(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945111
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】ウェーハ薄膜加工制御方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20160621BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20160621BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20160621BHJP
H01L 23/522 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
H01L21/304 631
H01L21/88 J
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-242828(P2011-242828)
(22)【出願日】2011年11月4日
(65)【公開番号】特開2013-98498(P2013-98498A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2014年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】石川 一政
【審査官】
溝本 安展
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/081767(WO,A1)
【文献】
特開2006−024631(JP,A)
【文献】
特開平08−316279(JP,A)
【文献】
特開2011−014800(JP,A)
【文献】
特開2009−111238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/3205
H01L 21/768
H01L 23/522
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハ薄膜加工制御方法であって、
貫通電極用のビアをウェーハのビア形成面に予め形成後、前記ウェーハのビア形成面と反対側の面を研削面として研削加工を行う研削加工工程は、粗研削加工段階と仕上げ研削加工段階とを含んでおり、
前記粗研削加工段階においては、前記ウェーハのビア形成面から前記研削面までの膜厚を測定して膜厚データを取得すると共に、前記ウェーハの内部のビア底部からウェーハの研削面までの残存寸法を測定して残存寸法データを取得して、該残存寸法データが第1の所定値に達するまで研削を続行し、
前記残存寸法データが前記第1の所定値に達した後の前記仕上げ研削加工段階においては、前記ウェーハのビア形成面から前記研削面までの膜厚を測定して該膜厚データを取得すると共に、仕上げ研削加工開始時の膜厚と仕上げ研削加工進行時の膜厚との間の偏差を前記第1の所定値から減算することで、前記ウェーハの内部のビア底部から前記ウェーハの前記研削面までの導出残存寸法データを取得し、該導出残存寸法データが第2の所定値に達すると仕上げ研削加工を停止するようにした仕上げ研削加工段階と、
を含むことを特徴とするウェーハ薄膜加工制御方法。
【請求項2】
前記膜厚データまたは前記残存寸法データを取得する際、前記ウェーハを所定数回転させた状態で取得するようにした、請求項1に記載のウェーハ薄膜加工制御方法。
【請求項3】
非接触型膜厚測定装置におけるセンサヘッドにより前記膜厚データまたは残存寸法データを取得するようにし、前記膜厚データまたは残存寸法データは、前記センサヘッドの前記ウェーハに対する取得位置を変更して取得されるようにした、請求項1または2に記載のウェーハ薄膜加工制御方法。
【請求項4】
前記膜厚データまたは前記残存寸法データを所定時間間隔でサンプリングし、該サンプリング毎に前記膜厚データまたは前記残存寸法データのうち、所定のピークレベル内のデータのみを取得するマスク処理を行うようにした、請求項1から3のいずれか1項に記載のウェーハ薄膜加工制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの薄膜加工を制御して、貫通電極付きウェーハを作成するウェーハ薄膜加工制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータや携帯用情報端末機器の普及により、搭載されるICパッケージの小型化、高密度化が進み、チップの多層化構造、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)を形成するために、例えば貫通電極(Through Silicon Via、以下TSV)ウェーハが提案されている。
TSVウェーハを得るための加工方法としては、ビアファースト(Via First)プロセスを用いて形成されることが提案されている。
この場合、Via Firstプロセスは概略次のとおりとなっている。
1.貫通電極用のビアを形成(ドライエッチングでSiをエッチング)
2.ビアに対し側壁絶縁膜を形成
3.ビア内にPoly−Siを充填
4.ウェーハ表面のPoly−Siを除去(CMP(Chemical Mechanical Polishing))
【0003】
以上のプロセスを経て、DRAM素子形成後に、ウェーハ薄膜化プロセスが進められる。
ウェーハ薄膜化のプロセスは、ウェーハを機械的に研削する「グラインディング工程」と、グラインディング時にウェーハ研削面に生じたマイクロクラック等を含むストレス層(加工変質層)を除去する「ストレスリリーフ工程」とからなる。この加工変質層はウェーハの反りやクラック発生の原因となるため、グラインディング処理後にはストレスリリーフ処理により完全に除去する必要がある。
【0004】
ところで、ウェーハ薄膜化プロセスの際、「グラインディング工程」と「ストレスリリーフ工程」とによって、ビアがウェーハを貫通してTSVとなる。この薄膜化プロセス時、TSVが形成される前に、ビア自体の深さ、直径など、形状測定を行うことが提案されている。
例えば、特許文献1では、可視光、近赤外光または赤外光が透過可能な材料に設けられた有底穴等の段差のある構造の形状の測定方法に関し、例えば、積層LSI(Large Scale Integrated circuit)チップ作成の際に積層のために用いるシリコン貫通電極(Through Silicon Via(TSV);貫通ビア)の深さ等の段差のある形状を予め把握するために、貫通ビアを完成する前の未貫通ビアの形状等を測定するとしている。
【0005】
このように、TSVウェーハを得るためのプロセスにおいて、上述の検査測定を行うことも含めて、「グラインディング工程」において、ビアがウェーハを貫通してTSVとなる寸前で薄膜化プロセスを一旦停止する、いわゆる寸止め加工をすることが求められている。
そのためには、これまでは、例えば、NCIG(Non Contact Inprocess Gauge:非接触厚み測定器)をグラインダに搭載し、研削中の厚さを制御することで、ウェーハのみの厚み管理を行うことが提案されている。
さらに、同様にウェーハ膜厚計を研磨装置に搭載し、加工中のウェーハの研磨レートを次ウェーハにフィードバックし、取り代管理を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−158543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のようなウェーハ総厚みに基づいて、薄膜化プロセスを実施するということは、ウェーハ内に形成されたビアの深さに関係なく進行するプロセスであるので、ビアの深さによっては、ビアが貫通してしまうおそれがある。
また、同じウェーハ内であってもビア深さにばらつきがあることや、ビア直上のウェーハ研削面での研削加工圧が、ビアの存在しないウェーハ研削面での研削加工圧と比較して高くなるため、ビア直上のウェーハ研削面での研削がより進行し研削量が多くなるという問題が生じる。そのため、ビア深さを考慮して、研削量を抑えてウェーハの薄膜化加工をする研削加工制御が必要になる。
したがって、研削量を抑えてウェーハの薄膜化加工をすることは、ストレスリリーフ工程(ポリッシング)やビア出し工程で削除すべきウェーハ厚さが増え、加工時間が長くなることになる。
また、上記の研削量(取り代)の変動により加工表面性状(表面粗さやうねり)に影響を与えるおそれがあり、また、取り代増大によるウェーハ全面における厚み最大値と最小値差(TTV)の悪化をもたらすおそれがある。
【0008】
そこで、ウェーハ総厚みに基づく薄膜化加工をするのではなく、ウェーハ内部のビア底部からウェーハ研削面までの残存寸法に基づいて薄膜化加工を行う新たな手法が提案されるに至った。
この手法によれば、ビアが貫通してTSVとなる寸前で研削加工を停止するという寸止め加工が可能である。この寸止め加工では、ビア底部からウェーハ研削面までの残存寸法は、極力小さいものであることが求められる(望ましくは数μm)。ビア底部からウェーハ研削面までの残存寸法が小さければ小さいほど、ストレスリリーフ工程(ポリッシング)での取り代を少なくし、高能率化につながるからである。
しかしながら、非接触厚み測定器の測定性能上限度(せいぜい10μm程度)があり、10μmより小さな厚さは測定不能であり、このままでは、所望の寸止め加工に寄与し得ない。
なお、この新たな手法においても、ビア直上のウェーハの研削面での研削がより進行して研削量が多くなることからビアが貫通してしまうことのないように、正確な取り代を把握するために、複数個所において測定することが必要である。
よって、NCIGを用いてTSVウェーハ加工を実行する際、ウェーハ内部のビア底部からウェーハ研削面までの残存寸法に基づいて薄膜化加工を行う新たな手法が有効に機能する、測定方法、計測方法が求められ、これによって、ストレスリリーフ工程(ポリッシング)での高能率化および取り代の変動を抑えて加工安定化が可能となるウェーハ薄膜加工制御方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、ウェーハ薄膜加工制御方法であって、貫通電極用のビアをウェーハのビア形成面に予め形成後、前記ウェーハのビア形成面と反対側の面を研削面として研削加工を行う
研削加工工程は、粗研削加工段階と仕上げ研削加工段階とを含んでおり、、
前記粗研削加工段階においては、前記ウェーハのビア形成面から前記研削面までの膜厚を測定して膜厚データを取得すると共に、前記ウェーハの内部のビア底部からウェーハの研削面までの残存寸法を測定して残存寸法データを取得して、該残存寸法データが第1の所定値に達するまで研削を続行し、前記残存寸法データが前記第1の所定値に達した後の
前記仕上げ研削加工段階においては、前記ウェーハのビア形成面から前記研削面までの膜厚を測定して該膜厚データを取得すると共に、
仕上げ研削加工開始時の膜厚と仕上げ研削加工進行時の膜厚との間の偏差を前記第1の所定値から減算することで、前記ウェーハの内部のビア底部から前記ウェーハの前記研削面までの導出残存寸法データを取得し、該導出残存寸法データが第2の所定値に達すると
仕上げ研削加工を停止するようにした仕上げ研削加工段階と、含むことを特徴とするウェーハ薄膜加工制御方法を提供する。
【0011】
上述のウェーハ薄膜加工制御方法において、膜厚データおよび残存寸法データを取得する際、ウェーハを所定数回転させた状態で取得することができる。
【0012】
また、非接触型膜厚測定装置におけるセンサヘッドにより膜厚データまたは残存寸法データを取得するようにし、膜厚データまたは残存寸法データは、センサヘッドのウェーハに対する取得位置を変更して取得することができる。
【0013】
さらに、膜厚データまたは残存寸法データを所定時間間隔でサンプリングし、サンプリング毎に膜厚データまたは残存寸法データのうち、所定のピークレベル内のデータのみを取得するマスク処理を行うようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、NCIGを用いてTSVウェーハ加工を実行する際、ウェーハ総厚みに基づくのではなく、ウェーハ総厚みに対応するウェーハ内部のビア底部からウェーハ研削面までの残存寸法を求めて、加工制御する手法を採用することにより、次工程での高効率化および取り代の変動を抑えて加工安定化が可能となる加工制御手法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明にかかるTSVウェーハを得るためのウェーハ薄膜化のプロセスの際、ウェーハを研削すると共に、ウェーハの膜厚を測定する工程を実行する際の、要部システム構成図である。
【
図2】
図1に示す装置に搭載され、ウェーハの膜厚を測定する非接触型膜厚測定装置の一例を示す、システム構成図である。
【
図3】ウェーハ薄膜化のプロセスにおいて、粗研削加工と共に実行されるウェーハの膜厚を測定する工程を示したフローチャートである。
【
図4】粗研削加工時に、非接触型膜厚測定装置によるセンサヘッドによって、ウェーハの膜厚、ビア形成位置の残存寸法を読み取る際の模式的説明図である。
【
図5】
図4に示す非接触型膜厚測定装置によるセンサヘッドによって、ウェーハの膜厚、ビア形成位置の残存寸法を読み取ることにより得られるウェーハの膜厚データとウェーハ内部のビア底部からウェーハ研削面までの残存寸法データとの関係を示したグラフである。
【
図6】ウェーハを載置するチャックテーブルを所定回転数で回転させた際に、所定時間ごとのサンプリングによって得られるウェーハの膜厚データとウェーハ内部のビア底部からウェーハ研削面までの残存寸法データとを示したグラフである。
【
図7】ウェーハ薄膜化のプロセスにおいて、仕上げ研削加工と共に実行されるウェーハの膜厚測定と、膜厚データから得られるウェーハ内部のビア底部からウェーハ研削面までの残存寸法データを基に実行されるグラインディング工程を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1にウェーハの研削加工に用いられる、加工装置1の要部の一例を示す。この加工装置1は、TSVウェーハを得るためのTSVウェーハプロセスにおいて、ウェーハ薄膜化のプロセスを実行するにあたり、ウェーハを機械的に研削するグラインディング工程において用いられる。なお、この加工装置1には、TSVウェーハプロセスにおいて必要なグラインディング工程を初めとして、ポリッシング工程、さらには、ウェーハの両面洗浄を実行する機能を兼ね備えた研削研磨装置1(以下、PG装置1)を用いることができる。
PG装置1を用いれば、各工程間におけるウェーハの搬送が不要となり、ウェーハに対する搬送時のダメージをなくすことができるという点で好ましい。
また、ここでのグラインディング工程は、研削加工として、粗研削加工と、仕上げ研削加工とを実行する加工手法を採用している。
PG装置1は、予め貫通電極(Tsv)用のビアが形成されたウェーハ2を保持するチャックテーブル3を有する。チャックテーブル3は、円盤状のもので、その下面に図示しないモータによって回転駆動する構成となっている。かかるチャックテーブル3の上面に、吸着プレート4を介して吸着状態で保持するようにしている。
また、このPG装置1は、チャックテーブル3上のウェーハ2に対し、研削加工を施すためのグラインディングホイール5が、砥石部5gをウェーハ2の研削表面に向けて押込み可能に配置されている。
【0017】
ウェーハ2は、例えば前述したように、ビア Firstプロセスを経て予め貫通電極用のビア6が形成されたもので、ビア6が形成された表面(デバイス面)側に支持基材7を貼り合わせて構成されている。なお、
図1では、ビア6の形成状態を明確に示すために、ビア6を一定間隔で同径のものを模式的な断面図で示している。
【0018】
そして、以上のようなPG装置1には、チャックテーブル3上のウェーハ2に対し、研削段階において、ウェーハの膜厚等(後述)を測定するための非接触型膜厚測定装置10(以下、NCIG10)のセンサヘッド10hが近接配置されている。この場合、センサヘッド10hは、ウェーハ2上で読み取り位置を移動できるようにすることが望ましい。
製品化されるDRAMの回路設計により、ウェーハ2の位置によってウェーハ2内に形成されるビア6が偏在し、膜厚等の正確な測定の妨げとなるからである。
また、研削時にビア6直上のウェーハ2の研削面での研削がより進行して研削量が多くなることからビア6の深さを考慮した研削加工制御を可能とするべく、正確な取り代を把握するために、複数個所において測定することが必要であるからである。
NCIG10は、例えば
図2に示すように、PG装置1とRS232CケーブルCrsを介して接続されたコントローラ10cと、コントローラ10cと専用ケーブルCを介して接続された分光器10sと、分光器10sとファイバケーブルCfを介して接続されたセンサヘッド10hとを備えている。
【0019】
NCIG10の機能を概略的に説明すると、NCIG10では赤外光が用いられ、分光干渉法による測定法を行っている。センサヘッド10hから、測定対象であるウェーハ2へ照射された赤外光は、ウェーハ2の研削面とデバイス面とから反射して反射光となって、これら反射光が干渉して干渉波となってセンサヘッド10hに受光される。センサヘッド10hに受光された干渉波は、ファイバケーブルCfを介して分光器10sに送られ、分光器10sにおいて干渉波を所定時間ごとにサンプリングして数値化し、数値データを専用ケーブルCを介してコントローラ10cに送られる。そして、コントローラ10cにおいて分光器10sからの数値データを処理し、PG装置1において、読み取り可能なデータとして表示したり、プリントアウトするようにしている。
なお、PG装置1には、NCIG10の測定動作と共に、TSVウェーハプロセスを実行するためのソフトウェアが格納され、NCIG10におけるコントローラ10cには、膜厚データの読み取り、数値化処理等の測定手法を実行するためのソフトウェアが格納されている。
【0020】
次に、以上のようなNCIG10を用いて行われる測定手法と共になされる、ウェーハ薄膜化のプロセスを、具体例を挙げて説明する。
先ず、Via Firstプロセスを経て予めTSV用のビア6が形成されたウェーハ2に、ビア6が形成された表面(デバイス面)側に支持基材7を貼り合わせて、PG装置1のチャックテーブル3の上面に、吸着プレート4を介して吸着状態で保持する(
図1参照)。
そしてPG装置1に対し、操作指令を出し、グラインディング工程を初めとして、ポリッシング工程を実行する。
【0021】
グラインディング工程のうち、粗研削加工段階を
図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
粗研削加工開始で(STEP1)、チャックテーブル3が所定数で回転駆動され(STEP2)、グラインディングホイール5が、砥石部5gを介してウェーハ2の研削表面に向けて押込み駆動され(STEP3)、これによって、ウェーハ2のビア6が形成されたデバイス面と反対側の面を研削面として相当量研削される。この粗研削加工開始と共に、NCIG10が起動される(STEP4)。ウェーハ2の上方に近接配置されたセンサヘッド10hから、ウェーハ2へ照射された赤外光は、ウェーハ2の研削面とデバイス面とから反射して反射光となる。これら反射光が干渉して干渉波となってセンサヘッド10hに受光される。センサヘッド10hに受光された干渉波は、ファイバケーブルCfを介して分光器10sに送られ、分光器10sにおいて干渉波を所定時間ごとにサンプリングして数値化し、数値データを専用ケーブルCを介してコントローラ10cに送られる。そして、コントローラ10cにおいて分光器10sからの数値データを処理し(STEP5)、PG装置1において、読み取り可能なデータとして表示したり、プリントアウトすることにより、研削加工の進行状態を容易に把握することができる。
以上の粗研削加工段階は、NCIG10のセンサヘッド10hをウェーハ2の上方で、ウェーハ2の研削面に平行に移動して、ウェーハ2に対する測定位置を変えて行われる。
【0022】
センサヘッド10hからの赤外光は、
図4に示すようにウェーハ2の研削面とデバイス面とからの反射光との干渉波を受光すると同時に、ウェーハ2の研削面とウェーハ2内のビア6の底部とからの反射光との干渉波を受光している。これらの受光データはファイバケーブルCfを介して分光器10sに送られ、分光器10sにおいて干渉波を所定時間ごとにサンプリングして数値化し、数値データを専用ケーブルCを介してコントローラ10cに送られ、コントローラ10cにおいて分光器10sからの数値データを基にウェーハ2の研削面とデバイス面間の膜厚T1を導出する。これと同時に、コントローラ10cは、ウェーハ2の研削面とウェーハ2内のビア6の底部間の残存寸法T2を導出し(STEP5)、PG装置1において、読み取り可能なデータとして表示することができる(
図5参照)。
【0023】
以上のような粗研削加工段階は、ウェーハ2の研削面とデバイス面間の膜厚T1が例えば77μm、ウェーハ2の研削面とウェーハ2内のビア6の底部間の残存寸法T2が第1の所定値として、NCIG10による読み取り厚さの下限値に達するまで続行される(STEP6)。NCIG10による読み取り厚さの下限値は略10μmであり、それ以下の厚さは直接読み取ることができないからである。
かかる粗研削加工段階において、
図5に示すように、研削加工が進むことで、ウェーハ2の研削面とデバイス面間の膜厚T1を示すデータ群αと、ウェーハ2の研削面とウェーハ2内のビア6の底部間の残存寸法T2を示すデータ群βとは、共に平行に相関して推移していることがわかる。なお、
図5において、ウェーハ2の研削面とウェーハ2内のビア6の底部間の残存寸法T2を示すデータ群βは、ウェーハ2の研削面とデバイス面間の膜厚T1を示すデータ群αに比較して、データ数が明らかに少ない。これは、ここでは、膜厚T1と残存寸法T2をNCIG10により、同時に測定しているためで、同時に測定した場合、高いレベルの方を測定データとして取り込むためである。
したがって、ウェーハ2の研削面とウェーハ2内のビア6の底部間の残存寸法T2を示すデータ群βを増加させるためには、例えば所定レベル以上のデータは取り込まないとするデータのマスク処理が考えられる。
【0024】
ここで、膜厚T1が例えば77μmとなり、ウェーハ2の研削面とウェーハ2内のビア6の底部間の残存寸法T2が10μmに達したことは、PG装置1において表示される時間(ms)と厚さ(μm)との関係により検証することができる(
図6参照)。
図6において、チャックテーブル3が所定の回転数(例えば60rpm)で、マスク処理によって抽出された残存寸法データの範囲が0〜60μmとした場合を示している。
なお、残存寸法データが複数の層として表示されるのは、ウェーハ2内のビア6の残存寸法にばらつきがあることを示している。
【0025】
次に、グラインディング工程のうち、仕上げ研削加工段階を
図7に示すフローチャートに基づいて説明する。
ウェーハ2の研削面とウェーハ2内のビア6の底部間の残存寸法T2が10μmに達すると、仕上げ研削加工段階に入る(STEP7)。チャックテーブル3を回転駆動し(STEP8)、グラインディングホイール5を押込み駆動し(STEP9)、さらに、NCIG10を起動する(STEP10)。ここでNCIG10のセンサヘッド10hをウェーハ2の上方で、ウェーハ2の研削面に平行に移動させつつ(STEP11)、センサヘッド10hから赤外光をウェーハ2の研削面に照射して以下のように測定が実行される。
PG装置1側において、仕上げ研削加工開始時の膜厚T1
(T2=10μm)(ここでは77μm)を格納しておき、次いで仕上げ研削加工進行時のT1を取り込み(STEP12)、残存寸法T2を仕上げ研削加工開始時の膜厚T1
(T2=10μm)と仕上げ研削加工進行時のT1とから算出し格納する。すなわち、T2←T2(10μm)−|T1−T1
(T2=10μm)|を演算し(STEP13)、格納する。
仕上げ研削加工が進行する中で、T1の値はサンプリング時間ごとに更新され、上記演算によってT2の目標値、すなわち第2の所定値として例えば1μmに達したか否かが判定される(STEP14)。すなわち、PG装置1は、上述の演算により、T2←T2(10μm)−|T1(68μm)−T1(77μm)
(T2=10μm)|=10−|68−77|=1μmを導出することで、T1が68μmまで薄膜化した時点で、ウェーハ2の研削面とウェーハ2内のビア6の底部間の残存寸法T2が目標値1μmに達したことを把握することができる。そして、残存寸法T2が目標値1μmに達した時点で、グラインディング工程において、ビアが貫通してTSVとなる寸前で薄膜化プロセスを一旦停止する寸止め加工が達成されたことがわかり、グラインディング工程を終了させることができる。
なお、以上の仕上げ研削段階ではセンサヘッド10hをウェーハ2の上方で、ウェーハ2の研削面に平行に移動させつつウェーハ2の研削面とウェーハ2内のビア6の底部間の残存寸法T2が目標値1μmに達したことを把握するので、ビア直上のウェーハの研削面での研削がより進行して研削量が多くなる研削ムラから、ビアが貫通してしまうことを避けることができる。
【0026】
研削終了後は、ウェーハ2をチャックテーブル3に保持させたままの状態で、PG装置1においてポリッシング工程が行われ、加工変質層などが取り除かれる。これにより、ウェーハ2の不用意な割れなどの破損が防止されると共にTSVウェーハを得ることができる。
研磨終了したウェーハ2は、チャックテーブル3から取り外されて、ウェーハ処理工程等の次工程に移送され、コーティングやダイシングが行われる。
【0027】
以上のように、NCIG10による読み取り厚さの下限値は略10μmであり、それ以下の厚さは直接読み取ることができなくても、同時に計測される膜厚データを基に簡単な演算でウェーハ2の研削面とウェーハ2内のビア6の底部間の残存寸法T2を求めることができるので、このT2の値を基に、ビアが貫通してTSVとなる寸前で薄膜化プロセスを一旦停止する寸止め加工が達成することができる。
このように上述のような測定方法によれば、NCIGを用いてTSVウェーハ加工を実行する際、ウェーハ内部のビア底部からウェーハ研削面までの残存寸法に基づいて薄膜化加工を行う新たな手法が有効に機能し、これによって、次工程での高能率化および取り代の変動を抑えて加工安定化が可能となるウェーハ薄膜加工制御方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 PG装置
2 ウェーハ
3 チャックテーブル
4 吸着プレート
5 グラインディングホイール
5g 砥石部
6 ビア
7 支持基材
10 NCIG
10h センサヘッド
10c コントローラ
10s 分光器
Crs RS232Cケーブル
C 専用ケーブル
Cf ファイバケーブル