特許第5944898号(P5944898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944898
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】光重合開始剤、感光性組成物及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20160621BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20160621BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   C08F2/50
   G03F7/031
   G03F7/004 501
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-523889(P2013-523889)
(86)(22)【出願日】2012年6月29日
(86)【国際出願番号】JP2012066763
(87)【国際公開番号】WO2013008652
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年3月27日
(31)【優先権主張番号】特願2011-151411(P2011-151411)
(32)【優先日】2011年7月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕章
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−516246(JP,A)
【文献】 特開2005−128483(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/081483(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換基を有していてもよいインドール骨格の3位に下記一般式(1)で表されるオキシムエステル結合を有する基が直接又はカルボニル基を介して結合しており、かつインドール骨格の5位がニトロ基で置換されていることを特徴とする光重合開始剤。
−C(R11)=N−O−C(R12)=O (1)
(ただし、R11及びR12は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の飽和又は不飽和の一価の有機基を表す。R11及びR12は分岐構造や環構造を形成していてもよく、任意の位置にヘテロ原子が存在していてもよい。また、R11はインドール骨格上の置換基と結合していてもよい。更に、R11は水素原子でもよい。)
【請求項2】
オレフィン結合を有する重合性化合物及び請求項1に記載の光重合開始剤を含有する感光性組成物。
【請求項3】
溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する請求項2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の感光性組成物を硬化した硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な光重合開始剤、これを含有する感光性組成物、及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性組成物は、オレフィン結合を有する重合性化合物に光重合開始剤を配合した形態で広く使用されており、フォトレジスト、光硬化型インキ、光硬化型塗料、光硬化型接着剤、光造形用感光性樹脂、感光性印刷版、記録材料等の用途で実用化されている。かかる感光性組成物は、水銀ランプ、キセノンランプ、レーザー等を光源として紫外光や可視光を照射すること(露光という)により重合反応を起こさせて硬化できるが、少ない露光量で効率よく硬化できる高感度な感光性組成物が望まれており、そのための高感度な光重合開始剤が必要とされている。
【0003】
光重合開始剤としてはこれまでに数多くの化合物が提案されており、アセトフェノン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、α−アミノアルキルフェノン化合物、チオキサントン化合物、有機過酸化物、ビイミダゾール化合物、チタノセン化合物、トリアジン化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、キノン化合物、オキシムエステル化合物等が知られている。しかし、これらはいずれも十分な感度を有するものではなかった。
【0004】
近年、カルバゾール骨格を有するオキシムエステル化合物が多数開示されており(例えば特許文献1〜12参照)、従来の光重合開始剤を大きく上回る感度が報告されている。ところが、これらの化合物をもってしても、カラーフィルターの製造に用いられるフォトレジストのように高性能を要求される用途に関しては、その感度は必ずしも満足な水準に達していないという問題があった。また、カルバゾール骨格は芳香環及びヘテロ芳香環が合計3つ縮合して平面に広がった構造を有することから、当該骨格のオキシムエステル化合物はカラーフィルターの製造に用いられるフォトレジストで広く使用される溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートへの溶解性が低いという課題も有していた。更に、カルバゾール骨格を有するオキシムエステル化合物の多くは、分子構造が比較的複雑で製造コストが高いという不経済性も抱えていた。
【0005】
また、カルバゾール以外の骨格を有するオキシムエステル化合物も開示されているが(例えば特許文献13、14参照)、それらの性能も十分なものとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−359639号公報
【特許文献2】特表2004−534797号公報
【特許文献3】特開2005−097141号公報
【特許文献4】特開2005−220097号公報
【特許文献5】特開2006−160634号公報
【特許文献6】特開2008−094770号公報
【特許文献7】特表2008−509967号公報
【特許文献8】特開2009−040762号公報
【特許文献9】特表2009−519904号公報
【特許文献10】特表2009−519991号公報
【特許文献11】WO2006/018973号パンフレット
【特許文献12】WO2008/078678号パンフレット
【特許文献13】特表2006−516246号公報
【特許文献14】WO2009/081483号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、高感度かつ溶解性に優れる光重合開始剤及びそれを用いた感光性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために検討した結果、本発明者等はカルバゾール骨格よりも縮合環が1つ少ないインドール骨格を有するオキシムエステル化合物に着目し、更にインドール骨格を特定の官能基で置換することで目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、置換基を有していてもよいインドール骨格にオキシムエステル結合を有する基が結合しており、かつインドール骨格が少なくとも1つのニトロ基で置換されていることを特徴とする光重合開始剤である。
【0010】
ここで、本発明の光重合開始剤は、インドール骨格の3位に下記一般式(1)で表されるオキシムエステル結合を有する基が直接又はカルボニル基を介して結合し、かつインドール骨格の5位がニトロ基で置換されていることが好ましい。
−C(R11)=N−O−C(R12)=O (1)
(ただし、R11及びR12は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の飽和又は不飽和の一価の有機基を表す。R11及びR12は分岐構造や環構造を形成していてもよく、任意の位置にヘテロ原子が存在していてもよい。また、R11はインドール骨格上の置換基と結合していてもよい。更に、R11は水素原子でもよい。)
【0011】
また、本発明は、オレフィン結合を有する重合性化合物及び上記光重合開始剤を含有する感光性組成物、並びに当該感光性組成物を硬化した硬化物である。ここで、上記感光性組成物について、好適には溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有するものであるのがよい。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の光重合開始剤は、置換基を有していてもよいインドール骨格にオキシムエステル結合を有する基が結合してなる。ここで、インドール骨格は少なくとも1つのニトロ基で置換されていることが必要であり、その置換位置は5位であることが好ましい。また、オキシムエステル結合を有する基としては下記一般式(1)で表される基が有利であり、このオキシムエステル結合を有する基がインドール骨格の3位に直接又はカルボニル基を介して結合していることが好ましい。
−C(R11)=N−O−C(R12)=O (1)
(ただし、R11及びR12は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の飽和又は不飽和の一価の有機基を表す。R11及びR12は分岐構造や環構造を形成していてもよく、任意の位置にヘテロ原子が存在していてもよい。また、R11はインドール骨格上の置換基と結合していてもよい。更に、R11は水素原子でもよい。)
【0013】
ここで、オキシム部位のC=N二重結合にはE体及びZ体の幾何異性体が存在し得るが、本発明ではこれらを特に区別することなく扱う。したがって、一般式(1)及び後述の式で示される構造のオキシム部位は、これら幾何異性体の混合物又はそのうちのいずれか一つを表すものである。
【0014】
本発明の光重合開始剤において、好ましい構造は下記一般式(2)、

で表される。ここで、R、R、R、R及びRは任意の置換基であってよいが、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の飽和又は不飽和の一価の有機基であるか、水素原子、ハロゲン原子又はニトロ基であることが好ましい。かかる一価の有機基の場合、R、R、R、R及びRは分岐構造や環構造を形成していてもよく、任意の位置にヘテロ原子が存在していてもよく、また相互に結合していてもよい。なお、R11及びR12は一般式(1)と同様である。
【0015】
一般式(1)及び(2)における、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の飽和又は不飽和の一価の有機基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、フェニル基、トリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルビニル基等の飽和又は不飽和の一価の炭化水素基や、ピリジル基、ピペリジル基、ピペリジノ基、ピロリル基、ピロリジニル基、イミダゾリル基、イミダゾリジニル基、フリル基、テトラヒドロフリル基、チエニル基、テトラヒドロチエニル基、モルホリニル基、モルホリノ基、キノリル基等の飽和又は不飽和の一価の複素環基等を挙げることができる。更に、上記の炭化水素基及び複素環基等の任意の位置に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、スルファニル基、カルボニル基、チオカルボニル基、カルボキシ基、チオカルボキシ基、ジチオカルボキシ基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホ基、アミノ基、イミノ基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、チオエステル基、ジチオエステル基、アミド基、チオアミド基、ウレタン基、チオウレタン基、ウレイド基、チオウレイド基等を置換基として導入した構造も挙げることができる。ここで、一価の有機基としては、メチル基のような炭素原子上の一価の有機基だけでなく、メトキシ基、メチルスルファニル基、ジメチルアミノ基のようなヘテロ原子上の一価の有機基も含まれる。あるいは、一価の有機基としては、カルボキシ基、チオカルボキシ基、ジチオカルボキシ基、ホルミル基、シアノ基、第一級アミド基、第一級チオアミド基、ウレイド基、チオウレイド基等の炭素原子数1の官能基が直接結合したものであってもよい。
【0016】
かかる一価の有機基は、目的とする光重合開始剤の分子量、感度、溶解性等に応じて適宜選定されればよいが、性能及び経済性の点から炭素原子数1〜20の飽和又は不飽和の一価の炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数1〜12の飽和又は不飽和の一価の炭化水素基であることがより好ましく、更には炭素原子数1〜4の飽和又は不飽和の一価の炭化水素基であることが最も好ましい。炭素原子数が20を超える場合は、光重合開始剤の溶解性が低下する懸念がある。なお後述の実施例には、一価の炭化水素基について、飽和又は不飽和、分岐構造や環構造の有無を問わず実施可能であることが具体的に示されている。
【0017】
以下に、本発明の光重合開始剤の具体例を示す。ただし、本発明はこれらに限定されない。

【0018】
置換基が相互に結合する例としては、次の構造が挙げられる。
【0019】
本発明の光重合開始剤は、下記一般式(19)及び(20)で表される構造のように、適当な置換基を介して多量化させたものであってもよい。

(ただし、R1a及びR11aは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の飽和又は不飽和の二価の有機基を表す。R、R、R、R、R、R11及びR12は一般式(1)及び(2)と同様である。)
【0020】
また、本発明の光重合開始剤は、下記一般式(21)、(22)及び(23)で表される構造であってもよい。

(ただし、R、R、R、R、R、R11及びR12は一般式(1)及び(2)と同様であり、R1a及びR11aは一般式(19)及び(20)と同様である。)
【0021】
本発明の光重合開始剤の製造方法は特に制限されないが、例えば一般式(2)の光重合開始剤を得るには、工業的に入手可能な5−ニトロインドールを原料として以下の手順を適用することが経済的に有利である。5−ニトロインドールの1位に求核置換反応等でRを導入した後、フリーデルクラフツアシル化反応で3位にR11COを導入し、ケトン体を得る。これをヒドロキシルアミンでオキシムに変換し、更にR12COOHの酸ハロゲン化物又は酸無水物でオキシムのエステル化を行って、目的の光重合開始剤に導く。また一般式(21)の光重合開始剤を得るには、上記ケトン体に亜硝酸エステルを作用させてα−オキソオキシムとし、同様にオキシムのエステル化を行えばよい。なお、5−ニトロインドールを出発物質とせず、インドールにRやR11COを先に導入し、その後ニトロ化を行ってもよい。
【0022】
本発明の光重合開始剤はインドール骨格を有するが、これはカルバゾール骨格と比較して縮合環の数が1つ少なく、平面の広がりの小さい骨格である。そのため、本発明の光重合開始剤は溶解性に優れており、感光性組成物の設計自由度を向上させる効果を有している。例えば、カラーフィルターのブラックマトリクスの製造に用いられる遮光性のフォトレジストのように光硬化が困難な用途においても、感光性組成物中に高濃度で存在させることで良好な感度を得ることができるようになる。一方、光重合開始剤がその機能を発現するためには光吸収を起こして励起状態になる必要があるが、縮合環の数が少ないとπ共役系が小さくなるため一般に光吸収には不利となる。しかし、本発明の光重合開始剤ではインドール骨格を少なくとも1つのニトロ基で置換することでかかる課題を克服し、紫外光から可視光にわたる広い波長範囲において光吸収を起こすことができる。
【0023】
本発明の感光性組成物は、上記の光重合開始剤に加えて、オレフィン結合を有する重合性化合物を含有する。オレフィン結合を有する重合性化合物としては、従来感光性組成物に用いられている公知の化合物を特に制限なく使用することができるが、アクリル酸及びメタクリル酸(以下、両者をあわせて「(メタ)アクリル酸」等という)の誘導体が有利であり、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル誘導体や、ビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレン型エポキシジ(メタ)アクリレート、フェノールノボラック型エポキシポリ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシポリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エポキシエステル誘導体等を好ましく用いることができる。また、上記(メタ)アクリル酸誘導体と、構造中に(好ましくは複数の)イソシアネート基や酸無水物基等を有する化合物との反応生成物等も適している。更に、公知の樹脂類であるビニル樹脂(アクリル酸(共)重合体、メタクリル酸(共)重合体、マレイン酸(共)重合体、スチレン(共)重合体等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂等の主鎖又は側鎖に、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合等により(メタ)アクリロイル基を導入した樹脂類等も用いることができる。なお、(メタ)アクリル酸誘導体以外にも、マレイン酸誘導体、マレイミド誘導体、クロトン酸誘導体、イタコン酸誘導体、ケイヒ酸誘導体、ビニル誘導体、ビニルアルコール誘導体、ビニルケトン誘導体、ビニル芳香族誘導体等も挙げることができる。これらのオレフィン結合を有する重合性化合物は、更にエポキシ基等の熱反応性の官能基やカルボキシ基等のアルカリ溶解性の官能基等を有して、複合機能化されたものであってもよい。これらのオレフィン結合を有する重合性化合物は、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明の感光性組成物における光重合開始剤の配合割合は特に制限されないが、オレフィン結合を有する重合性化合物100重量部に対して光重合開始剤が0.01〜50重量部であることが好ましく、0.1〜20重量部であることがより好ましい。
【0025】
本発明の感光性組成物は溶剤を含んだものであってもよく、特にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを好ましく使用できる。プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートは適度な溶解性と乾燥性を有する安全溶剤であり、カラーフィルターの製造に用いられるフォトレジスト等で広く使用されているが、本発明の光重合開始剤は当該溶剤系において溶解不良等の問題を生じにくく、感光性組成物を有利に作製することができる。また、溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート以外の公知の化合物も利用でき、例えばエステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤、脂肪族系溶剤、アミン系溶剤、アミド系溶剤等を特に制限なく使用することができる。
【0026】
本発明の感光性組成物は、必要に応じてその他の任意の成分を含んだものであってもよく、例えば着色材、フィラー、樹脂、添加剤等を配合させることができる。ここで、着色材としては染料、有機顔料、無機顔料、カーボンブラック顔料等を、フィラーとしてはシリカ、タルク等を、樹脂としてはビニル樹脂(アクリル酸(共)重合体、メタクリル酸(共)重合体、マレイン酸(共)重合体、スチレン(共)重合体等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等を、添加剤としては硬化剤、架橋剤、分散剤、界面活性剤、シランカップリング剤、粘度調整剤、湿潤剤、消泡剤、酸化防止剤等を挙げることができる。これら任意の成分としては、公知の化合物を特に制限なく使用することができる。
【0027】
また、本発明の感光性組成物には、本発明の光重合開始剤に加えて、公知の光重合開始剤や色素増感剤等を併用することもできる。例えば、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン化合物、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4′−ビス(N,N−ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−tert−ブチルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、2−メチル−1−[4−(メチルスルファニル)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−(N,N−ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン等のα−アミノアルキルフェノン化合物、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン化合物、3,3′,4,4′−テトラキス(tert−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン等の有機過酸化物、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール等のビイミダゾール化合物、ビス(η−シクロペンタジエニル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1−ピロリル)フェニル]チタン等のチタノセン化合物、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[3,4−(メチレンジオキシ)フェニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン化合物、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド化合物、カンファーキノン等のキノン化合物、1−[4−(フェニルスルファニル)フェニル]オクタン−1,2−ジオン=2−O−ベンゾイルオキシム、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)カルバゾール−3−イル]エタノン=O−アセチルオキシム等のオキシムエステル化合物等を特に制限なく使用することができる。
【0028】
本発明の感光性組成物の硬化物を作製する方法としては公知の方法が利用でき、目的や用途に合わせた適切な基材や型へ感光性組成物を塗布又は注入した後、露光により硬化が行われればよい。ここで、フォトマスク等を使用して選択的な露光を行い、更に現像を実施することで、画像形成や造形等の加工を行うこともできる。本発明の光重合開始剤は現像液への溶解性にも優れているため、感光性組成物の現像に要する時間を短縮させる効果があり、生産の効率が向上する点で好ましい。露光や現像を行った後、必要に応じて更に焼成等の処理を行ってもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の光重合開始剤は感度に優れ、少ない露光量で効率よく硬化できる高感度な感光性組成物を提供することができることから、きわめて有用である。本発明の光重合開始剤は、紫外光及び可視光を吸収して励起状態になると、オキシムエステル結合を速やかに開裂させて活性の高いラジカル種を生成し、感光性組成物に含まれるオレフィン結合を有する重合性化合物を高速に重合反応させるものと考えられる。また、本発明の光重合開始剤は溶解性に優れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の溶剤系で好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0031】
[実施例1]
(光重合開始剤の合成)
以下4ステップの反応により、1−(1−エチル−5−ニトロインドール−3−イル)エタノン=O−アセチルオキシム(式(3)の化合物)を合成した。反応はガラス製反応器を用いて常圧下実施した。
【0032】
ステップ1: N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒として、5−ニトロインドール0.100モル、ブロモエタン0.110モル及び水酸化カリウム0.110モルを35℃で2時間反応させた。冷却後、反応液を水に滴下して析出した固体を回収し、十分に洗浄及び乾燥を行って、1−エチル−5−ニトロインドール0.099モルを得た。
【0033】
ステップ2: ニトロメタンを溶媒として、ステップ1の生成物全量、塩化アセチル0.120モル及び塩化アルミニウム0.120モルを室温で2時間反応させた。反応液を氷水に滴下して析出した固体を回収し、十分に洗浄及び乾燥を行って、1−(1−エチル−5−ニトロインドール−3−イル)エタノン0.095モルを得た。
【0034】
ステップ3: N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒として、ステップ2の生成物全量及び塩酸ヒドロキシルアミン0.150モルを80℃で4時間反応させた。冷却後、反応液を水に滴下して析出した固体を回収し、十分に洗浄及び乾燥を行って、1−(1−エチル−5−ニトロインドール−3−イル)エタノン=オキシム0.092モルを得た。
【0035】
ステップ4: N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒として、ステップ3の生成物全量及び無水酢酸0.150モルを80℃で2時間反応させた。冷却後、反応液を水に滴下して析出した固体を回収し、十分に洗浄及び乾燥を行って、目的化合物である1−(1−エチル−5−ニトロインドール−3−イル)エタノン=O−アセチルオキシム0.088モルを得た。更に、酢酸イソプロピルで再結晶を行って、黄色の針状結晶である目的化合物の純品0.070モルを得た。得られた純品を重クロロホルム中400MHzのH−NMRで同定したところ、次の結果を示した。δ=9.27(d,1H,R)、8.19(dd,1H,R)、7.60(s,1H,R)、7.39(d,1H,R)、4.25(q,2H,R)、2.42(s,3H,R11)、2.38(s,3H,R12)、1.54(t,3H,R)。また、示差走査熱量測定による融点は194℃、分解開始点は210℃であった。
【0036】
[実施例2]
実施例1と同様にして、1−(1−アリル−5−ニトロインドール−3−イル)エタノン=O−アセチルオキシム(式(4)の化合物)を合成した。ただしステップ1ではブロモエタンの代わりに3−ブロモプロペンを用い、油状の生成物を溶媒抽出により回収した。得られた純品を重クロロホルム中400MHzのH−NMRで同定したところ、次の結果を示した。δ=9.29(d,1H,R)、8.19(dd,1H,R)、7.57(s,1H,R)、7.37(d,1H,R)、6.01(ddt,1H,R)、5.33(ddt,1H,R)、5.15(ddt,1H,R)、4.81(ddd,2H,R)、2.42(s,3H,R11)、2.39(s,3H,R12)。なお、ステップ1の生成物は1−アリル−5−ニトロインドール、ステップ2の生成物は1−(1−アリル−5−ニトロインドール−3−イル)エタノン、ステップ3の生成物は1−(1−アリル−5−ニトロインドール−3−イル)エタノン=オキシムであった。
【0037】
[実施例3]
実施例1と同様にして、1−(1−ブチル−5−ニトロインドール−3−イル)エタノン=O−アセチルオキシム(式(5)の化合物)を合成した。ただしステップ1ではブロモエタンの代わりに1−ブロモブタンを用い、油状の生成物を溶媒抽出により回収した。得られた純品を重クロロホルム中400MHzのH−NMRで同定したところ、次の結果を示した。δ=9.27(d,1H,R)、8.19(dd,1H,R)、7.56(s,1H,R)、7.38(d,1H,R)、4.19(t,2H,R)、2.42(s,3H,R11)、2.39(s,3H,R12)、1.87(tt,2H,R)、1.37(tq,2H,R)、0.97(t,3H,R)。なお、ステップ1の生成物は1−ブチル−5−ニトロインドール、ステップ2の生成物は1−(1−ブチル−5−ニトロインドール−3−イル)エタノン、ステップ3の生成物は1−(1−ブチル−5−ニトロインドール−3−イル)エタノン=オキシムであった。
【0038】
[実施例4]
実施例1と同様にして、1−(1−エチル−5−ニトロインドール−3−イル)プロパン−1−オン=O−アセチルオキシム(式(6)の化合物)を合成した。ただしステップ2では塩化アセチルの代わりに塩化プロピオニルを用いた。得られた純品を重クロロホルム中400MHzのH−NMRで同定したところ、次の結果を示した。δ=9.27(d,1H,R)、8.19(dd,1H,R)、7.60(s,1H,R)、7.39(d,1H,R)、4.26(q,2H,R)、2.84(q,2H,R11)、2.39(s,3H,R12)、1.55(t,3H,R)、1.29(t,3H,R11)。なお、ステップ2の生成物は1−(1−エチル−5−ニトロインドール−3−イル)プロパン−1−オン、ステップ3の生成物は1−(1−エチル−5−ニトロインドール−3−イル)プロパン−1−オン=オキシムであった。
【0039】
[実施例5]
実施例1と同様にして、1−(1−エチル−5−ニトロインドール−3−イル)エタノン=O−プロピオニルオキシム(式(7)の化合物)を合成した。ただしステップ4では無水酢酸の代わりに無水プロピオン酸を用いた。得られた純品を重クロロホルム中400MHzのH−NMRで同定したところ、次の結果を示した。δ=9.28(d,1H,R)、8.19(dd,1H,R)、7.59(s,1H,R)、7.38(d,1H,R)、4.25(q,2H,R)、2.68(q,2H,R12)、2.41(s,3H,R11)、1.54(t,3H,R)、1.31(t,3H,R12)。
【0040】
[実施例6]
実施例1と同様にして、1−(1−エチル−5−ニトロインドール−3−イル)エタノン=O−シクロプロパンカルボニルオキシム(式(8)の化合物)を合成した。ただしステップ4では無水酢酸の代わりに塩化シクロプロパンカルボニルを用い、ピリジンを溶媒として室温で4時間反応させた。得られた純品を重クロロホルム中400MHzのH−NMRで同定したところ、次の結果を示した。δ=9.30(d,1H,R)、8.18(dd,1H,R)、7.59(s,1H,R)、7.37(d,1H,R)、4.25(q,2H,R)、2.44(s,3H,R11)、1.96(tt,1H,R12)、1.54(t,3H,R)、1.21(dt,2H,R12)、1.03(dt,2H,R12)。
【0041】
[実施例7]
実施例1と同様にして、1−(1−エチル−5−ニトロインドール−3−イル)エタノン=O−ピバロイルオキシム(式(9)の化合物)を合成した。ただしステップ4では無水酢酸の代わりに塩化ピバロイルを用い、ピリジンを溶媒として室温で4時間反応させた。得られた純品を重クロロホルム中400MHzのH−NMRで同定したところ、次の結果を示した。δ=9.32(d,1H,R)、8.18(dd,1H,R)、7.59(s,1H,R)、7.37(d,1H,R)、4.24(q,2H,R)、2.41(s,3H,R11)、1.54(t,3H,R)、1.37(s,9H,R12)。
【0042】
[実施例8]
実施例1と同様にして、1−(1−エチル−5−ニトロインドール−3−イル)プロパン−1−オン=O−アクリロイルオキシム(式(10)の化合物)を合成した。ただしステップ2では塩化アセチルの代わりに塩化プロピオニルを用い、ステップ4では無水酢酸の代わりに無水アクリル酸を用いた。得られた純品を重クロロホルム中400MHzのH−NMRで同定したところ、次の結果を示した。δ=9.32(d,1H,R)、8.19(dd,1H,R)、7.60(s,1H,R)、7.38(d,1H,R)、6.61(dd,1H,R12)、6.40(dd,1H,R12)、5.98(dd,1H,R12)、4.26(q,2H,R)、2.86(q,2H,R11)、1.55(t,3H,R)、1.31(t,3H,R11)。なお、ステップ2の生成物は1−(1−エチル−5−ニトロインドール−3−イル)プロパン−1−オン、ステップ3の生成物は1−(1−エチル−5−ニトロインドール−3−イル)プロパン−1−オン=オキシムであった。
【0043】
[実施例11]
(感光性組成物の作製)
実施例1で合成した光重合開始剤0.10重量%、ビスフェノールフルオレン型エポキシジアクリレート構造を有するアルカリ現像型感光性樹脂(オレフィン結合を有する重合性化合物)の56.5重量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(新日鐵化学社製「V−259ME」)26.20重量%、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(オレフィン結合を有する重合性化合物)5.00重量%、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製「FZ−2122」)0.05重量%、3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤)0.05重量%及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)68.60重量%の割合で配合を行い、室温で3時間攪拌混合して感光性組成物を作製した。かかる感光性組成物は、固形分濃度20.0重量%のアルカリ現像可能なネガ型の透明フォトレジストである。なお、ここで固形分とは溶剤以外の成分をいう。
【0044】
(感光性組成物の評価)
上記感光性組成物を無アルカリガラス基板にスピンコーターを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間乾燥させて試験片を作成した。このとき、膜厚1.0μmの硬化膜が得られるように塗布条件(スピン回転数)を調節した。次に、透過率を0〜100%の間で段階的に変化させたフォトマスク及び350nm以下の光を吸収するカットフィルターを介して、照度30mW/cm(i線基準)の超高圧水銀ランプで100mJ/cm(i線基準)の紫外線を照射して試験片に画像露光を行った。その後、試験片を23℃のアルカリ現像液(新日鐵化学社製「V−2401ID」の10倍希釈液)で1分間処理し、更に水洗を行って画像を現像した。この画像は、光硬化に必要な露光量を読み取ることができるものである。最後に試験片を230℃の熱風オーブンで30分間焼成し、感光性組成物の硬化膜を得た。画像から判定された光硬化に必要な露光量は23mJ/cm(i線基準)であった。
【0045】
[実施例12]
実施例11における光重合開始剤を実施例2で合成した光重合開始剤に変更し、その他は実施例11と同様にして感光性組成物を作製し評価を行った。画像から判定された光硬化に必要な露光量は23mJ/cm(i線基準)であった。
【0046】
[実施例13]
実施例11における光重合開始剤を実施例3で合成した光重合開始剤に変更し、その他は実施例11と同様にして感光性組成物を作製し評価を行った。画像から判定された光硬化に必要な露光量は26mJ/cm(i線基準)であった。
【0047】
[実施例14]
実施例11における光重合開始剤を実施例4で合成した光重合開始剤に変更し、その他は実施例11と同様にして感光性組成物を作製し評価を行った。画像から判定された光硬化に必要な露光量は23mJ/cm(i線基準)であった。
【0048】
[比較例1]
実施例11における光重合開始剤を1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)カルバゾール−3−イル]エタノン=O−アセチルオキシム(下記式(24)で示される化合物、BASF社製「イルガキュアOXE02」)に変更し、その他は実施例11と同様にして感光性組成物を作製し評価を行った。画像から判定された光硬化に必要な露光量は37mJ/cm(i線基準)であって、実施例11〜14と比較して感度が低いことが示された(硬化に必要な露光量が少ないほど高感度である)。
【0049】
[比較例2]
実施例11における光重合開始剤を1−(1−エチルインドール−3−イル)エタノン=O−アセチルオキシム(下記式(25)で示される化合物)に変更し、その他は実施例11と同様にして感光性組成物を作製し評価を行った。その結果、感光性組成物は光硬化せずにアルカリ現像液にすべて溶解してしまい、実施例11〜14と比較して感度が低いことが示された。
【0050】
[比較例3]
実施例11における光重合開始剤を1−[1−エチル−5−(2−メチルベンゾイル)インドール−3−イル]エタノン=O−アセチルオキシム(下記式(26)で示される化合物)に変更し、その他は実施例11と同様にして感光性組成物を作製し評価を行った。画像から判定された光硬化に必要な露光量は83mJ/cm(i線基準)であって、実施例11〜14と比較して感度が低いことが示された。
【0051】
[実施例21]
(感光性組成物の作製)
実施例1で合成した光重合開始剤0.60重量%、ビスフェノールフルオレン型エポキシジアクリレート構造を有するアルカリ現像型感光性樹脂(オレフィン結合を有する重合性化合物)の56.5重量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(新日鐵化学社製「V−259ME」)8.23重量%、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(オレフィン結合を有する重合性化合物)1.35重量%、カーボンブラック顔料(着色材)をカチオン性高分子分散剤でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに分散した分散液(カーボンブラック顔料濃度30.0重量%、固形分濃度34.5重量%)26.69重量%、フッ素系界面活性剤(DIC社製「メガファックF−556」)0.05重量%、3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤)0.15重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)29.33重量%及びシクロヘキサノン(溶剤)33.60重量%の割合で配合を行い、室温で3時間攪拌混合して感光性組成物を作製した。かかる感光性組成物は、固形分濃度16.0重量%のアルカリ現像可能なネガ型の遮光性フォトレジストである。
【0052】
(感光性組成物の評価)
上記感光性組成物を無アルカリガラス基板にスピンコーターを用いて塗布し、90℃のホットプレートで1分間乾燥させて試験片を作成した。このとき、膜厚1.0μmの硬化膜が得られるように塗布条件(スピン回転数)を調節した。次に、線幅5μmのマトリクス状のパターンを有するフォトマスクを介して、照度30mW/cm(i線基準)の超高圧水銀ランプで100mJ/cm(i線基準)の紫外線を照射して試験片に画像露光を行った。その後、試験片を23℃のアルカリ現像液(新日鐵化学社製「V−2401ID」の10倍希釈液)で1分間処理し、更に水洗を行って画像を現像した。最後に試験片を230℃の熱風オーブンで30分間焼成し、感光性組成物の硬化膜を得た。試験片には直線性良好で現像残渣のない線幅5μmの高品位なブラックマトリクスが形成された。ブラックマトリクスの光学濃度は4.4/μmであり、高い遮光性を有していた。
【0053】
[実施例22]
実施例21における光重合開始剤を実施例2で合成した光重合開始剤に変更し、その他は実施例21と同様にして感光性組成物を作製し評価を行った。試験片には直線性良好で現像残渣のない線幅5μmの高品位なブラックマトリクスが形成された。ブラックマトリクスの光学濃度は4.4/μmであり、高い遮光性を有していた。
【0054】
[実施例23]
実施例21における光重合開始剤を実施例3で合成した光重合開始剤に変更し、その他は実施例21と同様にして感光性組成物を作製し評価を行った。試験片には直線性良好で現像残渣のない線幅5μmの高品位なブラックマトリクスが形成された。ブラックマトリクスの光学濃度は4.4/μmであり、高い遮光性を有していた。
【0055】
[実施例24]
実施例21における光重合開始剤を実施例4で合成した光重合開始剤に変更し、その他は実施例21と同様にして感光性組成物を作製し評価を行った。試験片には直線性良好で現像残渣のない線幅5μmの高品位なブラックマトリクスが形成された。ブラックマトリクスの光学濃度は4.4/μmであり、高い遮光性を有していた。
【0056】
[比較例4]
実施例21における光重合開始剤を1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)カルバゾール−3−イル]エタノン=O−アセチルオキシム(式(24)で示される化合物、BASF社製「イルガキュアOXE02」)に変更し、その他は実施例21と同様にして感光性組成物を作製し評価を行った。その結果、現像で除去されるべき未露光部が現像後も基板上に残存してブラックマトリクスを得ることはできず、感光性組成物の現像液への溶解性が不足していることが示された。
【0057】
[比較例5]
実施例21における光重合開始剤を1−(9−エチル−6−ニトロカルバゾール−3−イル)エタノン=O−アセチルオキシム(下記式(27)で示される化合物)に変更し、その他は実施例21と同様にして感光性組成物を作製し評価を行った。その結果、感光性組成物を塗布した試験片の塗布面に大量の異物が確認され、画像露光以降の工程を実施することができなかった。異物は未溶解の光重合開始剤であった。

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の光重合開始剤は、高感度かつ溶解性に優れることから、フォトレジスト、光硬化型インキ、光硬化型塗料、光硬化型接着剤、光造形用感光性樹脂、感光性印刷版、記録材料等に適して用いることができる。特に、カラーフィルターの製造に用いられるフォトレジストのように、高性能を要求される用途に最適である。