(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1面板部又は前記第2面板部に対して垂直な方向から視て、前記第1キャピラリカラム第1仮想円と同心円となるキャピラリカラム第2仮想円上に前記第1面板部及び前記第2面板部を貫通する貫通穴がさらに1又は複数形成されている請求項1又は2いずれかに記載のプレート型キャピラリカラム。
前記第1面板部又は前記第2面板部に対して垂直な方向から視て、前記キャピラリカラム第1仮想円上の第1有底穴、第2有底穴、及び、貫通孔と、前記キャピラリカラム第2仮想円上の貫通孔とが仮想正方形をなすように配置されている請求項5記載のプレート型キャピラリカラム。
前記分岐流路板において前記第3面板部又は前記第4面板部に対して垂直な方向から視て、前記キャピラリカラム第1仮想円と同半径の分岐流路板第1仮想円上に前記第4有底穴及び第5有底穴が形成されているとともに、前記分岐流路板第1仮想円上に前記第3面板部及び前記第4面板部を貫通する貫通穴が1又は複数形成されている請求項7記載のキャピラリカラムユニット。
前記分岐流路板において前記第3面板部又は前記第4面板部に対して垂直な方向から視て、前記分岐流路板第1仮想円と同心円となり、前記キャピラリカラム第2仮想円と同半径の分岐流路板第2仮想円上に前記第3面板部に開口するように設けられた第6有底穴と、前記第3面板部又は前記第4面板部のいずれか一方に開口する第7有底穴が設けられている請求項10記載のキャピラリカラムユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述したような問題を鑑みてなされたものであり、形状を1種類しか用意しなかったとしても、各プレート型キャピラリカラムを積層することでキャピラリを延長して、クロマトグラフの分解能を向上させることができるとともに、従来、複雑な流路が必要なためプレート型キャピラリカラムでは対応の難しかった測定方法を実現することができる拡張性を有したプレート型キャピラリカラム、及びそれらを用いたキャピラリカラムユニット又はクロマトグラフを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明のプレート型キャピラリカラムは、互いに対向する第1面板部と第2面板部を有するプレートと、前記プレートの内部に形成されたキャピラリと、前記キャピラリの一端部と接続され、前記第1面板部に開口するように形成された第1有底穴と、前記キャピラリの他端部と接続され、前記第2面板部に開口するように形成された第2有底穴と、を備え、前記第1面板部又は前記第2面板部に対して垂直な方向から視て、前記第2有底穴を通るキャピラリカラム第1仮想円上に前記第1面板部及び前記第2面板部を貫通する貫通穴が1又は複数形成されていることを特徴とする。ここで、プレートの内部に形成されたキャピラリとは、例えば前記キャピラリの側面部が外気に対して開口していないように形成されている、あるいは、側面部が外気に接触しないように密閉されて形成されているものを言う。
【0012】
このようなものであれば、前記第1有底穴が前記第1面板部に開口し、前記第2有底穴が前記第2面板部に開口しているので、同一形状のプレート型キャピラリカラムを複数用意し、各プレート型キャピラリカラムの前記第1面板部同士を重ね合わせて前記第1有底穴同士を連通させる、又は、前記第2面板部同士を重ね合わせて前記第2有底穴同士を連通させることで、任意の長さのキャピラリを容易に形成することができる。
【0013】
言い換えると、同一形状のプレート型キャピラリカラムを複数用意し、各面板部に垂直な方向へと積層していく際に、各プレート型キャピラリカラムの面板部の向きを交互に逆向きにして積層するだけで、キャピラリの長さを自由に調節することができる。しかも、このようにキャピラリの長さを自由に変更できるにもかかわらず、プレート型キャピラリカラムの形状は1種類に限定することができるので、製造上のコストを大幅に低減することも可能となる。より具体的に説明すると、1種類のプレート型キャピラリカラムを製造すればよいので、常に同じ形状をしたキャピラリを形成すればよく、例えばキャピラリ内に液相を塗布する等と言った手間のかかる作業工程を一種類に限定することができ、製造コストを下げることが可能となる。
【0014】
さらに、各プレート型キャピラリカラムを各面板部に対して垂直な方向に対して積層するだけで、全体のキャピラリの長さを容易に調節することができるので、複雑な流路を必要とするハートカットやバックフラッシュ等の測定方法を実現するための構造をこのプレート型キャピラリカラムに付加しやすい。
【0015】
また、前記第1面板部又は前記第2面板部に対して垂直な方向から視て、前記第2有底穴を通るキャピラリカラム第1仮想円上に前記第1面板部及び前記第2面板部を貫通する貫通穴が1又は複数形成されているので、前記貫通孔を利用して、複雑な流路を必要とするハートカットやバックフラッシュ等の測定方法を可能にするためのキャピラリの分岐を形成する事が可能である。
【0016】
簡単な構成であり、単一のキャピラリカラムだけで自由にキャピラリの長さを変更できるとともに、ハートカットやバックフラッシュのための複雑な流路も積層により構成可能となる第1有底穴の具体的な位置としては、前記第1面板部又は前記第2面板部に対して垂直な方向から視て、前記第1有底穴が前記キャピラリカラム第1仮想円の仮想中心上にあるものが挙げられる。
【0017】
前述したプレート型キャピラリカラムと同様に、1種類のプレート型キャピラリカラムを用意するだけで、積層することによりキャピラリの長さを容易に変更できるとともに、特殊な測定方法のために用いられる複雑な流路を形成できるようにするための第1有底穴の別の態様としては、前記第1面板部又は前記第2面板部に対して垂直な方向から視て、前記第1有底穴がキャピラリカラム第1仮想円上にあるものが挙げられる。
【0018】
各面板部の向きを交互に逆向きにして積層した際に、あるプレート型キャピラリカラムから直上のプレート型キャピラリカラムに流体を導入するとともに、さらに1つのキャピラリカラムをとばして、さらに上にあるプレート型キャピラリカラムへと直接流体を流入させることができるように、別の流路を容易に形成できるようにするには、前記第2有底穴及び各貫通孔が、前記仮想中心を中心として回転対称となるように配置されていればよい。このようなものであれば、第2面板部同士を重ね合わせたプレート型キャピラリカラム同士において、前記第1有底穴を通る各面板部に垂直な中心軸に対して一方のプレート型キャピラリカラムを回転させるだけで、一方のプレート型キャピラリカラムの第2有底穴を、他方のプレート型キャピラリカラムの第2有底穴又は貫通孔のいずれに連通させるかを適宜選択することができる。従って、一方のプレート型キャピラリカラムのキャピラリを積層されたプレート型キャピラリカラムのどの穴に接続していくかを適宜選択できるので、例えば、ハートカットやバックフラッシュ等の測定方法を行うための複雑な流路を簡単に形成することができる。
【0019】
前記プレート型キャピラリカラムの内部に容易にキャピラリを構成するには、前記プレートが、表面に溝が形成された第1プレート要素と、前記第1プレート要素の表面を覆うように貼り合わせられる第2プレート要素とから構成されたものであればよい。このようなものであれば、第1プレート要素の溝を第2プレート要素により蓋をすることで、容易に前記キャピラリをプレートの内部に形成する事が可能となる。
【0020】
前記プレート型キャピラリカラムを積層した際における流路構成の自由度をさらに高めるには、前記第1面板部又は前記第2面板部に対して垂直な方向から視て、前記第1キャピラリカラム第1仮想円と同心円となるキャピラリカラム第2仮想円上に前記第1面板部及び前記第2面板部を貫通する貫通穴がさらに1又は複数形成されているものであればよい。
【0021】
前記キャピラリカラム第2仮想円上に1又は複数の貫通孔をさらに設けた場合でも前記キャピラリとの配置上の干渉が起こりにくく、当該キャピラリの長さをできる限り長く設計しやすくするには、前記第1面板部又は前記第2面板部に対して垂直な方向から視て、前記キャピラリカラム第1仮想円上の第1有底穴、第2有底穴、及び、貫通孔と、前記キャピラリカラム第2仮想円上の貫通孔とが仮想正方形をなすように配置されているものであればよい。このようなものであれば仮想正方形内には貫通孔が存在せず、前記キャピラリを当該仮想正方形内の領域で蛇行させれば貫通孔との配置上の干渉を何ら気にする必要がなく、非常に設計のしやすいものとなる。
【0022】
さらに、プレート型キャピラリカラムと異なる形状の板をもう一種類だけ増やすことにより、弁等を用いなくてもより複雑な流路形状を形成可能とし、より並列、ハートカット、バックフラッシュ用の流路を簡単に形成できるようにするには、前述したプレート型キャピラリカラムと、前記プレート型キャピラリカラムに対して積層される分岐流路板と、を備えたキャピラリカラムユニットであり、前記分岐流路板が、互いに対向する第3面板部と第4面板部を有する平板と、前記第3面板部に開口するように形成された第3有底穴と、前記第4面板部に開口するように形成された第4有底穴と、前記第3面板部又は前記第4面板部のいずれか一方に開口する第5有底穴と、前記第3有底穴、前記第4有底穴、前記第5有底穴をそれぞれ接続するように前記平板内に形成された細管と、を有し、前記第2面板部と前記第4面板部とを合わせて、前記プレート型キャピラリカラムと前記分岐流路板とを積層した際に、前記第4有底穴が前記第2有底穴と連通するとともに、前記第5有底穴が前記貫通孔と連通するように配置されていることを特徴とするキャピラリカラムユニットであればよい。
【0023】
前記分岐流路板と、前記プレート型キャピラリユニットとを積層した際において、いずれかの部材を回転させるだけで、任意の貫通孔と有底穴との連通関係を切り替えることがしやすいようにするには、前記分岐流路板において、前記第3面板部又は前記第4面板部に対して垂直な方向から視て、前記キャピラリカラム第1仮想円と同半径の分岐流路板第1仮想円上に前記第4有底穴及び第5有底穴が形成されているとともに、前記分岐流路板第1仮想円上に前記第3面板部及び前記第4面板部を貫通する貫通穴が1又は複数形成されているものであればよい。
【0024】
外形が同一形状の前記プレート型キャピラリカラムと前記分岐流路板とを積層して複雑な流路を形成する際にその積層の仕方を簡便なものにできる第3有底穴の位置の具体例としては、前記分岐流路板において前記第3面板部又は前記第4面板部に対して垂直な方向から視て、前記第3有底穴が前記分岐流路板第1仮想円の仮想中心上にあるものが挙げられる。
【0025】
前記プレート型キャピラリカラムと前記分岐流路板により複雑な流路を形成する際にその積層方法等が容易になる前記第3有底穴の別の配置例としては、前記分岐流路板において前記第3面板部又は前記第4面板部に対して垂直な方向から視て、前記第3有底穴が前記分岐流路板第1仮想円上にあるものが挙げられる。
【0026】
ハートカットを行うためのような非常に複雑な流路を前記プレート型キャピラリカラムと前記分岐流路板とで作る場合において、その流路構成を容易にするには、前記分岐流路板において前記第3面板部又は前記第4面板部に対して垂直な方向から視て、前記分岐流路板第1仮想円と同心円となり、前記キャピラリカラム第2仮想円と同半径の分岐流路板第2仮想円上に前記第3面板部に開口するように設けられた第6有底穴と、前記第3面板部又は前記第4面板部のいずれか一方に開口する第7有底穴が設けられているものであればよい。
【0027】
特に一種類の部材のみを用意するだけで、キャピラリの長さを調節することができるキャピラリカラムユニットの具体的な実施の態様としては、プレート型キャピラリカラムが複数積層されたキャピラリカラムユニットであり、各プレート型キャピラリカラムが、第1面板部に対して第1面板部が接触する、又は、第2面板部に対して第2面板部が接触するとともに、前記第1有底穴に対しては前記第1有底穴が連通する、又は、前記第2有底穴に対しては前記第2有底穴が連通するように積層されているキャピラリカラムユニットが挙げられる。
【0028】
プレート型キャピラリカラム又はキャピラリカラムユニットを用いたクロマトグラフであれば、省スペースでクロマトグラフを形成することができるとともに、少ない部品種類数で、様々な種類のキャピラリカラムユニットを形成することができ、従来からある様々な種類の測定方法を実施する事が可能となる。
【発明の効果】
【0029】
このように本発明のプレート型キャピラリカラムによれば、1種類の形状を用意するだけで、各プレート型キャピラリカラムを交互に逆向きに積層していくことにより様々な長さのキャピラリを構成することができる。従って、測定対象に応じたキャピラリの長さに調節してクロマトグラフの分解能を向上させることができる。さらに、キャピラリの形状や長さ等を個々のプレート型キャピラリカラムで異ならせる必要がなく、1種類に限定することができるので、キャピラリに液相を塗布する等といった手間のかかる作業工程も1種類に限定することができ、製造コストを低減しやすい。また、このようなプレート型キャピラリカラムを用いたキャピラリカラムユニット、ガスクロマトグラフによれば、拡張性を容易に付加することができ、弁等を用いなくても複雑な形状の流路を形成することができ、ハートカットやバックフラッシュと等といった測定方法をプレート型キャピラリカラムを用いて実施する事が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の第1実施形態について各図を参照しながら説明する。
第1実施形態のガスクロマトグラフ300は、
図1に示すようにプレート型キャピラリカラム100を積層して形成され、キャピラリの少なくとも一部に液相が塗布されて固定相が形成されたキャピラリカラムユニット200と、1又は複数の成分を含む試料をキャリアガスとともに前記キャピラリカラムユニット200の内部流路へと導入する試料ガス導入機構201と、前記キャピラリカラムユニット200の内部流路の出口に設けられ、試料ガス中の各成分を検出する検出器202とから構成されるものである。そして、このガスクロマトグラフ300は、前記検出器202が、試料ガスが導入されてから試料中の各成分が検出されるまでにかかる時間である保持時間及び、保持時間に基づいて算出される保持比、相対指標等により試料中の各成分がどのような物質に該当するかを出力する出力部203をさらに備えたものである。
【0033】
前記キャピラリカラムユニット200は、複数の同形状のプレート型キャピラリカラム100を厚さ方向に積層するとともに、当該プレート型キャピラリカラム100の内部に形成されたキャピラリ6同士を連通させて構成したものである。
【0034】
前記プレート型キャピラリカラム100は、
図2(a)に示すように面板部が正方形状であり、全体として薄板形状をなしたものであり、互いに対向する第1面板部1と第2面板部2を有するプレートPと、前記プレートPの内部に形成されたキャピラリ6と、前記プレートPの各面板部1、2に対して垂直な方向に空けられた有底穴11,21及び貫通孔7を備えたものである。すなわち、前記キャピラリ6は、プレートP内に形成された流路であって、接続されている各有底穴11、21以外では外部に開口しないように形成したものである。従って、前記キャピラリ6は、前記各有底穴11、21に接続されている一端部と他端部以外では外気に接触しないように形成されており、例えば、その他の部材により蓋などをすることなく側面部の密閉が保たれるようにしてある。
【0035】
前記プレートPは、
図2(b)に示すように2枚の薄板を貼り合わせて形成してあるものであり、表面に溝が形成された第1プレート要素P1と、前記第1プレート要素P1の表面を覆うように貼り合わせられる第2プレート要素P2とから構成したものである。
【0036】
前記第1プレート要素P1は例えば、薄板の石英ガラスであって、エッチング等の加工方法により表面に微細な溝を形成してある。本実施形態では、表面に垂直な方向から視た場合に、正方形の中心点から正方形の四隅の一つへと広がっていくらせん状に溝を形成してある。ここで、図面において、らせんの巻き数は分かりやすさのために3巻き程度で表示しているが、より細密に溝を形成することで巻き数を多くしても構わない。そして、前記第1プレート要素P1と同じ形状の石英ガラスである第2プレート要素P2を各々が重なるように貼り付けることにより、前記溝の開口側を塞いで内部にキャピラリ6を有したプレート型キャピラリカラム100を構成してある。
【0037】
さらに、
図2(a)においてプレート型キャピラリカラム100の下面(第1プレート要素P1の裏面)に相当する第1面板部1には、その中心に第1有底穴11が前記キャピラリ6の一端部と接続されるように形成してある。この第1有底穴11は、
図3(a)に示しているように、第1プレート要素P1のみを貫通するように形成してあるものであり、第2プレート要素P2の中心には穴を形成しないことにより各プレートP要素を貼り合わせた状態で有底穴となるようにしてある。また、
図2に示すように、らせんを描くように形成されたキャピラリ6の中心側の一端部が第1有底穴11の側面に対して交差するように形成してある。加えて、前記第1プレート要素P1の四隅にも各々の中心軸をつなぐことで仮想正方形をなすように厚さ方向に貫通する貫通孔7の一部が形成してある。つまり、第1プレート要素P1には各面板部を貫通するように計5つの穴が形成してある。
【0038】
一方、前記第2プレート要素P2の裏面は前記第1プレート要素P1の表面に貼りあわされるとともに、その表面は前記プレート型キャピラリカラム100の上面を形成するものである。そして、
図2に示すようにこの第2プレート要素P2の四隅のうち3つには、前記第1プレート要素P1と同様の配置及び同じ直径で厚さ方向に貫通する貫通孔7の一部が形成してある。また、
図2の図面視において左上に形成してある1つの穴は、
図3(b)に示しているように前記らせん状のキャピラリ6の他端部である外側端と接続されるように配置してある。前記第1プレート要素P1には、
図2に示すように左上の隅には穴が形成されていないので、各プレート要素P1、P2が貼り合わされた状態で第2有底穴21が形成されるようにしてある。加えて、その他の貫通孔7の一部は、第1プレート要素P1の貫通孔7の一部と連通することで、プレート型キャピラリカラム100の貫通孔7を形成するようにしてある。
【0039】
従って、第1プレート要素P1と第2プレート要素P2を組み合わせたプレート型キャピラリカラム100の状態においては、
図2に示すように第1面板部1又は第2面板部2に対して垂直な方向から視た場合、第1面板部1の中心には第1有底穴11が形成されており、この第1有底穴11の中心軸を中心として、前記第2有底穴21の中心軸を結ぶ直線を半径とするキャピラリカラム第1仮想円C1上に、3つの貫通孔7が形成されることになる。また、別の見方をすると前記第2有底穴21及び貫通孔7の面板部に対する配置は、前記第1貫通孔7の中心軸を中心として、回転対称となるように配置してある。より具体的には、前記第2有底穴21及び各貫通孔7は、プレート型キャピラリカラム100を仮想中心である前記第1有底穴11の中心軸を中心として、90度の回転対称となるように配置してある。従って、一方のプレート型キャピラリカラム100を他方のプレート型キャピラリカラム100に対して90度回転させた場合には、前記第2有底穴21及び各貫通孔7の位置が合致することになる。なお、本実施形態では、仮想中心を中心として前記第2有底穴21及び各貫通孔7が、回転対称となるように配置してあるが、場合によっては回転対称に配置しなくてもよい。要するに、前記第2有底穴21及び各貫通孔7がキャピラリカラム第1仮想円C1上に配置されていればよい。このようなものであればプレート型キャピラリカラム100を積層し、仮想中心を中心として回転させれば、第2有底穴21及び各貫通孔7で連結したい穴同士を連結することができ、所望の流路を簡単に形成することができる。
【0040】
このように構成されたプレート型キャピラリカラム100のみを厚さ方向に積層したキャピラリカラムユニット200の使用例について
図4等を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては説明の便宜上、同形状のプレート型キャピラリカラム100であっても区別がつきやすいように、図面視において上側にあるものについてはtを、下側にあるものについてはbをさらに付している。しかしながら、付されている符号が異なっていていても、各プレート型キャピラリカラム100t、100bは、形状的には全く同じものである。
【0041】
図4に示すように、下側のプレート型キャピラリカラム100bのように、第1面板部1bを上向き、第2面板部2bを下向きにするとともに、第2有底穴21bを左上に配置した状態を基準状態として説明する。下側のプレート型キャピラリカラム100bに対して、上側のプレート型キャピラリカラム100tは、各面板部1t、2tの向きを逆向きにする、すなわち、第1面板部1tを下側、第2面板部2tを上側にするとともに、第2有底穴21tが同じく左上側に来るように第1有底穴11tを中心として回転させてある。これらの各プレート型キャピラリカラム100t、100bをプレートPt、Pbの辺同士が合致するように積層させることで、
図5(a)に示す流路概念図、
図5(b)に示す斜視図のようなキャピラリカラムユニット200を形成することができる。
【0042】
このようなキャピラリカラムユニット200を用いてガスクロマトグラフ300を構成した際の、ガスの流れについて説明する。試料ガス導入機構201により、上側のプレート型キャピラリカラム100tの第2有底穴21t内に試料をキャリアガスとともに導入されると、上側のプレート型キャピラリカラム100t内のキャピラリ6tを通過し、第1有底穴11tに到達する。その後、連通している下側のプレート型キャピラリカラム100bの第1有底穴11bへとガスは進行し、下側のプレート型キャピラリカラム100bのキャピラリ6bを通過し、第2有底穴21bへと到達する。そして、この第2有底穴21bから出たガスは、検出器202により検出される。
【0043】
このように第1実施形態のキャピラリユニット200を用いれば、プレートPの内部にキャピラリ6が形成されているとともに、そのキャピラリ6の各端部に接続される第1有底穴11と、第2有底穴21がそれぞれ第1面板部1と第2面板部2という逆向きの面にそれぞれ別々に開口しているので、プレート型キャピラリカラム100同士が同じ面で接触するように厚さ方向に積層していくことでキャピラリ6を連結して長さを調節することができる。言い換えると、キャピラリ6の端部に設けられた第1有底穴11と第2有底穴21が互いに異なる面板部に開口するようにしてあるので、プレート型キャピラリカラム100の面板部の向きを交互に替えながら積層するだけで、キャピラリ6の長さを延長する事が可能となっている。従って、従来のように2種類の形状の異なるプレート型キャピラリカラムを用いなくても1種類のプレート型キャピラリカラム100を製造しておくだけで、任意の長さのキャピラリ6を構成することが容易にできる。従って、測定対象に応じて適宜、キャピラリ6の長さを設定することができるので、クロマトグラフ300としての分解能を高めることも容易である。
【0044】
次に第2実施形態のキャピラリカラムユニット200及びクロマトグラフ300について説明する。なお、以下の説明では、プレート型キャピラリカラム100については、前記第1実施形態で説明したものを同じものを用いることを前提としている。また、対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0045】
第2実施形態のキャピラリカラムユニット200は、第1実施形態で説明したプレート型キャピラリカラム100と、
図6に示す分岐流路板101と、を備えたものである。
【0046】
前記分岐流路板101は、
図6(a)に示すように前記プレート型キャピラリカラム100と同形状のプレートPを用いて形成してあり、前記プレート型キャピラリカラム100において、各有底穴又は貫通孔7が形成してある位置には、同様に有底穴又は貫通孔を形成してある。以下では、各部材の区別がつきやすいように説明の便宜上、プレート型キャピラリカラム100におけるプレートP及びキャピラリ6は、分岐流路板101においては平板H及び細管8として記述している。
【0047】
前記分岐流路板101は、
図6(a)に示すように互いに対向する第3面板部3と第4面板部4を有する平板Hと、前記第3面板部3に開口するように形成された第3有底穴31と、前記第4面板部4に開口するように形成された第4有底穴41と、前記第3面板部3又は前記第4面板部4のいずれか一方に開口する第5有底穴51と、前記第3有底穴31、前記第4有底穴41、前記第5有底穴51をそれぞれ接続するように前記平板H内に形成された細管8と、を有するものである。
【0048】
この分岐流路板101も、面板部が正方形状の薄板形状をなすととともに、
図6(b)に示すように前記プレート型キャピラリカラム100と同様に2枚の厚さ方向に対して2枚に分割された平板要素H3、H4から構成してある。そして、一方の平板要素H3の表面に溝を形成し、他方の平板要素H4を重ね合わせて貼り合して、溝に蓋をすることで、内部に試料ガスやキャリアガスを流すための細管8を形成してある。なお、この細管8内には、液相が塗布されておらず、測定試料は通常の空間を流れるのと同等の速度で流れていくようにしてあり、保持時間等の測定値に大きく影響を与えるものではない。すなわち、クロマトグラフ300として使用する際に測定される保持時間等の測定値は、前記プレート型キャピラリカラム100のキャピラリ6により略決定されるように構成してある。
【0049】
分岐流路板101に設けられている各穴について説明すると、
図6(a)において上面に当たる第3面板部3に開口する第3有底穴31は、平板Hの中心を通るように形成してある。そして、平板Hの四隅には、第4有底穴41と、第5有底穴51、貫通孔7が正方形状をなすように形成してある。第2実施形態においては、第4有底穴41と第5有底穴51は対角線上に配置してあるとともに、第5有底穴51は前記第3面板部3にのみ開口するようにしてある。さらに、各有底穴を接続する細管8は、平板Hの対角線を結ぶように一直線上に形成してある。
【0050】
別の見方をすると、前記第3面板部3又は前記第4面板部4に対して垂直な方向から視て、
図6において上面に当たる第3面板部3に開口する第3有底穴31の中心軸を仮想中心とし、前記キャピラリカラム第1仮想円C1と同半径の分岐流路板第1仮想円CD1上に前記第4有底穴41及び第5有底穴51が形成されているとともに、前記分岐流路板第1仮想円CD1上に前記第3面板部3及び前記第4面板部4を貫通する貫通孔が2つ設けてある。これら2つの貫通孔9は、前記第4有底穴41及び前記第5有底穴51がなす対角線とは別の対角線をなすように配置してある。より厳密には、分岐流路板第1仮想円CD1の円周上に沿って、第4有底穴41、貫通孔9、第5有底穴51、貫通孔9の順で前記第3有底穴31を中心とした90度の回転対称となるように配置してある。
【0051】
以下においては、このような分岐流路板101を用いたキャピラリカラムユニット200について、各種測定方法毎に説明する。
【0053】
図7に示すキャピラリカラムユニット200の構成は、1つの試料導入口から導入された試料が、並列に設けられた2つの流路を別々に通った後に、それぞれ別の検出器202へと導出されるようにした並列の測定方法を実現するためのものである。例えば、各流路における固定相の種類を異ならせておくことにより、試料中の成分の特定を行いやすくすることができる。
【0054】
この並列の測定方法に用いられるキャピラリカラムユニット200は、分岐流路板101を1枚と、プレート型キャピラリカラム100を2枚用いて構成してあり、分岐流路板101を最上層に設けるとともに、プレート型キャピラリカラム100を2枚前記分岐流路板101の下側へ積層してある。
【0055】
図7において前記分岐流路板101は、第4面板部4が上側となるように配置してあり、前記第4有底穴41から試料ガスが導入されるようにしてある。また、
図7(a)及び(b)に示すように分岐流路板101の前記第3面板部3に中央部に形成されている第3有底穴31は、中層にあるプレート型キャピラリカラム100tの第1有底穴11tと連通するようにしてある。さらに、分岐流路板101の前記第3面板部3の隅に形成されている第5有底穴51は、中層にあるプレート型キャピラリカラム100tの貫通孔7tと連通するようにしてある。この第5有底穴51が連通する中層にあるプレート型キャピラリカラム100tの貫通孔7tは、さらに、最下層にあるプレート型キャピラリカラム100bの第2面板部2bの隅に形成されている第2有底穴21bと連通させてある。
【0056】
このように構成されたキャピラリカラムユニット200内における試料ガスの流れについて説明する。
【0057】
まず、分岐流路板101の第4有底穴41から導入された試料ガスは、細管8を通って、中央部にある第3有底穴31から中層へと流れるものと、隅にある第5有底穴51から最下層へと流れるように分岐する。
【0058】
前記第3有底穴31から中層へと入った試料ガスは、中層のプレート型キャピラリカラム100tのキャピラリ6tを中央端から外側端へと通過し、外側端にある第2有底穴21tから最下層のプレート型キャピラリカラム100bの貫通孔7bから第1検出器202へと流れる。
【0059】
一方、分岐流路板101の第5有底穴51から最下層へと流れた試料ガスは、最下層のプレート型キャピラリカラム100bにおいて、キャピラリ6bを外側端から中央端へと通過し、第1有底穴11bから第2検出器202へと流れる。
【0060】
このように、前記プレート型キャピラリカラム100と前記分岐流路板101の組み合わせにより試料ガスを同時に別々の流路で流すことができ、例えば固定相の性質の異なる流路で並列にクロマトグラフによる分析を行うことができる。
【0062】
次に、キャピラリ6内に貯まった残留成分を排出するためのバックフラッシュを行うことができるキャピラリカラムユニット200の構成について説明する。バックフラッシュ用の構成の一例としては、
図8に示すように上層から第2面板部2tを上向きにしたプレート型キャピラリカラム100t、第3面板部3b上向きにした分岐流路板101、第2面板部2bを上向きにしたプレート型キャピラリカラム100bの順で配置したものが挙げられる。
【0063】
そして、上層のプレート型キャピラリカラム100tと分岐流路板101は、第1有底穴11tと第3有底穴31を連通させてあるとともに、貫通孔7tと第5有底穴51も連通してある。分岐流路板101と、最下層のプレート型キャピラリカラム100bは、第3有底穴31と第2有底穴21bを連通させてある。
【0064】
さらに、上層のプレート型キャピラリカラム100tの第2有底穴21tから試料ガスを導入するととともに、分岐流路の第5有底穴51と連通する貫通孔7tからは圧力を調整可能な調圧ガスを導入するようにしてある。
【0065】
通常の測定時には、調圧ガスの圧力は試料ガスの圧力よりも小さく設定してあるので、
図8に示すように上層のプレート型キャピラリカラム100tのキャピラリ6tを通過した試料ガスは、分岐流路の第3有底穴31から第4有底穴41側へのみ細管8を通過して、最下層のプレート型キャピラリカラム100b内へと流れる。そして、最下層のプレート型キャピラリカラム100bの第1有底穴11bから検出器202へと試料ガスは到達することになる。
【0066】
一方、前記調圧ガスの圧力を高圧にした場合は、試料ガスは検出器202まで到達することはなく、
図9に示すように分岐流路板101の第5有底穴51から第3有底穴31へと調圧ガスが流れ、上層のプレート型キャピラリカラム100t内を調圧ガスが逆流することになる。このため、上層のプレート型キャピラリカラム100内に貯まっていた残留物等を試料ガス導入口である第2有底穴21tから排出することができる。
【0068】
最後に、1枚目のプレート型キャピラリカラム100tを通過した時点で分析を行うか、1枚目のプレート型キャピラリカラム100tを通過した後、さらに別のプレート型キャピラリカラム100bを通過したのちに分析を行うかを選択できるハートカット用のキャピラリカラムユニット200の構成について説明する。言い換えると、このハートカット用のキャピラリカラムユニット200は、測定時においてキャピラリカラムユニット200自体を組み替えることなく、キャピラリ6の長さを変更できるように構成したものである。
【0069】
このハートカット用のキャピラリカラムユニット200では、前記分岐流路板101の構成を並列やバックフラッシュの場合とは異ならせてある。より具体的には、前記分岐流路板101は、第3面板部3における第3有底穴31以外は、第4面板部4に開口する有底穴をその四隅に形成してある。すなわち、前述の第5有底穴51の開口方向を第3面板部3から第4面板部4に変更するとともに、2つの貫通孔7を第4面板部4に開口する有底の第1接続穴91と第2接続穴92に変更している。そして、第3有底穴31、第4有底穴41、第5有底穴51を結ぶ平板Hの対角線方向に延びる細管8は、Z字状に形成されており、第3有底穴31と第1接続穴91、第5有底穴51と第2接続穴92とを接続するように延伸してある。
【0070】
このような分岐流路板101を用いた上で、前記キャピラリカラムユニット200は、
図10に示すように上層から、第1面板部1tを下向きにしたプレート型キャピラリカラム100t、分岐流路板101、第1面板部1bを下向きにしたプレート型キャピラリカラム100bの順で並べて設けてある。
【0071】
上層のプレート型キャピラリカラム100tは、
図10(a)に示すように第1面板部1tを下向きに配置するとともに、第1有底穴11tと前記分岐流路板101の第3有底穴31とが連通するようにしてある。さらに前記分岐流路板101は、第4有底穴41と最下層のプレート型キャピラリカラム100bの貫通孔7bとを連通させるとともに、第5有底穴51と、最下層のプレート型キャピラリカラム100bの第2有底穴21bとを連通させてある。
【0072】
さらに、上層のプレート型キャピラリカラム100tの第2有底穴21tから試料ガスを導入するように構成するとともに、最下層のプレート型キャピラリカラム100bの貫通孔7bのうち分岐流路板101の第1接続穴91及び第2接続穴92に連通するものについては、第1調圧ガスと第2調圧ガスを導入可能に構成してある。
【0073】
ガスの流れについて説明すると、上層のプレート型キャピラリカラム100tに導入された試料ガスは、第1有底穴11tから分岐流路体の第3有底穴31へと流れ、細管8へと入っていく。ここで、第1調圧ガス及び第2調圧ガスの圧力が低い場合には、第3有底穴31から第4有底穴41及び第5有底穴51の両方に半分ずつ試料ガスが流れることになり、第3有底穴31を通過したガスは、第2検出器202へと到達するとともに、第5有底穴51を通過した試料ガスは、最下層のプレート型キャピラリカラム100bの内部を流れ、第1有底穴11bから第1検出器202へと到達する。すなわち、この場合、第2検出器202では1つのキャピラリ6を通過した試料ガスの成分分析が行われ、第1検出器202では2つのキャピラリ6を通過した試料ガスの成分分析が行われる。
【0074】
第1調圧ガスの圧力のみが高い場合には、第4有底穴41へは試料ガスが流れ込まないので、第5有底穴51を通過し、2つのキャピラリ6を通過した後、第1検出器202に到達する試料ガスのみを成分分析することができる。逆に第2調圧ガスの圧力のみが高い場合には、第5有底穴51へは試料ガスが流れ込まないので、第4有底穴41を通過し、1つのキャピラリ6のみを通過した後、第2検出器202に到達する試料ガスだけを成分分析することができる。このように、第1調圧ガス、第2調圧ガスの圧力を調節するだけで、適宜試料ガスの分析形態を変更する事が可能となる。このような流路構成を取れるので、各調圧ガスの圧力を測定中に調整することにより、試料ガスに含まれるある成分に関しては1つのキャピラリ6だけを通し、別の成分に関してはさらにもう一つのキャピラリ6を通すことができるようになる。
【0075】
さらに、キャピラリカラムユニットの第3実施形態について説明する。
【0076】
前記実施形態では、プレートPに形成された第1有底穴11を仮想中心として、第2有底穴21及び貫通孔7を形成してあったが、その他の配置であっても構わない。前記プレート型キャピラリカラム100の別の態様について
図11に示す。
図11に示すように、第3実施形態のプレート型キャピラリカラム100は、互いに対向する第1面板部1と第2面板部2を有するプレートPと、前記プレートPの内部に形成されたキャピラリ6と、前記キャピラリ6の一端部と接続され、前記第1面板部1に開口するように形成された第1有底穴11と、前記キャピラリ6の他端部と接続され、前記第2面板部2に開口するように形成された第2有底穴21と、を備え、前記第1面板部1又は前記第2面板部2に対して垂直な方向から視て、前記第1有底穴11及び前記第2有底穴22を通るキャピラリカラム第1仮想円C1上に前記第1面板部1及び前記第2面板部2を貫通する貫通穴7が1又は複数形成されていることを特徴とする。
【0077】
すなわち、プレートPにおいて、第1有底穴11及び第2有底穴22及び貫通孔7が同一のキャピラリカラム第1仮想円C1上に設けてあり、キャピラリカラム第1仮想円C1の仮想中心には穴を形成していない。すなわち、第1プレート要素P1及び第2プレート要素P2の中央部には貫通孔がなく、周辺部にのみ貫通孔が存在するので、各プレート要素P1及びP2を重ね合わせてプレートPとするのに周辺部を圧接するだけで容易に気密にして第1有底穴11、第2有底穴22からのリークを無くすことができる。逆にいうと、中央部に第1有底穴11がある場合、各プレート要素P1及びP2の接合の仕方について工夫し、リークがないように接合する手間に比べて、第3実施形態のように中央に各穴がない場合は接合がしやすくなり、プレート型キャピラリカラム100を製造しやすくなる。また、この実施形態では、キャピラリ6の形状についても前記実施形態とは異なる形状のものを一例として示している。
【0078】
このようなプレート型キャピラリカラム100であっても
図11(a)に示すように、プレート型キャピラリカラム100を仮想中心に対して90度ずつ回転させたものを積層していくことで、任意の長さに各キャピラリ6を連通させていくことができる。つまり、1種類のプレート型キャピラリカラム100を用意するだけで任意の長さのキャピラリ6を容易に形成することができる。
【0079】
さらに、
図11(b)に示すように前記実施形態とは別の形状の分岐流路板101を用意することで、例えば、バックフラッシュ用の複雑な流路をこのようなプレート型キャピラリカラム100でも形成することができる。より具体的には、前記分岐流路板101は、第3面板部3又は第4面板部4に対して垂直な方向から視た場合に、図面視において上面側にのみ開口する第3有底穴31、下面側にのみ開口する第4有底穴41、下面側にのみ開口する第5有底穴51、両面を貫通するように形成された貫通孔9が、同一の分岐流路板第1仮想円CD1の円周上に形成してある。そして、細管8については、第3有底穴31が角となるように、前記第4有底穴41、第5有底穴51を接続するように形成してある。
【0080】
そして、
図11(b)のキャピラリカラムユニット200は、上層のプレート型キャピラリカラム100tの第2有底穴21tと、分岐流路板101の第3有底穴31とを連通させるとともに、第5有底穴51と最下層のプレート型キャピラリカラム100bの第1有底穴11bを連通させるようにしてある。さらに、分岐流路板101の第4有底穴41と下層のプレート型キャピラリカラム100bの貫通孔7bとを連通させ、低圧又は高圧のガスを前記貫通孔7bから導入できるようにしてある。従って、
図8又は
図9で示したような前記実施形態で説明したバックフラッシュ等の測定方法に必要な複雑な流路を1種類の形状のプレート型キャピラリカラム100により形成する事が可能である。
【0081】
次にキャピラリカラムユニットの第4実施形態について説明する。
【0082】
第1実施形態から第3実施形態のプレート型キャピラリカラム100では、第1面板部1又は第2面板部2に対して垂直な方向から視た場合に、第2有底穴21を通るキャピラリカラム第1仮想円C1上にのみ、第1面板部1及び第2面板部2を貫通する貫通孔7が形成されていたが、第4実施形態ではさらに前記キャピラリカラム第1仮想円と同心円となるキャピラリカラム第2仮想円C2上にも貫通孔7が形成してある。
【0083】
すなわち、第4実施形態のキャピラリカラムユニットは、第3実施形態のようにキャピラリカラム第1仮想円C1の仮想中心に第1有底穴11が設けられていないプレート型キャピラリカラム100を用いている場合でも、ハートカット用の流路のような複雑な流路も容易に形成できるようにするための構成を備えたものである。
【0084】
より具体的には、
図12(a)に示すようにプレート型キャピラリカラム100において前記キャピラリカラム第2仮想円C2は前記キャピラリカラム第1仮想円C1よりも直径の小さいものであり、その円周上に4つの貫通孔7が形成してある。さらに、前記キャピラリカラム第2仮想円C2上の貫通孔7は前記キャピラリカラム第1仮想円C1上にある、第1有底穴11、第2有底穴12、及び貫通孔7と仮想正方形をなすように配置してある。言い換えると、正方形状に形成されている面板部においてキャピラリカラム第1仮想円C1上の各穴は四隅に配置されて仮想正方形の頂点をなすのに対して、前記キャピラリカラム第2仮想円C2上の各穴は、仮想正方形の各辺における中点をなすように配置されている。また、
図12(a)から明らかなように前記キャピラリカラム第2仮想円C2上に配置されている各穴についても仮想中心に対して回転対称となるように配置してある。
【0085】
さらに第4実施形態のプレート型キャピラリカラム100に対応して、分岐流路板101についても前記キャピラリカラム第2仮想円C2に対応する分岐流路板第2仮想円CD2上に有底穴及び貫通孔を設けてある。
【0086】
より具体的には第4実施形態の分岐流路板101は、第3面板部3、第4面板部4に対して垂直な方向から視た場合において、
図12(a)に示すように分岐流路板第1仮想円CD1上には前記実施形態と同様に第3有底穴31、第4有底穴41、第5有底穴51、貫通孔9が設けてある。さらに、前記分岐流路板第2仮想円CD2上には、前記第3面板部3に開口するように設けられた第6有底穴h1と、前記第3面板部3に開口する第7有底穴h2が設けてある。第4実施形態では前記第6有底穴h1は仮想正方形の上辺における中点をなし、前記第7有底穴h2は仮想正方形の下辺の中点をなしている。さらに分岐流路板101の内部の細管8は、仮想正方形の左上頂点をなす前記第4有底穴41と前記第6有底穴h1とを接続し、仮想正方形の右上頂点をなす前記第5有底穴51と前記第7有底穴h2とを接続してある。さらに、前記細管8は仮想正方形の左下頂点をなす第3有底穴31から出発して途中で分岐して、前記第6有底穴h1及び前記第7有底穴h2にそれぞれ接続してある。
【0087】
このように構成されたプレート型キャピラリカラム100と分岐流路板101とを積層することで、第4実施形態ではハートカット用の流路を形成することができる。以下では第4実施形態におけるハートカット用の流路構成について詳述する。
【0088】
図12(b)に示すように、キャピラリカラムユニット200は上層から第1面板部1tを上向きとしたプレート型キャピラリカラム100t、第3面板部3を上向きとした分岐流路板101、第1面板部1bを上向きとしたプレート型キャピラリカラム100bの順で並べて設けてある。
【0089】
上層のプレート型キャピラリカラム100tの第1有底穴11tからは試料が導入されるようにしてあり、キャピラリ6tを通った試料ガスは第2有底穴21tから連結されている分岐流路板101の第3有底穴31へと流れていく。分岐流路板101の第6有底穴h1は、上層のプレート型キャピラリカラム100tにおいて仮想正方形の上辺中点をなす、貫通孔7tと連通してある。また、第7有底穴h2は上層のプレート型キャピラリカラム100tにおいて仮想正方形の下辺中点をなす貫通孔7tと連通してある。
【0090】
各貫通孔7tにはそれぞれ試料とは異なるガス1及びガス2が導入してあり、これらのガスの圧力を調整することで、前記第3有底穴31を通過した試料ガスが細管8を通って、第4有底穴41又は第5有底穴51のいずれに到達するかを切り替えることができる。
【0091】
前記第6有底穴h1に導入されるガス1の圧力を小さくし、前記第7有底穴h2に導入されるガス2の圧力を大きくした場合、前記第4有底穴41から下層のプレート型キャピラリカラム100bにおいて連結されている第1有底穴11bへと試料ガスは流れる。その後、試料ガスはキャピラリ6bを通過して、第2有底穴21bから第1検出器へと至り、分析が行われる。
【0092】
逆に前記第6有底穴h1に導入されるガス1の圧力を大きくし、前記第7有底穴h2に導入されるガス2の圧力を小さくした場合は、前記第5有底穴51から下層のプレート型キャピラリカラム100bにおいて連結されている貫通孔7bへと流れ、第2検出器へと至り分析が行われる。
【0093】
このようにガス1及びガス2の圧力を調整することで、試料ガスが1本のキャピラリ6を通過した後に分析を行うか、2本のキャピラリを通過した後に分析を行うかを選択できるハートカットによる分析を実現することができる。
【0094】
次に第4実施形態のプレート型キャピラリカラム100を用いてその他の流路構成も自由に取り得ることを示す。
【0095】
図11や第3実施形態において示したのと同様に第4実施形態のプレート型キャピラリカラム100についても
図13(a)に示すように、4枚のプレート型キャピラリカラム100を用いて、各々を90度ずつ回転させながら、第1有底穴11と第2有底穴12とを接続し続けていくことにより、任意の長さのキャピラリ6を形成することができる。
【0096】
また、
図11及び第3実施形態において示した分岐流路板101を用いることにより、
図13(b)に示すようなバックフラッシュ用の流路構成や、
図13(c)に示すような並列用の流路構成を実現することができる。
【0097】
これは、第4実施形態におけるキャピラリカラム第1仮想円C1上に配置されている第1有底穴11、第2有底穴21、貫通孔7の配置構成が第3実施形態のプレート型キャピラリカラム100と同じであることと、並列、バックフラッシュに関してはキャピラリカラム第2仮想円C2上の穴を用いなくてもよいことを利用している。
【0098】
さらに第4実施形態のプレート型キャピラリカラム100に対応する分岐流路板101の別の実施形態について説明する。
【0099】
分岐流路板101は前述したものに限られず、
図14(b)に示すように仮想正方形の右下頂点をなすように第5有底穴51があり、第7有底穴h2と第5有底穴51とを細管8で接続するようにしたものであっても構わない。
【0100】
このような
図14(a)に示した分岐流路板101を用いても
図12(b)に示したのと同様に各機器を接続することによって、
図14(b)に示すようなハートカット用の流路構成を実現することができる。
なお、第4実施形態における変形例について説明すると、プレート型キャピラリカラム100のキャピラリカラム第2仮想円C2上にある貫通孔7については、必ずしもキャピラリカラム第1仮想円C1上にある各穴と仮想正方形をなし、その中点上に配置される必要はなく、キャピラリカラム第2仮想円C2上のその他の点に配置されていても構わない。また、分岐流路板101の分岐流路板第2仮想円CD2上にある各穴についても同様に分岐流路板第1仮想円CD1上の各穴とともに仮想正方形をなす位置以外の点に配置されていても構わない。
【0101】
さらに第5実施形態のプレート型キャピラリカラム100及び分岐流路板101について説明する。
【0102】
第5実施形態は第4実施形態と同様にプレート型キャピラリカラム100がキャピラリカラム第2仮想円C2上に貫通孔7を備えている点では共通しているが、
図15(a)に示すようにキャピラリカラム第2仮想円C2の半径がキャピラリカラム第1仮想円C1よりも小さく形成してある点が異なる。また、分岐流路板101においても同様に分岐流路板第2仮想円CD2の半径が分岐流路板第1仮想円CD1よりも小さく形成してあり、さらに第7有底穴にh2ついては第3面板部3ではなく、第4面板部4にのみ開口するように構成してある。また、分岐流路板第2仮想円CD2上には、貫通孔9を設けていない。
【0103】
このようなものであっても、
図15(b)に示すように上層のプレート型キャピラリカラム100tからはガス1を導入し、下層のプレート型キャピラリカラム100bからはガス2を導入しうるように
図12(b)等と同様の考え方で積層することによりハートカット用の流路構成を実現したキャピラリカラムユニット200とすることができる。
なお、第5実施形態の変形例について説明すると、キャピラリカラム第1仮想円C1とキャピラリカラム第2仮想円C2上の各穴が一直線上に並んでおらず、キャピラリカラム第2仮想円C2のその他の位置に貫通孔7が形成されていても構わない。分岐流路板101についても同様に各穴が一直線上に並んでおらず、分岐流路板第2仮想円CD2上のその他の位置に配置されているものであっても構わない。
【0105】
前記実施形態では、プレート型キャピラリカラムのキャピラリの形状はらせん型等であったが、図示した以外の形状であっても構わない。また、各面板部を貫通する貫通孔の個数は4つに限定されるものではなく、1つであっても構わないし、更に複数であっても構わない。要するに、前記第1有底穴を仮想中心とした仮想円上又は前記第1有底穴以外の点を仮想中心とした仮想円上に配置されていればよい。また、第1有底穴を仮想中心とする際には、第1有底穴の中心軸と必ずしも合致している必要は無い。例えば、第1有底穴内にいずれかに仮想中心が設定されていたとしても、各プレート型キャピラリカラムを組み合わせた際に、第2有底穴と貫通孔が連通できるのであれば多少ずれていても構わない。加えて、第1有底穴ではなく別の場所を仮想中心とする仮想円上に前記第1有底穴、第2有底穴、貫通孔が配置されている場合においても、各プレート型キャピラリカラムの仮想中心同士が多少ずれていても積層した際に各穴が多少ずれたとしても連通できる程度であれば問題はない。
【0106】
前記プレート型キャピラリカラムは2枚のプレート要素を用いて形成していたが、さらに複数のプレート要素を用いて構成しても構わない。すなわち、前記実施形態で示したプレート型キャピラリカラムについて全ての穴を貫通孔で形成しておき、さらに、その外側から、カバーガラスを貼り付けることにより、第1有底穴と第2有底穴をそれぞれ第1面板部、第2面板部にのみ開口するようにしても構わない。言い換えると本発明のプレート型キャピラリカラムにおける有底穴の概念は、もともと底があるように形成したものだけに限られず、まず、貫通孔を形成しておき、その後一方の開口を塞いだものを含むものである。
【0107】
逆に1枚のプレートにより内部にキャピラリを形成したものであっても構わない。例えば、このような1枚のプレートの内部にキャピラリを形成する方法としては、X軸方向に照射位置を変更可能な第1レーザと、Y軸方向に照射位置を変更可能な第2レーザにより、各レーザが交差する点でプレートを加工可能なエネルギーに設定しておき、各レーザの照射位置を適宜変更しながら、プレートの内部にキャピラリを掘削していけばよい。
【0108】
キャピラリカラムユニットとしては、分岐流路板以外に、ヒータを内蔵したヒータ板等をプレート型キャピラリカラムの間に挟むものであってもよい。このようなものであれば、キャピラリカラムとしての機能を発揮するのに最適な温度にキャピラリ内の温度を保つことができる。また、前記各実施形態ではガスクロマトグラフを例として説明を行っていたが、液体クロマトグラフであっても同様に本発明は機能を発揮するものである。
【0109】
また、同一形状のプレート型キャピラリカラムだけを用意し、各プレート型キャピラリカラムの面を交互に反転させながら積層していくだけで、任意の長さのキャピラリを形成できるようにするには、前記プレート型キャピラリカラムが、互いに対向する第1面板部と第2面板部を有するプレートと、前記プレートの内部に形成されたキャピラリと、前記キャピラリの一端部と接続され、前記第1面板部に開口するように形成された第1有底穴と、前記キャピラリの他端部と接続され、前記第2面板部に開口するように形成された第2有底穴と、を備えていることを特徴とするものであればよい。このように、第1有底穴と第2有底穴がそれぞれ別の面に開口するようにし、それぞれの有底穴を接続するように前記プレートの内部にキャピラリを形成しておき、各プレート型キャピラリカラムの第1有底穴と第1有底穴を接続し、第2有底穴と第2有底穴とを連結するだけで、キャピラリを延長し、測定に適した長さとすることができる。さらに、前記キャピラリはプレートの内部に形成されているので、従来のようにプレートの表面に開口してキャピラリが形成される場合には、積層する際にキャピラリ内の気密を保てるようにキャピラリが形成されていない面でキャピラリの開口部を塞ぐ必要がない。つまり、本発明のプレート型キャピラリカラムにはこのような特徴があるため、従来技術のようにプレート型キャピラリカラムに形成され、キャピラリに接続される有底穴等の向きを交互に変更し、2種類以上の形状のプレート型キャピラリカラムを用意する必要がなく、形状を1種類のみに限定することができ、製造コストを低減できる。
【0110】
前記各実施形態ではキャピラリカラム第1仮想円の半径はキャピラリカラム第2仮想円の半径以上であったが、例えばこの関係が逆転したものであっても構わない。また、分岐流路板第1仮想円及び分岐流路板第2仮想円についても同様である。
【0111】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、様々な変形や実施形態の組み合わせを行っても構わない。