(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0034】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0035】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0036】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0037】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0038】
(実施の形態1)
〈発明の概要〉
本発明の第1の概要は、信号パルス検出装置(信号パルス検出器101)である。この信号パルス検出装置は、増幅器(アンプ106)、A/D変換器(A/D変換器107)、データ補間器(データ補間器108)、しきい値処理器(しきい値処理器109)、および光量算出器(光量算出器110)を有する。
【0039】
増幅器は、光検出器(光検出器105)から出力される信号パルスを増幅する。A/D変換器は、増幅器が増幅した信号パルスをサンプリングする。データ補間器は、A/D変換器がサンプリングしたサンプリングデータを補間する補間データを生成する。
【0040】
しきい値処理器は、データ補間器から出力される補間データとしきい値、およびサンプリングデータとしきい値とをそれぞれ比較し、しきい値未満のデータを除去する。光量算出器は、しきい値処理器から出力される補間データとサンプリングデータとから光量を算出する。
【0041】
本発明の第2の概要は、質量分析装置(質量分析装置100)である。この質量分析装置は、イオン源(イオン源102)、質量分析器(質量分析器103)、イオン−光変換器(イオン−光変換器104)、光検出器(光検出器105)、および信号パルス検出部(信号パルス検出器101)を有する。
【0042】
イオン源は、試料をイオン化する。質量分析器は、イオン源によってイオン化されたイオンを分離する。イオン−光変換器は、質量分析器が分離したイオンに応じて光子を出力する。
【0043】
光検出器は、イオン−光変換器から出力された光子を信号パルスに変換する。信号パルス検出部は、光検出器から出力される信号パルスから、光量を算出する。
【0044】
また、信号パルス検出部は増幅器(アンプ106)、A/D変換器(A/D変換器107)、データ補間器(データ補間器108)、しきい値処理器(しきい値処理器109)、および光量算出器(光量算出器110)を有する。
【0045】
増幅器は、光検出器から出力される信号パルスを増幅する。A/D変換器は、増幅器が増幅した信号パルスをサンプリングする。データ補間器は、A/D変換器がサンプリングしたサンプリングデータを補間する補間データを生成する。
【0046】
しきい値処理器は、データ補間器から出力される補間データとしきい値、およびサンプリングデータとしきい値とをそれぞれ比較し、しきい値未満のデータを除去する。光量算出器は、しきい値処理器から出力される補間データとサンプリングデータとから光量を算出する。
【0047】
本発明の第3の概要は、信号パルス検出方法である。この信号パルス検出方法は、以下の第1〜第5のステップを有する。
【0048】
第1のステップは、光検出器(光検出器105)から出力される信号パルスを増幅器(アンプ106)によって増幅するステップである。第2のステップは、増幅器が増幅した信号パルスをA/D変換器(A/D変換器107)によってサンプリングするステップである。
【0049】
第3のステップは、A/D変換器がサンプリングしたサンプリングデータを補間する補間データをデータ補間器(データ補間器108)によって生成するステップである。第4のステップは、しきい値処理器(しきい値処理器109)において、データ補間器から出力される補間データとしきい値、およびサンプリングデータとしきい値とをそれぞれ比較し、しきい値未満のデータを除去するステップである。
【0050】
第5のステップは、光量算出器(光量算出器110)によって、しきい値処理器から出力される補間データとサンプリングデータとから光量を算出するステップである。
【0051】
以下、上記した概要に基づいて、実施の形態を詳細に説明する。
【0052】
〈概要〉
本実施の形態1では、より微量な含有成分を検出する質量分析装置に関した微弱な光量検出において、光検出器が出力する信号パルスをA/D変換し、信号パルス波形のピークを補間した後、波高がしきい値以下の信号パルスを除去し、しきい値処理後の信号パルスから光量を算出する。
【0053】
これによって、光検出器が出力する信号パルスとA/D変換のタイミングが非同期であっても、信号パルスの検出抜けと信号パルス面積の演算結果の変動を抑制することで、光量の検出精度を向上させるものである。
【0054】
〈質量分析装置の構成例〉
図1は、本実施の形態1による質量分析装置における構成の一例を示す説明図である。
【0055】
質量分析装置100は、各種のイオン化法で物質を原子、分子レベルの微細なイオンにし、その質量数と数を測定することにより、物質の同定や定量などを行う。質量分析装置100は、
図1に示すように、信号パルス検出器101、イオン源102、質量分析器103、イオン−光変換器104、および光検出器105を有する。
【0056】
イオン源102は、試料をイオン化する。質量分析器103は、イオン源102によってイオン化されたイオンを分離し、イオン−光変換器104に入力する。
【0057】
イオン−光変換器104は、入力されたイオンに応じて光子を出力する。例えば、イオン−光変換器104には、シンチレータが用いられる。光検出器105には、イオン−光変換器104から出力された光子が入射される。
【0058】
光検出器105は、入射された光子を電気信号に変換する。例えば、光検出器105には、入射した1つの光子に対して1つの電気的な信号パルスを出力するフォトンカウンティング用光電子増倍管が用いられる。
【0059】
〈信号パルス検出装置の構成例〉
信号パルス検出器101は、アンプ106、A/D変換器107、データ補間器108、しきい値処理器109、光量算出器110、および入出力装置111を有する。
【0060】
アンプ106は、光検出器105から出力される信号パルスを増幅する。A/D変換器107は、アンプ106から出力された信号パルスをサンプリングしてデジタルデータとして出力する。
【0061】
データ補間器108は、A/D変換器107によってデジタル値に変換した信号パルスのピークを補間する。しきい値処理器109は、データ補間器108によって補間された信号パルスの波高がしきい値以下となる信号パルスを除去する。
【0062】
光量算出器110は、しきい値処理器109から出力された信号パルスデータから光量を算出する。入出力装置111は、設定データなどの各種データを入出力する。
【0063】
〈信号パルス検出器の動作例〉
図2は、
図1の質量分析装置100に設けられた信号パルス検出器101の動作例を示す説明図である。
【0064】
光検出器105の出力信号は、アンプ106によって増幅された後、A/D変換器107に入力される。A/D変換器107は、アンプ106からの出力信号をサンプリングしてデジタルデータに変換し、
図2の上方左側に示すようにサンプリングデータとして出力する。
【0065】
データ補間器108は、A/D変換器107のサンプリングデータが入力されると、該サンプリングデータと算出した補間データとをサンプリングデータ/補間データとして出力する。補間データは、
図2の上方中央部に示すようにサンプリングデータに基づいて連続したサンプリングデータの間に存在する信号データを計算したデータである。
【0066】
補間データ数Nがn個の場合、
図2の下側に示すように、サンプリングデータZ
15とサンプリングデータZ
14の間には、n点の補間データZ
15,1〜Z
15,nがデータ列として算出されて付加されることになる。
【0067】
補間データ数Nが3個の場合、サンプリングデータZ
15とサンプリングデータZ
14の間には、3点の補間データZ
15,1,Z
15,2,Z
15,3がデータ列として算出されて付加されることになる。
【0068】
また、補間データの計算方法としては、アップサンプリング補間、ラグランジュ補間、スプライン補間、あるいは線形補間など多数の方式が知られており、本実施の形態では、いずれの計算方法を利用してもよい。
【0069】
データ補間器108から出力されたサンプリングデータ/補間データは、しきい値処理器109に入力される。しきい値処理器109は、サンプリングデータ/補間データとしきい値とを比較する。そして、
図2の上方右側に示すように、しきい値未満のサンプリングデータ/補間データを基準値に置き換え、しきい値以上のサンプリング/補間データを光量算出器110に出力する。しきい値処理器109におけるしきい値は、例えば入出力装置111によって設定される。
【0070】
光量算出器110には、入出力装置111から出力される制御データである基準値データが入力されており、しきい値処理器109が出力するサンプリングデータ/補間データから光量を算出する。
【0071】
光量算出器110が算出した光量の算出結果は、入出力装置111に出力される。入出力装置111では、光量算出器110の算出結果に基づいて、信号パルスのカウンティングを行う。ここで、算出方法は、1つの信号パルスを1つの光子としてカウントするフォトンカウンティング方法などでよい。
【0072】
あるいは複数の光子が短時間に入射し、複数の信号パルスが重畳した場合にも対応するため、予め記憶していた光子が1個入射したときの信号パルスの面積を基準にして、1個の信号パルスに含まれる光子数を求めるようにしてもよい。
【0073】
〈データ補間器構成例、および動作例〉
図3は、
図2のデータ補間器108における構成の一例、および動作例を示した説明図である。この
図3では、データ補間器108がアップサンプリング方式によるデータ補間器として構成された例を示している。
【0074】
アップサンプリング方式のデータ補間器108は、
図3に示すように、アップサンプラ301、および低域通過フィルタ302を有する。
【0075】
アップサンプラ301は、
図3の上方の左側に示す入力されたサンプリングデータに並列に’0’データを挿入する。データ補間数Nがn個の場合、n列の’0’データ列を並列に挿入する。データ補間数Nが、例えば1個の場合には、
図3の上方の中央部に示すように、1個の’0’が挿入される。
【0076】
低域通過フィルタ302は、アップサンプラ301が’0’データを挿入したことにより発生したイメージ成分を除去するアンチイメージングフィルタリング処理を実施する。この低域通過フィルタ302のフィルタリング処理により、アップサンプラ301にて並列挿入した系列に補間データが演算される。
【0077】
前述したように、データ補間数Nが1個の場合には、
図3の上方の右側に示すように、補間データのデータ列は1個となり、各サンプリングデータの間に1個の補間データが付与され、サンプリングデータ/補間データとして出力される。
【0078】
また、データ補間数Nがn個の場合には、補間データのデータ列がn個となり、各サンプリングデータの間にn個の補間データが付与され、サンプリングデータ/補間データとして出力される。
【0079】
〈しきい値処理器の構成例、および動作例〉
図4は、
図2のしきい値処理器109における構成の一例、および動作例を示した説明図である。
【0080】
しきい値処理器109は、
図4に示すように、m個の比較器401、およびm個の選択器402をそれぞれ有する。ここで、mは、データ補間数Nがn個の場合、n+1となる。
【0081】
比較器401の一方の入力部には、しきい値がそれぞれ入力されるように接続されている。比較器401の他方の入力部には、サンプリングデータ、および並列挿入されたn個のデータ列からなる補間データがそれぞれ入力されるように接続されている。
【0082】
例えば、
図4の上方左側に示すように、データ補間数Nが1個の場合、しきい値処理器109には、2個の比較器401が設けられる。そして、一方の比較器401には、サンプリングデータが入力され、もう1つの比較器401には、1個の補間データが入力されることになる。
【0083】
これらm個の比較器401は、
図3のデータ補間器108から入力されるサンプリングデータ、および補間データをデータ列毎にしきい値と比較し、その比較結果を選択器402に出力する。
【0084】
m個の選択器402の一方の入力部には、サンプリングデータ、および並列挿入されたn個のデータ列からなる補間データがそれぞれ入力される。また、m個の選択器402の他方の入力部には、基準値データがそれぞれ入力されるように接続されている。
【0085】
この基準値データは、
図1の入出力装置111などによって設定される。m個の選択器402の制御端子には、m個の比較器401から出力される比較結果がそれぞれ入力されるように接続されている。
【0086】
これら選択器402は、比較器401の比較結果に基づいて、一方の入力部、または他方の入力部のいずれかに入力される信号を選択してそれぞれ出力する。
【0087】
m個の選択器402は、入力されたサンプリングデータ、あるいは補間データがしきい値未満であると、m個の比較器401がそれぞれ判定した場合には、他方の入力部に入力された基準値データを出力する。
【0088】
一方、入力されたサンプリングデータ、あるいは補間データがしきい値以上であると、比較器401が判定した場合には、一方の入力部に入力されたサンプリングデータ、または補間データを出力する。
【0089】
なお、しきい値と基準値データは、前述したように、入出力装置111を用いてユーザが設定してもよいし、あるいは測定結果から算出してもよい。測定結果から算出する場合、例えば、しきい値処理により除去するノイズ信号は、光検出器に光が入射されていない無光時の検出信号であることから、事前に無光時のノイズ信号を取得し、この結果からしきい値および基準値を決定する。まず、無光時のノイズ信号を取得し、その平均値mおよびばらつきσを計算する。
【0090】
しきい値処理のためのしきい値Vthは、平均値mとばらつきσから、Vth=m+3σと決定する。また基準値Vbaseはノイズ信号の平均値mから、Vbase=mとする。
【0091】
このように、しきい値処理器109は、データ補間器108から出力されるサンプリングデータ/補間データとしきい値とを比較し、しきい値未満のデータを基準値に置き換えて出力する。また、しきい値以上のデータは、そのままサンプリング、または補間データとして出力する。
【0092】
〈光量算出器の構成例、および動作例〉
図5は、
図2の光量算出器110における構成の一例、および動作例を示した説明図である。
【0093】
図5(a)に示す光量算出器110は、フォトンカウンティング方法による光量算出器である。このフォトンカウンティング方法による光量算出器110は、複数のパルス検出器501、遅延器502、および加算器503を有する。
【0094】
パルス検出器501の数は、比較器401と同じ数のm個である。これらパルス検出器501には、
図4のしきい値処理器109から出力されるサンプリング、および補間データが入力される。
【0095】
これらパルス検出器501の第1の入力部には、基準値データがそれぞれ入力されている。これらパルス検出器501の第2の入力部には、遅延器502から出力される遅延された補間データ、サンプリングデータ、および並列挿入されたn−1個のデータ列からなる補間データがそれぞれ入力されるように接続されている。また、パルス検出器501の第3の入力部には、サンプリングデータ、および並列挿入されたn個のデータ列からなる補間データがそれぞれ入力されるように接続されている。
【0096】
具体的には、1個目のパルス検出器501の第2の入力部には、遅延器502から出力される遅延された補間データが入力され、該パルス検出器501の第3の入力部には、サンプリングデータが入力されるように接続されている。
【0097】
2つ目のパルス検出器501の第2の入力部には、サンプリングデータが入力され、該パルス検出器501の第3の入力部には、n個の補間データのうち、1つ目の補間データがそれぞれ入力されるように接続されている。
【0098】
3つ目のパルス検出器501の第2の入力部には、n個の補間データのうち、1個目の補間データが入力され、該パルス検出器501の第3の入力部には、2個目の補間データが入力されるように接続されている。
【0099】
そして、m個目のパルス検出器501の第2の入力部には、n−1個目の補間データが入力され、該パルス検出器501の第3の入力部には、n個目の補間データが入力されるように接続されている。これらパルス検出器501は、入力された2つのデータから信号パルスの有無を判定する。
【0100】
遅延器502には、最終系列の補間データ、すなわちn個目の補間データが入力されるように接続されている。遅延器502には、入力されたn個目の補間データを遅延させて1個目のパルス検出器501に出力する。
【0101】
このように、最終系列の補間データを遅延させることによって、該補間データとサンプリングデータとを1個目のパルス検出器501によって比較することができる。
【0102】
図5(b)は、パルス検出器501の構成の一例を示す説明図である。
【0103】
パルス検出器501は、図示するように、比較器510,511、および論理積回路512を有する。比較器510は、第1の入力部に入力される基準データと第2の入力部に入力される入力データとが同じデータであるか否かを判定し、同じであると判定した際に例えば、’1’を出力する。ここで、入力データは、サンプリング、または補間データである。
【0104】
比較器511は、第1の入力部に入力される基準データと第3の入力部に入力される入力データとを比較し、第3の入力部に入力される入力データが、第1の入力部に入力される基準データよりも大きい場合に’1’を出力する。ここでも、入力データは、サンプリング、または補間データである。論理積回路512は、比較器510の比較結果と比較器511の比較結果との論理積をとって出力する。
【0105】
パルス検出器501は、第2の入力部に入力された入力データが基準値データと同じであり、かつ第3の入力部に入力された入力データが基準値データよりも大きい場合にのみ、’1’を加算器503に出力する。この条件を満たしたパルス検出器501のみが’1’を出力することになる。加算器503には、パルス検出器501の出力結果を加算し、合計値を出力する。
【0106】
図5(c)は、サンプリング/補間データと出力結果との関係を示す説明図である。
図5(c)上方に示すサンプリング/補間データが光量算出器110に入力される。光量算出器110は、第2の入力部に入力された入力データが基準値データと同じであり、かつ第3の入力部に入力された入力データが基準値データよりも大きい場合に、’1’を出力する。そして、加算器503を介して’1’が、
図1の入出力装置111に出力される。
【0107】
そして、入出力装置111は、加算器503から出力される信号の有(’1’)/無(’0’)を判定することにより、信号パルスのカウンティングを行う。
【0108】
〈光量算出器の他の構成例、および動作例〉
図6は、
図2の光量算出器110における構成の他の例、および動作例を示した説明図である。
【0109】
この
図6(a)に示す光量算出器110は、信号パルス面積方法による光量算出器である。信号パルス面積方法による光量算出器110は、複数の比較器601、複数の選択器602、加算器603、およびパルス面積演算器604を有する。
【0110】
比較器601、および選択器602は、それぞれm個(=n+1)の数が設けられている。m個の比較器601の一方の入力部には、サンプリングデータ、および並列挿入されたn個のデータ列からなる補間データがそれぞれ入力されている。この比較器601の他方の入力部には、基準値データがそれぞれ入力されている。
【0111】
また、m個の選択器602の制御端子には、比較器601からの比較結果がそれぞれ入力されるように接続されている。選択器602の一方の入力部には、サンプリングデータ、および並列挿入されたn個のデータ列からなる補間データがそれぞれ入力されており、該選択器602の他方の入力部には、入出力装置111から出力されるデータである’0’がそれぞれ入力されるように接続されている。
【0112】
これら選択器602の出力部は、加算器603の入力部にそれぞれ接続されており、該加算器603の加算結果はパルス面積演算器604に入力されるように接続されている。
【0113】
比較器601は、基準値データと入力されるサンプリングデータ、または補間データとをそれぞれ比較し、比較結果を選択器602に出力する。選択器602は、基準値データとサンプリングデータ、または補間データとが等しい場合、’0’をそれぞれ出力する。
【0114】
また、サンプリングデータ、または補間データが、基準値以上の場合には、入力されたサンプリングデータ、または補間データを出力する。加算器603は、選択器602から入力されたデータ値の合計値を出力する。
【0115】
パルス面積演算器604は、加算器603から出力される加算結果に基づいて、パルス面積を演算して出力する。
【0116】
図6(b)は、パルス面積演算器604の構成の一例を示す説明図である。
【0117】
パルス面積演算器604は、図示するように、加算器605、出力制御器606、遅延器607、およびパルス検出器608を有する。パルス検出器608には、加算器603から出力される加算結果、遅延器607によって遅延された加算器603から出力される直前の加算結果、および’0’がそれぞれ入力されるように接続されている。
【0118】
パルス検出器608は、加算器603から出力される加算結と、遅延された直前の加算結果のうち、時間が早い方のデータが’0’であり、時間が遅い方のデータが’0’より大きい場合、1個の信号パルスの終了と判定し、’1’を出力する。
【0119】
パルス検出器608の出力部には、加算器605の入力部、および出力制御器606の入力部にそれぞれ接続されている。加算器605には、加算器603から出力される加算結果、および出力制御器606の出力信号がそれぞれ入力されるように接続されている。
【0120】
出力制御器606は、パルス検出器608からの出力信号が’0’の場合、加算器605から出力されるデータをそのまま加算器605へ出力する。このため、加算器605は、パルス検出器608の出力が’0’の状態のとき、入力データを累積加算していく。また、パルス面積演算器604の出力結果をゼロにする。
【0121】
パルス検出器608から’1’が入力されると、出力制御器606は、加算器605から入力される累積加算結果をパルス面積演算器604の結果として出力する。これと同時に、加算器605は、’0’にクリアされる。
【0122】
図6(c)は、光量算出器110に入力される信号パルスと出力データの関係を示す説明図である。
【0123】
しきい値処理器109から出力された
図6(c)の上方に示すサンプリングデータ/補間データは、しきい値処理器109から出力された
図6(c)の中央部に示すように、サンプリングデータ、および補間データ毎にデータ値がそれぞれ算出される。そして、算出されたデータ値を加算することにより、
図6(c)の下方に示すように、パルスの面積を算出する。
【0124】
以上から、信号パルス毎の面積を取得することが可能となる。
【0125】
〈信号パルスの検出精度〉
図7は、
図2の信号パルス検出器101による信号パルスの検出精度を計算した一例を示す説明図である。
【0126】
図7(a)は、検出精度の計算に用いた理想的な信号パルス波形の例を示している。信号パルスの立ち上りは、時間に対して比例して増加し、立ち下りは、指数関数で減衰している。
【0127】
図7(b)は、
図7(a)に示した信号パルス波形を
図2のA/D変換器107によってサンプリングしたデータの一例を示したものであり、サンプリングのタイミングをシフトさせたサンプリングデータを重ねて表示している。このとき、図示するように、サンプリングタイミングに依存して信号パルス波高が22%程度、面積が13%程度変動している。
【0128】
図7(c)は、
図7(b)のサンプリングデータをアップサンプラ方式によって補間したデータの一例を示している。
図7(c)においては、データ補間数Nをn=2として補間処理したデータ例を示している。
【0129】
このとき、
図7(c)に示すように、波高の変動が11%程度、面積が5%程度の変動となっており、補間処理を行うことによって、波高、および面積の変動が1/2程度以下に低減されている。
【0130】
すなわち、
図2の信号パルス検出器101による補間処理によって、サンプリングのタイミングに依存した信号パルスの波高、および面積の検出結果の変動を低減することができる。
【0131】
これにより、補間処理後のしきい値処理にて、しきい値と信号パルスの波高とを正確に比較することができ、また、しきい値処理後の光量算出器110にて正確に光量を算出することが可能となる。
【0132】
以上より、A/D変換器107によってサンプリングされた信号パルスのピークを補間した後にしきい値処理し、光量を算出することによって、
図1の光検出器105が出力する信号パルスとA/D変換器107のサンプリングタイミングが非同期であっても、信号パルスのピークと波形面積の変動を抑制することができる。すなわち、信号パルスの検出抜けを抑制し、光量の検出精度を向上させることが可能となる。
【0133】
(実施の形態2)
〈概要〉
前記実施の形態1の信号パルス検出器101では、データ補間数Nが多くなるほど、光量の検出精度を向上させることができる。しかし、データ補間数Nが多くなれば、データ数が増大するだけでなく、サンプリングデータ/補間データから光量を算出する光量算出器110などの回路規模が増大してしまうことになる。
【0134】
そこで、本実施の形態2では、データ補間数Nの数が少なくても、光量の検出精度を向上させる技術について説明する。
【0135】
〈信号パルス検出器の構成例〉
図8は、本実施の形態2による質量分析装置に設けられた信号パルス検出器の一例を示す説明図である。なお、ここでは、説明が煩雑になることを避けるため、前記実施の形態1と同一の符号をつけた構成要素についての説明は省略する。
【0136】
信号パルス検出器101は、
図8に示したように、アンプ106、A/D変換器107、データ補間器108、しきい値処理器109、新たに追加されたデータ圧縮器800、光量算出器110、および入出力装置111を有する。
【0137】
データ圧縮器800は、しきい値処理器109と光量算出器110との間に設けられている。このデータ圧縮器800は、しきい値処理器109から出力されたサンプリングデータ、および補間データのうち、最もデータ値が高いピークデータを検出し、サンプリングデータに検出したピークデータを挿入する。また、挿入したピークデータの時間情報を付加して、光量算出器110に出力する。これらの動作により、データ量を圧縮し、光量算出器110の演算規模を低減することができる。
【0138】
〈データ圧縮器の構成例、および動作例〉
続いて、データ圧縮器800の動作について説明する。
【0139】
図9は、
図8のデータ圧縮器800の構成例、および動作例を示した説明図である。
図9の上方は、データ圧縮器800の構成例を示している。
【0140】
データ圧縮器800は、ピーク挿入器900、および時間軸生成器901を有する。ピーク挿入器900の入力部には、しきい値処理器109から出力されるサンプリング/補間データが入力されるように接続されている。ピーク挿入器900の出力部には、光量算出器110が接続されている。
【0141】
また、ピーク挿入器900の挿入位置情報出力部には、時間軸生成器901の入力部が接続されており、時間軸生成器901の出力部には、光量算出器110が接続されている。
【0142】
また、
図9の下方は、信号パルス検出器101におけるデータ例を示している。この
図9の下方において、上方から下方にかけては、データ補間器108に入力されるサンプリングデータであるデータD1、しきい値処理器109によってしきい値処理されたしきい値処理後のデータD2、ピーク挿入器900から出力されるピーク挿入後のデータD3、および時間軸生成器901から出力される時間軸付加後のデータD4をそれぞれ示している。
【0143】
データ補間器108にサンプリングデータとしてデータD1が入力される。データD1は、データ補間器108による補間データの生成、およびしきい値処理器109によるしきい値処理が行われ、該しきい値処理器109からしきい値処理後のデータD2が出力される。
【0144】
ピーク挿入器900は、しきい値処理器109から出力されたデータD2から、信号パルス区間毎にピークデータを検出し、データD3のように検出したピークデータを挿入する。
【0145】
検出したピークデータが補間データであった場合には、該ピークデータをサンプリングデータ列に挿入する。ここで、しきい値処理後のサンプリングデータ列は、信号パルス区間の前後に必ず1データ以上の基準値データが存在する。この基準値データを1個削除し、ピークデータを1個挿入する。これにより、データ量の増加を抑制することが可能になる。
【0146】
時間軸生成器901は、ピーク挿入器900から出力される挿入位置情報に基づいて、各サンプリングデータの時間情報を生成する。この時間軸生成器901は、信号パルス検出器101が測定を開始してから取得したサンプリングデータの数をカウントアップし、ピーク挿入器900でのピークデータ挿入がない場合、 該カウントアップデータにA/D変換器107のサンプリング周期Tsを乗算した結果を出力する。ピークデータの挿入がある場合には、以下の式にて挿入したピークデータの時間情報Tを算出する。
【0147】
T={CNT+(m/N)×Ts} (式1)
ここで、CNTは、ピークデータ挿入直前のサンプリングデータのカウントアップデータであり、Nは、データ補間数であり、mは、ピークデータが存在した補間データの列番号である。データ圧縮器800は、ピーク挿入器900と時間軸生成器901の2列のデータからなるデータD4を光量算出器110へ出力する。
【0148】
このように、信号パルス毎におけるサンプリングと1つのピークデータとが光量算出器110に出力されるだけであるので、光量算出器110における演算能力を小さくすることができ、回路規模を小さくすることが可能となる。
【0149】
〈データ形式の比較例〉
図10は、前記実施の形態1における
図2の信号パルス検出器と、
図8の信号パルス検出器とのデータ形式の比較例を示す説明図である。
【0150】
図10(a)は、
図1の光量算出器110に入力されるデータ形式の一例を示したものであり、
図10(b)は、
図8の光量算出器110に入力されるデータ形式の一例を示したものである。この
図10では、いずれの場合もデータ補間数Nを2としている。また、図中の黒丸は、サンプリングデータを示し、黒三角は、補間データを示している。
【0151】
ここで、最初の信号パルスに注目すると、
図10(a)に示す光量算出器110に入力されるデータの場合には、しきい値とサンプリングデータとの間、および各サンプリングデータの間には、1つの補間データがそれぞれ付加されている。
【0152】
一方、
図10(b)に示す光量算出器110に入力されるデータの場合には、サンプリングデータにピークデータとなった補間データのみ付加されて出力されることになるので、光量算出器110に入力されるデータ量が大幅に低減されていることがわかる。
【0153】
〈信号パルスの検出精度〉
図11は、
図8の信号パルス検出器101による信号パルスの検出精度を計算した一例を示す説明図である。計算には、
図7(a)に示した理想的な信号パルス波形を用いており、データ補間数Nは2としている。
【0154】
図11に示すように、サンプリングタイミングに依存した信号パルス波高の変動は、11%程度であり、面積の変動は5%程度であり、前記実施の形態1と同程度の検出精度を達成できることが判る。
【0155】
このように、データ圧縮器800は、しきい値処理器109から入力されたサンプリングデータ、および補間データからピークデータを検出し、サンプリングデータにピークデータを挿入し、該挿入したピークデータの時間情報を付加して、光量算出器に出力する。
【0156】
以上によって、データ補間数Nが2以上であっても、検出精度を劣化させることなく、光量算出器110に出力されるデータ列数を2列のみに抑制できる。すなわち、光量算出器110に出力するデータ量を圧縮し、該光量算出器110の演算規模を低減することが可能となる。
【0157】
(実施の形態3)
〈概要〉
図1の光検出器105の出力信号レベルは、通常、入射光の強度と波長により大きく異なる。例えば、光電子増倍管の場合には、波長により検出感度が大きく異なるため、波長の変化で出力信号レベルが3桁程度変化する。また、測定対象の濃度によって、
図1のイオン−光変換器104が出力する光の強度も変動する。
【0158】
一方、A/D変換器107では、精度よくアナログ信号をデジタルデータに変換できる入力信号レベルの範囲が決まっている。すなわち、広範囲に渡ってレベルが変動する光検出器105の出力信号を精度よく検出するためには、アンプの利得を調整してA/D変換器に入力可能な信号レベルに合わせる必要がある。
【0159】
そこで、本実施の形態3では、アンプの利得を調整してA/D変換器に入力可能な信号レベルに合わせる技術について説明する。
【0160】
〈信号パルス検出装置の構成例〉
図12は、実施の形態3による信号パルス検出器の一例を示す説明図である。なお、ここでも、上記の説明と同様に、説明が煩雑になることを避けるため、前記実施の形態2と同一の符号をつけた構成要素についての説明は省略する。
【0161】
信号パルス検出器101は、
図12に示すように、アンプ106の代わりに可変利得アンプ106aが設けられ、利得制御器112が新たに追加された点が
図8と異なっている。その他のA/D変換器107、データ補間器108、しきい値処理器109、データ圧縮器800、光量算出器110、および入出力装置111については、
図8と同様の構成となっている。
【0162】
利得制御器112は、データ圧縮器800から入力された信号パルスのピークデータから適切な可変利得アンプ106aのゲインを設定する。
【0163】
〈利得制御器による利得制御例〉
以下、利得の制御技術の一例を説明する。
【0164】
利得制御器112には、入出力装置111を介して目標の入力信号レベルDaと、可変利得アンプ106aの初期ゲイン値G0とをそれぞれ設定しておく。利得制御器112は、信号パルスの測定中、データ圧縮器800から入力される信号パルスのピークデータDpと目標の信号レベルDaとの比であるゲイン誤差比Raを計算する。
【0165】
Ra=Dp/Da (式2)
計算したゲイン誤差比Raと初期ゲイン値G0から、以下の式で求めたゲイン値G1を可変利得アンプ106aに設定する。
【0166】
G1=G0/Ra (式3)
また、同時に利得制御器112は、ゲイン誤差比Raをデータ補間器108に出力する。データ補間器108は、可変利得アンプ106aにてゲイン倍された信号パルスのサンプリングデータを該可変利得アンプ106aにてゲイン倍される前のサンプリングデータに戻すために、A/D変換器107から入力されるサンプリングデータにゲイン誤差比Raを乗算する。
【0167】
ここで、補間したピークデータを用いて可変利得アンプ106aの利得を調整することで、光検出器105が出力する信号パルスとA/D変換器107のサンプリングタイミングとが非同期であっても、信号パルスの波高変動を抑制して、精度よく利得を調整することが可能となる。
【0168】
すなわち、光検出器105の出力信号の強弱に合わせて、A/D変換器107に入力する信号パルスのレベルを精度よく調整することが可能となり、広いダイナミックレンジの信号パルス検出器101を実現することができる。
【0169】
(実施の形態4)
〈概要〉
前記実施の形態1では、信号パルス検出器101を質量分析装置100に用いた構成について記載したが、該信号パルス検出器101は、質量分析装置100以外の装置においても適用が可能である。この場合、装置は、光電子増幅管(PMT:PhotoMultiplier Tube)によって、検出対象から発生した光子を電気信号のパルスに変換するものであればよく、例えば分光光度計や電子顕微鏡などに適用することができる。
【0170】
〈分光光度計の構成例〉
図13は、実施の形態4による信号パルス検出器101を用いて構成された分光光度計の一例を示す説明図である。
【0171】
分光光度計113は、
図13に示すように、光源114、分光器115、試料室116、光検出器105、および信号パルス検出器101を有する。
【0172】
分光光度計113では、光源114にて生成した白色光を分光器115へ入射する。分光器115は、入力された白色光から所望の単色光を取り出し、試料室116へ出力する。
【0173】
試料室116には、測定対象である試料が設置されており、その試料へ単色光を入射し、その透過光を光検出器105に入射する。光検出器105では、入射した光を電気信号に変換する。
【0174】
光検出器105から出力された信号パルスは、信号パルス検出器101に入力される。この信号パルス検出器101の動作については、前記実施の形態1と同様である。
【0175】
〈電子顕微鏡の構成例〉
図14は、本実施の形態4による信号パルス検出器101を用いて構成された電子顕微鏡の一例を示す説明図である。
【0176】
電子顕微鏡121は、電子銃117、電場レンズ118、2次電子光変換器119、光検出器105、および信号パルス検出器101を有する。
【0177】
電子顕微鏡121は、電子銃117によって生成された電子線を電場レンズ118にて細く絞り、試料120の表面を走査する。
【0178】
電子銃117が生成した電子線の照射により、試料120の表面から発生した2次電子を2次電子光変換器119によって光に変換する。そして、2次電子光変換器119が変換した光を光検出器105にて電気信号に変換する。
【0179】
光検出器105から出力された信号パルスは、信号パルス検出器101に入力される。この信号パルス検出器101の動作については、前記実施の形態1と同様である。
【0180】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0181】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0182】
また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。