【実施例1】
【0017】
図1Aは、実施例1における欠陥検査装置の概略の構成を示すブロック図である。実施例1における欠陥検査装置は、照明光学系ユニット1000、上方検出光学系1100、斜方検出光学系1200−1及び1200−2、信号処理ユニット1300、ステージユニット1400、制御ユニット1500を備えて構成されている。斜方検出光学系1200−1と1200−2とは上方検出光学系1100、に対して左右対称に配置されている。斜方検出光学系1200−1と1200−2とは基本的に同じ構成を有し、同じ機能を備えているので、以下の説明では、斜方検出光学系1200−1について説明し、斜方検出光学系1200−2の説明は省略する。
【0018】
図1Bは、実施例1における欠陥検査装置の照明光学系ユニット1000、上方検出光学系1100、斜方検出光学系1200−1及び信号処理ユニット1300の内部の構成を示すブロック図である。
図1Bでは、斜方検出光学系1200−2の表示を省略する。また、以降の図においても、斜方検出光学系1200−2の表示を省略する。
【0019】
照明光学系ユニット1000は光源101、偏光状態制御手段102、第1のビームエキスパンダ103、第1のビーム成型ユニット104、ミラー1011、1012、1013、第2のビームエキスパンダ1030、第2のビーム成型ユニット1040、斜方照明集光光学系1170を備えている。偏光状態制御手段102は1/2波長板であり、照明光学系の光軸周りに回転できるような駆動手段102dを具備している。ミラー1012は、光源101から出射した照明光の光路に対して図示していない手段により出し入れが可能な構成になっている。
【0020】
図1Bに示した構成において、光源101から射出した照明光は、偏光状態制御手段102を透過してミラー1011と1012とで光路を変更されて第1のビームエキスパンダ103に入射し、第1のビームエキスパンダ103でビーム径が拡大された後、第1のビーム成型ユニット104を透過して、上方検出光学系1100の内部に到達する。
【0021】
上方検出光学系1100は、偏光ビームスプリッタ(Polarized Beam Splitter:PBS)105、1/2波長板106、ノマルスキプリズム107、第1の対物レンズ117、第1の結像レンズ118、第1のイメージセンサ119を備えている。
【0022】
照明光学系ユニット1000から発射されて上方検出光学系1100の内部に到達した照明光は、PBS105に入射し、直線偏光成分がPBS105で下方に反射されて対物レンズ117を透過してウェハ10を落射照明する。このときPBS105で下方の1/2波長板の側に反射される光量は、偏光状態制御手段102で制御される。即ち、ウェハ10を落射照明する照明光量は、偏光状態制御手段102で調整される。また、ビーム成型ユニット104は後に述べるビームの断面形状が細長い細線照明を形成する光学ユニットであり、アナモルフィックプリズム、あるいはシリンドリカルレンズ等のアナモルフィック光学素子によって構成される。
【0023】
照明光学系ユニット1000から発射されてPBS105で下方に反射された照明光は、1/2波長板106およびノマルスキプリズム107を透過して2つの光束に分割され、第1の対物レンズ117を通過して2つの細線照明光となり、ウェハ10上の細長い領域1001と1002を落射照明する。ここで、1/2波長板106およびノマルスキプリズム107には上方検出光学系1100の光軸を中心に回転可能なように駆動系106d、107dが具備されており、上記2光束に分割される照明光の状態を制御できるようになっている。
【0024】
上方検出光学系1100は、微分干渉顕微鏡を構成している。以下に、微分干渉顕微鏡について説明する。
【0025】
低段差の欠陥を検出する光学技術としては、微分干渉方式が知られている。その原理について
図2Aと
図2Bとを用いて説明する。
【0026】
図2Aは微分干渉方式の照明部分に関して説明する図である。照明光210は直線偏光であり、PBS201(
図1BのPBS105に相当)に入射して下方に反射し、1/2波長板202(
図1Bの1/2波長板106に相当)を透過して偏光方向が45゜回転される。この照明光がノマルスキプリズム203(
図1Bのノマルスキプリズム107に相当)を透過すると、偏光方向が直交した2つの照明光に偏角Δで分離される。2つの照明光、211、212に分割され、対物レンズ204(
図1Bの第1の対物レンズ117に相当)を通して試料200の2点を照明する。この2点の離間方向を微分干渉のシアー方向と呼ぶ。また離間距離ΔSはシアー量と呼び、偏角Δと対物レンズの焦点距離fから決定され、ΔS=f×tan(Δ)の関係がある。
【0027】
シアー量ΔSが大きいほど、段差検出の感度は良くなるが、一方でΔSの値は検出画像の横分解能に影響し、一般には対物レンズの解像限界以下に設定する必要がある。ΔSに対物レンズの解像限界よりも大きな値を設定した場合、微分干渉像が2重像となって像の品質が劣化するためである。
【0028】
図2Bは微分干渉方式の検出部分に関して説明する図である。試料200上の2点に照射された照明光211及び212による試料200からの反射光221、222は対物レンズ204を透過し、ノマルスキプリズム203で合成されて、照明時と同一の光路をたどって1/2波長板202を透過する。ここで、試料200が平坦、すなわち反射光221、222の位相差がゼロであれば1/2波長板により元の照明光210と同じ偏光状態に戻って、PBS201で反射されて元の光路を戻ることになる。しかし、試料200に段差があり、分岐された照明光211、212が異なる高さの部分を照明した場合、反射光221、222には試料の段差に応じて位相差が生じる。
【0029】
これら位相差を持つ反射光がノマルスキプリズム203で合成されると、合成された反射光の偏光状態は元の照明の偏光状態から変化しており、1/2波長板を透過後も元の照明光210とは異なる偏光状態となり、その変化した偏光成分がPBS202を透過して、結像レンズ205を通して検出器206へ結像される。これにより、試料の段差を像の明るさとして検出することが可能となる。
【0030】
光の干渉現象を用いて検出を行う方式であるため、照明光源は干渉性の良い単波長光源が必要となる。そのため、照明光源は複数の波長を放射するランプ光源から波長選択フィルタを用いて単波長を取り出すようにしても良く、また単一の波長を放射するレーザ光源を用いても良い。
【0031】
また、検出感度を上げるためには、照明光源の単波長化が有効である。これは、上記に説明した様に、試料の段差による位相変化の程度が大きいほど、反射光の位相変化の程度も大きくなり、高さ検出信号も大きくなるが、ここで、試料の段差をΔh、光源の波長をλとすると、位相変化量は2×Δh/λとなり、同じ段差Δhを検出する場合でも、波長λを小さくすることで位相変化量が大きくなることによるものである。
【0032】
本実施例では、
図1Bに示すように微分干渉照明のシアー方向をステージ走査方向(x方向)に、細線照明の長手方向をy方向に取るものとして説明する。
【0033】
また、本実施例ではこのように、照明領域を絞った細線照明を行うが、これは検査対象に対する照明の照度(照明のエネルギー密度)を高くすることにより、検査スループットの向上を図ることが目的の一つである。このため、光源101には直線偏光を放射し、集光性の良い高コヒーレント光源であるレーザ光源を使用することが望ましい。また、前記したように微分干渉検出の感度を向上させるためには光源の短波長化が有効である。加えて、これも前記したように、欠陥からの散乱光を増大させるためにも光源の短波長化が有効であり、本実施例では光源101にUV(Ultra Violet)レーザを用いる。たとえばYAG(Yttrium Aluminum Garnet)−THG(third harmonic generation)の波長355nm固体レーザ、あるいはYAG−FHG (Fourth harmonic generation)の波長266nm固体レーザ、あるいはYAG−FHGとYAG基本波の和周波による213nm、199nm、193nm固体レーザ等である。
【0034】
細線照明により細長い領域1001と1002とが照明されたウェハ10からの反射光のうち対物レンズ117に入射した反射光は、ノマルスキプリズム107、1/2波長板106を透過して進む。ウェハ10の表面の凹凸状態を反映して変化した反射光の偏光成分が、PBS105を透過して、第1の結像レンズ118により第1のイメージセンサ119の位置にウェハの微分干渉像を形成する。
図1Bに示す通り、第1の検出光学系の光軸はウェハ10の表面に垂直である。
【0035】
一方、ウェハ10の表面の垂直軸から傾いた光軸を持つ斜方検出光学系1200−1は、細線照明により照明された細長い領域1001あるいは1002あるいはその両方からの正反射光は検出せず、細長い領域1001あるいは1002から発生する散乱光のうち第2の対物レンズ127に入射した散乱光を、第2の結像レンズ128で第2のイメージセンサ129の位置に結像させ、第2のイメージセンサ129上にウェハの散乱光像を形成する。本実施例では、斜方検出光学系1200−1の光軸の傾斜方向はステージ走査方向(x方向)に平行とする。
【0036】
斜方検出光学系1200−1にはウェハ10上に形成されたパターンからの回折光を遮光して欠陥からの散乱光信号のみを透過する空間フィルタ120、および欠陥からの散乱光とウェハ表面からの散乱光ノイズの偏光成分の相違を利用して、欠陥からの散乱光を透過して、ウェハ表面からの散乱光ノイズを遮光する偏光フィルタ121により、欠陥からの散乱光信号を有効に検出するように構成する。
【0037】
1300は信号処理ユニットであり、第1および第2のイメージセンサ119、129により光電変換されたアナログの検出画像信号を、第1および第2の信号変換ユニット131、132により増幅してデジタル信号への変換が行われ、画像処理ユニット133により、検出画像からの欠陥抽出がなされる。欠陥抽出においては第1の検出系で得られた微分干渉画像を予め設定したしきい値と比較して、しきい値よりも大きい部分を欠陥として抽出する欠陥抽出処理、および第2の検出系で得られた散乱光画像を予め設定したしきい値と比較して、しきい値よりも大きい部分を欠陥として抽出する欠陥抽出処理、ならびに微分干渉画像と散乱光画像の両方の情報を比較処理して得られた画像からの欠陥を抽出する処理を行うように構成する。
【0038】
制御ユニット1500は前記照明光学系1000、上方検出光学系1100、斜方検出光学系1200−1、信号処理ユニット1300、ステージユニット1400を制御する。
【0039】
ステージユニット1400はウェハ10を載置して、xyz方向に移動可能な機構であり、上方検出光学系1100、斜方検出光学系1200−1でウェハ10の全面を検査出来るようなxy方向への移動ストロークを持ち、ウェハ10の厚さバラツキ等に関わらず、上方検出光学系1100、斜方検出光学系1200−1の焦点範囲内にウェハ10の表面(検査面)のz位置を制御させるようにz方向への移動ストロークを持つよう構成される。
【0040】
検査時のステージユニット1400のステージ移動はたとえば次のように制御される。
図1Bに示すように、ウェハ10はy方向を長手方向(長さLi)とする細長い領域1001、1002が照明光学系1000から発射された照明光によって照明される。検査時にはウェハ10はステージユニット14によりx方向に連続的に移動して、上方検出光学系1100、斜方検出光学系1200−1によりスキャンされたウェハ像を取得する。この例では、たとえば移動開始位置をウェハ端面Ws1とし、逆側のウェハ端面We1まで到達するまでxステージを移動し、この間を上方検出光学系1100、斜方検出光学系1200−1によりスキャンする。
【0041】
ウェハ端面We1に到達すると、次のスキャンのため、yステージにより照明長さLiだけy方向にステップ送りされて、xステージによりウェハ端面Ws2からWe2まで連続的に移動して、先と同様に上方検出光学系1100、斜方検出光学系1200−1によりスキャンされたウェハ像を取得する。これを繰り返すことでウェハ10の全面の検査を行う。
【0042】
また、スキャン中にウェハ10が上方検出光学系1100及び斜方検出光学系1200−1の焦点範囲から外れると、取得したウェハ像の品質が劣化し、欠陥検出感度が低下する。このためスキャン中にはzステージにより常にウェハ表面(検査面)のz位置が上方検出光学系1100及び斜方検出光学系1200−1の焦点範囲にあるように制御される。
【0043】
本実施例は、検査対象のウェハ10の細長い領域1001、1002を第1のビーム成型ユニット104で細長く成形された照明光で照明し、xステージの連続移動でウェハ10をスキャンしてウェハ画像を取得する方式であるので、第1および第2のイメージセンサ119、129はラインセンサであることが望ましい。具体的にはCCD(Charge Coupled Device)ラインセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)ラインセンサ、TDI(Time Delay Integration)センサ、である。あるいはPD(PhotoDiode)一次元アレイ、APD(Avalanche PhotoDiode)一次元アレイ、PMT(PhotoMultiplier Tube)一次元アレイを用いても良い。
【0044】
本実施例における細線照明の必要性について、
図3を用いて説明する。
斜方検出光学系1200−1は、検査対象であるウェハ10の検査面に対して、仰角θd傾いた光軸を持ち、対物レンズ127の開口はθo、すなわち対物レンズ127の開口数:NAoは、
NAo=sinθo ・・・(数1)
であるとする。
【0045】
照明光源の波長をλとするとき、対物レンズ127の焦点深度:DOFは、
DOF=λ/(sinθo)
2 ・・・(数2)
である。
【0046】
2つの細線照明光により照明されるウェハ10上の細長い領域1001、1002は照明幅Wiを持ち、シアー量ΔS離間しているが、これら照明が斜方検出光学系1200−1の対物レンズ127の焦点深度の範囲内から外れると、斜方検出光学系1200−1に焦点範囲外からの散乱光が入射し、斜方検出光学系1200−1で取得する散乱光画像にボケの成分が混入することになり、散乱光画像の品質が低下して、欠陥検出感度の低下に繋がる。
【0047】
このような感度低下が生じないためには2つの細線照明光により照明されるウェハ10上の細長い領域1001、1002の照明範囲Wi+ΔSが斜方検出光学系1200−1の対物レンズ127焦点深度範囲内にあること、すなわち、
DOF/sinθd>Wi+ΔS ・・・(数3)
が成り立つことが必要である。
【0048】
これに加えて、zステージの制御精度によってもウェハ10の検出位置が斜方検出光学系1200−1の光軸方向に移動することになる。zステージの制御精度を±Δzとした場合、その検出位置変動は、
±Δz/cosθd ・・・(数4)
である。
【0049】
これらを合わせて、斜方検出系1200−1でボケが生じない散乱光画像を取得する条件は、
DOF/sinθd>{(Wi+ΔS)+2×(Δz/cosθd) ・・・(数5)
が必要となる。
【0050】
本実施例ではこれまで、ステージ走査方向(x方向)に対し、細線照明光により照明されるウェハ10上の細長い領域1001、1002の長手方向をy方向(ステージ走査方向に直交)、斜方検出光学系1200−1の光軸の傾斜方向をx方向として説明してきたが、この構成は斜方検出光学系1200−1のイメージセンサ129の全域で、焦点の合った画像として散乱光画像を検出するための前提となる構成である。加えて、上記に述べたように細線照明光により照明されるウェハ10上の細長い領域1001、1002の線幅Wiおよびシアー量ΔS、およびzステージ制御精度Δzが、斜方検出光学系1200−1で合焦な散乱光画像を取得するために必要な要件である。
【0051】
ここで、上方検出光学系1100の対物レンズ117は細線照明光により照明されるウェハ10上の細長い領域1001、1002を絞り込むレンズも兼ねているが、その開口数を斜方検出光学系1200−1の対物レンズ127と同じNAoであるとすると、細線照明の線幅Wiは、レーリーの回折限界の式により 、
Wi=1.22×λ/NAo ・・・(数6)
が、細線照明として形成可能な最も小さな線幅となる。
【0052】
同様に、レーリーの回折限界の式により、シアー量ΔSの設定も、
ΔS=0.61×λ/NAo ・・・(数7)
が、上方検出で取得する微分干渉像の品質を劣化させないためのシアー量となる。
【0053】
これらを合わせて細線照明光により照明されるウェハ10上の細長い領域1001、1002の照明範囲の幅はWi+ΔSとなるが、斜方検出光学系1200−1に設置されたイメージセンサ(ラインセンサ)129のステージ走査方向(図ではx方向)の画素サイズWd1は、上方検出光学系1100の倍率をMとしたときに、
Wd1≧M×(Wi+ΔS)×sinθd ・・・(数8)
であることが望ましい。これは、イメージセンサ129が照明範囲のすべてから生じる散乱光を検出することにより、散乱光検出の効率を向上させて、検査スループットの向上を図るためである。
【0054】
仮に、イメージセンサ129の画素サイズが
Wd1<M×(Wi+ΔS)×sinθd ・・・(数9)
であり、検出範囲が照明範囲の一部に限られる場合、イメージセンサ129の検出範囲外となる照明光が有効利用されず、検出光が低減して検査スループットが低下するためである。
【0055】
同様に上方検出光学系1100のイメージセンサ119に関しても、照明光の利用効率の観点から
Wd1≧M×Wi ・・・(数10)
であることが望ましい。
【0056】
また、本実施例における検査装置においては装置コスト低減の観点から、上方検出光学系1100および斜方検出光学系12−1それぞれの対物レンズ117・127、および結像レンズ118・128ならびにイメージセンサ119・129は共通化することを想定しており、イメージセンサの119、129のステージ走査方向の画素サイズWs1は、(数8)、(数10)で既定される数値のうち、装置の構成に応じて大きい値を設定すれば良い。
【0057】
ところで、イメージセンサ119、129のステージ走査方向に直交する方向(y方向、センサ配列方向)画素サイズWd2は、Wd1と同じである必要は無く、対物レンズ117、127の解像度、すなわちレーリーの回折限界の指揮から定義される(数7)を基準にこれをサンプリング数N(N=1、2・・・)でサンプリングされるよう設定すればよい。
【0058】
すなわち
Wd2=(0.61×λ/NAo)/N (N=1、2・・・)・・・(数11)
とする。
【0059】
サンプリング数Nは、ナイキスト定理から最低でも2、可能であれば4程度が適当であり、但しこれ以上サンプリング数を大きくしても(画素サイズを小さくしても)検査画像の画質向上の意味からは有効ではなく、検査エリアが小さくなり検査スループットが低下することになるので、上記の範囲で適切に設定する必要がある。
【0060】
以上により、本実施例におけるイメージセンサの画素は、一般的にはステージ走査方向とそれに直交する方向で大きさが異なる、すなわちWd1>Wd2の長方形画素であることが望ましい。
【0061】
ところで、半導体ウェハの検査を対象とした場合、ウェハ研磨を行うCMP工程のスクラッチ欠陥などの微小な段差欠陥を検出することに対しては、
図1Bで説明したような微分干渉検出を行うことが有効であるが、成膜工程における異物、パターン形成のリソグラフィ工程およびエッチング工程におけるパターンショートなどのパターン欠陥に対しては、ウェハ10の表面を斜方照明してウェハ10からの散乱光を検出する方が有効な場合がある。
【0062】
これを実現するためには、
図1Bで説明したような上方検出光学系1100の光軸上に配置された微分干渉検出のためのユニット、すなわちPBS105、1/2波長板106、ノマルスキプリズム107を上方検出光学系1100の光軸から外れた位置に退避させ、その代わりに斜方検出光学系1200−1と同様に空間フィルタ110、偏光フィルタ111を上方検出光学系1100に導入可能な構成とすることが有効である。その構成を
図1Cに示す。
図1Cに示した上方検出光学系1100´は、
図1Bに示した上方検出光学系1100からPBS105、1/2波長板106、ノマルスキプリズム107を図示していない駆動系で上方検出光学系1100の光軸から外れた位置に退避させ、空間フィルタ110と偏光フィルタ111とを図示していない駆動系で上方検出光学系1100の光軸上に設置した状態を示す。
【0063】
このような構成で、
図1Cに示したように照明光学系1000のミラー1012を図示していない駆動機構で
図1Cの実線の位置まで後退させると、光源101から発射された照明光は、1/2波長板102を透過してミラー1011で反射した後、第2のビームエキスパンダ1030、第2のビーム成型ユニット1040を透過して、ミラー1013で反射されて斜方照明集光光学系1170に入射し、ウェハ10を斜方から照明する。この場合、斜方照明集光光学系1170は、シリンドリカルレンズあるいはシリンドリカルミラーなどにより構成され、第2のビーム成型ユニット1040で線状に成形された照明光をウェハ10に対して斜方から照明を行い、ウェハ10の表面(検査面)の細長い領域1005を細線照明する。
【0064】
この際の細線照明されるウェハ10上の細長い領域1005の線幅Wi2は、上記において説明したように、
図3におけるシアー量ΔSを差し引いて、斜方検出光学系1200でボケの無い散乱光画像を取得できるように
DOF/sinθd>{(Wi2)+2×(Δz/cosθd) ・・・(数12)
を満たすように、斜方照明集光光学系1170を構成することが必要である。
【0065】
斜方照明集光光学系1170により照明されたウェハ10上の細長い領域1005からの散乱光のうち、上方検出光学系1100の対物レンズ117に入射した光は、対物レンズ117で集光されて空間フィルタ110に入射し、空間フィルタ110に形成された図示していない遮光パターンによりウェハ10上に形成された繰り返しパターンからの回折光が遮光され、空間フィルタ110で遮光されなかったウェハ10からの散乱光は偏光フィルタ111に入射してウェハ表面からの散乱光ノイズ成分が遮光される。偏光フィルタ111を透過したウェハ10からの散乱光は第1の結像レンズ118により第1のイメージセンサ119上に結像され、第1のイメージセンサ119からの検出信号が第1の信号変換ユニット131へ出力される。
【0066】
一方、斜方照明集光光学系1170により照明されたウェハ10上の細長い領域1005からの散乱光のうち、斜方検出光学系1200−1の対物レンズ127に入射した光は、対物レンズ127で集光されて空間フィルタ120に入射し、空間フィルタ120に形成された図示していない遮光パターンによりウェハ10上に形成された繰り返しパターンからの回折光が遮光され、空間フィルタ120で遮光されなかったウェハ10からの散乱光は偏光フィルタ121に入射してウェハ表面からの散乱光ノイズ成分が遮光される。偏光フィルタ121を透過したウェハ10からの散乱光は第2の結像レンズ128により第2のイメージセンサ129上に結像され、第2のイメージセンサ129からの検出信号が第2の信号変換ユニット132へ出力される。
【0067】
第1の信号変換ユニット131及び第2の信号変換ユニット132で処理されてデジタル信号に変換された第1のイメージセンサ119からの検出信号及び第2のイメージセンサ129からの検出信号は、画像処理ユニット133へ送られてそれぞれの検出信号が統合され、欠陥抽出処理が行われる。
【0068】
本実施例においては、
図1Aに示したように、上方検出光学系1100とその両側に斜方検出光学系1200−1と1200−2を対象に配置した構成について説明したが、
図1B又は
図1Cに示したように、斜方検出光学系は、1200−1又は1200−2の何れか一方だけを備える構成にしてもよい。
【0069】
本実施例によれば、CMP工程のスクラッチ欠陥などの微小な段差欠陥または疵欠陥を検出するばあいには、
図1Bで説明したように落射照明して微分干渉顕微鏡を用いた上方検出光学系1100と斜方検出光学系1200−1及び1200−2でそれぞれ検出した信号を処理して検出し、成膜工程における異物、パターン形成のリソグラフィ工程およびエッチング工程におけるパターンショートなどのパターン欠陥を検出するばあいには、
図1Cで説明したような斜方照明光学系と上方検出光学系1100´とに切り替えて、斜方から線状照明されたウェハ10からの散乱光を上方検出光学系1100´と斜方検出光学系1200−1及び1200−2でそれぞれ検出した信号を統合処理して検出することにより、微小な段差欠陥または疵欠陥と異物及びパターン欠陥を検出することができる。