特許第5945971号(P5945971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945971
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】シリコン単結晶引上装置
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20160621BHJP
   C30B 15/14 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   C30B29/06 502E
   C30B15/14
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-223999(P2013-223999)
(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公開番号】特開2015-86088(P2015-86088A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2015年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】竹安 志信
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 淳
【審査官】 國方 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−293390(JP,A)
【文献】 特開2002−326888(JP,A)
【文献】 特開平07−069778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を収容するルツボと、該原料を加熱して原料融液にするヒーターを格納するメインチャンバと、前記ヒーターと前記メインチャンバとの間に配置され、前記ヒーターからの輻射熱を遮断するシールドとを具備するチョクラルスキー法によるシリコン単結晶引上装置であって、
前記ヒーター及び前記シールドを下方から支持する支持部材を有し、前記支持部材が昇降可能であることで、前記ヒーターと前記シールドとが一緒に昇降可能なものであり、前記支持部材は、前記ヒーターに電流を通電する昇降可能な電極と、該電極の上部に固定されたクランプから成り、前記ヒーターは、前記ヒーターの足部のプラグが前記クランプの上面に挿入されることで、前記クランプに固定され支持されており、前記シールドは、前記クランプの上面に載置された絶縁物と、該絶縁物の上部に載置されたロアーシールドとを介して前記クランプに固定され支持されたものであり、前記電極が昇降可能であることで、前記ヒーターと前記シールドとが一緒に昇降可能なものであることを特徴とするシリコン単結晶引上装置。
【請求項2】
前記絶縁物が石英製又はアルミナ製であることを特徴とする請求項に記載のシリコン単結晶引上装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CZ法(チョクラルスキー法)によって、シリコン融液からシリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶引上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン単結晶は主としてCZ法によって製造されている。CZ法においては、まず、石英ガラスルツボ内にシリコン多結晶原料を入れ、黒鉛製ヒーターによって加熱して原料を溶融する。その融液に上軸の下端に取り付けられた種結晶を浸漬し、上軸を回転させながら、低速で引き上げることで、シリコン単結晶を成長させている。このようにシリコン単結晶を成長させる装置がシリコン単結晶引上装置である。
【0003】
このシリコン単結晶引上装置では、石英ルツボ内の融液の液面がシリコン単結晶の引上げと共に低下するので、融液面を一定の高さ位置に保つために融液面の低下分だけルツボを上昇させる。また、一定の直径のシリコン単結晶を引き上げるには、引上げ中の直径を測定しながら、直径が一定となるようにシリコン単結晶の引上げ速度と融液温度を制御し、引上げ速度に対して一定の比率でルツボを上昇させる必要がある。
【0004】
また、従来の単結晶引上装置では、ヒーターが固定されており、シリコン単結晶の引上げ中に移動しないため、引上げの進行と共にシリコン単結晶の酸素濃度が低下する。この酸素濃度の低下を抑制するためにルツボの回転速度を上昇させるが、これによりシリコン単結晶断面内の半径方向の酸素濃度分布特性が悪化する傾向があった。そこで、特許文献1に記載の単結晶引上装置では、ルツボだけで無く、ヒーターも上下に移動できる単結晶引上装置とすることで、単結晶の軸方向の酸素濃度分布特性を改善している。
【0005】
特許文献2に記載のシリコン単結晶引上装置においては、シールド(保温筒部)を昇降できる移動機構を備え、シリコン単結晶の引上げが終了した後、シールドを上昇させ、シールドの内側に位置していたシールドの下部領域を水冷チャンバに対して露出させ、水冷チャンバ内を効率良く冷却している。このように、チャンバの冷却に要する時間を短縮し、生産効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−5394号公報
【特許文献2】特開2012−240861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した単結晶引上装置では、ルツボとヒーターが昇降可能、またはルツボとシールドが昇降可能となっているが、ヒーターとシールドの両方が昇降可能にはなっていない。そのため、融液面の位置を一定の高さ位置に保ちながらシリコン単結晶を引き上げる際、ルツボに対してヒーター位置だけを変える、または、シールドの位置だけを変えることはできても、ヒーターとシールドの両方の位置を変えることはできなかった。
【0008】
また、シリコン単結晶を引き上げる際には、融液面の位置に対してヒーターの位置を変えることで、引上げ中のシリコン単結晶の酸素濃度を制御したり、シリコン単結晶の熱履歴を調整したりする。このとき、シールドの位置を固定したままヒーターの位置だけを変えて、ヒーターに対してシールドの位置が高くなると、シールドの保温効果が高くなりシリコン単結晶を効率よく冷却できず、引上げ速度を十分に高めることができない。また、ヒーターに対してシールドの位置が低くなると、シールドの保温効果が低いため、融液の上部を十分に加熱できず、シリコン単結晶の酸素濃度を十分に下げることができない等の問題があった。
【0009】
尚、ヒーターの位置を固定したままでシールドの位置だけを昇降する装置では、ヒーターの発熱中心の位置が変わらないため、引上げ中のシリコン単結晶の酸素濃度を制御したり、シリコン単結晶の熱履歴を調整したりすることができなかった。
【0010】
これらの問題を解決するために、ルツボとヒーターが昇降するだけで無く、シールドも昇降する機構をシリコン単結晶引上装置に備えようとすると、構造が極めて複雑になるため、コストが高くなり、更に、シリコン単結晶引上装置が故障しやすくなる等の問題が生じた。
【0011】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、シリコン単結晶の熱履歴の調節をしつつ、引上げ速度の向上や酸素濃度の低減を容易にできるシリコン単結晶引上装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明によれば、原料を収容するルツボと、該原料を加熱して原料融液にするヒーターを格納するメインチャンバと、前記ヒーターと前記メインチャンバとの間に配置され、前記ヒーターからの輻射熱を遮断するシールドとを具備するチョクラルスキー法によるシリコン単結晶引上装置であって、前記ヒーター及び前記シールドを下方から支持する支持部材を有し、前記支持部材が昇降可能であることで、前記ヒーターと前記シールドとが一緒に昇降可能なものであることを特徴とするシリコン単結晶引上装置を提供する。
【0013】
このようなものであれば、ヒーターとシールドを一緒に昇降することができるため、ヒーターの位置を低くして、引上げ中のシリコン単結晶が冷えやすい状態とする場合に、シールドも一緒に低い位置にでき、従来の装置と比べて、シリコン単結晶がより冷えやすい状態とすることができ、引上速度をより速くすることができる。また、ヒーター位置を高くし、ヒーターの発熱中心を融液の上部に位置させる場合、シールドも一緒に高い位置にでき、従来の装置と比べて、発熱中心をより高い位置にでき、引上げ中のシリコン単結晶の酸素濃度をより低減することができる。また、支持部材の昇降だけで、ヒーター及びシールドを昇降できるので機構を簡単にすることができる。
【0014】
このとき、前記支持部材は、前記ヒーターに電流を通電する昇降可能な電極と、該電極の上部に固定されたクランプから成り、前記ヒーターは、前記ヒーターの足部のプラグが前記クランプの上面に挿入されることで、前記クランプに固定され支持されており、前記シールドは、前記クランプの上面に嵌め込まれた絶縁物と、該絶縁物の上部に嵌め込まれたロアーシールドとを介して前記クランプに固定され支持されたものであり、前記電極が昇降可能であることで、前記ヒーターと前記シールドとが一緒に昇降可能なものとすることができる。
【0015】
このようなものであれば、電極の昇降機構のみでヒーターとシールドを一緒に昇降することができ、電極の昇降機構以外にシールド用の昇降機構を別途新たに設ける必要が無い。そして、炉内部品であるクランプ、ロアーシールド、絶縁物等を組み合わせる簡単な構造とすることで、ヒーターとシールドを一緒に昇降できるシリコン単結晶引上装置を低コストで容易に導入することができる。更に、構造が簡単なため故障が少ないものとなる。
【0016】
またこのとき、前記絶縁物は石英製又はアルミナ製のものとすることができる。
このようなものであれば、シリコン単結晶の引上げ中、クランプが高温となっても絶縁物が損耗することが無い。また、ヒーターに大電流が通電してもロアーシールド及びシールドは電気的に絶縁された状態を維持できるものとなる。その結果、シリコン単結晶引上装置の故障の発生をより少なくすることができるものとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のシリコン単結晶引上装置であれば、装置構成を複雑化させることなく、シリコン単結晶の熱履歴の調節や、引上げ速度の向上、酸素濃度の低減を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のシリコン単結晶引上装置の一例を示した概略図である。
図2】本発明のシリコン単結晶引上装置のヒーター位置を変更したときの概略図である。
図3】比較例1において使用した従来のシリコン単結晶引上装置を示した概略図である。
図4】比較例2において使用した従来のシリコン単結晶引上装置を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
シリコン単結晶引上装置において、ヒーターとシールドの位置関係が当初の位置に対して互いに異なる高さ位置となると、成長させるシリコン単結晶の引上げ速度の向上又は酸素濃度の抑制が十分にできないという問題があった。また、ヒーターとシールドが、どちらも昇降可能なシリコン単結晶引上装置は、構造が極めて複雑になるため導入コストが高くなり、更に、シリコン単結晶引上装置が故障しやすくなる等の問題が生じた。
【0020】
そこで、本発明者等はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、ヒーターとシールドを昇降可能な1つの支持部材で支持し、ヒーターとシールドが一緒に昇降可能とすれば、両者の高さの位置関係を維持しつつ、両方とも昇降することで上記問題を解決できることに想到し、本発明を完成させた。
【0021】
以下、本発明のシリコン単結晶引上装置を、図1、2を参照して説明する。
図1に示すように、本発明のシリコン単結晶引上装置1は、中空円筒状のチャンバ2で外観を構成し、チャンバ2は下部円筒をなすメインチャンバ2aと、メインチャンバ2aに連接固定された上部円筒をなすプルチャンバ2bとから構成される。また、メインチャンバ2aの天井部から、シリコン単結晶を導通するための開口部を有する円筒状の整流筒14が下方に延設されている。
【0022】
中空円筒状のチャンバ2の中心部にはルツボ3が配設され、このルツボは二重構造であり、石英ルツボ3aと、石英ルツボ3aの外側を保持すべく適合された黒鉛ルツボ3bとから構成されている。また、ルツボ3の下方には、ルツボ3を支持し、回転させるためのペディスタル13が設けられている。尚、このペディスタル13をシリコン単結晶の引上げ中に昇降させることで、ルツボ3を昇降させることができる。
【0023】
二重構造からなるルツボ3の外側には黒鉛製のヒーター4が配設され、ヒーター4の外側周辺には断熱材のシールド5が同心円状に配設される。本発明のシリコン単結晶引上装置においては、ヒーター4及びシールド5は、上下に昇降可能な支持部材6に支持されている。この支持部材6を昇降することで、ヒーター4とシールド5とが一緒に昇降可能なものとなっている。
【0024】
このようなものであれば、熱履歴等の調整のため、ヒーター4を昇降させる際には、ヒーター4とシールド5を一緒に昇降させることができる。従って、図1のように、ヒーター4の位置を低くし、引上げ中のシリコン単結晶が冷えやすい状態とする場合、シールド5も一緒に低い位置にできる。そのため、本発明のシリコン単結晶引上装置は、従来のシリコン単結晶引上装置と比べて冷却効率が良く、シリコン単結晶の引上速度をより速くすることができるものとなる。また、図2に示すようにヒーター4の位置を高くし、ヒーター4の発熱中心を融液の上部に位置させる場合、シールド5も一緒に高い位置にできる。そのため、本発明のシリコン単結晶引上装置は、従来のシリコン単結晶引上装置と比べて、発熱中心をより高い位置にでき、引上げ中のシリコン単結晶の酸素濃度をより下げることができるものとなる。しかも、ヒーターとシールドの上下動の間、常にヒーターとシールドの高さの位置関係をキープできるので、思わぬ結晶品質の悪化や単結晶化率の低下等の問題が生じることもない。
【0025】
ヒーター及びシールドを下方から支持する支持部材の構造としては特に限定されないが、図1のように、支持部材6はヒーター4に電流を通電する昇降可能な電極7と、黒鉛製のクランプ8から成ることが好ましい。電極7は、水冷された銅電極7bと、銅電極7bにねじ込み固定された黒鉛電極7aから構成されている。この電極7は昇降機構を有しており、これにより電極7は昇降可能となっている。クランプ8は、黒鉛電極7aにクランプボルト9で固定されおり、クランプ8の上面にヒーター4の足部のプラグ10が挿入されている。このようにして、ヒーター4がクランプ8の上面に固定され支持されている。また、クランプ8の上面に円形状またはリング状の絶縁物11が嵌め込まれ、その絶縁物11の上部にロアーシールド12が嵌め込まれている。そして、絶縁物11と、ロアーシールド12とを介してクランプ8にシールド5が固定されている。上記のような構造を持つ支持部材6が、電極7を昇降させることによりヒーター4とシールド5が一緒に昇降することが好ましい。
【0026】
このようなものであれば、既存の電極7の昇降機構のみでヒーター4とシールド5を一緒に昇降させることができ、電極7の昇降機構以外にシールド用等の別の昇降機構を新たに設ける必要が無い。更に、炉内部品であるクランプ8、ロアーシールド12、絶縁物11等を上記したように組み合わせる簡単な構造とすることで、ヒーター4とシールド5を一緒に昇降できるシリコン単結晶引上装置を低コストで容易に導入することができる。そして、その構造も簡単であるため、故障の発生を少なくすることができるものとなる。
【0027】
またこのとき、絶縁物11は石英製又はアルミナ製のものとすることができる。
このようなものであれば、シリコン単結晶の引上げ中、クランプ8が高温となっても絶縁物11が損耗することが無い。また、ヒーター4に大電流が通電してもロアーシールド12及びシールド5は電気的に絶縁された状態を維持することができる。その結果、シリコン単結晶引上装置の故障の発生をより少なくすることができるものとなる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
図1に示すような、本発明のシリコン単結晶引上装置1を用いて、シリコン単結晶の引上げを行った。
まず、直径22インチ(55.88cm)の石英ルツボ内に100kgのシリコン多結晶原料を充填し、ヒーター4で加熱し溶融した。その後、図1に示すように、ヒーター4の上端位置をルツボ3の上端位置よりも低くなるように支持部材6を下降させ、ヒーター4とシールド5の高さ位置を調整して、シリコン単結晶を直径205mm狙いで引上げた。
その結果、シリコン単結晶の直胴部を引き上げる際の平均引上げ速度を1.4mm/minとして引き上げることができた。また、引上げ後の直胴中の酸素濃度は約19ppma±1.2ppma(JEIDA)であった。
このように、ヒーターとシールドを一緒に下降させることで、成長中のシリコン単結晶を効率よく冷却することができ、後述する比較例1よりも平均引上げ速度を大きくできることが確認できた。また、引上げ後の直胴中の酸素濃度を後述する比較例1と同等の範囲であった。
【0030】
(比較例1)
図3に示すような、ヒーター104が昇降可能で、シールド105は昇降できないシリコン単結晶引上装置101を使用したこと以外、実施例1と同様な条件でシリコン単結晶の引上げを行った。このとき、図3に示すように、ヒーター104の上端位置をルツボ103の上端位置よりも低くなるようにしたが、シールド105は動かないためヒーター104に対してシールド105の位置は高くなっていた。
その結果、シリコン単結晶の直胴部を引き上げる際の平均引上げ速度は1.1mm/minとなり実施例1よりも平均引上げ速度は小さくなってしまった。また、引上げ後の直胴中の酸素濃度がほぼ19ppma±1.2ppmaであった。
これは、シールドの位置を固定したままヒーターの位置だけを変えヒーターに対してシールドの位置が高くなったため、シールドの保温効果によりシリコン単結晶を効率よく冷却できなかったことが原因と考えられる。
【0031】
(実施例2)
ヒーター4とシールド5を一緒に上昇させて、図2に示すようにヒーター4の上端位置をルツボ3の上端位置よりも高くしたこと以外、実施例1と同様な条件でシリコン単結晶の引上げを行った。
その結果、シリコン単結晶の直胴部を引き上げる際の平均引上げ速度は1.0mm/minとなった。また、引上げ後の直胴中の酸素濃度は約15ppma±1.2ppmaとなり後述する比較例2よりも酸素濃度を低くすることができた。
このように、ヒーター4とシールド5を一緒に上昇させることで、シールド5も一緒に高い位置にでき、ヒーター4の発熱中心をより高い位置にできるため、後述する比較例2よりも酸素濃度を下げることができた。また、平均引上げ速度を後述する比較例2と同等の範囲であった。
【0032】
(比較例2)
図4に示すような、ヒーター104が昇降可能で、シールド105は昇降できないシリコン単結晶引上装置101を使用したこと以外、実施例2と同様な条件でシリコン単結晶の引上げを行った。このとき、図4に示すように、ヒーター104の上端位置をルツボ103の上端位置よりも高くなるようにしたが、シールド105は動かないためヒーター104に対してシールド105の位置は、実施例2の場合(図2の場合)に比べて低くなっていた。
その結果、シリコン単結晶の直胴部を引き上げる際の平均引上げ速度は1.0mm/minとなった。また、引上げ後の直胴中の酸素濃度がほぼ16ppma±1.2ppmaとなり実施例2よりも酸素濃度は高くなってしまった。
これは、ヒーター104に対してシールド105の位置が低く、シールドの保温効果が低いため、融液の上部を十分に加熱できず、シリコン単結晶の酸素濃度を十分に下げることができなかったことが原因と考えられる。
【0033】
以上の結果から、本発明のシリコン単結晶引上装置であれば、ヒーターとシールドを一緒に昇降させることで、ヒーターとシールドの位置を適切な位置に維持できるため、シリコン単結晶の引上げ速度を向上させたり、酸素濃度を低減させたりできることが確認された。また、実施例1、2では、一緒に昇降可能なヒーター4とシールド5を、シリコン単結晶の引上げの最中には昇降させなかったが、引上げ中のシリコン単結晶の状態にあわせて、適宜ヒーター4とシールド5の高さ位置を変更して調整することで、所望の引上げ速度や酸素濃度のシリコン単結晶を得ることができる。
【0034】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0035】
1…シリコン単結晶引上装置、 2…チャンバ、
2a…メインチャンバ、 2b…プルチャンバ
3…ルツボ、 3a…石英ルツボ、 3b…黒鉛ルツボ、
4…ヒーター、 5…シールド、 6…支持部材、
7…電極、 7a…黒鉛電極、 7b…銅電極、
8…クランプ、 9…クランプボルト、 10…プラグ、 11…絶縁物、
12…ロアーシールド、 13…ペディスタル、 14…整流筒。
図1
図2
図3
図4