−{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−プロピオン酸100mg(CA(PEG)4,Pierce)、DCM 2mlおよびブロモ−酢酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル53.5mgをガラスバイアル中に続けて導入する。RTにて1時間後、DIC 35.1μlを添加する。1時間後、粗反応媒体を焼結ガラスで濾過して、RPで濃縮乾固させ、AcOEt 10mlで希釈し、焼結ガラスで濾過して、RPにて濃縮乾固させる。3−{2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(3−ブロモ−プロピオニルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−プロピオン酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル76.5mgが無色油の形で得られた。
質量スペクトル(A):RT=0.80分;[M+H]+:m/z 659/661;[M−H+HCO
2H]−:m/z 703/705
【0366】
実施例1f:コンジュゲートhu2H11R35R74−PEG4−アリル−DM4の調製
【0367】
【化54】
【0368】
1f.1
コンジュゲートhu2H11R35R74−PEG4−アリル−DM4の調製
RTにて磁気撹拌しながら、hu2H11R35R74 4ml(14.36mg/緩衝液A 1ml)、次に緩衝液A 7.5ml、HEPES 1M 1.45ml、DMA 1.14ml、続いてL−DM4−アリル−PEG4−CONHS活性化エステルの10mM DMA溶液0.3mlを添加する。RTにて30分後、L−DM4−アリル−PEG4−CONHS活性化エステルの10mM DMA溶液0.125mlをさらに添加する。RTにて1時間25分後、粗コンジュゲーション媒体をHGS緩衝液65mlで希釈して、TFFによりPellicon 3カセットで精製する。試料を、試料の体積の約10倍のHGS緩衝液でダイアフィルトレーションして、次に収集する。TFFタンクおよびラインをさらに添加のHGS緩衝液10mlで洗浄する。2つの溶液を混合して、Amicon 15で濃縮し、PVDF 0.22μmでフィルタ滅菌する。このためhu2H11R35R74−PEG4−アリル−DM4コンジュゲート8.0ml(c=5.22mg/ml)が得られた。次にコンジュゲートを最終薬物負荷およびモノマー純度について分析する。
SEC分析(H):DAR(SEC)=5.3;RT=16.767分;モノマー純度=99.4%;
HRMSデータ:図16を参照のこと。
【0369】
1f.2
L−DM4−アリル−PEG4−CONHS活性化エステルの調製
RTにて磁気撹拌しながら、L−DM4 70mg、3−(2−{2−[2−(4−ブロモ−ブタ−2−エニルオキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−プロピオン酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル(ブロモ−アリル−PEG
4−CONHS)45mg、DMA 0.5mlおよびDIEA 23.5μlをガラスバイアルに連続して導入する。RTにて2時間および−20℃にて17時間の後、DIEA 50μlを添加する。RTにて24時間後、反応媒体をフラッシュクロマトグラフィーによりC18−グラフトシリカゲル30gで精製する(溶離勾配 水:アセトニトリル 体積で95:5から5:95)。予想生成物を含有する画分のRPでの濃縮後、L−DM4−アリル−PEG4−CONHS活性化エステル47.1mgが白色固体の形で得られる。
質量スペクトル(D):RT=1.06分;[M+Na]+:m/z 1173:
1H NMR(500MHz,ppmでのδ,クロロホルム−d):0.81(s,3H);1,18 a 1,39(m,13H);1,42 to 1,52(m,1H);1,58(d,J=13,4Hz,1H);1,65(s,3H);1,73 to 1,82(m,1H);1,86 a 1,95(m,1H);2,19(d,J=14,3Hz,1H);2,40(m,1H);2,51 to 2,65(m,2H);2,82 to 2,95(m,9H);2,98 to 3,07(m,2H);3,12(d,J=12,6Hz,1H);3,18 to 3,27(m,1H);3,23(s,3H);3,36(s,3H);3,51(d,J=9,1Hz,1H);3,54 a 3,82(m,13H);3,86(t,J=6,4Hz,2H);3,91 a 3,95(m,2H);3,99(s,3H);4,28(t,J=11,0Hz,1H);4,78(dd,J=2,6 et 11,9Hz,1H);5,44(q,J=6,7Hz,1H);5,49 to 5,63(m,2H);5,68(dd,J=9,1 and 15,0Hz,1H);6,24(s,1H);6,43(dd,J=11,1 and 15,0Hz,1H);6,66(s,1H);6,77(d,J=11,1Hz,1H);6,83(s,1H).
【0370】
1f.3
3−(2−{2−[2−(4−ブロモ−ブタ−2−エニルオキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−プロピオン酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステルの調製
【0371】
【化55】
【0372】
RTにて、3−(2−{2−[2−(4−ブロモ−ブタ−2−エニルオキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−プロピオン酸200mg、DCM 4mlおよび担持DCC 232.3mg(2当量)をガラスバイアルに続けて導入する。RTにて1時間後、NHS 64.8mgを添加する。RTにて5時間後、粗反応媒体を焼結ガラスで濾過して、固体をDCMで洗浄し、合せた濾液をRPにて濃縮乾固させる。フラッシュクロマトグラフィーによるシリカゲル15gでの精製(溶離勾配 MeOH:DCM 体積により0:100から10:90)およびRPでの予想生成物を含有する画分の濃縮により、3−(2−{2−[2−(4−ブロモ−ブタ−2−エニルオキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−プロピオン酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル(ブロモ−アリル−PEG4−CONHS)46mgが薄黄色油の形で得られる。
質量スペクトル(A):RT=1.02分;[M+H]+:m/z 454/456;[M+Na]+:m/z 476/478;[M−H+HCO2H]−:m/z 498/500。
【0373】
1f.4
3−(2−{2−[2−(4−ブロモ−ブタ−2−エニルオキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−プロピオン酸の調製
【0374】
【化56】
【0375】
RTにて3−(2−{2−[2−(4−ブロモ−ブタ−2−エニルオキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−プロピオン酸tert−ブチルエステル1g(市販)、TFA 6mlおよびDCM 3mlの溶液を3時間撹拌して、次にRPにて濃縮乾固する。油性残渣をトルエンで希釈して、RPにて濃縮乾固させて、3−(2−{2−[2−(4−ブロモ−ブタ−2−エニルオキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−プロピオン酸853mgが褐色油の形で得られる。
【0376】
実施例1g:コンジュゲートhu2H11−PEG4−NHAc−DM4の調製
コンジュゲートhu2H11−PEG4−NHAc−DM4は、実施例1に似た様式で調製できる:RTにて撹拌しながら、hu2H11 1ml(8.52mg/緩衝液A 1ml)、次に緩衝液A 0.7ml、HEPES 1M 0.213ml、DMA 0.7ml、続いてDMA 0.128mlで希釈したL−DM4−AcNH−PEG4−CONHS活性化エステルの10mM DMA溶液0.085mlを添加する。RTにて2時間後、粗培地をAmicon 4で7000Gにて濃縮し、Nap−10カラムにてHGS緩衝液により緩衝液交換して、最後に5ml Zebaカラムで精製する。このためhu2H11−PEG4−NHAc−DM4コンジュゲート1.15ml(c=3.78mg/ml)が得られた。次にコンジュゲートを最終薬物負荷およびモノマー純度について分析する。
SEC分析(方法D):DAR(UV)=6.6;DAR(SEC)=5.6;RT=15.387分;モノマー純度=99.7%;
HRMSデータ:図17を参照のこと。
【0377】
[実施例2]
hu2H11R35R74によるEphA2自己リン酸化活性の阻害
物質および方法
株化細胞および抗体
乳腺癌株化細胞MDA−MB−231をECAAC(参照# 92020424)から入手した。非小細胞肺癌株化細胞NCI−H1299をATCC(参照# CRL−5803)から入手した。両方の株化細胞を、10%熱不活性化ウシ胎仔血清および2mM L−Glnを添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で維持した。組換えマウスエフリン−A1細胞外ドメイン/Fcキメラ(エフリンA1/Fc)をSigma(参照# E9902)またはR & D Systems(参照# 602−A1)から入手した。抗Eck/EphA2クローンD7抗体(Ab)および抗ホスホチロシンAb4G10をMilliporeから入手した(それぞれ参照# 05−480および05−321)。chKTIアイソタイプ対照Abは、Immunogen Inc.にて生成された。これはIg重鎖および軽鎖定常領域がヒトκ軽鎖およびヒトγ1重鎖によって置換された、キメラ型の抗Kunitz SoybeanトリプシンインヒビタAb(KTI,ATCC 参照# HB9515)に相当する。組換えAbは、ImmunoGen(chKTI ロット# 2539−91)にて、重鎖および軽鎖について発現プラスミドを一過性にトランスフェクトしたHEK293T細胞の培養物上清から精製した。ヒト化抗EphA2 Abs hu2H11(ロット# LP08191)およびhu2H11R35R74(ロット# LP09077)は、Sanofi−Aventisにて安定的にトランスフェクトされたロンザ・チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)/GS株化細胞から産生した。どちらのAbも標準手順に従って、タンパク質A sepharoseでの親和性クロマトグラフィーと、続くアニオン交換ロマトグラフィーにより培養物上清から精製した。追加のクロマトグラフィーステップは、セラミックのヒドロキシアパタイトで行った。すべての調製物を4℃の1×PBS中で貯蔵して、動態LAL法を使用して低い内毒素レベルについて試験した。抗アクチン抗体クローンC4は、Millipore(参照# MAB1501)から得た。ペルオキシダーゼ(PO)コンジュゲートヤギ抗マウスIgG Abは、Jackson Immunoresearch(参照# 115−035−003)から得た。
【0378】
リン酸化の誘発
MDA−MB−231細胞をP100ペトリ皿(試料当り5皿)の完全培地中で、1皿当り3×10
6細胞にて播種して、CO
2インキュベータ内で37℃にて48時間インキュベートした。細胞は18時間にわたって血清を欠乏させ、続いて10g/mL hu2H11またはhu2H11−R35/R74 または2μg/mLエフリンA1/Fcによって37℃にて10分間から2時間処置した。
【0379】
リン酸化の阻害
血清が欠乏したMDA−MB−231またはNCI−H1299細胞をchKTI、hu2H11またはhu2H11R35R74(10μg/mL)によって37℃にて1時間インキュベートした。次に1μg/mLエフリンA1/Fcを添加して、細胞を37℃にてさらに10分から30分間インキュベートした。
【0380】
細胞抽出物の調製
細胞試料を掻爬によって氷上で収集して、15mL円錐管に移し、1300rpmにて5分間遠心分離した。1×リン酸緩衝食塩水(PBS;Invitrogen# 14190)で1回洗浄した後、細胞を1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、1×プロテアーゼ・インヒビタ・カクテル(Sigma参照# P2714)および1×Haltホスファターゼインヒビタ(Pierce参照# 78420)を即時添加した溶解緩衝液300μL(Biosource参照# FNN0011)に再懸濁させた。細胞抽出物をときどきボルテックス処理しながら氷上で45分間維持して、15000rpmにて10分間遠心分離し、さらに使用するまで−80℃にて維持した。タンパク質濃度は、Pierceによるキット(参照# 23227)を使用して、ビシンコニン酸(BCA)によって決定した。
【0381】
免疫沈降
細胞抽出物(試料当り0.3から0.5mg)のプレクリーニングステップは、溶解緩衝液中で先に平衡させた(ローテータ上で4℃にて1時間)、タンパク質G Sepharose 4 fast flow(GE Healthcare Life Sciences参照# 17−0618−01)を添加することによって行った。インキュベーションは、ローテータ上で4℃にて30分間行った。試料を1500rpmにて2分間遠心分離して、上清を収集し、抗EphA2 AbクローンD7(試料当り4μL)と共にローテータ上で一晩インキュベーションした。免疫沈降は、タンパク質G Sepharoseを用いてローテータ上で4℃にて4時間行った。試料を1500rpmで4℃にて2分間遠心分離して、溶解緩衝液100μLによって5分間、3回洗浄した。免疫沈降したビーズは、NuPAGE還元剤(Invitrogen参照# NP0009)を添加した4×NuPAGE LDS試料緩衝液50μL(Invitrogen参照# NP0007)に再懸濁させて、95℃にて5分間加熱し、1500rpmで5分間遠心分離して、−20℃にて維持するか、電気泳動を行った。
【0382】
免疫ブロット
免疫沈降物または細胞抽出物を基準分子量マーカー(GE healthcare Life Sciences参照# RPN800)と共に4から12% Bis−Tris Midiゲル(Invitrogen# NP0322BOX)に投入して、電気泳動をMOPS−SDS緩衝液1×(Invitrogen参照# NP0001)中で150Vにて3時間行った。電気ブロットは、PVDF膜(Invitrogen参照# LC2007)上で、i−blot(商標)装置(Invitrogen)によりプログラム3を使用して行った。膜のブロッキングは、5%ウシ血清アルブミンを添加したTBST 1×(即ちトリス緩衝食塩水 Sigma参照# T5912、0.1%ツイン20 Sigma参照# P1379)中で行った。抗EphA2 AbクローンD7または抗ホスホチロシン4G10 Abによる標識を、同じ緩衝液中で4℃にて一晩行った。抗アクチンAbクローンC4による標識を室温にて1時間行った。続いての1×TBSTによる膜の洗浄後に、PO−コンジュゲートヤギ抗マウスAbおよびPerkin ElmerによるECLキット(参照# NEL 104001EA)を使用して、免疫ブロットの展開を行った。発光はFuji4000装置で読み取った。
結果
組換えエフリンA1/Fcを正の対照として使用して、MDA−MB231細胞におけるhu2H11またはhu2H11R35R74 AbによるEphA2のリン酸化の誘発について調査した。結果を
図4に示す。リン酸化の誘起は、2つのAbのいずれによっても10分間から2時間で検知することができなかったが、組換えエフリンA1/Fcは、10分にてEphA2受容体の強いリン酸化を誘発し、シグナルの低下は1時間後に開始し、受容体の分解が2時間後に見られ始めた。
【0383】
エフリンA1/Fcによる誘起後のEphA2のリン酸化の阻害を、NCI−H1299およびMDA−MB−231細胞において調査した。結果を
図5Aおよび5Bに示す。どちらの場合でも、2つのAbのいずれかによる細胞のプレインキュベーションは、エフリンA1/FcによるEphA2受容体のリン酸化を阻害した。
【0384】
我々は、hu2H11およびhu2H11R35R74がEphA2受容体に対して類似の阻害活性を有すると結論付けることができる。
【0385】
[実施例3]
コンジュゲート抗EphA2抗体、hu2H11R35R74およびhu2H11の結合キャラクタリゼーション
裸であるかまたはPEG4−NHAcリンカーによってDM4にコンジュゲートされているかのどちらかの、抗EphA2抗体hu2H11およびhu2H11R35R74の固定されたEphA2−Fcとの相互作用を、表面プラスモン共鳴検出によりBIAcore 3000装置(GE healthcare,N°CH321)を使用して監視した。EDC(N−エチル−N’−[ジメチル−アミノプロピル]カルボジイミド)/NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)による標準アミン・カップリング・プロトコルを使用して、EphA2−Fc(10μg/ml;酢酸塩緩衝液pH=4.5)をC1センサチップのマトリクス(GE healthcare BR−1005−40)に10μl/分にてカップリングした。動的結合実験では、密度は応答レベルを約100応答単位(RU)上昇させて制御した。IgGは、0.15M NaCl、3mM EDTAおよび0.005% P20を含有する0.01M Hepes、pH7.4で希釈した。続いての希釈物はすべて同じ緩衝液で作製した。すべての結合実験は、25℃にて通例50から0.2nMの範囲に及ぶIgG濃縮物を流速50μl/分で用いて行った。
【0386】
データをおよそ12分間収集して(2分間の会合時間および10分間の解離時間)、30μl/分にて1M NaCl、50mM NaOHの1分間パルスを使用して表面を再生した。IgGも未コーティング細胞上に流し、ブランクランによるセンサグラムをEphA2−Fcカップリングチップによって得られたセンサグラムから引いた。変動ベースラインを有する1:1ラングミュア結合モデルにデータを適合させた。本アルゴリズムはk
onおよびk
offの両方を計算し、これから見かけの平衡解離定数K
Dを2つの速度定数の比(k
off/k
on)として推定する。得られた値を表Iに示す。
【0387】
親和性定数は最初に、裸のhu2H11およびhu2H11R35R74の両方を用いて測定される。hu2H11のEphA2−Fcへの結合データの分析により、0.30nMのK
Dが得られる;本値は、hu2H11R35R74のK
D(0.22nM)と類似していた。しかしコンジュゲート抗体がアッセイで使用されるとき、結果は劇的に異なった:7.5などの高い薬物対抗体比を有するコンジュゲートhu2H11は、裸の抗体と比較したときに、5.4倍上昇したK
Dを呈した(1.62nM対0.30nM)。他方、7.4の薬物対抗体比でコンジュゲートされたhu2H11R35R74のK
Dは、裸の抗体の一方とは異なっていなかった(0.27nM対0.22nM)。加えてK
Dは、5.6から8.4の範囲に及ぶ薬物対抗体比で有意には異なっていなかった。
【0388】
我々は、2H11R35R74抗体の親和性が高い薬物対抗体比においてもコンジュゲーションによって影響されないことを結論付けた。
【0389】
[実施例4]
ヒト化2H11R35R74−PEG4−Mal−DM4による腫瘍細胞を発現するEphA2の成長の阻害
Lovo腫瘍細胞の阻害
Lovo腫瘍細胞(ウェル当り2000)を、完全血清含有培地中の96ウェル組織培養プレートに播種した。コンジュゲートを10
−7から10
−12Mの間の範囲に及ぶ濃度で段階希釈して3組のウェルに添加した。細胞を37℃/5% CO
2にて抗体−細胞傷害性化合物コンジュゲートの存在下で5日間培養して、この時間の後、4時間のWST8アッセイを製造者の説明書(Dojindo Cell Counting Kit−8,カタログ#CK04)に従って行い、細胞の生存および成長を評価した。無細胞試薬ブランクを試験ウェル読み取り値から引いて、コンジュゲート処置細胞の読み取り値をビヒクル処置細胞の対照ウェルからの読み取り値の平均で割ることにより得られたデータを、生存画分としてプロットした。
【0390】
高いメイタンシン/抗体比(6.70D/Aおよび7.00D/A)におけるhu2H11R35R74−PEG4−Mal−DM4の2つのロットの細胞傷害性効力を、匹敵するメイタンシン/抗体比(6.99D/A)を有する野生型hu2H11−PEG4−Mal−DM4コンジュゲートの細胞傷害性効力と比較した。
図7で見られるように、2つのhu2H11R35R74−PEG4−Mal−DM4コンジュゲートは、EphA2陽性Lovo株化細胞に対して野生型hu2H11の対応するコンジュゲートよりも高い効力を示した(表II)。
【0391】
[実施例5]
ヒト化2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4による腫瘍細胞を発現するEphA2の成長の阻害
MDA−MB231およびSKMEL28の成長の阻害
対数成長期にある細胞をトリプシン処理して、これのそれぞれの培養培地に再懸濁させた(MDA−MB231細胞にはDMEM/F12 Gibco #21331;10% SVF Gibco# 10500−056;2nMグルタミンGibco# 25030;SKMEL−28細胞にはDMEM(Gibco# 11960)10%SVF Gibco# 10500−056;2nMグルタミンGibco# 25030)。完全血清含有培地中の96ウェルCytostar培養プレート(GE Healthcare Europe,#RPNQ0163)に、細胞懸濁物を5000細胞/ウェルの密度で(MDA−MB231、SKMEL−28)分散させた。4時間コーティングした後、コンジュゲートの10−7から10
−12Mの間の範囲に及ぶ濃度の段階希釈物を3組のウェルに添加した。細胞を37℃/5%CO2にて抗体−細胞傷害性化合物コンジュゲートの存在下で3日間培養した。第4日に、14Cチミジンの溶液10μl(0.1μCi/ウェル(Perkin Elmer# NEC56825000)を各ウェルに添加する。実験を開始して96時間後に、14Cチミジンの吸収をmicrobeta放射線カウンタ(Perkin Elmer)で測定した。無細胞試薬ブランクを試験ウェル読み取り値から引いて、コンジュゲート処置細胞の読み取り値をビヒクル処置細胞の対照ウェルからの読み取り値の平均で割ることにより得られたデータを、生存画分としてプロットした。多くの実験において、裸の抗体(2H11または2H11R35R74)を実験開始時に1μMの濃度でウェルに添加して増殖の阻害を上記のように測定した。
【0392】
結果
表IIIに報告した結果は、2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4ならびに2H11R35R74−PEG4−Mal−DM4コンジュゲートが以前のコンジュゲートよりも、MDA−MB231細胞に対するインビトロ増殖阻害および抗原マイナス細胞(SKMEL−28)に対する選択性が良好であることを示唆する。
【0393】
[実施例6]
薬物動態研究
本研究は、hu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4コンジュゲート(DAR=5.5)の薬物動態挙動を、CD−1マウス中のhu2H11−SPDB−DM4コンジュゲート(DAR=3.9)と比較して評価するために設計された。動物に各コンジュゲート20mg/kgを静脈内経路により投与して、血液を注射の0、8、24、48、72、120、168、240、336、504、672時間後に収集した。抗体薬物コンジュゲートの血漿レベルを測定して、標準条件下で基本単回用量薬物動態パラメータを制定した。コンジュゲートおよびこれの抗体構成要素(全抗体、コンジュゲート抗体および任意の脱コンジュゲート抗体の和)の血漿濃度を特異的ELISA技法によって測定した。
【0394】
hu2H11−SPDB−DM4(全体)の抗体構成要素のクリアランス関連薬物動態パラメータは、0.00043L/時/kgのCl(クリアランス)、160時間のT1/2(終末半減期)、47,000,000ng時/mLのAUC0−inf(時間ゼロから無限大までの濃縮時間曲線下面積)、0.095L/kgのVdss(分布の定常状態体積)および270,000ng/mLのC0(時間0における濃度)として計算した。
【0395】
hu2H11−SPDB−DM4コンジュゲートの薬物動態パラメータを、0.00070L/時/kgのCl、87時間のT1/2、28,000,000ng時/mLのAUC0−inf、0.080L/kgのVdssおよび360,000ng/mLのC0として計算した。
【0396】
hu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4(全体)の抗体構成要素のPKパラメータは、0.00027L/時/kgのCl、190時間のT1/2、73,000,000ng時/mLのAUC0−inf、0.068L/kgのVdssおよび530,000ng/mLのC0であった。
【0397】
最後に、hu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4コンジュゲートは、0.00036L/時/kgのクリアランス、150時間のT1/2、56,000,000ng時/mLのAUC0−inf、0.069L/kgのVdssおよび600,000ng/mLのC0の値を示した。
【0398】
結論として、hu2H11−SPDB−DM4コンジュゲートはhu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4よりも高速に除去される。さらにhu2H11−SPDB−DM4と比較して、hu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4は、全コンジュゲート抗体と全抗体曲線との間で、より良好な曝露(AUC0−inf)およびより狭い分離を示した(
図7および8を比較)。
【0399】
[実施例7]
メスSCIDマウスに移植された原発性結腸腫瘍CR−LRB−004Pに対する、hu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4およびhu2H11−PEG4−NHAc−DM4コンジュゲートの抗腫瘍効果
物質および方法
コンジュゲートの抗腫瘍活性の評価のために、動物の体重を毎日測定し、腫瘍をカリパスにより週2回測定した。腫瘍の重量は、塊体(mg)=[長さ(mm)×幅(mm)
2]/2の式を使用して計算した。抗腫瘍活性の評価は、最大非毒性用量(HNTD)にて行った。
【0400】
最下点(群の平均)において20%体重減少(bwl)または10%以上の薬物死を生じる投薬量を過剰毒性投薬量と見なした。動物の体重は腫瘍の重量を含んでいた。主要有効性エンドポイントは、ΔT/ΔC、中央値回帰パーセント、部分および完全回帰(PRおよびCR)および無腫瘍生存者(TFS)である。
【0401】
各処置(T)および対照(C)の腫瘍体積の変化は、第1の処置日(ステージング日)の腫瘍体積を規定観察日の腫瘍体積から引くことによって、各腫瘍について計算する。中央値(median)ΔTを処置群について計算して、中央値ΔCを対照群について計算する。次に比ΔT/ΔCを計算して、パーセンテージとして表す:
【0402】
【数4】
用量は、ΔT/ΔCが40%未満であるときに治療的に活性であると、およびΔT/ΔCが10%未満であるときに非常に活性であると見なされる。ΔT/ΔCが0未満である場合、用量は高度に活性であると見なされ、回帰(regression)パーセンテージに日付が付けられる(参考文献1):
%腫瘍回帰は:規定の観察日の処置群における、第1の処置の第1日の腫瘍体積(volume)と比較した腫瘍体積減少%として定義する。特定の時点および各動物について、%回帰を計算する。次に群の中央値%回帰を計算する。
【0403】
【数5】
【0404】
部分回帰(PR):回帰は、処置開始時の腫瘍体積の50%にまで減少した場合には部分的として定義される。
【0405】
完全回帰(CR):完全回帰は、腫瘍体積=0mm
3のときに達成される(腫瘍体積が記録できないときに、CRが考慮される。)。
【0406】
TFS:無腫瘍は、研究の終了時に検出不能な腫瘍を有する動物として定義される(最終処置後>100日)
【0407】
結果
hu2H11−PEG4−NHAc−DM4−コンジュゲートおよびhu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4の抗腫瘍効果を、メスSCIDマウスに皮下移植された、標的を強力に発現する測定可能な原発性結腸腫瘍CR−LRB−004Pに対する2つの用量レベルにて評価した。対照群は未処置のままであった。用量を1kg当りのタンパク質のミリグラムで表した。第15日に静脈内(IV)ボーラス注射によって、40および10mg/kgのhu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4を投与した。DM4と等用量を与えるために、hu2H11−PEG4−NHAc−DM4を44および11mg/kgで投与した。
【0408】
CR−LRB−004P腫瘍の単回投与スケジュールを使用して表Vに示すように、hu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4は40および10mg/kgにてそれぞれで28および39%のΔT/ΔCで活性であったが、hu2H11−PEG4−NHAc−DM4は44mg/kgのみにて26%のAT/ACで活性であった。10mg/kgのhu2H11−PEG4−NHAc−DM4は本モデルでは活性ではなかった。
【0409】
これらの結果から、hu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4−コンジュゲートは、hu2H11−PEG4−NHAc−DM4コンジュゲートよりも低い用量でより良好な活性を示した。
【0410】
[
実施例8]
SCIDメスマウスにおける前立腺腺癌PC−3に対するhu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4の抗腫瘍活性へのDARの影響
抗体薬物コンジュゲートの抗腫瘍活性に対するDARの効果
hu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4を、メスSCIDに皮下移植された前立腺PC−3腫瘍に対して、6つの異なる薬物抗体比(DAR)で2つの低い有効用量を比較して評価した。対照群は未処置のままであった。用量を1kg当りのタンパク質のミリグラムで表した。DARをUV法によって決定した。第16日に、10および5mg/kgのhu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4をそれぞれ3.4、4.4、5.9、6.2、7.4および8.4のDARにて、静脈内(IV)ボーラス注射により投与した。
【0411】
物質および方法
コンジュゲートの抗腫瘍活性の評価のために、動物の体重を毎日測定し、腫瘍をカリパスにより週2回測定した。腫瘍の重量は、塊体(mg)=[長さ(mm)×幅(mm)
2]/2の式を使用して計算した。抗腫瘍活性の評価は、最大非毒性用量(HNTD)にて行った。
【0412】
最下点(群の平均)において20%体重減少(bwl)または10%以上の薬物死を産生する投薬量を過剰毒性投薬量と見なした。動物の体重は腫瘍の重量を含んでいた。主要有効性エンドポイントは、ΔT/ΔC、中央値回帰パーセント、部分および完全回帰(PRおよびCR)および無腫瘍生存者(TFS)である。
【0413】
各処置(T)および対照(C)の腫瘍体積の変化は、第1の処置日(ステージング日)の腫瘍体積を規定観察日の腫瘍体積から引くことによって、各腫瘍について計算する。中央値ΔTを処置群について計算して、中央値ΔCを対照群について計算する。次に比ΔT/ΔCを計算して、パーセンテージとして表す:
【0414】
【数6】
【0415】
用量は、ΔT/ΔCが40%未満であるときに治療的に活性であると、およびΔT/ΔCが10%未満であるときに非常に活性であると見なされる。ΔT/ΔCが0未満である場合、用量は高度に活性であると見なされ、回帰パーセンテージに日付が付けられる(参考文献1):
%腫瘍回帰は:規定の観察日の処置群における、第1の処置の第1日の腫瘍体積と比較した腫瘍体積減少%として定義する。特定の時点および各動物について、%回帰を計算する。次に群の中央値%回帰を計算する。
【0416】
【数7】
部分回帰(PR):回帰は、処置開始時の腫瘍体積の50%にまで減少した場合には部分的として定義される。
【0417】
完全回帰(CR):完全回帰は、腫瘍体積=0mm
3のときに達成される(腫瘍体積が記録できないときに、CRが考慮される。)。
【0418】
TFS:無腫瘍は、研究の終了時に検出不能な腫瘍を有する動物として定義される(最終処置後>100日)
【0419】
結果
単回投与スケジュールを使用して表VIに示すように、hu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4は10mg/kgにて、4.4のDARから8.4のより高いDARまで活性を示した。
【0420】
hu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4は5mg/kgにて、5.9のDARから8.4のより高いDARまで活性を示した。
【0421】
結論として、DARはhu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4の腫瘍活性に効果を有し、これらの結果からhu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4の最適DARは少なくとも5.9に等しいことが推定できる。
【0422】
[
実施例9]
hu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4のPKパラメータへのDARの影響
オスCD−1マウスにおける異なる薬物抗体比(DAR)のhu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4の薬物動態特性を、コンジュゲート20mg/kgの単回静脈内投与後に評価した。コンジュゲートの血漿レベルを測定して、標準条件下で基本単回用量薬物動態パラメータを制定した。PKパラメータを親抗体のPKパラメータと比較した。コンジュゲートおよびこれの抗体構成要素(全抗体、コンジュゲート抗体および任意の脱コンジュゲート抗体の和)の血漿濃度を特異的ELISA技法によって測定した。
【0423】
結果(
図9Aおよび9Bを参照のこと。)は、DAR値と全抗体構成要素への曝露との間に逆相関を示し、0、3、4、4.3、5.9、6.6および7.4のDARに対してそれぞれ、83,000,000、61,000,000、48,000,000、46,000,000、41,000,000および27,000,000ng時/mLのAUC0−inf値である。
【0424】
同様に、DAR値とコンジュゲートへの曝露との間に逆相関があり、3.4、4.3、5.9、6.6および7.4のDARに対してそれぞれ、39,000,000、30,000,000、27,000,000、29,000,000および20,000,000ng時/mLのAUC0−inf値である。
【0425】
DAR値と抗体構成要素の排除の間には完全な相関があり、0、3.4、4.3、5.9、6.6および7.4のDARに対してそれぞれ、0.00024、0.00033、0.00042、0.00043、0.00049および0.00074L/時/kgのCl値である。
【0426】
同様に、DAR値とコンジュゲートの排除との間にはほぼ完全な相関があり、3.4、4.3、5.9、6.6および7.4のDARに対してそれぞれ、0.00051、0.00066、0.00075、0.00069、0.00099L/時/kgのCl値である。
【0427】
結論として、DARはPKパラメータに対して影響を有し、DARが上昇するときに曝露が減少し、排除が増加する。
【0428】
有効性およびPK評価からの結果に従って、最適DARは5.9と7.4との間に含まれる。
【0429】
[実施例10]
SCIDメスマウスにおける前立腺腺癌PC−3に対するhu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4の評価
抗体薬物コンジュゲートhu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4の抗腫瘍効果を、メスSCIDマウスに皮下移植された、標的を強力に発現する測定可能な前立腺PC−3腫瘍に対して8つの用量レベルで評価した。対照群は未処置のままであった。用量を1kg当りのタンパク質のミリグラムで表した。
【0430】
これらを第17日に静脈内(IV)ボーラス注射により、160、120、80、40、20、10、5および2.5mg/kgで投与した。
【0431】
物質および方法
コンジュゲートの抗腫瘍活性の評価のために、動物の体重を毎日測定し、腫瘍をカリパスにより週2回測定した。腫瘍の重量は、塊体(mg)=[長さ(mm)×幅(mm)
2]/2の式を使用して計算した。抗腫瘍活性の評価は、最大非毒性用量(HNTD)にて行った。
【0432】
最下点(群の平均)において20%体重減少(bwl)または10%以上の薬物死を産生する投薬量を過剰毒性投薬量と見なした。動物の体重は腫瘍の重量を含んでいた。主要有効性エンドポイントは、ΔT/ΔC、中央値回帰パーセント、部分および完全回帰(PRおよびCR)および無腫瘍生存者(TFS)である。
【0433】
各処置(T)および対照(C)の腫瘍体積の変化は、第1の処置日(ステージング日)の腫瘍体積を規定観察日の腫瘍体積から引くことによって、各腫瘍について計算する。中央値ΔTを処置群について計算して、中央値ΔCを対照群について計算する。次に比ΔT/ΔCを計算して、パーセンテージとして表す:
【0434】
【数8】
【0435】
用量は、ΔT/ΔCが40%未満であるときに治療的に活性であると、およびΔT/ΔCが10%未満であるときに非常に活性であると見なされる。ΔT/ΔCが0未満である場合、用量は高度に活性であると見なされ、回帰パーセンテージに日付が付けられる(参考文献1):
%腫瘍回帰は:規定の観察日の処置群における、第1の処置の第1日の腫瘍体積と比較した腫瘍体積減少%として定義する。特定の時点および各動物について、%回帰を計算する。次に群の中央値%回帰を計算する。
【0436】
【数9】
【0437】
部分回帰(PR):回帰は、処置開始時の腫瘍体積の50%にまで減少した場合には部分的として定義される。
【0438】
完全回帰(CR):完全回帰は、腫瘍体積=0mm
3のときに達成される(腫瘍体積が記録できないときに、CRが考慮される。)。
【0439】
TFS:無腫瘍は、研究の終了時に検出不能な腫瘍を有する動物として定義される(最終処置後>100日)
【0440】
結果
単回投与スケジュールを使用して、試験したコンジュゲートの最大用量(160mg/kg)が毒性であり、体重減少および薬物関連死を誘発することが見出された。
【0441】
表VIIIに示すように、HNTD(120mg/kg)および他の最小用量において、化合物は高度に活性であった。hu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4は、2.5mg/kgを除くすべての用量で、部分回帰を誘発し、120、80および20mg/kgでは、これは完全回帰を誘発した。加えて腫瘍モデルは悪液質であり、化合物の投与は、最下点における体重減少を対照と比較して低下させた。
【0442】
結論として、hu2H11R35R74−PEG4−NHAc−DM4は、高い活性を前立腺PC−3腫瘍モデルに対する良好な用量効果と共に示した。
【0443】
[
実施例11]
2.1Å分解能でのhu2H11−R35−R74からのFabフラグメントと複合したEphA2受容体の細胞外ドメインの結晶構造の構造決定による、エピトープのマッピングおよびパラトープの同定
物質および方法
hu2H11R35−74のFabと複合したEphA2受容体−Fcのグリコシル化細胞外ドメインに対して、所期結晶化の試験を行った。トリプシンの存在下のみで結晶が得られた。これらの結晶を分析し、ペプチドマッピングはこれらがFabを含有し、EphA2およびFcの細胞外ドメインのN末端ドメインのある部分を含有していることを示した。複合体の別のバッチを産生し、今回はhu2H11R34−R74−Hisからの組換えFabフラグメントと複合した末端Hisタグを有するEphA2受容体のグリコシル化細胞外ドメインを使用した。EphA2受容体のどちらの構築物も、EphA2受容体とhu2H11R34−R75との間の複合体の同じ構造を提供する。
【0444】
EphA2受容体の細胞外領域は4つのドメイン:LBD(リガンド結合ドメイン)、CRD(システイン・リッチ・ドメイン)および2つのフィブロネクチン反復、nFN3およびcFN3で作製され、非常に可撓性であることが示されている。異なるドメインを分子置換計算の検索モデルとして単独または組合せのどちらかで使用した;Fabの可変および定常ドメインのモデルも、Fc(pdbコード1IGT)のモデルに加えて、結晶構造を解析するために作製および使用した。
【0445】
各種の結晶化条件を試験して、ESRFにて収集された2.1Åデータセットを使用し、複合体の構造を解析した。我々がEphA2受容体の細胞外ドメインとhu2H11R34−R74との間の界面を分析することが可能となった。
【0446】
全長EphA2細胞外領域(25−534)が最初に存在していたとしても、結晶はタンパク質のLBDおよびCRDドメインのみを含有している(結晶に応じて、残基25−325または327(ここでは連続ナンバリングを使用する。)。
【0447】
結果
エピトープマッピング
図10:hu2H11R34−R75のEphA2受容体エピトープの細胞外ドメインのマッピングを示す(エピトープ残基は、hu2H11R34−R74 FabフラグメントのCDR残基のいずれかの原子から4Å以内に存在する原子を含有する残基として定義されている。)。
【0448】
EphA2受容体の細胞外ドメインのエピトープは、hu2H11R34−R74のFabフラグメントに結合されたときに、LBDドメインGly49、Lys50、Gly51、Asp53、Cys70、Asn71、Val72、Met73、Ser74、Gly75、Gln77、Phe108、Pro109、Gly110、Gly111、Ser113およびSer114の残基を含む立体配座エピトープである。
【0449】
図11:エピトープの一部であるEphA2受容体の細胞外ドメインからの残基を示す(ダークグレーで表す。);ライトグレーの残基は結晶構造中では見えない。
【0450】
図12A:複合体の構造全体を表し、
図11Bは、位置35および74に導入された2つの変異を有する部分の拡大である。
【0451】
hu2H11のコンジュゲーションは、表面リジン残基に発生する。これらの2つはアルギニンに変異された。これらの2つの残基、重鎖R74および軽鎖R35を
図12Bに示す:
R74はインタフェースの近くに存在して、EphA2受容体の細胞外ドメインの外方を向き、最も近い細胞外ドメインから約10Å離れている。R35はパラトープ残基の1つであり、これはEphA2受容体の細胞外ドメインからのAsp53とH結合を作製する。リジン残基は抗原との同じ相互作用を非常に生じやすく、これのコンジュゲーションは抗体結合にとって明らかに有害である。
【0452】
パラトープ分析
EphA2受容体の細胞外ドメインとhu2H11R35−R74との間の界面は、CDRループをすべて含むわけではない。
図12からわかるように、主に重鎖CDRが結合に関与している。このことは、hu2H11のCDRにおける、特に軽鎖における変化が、ただし排他的ではないが、EphA2受容体への結合に悪影響を及ぼさずに導入できることを示唆している。軽鎖のループ3はインタフェースに全く関与していないが、L1末端の1残基(Arg35)のみがEphA2の細胞外ドメインと相互作用する。このことは、ループL3の変化がEphA2への結合に影響するはずがないことと、アミノ酸残基の変異/挿入がArg35残基の立体配座および向きを不安定化させない限り、ループL1がアミノ酸残基の変異/挿入に耐えるはずであることを暗示している。
【0453】
EphA2受容体のhu2H11−R35−R74のパラトープは、以下の軽鎖の残基:ループ1のArg35、L2のTyr54、Arg58およびAsp60を含む。これは重鎖に以下の残基:ループH1のThr30、Ala31、Tyr32およびTyr33、H2のAsn52、Tyr54、Asn55およびPhe57、ならびにH3のGlu99、Phe100、Tyr101、Gly102、Tyr103およびTyr105を含む。連続ナンバリングスキームを軽鎖および重鎖に使用する。
【0454】
構造データを使用して、例えばClark et al(Protein Science(2006),15:949−960)またはLippow et al(Nature Biotech(2007),10:1171−76)に記載された手法によって、EphA2受容体に対するhu2H11−R35−R74抗体の親和性を改良することが可能かもしれない。
【0455】
ループH1:Thr H28の適切な変異により、例えばAsp76との追加の相互作用を生成することが可能かもしれない。
【0456】
軽鎖とEpha2受容体との間の相互作用は、多くの残基を含まない。これにもかかわらず、新たな相互作用を生成することにはおそらく、ループL1またはL3のどちらかへの大幅な挿入を必要とする。
【0457】
これらのループとEphA2受容体との間の相互作用は、むしろ大型のまたは長い残基によって発生する:この環境でのいずれの変化も結合親和性の損失を生じるかもしれない。
【0458】
本X線構造は、変異させることができ、EphA2への結合に影響を与えるはずがないCDRからの残基を強調している。
【0459】
以下の記述では、パラトープからの残基がEphA2受容体への結合を保存するために修飾されるように規定されていない限り、修飾されるはずがない。CDRの変異は、EphA2受容体への結合を保存するためにパラトープからの残基の立体配座および向きに影響するはずがないことも理解される。残基ナンバリングは連続的であり、Al−Lazikani((1997)J.Mol.Biol.273,927−948)で使用されているようなカバット法に従わない。「X」は「いずれの残基」も表すが、「−」は、どの修飾もこの位置で作製されるはずがないことを示す。
【0460】
D33およびR35を除くCDR L1(配列番号4)において、ループの長さが保存され、これがJ.Mol.Biol.(1992)227:799−817,J.Mol.Biol.(1992)227:776−798およびAl−Lazikani et al(上で引用)に記載されたような基準構造L1−カッパ4を取る限り、配列には何の制限もない。このことは、ペプチド結合のねじれ角がAl−Lazikani et al(上で引用)の
図5に定義された許容範囲内に含まれることを意味する。
【0461】
Arg35は変異されて、本残基へのコンジュゲーションを防止した。これにもかかわらずLysはEphA2との同じ相互作用を作製し、このため親hu2H11抗体がEphA2受容体との同じ相互作用を作製して、EphA2受容体の同じエピトープを結合することが予測される。
【0462】
Aspは位置33の好ましい残基である。
【0463】
【表1】
【0464】
CDR L2(配列番号5)において、どちらのLeuもIleなどの保存的置換によって置換することができる。ValはIleによって置換されるかもしれない(あまり好ましくない。)。ループの最初のSerはいずれの残基によっても置換できるが、第2のSerは別の親水性/荷電残基によって置換されるかもしれない。Tyr残基(54)は変更されるはずがない。
【0465】
【表2】
【0466】
CDR L3(配列番号6)において、これがAl−Lazikani et al(上で引用)で定義されたような基準構造L3−カッパ1を取る限り、配列またはループ長に何の制限もない。
【0467】
【表3】
【0468】
CDR H1(配列番号1)GYTFTAYY)の周囲にて、ループの最初のThr(Thr28)は親和性成熟の潜在的な位置である。
【0469】
【表4】
【0470】
CDR H2(配列番号2)において、PheおよびTyrは、いずれの芳香族残基(F/Y/W)によっても置換することができる。
【0471】
【表5】
【0472】
CDR H3(EFYGYRYFDV)では、本ループには何の変化も作製されるはずがない。
【0473】
【表6】
【0474】
エフリン結合部位
hu2H11抗体は機能活性を示す:これはEphA2のエフリン−A1結合およびエフリンA1誘発リン酸化を阻害する。エフリン−A1と複合したEphA2受容体のLBDおよびCRDドメインの構造は公開されている(PDBコード3MBW)。本構造をhu2H11R35R74のFabフラグメントと複合したEphA2の構造に重ね合せるとき、2H11R35R74のFabフラグメントの軽鎖がEphA2上のエフリン−A1の結合範囲と重複し、このためhu2H11抗体の競合的性質が確認されることが明確に考えられる。
【0475】
[
実施例12]
ヒト化2H11R35R74−DM4コンジュゲートによる、腫瘍細胞を発現するEphA2の成長の阻害
対数成長期にあるMDA−MB231細胞をトリプシン処理して、培養培地に再懸濁させた(DMEM/F12 Gibco #21331;10% SVF Gibco# 10500−056;2nMグルタミン Gibco#)。完全血清含有培地中の96ウェルCytostar培養プレート(GE Healthcare Europe,#RPNQ0163)に、細胞懸濁物を5000細胞/ウェルの密度で分散させた。4時間コーティングした後、コンジュゲートの10
−7から10
−12Mの間の範囲に及ぶ濃度の段階希釈物を3組のウェルに添加した。細胞を37℃/5%CO2にて抗体−細胞傷害性化合物コンジュゲートの存在下で3日間培養した。第4日に、14Cチミジンの溶液10μl(0.1μCi/ウェル(Perkin Elmer # NEC56825000)を各ウェルに添加する。実験を開始して96時間後に、14Cチミジンの吸収をmicrobeta放射線カウンタ(Perkin Elmer)で測定した。無細胞試薬ブランクを試験ウェル読み取り値から引いてコンジュゲート処置細胞の読み取り値をビヒクル処置細胞の対照ウェルからの読み取り値の平均で割ることにより得られたデータを、生存画分としてプロットした。多くの実験において、裸の抗体(2H11または2H11R35R74)を実験開始時に1μMの濃度でウェルに添加して増殖の阻害を上記のように測定した。
【0476】
結果
表IXに報告された結果は、試験した2H11R35R74DM4コンジュゲートはすべて、MDA−MB231細胞の成長を阻害するのに、hu2H11R35R74−Peg4−AcNH−DM4と同じくらい強力であることを示唆した。
【0477】
[
実施例13]
SCIDメスマウスにおける結腸腺癌Lovoに対する2h11−DM4コンジュゲートの抗腫瘍活性についての異なるリンカーの評価
物質および方法
コンジュゲートの抗腫瘍活性の評価のために、動物の体重を毎日測定し、腫瘍をカリパスにより週2回測定した。腫瘍の重量は、塊体(mg)=[長さ(mm)×幅(mm)
2]/2の式を使用して計算した。抗腫瘍活性の評価は、最大非毒性用量(HNTD)にて行った。
【0478】
最下点(群の平均)において20%体重減少(bwl)または10%以上の薬物死を産生する投薬量を過剰毒性投薬量と見なした。動物の体重は腫瘍の重量を含んでいた。主要有効性エンドポイントは、ΔT/ΔC、中央値回帰パーセント、部分および完全回帰(PRおよびCR)ならびに無腫瘍生存者(TFS)である。
【0479】
各処置(T)および対照(C)の腫瘍体積の変化は、第1の処置日(ステージング日)の腫瘍体積を規定観察日の腫瘍体積から引くことによって、各腫瘍について計算する。中央値ΔTを処置群について計算して、中央値ΔCを対照群について計算する。次に比ΔT/ΔCを計算して、パーセンテージとして表す:
【0480】
【数10】
用量は、ΔT/ΔCが40%未満であるときに治療的に活性であると、およびΔT/ΔCが10%未満であるときに非常に活性であると見なされる。ΔT/ΔCが0未満である場合、用量は高度に活性であると見なされ、回帰パーセンテージに日付が付けられる(参考文献1):
%腫瘍回帰は:規定の観察日の処置群における、第1の処置の第1日の腫瘍体積と比較した腫瘍体積減少%として定義する。特定の時点および各動物について、%回帰を計算する。次に群の中央値%回帰を計算する。
【0481】
【数11】
【0482】
部分回帰(PR):回帰は、処置開始時の腫瘍体積の50%にまで減少した場合には部分的として定義される。
【0483】
完全回帰(CR):完全回帰は、腫瘍体積=0mm
3のときに達成される(腫瘍体積が記録できないときに、CRが考慮される。)。
【0484】
TFS:無腫瘍は、研究の終了時に検出不能な腫瘍を有する動物として定義される(最終処置後>100日)
【0485】
結果
異なる切断不能なリンカーhu2H11−R35R74−PEG4−AcNH−DM4、hu2H11−R35R74−PEG8−AcNH−DM4、hu2H11−R35R74−PEG4−AcNMe−DM4、hu2H11−R35R74−PEG4−アリル−DM4およびhu2H11−R35R74−アセチル−DM4を有する抗体薬物2h11−DM4コンジュゲートの抗腫瘍活性は、メスSCIDに皮下移植された結腸Lovo腫瘍に対する同じ用量のDM4/kg 600μgを比較して評価した。対照群は未処置のままであった。用量を1kg当りのDM4のマイクログラムで表した。コンジュゲートを静脈内(IV)注射により第14日に投与した。
【0486】
単回投与スケジュールを使用して表Xに示すように、5つのコンジュゲートはすべて、ΔT/ΔC<0を有するLovo腫瘍モデルに対する同じ高い活性および体重減少に対する同じ影響を示した(対照群において−13.3%対処置群において−9.5%から11.2%)。hu2H11−R35R74−PEG4−AcNH−DM4は、CRを有せず、hu2H11−R35R74−PEG4−AcNMe−DM4、hu2H11−R35R74−アセチル−DM4、hu2H11−R35R74−PEG4−アリル−DM4およびhu2H11−R35R74−PEG8−AcNH−DM4についてそれぞれ72%、69%、41%および33%の腫瘍回帰と比較して、82%および1CRの腫瘍回帰で最良の有効性を示した。
【0487】
【表7】
【0488】
【表8】
【0489】
【表9】
【0490】
【表10】
【0491】
【表11】
【0492】
【表12】
【0493】
【表13】
【0494】
【表14】
【0495】
【表15】