特許第5944610号(P5944610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5944610
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】液体包装容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20160621BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20160621BHJP
   A61J 1/00 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   B65D65/40 D
   B32B27/32 E
   A61J1/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-506701(P2016-506701)
(86)(22)【出願日】2015年9月3日
(86)【国際出願番号】JP2015075135
【審査請求日】2016年2月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-182072(P2014-182072)
(32)【優先日】2014年9月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-28536(P2015-28536)
(32)【優先日】2015年2月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】野島 裕介
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐介
(72)【発明者】
【氏名】城後 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】大下 晋弥
【審査官】 久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−287163(JP,A)
【文献】 特開平4−314452(JP,A)
【文献】 特開平10−67894(JP,A)
【文献】 特開2004−346109(JP,A)
【文献】 特開平6−70971(JP,A)
【文献】 特開2009−227917(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/156334(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/00−65/46
B32B 1/00−43/00
A61J 1/00−19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂(a)と、少なくとも一種の水添ブロック共重合体(b)とを含有する樹脂組成物(X)からなる層を少なくとも一層有し、内層と外層との間に中間層を少なくとも一層有する、3層以上の構造の液体包装容器用フィルムからなる液体包装容器であって
前記水添ブロック共重合体(b)が、芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック(A)と、イソプレン(Ip)単位、ブタジエン(Bd)単位、又はイソプレン(Ip)及びブタジエン(Bd)単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物であり、
前記樹脂組成物(X)中で、水添ブロック共重合体(b)が(i)長軸1μm以上の島相又は共連続構造と、(ii)長軸300nm以下の島相、との両方の構造を形成する相分離構造を有し、
前記樹脂組成物(X)において、ポリプロピレン系樹脂(a)と、水添ブロック共重合体(b)との質量比[(a)/{(a)+(b)}]が61/100〜95/100であり、
前記外層が、プロピレン単量体単位の含有量が60モル%以上であるポリプロピレン系樹脂(c)を70質量%以上含有する樹脂組成物(P)からなり、
前記樹脂組成物(X)が、内層及び中間層、内層、又は中間層のいずれかを形成し、
前記内層を構成する樹脂成分の融点MPinと、前記中間層を構成する樹脂成分の融点MPmidが、下記式
MPin<MPmid
を満たす、液体包装容器
【請求項2】
前記水添ブロック共重合体(b)が、ガラス転移温度の異なる水添ブロック共重合体(b−1)と水添ブロック共重合体(b−2)とを少なくとも含み、
水添ブロック共重合体(b−1)のガラス転移温度が−45℃未満であり、
水添ブロック共重合体(b−2)のガラス転移温度が−45℃以上であり、
前記樹脂組成物(X)において、水添ブロック共重合体(b−1)と水添ブロック共重合体(b−2)との質量比[(b−1)/(b−2)]が5/95〜95/5である、請求項1に記載の液体包装容器
【請求項3】
前記水添ブロック共重合体(b−1)における芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック(A)の含有量が5〜38質量%であるか、または
前記水添ブロック共重合体(b−2)における芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック(A)の含有量が5〜50質量%である、請求項2に記載の液体包装容器
【請求項4】
前記水添ブロック共重合体(b)、又は、前記水添ブロック共重合体(b−1)及び前記水添ブロック共重合体(b−2)が有する前記重合体ブロック(B)の水素添加率が、それぞれ80モル%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体包装容器
【請求項5】
前記水添ブロック共重合体(b)、又は、前記水添ブロック共重合体(b−1)及び前記水添ブロック共重合体(b−2)の重量平均分子量が、それぞれ20,000〜500,000である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体包装容器
【請求項6】
前記ポリプロピレン系樹脂(a)が、プロピレン単量体単位を60モル%以上含有し、230℃、荷重21.6Nの条件下におけるメルトフローレートが0.1〜30g/分である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体包装容器
【請求項7】
前記内層を構成する樹脂組成物(X)の融点MPと、前記外層を構成する樹脂組成物(P)の融点MPが、下記式
0<MP−MP≦50
を満たす、請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体包装容器。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体包装容器からなる医療用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体包装容器用フィルム及び液体包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用の液体包装容器、例えば輸液バッグとしては、ガラス製のものやプラスチック製のものなどが用いられている。輸液バッグに注入された薬液は、密封された後、一般的には水蒸気滅菌やオートクレーブ滅菌等の方法によって滅菌される。ガラス製のものはプラスチック製のものに比べて重く、且つ輸送時の衝撃や落下等によって破損し易いという問題があるため、プラスチック製の輸液バッグが広く用いられている。
プラスチック製の輸液バッグとしては、軟質塩化ビニル樹脂製のものや、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン製のものが用いられている。軟質塩化ビニル樹脂製の輸液バッグは、柔軟性を付与するために多量の可塑剤を含有させるため、輸液の種類によっては可塑剤が輸液中に溶出するおそれがあり、安全性の面で懸念されている。また、医療用具は使い捨てされるため、軟質塩化ビニル樹脂製の輸液バッグも使用後には焼却されるが、軟質塩化ビニル樹脂に起因する有毒ガスが発生するという問題がある。また、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン製の輸液バッグは可塑剤を含まないために衛生面で好ましいものの、柔軟性が低く、且つ耐衝撃性が不十分であるため、取り扱い性の点で充分とはいえない。
【0003】
一方、柔軟性及び透明性に優れた成形物を与え、しかも、焼却した際に有毒ガスを発生させることがなく、耐熱性も十分であって、オートクレーブ滅菌に耐える医療用具を与える樹脂組成物を提供することを課題として、ポリプロピレン系樹脂(a)と、(b−1)ビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックAを1個以上、及び1,2−結合と3,4−結合の含有量が10〜75モル%であるポリイソプレンブロックBを1個以上有し、ビニル芳香族化合物の含有量が10〜40重量%であり、かつポリイソプレンブロックBの炭素−炭素二重結合の70%以上が水素添加されてなる水添ブロック共重合体、(b−2)ビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックAを1個以上、及びイソプレンとブタジエンを5/95〜95/5の重量比で混合してなる混合物の重合体からなり、1,2−結合と3,4−結合の含有量が20〜85モル%である重合体ブロックCを1個以上有し、ビニル芳香族化合物の含有量が10〜40重量%であり、かつ重合体ブロックCの炭素−炭素二重結合の70%以上が水素添加されてなる水添ブロック共重合体、及び(b−3)ビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックAを1個以上、及び1,2−結合の含有量が45モル%以上であるポリブタジエンブロックDを1個以上有し、ビニル芳香族化合物の含有量が10〜40重量%であり、かつポリブタジエンブロックDの炭素−炭素二重結合の70%以上が水素添加されてなる水添ブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の水添ブロック共重合体(b)からなり、両者の割合がポリプロピレン系樹脂(a)/水添ブロック共重合体(b)=10/90〜90/10(重量比)である樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、透明性、柔軟性、耐キンク性、膠着防止性、耐鉗子性、溶剤接着性、低温耐衝撃性、及び耐熱性に優れるチューブを提供することを課題として、水添ブロック共重合体(a)、水添ブロック共重合体(b)及びポリオレフィン系樹脂(c)からなる樹脂組成物を成形してなるチューブであって、水添ブロック共重合体(a)が、芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック(A)と、ブタジエン単位を主体とする、又はイソプレン単位とブタジエン単位とを主体とする重合体ブロック(B)とから少なくとも構成されるブロック共重合体が水素添加された水添ブロック共重合体であって、重合体ブロック(A)の含有量が水添ブロック共重合体(a)の総量に対して5〜40質量%、重合体ブロック(B)の水素添加率が70%以上であり、かつ該共重合体のガラス転移温度が−45〜30℃であり、水添ブロック共重合体(b)が、芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック(C)と、ブタジエン単位を主体とする、又はイソプレン単位とブタジエン単位とを主体とする重合体ブロック(D)とから少なくとも構成されるブロック共重合体が水素添加された水添ブロック共重合体であって、重合体ブロック(C)の含有量が水添ブロック共重合体(b)の総量に対して10〜40質量%、重合体ブロック(D)の水素添加率が80%以上であり、かつ該共重合体のガラス転移温度が−45℃未満であり、水添ブロック共重合体(a)と水添ブロック共重合体(b)との質量比〔(a)/(b)〕が50/50〜95/5であり、かつ水添ブロック共重合体(a)と水添ブロック共重合体(b)とポリオレフィン系樹脂(c)との質量比〔(c)/((a)+(b)+(c))〕が10/100〜60/100であるチューブが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−67894号公報
【特許文献2】国際公開第2009/031625号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、輸液バッグ等の液体包装容器に衝撃が加わったり、液体包装容器が落下したとしても、該液体包装容器の破損による液漏れの発生は、抑制する必要がある。
そこで、本発明の課題は、従来と同等以上の透明性及び柔軟性を有しつつ、破袋強度に優れる液体包装容器用フィルム及び液体包装容器、並びにこれからなる医療用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討した結果、医療用の液体包装容器として、特定の樹脂組成物からなる層が特定のモルフォロジーを有することにより、従来と同等以上の透明性及び柔軟性を有し、かつ、液体包装容器にした際に、優れた破袋強度が得られ、上記課題を解決し得ることが判明した。
【0008】
本発明は、下記[1]〜[11]に関する。
[1]ポリプロピレン系樹脂(a)と、少なくとも一種の水添ブロック共重合体(b)とを含有する樹脂組成物(X)からなる層を少なくとも一層有する、液体包装容器用フィルムであって、
前記水添ブロック共重合体(b)が、芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック(A)と、イソプレン(Ip)単位、ブタジエン(Bd)単位、又はイソプレン(Ip)及びブタジエン(Bd)単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物であり、
前記樹脂組成物(X)中で、水添ブロック共重合体(b)が(i)長軸1μm以上の島相又は共連続構造と、(ii)長軸300nm以下の島相、との両方の構造を形成する相分離構造を有し、
前記樹脂組成物(X)において、ポリプロピレン系樹脂(a)と、水添ブロック共重合体(b)との質量比[(a)/{(a)+(b)}]が61/100〜95/100である、液体包装容器用フィルム。
[2]前記水添ブロック共重合体(b)が、ガラス転移温度の異なる水添ブロック共重合体(b−1)と水添ブロック共重合体(b−2)とを少なくとも含み、水添ブロック共重合体(b−1)のガラス転移温度が−45℃未満であり、水添ブロック共重合体(b−2)のガラス転移温度が−45℃以上であり、前記樹脂組成物(X)において、水添ブロック共重合体(b−1)と水添ブロック共重合体(b−2)との質量比[(b−1)/(b−2)]が5/95〜95/5である、上記[1]の液体包装容器用フィルム。
[3]前記水添ブロック共重合体(b−1)における芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック(A)の含有量が5〜38質量%であるか、又は
前記水添ブロック共重合体(b−2)における芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック(A)の含有量が5〜50質量%である、上記[2]の液体包装容器用フィルム。
[4]前記水添ブロック共重合体(b)、又は、前記水添ブロック共重合体(b−1)及び前記水添ブロック共重合体(b−2)が有する前記重合体ブロック(B)の水素添加率が、それぞれ80モル%以上である、上記[1]〜[3]のいずれかの液体包装容器用フィルム。
[5]前記水添ブロック共重合体(b)、又は、前記水添ブロック共重合体(b−1)及び前記水添ブロック共重合体(b−2)の重量平均分子量が、それぞれ20,000〜500,000である、上記[1]〜[4]のいずれかの液体包装容器用フィルム。
[6]前記ポリプロピレン系樹脂(a)が、プロピレン単量体単位を60モル%以上含有し、230℃、荷重21.6Nの条件下におけるメルトフローレートが0.1〜30g/10分である、上記[1]〜[5]のいずれかの液体包装容器用フィルム。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかの液体包装容器用フィルムからなる液体包装容器。
[8]内層と外層とを有する少なくとも2層以上の構造の液体包装容器用フィルムからなる液体包装容器であって、前記内層が、前記樹脂組成物(X)からなり、前記外層が、プロピレン単量体単位の含有量が60モル%以上であるポリプロピレン系樹脂(c)を70質量%以上含有する樹脂組成物(P)からなる、上記[7]の液体包装容器。
[9]前記内層と前記外層との間に中間層を少なくとも一層有する、3層以上の構造の液体包装容器用フィルムからなる液体包装容器であって、前記外層が、プロピレン単量体単位の含有量が60モル%以上であるポリプロピレン系樹脂(c)を70質量%以上含有する樹脂組成物(P)からなり、前記樹脂組成物(X)が、内層及び中間層、内層、又は中間層のいずれかを形成し、前記内層を構成する樹脂成分の融点MPinと、前記中間層を構成する樹脂成分の融点MPmidが、下記式
MPin<MPmid
を満たす、上記[8]の液体包装容器。
[10]前記内層を構成する樹脂組成物(X)の融点MPと、前記外層を構成する樹脂組成物(P)の融点MPが、下記式
0<MP−MP≦50
を満たす、上記[8]又は[9]に記載の液体包装容器。
[11]上記[7]〜[10]のいずれかの液体包装容器からなる医療用具。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来と同等以上の透明性及び柔軟性を有しつつ、破袋強度に優れた、液体包装容器用フィルム及び液体包装容器を提供できる。これらの特性を有することにより、本発明の液体包装容器は特に医療用に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例及び比較例における液体包装容器の亀裂進行様式の観察部位、並びに亀裂進行様式を示す模式図である。
図2】実施例1で亀裂進行様式を観察した際の走査型電子顕微鏡の写真図である。
図3】比較例1で亀裂進行様式を観察した際の走査型電子顕微鏡の写真図である。
図4】原子間力顕微鏡を用い、フィルム製造時の機械方向(MD)に沿って、液体包装容器用フィルムの内層又は中間層を走査して得られた実施例の画像の模式図である。
図5】原子間力顕微鏡を用い、フィルム製造時の機械方向(MD)に沿って、液体包装容器用フィルムの内層又は中間層を走査して得られた比較例の画像の模式図である。
図6】原子間力顕微鏡を用い、フィルム製造時の機械方向(MD)に沿って、液体包装容器用フィルムの内層又は中間層を走査して得られた比較例の画像の模式図である。
図7】原子間力顕微鏡を用い、フィルム製造時の機械方向(MD)に沿って、液体包装容器用フィルムの内層又は中間層を走査して得られた比較例の画像の模式図である。
図8】原子間力顕微鏡を用い、フィルム製造時の機械方向(MD)に沿って、液体包装容器用フィルムの内層又は中間層を走査して得られた比較例の画像の模式図である。
図9】原子間力顕微鏡を用い、フィルム製造時の機械方向(MD)に沿って、液体包装容器用フィルムの内層又は中間層を走査して得られた比較例の画像の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、好ましいとする規定は任意に選択することができ、好ましいとする規定同士の組み合わせはより好ましいといえる。
【0012】
[液体包装容器用フィルム]
本発明は、ポリプロピレン系樹脂(a)と、少なくとも一種の水添ブロック共重合体(b)とを含有する樹脂組成物(X)からなる層を少なくとも一層有する、液体包装容器用フィルムである。
以下に、樹脂組成物(X)における、ポリプロピレン系樹脂(a)と、少なくとも一種の水添ブロック共重合体(b)について順次説明する。
【0013】
〔ポリプロピレン系樹脂(a)〕
ポリプロピレン系樹脂(a)は、プロピレンに由来する構造単位(プロピレン単量体単位)の含有量が60モル%以上であることが好ましく、それ以外について特に制限はなく、公知のポリプロピレン系樹脂を用いることができる。プロピレン単量体単位の含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは95〜99モル%である。プロピレン以外に由来する構造単位としては、例えば、エチレンに由来する構造単位、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ノネン、1−デセン等のα−オレフィンに由来する構造単位のほか、後述の変性剤に由来する構造単位なども挙げられる。
【0014】
ポリプロピレン系樹脂(a)としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−オクテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセンランダム共重合体などが挙げられる。また、これらのポリプロピレン系樹脂に、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;それら不飽和モノカルボン酸又は不飽和ジカルボン酸のエステル、アミド又はイミド;無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物などの変性剤をグラフト共重合した変性ポリプロピレン系樹脂を用いることもできるが、ポリプロピレン系樹脂(a)としては、変性されていないものが好ましい。
中でも、比較的安価、かつ容易に入手できるという観点から、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体が好ましく、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体がより好ましく、プロピレン−エチレンランダム共重合体がさらに好ましい。
ポリプロピレン系樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂(a)の230℃、21.6Nの条件下で測定されるメルトフローレート(MFR)は、樹脂組成物(X)の成形加工性の観点から、0.1〜30g/10分であることが好ましく、1〜20g/10分であることがより好ましく、1〜10g/10分であることがさらに好ましい。なお、本明細書及び特許請求の範囲に記載の「メルトフローレート」は全て、JISK 7210に準拠して測定した値である。
また、ポリプロピレン系樹脂(a)の融点は、特に制限されるものではないが、好ましくは120〜180℃、より好ましくは120〜170℃である。本明細書及び特許請求の範囲に記載の「融点」は全て、実施例に記載の方法で測定したものである。
【0016】
〔水添ブロック共重合体(b)〕
水添ブロック共重合体(b)は、芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック(A)と、イソプレン(Ip)単位、ブタジエン(Bd)単位、又はイソプレン(Ip)及びブタジエン(Bd)単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物である。
以下、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)について順に説明する。
【0017】
(重合体ブロック(A))
重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主体とする。ここで言う「主体とする」とは、重合体ブロック(A)の合計質量に基づいて芳香族ビニル化合物由来の構造単位を50質量%以上含むことをいう。該重合体ブロック(A)中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量は、樹脂組成物(X)の透明性及び機械的特性の観点から、重合体ブロック(A)の合計質量に基づいて、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
上記芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチル−o−メチルスチレン、α−メチル−m−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、β−メチル−o−メチルスチレン、β−メチル−m−メチルスチレン、β−メチル−p−メチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチル−2,6−ジメチルスチレン、α−メチル−2,4−ジメチルスチレン、β−メチル−2,6−ジメチルスチレン、β−メチル−2,4−ジメチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、α−クロロ−o−クロロスチレン、α−クロロ−m−クロロスチレン、α−クロロ−p−クロロスチレン、β−クロロ−o−クロロスチレン、β−クロロ−m−クロロスチレン、β−クロロ−p−クロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、α−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、α−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、o−t−ブチルスチレン、m−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、o−、m−又はp−ブロモメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン誘導体、インデン、ビニルナフタレン等が挙げられる。中でも、製造コストと物性バランスの観点から、スチレン、α−メチルスチレン、及びこれらの混合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
【0018】
但し、本発明の目的及び効果の妨げにならない限り、重合体ブロック(A)は芳香族ビニル化合物以外の他の不飽和単量体を10質量%以下の割合で含有していてもよい。該他の不飽和単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、イソブチレン、メタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、N−ビニルカルバゾール、β−ピネン、8,9−p−メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2−メチレンテトラヒドロフラン等から選択される少なくとも1種が挙げられる。重合体ブロック(A)が該他の不飽和単量体単位を含有する場合の結合形態は特に制限はなく、ランダム、テーパー状のいずれでもよい。
【0019】
重合体ブロック(A)の重量平均分子量は、2,500〜100,000であることが好ましく、より好ましくは2,500〜50,000、さらに好ましくは3,000〜30,000である。なお、本明細書及び特許請求の範囲に記載の「重量平均分子量」は全て、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0020】
水添ブロック共重合体(b)における重合体ブロック(A)の含有量は、樹脂組成物(X)から形成される層のゴム弾性及び柔軟性の観点から、5〜40質量%であることが好ましく、7〜35質量%であることがより好ましい。
また、後述するように、前記水添ブロック共重合体(b)が、ガラス転移温度の異なる水添ブロック共重合体(b−1)と水添ブロック共重合体(b−2)とを少なくとも含む場合、樹脂組成物(X)から形成される層のゴム弾性および、柔軟性及び成形性の観点、また水添ブロック共重合体(b−1)及び(b−2)の生産性の観点から、ガラス転移温度が−45℃未満の水添ブロック共重合体(b−1)における芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック(A)の含有量は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは5〜38質量%であり、さらに好ましくは7〜30質量%、よりさらに好ましくは8〜25質量%である。また、上記同様の観点から、ガラス転移温度が−45℃以上の水添ブロック共重合体(b−2)における芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック(A)の含有量は、好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは5〜38質量%であり、さらに好ましくは7〜30質量%、よりさらに好ましくは8〜25質量%である。
なお、水添ブロック共重合体(b)における重合体ブロック(A)の含有量は、H−NMRスペクトルにより求めた値である。
【0021】
(重合体ブロック(B))
重合体ブロック(B)は、共役ジエン化合物由来の構造単位を主体とする。ここで言う「主体とする」とは、重合体ブロック(B)の合計質量に基づいて共役ジエン化合物に由来する構造単位を50質量%以上含むことをいう。該重合体ブロック(B)中の共役ジエン化合物に由来する構造単位の含有量は、重合体ブロック(B)の合計質量に基づいて、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
重合体ブロック(B)を構成する共役ジエン化合物としては、イソプレン(Ip)単位、ブタジエン(Bd)単位、又はイソプレン(Ip)及びブタジエン(Bd)単位を主体とし、さらに、例えば、2,3−ジメチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
重合体ブロック(B)としては、上記のとおり、イソプレン(Ip)単位、ブタジエン(Bd)単位、又はイソプレン(Ip)及びブタジエン(Bd)単位を主体とするが、ブタジエン(Bd)単位、又はイソプレン(Ip)及びブタジエン(Bd)単位を主体として構成されていると、得られる液体包装容器の低温での柔軟性に優れるため好ましい。さらに、イソプレン(Ip)及びブタジエン(Bd)単位を主体として構成されていると、得られる液体包装容器の透明性が優れるため、より好ましい。上記、イソプレン(Ip)及びブタジエン(Bd)の混合割合は、特に制限されないが、性能向上等の観点から、混合割合(ブタジエン/イソプレン)(モル比)は、10/90〜90/10の範囲内であることが好ましく、30/70〜70/30の範囲内であることがより好ましく、40/60〜60/40の範囲内であることがさらに好ましい。また、重合体ブロック(B)は、イソプレン(Ip)及びブタジエン(Bd)単位を主体とする構成である場合、それらの結合形態は特に制限はなく、ランダム、テーパー、完全交互、一部ブロック状、ブロック、又はそれらの2種以上の組合せからなることができる。
【0022】
重合体ブロック(B)を構成する共役ジエンの結合形態は特に制限されず、例えば、ブタジエンの場合には、1,2−結合、1,4−結合を、イソプレンの場合には、1,2−結合、3,4−結合、1,4−結合をとることができる。
なお、本明細書において、重合体ブロック(B)がイソプレン単位を含む場合は1,2−結合量及び3,4−結合量の合計量をビニル結合量といい、重合体ブロック(B)がブタジエン単位からなる場合は、1,2−結合量をビニル結合量といい、重合体ブロック(B)の全結合形態におけるビニル結合量の含有量をビニル化度(%)と称する。1,2−結合量及び3,4−結合量は、H−NMR測定によって算出できる。
【0023】
重合体ブロック(B)の重量平均分子量は、樹脂組成物(X)の柔軟性の観点から10,000〜300,000であることが好ましく、より好ましくは20,000〜270,000、さらに好ましくは40,000〜240,000である。
【0024】
また、耐熱性、及び透明性の観点から、重合体ブロック(B)が有する炭素−炭素二重結合の80モル%以上が水素添加(以下、水添と略称することがある。)されているものが好ましい。重合体ブロック(B)の水素添加率(水添率)は、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは90モル%である。また、後述するように、前記水添ブロック共重合体(b)が、ガラス転移温度の異なる水添ブロック共重合体(b−1)と水添ブロック共重合体(b−2)とを少なくとも含む場合、水添ブロック共重合体(b−1)及び(b−2)の水添率は、それぞれ80モル%以上であることが好ましく、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは90モル%である。
なお、上記の水素添加率は、重合体ブロック(B)中の共役ジエン化合物に由来する構造単位中の炭素−炭素二重結合の含有量を、水素添加の前後においてヨウ素価を測定し算出した値である。
【0025】
さらに、重合体ブロック(B)は、本発明の目的及び効果の妨げにならない限り、重合体ブロック(B)の合計質量に基づいて、通常は好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下で、イソプレン(Ip)単位、ブタジエン(Bd)単位以外の他の共役ジエン以外の重合性の単量体に由来する構造単位を含有していてもよい。該他の重合性の単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン及びビニルアントラセン等の芳香族ビニル化合物並びにメタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、N−ビニルカルバゾール、β−ピネン、8,9−p−メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2−メチレンテトラヒドロフラン等から選択される少なくとも1種の化合物が好ましく挙げられる。重合体ブロック(B)がイソプレン(Ip)単位、ブタジエン(Bd)単位以外の他の重合体の単量体に由来する構造単位を含有する場合、その結合形態は特に制限はなく、ランダム、テーパー状のいずれでもよい。
【0026】
(重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の結合様式)
水添ブロック共重合体(b)は、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とが結合している限りは、その結合形式は限定されず、直鎖状、分岐状、放射状、又はこれらの2つ以上が組合わさった結合様式のいずれでもよい。中でも、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の結合形式は直鎖状であることが好ましく、その例としては重合体ブロック(A)をAで、また重合体ブロック(B)をBで表したときに、A−Bで示されるジブロック共重合体、A−B−Aで示されるトリブロック共重合体、A−B−A−Bで示されるテトラブロック共重合体、A−B−A−B−Aで示されるペンタブロック共重合体、(A−B)nX型共重合体(Xはカップリング剤残基を表し、nは3以上の整数を表す)等を挙げることができる。中でも、トリブロック共重合体(A−B−A)が、水添ブロック共重合体(b)の柔軟性、製造の容易性等の点から好ましく用いられる。
ここで、本明細書においては、同種の重合体ブロックが二官能のカップリング剤等を介して直線状に結合している場合、結合している重合体ブロック全体は一つの重合体ブロックとして取り扱われる。これに従い、上記例示も含め、本来厳密にはY−X−Y(Xはカップリング残基を表す)と表記されるべき重合体ブロックは、特に単独の重合体ブロックYと区別する必要がある場合を除き、全体としてYと表示される。本明細書においては、カップリング剤残基を含むこの種の重合体ブロックを上記のように取り扱うので、例えば、カップリング剤残基を含み、厳密にはA−B−X−B−A(Xはカップリング剤残基を表す)と表記されるべきブロック共重合体はA−B−Aと表記され、トリブロック共重合体の一例として取り扱われる。
また、水添ブロック共重合体(b)には、本発明の目的を損なわない範囲内で、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)以外の、他の重合性単量体からなる重合体ブロック(C)が存在していてもよい。この場合、重合体ブロック(C)をCで表したとき、ブロック共重合体の構造としては、A−B−C型トリブロック共重合体、A−B−C−A型テトラブロック共重合体、A−B−A−C型テトラブロック共重合体等が挙げられる。
【0027】
水添ブロック共重合体(b)、及び後述するガラス転移温度の異なる水添ブロック共重合体(b−1)と水添ブロック共重合体(b−2)の重量平均分子量は、それぞれ20,000〜500,000であることが好ましく、35,000〜400,000であるのがより好ましく、40,000〜300,000であるのがさらに好ましい。水添ブロック共重合体(b)の重量平均分子量が20,000未満である場合には、樹脂組成物(X)の耐熱性が低下し、一方、500,000を超える場合には樹脂組成物(X)の成形加工性が不十分となる。
【0028】
水添ブロック共重合体(b)は、本発明の目的及び効果を損なわない限り、分子鎖中及び/又は分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基等の官能基を、1種又は2種以上を有していてもよい。
水添ブロック共重合体(b)の流動性は、樹脂組成物(X)の成形加工性を向上させる観点から、230℃、21.6Nで測定したメルトフローレートが0.1〜80g/10分であることが好ましく、1〜50g/10分であることがより好ましい。
【0029】
(前記水添ブロック共重合体(b)の製造方法)
水添ブロック共重合体(b)は、溶液重合法、乳化重合法又は固相重合法等により製造することができる。中でも溶液重合法が好ましく、例えば、アニオン重合やカチオン重合等のイオン重合法、ラジカル重合法等の公知の方法を適用できる。中でも、アニオン重合法が好ましい。アニオン重合法では、溶媒、アニオン重合開始剤、及び必要に応じてルイス塩基の存在下、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物を逐次添加して、ブロック共重合体を得、次いでブロック共重合体を水素添加することにより、水添ブロック共重合体(b)を得ることができる。
【0030】
上記方法において重合開始剤として用いられる有機リチウム化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、ペンチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等のモノリチウム化合物及びテトラエチレンジリチウム等のジリチウム化合物等が挙げられる。
溶媒としては、アニオン重合反応に悪影響を及ぼさなければ特に制限はなく、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ペンタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。また、重合反応は、通常、0〜100℃で0.5〜50時間行う。
【0031】
上記した方法により重合を行なった後、アルコール類、カルボン酸類、水等の活性水素化合物を添加して重合反応を停止させ、公知の方法にしたがって不活性有機溶媒中で水添触媒の存在下に水添して、水素添加物とすることができる。水添反応は、水添触媒の存在下に、反応温度20〜100℃、水素圧力0.1〜10MPaの条件下で行うことができる。
水添触媒としては、例えば、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Ni等の金属をカーボン、アルミナ、珪藻土等の単体に担持させた不均一系触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物等との組み合わせからなるチーグラー系触媒;メタロセン系触媒等が挙げられる。
【0032】
このようにして得られた水添ブロック共重合体(b)は、重合反応液をメタノールなどに注ぐことにより凝固させた後、加熱又は減圧乾燥させるか、重合反応液をスチームと共に熱水中に注ぎ、溶媒を共沸させて除去するいわゆるスチームストリッピングを施した後、加熱又は減圧乾燥することにより取得することができる。
また、水添ブロック共重合体(b)、(b−1)及び(b−2)の製造方法については、例えば、特開平10−67894号公報、国際公開第2009/031625号の記載に準じて製造することができ、本明細書において、国際公開第2009/031625号の記載を援用する。
【0033】
〔樹脂組成物(X)〕
樹脂組成物(X)は、前記ポリプロピレン系樹脂(a)と、少なくとも一種の前記水添ブロック共重合体(b)とを含有するものであり、樹脂組成物(X)中において水添ブロック共重合体(b)は、(i)その長軸が1μm以上の島相又は共連続構造と、(ii)その長軸が300nm以下の島相との両方の構造を有する相分離構造を有する。
【0034】
ここで、例えば、一種の水添ブロック共重合体(b)が(i)長軸1μm以上の島相又は共連続構造と、(ii)長軸300nm以下の島相との両構造を形成する相分離構造を形成する場合には、例えば、まず、ポリプロピレン系樹脂(a)に水添ブロック共重合体(b)を高剪断力で混練して、長軸300nm以下の島相を形成するように分散させた後、さらに水添ブロック共重合体(b)を低剪断力で混練して、長軸1μm以上の島相又は共連続構造を形成して、相分離構造を有する樹脂組成物(X)を製造してもよい。
【0035】
前記樹脂組成物(X)中において、少なくとも一種の水添ブロック共重合体(b)が、長軸1μm以上の島相であり、好ましくは長軸1.1μm以上、5μm以下の島相であり、さらに好ましくは長軸1.2μm以上、3μm以下の島相であり、又は共連続構造で存在する。以下、「長軸1μm以上の島相」を、「大きな島相」ともいう。
一方、前記樹脂組成物(X)中において、上記水添ブロック共重合体(b)と同種又は他種の水添ブロック共重合体(b)が、長軸300nm以下の島相であり、好ましくは長軸1nm以上、200nm以下であり、さらに好ましくは長軸10nm以上、100nm以下の島相で存在する。以下、「長軸300nm以下の島相」を「小さな島相」ともいう。
前記樹脂組成物(X)中において、前記水添ブロック共重合体(b)は、後述する分子間力顕微鏡にてフィルム製造時の機械方向(MD)に沿って走査して得られた画像に基づく模式図の、図4のAに示すような、大きな島相又は共連続構造と、小さな島相との両構造からなる相分離構造を有する特定のモルフォロジーを形成する。このことにより、前記樹脂組成物(X)からなる層に亀裂が入ったとしても、亀裂は、前記樹脂組成物(X)中において、液体包装容器用フィルムの機械方向(MD)に配向した、ポリプロピレン系樹脂(a)に対して相溶性の乏しい水添ブロック共重合体(b)の大きな島相又は共連続構造に沿って、液体包装容器用フィルムの機械方向(MD)に進行する。従って、層の厚み方向に向かって亀裂が進行することが抑制されることから、破袋強度に優れると推測される。一方、ポリプロピレン系樹脂(a)に対して相溶性の乏しい水添ブロック共重合体(b)の小さい島相が、前記樹脂組成物(X)においてほぼ均一に分散するため、樹脂組成物(X)からなる層の柔軟性及び透明性に優れると推測される。
【0036】
また、本発明では、前記水添ブロック共重合体(b)が、ガラス転移温度の異なる水添ブロック共重合体(b−1)と水添ブロック共重合体(b−2)とを少なくとも含み、水添ブロック共重合体(b−1)のガラス転移温度が−45℃未満であり、水添ブロック共重合体(b−2)のガラス転移温度が−45℃以上であることが好ましい。水添ブロック共重合体(b)がガラス転移温度の異なる水添ブロック共重合体(b−1)及び(b−2)を含有することにより、樹脂組成物(X)中で、上記大きな島相又は共連続構造と、小さな島相との両構造からなる相分離構造を形成しやすくなると考えられる。樹脂組成物(X)中において、水添ブロック共重合体(b−1)は長軸1μm以上の島相又は共連続構造を形成する傾向があり、水添ブロック共重合体(b−2)は長軸300nm以下の島相を形成する傾向がある。
【0037】
前記水添ブロック共重合体(b)が、前記水添ブロック共重合体(b−1)と水添ブロック共重合体(b−2)とを少なくとも含む場合、前記樹脂組成物(X)において、水添ブロック共重合体(b−1)と水添ブロック共重合体(b−2)との質量比[(b−1)/(b−2)]は、5/95〜95/5が好ましく、15/85〜85/15がより好ましく、40/60〜60/40がさらに好ましい。水添ブロック共重合体(b−1)と水添ブロック共重合体(b−2)との質量比が上記範囲内にあると、図4に示すような特定のモルフォロジーが形成されやすくなり、その結果、上述したメカニズムのように、樹脂組成物(X)からなる単層中の亀裂が、単層の厚み方向ではなく表面とほぼ水平方向に亀裂が進行して、破袋強度が向上する。
【0038】
前記ガラス転移温度が−45℃未満の水添ブロック共重合体(b−1)の重合体ブロック(B)(以下、重合体ブロック(B−1)と称する)のビニル化度は、このガラス転移温度を満たすために、重合体ブロック(B−1)がブタジエン(Bd)単位を主体として構成される場合は、ビニル化度(1,2−結合の含有量)は75モル%未満が好ましく、より好ましくは70モル%未満、さらに好ましくは60モル%未満である。重合体ブロック(B−1)がイソプレン(Ip)単位を主体として構成される場合は、ビニル化度(1,2−結合及び3,4−結合の含有量)は50モル%未満が好ましく、より好ましくは45モル%未満、さらに好ましくは40モル%未満である。重合体ブロック(B−1)がイソプレン(Ip)及びブタジエン(Bd)単位を主体として構成される場合は、ビニル化度(1,2−結合及び3,4−結合の含有量)は60モル%未満が好ましく、より好ましくは55モル%未満であり、さらに好ましくは50モル%未満である。
また、前記ガラス転移温度が−45℃以上の水添ブロック共重合体(b−2)の重合体ブロック(B)(以下、重合体ブロック(B−2)と称する)のビニル化度は、このガラス転移温度を満たすために、重合体ブロック(B−2)がブタジエン(Bd)単位を主体として構成される場合は、ビニル化度(1,2−結合の含有量)は60モル%以上が好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上である。重合体ブロック(B−2)がイソプレン(Ip)単位を主体として構成される場合は、ビニル化度(1,2−結合及び3,4−結合の含有量)は40モル%以上が好ましく、より好ましくは45モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上である。重合体ブロック(B−2)がイソプレン(Ip)及びブタジエン(Bd)単位を主体として構成される場合は、ビニル化度(1,2−結合及び3,4−結合の含有量)は50モル%以上が好ましく、より好ましくは55モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上である。
【0039】
〔水添ブロック共重合体(b−1)、(b−2)の製造〕
前記水添ブロック共重合体(b−1)及び(b−2)の製造方法としては、前述の水添ブロック共重合体(b)の製造方法と同様の方法で製造できるが、アニオン重合法により製造することが好ましい。具体的には、アルキルリチウム化合物を重合開始剤として芳香族ビニル化合物、共役ジエン、芳香族ビニル化合物を逐次重合させる方法;アルキルリチウム化合物を重合開始剤として芳香族ビニル化合物、共役ジエンを逐次重合させ、次いでカップリング剤を加えてカップリングする方法;ジリチウム化合物を重合開始剤として共役ジエン、次いで芳香族ビニル化合物を逐次重合させる方法等が挙げられる。
【0040】
上記のアルキルリチウム化合物としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ペンチルリチウム等が挙げられる。カップリング剤としてはジクロロメタン、ジブロモメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン、ジブロモベンゼン、安息香酸フェニル等が挙げられる。また、ジリチウム化合物としてはナフタレンジリチウム、ジリチオヘキシルベンゼン等が挙げられる。
これらのアルキルリチウム化合物、ジリチウム化合物等の重合開始剤及びカップリング剤の使用量は、目的とする水添ブロック共重合体(b−1)及び水添ブロック共重合体(b−2)の所望とする重量平均分子量により適宜決定される。通常は、アルキルリチウム化合物、ジリチウム化合物等の開始剤は、重合に用いる芳香族ビニル化合物、ブタジエン、イソプレン等の重合性単量体の合計100質量部あたり0.01〜0.5質量部の割合で用いられ、カップリング剤を使用する場合は、前記重合性単量体の合計100質量部あたり0.001〜0.8質量部の割合で用いられる。
【0041】
上記のアニオン重合は、溶媒の存在下で行うのが好ましい。溶媒としては、重合開始剤に対して不活性で、重合反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限はない。例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、ベンゼン、キシレン等の飽和脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素が挙げられる。また、重合反応は、上記した(i)〜(iii)のいずれの方法による場合も、通常0〜80℃、好ましくは10〜70℃の温度で、0.5〜50時間、好ましくは1〜30時間行う。
【0042】
また、水添ブロック共重合体(b−2)の重合体ブロック(B−2)部分のガラス転移温度を−45℃以上の範囲内に制御するには、重合の際に共触媒としてルイス塩基を重合に用い、水添ブロック共重合体(b−2)の重合体ブロック(B−2)のビニル化度を前記好ましい範囲内に制御するのが望ましい。
また、水添ブロック共重合体(b−1)の重合体ブロック(B−1)部分のガラス転移温度を−45℃未満の範囲内に制御するには、上記したルイス塩基を用いないか、又はルイス塩基を用いる場合は、重合に用いる単量体100質量部あたり0.5質量部未満の量を添加して、水添ブロック共重合体(b−1)の重合体ブロック(B−1)のビニル化度を前記好ましい範囲内に制御するのが望ましい。
【0043】
前記ルイス塩基としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン、N−メチルモルホリン等のアミン類等が挙げられる。これらのルイス塩基は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ルイス塩基の添加量は、重合体ブロック(B)のビニル化度をどの程度に制御するかにより決定される。そのため、ルイス塩基の添加量に厳密な意味での制限はないが、重合開始剤として用いられるアルキルリチウム化合物又はジリチウム化合物に含有されるリチウム1グラム原子あたり、通常0.1〜1,000モル、好ましくは1〜100モルの範囲内で用いる。
【0044】
上記した方法により重合を行なった後、重合反応液に含まれるブロック共重合体を、メタノール等のこれらのブロック共重合体の貧溶媒に注いで凝固させるか、又は重合反応液をスチームと共に熱水中に注いで溶媒を共沸によって除去(スチームストリッピング)した後、乾燥させることにより、水素添加されていないブロック共重合体(b−1)及びブロック共重合体(b−2)を得ることができる。
【0045】
続いて、上記で得られたブロック共重合体を水素添加反応に付すことによって、水素添加された水添ブロック共重合体(b−1)及び水添ブロック共重合体(b−2)を製造することができる。水素添加反応は、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Ni等の金属をカーボン、アルミナ、珪藻土等の単体に担持させた不均一系触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物等との組み合わせからなるチーグラー系触媒;メタロセン系触媒等の水素添加触媒の存在下、反応及び水素添加触媒に対して不活性な溶媒に上記で得られたブロック共重合体を溶解させ、水素と反応させることにより行うことができる。
水素添加反応は、水素圧力を通常0.1〜20MPa、好ましくは0.5〜15MPa、反応温度を通常20〜250℃、好ましくは50〜150℃、反応時間を通常0.1〜100時間、好ましくは1〜50時間の範囲で行なうことができる。
なお、上記で得られたブロック共重合体を含む重合反応液からブロック共重合体を単離せず、該重合反応液をそのまま水素添加反応に付すこともできる。この方法による場合、水素添加反応液をメタノール等の貧溶媒に注いで凝固させるか、又は水素添加反応液をスチームと共に熱水中に注いで溶媒を共沸によって除去(スチームストリッピング)した後、乾燥することにより、水素添加されたブロック共重合体(b−1)及びブロック共重合体(b−2)を得ることができる。
【0046】
このようにして得られた水添ブロック共重合体(b−1)及び水添ブロック共重合体(b−2)を、従来公知の方法を用いてペレット化することにより、水添ブロック共重合体(b−1)及び水添ブロック共重合体(b−2)のペレットを製造することができる。
ペレット化の方法としては、例えば、一軸又は二軸押出機から水添ブロック共重合体(b−1)及び/又は水添ブロック共重合体(b−2)をストランド状に押出して、ダイ部前面に設置された回転刃により、水中で切断する方法;一軸又は二軸押出機から水添ブロック共重合体(b−1)及び/又は水添ブロック共重合体(b−2)をストランド状に押出して、水冷又は空冷した後、ストランドカッターにより切断する方法等が挙げられる。このようにして得られたペレットを用いて、前記ポリプロピレン系樹脂(a)と混練して樹脂組成物(X)を製造してもよい。
【0047】
前記樹脂組成物(X)において、ポリプロピレン系樹脂(a)と、水添ブロック共重合体(b)との質量比は[(a)/{(a)+(b)}]が61/100〜95/100であり、好ましくは63/100〜85/100、さらに好ましくは65/100〜80/100である。
ポリプロピレン系樹脂(a)と、水添ブロック共重合体(b)との質量比を、上記範囲内にすることで、ポリプロピレン系樹脂(a)が海相になり、水添ブロック共重合体(b)が島相又は共連続構造になることによって、上述したメカニズムによって破袋強度が向上すると推測される。水添ブロック共重合体(b)を5質量%以上用いることで、柔軟性、透明性、破袋強度が向上し、また40質量%以下にすることでドライブレンド混練でも均一なるフィルムが得られ、押出成形性が安定であるほか、フィルムの内層膠着が起こりにくいため液体包装容器として好ましい。
【0048】
〔その他の成分〕
樹脂組成物(X)は、前記ポリプロピレン系樹脂(a)及び水添ブロック共重合体(b)以外に、本発明の効果が損なわれない範囲において、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、結晶核剤等の添加剤;水添クマロン・インデン樹脂、水添ロジン系樹脂、水添テルペン樹脂、脂環族系水添石油樹脂等の水添系樹脂;オレフィン及びジオレフィン重合体からなる脂肪族系樹脂等の粘着付与樹脂;水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体、水添スチレン−イソプレンランダム共重合体、ブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリプロピレン系樹脂(a)以外のポリオレフィン系エラストマー、具体的にはエチレン―プロピレン共重合体、エチレン―ブチレン共重合体、プロピレン―ブチレン共重合体等の他の重合体を含有していてもよい。なお、食品・医療用途で使用される場合には内容物への溶出を防ぐ目的から、軟化剤を含まないものが好ましい。
【0049】
〔液体包装容器用フィルムの製造方法〕
本発明の液体包装容器用フィルムは前述の樹脂組成物(X)からなる層を少なくとも一層有するものである。液体包装容器用フィルムの製造方法としては特に制限は無く、例えば、前記ポリプロピレン系樹脂(a)、水添ブロック共重合体(b)及び必要に応じて添加される他の成分を、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等の混練機を用いて混練し、樹脂組成物(X)を製造する。得られた樹脂組成物(X)を、各種成形法によりフィルム状に成形する。このとき、後述するとおり樹脂組成物(X)以外の樹脂組成物からなる層との複層積層体とすることもでき、多層Tダイを用いた共押出し成形や、多層円形Tダイを用いた空冷又は水冷インフレーション成形等により成形してもよい。成形時の樹脂温度は、好ましくは150〜300℃、より好ましくは180〜250℃である。
【0050】
[液体包装容器]
<単層からなる液体包装容器>
本発明の、前記樹脂組成物(X)からなる液体包装容器用フィルムは、単層でも液体包装容器に使用することができる。この場合、単層の厚みは、好ましくは100〜500μm、より好ましくは110〜400μm、さらに好ましくは120〜300μmである。
単層の厚みを上記範囲内にすることで、図4に示すような特定のモルフォロジーが形成された層は、亀裂が一部入ったとしても、上述したメカニズムにより、層の厚み方向に亀裂が進行することなく、厚みの途中で表面にほぼ水平に亀裂が進行するため、単層でも良好な破袋強度が得られる。
【0051】
<2層からなる液体包装容器>
2層からなる液体包装容器は、内層と外層とを有する少なくとも2層を有する液体包装容器であって、前記内層が、上述した樹脂組成物(X)からなり、前記外層が、プロピレン単量体単位の含有量が60モル%以上であるポリプロピレン系樹脂(c)を70質量%以上含有する樹脂組成物(P)からなる。
【0052】
(内層)
内層は、上述したように、ポリプロピレン系樹脂(a)と、少なくとも一種の水添ブロック共重合体(b)とを含有する樹脂組成物(X)からなり、水添ブロック共重合体(b)は、ガラス転移温度の異なる水添ブロック共重合体(b−1)と水添ブロック共重合体(b−2)とを少なくとも含むことが好ましい。なお、樹脂組成物(X)については上述したとおりであるため、ここでの組成の説明は省略する。
【0053】
(外層)
次に、液体包装容器として用いるときに外気と接する層である外層の材料について説明する。外層は、プロピレン単量体単位の含有量が60モル%以上であるポリプロピレン系樹脂(c)を好ましくは70質量%以上、より好ましくは80〜95質量%含有する樹脂組成物(P)からなる。外層が、ポリプロピレン系樹脂(c)を70質量%以上含有することで、得られるフィルムが傷つき難く、強度に優れるため液体包装容器として用いるのに好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(c)としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−オクテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセンランダム共重合体などが挙げられる。また、これらのポリプロピレン系樹脂に、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;それら不飽和モノカルボン酸又は不飽和ジカルボン酸のエステル、アミド又はイミド;無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物などの変性剤をグラフト共重合した変性ポリプロピレン系樹脂を用いることもできるが、ポリプロピレン系樹脂(c)としては、変性されていないものが好ましい。
中でも、比較的安価、かつ容易に入手できるという観点から、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体が好ましく、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体がより好ましく、ホモポリプロピレンがさらに好ましい。
【0054】
前記ポリプロピレン系樹脂(c)の融点は140〜180℃であることが好ましく、150〜180℃であることがより好ましい。また、前記ポリプロピレン系樹脂(c)は、ヒートシール性の観点から、内層を構成する樹脂組成物(X)が含有する前記ポリプロピレン系樹脂(a)との融点差が10℃以上あることが好ましく、30℃以上あることがより好ましい。
【0055】
外層を構成する樹脂組成物(P)は、同じくヒートシール性の観点から、前記内層を構成する樹脂組成物(X)の融点MPと、前記外層を構成する樹脂組成物(P)の融点MPが、下記式を満たすことが好ましい。
0<MP−MP≦50
【0056】
〔その他の成分〕
樹脂組成物(P)は、前記ポリプロピレン系樹脂(c)以外に、本発明の効果が損なわれない範囲において、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、結晶核剤等の添加剤;水添クマロン・インデン樹脂、水添ロジン系樹脂、水添テルペン樹脂、脂環族系水添石油樹脂等の水添系粘着付与樹脂;オレフィン及びジオレフィン重合体からなる脂肪族系樹脂等の粘着付与樹脂;水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体、水添スチレン−イソプレンランダム共重合体、ブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリブテン、水添スチレン系エラストマー(例えばスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS))、ポリオレフィン系エラストマー(例えばエチレン―プロピレン共重合体、エチレン―ブチレン共重合体、プロピレン―ブチレン共重合体)などの他の重合体を含有していてもよい。
【0057】
上記2層からなる液体包装容器の厚みは、好ましくは100〜500μm、より好ましくは110〜400μm、さらに好ましくは120〜300μmである。その内、外層の厚みの割合は、該液体包装容器を形成するフィルムの厚みに対し、5〜40%であることが好ましく、7〜30%であることがより好ましい。外層の厚みが上記範囲を下回ると液体包装容器の機械強度や耐熱性が不十分になるおそれがある。また、上記範囲を上回っても機械強度や耐熱性に大きな違いがでるわけではなく、包装容器の柔軟性、破袋強度、透明性が劣るおそれがある。
【0058】
ここで、図1の上段に記載したように、液体包装容器をその周端部をヒートシールすることにより作成した場合、液体包装容器を衝撃や落下等が加わった場合に破損が生じることがある。この破損は、内層のヒートシール部位とヒートシールされていない部位との境目が起点となる。その境目から亀裂が入り、図4のような特定のモルフォロジーを有しない場合、図1の亀裂進行様式B及び図3に示すように、液体包装容器の表面へ向けて亀裂が進行するため十分な破袋強度が得られない。一方、上述した樹脂組成物(X)を内層に有する場合には、この内層中において、図1の亀裂進行様式A及び図2に示す亀裂進行様式Aのように、一旦、液体包装容器の表面へ向けて亀裂が入るが、内層中において表面方向への亀裂が止まり、その後、内層と中間層との界面方向と同じ方向に亀裂が進行することが判明しており、その結果、液体包装容器が破損して使えなくなるのを避けることができ、破袋強度が改善されるものと考えられる。亀裂の進行方向が亀裂進行様式Aのように制御又は誘導される正確な理由は不明であるが、次のように推測する。つまり、内層を構成する樹脂組成物(X)に亀裂が入ったとしても、亀裂は、前記樹脂組成物(X)中において、液体包装容器用フィルムの機械方向(MD)に配向した、ポリプロピレン系樹脂(a)中の水添ブロック共重合体(b)からなる長軸1μm以上の島相又は共連続構造に沿って、液体包装容器用フィルムの機械方向(MD)に亀裂が進行するため、層の厚み方向に向かって亀裂が進行することが抑制されることから、破袋強度に優れると推測される。一方、ポリプロピレン系樹脂(a)中の水添ブロック共重合体(b)からなる長軸300nm以下の島相が、前記樹脂組成物(X)においてほぼ均一に分散するため、樹脂組成物(X)からなる層の柔軟性及び透明性に優れると推測される。
【0059】
<3層の構造からなる液体包装容器>
3層の構造からなる液体包装容器は、内層と外層と、その間に中間層を少なくとも一層有する3層以上の構造の液体包装容器であって、外層が、プロピレン単量体単位の含有量が60モル%以上であるポリプロピレン系樹脂(c)を70質量%以上含有する樹脂組成物(P)からなり、樹脂組成物(X)が、内層及び中間層、内層、又は中間層のいずれかを形成する。前記内層を構成する樹脂成分の融点MPinと、前記中間層を構成する樹脂成分の融点MPmidが、下記式
MPin<MPmid
を満たすことが特に好ましい。
【0060】
3層の構成からなる液体包装容器は、例えば以下に示すような、内層、中間層、外層の樹脂成分の構成が挙げられる。
まず、第1の構成は、内層が樹脂組成物(X1)、中間層が樹脂組成物(X2)、外層が樹脂組成物(P)からなる。
ここで、外層の樹脂組成物(P)は、上述したものと同じものを用いることができる。また、内層の樹脂組成物(X1)と中間層の樹脂組成物(X2)は、前記内層を構成する樹脂組成物(X1)の融点MPinと、前記中間層を構成する樹脂組成物(X2)の融点MPmidが、下記式の式を満たす以外、上述の樹脂組成物(X)と同じものを用いることができる。
MPin<MPmid
【0061】
さらにヒートシール性の観点から、前記内層を構成する樹脂組成物(X1)の融点MPx1、と、前記外層を構成する樹脂組成物(P)の融点MPが、下記式を満たすことが好ましい。
0<MP−MPx1≦50
【0062】
上記構成における亀裂が厚み方向に進行しない理由は、内層の樹脂組成物(X1)及び中間層の樹脂組成物(X2)おいて、上述したメカニズムのとおり、フィルムの機械方向に沿って亀裂が内層又は中間層を進行するためと考えられる。
【0063】
次に、第2の構成は、内層が樹脂組成物(X)、中間層が樹脂組成物(Y)、外層が樹脂組成物(P)からなる。
ここで、内層の樹脂組成物(X)と外層の樹脂組成物(P)は、上述したものと同じものを用いることができる。
中間層の樹脂組成物(Y)は、前記内層を構成する樹脂組成物(X)の融点MPinと、前記中間層を構成する樹脂組成物(Y)の融点MPmidが、MPin<MPmidの関係を満たす限り、いかなる樹脂組成物を用いることができるが、さらに液体包装容器のヒートシール性の観点から、外層との樹脂組成物(P)の融点MPoutに対して以下の式を満たすことが好ましい。
MPin<MPmid≦MPout
【0064】
中間層を構成する樹脂組成物(Y)としては、前記式を満たす限り特に制限は無いが、ポリプロピレン系樹脂を50〜100質量%含有する樹脂組成物が好ましく、ポリプロピレン系樹脂を60〜90質量%含有する樹脂組成物がより好ましい。ポリプロピレン系樹脂としては、前記外層を構成する樹脂組成物(P)で説明したポリプロピレン系樹脂(c)と同様のものを用いることができる。
樹脂組成物(Y)は、前記ポリプロピレン系樹脂(c)以外に、本発明の効果が損なわれない範囲において、その他のポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリブタジエン、エチレン―プロピレンコポリマー、ポリブテン、さらにこれらの部分架橋物などを含んでもかまわない。また、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、結晶核剤等の添加剤;水添クマロン・インデン樹脂、水添ロジン系樹脂、水添テルペン樹脂、脂環族系水添石油樹脂等の水添系樹脂;オレフィン及びジオレフィン重合体からなる脂肪族系樹脂等の粘着付与樹脂;水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体、水添スチレン−イソプレンランダム共重合体、ブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリブテン、水添スチレン系エラストマー(例えばスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS))、ポリオレフィン系エラストマー(例えばエチレン―プロピレン共重合体、エチレン―ブチレン共重合体、プロピレン―ブチレン共重合体)等の他の重合体を含有していてもよい。
【0065】
上記構成における亀裂が厚み方向に進行しない理由は、内層の樹脂組成物(X)において、上述したメカニズムのとおり、フィルムの機械方向に沿って亀裂が内層を進行するためと考えられる。
【0066】
さらにヒートシール性の観点から、前記内層を構成する樹脂組成物(X)の融点MP、と、前記外層を構成する樹脂組成物(P)の融点MPが、下記式を満たすことが好ましい。
0<MP−MP≦50
【0067】
次に、第3の構成は、内層が樹脂組成物(Z)、中間層が樹脂組成物(X)、外層が樹脂組成物(P)からなる。
ここで、中間層の樹脂組成物(X)と外層の樹脂組成物(P)は、上述したものと同じものを用いることができる。
内層の樹脂組成物(Z)は、前記内層を構成する樹脂組成物(Z)の融点MPinと、前記中間層を構成する樹脂組成物(X)の融点MPmidが、MPin<MPmidの関係を満たす限り、いかなる樹脂組成物を用いることができるが、さらに液体包装容器のヒートシール性の観点から、外層との樹脂組成物(P)の融点MPoutに対して以下の式を満たすことが好ましい。
MPin<MPmid≦MPout
【0068】
内層を構成する樹脂組成物(Z)としては、前記式を満たす限り特に制限は無いが、ポリプロピレン系樹脂を50〜100質量%含有する樹脂組成物が好ましく、ポリプロピレン系樹脂を60〜90質量%含有する樹脂組成物がより好ましい。ポリプロピレン系樹脂としては、前記外層を構成する樹脂組成物(P)で説明したポリプロピレン系樹脂(c)と同様のものを用いることができる。
樹脂組成物(Y)は、前記ポリプロピレン系樹脂(c)以外に、本発明の効果が損なわれない範囲において、その他のポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリブタジエン、エチレン―プロピレンコポリマー、ポリブテン、さらにこれらの部分架橋物などを含んでもかまわない。また、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、結晶核剤等の添加剤;水添クマロン・インデン樹脂、水添ロジン系樹脂、水添テルペン樹脂、脂環族系水添石油樹脂等の水添系樹脂;オレフィン及びジオレフィン重合体からなる脂肪族系樹脂等の粘着付与樹脂;水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体、水添スチレン−イソプレンランダム共重合体、ブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリブテン、水添スチレン系エラストマー(例えばスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS))、ポリオレフィン系エラストマー(例えばエチレン−―プロピレン共重合体、エチレン−―ブチレン共重合体、プロピレン−―ブチレン共重合体)等の他の重合体を含有していてもよい。
【0069】
上記構成における亀裂が厚み方向に進行しない理由は、内層が厚み方向に亀裂が進行して中間層に達したとしても、中間層の樹脂組成物(X)において、上述したメカニズムのように、フィルムの機械方向に沿って亀裂が中間層を進行するためと考えられる。
【0070】
さらにヒートシール性の観点から、前記樹脂組成物(X)が中間層を形成する場合における前記内層を構成する樹脂成分(Z)の融点MPと、前記外層を構成する樹脂組成物(P)の融点MPが、下記式を満たすことが好ましい。
0<MP−MP≦50
【0071】
以上より、本発明の液体包装容器は、単層構造において前記樹脂組成物(X)を用いることにより、また、2層構造において前記樹脂組成物(X)を内層として用いることにより、さらには、少なくとも3層以上の構造において前記樹脂組成物(X)を内層及び中間層、内層、又は中間層のいずれかに用いることにより、良好な柔軟性、透明性、高いヒートシール強度、低温及び常温における高い破袋強度、並びに低い内層の膠着性を併せ持った液体包装容器となる。
【0072】
上記3層からなる液体包装容器の厚みは、好ましくは100〜500μm、より好ましくは110〜400μm、さらに好ましくは120〜300μmである。その内、前記外層、中間層、及び内層の各層の厚みは用途に応じて適宜調整することができるが、外層の場合、該液体包装容器の厚みに対する割合として4〜50%が好ましく、7〜30%がより好ましく、中間層の場合、該液体包装容器の厚みに対する割合として30%〜95%が好ましく、35〜80%がより好ましく、内層の場合、該液体包装容器の厚みに対する割合として1〜50%が好ましく、5〜30%がさらに好ましい。すなわち、内層の厚みは5〜40μmが好ましく、10〜40μmがより好ましい。中間層の厚みは100〜300μmが好ましく、100〜200μmがより好ましく、100〜180μmがさらに好ましい。外層の厚みは15〜120μmが好ましく、15〜80μmがより好ましく、15〜70μmがさらに好ましい。各層の厚みが上記範囲にあることで液体包装容器が柔軟性、破袋強度、透明性のバランスに優れる。
【0073】
さらに3層構成における各層の層比が上記範囲にあり、水添ブロック共重合体(b)が、前記水添ブロック共重合体(b−1)と水添ブロック共重合体(b−2)とを少なくとも含む場合、樹脂組成物(X)の水添ブロック共重合体(b−1)と水添ブロック共重合体(b−2)との質量比[(b−1)/(b−2)]は、内層においては95/5〜60/40が好ましく、95/5〜70/30がより好ましい。また、中間層においては5/95〜40/60が好ましく、5/95〜30/70がより好ましい。内層における水添ブロック共重合体(b−1)の割合が多いと、図4に示すような特定のモルフォロジーが形成されやすくなり、中間層における水添ブロック共重合体(b−2)の割合が多いと、フィルムの柔軟性・透明性が向上するため、液体包装容器が柔軟性、破袋強度、透明性のバランスに優れる。
【0074】
また、前記中間層及び/又は内層が樹脂組成物(X)で構成され、水添ブロック共重合体(b−1)を含む場合は、水添ブロック共重合体(b−1)を含まない場合よりも低温融着時のヒートシール性に優れる。これによりヒートシール可能な温度範囲が広くなるので、容器製造時のヒートシール条件を選択することによって簡単に手で剥離できるようにヒートシール(イージーピール)することもでき、また強固にヒートシールすることもできるため、ダブルバッグのような収容部を2以上備えた液体包装容器として利用できる。
【0075】
上述した液体包装容器のいずれの実施形態においても、前記内層、中間層、外層の層間や、外層の表面には、本発明の効果を損なわない限り、さらに他の層を有していてもよい。他の層としては、接着層、保護層、コーティング層、光反射層、ガスバリア層、光吸収層等が挙げられる。
本発明の液体包装容器としては、前記内層と前記中間層とが接していることが好ましく、前記中間層と前記外層とが接していることが好ましい。
【0076】
[液体包装容器の製造方法]
前記内層及び外層を有する少なくとも2層を有する液体包装容器、及び、前記内層、中間層及び外層を有する少なくとも3層を有する液体包装容器の製造方法としては特に制限はなく、公知の積層体の製造方法を利用して本発明の液体包装容器用フィルム(積層体)を形成し、次いでヒートシールを行った後、切り離す(切り出す)ことによって液体包装容器とし、医療用途の場合にはさらに滅菌処理される。収容部を2以上設ける場合は、ヒートシール条件を選択することによってイージーピールシール部と強固にヒートシールした部位を有する2以上の収納部を形成することができ、ダブルバッグとして利用できる。輸液用ダブルバッグとして利用した場合、内容物を区分しているイージーピールシール部を手で簡単に開通させて内容物を混合することができる。また輸液用ダブルバッグの周縁部は強融着されているので輸送、保管又は取扱中に内容物が漏れることはなく、イージーピールシール部も一定の接着強度を有しているので輸送、保管又は取扱中に内容物が混合することはない。
【0077】
液体包装容器の製造方法としては、例えば次の方法が好ましく挙げられる。まず、各層の材料となる各樹脂組成物を、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等の混練機を用いて混練する。得られた各樹脂組成物を、多層Tダイを用いた共押出し成形や、多層円形Tダイを用いた空冷又は水冷インフレーション成形等により、フィルム状、シート状又はチューブ状等に成形する。成形時の樹脂温度は、好ましくは150〜300℃、より好ましくは180〜250℃である。空冷又は水冷インフレーション成形時の冷却温度は、好ましくは7〜70℃、より好ましくは10〜40℃である。また、液体包装容器の製造容易性の観点からは、フィルムをチューブ状に成形するのが好ましい。チューブ状の成形体であれば、ヒートシールした後、切り離す(切り出す)ことによって、液体包装容器を製造できる。
医療用途の場合にはさらに滅菌処理として、水蒸気滅菌やオートクレーブ滅菌等がなされる。オートクレーブ滅菌の場合には、加熱温度は、好ましくは100〜150℃、より好ましくは110〜140℃である。
なお、液体を注入するためのポート、液体を取り出すためのゴム栓を含むキャップ等を有することで、輸液バッグ等の医療用具として有効に利用される。
【0078】
[医療用具]
本発明の医療用具は、上述した液体包装容器からなり、医療用具としては、例えば、輸液バッグ等が挙げられる。
【0079】
[用途]
本発明の液体包装容器は、種々の用途に使用できる。例えば、前述の医療容器のほか、レトルト食品、マヨネーズ、ケチャップ、清涼飲料水、アイス等を包装する食品包装容器等としても有効に利用できる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されない。なお、実施例及び比較例中の各物性は、以下の方法により測定又は評価した。
【0081】
[測定又は評価方法]
<重量平均分子量(Mw)>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算分子量として求めた。
・装置:GPC装置「HLC−8020」(東ソ−株式会社製)
・分離カラム:東ソ−株式会社製の「TSKgel GMHXL」、「G4000HXL」及び「G5000HXL」を直列に連結した。
・溶離剤:テトラヒドロフラン
・溶離剤流量:1.0ml/分
・カラム温度:40℃
・検出方法:示差屈折率(RI)
【0082】
<水添ブロック共重合体(b)における重合体ブロック(A)の含有量、重合体ブロック(B)のビニル結合量(1,2−結合量及び3,4−結合量)>
H−NMR測定によって求めた。
・装置:核磁気共鳴装置「ADVANCE 400 Nano bay」(Bruker社製)
・溶媒:重水素化クロロホルム
【0083】
<水添ブロック共重合体(b)における重合体ブロック(B)の水素添加率>
水素添加前後のブロック共重合体0.3gのヨウ素価を測定し、その比よりブロック共重合体の水素添加率を計算した。
【0084】
<ガラス転移温度>
セイコー電子工業社製、示差走査型熱量計「DSC6200」を用い、水添ブロック共重合体(b)を精秤し、10℃/分の昇温速度にて−120℃から100℃まで昇温し、測定曲線の変曲点の温度を読みとり、ガラス転移温度とした。
【0085】
<モルフォロジー>
走査型プローブ顕微鏡「プローブステーションSPI4000/環境制御型ユニットE-sweep」(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用いて、層断面のモルフォロジーを観察した。観察試料の作製は、液体窒素を用いてサンプルを凍結した状態で、ガラスナイフを使用してウルトラミクロトームでMD方向に沿って断面を切り出した。観察は、常温、常圧化、スキャンサイズ10×10μm及び、2×2μmの範囲で、DFMモードで位相像を取得した。得られた位相像において、硬い領域(画像の有色の部分)はポリプロピレン系樹脂(a)に相当し、軟らかい領域(画像の白色に近い表示部分)は水添ブロック共重合体(b)に相当する。
ここで、図4〜9の模式図は、走査型プローブ顕微鏡を用い、液体包装容器用フィルムの内層又は中間層を、フィルム製造時の機械方向(MD)に沿って走査して得られた画像に基づき、模式的に表したものである。なお、以下に示す表において、モルフォロジーは、下記評価基準に従って評価した。
長軸1μm以上の島相、又は共連続構造はスキャンサイズ10×10μmの範囲で、長軸300nm以下の島相はスキャンサイズ2×2μmの範囲で確認した。それぞれのサイズは、スキャンサイズ内の島相をものさしで計測し、平均化した。
【0086】
ここで、図4〜9の模式図は、原子間力顕微鏡を用い、液体包装容器用フィルムの内層又は中間層を、フィルム製造時の機械方向(MD)に沿って走査して得られた画像に基づき、模式的に表したものである。なお、以下に示す表において、モルフォロジーは、下記評価基準に従って評価した。
A:水添ブロック共重合体(b)が長軸1μm以上の島相又は共連続構造と、長軸300nm以下の島相、との両構造を形成する相分離構造を有するフィルム。
B:水添ブロック共重合体が長軸300nm以下の島構造のみ、からなる相分離構造を有するフィルム。
C:水添ブロック共重合体が長軸1μm以上の島相又は共連続構造のみ、からなる相分離構造を有するフィルム。
D:水添ブロック共重合体が海相であって、ポリプロピレン系樹脂(a)が島相になっている相分離構造を有するフィルム。
E1:水添ブロック共重合体が長軸1μm以上の島相又は共連続構造と、長軸300nmより大きい島相、とからなる相分離構造を有するフィルム(つまり、長軸300nm以下の島相が見られない)。
E2:水添ブロック共重合体が長軸1μmより小さい島相と、長軸300nm以下の島相、とからなる相分離構造を有するフィルム(つまり、長軸1μm以上の島相又は共連続構造が見られない)。
【0087】
<融点>
示差走査熱量計(DSC)「TGA/DSC1 Star System」(Mettlermn Toledo社製)を用いて、フィルム各層を削り取って得られるサンプルを30℃から250℃まで昇温速度10℃/分で加熱して融解させたのち、250℃から30℃まで降温速度10℃/分で冷却後、昇温速度10℃/分で再度30℃から250℃まで昇温した際に測定されるメイン吸熱ピークのピークトップ温度を融点とした。
【0088】
各実施例及び比較例で製造した厚さを有する単層又は多層のフィルムの試験片(以下、単層も含めて「積層体」と称する)を用いて、以下の方法に従って、各測定及び評価を行った。
<1.ヤング率>
25mm×75mmのサイズの試験片を作製し、「インストロン3345」(インストロンジャパン株式会社製)を用いて、5mm/分の条件下にてヤング率を測定した。値が小さいほど柔軟性に優れる。300MPa以下が目標値である。
【0089】
<2.ヘイズ>
ASTM D−1003に準拠して、ヘイズメーター(株式会社村上色彩技術研究所製「HR−100」)を用いてヘイズ値(%)を測定し、透明性の指標とした。
ヘイズ値が小さいほど透明性に優れていることを示し、25%以下が好ましく、22%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましい。
【0090】
<3.破袋強度(常温)>
積層体を15cm×9cmの大きさに切り出し、それを2枚用いて内層同士を重ね合わせ、4辺のうち3辺を140℃、0.4MPa、及び加熱時間1秒間の条件下にてヒートシールを行った後、口が開いている1辺から100ccの水を注入し、次いで該1辺を上記同様の条件にてヒートシールを行うことにより、内容量100ccの液体包装容器を作製した。
得られた液体包装容器を鉄板上に23℃の環境下で静置した後、上方から1kg(9.8N)の鉄板を3回落下させた。3cm間隔で同様の測定を行い、非破袋の上限高さを常温(23℃)における破袋強度の指標とした。値が大きいほど、常温における破袋強度が高いことを示す。40cm以上であることが好ましい。
また、該破袋強度の試験後、液体包装容器を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、内層のヒートシール部位とヒートシールされていない部位との境目から進行する亀裂を観察し、下記評価基準に従って評価した。
A:内層−中間層の界面に沿ってフィルムの面方向と平行に亀裂が進行している(亀裂進行様式A)。
B:フィルム表面に向かって亀裂が進行している(亀裂進行様式B)。
【0091】
<4.低温破袋強度>
上記3.と同様の方法で得られた液体包装容器を、鉄板上に4℃の環境下で静置した後、上方から1kg(9.8N)の鉄板を3回落下させた。3cm間隔で同様の測定を行い、非破袋の上限高さを低温(4℃)における破袋強度の指標とした。値が大きいほど、低温破袋強度が高いことを示す。12cm以上であることが好ましく、17cm以上であると特に優れているといえる。
【0092】
<5.亀裂進行様式>
上記3.において破袋強度の試験後、液体包装容器を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、内層のヒートシール部位とヒートシールされていない部位との境目から進行する亀裂を観察し、下記評価基準に従って評価した。
A:内層−中間層の界面に沿って積層体の面方向と平行に亀裂が進行している(亀裂進行様式A)。
B:積層体表面に向かって亀裂が進行している(亀裂進行様式B)。
【0093】
<6.成形性>
成形性は、得られたフィルムのサージング(成形加工において押出量が一定せず、製品の形状や寸法が不規則になったり、規則的に変動したりすること)と、混練不良による異物やフィッシュアイの数量について下記評価基準に従って評価し、これをフィルム成形性の指標とした。
○: MD方向に2m切り出したフィルムのMD方向、TD方向ともに、厚み精度が±10%未満で、異物、フィッシュアイが目視で確認できない。
△: MD方向に2m切り出したフィルムのMD方向、TD方向ともに、厚み精度が±10%未満であるが、異物、フィッシュアイが目視で確認できる。 または、異物、フィッシュアイが目視で確認できないものの、厚み精度が±20%以上である。
×: MD方向に2m切り出したフィルムのMD方向、TD方向ともに、厚み精度が±20%以上であり、異物、フィッシュアイが目視で確認できる。
【0094】
<7.内層の膠着性>
積層体を15cm×9cmの大きさに切り出し、それを2枚用いて内層同士を重ね合わせ、4辺のうち3辺を140℃、0.4MPa、及び加熱時間1秒間の条件下にてヒートシールを行った後、口が開いている1辺の上部から100ccの水を注入する際の容易さについて、以下の評価基準で評価した。
○:容易に水を注入できた。
△:内層同士が少し膠着し、水が一部こぼれたが、水の注入は可能であった。
×:内層同士が膠着し、水の注入が困難であった。
【0095】
<8.ヒートシール強度>
積層体の内層同士を接触させた状態で、110℃及び120℃の温度で、0.4MPa、及び1秒間の条件下でヒートシールを行い、試験片を作製した。この試験片を用いて「インストロン3345」(インストロン社製)にて、300mm/分の条件下にて、180°剥離試験を行った。値が大きいほどヒートシール強度が高いことを示す。
【0096】
[実施例で使用した原料重合体]
以下に、実施例及び比較例で用いた各成分の詳細又は製造方法を示す。
【0097】
〔ポリプロピレン系樹脂(a)〕
PP1:「PT−100」(LCY CHEMICAL社製)、ホモポリプロピレン、MFR1.6g/10分(230℃、21.6N)、融点164℃、プロピレン含有量100モル%
PP2:「SB−520Y」(LOTTE CHEMICAL社製)、プロピレン−エチレンランダム共重合体、MFR2.4g/10分(230℃、21.6N)、融点154℃、プロピレン含有量97モル%
PP3:「SFC−750D」(LOTTE CHEMICAL社製)、プロピレン−ブテンランダム共重合体、MFR5.8g/10分(230℃、21.6N)、融点130℃、プロピレン含有量90モル%
以下の表1にも物性をまとめた。
【0098】
【表1】
【0099】
実施例及び比較例に使用した水添ブロック共重合体(b)の製造例を以下に示す。
【0100】
[製造例1]
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)76g(sec−ブチルリチウム8.0g)を仕込み、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン313gを仕込んだ。50℃に昇温した後、スチレン(1)0.5kgを加えて1時間重合させ、引き続いてイソプレン8.2kg及びブタジエン6.5kgの混合液を加えて2時間重合を行い、さらにスチレン(2)1.5kgを加えて1時間重合することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、水添ブロック共重合体HV1と称する)を得た。水添ブロック共重合体(HV1)の物性測定結果を表3に示す。
【0101】
[製造例2、4〜6、8、11〜13、15]
表2に記載の配合に変更したこと以外は製造例1と同様にして、表3に示す物性を有する水添ブロック共重合体(b−2)(HV2、5、7、10、12、15、18、19)及び水添ブロック共重合体(b−1)(LV2)を製造した。なお、表3中において、「Ip/Bd」は水添ブロック共重合体(b)中の重合体ブロック(B)中に含まれるイソプレン単位とブタジエン単位の質量比を、「St含量」は水添ブロック共重合体(b)全体におけるスチレンブロックの含有量(質量%)を、「Mw」は水添ブロック共重合体(b)全体の重量平均分子量を、「Tg」は水添ブロック共重合体(b)のガラス転移温度を、「ビニル化度」は重合体ブロック(b)におけるビニル結合量の含有割合を、「水添率」は前記重合体ブロック(B)の水素添加率を表す。
【0102】
[製造例3、7、9]
ルイス塩基としてN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を用い、モノマーの種類及び使用量を表2に記載の配合に変更したこと以外は製造例1と同様にして、表3に示す物性を有する水添ブロック共重合体(b−2)(HV3、11、13)を製造した。
【0103】
[製造例10]
ルイス塩基としてTMEDAを用い、表2に記載の配合に従い、スチレン(1)を加えて1時間重合し、引き続いてブタジエン(1)を加えて2時間重合を行い、さらにスチレン(2)を加えて1時間重合し、さらにブタジエン(2)を加えて1時間重合したこと以外は製造例1と同様にして、表3に示す物性を有する水添ブロック共重合体(b−2)(HV14)(ポリスチレンブロック及びポリブタジエンブロックを有するテトラブロック共重合体)を製造した。
【0104】
[製造例14、16、18〜24]
ルイス塩基を添加せず、モノマーの種類及び使用量を表4に記載の配合に変更したこと以外は製造例1と同様にして、表5に示す物性を有する水添ブロック共重合体(b−1)(LV1、3、5,6,7、8,9,12,14)を製造した。
【0105】
[製造例17]
ルイス塩基を添加せずに、表4に記載の配合に従い、スチレン(1)を重合し、次いでイソプレンの重合を行った後、カップリング剤として安息香酸メチルを30g添加して60℃で1時間反応を行ったこと以外は製造例1と同様にして、表5に示す物性を有する水添ブロック共重合体(b−1)(LV4)(ポリスチレンブロック及びポリイソプレンブロックを有するトリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物)を製造した。
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】


【0108】
【表4】

【0109】
【表5】

【0110】
[実施例1〜10]
下記表6に示す配合割合で、前記ポリプロピレン系樹脂(a)及び前記水添ブロック共重合体(b−1)及び水添ブロック共重合体(b−2)を、溶融単軸混練して樹脂組成物を作製し、水冷式下向インフレーション成形機を用いて、樹脂温度200℃、冷却水温度20℃、ライン速度10m/分の条件で、厚さ200μmの単層の液体包装容器用フィルムを成形した。得られたフィルムの物性について、表6に示す。
【0111】
【表6】
【0112】
[実施例11〜51、比較例1〜10]
内層用の材料、中間層用の材料、及び外層用の材料それぞれについて、下記表7〜11に示す配合割合で、溶融単軸混練して樹脂組成物を作製し、水冷式下向インフレーション成形機を用いて、樹脂温度200℃、冷却水温度20℃、ライン速度10m/分の条件で、厚さ200μmの3層構造からなる液体包装容器用フィルムを成形した。各層の厚みは、実施例11〜44及び比較例1〜10については、内層20μm、中間層130μm、外層50μmとした。得られた各フィルムの物性について、表7〜11に示す。
さらに、実施例1及び比較例1においては、亀裂進行様式を観察した際の走査型電子顕微鏡(SEM)写真をそれぞれ図2及び図3に示す。
【0113】
【表7】
【0114】
【表8】
【0115】
実施例31〜36、比較例6〜8については、ポリプロピレン系樹脂(a)と水添ブロック共重合体(b)との質量比を変更した。
【0116】
【表9】
【0117】
実施例37〜44、比較例9〜10については、内層及び中間層のそれぞれについて、水添ブロック共重合体(b−1)(表中のLV1に相当)及び水添ブロック共重合体(b−2)(表中のHV1に相当)の質量比を変更した。
【0118】
【表10】
【0119】
実施例45〜51については、外層、中間層、内層はそれぞれ実施例1の配合を用い、厚みのみを変更した。
【0120】
【表11】

【0121】
以上の結果より、本発明の液体包装用フィルムを用いた液体包装容器は、優れた透明性及び柔軟性を有しつつ、破袋強度に優れている。この理由として、液体包装容器の内層及び/又は中間層がモルフォロジーのAの構造であるものは、いずれも亀裂進行様式Aとなっており、層の厚み方向に向かって亀裂が進行することを妨げられたためと考えられる。
【0122】
さらに、実施例11、40、41、比較例9については、内層及び中間層のそれぞれについて、水添ブロック共重合体(b−1)(表中のLV1に相当)及び水添ブロック共重合体(b−2)(表中のHV1に相当)の質量比を変更した場合の110℃及び120℃のヒートシール強度を測定した。表12に示すように、本発明の液体包装用フィルムを用いた液体包装容器は、この温度領域でのヒートシール強度が高く、低温ヒートシール性に優れることが分かる。
【0123】
【表12】
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の液体包装容器は、種々の用途に使用できる。例えば、前述の医療容器のほか、レトルト食品、マヨネーズ、ケチャップ、清涼飲料水、アイス等を包装する食品包装容器等としても有効に利用できる。
【符号の説明】
【0125】
1:水添ブロック共重合体(b)からなる長軸1μm以上の島相又は共連続構造
2:水添ブロック共重合体(b)からなる長軸300nm以下の島相
3:ポリプロピレン系樹脂(a)からなる海相
4:ポリプロピレン系樹脂(a)からなる島相
5:水添ブロック共重合体(b)からなる海相
6:水添ブロック共重合体(b)からなり、長軸が300nmより大きい島相
7:水添ブロック共重合体(b)からなり、長軸が1μmより小さい島相
なお、MDはフィルム製造時の機械方向を表す。
【要約】
ポリプロピレン系樹脂(a)と、少なくとも一種の水添ブロック共重合体(b)とを含有する樹脂組成物(X)からなる層を少なくとも一層有する、液体包装容器用フィルムであって、前記水添ブロック共重合体(b)が、芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック(A)と、イソプレン(Ip)単位、ブタジエン(Bd)単位、又はイソプレン(Ip)及びブタジエン(Bd)単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物であり、前記樹脂組成物(X)中で、水添ブロック共重合体(b)が(i)長軸1μm以上の島相又は共連続構造と、(ii)長軸300nm以下の島相、との両方の構造を形成する相分離構造を有し、前記樹脂組成物(X)において、ポリプロピレン系樹脂(a)と、水添ブロック共重合体(b)との質量比[(a)/{(a)+(b)}]が61/100〜95/100である、液体包装容器用フィルム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9