【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、実施例等はあくまで一例でありこの例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は、特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形も包含するものである。
【0029】
(実施例1)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径2μmのAg粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。Ag粉には凝集防止のため有機系材料でコーティング処理が施されたものを用いた。
そして以下の組成比で合計の重量が2500gとなるように秤量した。
秤量組成(モル分率):30Fe−30Pt−5Ag−35C
【0030】
次に、秤量した粉末を、粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットにAr雰囲気で封入し、4時間回転させて混合・粉砕した。そして、ポットから取り出した粉末を、カーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結した。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度900°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。また、保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0031】
このようにして作製した焼結体の一部を切り出し、その切断面を研磨して電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)で観察した。その結果、Fe−Pt合金相とAg相とC相が互いに均一分散した組織構造が確認された。また、0.2mm
2の範囲をEPMAで観察した結果、面積率でAg相のうちの80%以上が、Ag相内の任意の点を中心に描いた半径10μmの全ての仮想円に含まれるか又は該仮想円とAg相の外周との間で少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状を備えていることを確認した。さらに1mm
2の範囲を光学顕微鏡で観察した画像から、C相の面積比率を求めた結果、25.5%であった。
【0032】
さらに、焼結体から採取した小片を用いて組成分析を実施した。Fe、Pt、AgはICP−AES装置を用いて測定し、Cは高周波誘導加熱炉燃焼−赤外線吸収法を採用した炭素分析装置で測定した。このようにして得られた重量比率から原子数比率を計算した結果、Cの原子数比率をAgの原子数比率で除した値は6.9であった。
【0033】
次に、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工し、円盤状のターゲットを作製した。これをマグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、スパッタリングを行った。
スパッタリングの条件は、投入電力1kW、Arガス圧1.7Paとし、2kWhrのプレスパッタリングを実施した後、4インチ径のシリコン基板上に20秒間成膜した。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。その結果、パーティクル個数は83個であった。
【0034】
(比較例1)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径2μmのAg粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。Ag粉には凝集防止のため有機系材料でコーティング処理が施されたものを用いた。
そして以下の組成比で合計の重量が2500gとなるように秤量した。
秤量組成(モル分率):30Fe−30Pt−2Ag−38C
【0035】
次に秤量した粉末を、粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットにAr雰囲気で封入し、4時間回転させて混合・粉砕した。そして、ポットから取り出した粉末を、カーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結した。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度900°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0036】
このようにして作製した焼結体の一部を切り出し、その断面を研磨して、電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)で観察した。その結果、Fe−Pt合金相とAg相とC相が互いに均一分散した組織構造が確認された。また、0.2mm
2の範囲をEPMAで観察した結果、面積率でAg相のうちの80%以上が、Ag相内の任意の点を中心に描いた半径10μmの全ての仮想円に含まれるか又は該仮想円とAg相の外周との間で少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状を備えていることを確認した。さらに1mm
2の範囲を光学顕微鏡で観察した画像から、C相の面積比率を求めた結果、28.4%であった。
【0037】
さらに、焼結体から採取した小片を用いて組成分析を実施した。Fe、Pt、AgはICP−AES装置を用いて測定し、Cは高周波誘導加熱炉燃焼−赤外線吸収法を採用した炭素分析装置で測定した。このようにして得られた重量比率から原子数比率を計算し、Cの原子数比率をAgの原子数比率で除したところ18.5であった。この値は、本願請求項で規定する範囲から逸脱するものであった。
【0038】
次に、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工し、円盤状のターゲットを作製した。これをマグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、パーティクル個数は561個と実施例1より大幅にパーティクル数が増加していた。
【0039】
(比較例2)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径30μmのAg粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。そして以下の組成比で合計の重量が2500gとなるように秤量した。
秤量組成(モル分率):30Fe−30Pt−5Ag−35C
【0040】
次に、秤量した粉末を、粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットにAr雰囲気で封入し、4時間回転させて混合・粉砕した。そして、ポットから取り出した粉末を、カーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結した。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度960°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0041】
このようにして作製した焼結体の一部を切り出し、その断面を研磨して、電子線プローブマイクロアナライザーで観察したところ、Fe−Pt合金相とAg相とC相が互いに均一分散した組織構造が確認された。また、0.2mm
2の範囲を観察した結果、粗大なAg相が観察され、Ag相がその相内の任意の点を中心に描いた半径10μmの全ての仮想円に含まれるか又は該仮想円とAg相の外周との間で少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状を備えていないものが、面積率でAg相全体の面積に対して20%以上存在することを確認した。これは、大きな粒径のAg粉を用いたことと、焼結温度が高かったことが原因であると考えられる。さらに1mm
2の範囲を光学顕微鏡で観察した画像から、C相の面積比率を求めた結果、25.5%であった。
【0042】
さらに、焼結体から採取した小片を用いて組成分析を実施した。Fe、Pt、AgはICP−AES装置を用いて測定し、Cは高周波誘導加熱炉燃焼−赤外線吸収法を採用した炭素分析装置で測定した。このようにして得られた重量比率から、原子数比率を計算し、Cの原子数比率をAgの原子数比率で除したところ7.0であった。
【0043】
次に、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工し、円盤状のターゲットを作製した。これをマグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、パーティクル個数は245個と実施例1よりパーティクル数が増加した。
【0044】
(比較例3)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径2μmのAg粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。Ag粉には凝集防止のため有機系材料でコーティング処理が施されたものを用いた。
そして以下の組成比で合計の重量が1800gとなるように秤量した。
秤量組成(モル分率):17Fe−17Pt−6Ag−60C
【0045】
次に、秤量した粉末を、粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットにArで封入し、4時間回転させて混合・粉砕した。そして、ポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結した。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度900°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0046】
このようにして作製した焼結体の断面を研磨して、電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)で観察したところ、Fe−Pt合金相とAg相とC相が互いに均一分散した組織構造が確認された。また、0.2mm
2の範囲をEPMAで観察した結果、面積率でAg相のうちの80%以上が、Ag相内の任意の点を中心に形成した半径10μmの全ての仮想円に含まれるか又は該仮想円とAg相の外周との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状を備えていることを確認した。さらに1mm
2の範囲を光学顕微鏡で観察した画像から、C相の面積比率を求めた結果、C相の面積比率は48.1%であった。この値は、本願請求項で規定する範囲から逸脱するものであった。
【0047】
さらに、焼結体から採取した小片を用いて組成分析を実施した。Fe、Pt、AgはICP−AES装置を用いて測定し、Cは不活性ガス融解-赤外吸収法を採用した酸素分析計で測定した。このようにして得られた重量比率から原子数比比率を計算した結果、Cの原子数比比率をAgの原子数比比率で除したところ9.8であった。
【0048】
次に焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工し、円盤状のターゲットを作製した。これをマグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、パーティクル個数は880個と実施例1より大幅にパーティクル数が増加した。
【0049】
(実施例2)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径2μmのAg粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)、平均粒径1μmのSiO
2粉を用意した。Ag粉には、凝集防止のため有機系材料でコーティング処理が施されたものを用いた。
そして以下の組成比で合計の重量が2200gとなるように秤量した。
秤量組成(モル分率):30Fe−30Pt−5Ag−30C−5SiO
2【0050】
次に秤量した粉末を、粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットにAr雰囲気で封入し、4時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度900°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0051】
このようにして作製した焼結体の一部を切り出し、その切断面を研磨して電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)で観察した。その結果、Fe−Pt合金相とAg相とC相と酸化物(SiO
2)相が互いに均一分散した組織構造が確認された。また0.2mm
2の範囲をEPMAで観察した結果、面積率でAg相のうちの80%以上が、Ag相内の任意の点を中心に形成した半径10μmの全ての仮想円に含まれるか又は該仮想円とAg相の外周との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状を備えていることを確認した。さらに1mm
2の範囲を光学顕微鏡で観察した画像から、C相と酸化物相の合計の面積比率を求めた結果、35.5%であった。
【0052】
さらに、焼結体から採取した小片を用いて組成分析を実施した。Fe、Pt、Ag、SiはICP−AES装置を用いて測定し、Cは高周波誘導加熱炉燃焼−赤外線吸収法を採用した炭素分析装置で測定し、Oは不活性ガス融解−赤外線吸収法を採用した酸素分析装置で測定した。このようにして得られた重量比率から原子数比率を計算し、Cの原子数比率をAgの原子数比率で除したところ6.0であった。
【0053】
次に焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工し、円盤状のターゲットを作製した。これをマグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、パーティクル個数は34個であった。
【0054】
(比較例4)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径2μmのAg粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)、平均粒径1μmのSiO
2粉を用意した。Ag粉には、凝集防止のため有機系材料でコーティング処理が施されたものを用いた。
そして以下の組成比で合計の重量が2300gとなるように秤量した。
秤量組成(モル分率):32.5Fe−32.5Pt−2Ag−28C−5SiO
2【0055】
次に、秤量した粉末を、粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットにAr雰囲気で封入し、4時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末を、カーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度900°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0056】
このようにして作製した焼結体の断面を研磨して、電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)で観察したところ、Fe−Pt合金相とAg相とC相と酸化物(SiO
2)相が互いに均一分散した組織構造が確認された。また、0.2mm
2の範囲をEPMAで観察した結果、面積率でAg相のうちの80%以上が、Ag相内の任意の点を中心に形成した半径10μmの全ての仮想円に含まれるか又は該仮想円とAg相の外周との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状を備えていることを確認した。さらに1mm
2の範囲を光学顕微鏡で観察した画像から、C相と酸化物相の合計の面積比率を求めた結果、34.2%であった。
【0057】
さらに、焼結体から採取した小片を用いて組成分析を実施した。Fe、Pt、Ag、SiはICP−AES装置を用いて測定し、Cは高周波誘導加熱炉燃焼−赤外線吸収法を採用した炭素分析装置で測定し、Oは不活性ガス融解−赤外線吸収法を採用した酸素分析装置で測定した。このようにして得られた重量比率から原子数比率を計算し、Cの原子数比率をAgの原子数比率で除したところ13.9であった。この値は、本願請求項で規定する範囲から逸脱するものであった。
【0058】
次に、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工し、円盤状のターゲットを作製した。これをマグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、実施例2と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、パーティクル個数は189個と実施例2より大幅にパーティクル数が増加した。
【0059】
(比較例5)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径2μmのAg粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。Ag粉には凝集防止のため有機系材料でコーティング処理が施されたものを用いた。
そして以下の組成比で合計の重量が1700gとなるように秤量した。
秤量組成(モル分率):24Fe−24Pt−5Ag−40C−7SiO
2【0060】
次に、秤量した粉末を、粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットにArで封入し、4時間回転させて混合・粉砕した。そして、ポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結した。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度900°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0061】
このようにして作製した焼結体の断面を研磨して、電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)で観察したところ、Fe−Pt合金相とAg相とC相と酸化物相(SiO
2)が互いに均一分散した組織構造が確認された。また、0.2mm
2の範囲をEPMAで観察した結果、面積率でAg相のうちの80%以上が、Ag相内の任意の点を中心に形成した半径10μmの全ての仮想円に含まれるか又は該仮想円とAg相の外周との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状を備えていることを確認した。さらに1mm
2の範囲を光学顕微鏡で観察した画像から、C相と酸化物相の合計の面積比率を求めた結果、47.4%であった。この値は、本願請求項で規定する範囲から逸脱するものであった。
【0062】
さらに、焼結体から採取した小片を用いて組成分析を実施した。Fe、Pt、Ag、SiはICP−AES装置を用いて測定し、Cは高周波誘導加熱炉燃焼−赤外線吸収法を採用した炭素分析装置で測定し、Oは不活性ガス融解−赤外線吸収法を採用した酸素分析装置で測定した。このようにして得られた重量比率から原子数比比率を計算した結果、Cの原子数比比率をAgの原子数比比率で除したところ7.9であった。
【0063】
次に焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工し、円盤状のターゲットを作製した。これをマグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、パーティクル個数は716個と実施例1より大幅にパーティクル数が増加した。
【0064】
(実施例3)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径2μmのAg粉、平均粒径3μmのCu粉、平均粒径3μmのCo粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。Ag粉には凝集防止のため有機系材料でコーティング処理が施されたものを用いた。
そして以下の組成比で合計の重量が2200gとなるように秤量した。
秤量組成(モル分率):26Fe−26Pt−6Cu−5Co−7Ag−30C
【0065】
次に秤量した粉末を、粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットにAr雰囲気で封入し、4時間回転させて混合・粉砕した。そしてポットから取り出した粉末をカーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結させた。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度900°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0066】
このようにして作製した焼結体の一部を切り出し、その切断面を研磨して電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)で観察した。その結果、Fe−Pt−Cu−Co合金相とAg相とC相が互いに均一分散した組織構造が確認された。また、0.2mm
2の範囲を観察した結果、面積率でAg相のうちの80%以上が、Ag相内の任意の点を中心に形成した半径10μmの全ての仮想円に含まれるか又は該仮想円とAg相の外周との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状を備えていることを確認した。さらに1mm
2の範囲を光学顕微鏡で観察した画像から、C相の面積比率を求めた結果、21.6%であった。
【0067】
さらに、焼結体から採取した小片を用いて組成分析を実施した。Fe、Pt、Ag、Cu、CoはICP−AES装置を用いて測定し、Cは高周波誘導加熱炉燃焼−赤外線吸収法を採用した炭素分析装置で測定した。このようにして得られた重量比率から原子数比率を計算し、Cの原子数比率をAgの原子数比率で除したところ4.2であった。
【0068】
次に焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工し、円盤状のターゲットを作製した。これをマグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、パーティクル個数は17個であった。
【0069】
(比較例6)
原料粉として平均粒径3μmのFe粉、平均粒径3μmのPt粉、平均粒径2μmのAg粉、平均粒径3μmのCu粉、平均粒径3μmのCo粉、平均粒径10μmのC粉(グラファイト粉)を用意した。Ag粉には凝集防止の処理が施されていないものを用いた。
そして以下の組成比で合計の重量が2200gとなるように秤量した。
秤量組成(モル分率):26Fe−26Pt−6Cu−5Co−7Ag−30C
【0070】
次に、秤量した粉末を、粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットにAr雰囲気で封入し、4時間回転させて混合・粉砕した。そして、ポットから取り出した粉末を、カーボン製の型に充填しホットプレス装置を用いて成型・焼結した。ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300°C/時間、保持温度900°C、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
【0071】
このようにして作製した焼結体の一部を切り出し、その断面を研磨して、電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)で観察したところ、Fe−Pt−Cu−Co合金相とAg相とC相が互いに均一分散した組織構造が確認された。また、0.2mm
2の領域をEPMAで観察した結果、粗大なAg相が観察され、Ag相がその相内の任意の点を中心に描いた半径10μmの全ての仮想円に含まれるか又は該仮想円とAg相の外周との間で少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状を備えていないものが、面積率でAg相のうちの20%以上存在することを確認した。これは、Ag粉に凝集防止処理を施していないものを用いたことが原因であると考えられる。さらに1mm
2の範囲を光学顕微鏡で観察した画像から、C相の面積比率を求めた結果、21.7%であった。
【0072】
さらに、焼結体から採取した小片を用いて組成分析を実施した。Fe、Pt、AgはICP−AES装置を用いて測定し、Cは高周波誘導加熱炉燃焼−赤外線吸収法を採用した炭素分析装置で測定した。このようにして得られた重量比率から、原子数比比率を計算し、Cの原子数比率をAgの原子数比率で除したところ4.2であった。
【0073】
次に、焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工し、円盤状のターゲットを作製した。これをマグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、パーティクル個数は183個と実施例3よりパーティクル数が増加した。
【0074】
以上の通り、いずれの実施例においても、スパッタリング時に発生するパーティクル量を低減することができ、成膜時の歩留まりを向上するために非常に重要な役割を有することが分かった。
なお、実施例では、添加金属としてCu、Coを含有するターゲットを例示したが、この他の金属元素(Au、B、Cr、Ga、Ge、Mn、Mo、Nb、Ni、Pd、Re、Rh、Ru、Sn、Ta、W、V、Zn)を含有する場合であっても、同様の結果が得られた。
【0075】
【表1】