(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板と、接着層と、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有し、上記基板を支持する支持体とをこの順に積層してなる積層体から、上記支持体を剥離するための剥離装置であって、
基板側を下にして積層体が載置されるステージ、並びに、当該ステージに対して離接可能に設けられると共にステージに載置された積層体を少なくとも覆うように形成され、ステージに接した状態で接着層を溶解する溶剤を積層体に供給するようになっているチャンバーを備え、
上記ステージは、積層体を載置する載置部がステージ表面から曲面状に窪むようにして形成されており、
上記支持体は、一部の貫通孔が塞がれることで形成された非貫通部を中央部に有し、当該支持体を積層体から剥離するようになっていることを特徴とする剥離装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る剥離装置は、基板と、接着層と、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有し、上記基板を支持する支持体とをこの順に積層してなる積層体から、上記支持体を剥離するための剥離装置であって、基板側を下にして積層体が載置されるステージ、並びに、当該ステージに対して離接可能に設けられると共にステージに載置された積層体を少なくとも覆うように形成され、ステージに接した状態で接着層を溶解する溶剤を積層体に供給するようになっているチャンバーを備え、上記ステージは、積層体を載置する載置部がステージ表面から曲面状に窪むようにして形成されている構成である。
【0015】
また、本発明に係る剥離方法は、基板と、接着層と、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有し、上記基板を支持する支持体とをこの順に積層してなる積層体から、上記支持体を剥離する剥離方法であって、積層体を載置する載置部がステージ表面から曲面状に窪むようにして形成されているステージに、基板側を下にして積層体を載置した後、接着層を溶解する溶剤を少なくとも支持体側から積層体に供給する方法である。
【0016】
先ず、本実施形態における剥離処理の対象である積層体について、
図1,2を参照しながら以下に説明する。
【0017】
〔積層体〕
図1,2に示すように、剥離処理の対象である積層体1は、ウエハ(基板)3と、接着層(図示しない)と、上記ウエハ3を支持するサポートプレート(支持体)2とがこの順に積層されて形成されている。即ち、積層体1は、ウエハ3およびサポートプレート2の何れか一方に接着剤が塗布されることによって、または、接着剤が塗布されてなる接着テープを貼着することによって接着層が形成された後、ウエハ3と、接着層と、サポートプレート2とがこの順に積層されることによって形成されている。
【0018】
但し、積層体1を形成する形成方法および形成装置、つまり、接着層の形成方法や接着層形成装置、並びに、ウエハ3およびサポートプレート2の重ね合わせ方法や重ね合わせ装置は、特に限定されるものではなく、種々の方法や装置を採用することができる。以下、ウエハ3、接着層およびサポートプレート2について説明する。
【0019】
<ウエハ(基板)>
上記ウエハ3は、シリコンからなる半導体ウエハに限定されるものではなく、サポートプレート2による支持が必要な、薄いセラミックス基板、薄いフィルム基板、フレキシブル基板等の任意の基板であってもよい。ウエハ3の形状は、円形状であってもよく、一部にオリフラを有することにより円形状でないものであってもよい。ウエハ3の表面、つまり、サポートプレート2の対向面には、電子回路等の電子素子の微細構造が形成されると共に、実装時にウエハ3を接合するための複数のバンプ3aが形成されている。当該バンプ3aの大きさは、特に限定されるものではないが、通常、直径80μm以下、より好ましくは40μm以下である。
【0020】
上記ウエハ3は、サポートプレート2に支持された(貼り付けられた)状態で、薄化、搬送、実装等のプロセスに供される。
【0021】
また、ウエハ3の裏面、つまり、サポートプレート2の背向面には、少なくともウエハ3からサポートプレート2を剥離する剥離工程を行うまでの段階(工程)で、ダイシングテープ5が貼着されている。当該ダイシングテープ5としては、ベースフィルムがPVC(ポリ塩化ビニル)やポリオレフィン、ポリプロピレン等の樹脂フィルムを用いることができる。そして、ダイシングテープ5は、ウエハ3からサポートプレート2を剥離する剥離する剥離工程を行うまでの段階で、ダイシングフレーム6に固定される。ダイシングテープ5の表面、つまり、サポートプレート2の対向面には、積層体1の接着層を溶解する溶剤(後述する)として使用される非極性溶剤または高極性溶剤に対して耐性を備えた、通常、アクリル系の保護層が形成されている。尚、ダイシングフレーム6は、剥離工程を行うときに、剥離装置の治具(図示しない)によって固定される。
【0022】
<接着層>
上記接着層は、溶剤に対して溶解性を示す接着化合物によって形成されている。従って、接着層は、溶剤によって溶解し、これにより、ウエハ3からサポートプレート2を剥離することが可能となっている。
【0023】
溶剤に対して溶解性を示す接着化合物としては、例えば、炭化水素樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、エラストマー等、またはこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。
【0024】
当該炭化水素樹脂としては、シクロオレフィンから誘導される構成単位を有する例えばシクロオレフィン系ポリマー等の樹脂、テルペン系樹脂等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0025】
具体的には、接着層は、これら接着化合物のうち、剥離に用いる溶剤との組み合わせ等の各種条件を考慮した上で、積層体1に施す各種処理に適した接着化合物が選択されて使用される。
【0026】
接着層の形成方法、即ち、ウエハ3またはサポートプレート2に接着剤を塗布する塗布方法、或いは、基材に接着剤を塗布して接着テープを形成する形成方法は、特に限定されるものではないが、接着剤の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ディッピング法、ローラーブレード法、スプレー法、ドクターブレード法、スリットノズル法による塗布法等が挙げられる。
【0027】
接着層の厚さ(層厚)は、ウエハ3の表面に形成されたバンプ3aの高さよりも厚ければよいが、ウエハ3とサポートプレート2との接着性および耐熱性を維持することができる厚さであることが好ましい。具体的には、接着層の厚さは、10μm以上、150μm以下の範囲内であることが好ましく、15μm以上、100μm以下の範囲内であることがより好ましい。接着層は、ウエハ3またはサポートプレート2上に上記接着化合物を塗布して層状に固化させることによって形成することができる。また、接着化合物を予め層状に固化させたものをウエハ3またはサポートプレート2上に貼着することによって形成してもよい。
【0028】
<サポートプレート(支持体)>
図1に示すように、サポートプレート2は、厚さ方向に貫通する複数の、具体的には数千以上の多数の貫通孔10を有する、いわゆる孔開きサポートプレートである。貫通孔10を有するサポートプレート2を用いることによって、ウエハ3からサポートプレート2を剥離するときに、上記貫通孔10を介して接着層全体への溶剤の供給が可能となっている。サポートプレート2の材質は、ガラスやステンレス等の金属に限定されるものではなく、ウエハ3を支持することができる強度を備えた材質であればよい。また、サポートプレート2は、ウエハ3を支持することができる形状であればよいが、ウエハ3の形状に対応する形状であることが好ましい。
【0029】
尚、本明細書における「サポートプレート」とは、ウエハ3の取り扱い時に、当該ウエハ3を保護するために一時的に用いられる支持板のことであり、より好ましくは、例えば半導体ウエハを研削するときに、半導体ウエハに貼り合せることによって、研削により薄化した半導体ウエハにクラックおよび反りが生じないように保護するために一時的に用いられる支持板のことである。但し、本発明に係る支持体は、上記「サポートプレート」に限定されるものではなく、ウエハ3を支持する支持板であればよい。
【0030】
上記多数の貫通孔10は、サポートプレート2全面に規則的に配置されている。具体的には、上記多数の貫通孔10は、サポートプレート2の全面に亘って、格子状または同心円状に配置されている。互いに隣り合う貫通孔10・10の中心間の距離(ピッチ)は、例えば接着層を形成する接着化合物と溶剤との組み合わせにもよるものの、0.5mm以上、1.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上、0.7mm以下であることがより好ましい。また、貫通孔10の直径は、0.2mm以上、0.5mm以下であることが好ましく、0.25mm以上、0.4mm以下であることがより好ましい。
【0031】
さらに、貫通孔10は、積層体1における中心部と周辺部とで溶剤による接着化合物の溶解速度、つまり、接着層の溶解速度が異なることを考慮して、サポートプレート2の中央部から周辺部に向かうに従い、疎に配置されていてもよい。
【0032】
〔剥離装置〕
本発明の一実施形態に係る剥離装置について、
図1を参照しながら以下に説明する。
【0033】
剥離装置20は、ウエハ(基板)3と、接着層(図示しない)と、当該接着層を介してウエハ3に貼り付けられたサポートプレート(支持板)2とを含む積層体1から、サポートプレート2を剥離するための装置である。剥離装置20は、積層体1に接着層を溶解させる溶剤を供給し、積層体1上において溶剤を滞留させる溶剤供給チャンバー(チャンバー)21と、積層体1を載置する載置部23aを有するステージ23とを備えている。上記載置部23aには、ウエハ3側を下にして積層体1が載置される。
【0034】
溶剤供給チャンバー21は、ステージ23に対して離接可能に設けられると共にステージ23に載置された積層体1を少なくとも覆うように形成され、ステージ23に接した状態で接着層を溶解する溶剤を積層体1に供給するようになっている。具体的には、溶剤供給チャンバー21は、離接装置(図示しない)によってステージ23に対して離接するように移動可能に支持されており、剥離時に、積層体1のウエハ3側に貼着されたダイシングテープ5にサポートプレート2側から接触することによって、ダイシングテープ5を介してステージ23との間に、溶剤を滞留させる滞留部22を構成するようになっている。つまり、滞留部22は、溶剤供給チャンバー21がダイシングテープ5を介してステージ23に接触することにより構成される、溶剤供給チャンバー21とダイシングテープ5との間に形成される空間部である。そして、溶剤供給チャンバー21は、その内部、即ち滞留部22内に積層体1を収容し、ステージ23に接した状態で接着層を溶解する溶剤を積層体1に供給するようになっている。
【0035】
従って、溶剤供給チャンバー21は、その内径(滞留部22の直径)が、積層体1の外径(最大径)よりも大きくなるように構成されている。これにより、溶剤供給チャンバー21によって、積層体1を覆うことができ、滞留部22内に積層体1を収容することができる。尚、溶剤供給チャンバー21の水平方向の断面形状(滞留部22の水平方向の形状)は、積層体1の水平方向の形状(ウエハ3またはサポートプレート2の形状)と相似形でなくてもよい。即ち、滞留部22は、積層体1の形状に対応する形状である必要はなく、積層体1を内部に収容することが可能であれば、その形状は特に限定されない。例えば、積層体1のサポートプレート2側の面がオリフラを有する形状であるとき、積層体1を収容することができれば、溶剤供給チャンバー21のサポートプレート2に対向する面はオリフラに対応する部分を有さない円形状であってもよい。
【0036】
また、溶剤供給チャンバー21におけるダイシングテープ5との接触部分には、Oリング24が設けられている。当該Oリング24による封止により、滞留部22内に供給された溶剤は、外部に漏れ出さないようになっている。Oリング24の材質は、溶剤に対して耐性を備えていればよく、特に限定されるものではないが、例えば、テフロン(登録商標)カプセルOリング等が好適である。尚、上記Oリング24は、剥離装置20が回動部28を備える場合には、溶剤供給チャンバー21の回動を妨げることがないように構成されていることが好ましい。また、溶剤供給チャンバー21は、Oリング24が設けられる替わりに、溶剤供給チャンバー21とダイシングテープ5との接触部分の表面張力によって、滞留部22内に溶剤を保持し、溶剤が外部に漏れ出さない構成となっていてもよい。
【0037】
さらに、溶剤供給チャンバー21は、その側面に、滞留部22内の気体を吸引することによって当該滞留部22内を減圧状態にする減圧装置(図示しない)と、滞留部22に溶剤を供給するための中央供給口(供給口)29と、滞留部22内の溶剤を排出するための少なくとも一つの排出口(回収口)30とを備えている(尚、
図1は排出口30を二つ供えている場合を示す)。中央供給口29は、溶剤供給チャンバー21における積層体1側の面(内面)の中央部から、溶剤供給チャンバー21の側面外側に貫通するように設けられている。また、排出口30は、溶剤供給チャンバー21における積層体1側の面(内面)から、溶剤供給チャンバー21の側面外側に貫通するように設けられている。上記排出口30は、真空ポンプ(図示しない)等の減圧手段に接続されており、排出口30内を減圧することによって、溶剤を外部へ排出するようになっている。
【0038】
上記滞留部22は、当該滞留部22内に供給された後、一定時間留まる溶剤を、積層体1内に浸透させることができるような大きさ(深さ)であればよい。さらに、上記滞留部22は、中央供給口29から供給された溶剤が排出口30から排出されることによって、当該滞留部22内において溶剤の流れが生じるようになっていてもよい。
【0039】
また、剥離装置20は、溶剤供給チャンバー21上に設けられ、少なくとも溶剤供給チャンバー21内に供給された溶剤を振動させる、少なくとも一つの振動部27を備えている。振動部27は、例えば、振動部27自体が振動すること等によって振動を発生させるバイブレータ、超音波(US)振動を発生させる超音波発生器(超音波発生部)等からなる。当該振動部27としては、積層体1に超音波振動を加える超音波発生器がより好ましい。また、振動部27は、複数備えられている場合には、滞留部22内において滞留する溶剤全体にこれら振動部27で発生する振動が伝達されるように、溶剤供給チャンバー21上において互いに等間隔で配置されていることが好ましい。尚、本実施形態においては、溶剤供給チャンバー21上に、超音波を発生させる少なくとも七つの振動部27が設けられているが、これに限定されるものではなく、少なくとも一つの振動部27を備えていればよく、具体的には、処理する積層体1のサイズに応じて、振動部27の個数を適宜増減すればよい。
【0040】
さらに、剥離装置20は、上記振動部27で発生した振動を滞留部22内において滞留する溶剤に伝達する振動伝達部26を備えている。振動伝達部26は、振動部27と滞留部22との間に位置している。振動伝達部26は、溶剤供給チャンバー21に一体的に形成されていてもよい。振動伝達部26は、振動部27で発生した振動を滞留部22内において滞留する溶剤全体に伝達するようになっており、内部に空洞を有する筐体により構成されている。具体的には、上記振動伝達部26の筐体は、溶剤供給チャンバー21の中央部を中心としていわゆるドーナツ状に形成されており、これにより、空洞が振動部27の下方に位置するようになっている。但し、振動伝達部26の空洞には、水等の液体が充填されていてもよい。振動伝達部26の空洞に液体が充填されていると、振動部27からの振動は当該液体中において拡散される。従って、振動部17からの振動をより広範囲に溶剤に伝達することが可能である。
【0041】
振動伝達部26の筐体は、振動部27からの振動を効率的に滞留部22内の溶剤に伝達することができるように、振動の伝達効率がよいステンレス等の金属により構成されていることが好ましい。振動伝達部26の厚さ方向(上下方向)の長さは、振動部27から伝達される振動の振幅が、振動伝達部26の滞留部22側の面に到達したときに最大になるような長さにすることが好ましい。これにより、滞留部22内の溶剤に効率的に振動を伝達することができる。
【0042】
剥離装置20は、さらに、溶剤供給チャンバー21を連続または不連続に回動させることにより、振動部27を積層体1に対して水平方向に回動させる回動部28を必要に応じて備えていてもよい。振動部27を積層体1に対して水平方向に回動させることにより、振動部27で発生した振動が滞留部22内の溶剤により均一に伝達されるので、積層体1全体に溶剤をより均一に浸透させることができ、接着層の溶け残りを防止することができる。その結果、より短時間で接着層を溶解することが可能となり、ウエハ3からサポートプレート2をより短時間で剥離することができる。また、剥離装置20において、中央供給口29並びに排出口30が溶剤供給チャンバー21の側面部に設けられているので、溶剤供給チャンバー21の中央部にも振動部27を配置することが可能である。従って、積層体1の中央部近傍にも振動部27からの振動を効率よく伝達させることができ、接着層の溶け残りをより効果的に防止することができる。
【0043】
上記ステージ23は、
図2および
図3に示すように、ウエハ3側を下にして積層体1が載置される載置部23aを備えている。当該載置部23aは、積層体1を吸引して吸着することができるように、例えばセラミックからなる多孔質の吸引部(吸着部)23bで構成されており、ステージ23表面から曲面状に窪むようにして形成されている。つまり、載置部23aは、その断面において、ステージ23の周辺部よりも内側に位置する点Pを起点として、ステージ23表面に対する傾斜角度θが、0.5度以上、2.0度以下の範囲内、より好ましくは0.5度以上、1.0度以下の範囲内となるように曲面状に窪むようにして形成されている。上記傾斜角度θは、載置部23aの形状に沿って積層体1を載置部23aに載置したときに、ウエハ3の最外部に位置するバンプ3aの頭頂部が、剥離されたことによって平板状に復元するサポートプレート2におけるバンプ3aに対向する面に接触しないような角度、即ち、ステージ23表面よりも下側に位置するような角度、より好ましくはステージ23表面よりも20〜30μm程度下側に位置するような角度に設定されている。載置部23aの最深部は、ウエハ3にダメージを与えないように、ステージ23表面からの距離(深さ)hが、300μm以上、1000μm以下の範囲内となるように位置していることが好ましく、300μm以上、700μm以下の範囲内となるように位置していることがより好ましく、500μm以上、650μm以下の範囲内となるように位置していることがさらに好ましい。従って、載置部23aにおける周辺部は、その断面において、上記点Pを起点として傾斜角度θでステージ23表面から(いわゆるスロープ状に)下降し、ステージ23表面からの距離が大きくなるにつれて徐々に傾斜角度が小さくなり、ステージ23表面からの距離が距離hとなったときに傾斜角度が「0」になるような曲線形状を有している。これにより、ウエハ3にダメージを与えることなく、積層体1を載置部23aに吸引して吸着(載置)することができる。
【0044】
ステージ23の周辺部からの上記点Pの位置は、ステージ23および積層体1の大きさや、傾斜角度θ、最深部の距離h等に応じて位置決めすればよく、特に限定されるものではない。尚、ステージ23における上記点Pよりも外側の領域(周辺部)は、溶剤供給チャンバー21との間で滞留部22を構成することができるように、水平面であることが好ましい。
【0045】
載置部23aの吸引部23bは、真空ポンプ等の減圧装置(図示しない)に接続されており、積層体1を吸引して吸着することができるようになっている。従って、載置部23aは、積層体1に反りが無い場合において当該積層体1を載置部23aに載置することができるだけでなく、積層体1がウエハ3側を外にして反っている場合においても、逆に、積層体1がウエハ3側を内にして反っている場合においても、ウエハ3にダメージを与えることなく、積層体1を載置部23aに載置することができる。尚、載置部23aの吸引部23bは、積層体1を吸引して吸着する替わりに、静電吸着することができるようになっていてもよい。
【0046】
また、上記ステージ23は、積層体1の大きさ(或いはバンプ3aの大きさ)に応じて載置部23aの大きさ(深さも含めて)を調節することができるように、調節機構(図示しない)を備えていてもよい。調節機構としては、具体的には、例えば、ステージ23を圧縮・引張することにより当該ステージ23を湾曲させる構成等が挙げられるものの、その構成は、特に限定されるものではない。
【0047】
上記構成の剥離装置20によれば、積層体1を載置する載置部23aがステージ23表面から曲面状に窪むようにして形成されているので、載置部23aに積層体1を載置した後、積層体1から溶剤を用いて接着層を溶解してサポートプレート2を剥離したときに、ステージ23の載置部23aに載置されたウエハ3と、剥離されたことによって平板状に復元したサポートプレート2との間に隙間が生じる。つまり、ウエハ3からサポートプレート2が剥離された状態において、ウエハ3上にサポートプレート2が載置されることを上記隙間によって回避することができる。従って、ウエハ3からサポートプレート2が剥離された状態において、ウエハ3上に形成されているバンプ3aがサポートプレート2によって損傷されるおそれを回避することができる。
【0048】
〔剥離方法〕
本発明の一実施形態に係る剥離方法について、以下に説明する。即ち、上記構成の剥離装置20を使用した積層体1からのサポートプレート2の剥離方法、具体的には、接着層を溶解させることによってウエハ3からサポートプレート2を剥離する剥離方法について説明する。当該剥離方法は、接着層を溶解する溶剤を少なくともサポートプレート2側から積層体1に供給する供給工程を少なくとも備えており、より好ましくは上記溶剤を積層体1上に供給して滞留させる滞留工程を備えている。
【0049】
先ず、ステージ23の載置部23aに、ウエハ3側を下にして積層体1を載置する(吸引して吸着する)。次に、溶剤供給チャンバー21を、ダイシングテープ5(
図1を参照)を介してステージ23に接触させた後、供給工程を行う。
【0050】
上記供給工程およびそれに続く滞留工程においては、剥離処理の対象となる積層体1に対して、中央供給口29から接着層を溶解する溶剤を供給し、積層体1上において滞留させる。溶剤供給チャンバー21は、ウエハ3からサポートプレート2を剥離するときに、積層体1を覆うように滞留部22を構成する。従って、滞留部22内に供給された溶剤は、当該滞留部22内に滞留する。このとき、少なくとも、積層体1の側面とサポートプレート2側の表面とが溶剤によって覆われるように、積層体1に溶剤を供給することが好ましい。つまり、ウエハ3からサポートプレート2を剥離するときには、積層体1の側面とサポートプレート2側の表面とが溶剤によって覆われ、積層体1が溶剤中に浸漬された状態となるような量の溶剤を供給することが好ましい。また、上記供給工程においては、必要に応じて、滞留部22内を減圧状態にしてもよい。尚、供給工程に要する時間は、特に限定されないものの、生産性を考慮すれば、0.5分間〜2分間の範囲内であることが好ましく、0.5分間〜1分間の範囲内であることがより好ましい。
【0051】
溶剤を供給すると、溶剤は、積層体1の側面から接着層に達すると共に、サポートプレート2の貫通孔10を介して積層体1内に浸入し、接着層に達する。これにより、サポートプレート2における中心部、つまり、積層体1の中心部に位置する接着層にも溶剤が浸透するので、接着層が効率的に溶解される。尚、溶剤は、通常、室温(23℃)で供給されるものの、接着層への浸透および接着層の溶解を促進するために、加温等の温度調節が適宜なされていてもよい。
【0052】
上記滞留工程においては、溶剤によって接着層を溶解させるときに、必要に応じて、積層体1上に滞留する溶剤を振動部27によって振動、好ましくは超音波振動させる振動工程を併せて行ってもよい。上記振動工程は、供給工程において積層体1に溶剤が供給された後(つまり、滞留工程と同時)に行ってもよく、積層体1に溶剤が供給されるのと同時に行ってもよく、さらには、供給工程の途中または滞留工程の途中に始めてもよい。また、上記滞留工程においては、必要に応じて、滞留部22内を減圧状態にしてもよく、さらに、回動部28によって溶剤供給チャンバー21を回動させてもよい。尚、滞留工程に要する時間は、特に限定されないものの、生産性を考慮すれば、3分間〜7分間の範囲内であることが好ましく、3分間〜5分間の範囲内であることがより好ましい。
【0053】
上記滞留工程を行うことにより、接着層が溶解されると、ウエハ3とサポートプレート2とは離間する。つまり、ウエハ3からサポートプレート2が剥離される。このとき、
図1に示すように、サポートプレート2は、剥離されたことによって平板状に復元するので、ステージ23の載置部23aに載置されているウエハ3と、平板状に復元した上記サポートプレート2との間に隙間が生じる。従って、ウエハ3に形成されているバンプ3a上に、剥離されたサポートプレート2が載置されることはない。また、ウエハ3とサポートプレート2との間に隙間が生じるので、振動工程を行って振動、好ましくは超音波振動させても、サポートプレート2によってバンプ3aが損傷するおそれはない。従って、接着層が溶解されるとサポートプレートとバンプとが接触する従来の剥離方法と比較して、溶剤および積層体1を充分に振動させることができるので、接着層をより短時間で溶解させることができる。
【0054】
ウエハ3からサポートプレート2が剥離されると、接着層を溶解した溶剤を、排出口30から排出して回収する(回収工程)。回収工程後、滞留部22内を大気圧に戻し、溶剤供給チャンバー21をステージ23から離間させ、例えばロボットアーム等の搬送装置を用いて、剥離したサポートプレート2を取り出した後、必要に応じて、ウエハ3上に新しい溶剤を供給してウエハ3を洗浄する(洗浄工程)。これにより、ウエハ3上に残存する接着層を取り除くことができる。その後、吸引による吸着を解除して、例えばロボットアーム等の搬送装置を用いて、ウエハ3を取り出す。
【0055】
上記構成の剥離方法によれば、ステージ23表面から曲面状に窪むようにして形成されている当該ステージ23の載置部23aに、ウエハ3側を下にして積層体1を載置した後、溶剤を用いて接着層を溶解してサポートプレート2を剥離するので、ウエハ3からサポートプレート2が剥離された状態において、ウエハ3上にサポートプレート2が載置されることを上記隙間によって回避することができる。従って、ウエハ3からサポートプレート2が剥離された状態において、ウエハ3上に形成されているバンプ3aがサポートプレート2によって損傷されるおそれを回避することができる。
【0056】
<サポートプレート(支持体)の変形例>
図4に示すように、剥離処理の対象である積層体1のサポートプレート2は、全貫通孔10のうち中心部の貫通孔が塞がれることで、非貫通部11が形成されている構成であってもよい。
【0057】
ここで、本発明における「非貫通部」とは、貫通孔10・10間に存在する元々貫通孔が形成されていない部分(領域)や、塞がれた貫通孔そのものの部分(領域)を単に指すのではなく、サポートプレート2の表面において、少なくとも一つの塞がれた貫通孔を内包し、当該塞がれた貫通孔に隣り合う複数の貫通孔10に外接する外接円で囲まれた部分(領域)を指す。従って、「非貫通部」は、塞がれた貫通孔そのものの部分(領域)を必ず含み、塞がれた貫通孔そのものの部分(領域)と、当該塞がれた貫通孔の周囲に存在する元々貫通孔が形成されていない部分(領域)とで構成されていることになる。「非貫通部」に内包される「塞がれた貫通孔」は、一つであってもよいが、複数であることがより好ましい。また、本発明における「塞がれた貫通孔」とは、実際に貫通孔を一旦形成した後、当該貫通孔を塞いだ状態である必要はなく、規則的に配置されている貫通孔における本来形成されるべき位置に形成されていない貫通孔を指す。従って、「塞がれた貫通孔」は、貫通孔が本来形成されるべきところに形成されていない部分(領域)を指していることになる。上記非貫通部11は、例えば接着層を形成する接着化合物と溶剤との組み合わせにもよるものの、直径2mm以上、5mm以下の円で囲まれた部分(領域)であることが好ましい。
【0058】
上記構成のサポートプレート2を用いた積層体1によれば、上述した剥離装置20を使用した剥離方法を実施して滞留工程を行うと、サポートプレート2における貫通孔10では、溶剤が積層体1内に浸入して接着層を溶解させる一方、サポートプレート2における非貫通部11では、溶剤が積層体1内に浸入しないので、接着層を溶解させることはない。従って、滞留工程の終了時には、接着層には溶解した箇所と溶解していない箇所とが形成されることになる。つまり、
図4に示すように、サポートプレート2の貫通孔10の下方に位置する接着層は溶剤によってその殆どが溶解される一方、サポートプレート2の非貫通部11の下方に位置する接着層は溶剤によって溶解されずに、柱状の(円錐台状の)接着層4aとして残る。このとき、サポートプレート2は、その中心部が柱状の接着層4aで支持された状態となり、接着層の大部分が溶解して除去されているにも関わらず、ウエハ3の表面に形成されたバンプ3aに接触することはない。
【0059】
このように、非貫通部11が形成されている構成のサポートプレート2は、接着層に柱状の未溶解部分4aを生じさせることにより、接着層を溶剤で溶解してウエハ3からサポートプレート2を剥離することが可能となった状態においても、ウエハ3上にサポートプレート2が載置されることを当該未溶解部分4aによって回避することができる。従って、接着層を溶解してウエハ3からサポートプレート2を剥離することが可能となった状態において、ウエハ3上に形成されているバンプ3aがサポートプレート2によって損傷されるおそれをより一層回避することができる。
【0060】
尚、サポートプレート2と柱状の接着層4aとの接触面積はサポートプレート2表面と比較して充分に小さいので、ウエハ3に損傷を与えることなく、サポートプレート2を剥離することができる。サポートプレート2が剥離されたウエハ3は、従来のサポートプレートが剥離されたウエハと同様に、溶剤によって洗浄し、柱状の接着層4aを含む残りの接着層を溶解させる。つまり、ウエハ3上に残存する接着層を取り除く。その後、必要に応じて、水洗等を行ってもよい。
【0061】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例】
【0062】
〔実施例1〕
直径が310mm、傾斜角度θが1.0度、ステージ表面からの距離(深さ)hが500μmに形成された載置部を有するステージと、当該ステージに接触して滞留部を形成する溶剤供給チャンバーとを備えた剥離装置を使用して、直径300mm、厚さ50μmのウエハ、厚さ60μmの接着層、貫通孔を多数有する直径301mm、厚さ650μmのサポートプレートをこの順に積層してなる積層体から、上記サポートプレートを剥離する剥離処理を行った。溶剤はp−メンタンを用いた。上記ウエハ上には、高さ40μmのバンプが多数形成されており、ウエハの最外部に位置するバンプは、ウエハの外縁部からの距離が2.5mmであった。また、サポートプレートの外縁部は、載置部の起点である点Pから5mm内側に位置していた。
【0063】
その結果、ウエハからサポートプレートが剥離された状態において、ウエハの最外部に位置するバンプと、サポートプレートとの間には凡そ5μmの隙間が形成されていた。つまり、上記載置部を有するステージを備えた剥離装置を使用することにより、ウエハ上にサポートプレートが載置されることを上記隙間によって回避することができることが判った。