(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0011】
[基板処理装置1の全体構成]
先ず、本発明の一実施形態に係る粒子逆流防止部材200が配置される基板処理装置1の全体構成について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る基板処理装置1の全体構成を示している。
図2は、一実施形態に係る基板処理装置1の排気管26近傍を拡大した部分を示している。なお、
図2に関する説明では、図中上方を「上側」と称し、図中下方を「下側」と称する。
【0013】
図1に示した基板処理装置1は、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)型の基板処理装置1として構成されている。基板処理装置1は、例えば、アルミニウム又はステンレス等の金属製の円筒型チャンバ(処理容器10)を有しており、処理容器10は接地されている。処理容器10内では、被処理体にエッチング処理等のプラズマ処理が施される。
【0014】
処理容器10内には、基板としての半導体ウエハ(以下、ウエハWと称呼する)を載置する載置台12が設けられている。載置台12は、例えば、アルミニウムからなり、絶縁性の筒状保持部14を介して処理容器10の底から垂直上方に延びる筒状支持部16に支持されている。筒状保持部14の上面には、載置台12の上面を環状に囲む、例えば、石英からなるフォーカスリング18が配置されている。
【0015】
処理容器10の内側壁と筒状支持部16の外側壁との間には排気路20が形成されている。排気路20には環状のバッフル板22が取り付けられている。排気路20は、排気管26を介して排気装置28に接続されている。即ち、排気管26は、処理容器10と排気装置28とを連通する。
【0016】
排気管26は、
図2に示すように、フランジ部26aを有する。また、フランジ部26aは、内径Aの開口部29を有する。このフランジ部26aと排気装置28との間には、例えば、自動圧力制御(APC:Auto Pressure Controller)バルブ等の圧力調整バルブ27が設けられている。圧力調整バルブ27は、開口部29に連通して設けられ、排気装置28による実行排気速度を制御する。
【0017】
フランジ部26aの内径は、圧力調整バルブ27との接合部(開口部29の形成領域)において、他の部分と比較して小さくなっており、開口部29が形成されている。
【0018】
また、フランジ部26aの開口部29を形成する底面上には、保護網204が配置されていても良い。保護網204は、メンテナンス等に用いられるネジ等が排気装置28内に進入(落下)するのを防止する。保護網204の直径は、フランジ部26aの開口部29の内径Aよりも大きく設定される。
【0019】
フランジ部26aの内側には、後述する本実施形態に係る粒子逆流防止部材200が配置されている。粒子逆流防止部材200は、例えば、保護網204上に配置されている。なお、保護網204が配置されていない場合には、粒子逆流防止部材200は、フランジ部26aの内側に保護網204を介さずに配置されていても良い。
【0020】
排気装置28は、例えば、ターボ分子ポンプ(TMP:Turbo-Molecular Pump)等の高速回転する回転翼28cを有する排気ポンプを用いることができる。
【0021】
以下、排気装置28として、TMPを用いた場合の構成について説明する。
【0022】
TMPは、
図2に示すように、回転軸28a、本体28b、回転翼28c及び静止翼28dを備える。
【0023】
回転軸28aは、
図2の上下方向に沿って配置され、回転翼28cの回転に関する中心軸である。
【0024】
本体28bは、円筒状の筐体であり、回転軸28a、回転翼28c及び静止翼28dを収容する。
【0025】
回転翼28cは、回転軸28aから直角に突出する複数のブレード状の翼である。複数の回転翼28cは、回転軸28aの外周面の同一円周上において等間隔に配置され、且つ回転軸28aから放射状に突出して回転翼群を形成する。
【0026】
静止翼28dは、本体28bの内周面から回転軸28aに向けて突出する複数のブレード状の翼である。複数の静止翼28dは、本体28bの内周面の同一円周上において等間隔に配置され、且つ回転軸28aに向けて突出して静止翼群を形成する。回転翼28c群と静止翼28d群とは、交互に配置される。即ち、各静止翼28d群は隣接する2つの回転翼28c群の間に配置される。
【0027】
また、最上の回転翼群が最上の静止翼群より上側に配置される。即ち、最上の回転翼群が最上の静止翼群より処理容器10側に配置される。
【0028】
上述したようなTMPを用いた場合では、回転翼28cを回転軸28aを中心に高速回転させることにより、TMP上側のガスをTMPの下側に高速排気する。
【0029】
処理容器10の側壁には、ウエハWの搬入時又は搬出時に開閉するゲートバルブ30が取り付けられている。
【0030】
載置台12には、給電棒36及び整合器34を介してプラズマ生成用の高周波電源32が接続されている。高周波電源32は、例えば、60MHzの高周波電力を載置台12に供給する。このようにして載置台12は、下部電極としても機能する。
【0031】
処理容器10の天井部には、シャワーヘッド38が接地電位の上部電極として設けられている。高周波電源32からのプラズマ生成用の高周波電力は、載置台12とシャワーヘッド38との間に容量的に供給される。
【0032】
載置台12の上面には、ウエハWを静電吸着力で保持するための静電チャック40が設けられている。静電チャック40は、導電膜からなるシート状のチャック電極40aを一対の誘電部材である誘電層部40b、40cの間に挟み込んだものである。
【0033】
直流電圧源42は、スイッチ43を介してチャック電極40aに接続されている。静電チャック40は、直流電圧源42から電圧をオンされることにより、クーロン力でウエハWをチャック上に吸着保持する。
【0034】
また、チャック電極40aへの電圧をオフする場合にはスイッチ43によって接地部44へ接続された状態となっている。以下、チャック電極40aへの電圧のオフはチャック電極40aが接地された状態を意味する。
【0035】
伝熱ガス供給源52は、HeガスやArガス等の伝熱ガスをガス供給ライン54に通して静電チャック40上のウエハWの裏面に供給する。
【0036】
天井部のシャワーヘッド38は、多数のガス通気孔56aを有する電極板56と、電極板56を着脱可能に支持する電極支持体58とを有する。電極支持体58の内部には、バッファ室60が設けられている。バッファ室60のガス導入口60aには、ガス供給配管64を介してガス供給源62が連結されている。係る構成により、シャワーヘッド38から処理容器10内に所望のガスが供給される。
【0037】
載置台12の内部には、外部の図示しない搬送アームとの間でウエハWの受け渡しを行うためにウエハWを昇降させる支持ピン81が複数(例えば3本)設けられている。複数の支持ピン81は、連結部材82を介して伝えられるモータ84の動力により上下動する。処理容器10の外部へ向けて貫通する支持ピン81の貫通孔には、底部ベローズ83が設けられ、処理容器10内の真空側と大気側との間の気密を保持する。
【0038】
処理容器10の周囲には、環状又は同心状に延在する磁石66が上下2段に配置されている。処理容器10内において、シャワーヘッド38と載置台12との間のプラズマ生成空間には、高周波電源32により鉛直方向のRF電界が形成され、高周波の放電により、載置台12の表面近傍に高密度のプラズマが生成される。
【0039】
載置台12の内部には、冷媒管70が設けられている。冷媒管70には、配管72、73を介してチラーユニット71から所定温度の冷媒が循環供給される。また、静電チャック40の内部には、ヒータ75が埋設されている。また、チラーユニット71による冷却とヒータ75による加熱によって静電チャック40上のウエハWの処理温度は所望の温度に調整される。
【0040】
制御装置100は、基板処理装置1に取り付けられた各部、例えば、ガス供給源62、ヒータ75、直流電圧源42、スイッチ43、整合器34、高周波電源32、伝熱ガス供給源52、モータ84、チラーユニット71を制御する。また、制御装置100は、図示しないホストコンピュータ等とも接続されている。
【0041】
制御装置100は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有する。CPUは、ROM、RAM等の記憶領域に格納された各種のレシピに従ってプラズマ処理を実行する。
【0042】
レシピにはプロセス条件に対する装置の制御情報であるプロセス時間、処理容器10内温度(上部電極温度、処理容器10の側壁温度、ESC温度等)、圧力(ガスの排気)、高周波電力や電圧、各種プロセスガス流量、伝熱ガス流量等が記載されている。
【0043】
係る構成の基板処理装置1において、エッチング等の基板処理を行なうには、先ず、ゲートバルブ30を開口して搬送アーム上に保持されたウエハWを処理容器10内に搬入する。次に、静電チャック40の表面から突出した支持ピン81により搬送アームからウエハWが持ち上げられ、支持ピン81上にウエハWが保持される。
【0044】
次いで、搬送アームが処理容器10外へ出た後に、支持ピン81が静電チャック40内に下ろされることでウエハWが静電チャック40上に載置される。
【0045】
ウエハW搬入後、ゲートバルブ30が閉じられ、ガス供給源62からエッチングガスを所定の流量で処理容器10内に導入し、圧力調整バルブ27及び排気装置28により処理容器10内の圧力を設定値に減圧する。さらに、高周波電源32から所定のパワーの高周波電力を載置台12に供給する。
【0046】
また、直流電圧源42から電圧を静電チャック40のチャック電極40aにオンして、ウエハWを静電チャック40上に固定する。また、静電吸着されたウエハWの裏面に伝熱ガスを供給する。
【0047】
シャワーヘッド38からシャワー状に導入されたエッチングガスは、高周波電源32からの高周波電力によりプラズマ化され、これにより、上部電極(シャワーヘッド38)と下部電極(載置台12)との間のプラズマ生成空間にてプラズマが生成される。生成されたプラズマ中のラジカルやイオンによってウエハWの主面がエッチングされる。
【0048】
プラズマエッチング終了後、静電チャック40からウエハWを離脱させる際には、伝熱ガスの供給をオフし、不活性ガスを処理容器10内へ導入し処理容器10内を所定の圧力に維持する。この状態で、プラズマ処理中にチャック電極40aへオンしていた電圧とは正負が逆の電圧を、チャック電極40aへオンした後に電圧をオフする。この処理により静電チャック40及びウエハWに存在する電荷を除電する除電処理が行われる。
【0049】
その状態で、支持ピン81を上昇させてウエハWを静電チャック40から持ち上げ、ウエハWを静電チャック40から離脱させる。ゲートバルブ30を開口して搬送アームが処理容器10内に搬入された後、支持ピン81が下げられウエハWが搬送アーム上に保持される。次いで、その搬送アームが処理容器10外へ出て、次のウエハWが搬送アームにより処理容器10内へ搬入される。この処理を繰り返すことで連続してウエハWが処理される。
【0050】
[第1の実施形態]
次に、第1の実施形態に係る粒子逆流防止部材200aについて
図2及び
図3を参照しながら説明する。
【0051】
図3(A)及び(B)は、各々、第1の実施形態に係る粒子逆流防止部材200aの斜視図及び平面図を示している。
【0052】
図3(A)及び(B)に示すように、第1の実施形態に係る粒子逆流防止部材200aは、第1の板状部材201と、開口部202hを有し、第1の板状部材201に対して第1の間隙L1を有して排気装置28側に配置される(
図2参照)第2の板状部材202と、を有する。
【0053】
また、
図3(B)に示すように、第2の板状部材202の開口部202hは、平面視で第1の板状部材201により覆われている。
【0054】
なお、「平面視」とは、第1の板状部材201の処理容器10側の面に対して垂直な方向(
図2の上側)から粒子逆流防止部材200aを視ることを指す。
【0055】
第1の板状部材201及び第2の板状部材202は、耐熱性を有し、且つプラズマや酸に対する耐腐食性を有している材料で形成されることが好ましい。また、第1の板状部材201及び第2の板状部材202は、薄板で用いても十分な剛性がある、溶接が容易に行える、アーキングが発生しにくい等の特性を有している材料で形成されることが好ましい。
【0056】
第1の板状部材201及び第2の板状部材202の具体的な材料としては、例えば、ステンレス、アルミニウム等の金属又はセラミックス等が挙げられる。
【0057】
また、上述の材料にニッケルとフッ素を含有するコーティング剤でコーティングすることが好ましい。これにより、耐熱性、プラズマや酸に対する耐腐食性及び剛性が更に向上し、処理容器10内で発生する副生成物の付着や堆積を防止することができる。
【0058】
なお、第1の板状部材201と第2の板状部材202とは、同じ材料で形成されていても良く、異なる材料で形成されていても良い。
【0059】
第1の板状部材201としては、例えば、平面視で円形状である円板状部材を用いることができるが、本発明はこの点において限定されず、粒子逆流防止部材200aが配置される場所の形状等に応じて選択することができ、例えば、平面視で矩形状又は楕円形状である板状部材等を用いても良い。
【0060】
第2の板状部材202としては、例えば、平面視で円形状の開口部202hを有する環状部材を用いることができるが、これに限定されない。第2の板状部材202としては、粒子逆流防止部材200aが配置される場所の形状に応じて選択することができ、例えば、平面視で矩形状である板状部材等を用いることができる。
【0061】
また、第2の板状部材202は、1つの開口部202hが形成される構成であっても良いし、複数の開口部202hが形成される構成であっても良い。複数の開口部202hが形成される場合には、全ての開口部202hが、平面視で第1の板状部材201で覆われる。
【0062】
さらに、第2の板状部材202の開口部202hの形状は、
図3(A)及び(B)においては円形状のものを例示したが、本発明はこの点において限定されず、矩形状又は楕円形であっても良い。
【0063】
前述したように、第2の板状部材202の開口部202hは、平面視で第1の板状部材201により覆われている。即ち、第2の板状部材202の開口部202hの直径dは、第1の板状部材201の直径Dよりも小さくなるように設定される。
【0064】
さらに、第2の板状部材202の開口部202hの直径dと第1の板状部材201の直径Dとは、以下の関係式(1)を満たす範囲内に設定されることが好ましい。
【0065】
1≦D/d≦1.38・・・式(1)
また、
図2に示すように、第2の板状部材202の開口部202hの直径dと第1の間隙L1とは、以下の関係式(2)を満たす範囲内に設定されることが好ましい。
【0066】
0.49≦L1/d≦0.74・・・式(2)
式(1)及び/又は式(2)の関係を満たす粒子逆流防止部材200aを使用することにより、排気装置28による基板処理装置1の排気効率を低下することなく、パーティクルの処理容器10内への進入を抑制することができる。
【0067】
また、第1の実施形態に係る粒子逆流防止部材200aは、例えば、第1の板状部材201の第2の板状部材202とは平行に設けられている。そして、粒子逆流防止部材200aは、例えば第1の板状部材201の第2の板状部材202と対向する面から、第2の板状部材202の第1の板状部材201と対向する面へと、第1の板状部材201に対して垂直に延在する棒状部材203を有する。棒状部材203は、第1の板状部材201と第2の板状部材202とを接続し、第2の板状部材202がフランジ部26a上に載置された場合に、第1の板状部材201を支持する役割を果たす。
【0068】
棒状部材203は、所定の長さを有する構成であっても良く、伸長可能な構成であっても良い。粒子逆流防止部材200aの設置による、排気効率の変化の程度、及びパーティクルの処理容器10内への進入抑制効果は、棒状部材203の長さ(第1の間隙L1)、基板処理装置1の排気管26の直径や長さ等にも依存する。しかしながら、棒状部材203が、伸長可能な構成とすることにより、種々の基板処理装置1に対応させることができる。
【0069】
また、第1の板状部材201と第2の板状部材202とは、1つの棒状部材203で接続されていても良く、複数の棒状部材203で接続されていても良い。複数の棒状部材203で接続されている場合、粒子逆流防止部材200aの剛性を向上させることができる。
【0070】
棒状部材203は、第1の板状部材201及び第2の板状部材202と同様に、耐熱性、プラズマや酸に対する耐腐食性を有しているものが好ましい。また、棒状部材203は、薄板で用いても十分な剛性がある、溶接が容易に行える、アーキングが発生しにくい等の特性を有している材料で形成されることが好ましい。
【0071】
棒状部材203の具体的な材料としては、例えば、ステンレス、アルミニウム等の金属又はセラミックス等が挙げられる。また、上述の部材にニッケルとフッ素を含有するコーティング剤でコーティングしたものを用いても良い。これにより、耐熱性、プラズマや酸に対する耐腐食性及び剛性が更に向上し、処理容器10内で発生する副生成物の付着や堆積を防止することができる。
【0072】
第1の実施形態に係る粒子逆流防止部材200aを基板処理装置1に適用する場合、
図2に示すように、保護網204上(又は保護網204が設けられない場合には、フランジ部26aの底面上)に配置される。この際、第2の板状部材202の第1の板状部材201と対向する面とは逆側の面が、保護網204に接するように配置される。即ち、第2の板状部材202は、第1の板状部材201に対して第1の間隙L1を有して排気装置28側に配置される。
【0073】
次に、第1の実施形態に係る粒子逆流防止部材200aの効果について
図2を参照しながら説明する。なお、
図2において、パーティクルPの軌跡の一例を破線の矢印で示している。
【0074】
図2に示すように、処理容器10から排出されたパーティクルPの一部は、排気装置28に到達すると、高速回転する回転翼28cに衝突して、処理容器10側に向けて反跳することがある。その結果、反跳したパーティクルPは、排気管26を介して処理容器10内に進入する。
【0075】
しかしながら、第1の実施形態に係る粒子逆流防止部材200aが配置された基板処理装置1は、第2の板状部材202の開口部202hが、平面視で第1の板状部材201により覆われている。そのため、反跳して排気管26へと進入したパーティクルPは、第1の板状部材201(の下面)に当たって再反跳して、排気装置28側(
図2中下向き)へと下降する。即ち、粒子逆流防止部材200aは、排気装置28の回転翼28cによって反跳したパーティクルPを排気装置28に向けて反跳させることができる。
【0076】
以上に説明したように、第1の実施形態に係る粒子逆流防止部材200aによれば、排気装置28の回転翼28cによって反跳したパーティクルPの処理容器10への進入を防止することができる。その結果、基板処理装置1内においてRIE処理が施されるウエハWの表面にパーティクルPが付着するのを防止することができ、配線短絡等を防止することができるので、基板処理の歩留まりが向上する。また、排気管26の内壁へのパーティクルPの付着頻度を低下することができるため、排気管26の清掃頻度を少なくすることができる。
【0077】
また、粒子逆流防止部材200aは、反跳したパーティクルPだけではなく、排気装置28の回転翼28cから剥離し、処理容器10方向へ飛散した付着物も、処理容器10への進入を防止することができる。
【0078】
また、粒子逆流防止部材200aにおいて、第1の板状部材201と第2の板状部材202とは、第1の間隙L1を有して配置されている。これにより、粒子逆流防止部材200aによる、排気装置28による排気効率はほとんど低下しない。そのため、粒子逆流防止部材200aの設置による、基板処理プロセスへの影響はほとんどないという利点も有する。
【0079】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る粒子逆流防止部材200bについて
図4及び
図5を参照しながら説明する。第2の実施形態に係る粒子逆流防止部材200bは、第1の実施形態に係る粒子逆流防止部材200aの構成を含み、さらに、第2の板状部材202に対して排気装置28側に配置され、第2の板状部材202を支持する支持部材250を有する点で異なる。
【0080】
図4は、第2の実施形態に係る粒子逆流防止部材200bが
図1に示す基板処理装置1に配置されたときの、基板処理装置1の排気管26近傍を拡大した図を示している。
図5(A)及び(B)は、各々、第2の実施形態に係る粒子逆流防止部材200bの斜視図及び平面図を示している。なお、
図4に関する説明では、図中上方を「上側」と称し、図中下方を「下側」と称する。
【0081】
図4及び
図5(A)に示すように、第2の実施形態に係る粒子逆流防止部材200bは、上段部材210、中段部材220、下段部材230を有し、この順で処理容器10側(
図4の上側)から配置される。
【0082】
上段部材210は、第1の実施形態における粒子逆流防止部材200aと同様の構成を有している。
【0083】
中段部材220及び下段部材230は、上段部材210を支持する支持部材250である。
【0085】
上段部材210は、第1の実施形態に係る粒子逆流防止部材200aと同様の構成であるため、説明を省略する。なお、第2の実施形態における第1の板状部材211、開口部212hを有する第2の板状部材212、第1の棒状部材213は、各々、第1の実施形態における第1の板状部材201、開口部202hを有する第2の板状部材202、棒状部材203に対応する。また、第2の実施形態における開口部212hの直径d1、第1の板状部材211の直径D1は、各々、第1の実施形態における開口部202hの直径d、第1の板状部材201の直径Dに対応する。
【0086】
中段部材220は、開口部を有する第3の板状部材221と、開口部を有し、第3の板状部材221に対して所定の間隙を有して排気装置28側に配置される第4の板状部材222とを有する。また、中段部材220は、第3の板状部材221と第4の板状部材222とを接続する第2の棒状部材223を有する。
【0087】
第3の板状部材221、第4の板状部材222及び第2の棒状部材223としては、上段部材210を構成する部材と同様の材料を用いることができる。なお、これらの部材は、同じ材料で形成されていても良く、異なる材料で形成されていても良い。
【0088】
第3の板状部材221としては、例えば、平面視で円形状の開口部を有する環状部材を用いることができるが、これに限定されない。第3の板状部材221としては、粒子逆流防止部材200bが配置される場所の形状に応じて選択することができ、例えば、平面視で矩形状である板状部材等を用いることができる。
【0089】
第4の板状部材222としては、例えば、平面視で円形状の開口部を有する環状部材を用いることができるが、これに限定されない。第4の板状部材222としては、粒子逆流防止部材200bが配置される場所の形状に応じて選択することができ、例えば、平面視で矩形状である板状部材等を用いることができる。
【0090】
また、第3の板状部材221及び第4の板状部材222の開口部の直径は、開口部212hよりも大きいことが好ましい。
【0091】
第2の実施形態に係る粒子逆流防止部材200bは、例えば、第3の板状部材221の第4の板状部材222と対向する面から、第4の板状部材222の第3の板状部材221と対向する面へと、第3の板状部材221に対して垂直に延在する第2の棒状部材223を有する。第2の棒状部材223は、第3の板状部材221と第4の板状部材222とを接続するように設けられる。
【0092】
下段部材230は、開口部を有する第5の板状部材231と、開口部を有し、第5の板状部材231に対して所定の間隙を有して排気装置28側に配置される第6の板状部材232とを有する。また、下段部材230は、第5の板状部材231と第6の板状部材232とを接続する第3の棒状部材233を有する。
【0093】
下段部材230の構成としては、中段部材220と同様の構成を用いることができるが、これに限定されず、中段部材を構成する板状部材と下段部材を構成する板状部材とは、異なる形状、部材で構成されていても良い。
【0094】
第2の実施形態に係る粒子逆流防止部材200bと基板処理装置1に適用する場合、
図4に示すように、保護網204上(又は保護網204が設けられない場合には、フランジ部26aの底面上)に配置される。この際、第6の板状部材232の第5の板状部材231と対向する面とは逆側の面が、保護網204に接するように配置される。
【0095】
次に、第2の実施形態に係る粒子逆流防止部材200bの効果について
図4を参照しながら説明する。なお、
図4において、パーティクルPの軌跡の一例を破線の矢印で示している。
【0096】
図4に示すように、処理容器10から排出されたパーティクルPの一部は、排気装置28に到達すると、高速回転する回転翼28cに衝突して、処理容器10側に向けて反跳することがある。その結果、反跳したパーティクルPは、排気管26を介して処理容器10内に進入する。
【0097】
しかしながら、第2の実施形態に係る粒子逆流防止部材200bが配置された基板処理装置1は、第2の板状部材212の開口部212hが、平面視で第1の板状部材211により覆われている。そのため、反跳して排気管26へと進入したパーティクルPは、第1の板状部材211(の下面)に当たって再反跳して、排気装置28側(
図2中下向き)へと下降する。即ち、粒子逆流防止部材200bは、排気装置28の回転翼28cによって反跳したパーティクルPを排気装置28に向けて反跳させることができる。
【0098】
以上に説明したように、第2の実施形態に係る粒子逆流防止部材200bによれば、排気装置28の回転翼28cによって反跳したパーティクルPの処理容器10への進入を防止することができる。その結果、基板処理装置1内においてRIE処理が施されるウエハWの表面にパーティクルPが付着するのを防止することができ、配線短絡等を防止することができるので、基板処理の歩留まりが向上する。
【0099】
また、排気管26の内壁へのパーティクルPの付着速度を低下することができるため、排気管26の清掃頻度を少なくすることができる。
【0100】
また、粒子逆流防止部材200bは、反跳したパーティクルPだけではなく、排気装置28の回転翼28cから剥離し、処理容器10方向へ飛散した付着物も、処理容器10への進入を防止することができる。
【0101】
また、粒子逆流防止部材200bにおいて、第1の板状部材211と第2の板状部材212とは、第1の間隙L1を有して配置されている。これにより、粒子逆流防止部材200bによる、排気装置28による排気効率はほとんど低下しない。そのため、粒子逆流防止部材200bの設置による、基板処理プロセスへの影響はほとんどないという利点も有する。
【0102】
さらに、粒子逆流防止部材200bは、中段部材220及び下段部材230からなる支持部材250によって、第2の板状部材212の下面と保護網204の上面との間に第2の間隙L2が形成されている。これにより、排気装置28による排気効率の低下を更に抑制することができる。
【0103】
また、粒子逆流防止部材200bは、上段部材210、中段部材220、下段部材230を含み、粒子逆流防止部材200bの設置場所で各々を積み重ねて設置することができるため、設置場所に通じる空間が狭い場合であっても、容易に設置することができる。その結果、粒子逆流防止部材200bの設置及び取り外し等に伴うメンテナンス時間を短縮することができる。
【0104】
なお、第2の実施形態では、各々1つの上段部材210、中段部材220、下段部材230からなる粒子逆流防止部材200bの形態を説明したが、これに限定されない。例えば、粒子逆流防止部材200bは、1つの上段部材210を含んでいれば良く、複数の中段部材220及び複数の下段部材230を有していても良い。
【0105】
次に、第2の実施形態に係る粒子逆流防止部材200bが基板処理装置1に配置されたときに、ウエハW上に堆積するパーティクルPについて、実施例で説明する。また、粒子逆流防止部材200bが配置されない基板処理装置1を用いた場合についても、実施例の比較として、比較例で説明する。
【0106】
[実施例]
先ず、ゲートバルブ30を開口して搬送アーム上に保持されたウエハWを処理容器10内に搬入する。次に、静電チャック40の表面から突出した支持ピン81により搬送アームからウエハWが持ち上げられ、支持ピン81上にウエハWが保持される。次いで、その搬送アームが処理容器10外へ出た後に、支持ピン81が静電チャック40内に下ろされることでウエハWが静電チャック40上に載置される。
【0107】
ウエハW搬入後、ゲートバルブ30が閉じられ、直流電圧源42から電圧を静電チャック40のチャック電極40aにオンして、ウエハWを静電チャック40上に固定する。また、静電吸着されたウエハWの裏面に伝熱ガスを供給する。
【0108】
次に、ガス供給源62から窒素(N2)ガスを所定の流量で処理容器10内に導入し、排気装置28により処理容器10内の圧力を減圧し、圧力調整バルブ27を調整することにより、処理容器10内を所定の圧力に調整する。
【0109】
また、排気管26に設けられたポート(不図示)から処理容器10内に粒径が0.1〜1.0μmのパーティクルPを導入する。これにより、擬似的にウエハWに対してエッチング処理を施した場合に発生するパーティクルPと同様のパーティクルPを発生させる。
【0110】
所定の時間経過後、静電チャック40からウエハWを離脱させる際には、伝熱ガスの供給をオフし、不活性ガスを処理容器10内へ導入し処理容器10内を所定の圧力に維持する。この状態で、チャック電極40aへオンしていた電圧とは正負が逆の電圧を、チャック電極40aへオンした後に電圧をオフする。この処理により静電チャック40及びウエハWに存在する電荷を除電する除電処理が行われる。
【0111】
その状態で、支持ピン81を上昇させてウエハWを静電チャック40から持ち上げ、ウエハWを静電チャック40から離脱させる。ゲートバルブ30を開口して搬送アームが処理容器10内に搬入された後、支持ピン81が下げられウエハWが搬送アーム上に保持される。次いで、その搬送アームが処理容器10外へ出て、ウエハWが搬出される。
【0112】
次に、処理容器10から搬出されるウエハW上のパーティクルPの個数を計測する。
【0113】
図6(A)に、粒子逆流防止部材200bが配置された基板処理装置1において、上述の処理を施した後のウエハW上に堆積したパーティクルPの個数と粒径との関係を示す。なお、
図6(A)において、横軸は、パーティクルPの粒径を示し、縦軸は、パーティクルPの個数を示す。
【0114】
図6(A)に示すように、粒径が1μm未満のパーティクルPが確認され、粒径が0.06μm以上のパーティクルPの個数は、61個であった。また、パーティクルPは、ウエハWの面内に偏ることなく均等に堆積していることが確認された(不図示)。
【0115】
[比較例]
次に、粒子逆流防止部材200bが配置されていない基板処理装置1において、実施例と同様の方法により、ウエハW上の堆積したパーティクルPの個数を計測した。なお、比較例では、粒子逆流防止部材200bを有しない点以外は、実施例と同様であるため、重複する内容の説明は省略する。
【0116】
図6(B)に、粒子逆流防止部材200bを有しない基板処理装置1において、実施例と同様の処理を施した後のウエハW上に堆積したパーティクルPの個数と粒径との関係を示す。なお、
図6(B)において、横軸は、パーティクルPの粒径を示し、縦軸は、パーティクルPの個数を示す。また、比較例においては、実施例と比較して、計測されたパーティクルPの個数が3桁以上多いため、
図6(B)における縦軸の座標は、
図6(A)における縦軸の座標と異なる。
【0117】
図6(B)に示すように、粒径が0.15〜0.2μmのパーティクルPを中心に実施例と比較して多数のパーティクルPが堆積していることが確認され、粒径が0.06μm以上のパーティクルPの個数は、16824個であった。
【0118】
図7に、粒子逆流防止部材200bを有しない基板処理装置1において、ウエハW上に堆積したパーティクルPと排気路20との位置関係を示す。
図7においては、便宜上、載置台12、ウエハW及び排気路20を除く構成、例えば、
図1に示すシャワーヘッド38、電極板56等の図示は省略されている。
【0119】
比較例1において、パーティクルPは、
図7に示す領域Zに偏在して堆積していることが確認された。即ち、ウエハW上に堆積したパーティクルPは、排気路20から処理容器10内に排気流を逆流して発生したものと考えられる。
【0120】
また、処理容器10内を所定の圧力に調整する際の圧力調整バルブ27の開度は、実施例と比較例とで同等であった。これにより、基板処理装置1に粒子逆流防止部材200bが配置されることによる排気効率の低下はないと考えられる。
【0121】
以上のように、粒子逆流防止部材200bを基板処理装置1に設置することにより、ウエハW上に堆積するパーティクルP(粒径が0.06μm以上)は、99.6%低減された。即ち、基板処理装置1の排気効率を低下させることなく、反跳によってウエハW上に堆積するパーティクルPの数を大幅に低減することができた。
【0122】
以上、粒子逆流防止部材200及び粒子逆流防止部材200が配置された基板処理装置1を実施形態及び実施例により説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【0123】
上述した実施形態では、基板処理装置1は、半導体デバイス製造装置としてのエッチング処理装置である場合について説明したが、これに限定されない。基板処理装置1としては、他のプラズマを用いる半導体デバイス製造装置、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)やPVD(Physical Vapor Deposition)等を用いる成膜処理装置であっても良い。
【0124】
更には、イオン注入処理装置、真空搬送装置、熱処理装置、分析装置、電子性加速器、FPD(Flat Panel Display)製造装置、太陽電池製造装置又は物理量分析装置としてのエッチング処理装置、成膜処理装置等の回転翼28cを有する排気装置28を用いる減圧処理装置であれば本発明を適用可能である。
【0125】
また、上述した実施形態では、基板として半導体ウエハWを用いたが、これに限定されず、例えば、FPD用のガラス基板や太陽電池用の基板等であっても良い。