【0024】
このようなものであれば、熱履歴等の調整のため、ヒーター4を昇降させる際には、ヒーター4とシールド5を一緒に昇降させることができる。従って、
図1のように、ヒーター4の位置を低くし、引上げ中のシリコン単結晶が冷えやすい状態とする場合、シールド5も一緒に低い位置にできる。そのため、本発明のシリコン単結晶引上装置は、従来のシリコン単結晶引上装置と比べて冷却効率が良く、シリコン単結晶の引上速度をより速くすることができるものとなる。また、
図2に示すようにヒーター4の位置を高くし、ヒーター4の発熱中心を融液の上部に位置させる場合、シールド5も一緒に高い位置にできる。そのため、本発明のシリコン単結晶引上装置は、従来のシリコン単結晶引上装置と比べて、発熱中心をより高い位置にでき、引上げ中のシリコン単結晶の酸素濃度をより下げることができるものとなる。しかも、ヒーターとシールドの上下動の間、常にヒーターとシールドの高さの位置関係をキープできるので、思わぬ結晶品質の悪化や単結晶化率の低下等の問題が生じることもない。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
図1に示すような、本発明のシリコン単結晶引上装置1を用いて、シリコン単結晶の引上げを行った。
まず、直径22インチ(55.88cm)の石英ルツボ内に100kgのシリコン多結晶原料を充填し、ヒーター4で加熱し溶融した。その後、
図1に示すように、ヒーター4の上端位置をルツボ3の上端位置よりも低くなるように支持部材6を下降させ、ヒーター4とシールド5の高さ位置を調整して、シリコン単結晶を直径205mm狙いで引上げた。
その結果、シリコン単結晶の直胴部を引き上げる際の平均引上げ速度を1.4mm/minとして引き上げることができた。また、引上げ後の直胴中の酸素濃度は約19ppma±1.2ppma(JEIDA)であった。
このように、ヒーターとシールドを一緒に下降させることで、成長中のシリコン単結晶を効率よく冷却することができ、後述する比較例1よりも平均引上げ速度を大きくできることが確認できた。また、引上げ後の直胴中の酸素濃度を後述する比較例1と同等の範囲であった。
【0030】
(比較例1)
図3に示すような、ヒーター104が昇降可能で、シールド105は昇降できないシリコン単結晶引上装置101を使用したこと以外、実施例1と同様な条件でシリコン単結晶の引上げを行った。このとき、
図3に示すように、ヒーター104の上端位置をルツボ103の上端位置よりも低くなるようにしたが、シールド105は動かないためヒーター104に対してシールド105の位置は高くなっていた。
その結果、シリコン単結晶の直胴部を引き上げる際の平均引上げ速度は1.1mm/minとなり実施例1よりも平均引上げ速度は小さくなってしまった。また、引上げ後の直胴中の酸素濃度がほぼ19ppma±1.2ppmaであった。
これは、シールドの位置を固定したままヒーターの位置だけを変えヒーターに対してシールドの位置が高くなったため、シールドの保温効果によりシリコン単結晶を効率よく冷却できなかったことが原因と考えられる。
【0031】
(実施例2)
ヒーター4とシールド5を一緒に上昇させて、
図2に示すようにヒーター4の上端位置をルツボ3の上端位置よりも高くしたこと以外、実施例1と同様な条件でシリコン単結晶の引上げを行った。
その結果、シリコン単結晶の直胴部を引き上げる際の平均引上げ速度は1.0mm/minとなった。また、引上げ後の直胴中の酸素濃度は約15ppma±1.2ppmaとなり後述する比較例2よりも酸素濃度を低くすることができた。
このように、ヒーター4とシールド5を一緒に上昇させることで、シールド5も一緒に高い位置にでき、ヒーター4の発熱中心をより高い位置にできるため、後述する比較例2よりも酸素濃度を下げることができた。また、平均引上げ速度を後述する比較例2と同等の範囲であった。
【0032】
(比較例2)
図4に示すような、ヒーター104が昇降可能で、シールド105は昇降できないシリコン単結晶引上装置101を使用したこと以外、実施例2と同様な条件でシリコン単結晶の引上げを行った。このとき、
図4に示すように、ヒーター104の上端位置をルツボ103の上端位置よりも高くなるようにしたが、シールド105は動かないためヒーター104に対してシールド105の位置は、実施例2の場合(
図2の場合)に比べて低くなっていた。
その結果、シリコン単結晶の直胴部を引き上げる際の平均引上げ速度は1.0mm/minとなった。また、引上げ後の直胴中の酸素濃度がほぼ16ppma±1.2ppmaとなり実施例2よりも酸素濃度は高くなってしまった。
これは、ヒーター104に対してシールド105の位置が低く、シールドの保温効果が低いため、融液の上部を十分に加熱できず、シリコン単結晶の酸素濃度を十分に下げることができなかったことが原因と考えられる。
【0033】
以上の結果から、本発明のシリコン単結晶引上装置であれば、ヒーターとシールドを一緒に昇降させることで、ヒーターとシールドの位置を適切な位置に維持できるため、シリコン単結晶の引上げ速度を向上させたり、酸素濃度を低減させたりできることが確認された。また、実施例1、2では、一緒に昇降可能なヒーター4とシールド5を、シリコン単結晶の引上げの最中には昇降させなかったが、引上げ中のシリコン単結晶の状態にあわせて、適宜ヒーター4とシールド5の高さ位置を変更して調整することで、所望の引上げ速度や酸素濃度のシリコン単結晶を得ることができる。
【0034】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。