(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルム形成材が、フェノキシ樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、キシレン樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本明細書における「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味する。
【0019】
本実施形態に係る回路接続材料は、回路電極同士を電気的に接続するために用いられる接着剤である。
図1は、回路接続材料の一実施形態を示す断面図である。
図1に示す回路接続材料1は、樹脂層3と、樹脂層3内に分散している複数の導電性粒子5とから構成され、フィルム状の形状を有する。樹脂層3は、(a)エポキシ樹脂と、(b)潜在性硬化剤と、(c)フィルム形成材と、(d)カルボン酸ビニルエステルをモノマー単位として含む熱可塑性ポリマーとを含有する。言い換えると、回路接続材料1は、(a)エポキシ樹脂と、(b)潜在性硬化剤と、(c)フィルム形成材と、(d)カルボン酸ビニルエステルをモノマー単位として含む熱可塑性ポリマーと、導電性粒子5とを含有する。回路接続材料1が加熱されたときにエポキシ樹脂の架橋により樹脂層3において架橋構造が形成され、回路接続材料1の硬化物が形成される。
【0020】
以下、回路接続材料1の各構成材料について説明する。
【0021】
(a)エポキシ樹脂
(a)エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、F、AD等のビスフェノールのグリシジルエーテルであるビスフェノール型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック又はクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂が代表的なエポキシ樹脂である。その他の例として、ナフタレン骨格を有するナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂及び複素環式エポキシ樹脂が挙げられる。これらは単独又は2種以上混合して用いられる。
【0022】
上記エポキシ樹脂の中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂が分子量の異なるグレードが広く入手可能で、接着性や反応性等を任意に設定できることから好ましい。ビスフェノール型エポキシ樹脂の中でも、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が特に好ましい。ビスフェノールF型エポキシ樹脂の粘度は低く、フェノキシ樹脂との組み合わせて用いることにより、回路接続材料の流動性を容易に広範囲に設定できる。また、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、回路接続材料に良好な粘着性を付与し易いという利点も有する。
【0023】
不純物イオン(Na
+、Cl
−等)濃度又は加水分解性塩素が300ppm以下であるエポキシ樹脂を用いることが、エレクトロンマイグレーション防止のために好ましい。
【0024】
(b)潜在性硬化剤
(b)潜在性硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化させることができるものであればよい。また、潜在性硬化剤は、エポキシ樹脂と反応して架橋構造中に取り込まれる化合物であってもよいし、エポキシ樹脂の硬化反応を促進する触媒型硬化剤であってもよい。両者を併用することも可能である。
【0025】
触媒型硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂のアニオン重合を促進するアニオン重合型潜在性硬化剤、及びエポキシ樹脂のカチオン重合を促進するカチオン重合型潜在性硬化剤が挙げられる。
【0026】
アニオン重合型潜在性硬化剤としては、例えば、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ素ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド及びこれらの変性物が挙げられる。イミダゾール系のアニオン重合型潜在性硬化剤は、例えば、イミダゾール又はその誘導体をエポキシ樹脂に付加して形成される。
【0027】
カチオン重合型潜在性硬化剤としては、例えば、エネルギー線照射によりエポキシ樹脂を硬化させる感光性オニウム塩(芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩等が主として用いられる)が好ましい。また、エネルギー線照射以外に加熱によって活性化しエポキシ樹脂を硬化させるものとして、脂肪族スルホニウム塩がある。この種の硬化剤は、速硬化性という特徴を有することから好ましい。
【0028】
これらの潜在性硬化剤を、ポリウレタン系、ポリエステル系等の高分子物質、ニッケル、銅等の金属薄膜及びケイ酸カルシウム等の無機物で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長できるため好ましい。
【0029】
アニオン重合型潜在性硬化剤の配合量は、(a)エポキシ樹脂100質量部に対して30〜60質量部であることが好ましく、40〜55質量部であることがより好ましい。30質量部未満であると回路接続材料の硬化収縮による被着体に対する締め付け力が低下する。その結果、導電性粒子5と回路電極との接触が保持されず、信頼性試験後の接続抵抗が上昇しやすくなる傾向がある。60質量部を超えると締め付け力が強くなりすぎるため、回路接続材料の硬化物における内部応力が大きくなり、接着強度の低下を招き易くなる傾向がある。
【0030】
カチオン重合型潜在性硬化剤の配合量は、(a)エポキシ樹脂100質量部に対して3〜15質量部であることが好ましく、5〜10質量部であることがより好ましい。3質量部未満であると回路接続材料の硬化収縮による被着体に対する締め付け力が低下する。その結果、導電性粒子5と回路電極との接触が保持されず、信頼性試験後の接続抵抗が上昇しやすくなる傾向がある。15質量部を超えると締め付け力が強くなりすぎるため、回路接続材料の硬化物における内部応力が大きくなり、接着強度の低下を招き易くなる傾向がある。
【0031】
(c)フィルム形成材
フィルム形成材とは、液状物を固形化し構成組成物をフィルム形状とした場合に、そのフィルムの取扱いを容易とし、容易に裂けたり、割れたり、べたついたりしない機械的特性等を付与するものであり、通常の状態(常温常圧)でフィルムとしての取扱いができるものである。
【0032】
(c)フィルム形成材としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、キシレン樹脂及びポリウレタン樹脂が挙げられる。これらの中でも、接着性、相溶性、耐熱性及び機械的強度に優れることからフェノキシ樹脂が好ましい。
【0033】
フェノキシ樹脂は、2官能性フェノール類とエピハロヒドリンとを高分子化するまで反応させるか、又は2官能性エポキシ樹脂と2官能性フェノール類とを重付加させることにより得られる樹脂である。フェノキシ樹脂は、例えば、2官能性フェノール類1モルとエピハロヒドリン0.985〜1.015モルとをアルカリ金属水酸化物等の触媒の存在下、非反応性溶媒中で40〜120℃の温度で反応させることにより得ることができる。
【0034】
また、フェノキシ樹脂としては、樹脂の機械的特性や熱的特性の観点からは、特に2官能性エポキシ樹脂と2官能性フェノール類との配合当量比をエポキシ基/フェノール水酸基=1/0.9〜1/1.1とし、アルカリ金属化合物、有機リン系化合物、環状アミン系化合物等の触媒の存在下、沸点が120℃以上のアミド系、エーテル系、ケトン系、ラクトン系、アルコール系等の有機溶剤中で、反応固形分が50質量%以下の条件で50〜200℃に加熱して重付加反応させて得たものが好ましい。
【0035】
2官能性エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂を用いることができる。2官能性フェノール類は2個のフェノール性水酸基を有するものであり、例えば、ハイドロキノン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS等のビスフェノール化合物が挙げられる。
【0036】
フェノキシ樹脂は、ラジカル重合性の官能基により変性されていてもよい。フェノキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0037】
上記(c)成分の重量平均分子量は10000以上であることが、製膜性などの観点から好ましい。ただし、熱可塑性樹脂の重量平均分子量が1000000以上になると他の成分との混合が困難になる傾向がある。なお、本願で規定する重量平均分子量とは、以下の条件のゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)により、標準ポリスチレンによる検量線に基づいて決定される値をいう。
GPC条件
使用機器:日立L−6000 型((株)日立製作所)
カラム:ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R
440(計3本)(日立化成工業(株)製商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:1.75mL/分
検出器:L−3300RI((株)日立製作所)
【0038】
(c)成分の配合量は、(a)及び(b)成分の合計100質量部に対して50〜140質量部であることが好ましく、70〜120質量部であることがより好ましい。
【0039】
(d)カルボン酸ビニルエステルをモノマー単位として含む熱可塑性ポリマー
(d)成分である熱可塑性ポリマーとしては、カルボン酸ビニルエステルをモノマー単位として含むものであれば特に限定されない。本発明の回路接続材料は、仮圧着工程における所定の加熱温度において(d)成分が溶融(又は軟化)することで粘着性を示し、被着体へ容易に仮接着することができる。また、後述する(e)有機微粒子を接着性向上の目的で回路接続材料に添加する場合、粘着性がやや低下して仮圧着性が低下することがある。特にこの場合、(d)成分は、回路接続材料の粘着性と接着性とを両立するために有効に機能することができる。
【0040】
カルボン酸ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、バルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル及び安息香酸ビニルが挙げられる。中でも、他のモノマーとの共重合性の観点から、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル及びラウリン酸ビニルが好ましく、酢酸ビニルがより好ましい。
【0041】
(d)熱可塑性ポリマーは、極性モノマー単位であるカルボン酸ビニルエステルと共に、非極性モノマー単位であるオレフィンをモノマー単位として含むことで仮圧着性に優れるという本発明の効果をより一層有効かつ確実に発現することができる。オレフィンとしては、エチレン及びプロピレンが例示される。
【0042】
また、上記熱可塑性ポリマーは、本発明の低温での仮圧着性に優れるという効果を逸脱しない範囲で、カルボン酸ビニルエステルと共重合可能なモノマーをモノマー単位として含んでいてもよい。このようなモノマーとしては、例えば、カルボン酸アリルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、具体的には、酢酸アリル、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルが例示される。
【0043】
カルボン酸ビニルエステルの割合は、(d)成分を構成する全モノマー100質量%を基準として、20質量%以上60質量%未満であることが好ましく、25質量%以上55質量%未満であることがより好ましく、30質量%以上50質量%未満であることがさらに好ましい。60質量%以上では、室温において樹脂が粘着性を発現し、回路接続材料の巻重体を形成する際に、支持フィルムの背面へ転写してしまい、作業性が劣る傾向がある。20質量%未満では、樹脂自体の融点が上昇し、仮圧着工程において十分に溶融せず、粘着力向上の効果が得られ難い傾向がある。
【0044】
仮圧着時の被着体への接着性に優れると共に、支持フィルムの剥離性に優れることから、(d)熱可塑性ポリマーとして、オレフィン−カルボン酸ビニルエステル共重合体を含むことが好ましく、回路接続材料を構成する他の樹脂成分との相溶性の観点から、エチレン−酢酸ビニルエステル共重合体を含むことがより好ましい。
【0045】
(d)成分は、重量平均分子量(以下、「Mw」という)が40000〜150000であることが好ましく、60000〜130000であることがより好ましく、70000〜120000であることがさらに好ましい。150000を超えると、汎用溶剤であるトルエン、酢酸エチル又はメチルエチルケトン等への溶解性が低下する傾向があり、40000未満では、樹脂層3の凝集力が低下して接着力が低下する傾向にある。
【0046】
(d)成分は、融点が30℃以上80℃未満であることが好ましく、30〜70℃であることがより好ましい。融点が30℃未満では、仮圧着時に樹脂染み出しを誘発しやすくなるため、作業性が低下する傾向がある。一方、融点が80℃以上では、低温での仮圧着性に優れるという本発明の効果を奏し難くなる。
【0047】
(d)成分の配合量は、(a)及び(c)成分の合計100質量部に対して、0.5〜5質量部であることが好ましく、1〜3質量部であることがより好ましい。(d)成分の配合量が0.5質量部未満では低温での仮圧着時に優れるという本発明の効果を奏し難くなる傾向にあり、5質量部を超えると接続信頼性や接続外観が低下する傾向にある。
【0048】
(e)有機微粒子
本発明に係る回路接続材料には、必要に応じ有機微粒子を配合してもよい。有機微粒子は、応力緩和性を有する耐衝撃緩和剤としての機能を有するものである。回路接続材料が(E)成分として有機微粒子を含むことで、仮圧着後の本接続における各種接続部材との接着性をより一層向上することができる。特に、(b)成分としてカチオン重合型潜在性硬化剤を用いた回路接続材料の場合、被着体に対する接着強度がアニオン重合型潜在性硬化剤を用いた場合よりもやや劣る傾向があるため、(e)成分を添加することで接着性を改善することができる。
【0049】
有機微粒子としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ブタジエンゴム、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート、アクリルゴム、ポリスチレン、NBR、SBR、シリコーン変性樹脂等を成分として含む共重合体が挙げられる。接着性向上の観点から、有機微粒子として、(メタ)アクリル酸アルキル−ブタジエン−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル−シリコーン共重合体、シリコーン−(メタ)アクリル共重合体、シリコーンと(メタ)アクリル酸との複合体、(メタ)アクリル酸アルキル−ブタジエン−スチレンとシリコーンとの複合体及び(メタ)アクリル酸アルキルとシリコーンとの複合体を用いることが好ましい。また、(E)成分として、コアシェル型の構造を有し、コア層とシェル層で組成が異なる有機微粒子を用いることもできる。コアシェル型の有機微粒子として、具体的には、シリコーン−アクリルゴムをコアとてアクリル樹脂をグラフトした粒子、アクリル共重合体にアクリル樹脂をグラフトとした粒子が挙げられる。
【0050】
(e)成分を配合する場合、その配合量は、(a)成分100質量部に対して、20〜50質量部であることが好ましく、30〜40質量部であることがより好ましい。(e)成分の配合量を上記範囲とすることで、樹脂層3の被着体に対する接着性と支持フィルムの剥離性とのバランスを調整しやすい傾向にある。
【0051】
さらに、回路接続材料1(樹脂層3)は、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びイソシアネート類を含有することもできる。充填材を含有した場合、接続信頼性等の向上が得られるので好ましい。充填材の最大径が導電性粒子5の粒径未満であれば使用でき、配合量は、5〜60体積%の範囲が好ましい。60体積%を超すと信頼性向上の効果が飽和する。カップリング剤としては、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基又はイソシアネート基を有する化合物が、接着性の向上の点から好ましい。
【0052】
導電性粒子5としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属を含む金属粒子、並びにカーボン粒子が挙げられる。導電性粒子5は、好ましくはAu、Ag、白金族の貴金属類、より好ましくはAuからその表層が構成されていることがより好ましい。導電性粒子5の表層がこれらの金属から構成されていることにより、十分なポットライフを得ることができる。導電性粒子5は、Ni等の遷移金属類の表面をAu等の貴金属類で被覆したものでもよい。あるいは、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等に前記した導通層を被覆等により形成し、最外層を貴金属類としたものでもよい。最外層を貴金属類、核体をプラスチック又は熱溶融金属とした被覆粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。
【0053】
導電性粒子の配合量は用途により適宜設定するが、通常は、回路接続材料のうち導電性粒子を除いた成分100体積部に対して0.1〜30体積部の範囲である。過剰な導電性粒子による隣接回路の短絡等を防止するためには0.1〜10体積部とするのがより好ましい。
【0054】
本発明に係る回路接続材料は、
図1に示される構成に限定されるものではない。例えば、回路接続材料が、組成の異なる2層以上の層から構成された積層構造を有していてもよい。この場合、潜在性硬化剤と導電性粒子とがそれぞれ別の層に含まれていてもよい。これにより回路接続材料の保存安定性(ポットライフ)が向上する。また、回路接続材料は導電性粒子を含んでいなくてもよい。
【0055】
本発明に係る回路接続材料は、例えば、半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品、並びにプリント基板のような、1又は2以上の回路電極(接続端子)を有する回路部材同士が接続された接続構造体を形成するために好適に用いられる。
【0056】
図2は、接続構造体の一実施形態を示す断面図である。
図2に示す接続構造体100は、第一の基板11及びこれの主面上に形成された第一の回路電極13を有する第一の回路部材10と、第二の基板21及びこれの主面上に形成された第二の回路電極23を有し、第二の回路電極23と第一の回路電極13とが対向するように配置された第二の回路部材20と、第一の回路部材10及び第二の回路部材20の間に介在する接続部1aとを備える。対向する第一の回路電極13と第二の回路電極23とは、電気的に接続されている。
【0057】
接続部1aは、回路接続材料1が硬化して形成された硬化物であり、硬化した樹脂層3aと導電性粒子5とから構成されている。接続部1aは、対向する第一の回路電極13と第二の回路電極23とが電気的に接続されるように、第一の回路部材10と第二の回路部材20とを接着している。対向する第一の回路電極13と第二の回路電極23とは、導電性粒子5を介して電気的に接続されている。なお、接続部が導電性粒子を含有していない場合、第一の回路電極13と第二の回路電極23とが直接接着することにより電気的な接続が可能である。
【0058】
第一の基板11は、ポリエステルテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む樹脂フィルムである。第一の回路電極13は、電極として機能し得る程度の導電性を有する材料(好ましくは金、銀、錫、白金族の金属及びインジウム−錫酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種)から形成されている。
【0059】
第二の基板21はガラス基板である。第二の回路電極は、好ましくは透明導電性材料から形成される。透明導電性材料としては典型的にはITOが用いられる。
【0060】
回路部材の接続構造体100は、例えば、第一の回路部材10と、上述のフィルム状の回路接続材料1と、第二の回路部材20とを、第一の回路電極13と第二の回路電極23とが対峙するようにこの順に積層した積層体を加熱及び加圧することにより、第一の回路電極13と第二の回路電極23とが電気的に接続されるように第一の回路部材10と第二の回路部材20とを接続する方法によって、得られる。
【0061】
この方法においては、まず、支持フィルム上に形成されているフィルム状の回路接続材料1を第二の回路部材20上に貼り合わせた状態で加熱及び加圧して回路接続材料1を仮接着し、支持フィルムを剥離してから、第一の回路部材10を回路電極を位置合わせしながら載せて、積層体を準備することができる。なお、接続の際の加熱によって発生する揮発成分による接続への影響を防止するために、接続工程の前に回路部材を予め加熱処理しておくことが好ましい。
【0062】
図3は、回路接続材料を用いた仮圧着方法の一実施形態を概略断面図により示す工程図である。
【0063】
本実施形態では、まず、支持フィルム7と、該支持フィルム7の一方面上に設けられ、フィルム状の回路接続材料1からなる接着剤層1bとを備えるフィルム状接着剤2を用意する(
図3(a))。
【0064】
次に、接着剤層1bの側を第二の回路部材20の回路電極23が形成されている面に向けるようにして載せ、貼り合わせた状態で加熱及び加圧して接着剤層1bを第二の回路部材20に仮接着する(
図3(b))。仮接着の温度は、80℃以下であり、70℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがさらに好ましい。仮接着温度の下限値は特に限定されないが、生産性の観点から50℃程度である。仮接着の時間は接着温度により適宜調整されるが、0.1〜5秒間で行うことが好ましく、0.5〜3秒間がより好ましい。
【0065】
次いで、支持フィルム7を剥離して、接着剤層1bを第二の基板21の主面上に転写する(
図3(c))。
【0066】
このようにして、接着剤層1bが第二の回路部材20上に仮圧着された後、第一の回路部材10を、第一の回路電極13を第二の回路部材20の側に向けるようにして接着剤層1b上に載せて形成される積層体を加熱及び加圧することで接続構造体100が得られる。
【0067】
上記積層体を加熱及び加圧する条件は、回路接続材料中の接着剤組成物の硬化性等に応じて、回路接続材料が硬化して十分な接着強度が得られるように、適宜調整される。
【0068】
接着剤層1bの加熱により、第一の回路電極13と第二の回路電極23との間の距離を十分に小さくした状態で接着剤層1bが硬化して、第一の回路部材10と第二の回路部材20とが接続部1aを介して強固に接続される。
【0069】
接着剤層1bの硬化により接続部1aが形成されて、
図2に示すような接続構造体100が得られる。なお、接続の条件は、使用する用途、回路接続材料、回路部材によって適宜選択される。
【0070】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、接続構造体を構成する回路部材が有する基板は、シリコーン及びガリウム/ヒ素等の半導体チップ、並びに、ガラス、セラミックス、ガラス/エポキシ複合体、及びプラスチック等の絶縁基板であってもよい。
【実施例】
【0071】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0072】
本実施例における回路接続材料を構成する各成分は、以下の通りである。
「EP−4010S」:プロピレンオキサイド変成エポキシ樹脂(エポキシ当量330〜390、ADEKA製)
「YL983U」:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量165〜175、ジャパンエポキシレジン製)
「BPA328」:アクリル微粒子分散型エポキシ樹脂(アクリル微粒子を17質量%含有、エポキシ当量220〜240、日本触媒製)
「EP−1032H60」:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量163〜175)
「HX3941HP」:アニオン重合型潜在性硬化剤含有エポキシ樹脂(イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤を35質量%含有ビスフェノールF型及びA型エポキシ樹脂混合タイプ、エポキシ当量160〜190、旭化成ケミカルズ製)
「ZX1356−2」:ビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂(Mw50000、東都化成製)
「PKHC」:ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(Mw45000、インケム・コーポレーション製)
「アクリルゴムA」:ブチルアクリレート40質量部−エチルアクリレート30質量部―アクリロニトリル30質量部―グリシジルメタクリレート3質量部の共重合体(Mw約85万)
「EXL−2655」:有機微粒子(ブタジエン−スチレン−メタクリレート共重合体から形成されたコアシェルポリマー、ローム・アンド・ハース社製)
「EV40W」:エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有率41%、Mw80000、融点40℃、メルトフローレート65g/10分、三井・デュポンポリケミカル製)
「EV150」:エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有率33%、融点61℃、メルトフローレート30g/10分、Mw120000、三井・デュポンポリケミカル製)
「AUL−704」:平均粒径4μmのポリスチレン球状粒子の表面に0.1μmのNi層及びAu層を設けた導電性粒子(積水化学製)
「SH6040」:シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)
「SI−60LA」:カチオン重合型潜在性硬化剤(芳香族スルホニウム塩、三新化学製)
【0073】
(実施例1)
「EP−4010S」30質量部、「YL983U」15質量部、「ZX1356−2」のトルエン/酢酸エチル(=50/50)40質量%溶液50質量部(不揮発分換算で20質量部)、「PKHC」のトルエン/酢酸エチル(=50/50)40質量%溶液50質量部(不揮発分換算で20質量部)、「EXL−2655」15質量部、「EV40W」の20質量%トルエン溶液10質量部(不揮発分換算で2質量部)、「AUL−704」4質量部、「SH6040」(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)1質量部及び「SI−60LA」3質量部を配合して混合溶液を得た。得られた混合溶液をアプリケータでPETフィルム上に塗布し、70℃10分間の熱風乾燥により、接着剤層の厚み20μmであるフィルム状の回路接続材料を得た。
【0074】
(実施例2)
「YL983U」20質量部、「BPA328」30質量部、「PKHC」のトルエン/酢酸エチル(=50/50)40質量%溶液125質量部(不揮発分換算で50質量部)、「EV40W」の20質量%トルエン溶液10質量部(不揮発分換算で2質量部)、「AUL−704」4質量部、「SH6040」1質量部及び「SI−60LA」3質量部となるように各成分を配合した以外は実施例1と同様にして、フィルム状の回路接続材料を得た。
【0075】
(実施例3)
「EV40W」に変えて、「EV150」を用いた以外は、実施例1と同様にして、フィルム状の回路接続材料を得た。
【0076】
(
参考例4)
「EP−1032H60」5質量部、「HX3941HP」35質量部、「PKHC」のトルエン/酢酸エチル(=50/50)40質量%溶液50質量部(不揮発分換算で20質量部)、「アクリルゴムA」のトルエン/酢酸エチル(=50/50)10質量%溶液200質量部(不揮発分換算で20質量部)、「EXL−2655」20質量部、「EV40W」の20質量%トルエン溶液10質量部(不揮発分換算で2質量部)、「AUL−704」4質量部及び「SH6040」1質量部となるように各成分を配合した以外は実施例1と同様にして、フィルム状の回路接続材料を得た。
【0077】
(
参考例5)
「BPA328」10質量部、「HX3941HP」40質量部、「PKHC」のトルエン/酢酸エチル(=50/50)40質量%溶液37.5質量部(不揮発分換算で15質量部)、「アクリルゴムA」のトルエン/酢酸エチル(=50/50)10質量%溶液350質量部(不揮発分換算で35質量部)、「EV40W」の20質量%トルエン溶液10質量部(不揮発分換算で2質量部)、「AUL−704」4質量部及び「SH6040」1質量部となるように各成分を配合した以外は実施例1と同様にして、フィルム状の回路接続材料を得た。
【0078】
(比較例1)
「EV40W」を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、フィルム状の回路接続材料を得た。
【0079】
(比較例2)。
「EV40W」を添加しなかった以外は、実施例2と同様にして、フィルム状の回路接続材料を得た。
【0080】
(比較例3)
「EV40W」を添加しなかった以外は、実施例4と同様にして、フィルム状の回路接続材料を得た。
【0081】
(比較例4)。
「EV40W」を添加しなかった以外は、実施例5と同様にして、フィルム状の回路接続材料を得た。
【0082】
実施例で作製した回路接続材料の組成を質量部(不揮発分換算)で表1に、比較例で作製した回路接続材料の組成を質量部(不揮発分換算)で表2にそれぞれ示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
[仮圧着性の評価]
上記フィルム状の回路接続材料の接着剤層面を、全面に酸化インジウム(ITO)の薄層を有する厚み0.7mmのガラス板に、それぞれ60℃、70℃、80℃で1MPaの条件で、1秒間又は3秒間仮接着した後PETフィルムを剥離することで、仮圧着性を評価した。接着剤層が均一にITO上に転写されている状態を「A」、接着剤層が部分的にITO上に転写されている状態を「B」、接着剤層がITO上に全く転写されない状態を「C」とした。実施例
及び参考例の評価結果を表3に、比較例の評価結果を表4に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
本発明に係るフィルム状の回路接続材料は、60℃1秒間と極めて低温かつ短時間の条件においても仮圧着性に十分に優れることが確認された。