【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人情報通信研究機構、「革新的光通信インフラの研究開発 課題ア マルチコア光増幅技術」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
M.Kasahara, et al.,"Design of Three-Spatial-Mode Ring-Core Fiber",JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,2014年 2月 5日,Vol.32, No.7,p.1337-1343
【文献】
笠原 基幹 Motoki Kasahara,"3モードリングコアファイバに関する検討",電子情報通信学会2013年通信ソサイエティ大会講演論文集2 PROCEEDINGS OF THE 2013 IEICE COMMUNICATIONS SOCIETY CONFERENCE,2013年 9月,p.385
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のマルチモード光ファイバ増幅器(以下、「ファイバ増幅器」と略記する。)の各実施形態について説明する。
【0017】
[ファイバの構成]
先ず、ファイバ増幅器に用いられるファイバ11の構成について
図2を参照して説明する。
図2は増幅用ファイバ11の断面例を示す図である。
【0018】
このファイバ11は、クラッド部101、リングコア部102、および内側コア部103とから構成される。クラッド部101、リングコア部102および内側コア部103の屈折率をそれぞれ
【0020】
とすると、各屈折率の関係は、下記式(1)によって表される。
【0022】
図2において、信号光及び励起光は、リングコア部102を伝搬する。各部101〜103の材料は、式(1)の関係が満たされていれば、全てがガラス、一部がガラスで他がポリマー、全てがポリマー、など様々な形態を取ることができる。
【0023】
図3は、ファイバ11における異なるモードの信号光のパワーモード分布を示す図であって、(a)はLP
01モードの場合、(b)はLP
11モードの場合、を示す。
図3において、ファイバ中、白色(ハッチ部分を含む)から黒色に変化するほどパワーが大きいことを示している。
【0024】
図1に示した従来のものと異なり、
図3のファイバ11では、LP
01及びLP
11の両モードのパワーが大きい部分はいずれもリングコア部102に存在し、オーバーラップが大きくなる。上述した両モードのオーバーラップは、偏波が直交する2つのLP
11モード(LP
11x、LP
11y)が縮退しているときに顕著となる。これを
図4に示す。
【0025】
図4は、ファイバ11において、偏波が直交する2つのモードが縮退している場合の各モードのパワー強度の分布を示す図である。
【0026】
図4に示すように、LP
01及びLP
11の両モードにおけるパワーモード分布は類似するようになる。リングコア部102における励起光パワーモード分布に角度依存性がなければ(つまり、リングコア部102の周回方向に励起光パワーモード分布がなければ)、LP
01及びLP
11の両モードは、ほぼ等しい励起光パワー密度で励起された増幅用イオンによって増幅されることになり、その結果、モード間利得偏差を抑制できる。
【0027】
<第1実施形態>
次に、第1実施形態のファイバ増幅器1について
図2および
図5を参照して説明する。
【0028】
[ファイバ増幅器の構成]
図5は、第1実施形態のファイバ増幅器1を示すブロック図である。図
5において、ファイバ増幅器1は、マルチモードエルビウム添加ファイバ11のエルビウムイオンを励起
する励起光源12a.12b、励起光と信号光を合波してファイバ11に入力する合分波器13a,13b、および光アイソレータ14a,14bを備える。
【0029】
ファイバ11は、
図2に示したようなファイバ断面構造を有する。本実施形態では、一例として、リングコア部102の外径を14.0μm、リングコア部102の内径(内側コア直径)を5.6μm、クラッド部101の外径を125μmとする。
【0030】
クラッド部101と内側コア部103の屈折率は同じである。リングコア部102とクラッド部101(または内側コア部102)との比屈折率の差を0.45 %とする。
【0031】
エルビウムイオンは、リングコア部102に濃度がほぼ均一となるように添加されている。マルチモードエルビウム添加ファイバ11において、信号光及び励起光はリングコア部102を伝搬する。安定的に伝搬する信号光のモードは、LP
01及LP
11の2モードであり、LP
11より高次のモードは、カットオフされる。
【0032】
励起光の伝搬モードも複数あるが、ファイバ11へ入力する励起光のモードを制御することで、若干のモード変換により所望のモード以外の励起光モードも伝搬するが、所望のモードの励起光のみを支配的に伝搬させることができる。
【0033】
励起光源12a,12bは、シングルモードの980 nm帯半導体レーザ(LD)モジュールであり、クラッドと同心円の円形コアを有する従来のシングルモードファイバから励起光が出力される。
【0034】
合波器13a,13bの信号光入出力ポートのファイバは、ファイバ11と同じ断面構造のクラッド部101、リングコア部102および内側コア部103を有するファイバであり、LP
01及びLP
11の両モードの信号光のみが安定的に伝搬し、LP
11より高次もモードはカットオフされる。
【0035】
合波器13a,13bの励起光入力ポートのファイバは、励起光源12a,12bの出力ファイバと同等の断面構造のファイバであり、従来のシングルモードファイバである。入力したLP
01モードの励起光は合波器13a,13bの内部に備えられた変換器により円コアのLP
01からリングコアのLP
01へ変換されて出力ファイバのリングコア部102で結合され、ほぼLP
01モードのパワーモード分布で伝搬する。
【0036】
光アイソレータ14a,14bの入出力ファイバは、ファイバ11と同じ断面構造のクラッド部101、リングコア部102および内側コア部103を有するファイバであり、LP
01及びLP
11の両モードの信号光のみが安定的に伝搬し、LP
11より高次もモードはカットオフされる。
【0037】
ファイバ増幅器1の入力側の光アイソレータ14a,14bの入力ファイバ端、および出力側の光アイソレータ14a,14bの出力側ファイバ端には、それぞれ光コネクタが接続されている。すなわち、本実施形態のファイバ増幅器1は、
図2に示した断面構造を有する伝送ファイバと、光コネクタとによって接続される。
【0038】
次に、ファイバ増幅器1におけるLP
01及びLP
11モードの信号光に対する利得および雑音指数スペクトルについて
図6および
図7を参照して説明する。
【0039】
図6は、ファイバ増幅器1におけるLP
01及びLP
11モードの信号光に対する利得および雑音指数スペクトルを示す図である。
図7は、従来のファイバ増幅器におけるLP
01及びLP
11モードの信号光に対する利得および雑音指数スペクトルを示す図である。
【0040】
このファイバ増幅器1では、入力信号光は両モードとも40波(40 ch)の波長多重(WDM)信号、パワーは−20 dBm/ch、励起光パワーは500 mWとした。また、従来のファイバ増幅器においても、これらの入力信号および励起光の条件と同じ条件に設定した。この場合、従来のファイバ増幅器においても、
図5に示したファイバ増幅器1と同様に構成した。また、従来のファイバ増幅器に用いたエルビウム添加ファイバは従来の円コアファイバを採用した。この場合のファイバのコア直径を6.4μm、クラッド直径を125μmとした。エルビウムイオンはコアにほぼ均一に添加した。
【0041】
図6に示すように、ファイバ増幅器1では、モード間の利得偏差が最大で1.1 dBに抑制できることが確認できた。さらに、雑音指数についても、ファイバ増幅器1ではモード間の偏差を0.1 dB未満に抑制できることも併せて確認できた。
【0042】
一方、
図7に示すように、従来のファイバ増幅器の場合では、モード間の利得偏差は最大で5.2 dBとなり、
図6の場合よりも大きい値となった。また、
図7に示すように、雑音指数についても、従来のファイバ増幅器では、モード間偏差が0.3 dB以上となり、
図6に示した0.1 dB未満よりも大きい値を示した。
【0043】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態のファイバ増幅器について
図2および
図5を参照して説明する。
【0044】
本実施形態のファイバ増幅器が第1実施形態と異なるのは、ファイバ11のリングコア部102と内側コア103とのサイズのみであるため、この点を中心に以下説明する。
【0045】
本実施形態におけるファイバは、前述のファイバ11とは異なり、リングコア部102の外径は17.0μm、リングコア部102の内径(内側コア直径)は5.6μm、クラッド部101の外径は125μmである。
【0046】
エルビウムイオンはリングコア部102に濃度がほぼ均等となるように添加されている。この実施形態のファイバにおいても、信号光及び励起光はリングコア部102を伝搬する。
【0047】
安定的に伝搬する信号光のモードは、LP
01、LP
11、LP
21の3モードであり、LP
21より高次のモードはカットオフされる。励起光の伝搬モードも複数あるが、この実施形態のファイバへ入力する励起光のモードを制御することで、若干のモード変換により所望のモード以外の励起光モードも伝搬するが、所望のモードの励起光のみを支配的に伝搬させることができる。
【0048】
本実施形態のファイバ増幅器では、励起光源12はシングルモードの980 nm帯LDモジュールであり、クラッドと同心円の円形コアとを有する従来のシングルモードファイバから励起光が出力される。
【0049】
本実施形態の合波器13の信号光入出力ポートのファイバは、
図2に示したクラッド部101、リングコア部102および内側コア部103を有するファイバである。LP
01、LP
11、LP
21の3モードの信号光のみが安定的に伝搬し、LP
21より高次のモードはカットオフされる。合波器13の励起光入力ポートのファイバは、励起光源12の出力ファイバと同等の断面構造のファイバであり、従来のシングルモードファイバである。
【0050】
入力したLP
01モードの励起光は、合波器13の内部に備えられる変換器により円コアのLP
01からリングコアのLP
01へ変換されて出力ファイバのリングコア部102で結合され、ほぼLP
01モードのパワーモード分布で伝搬する。
【0051】
光アイソレータ14の入出力ファイバは、
図2に示したクラッド部101、リングコア部102および内側コア部103を有するファイバである。LP
01、LP
11、LP
21の3モードの信号光のみが安定的に伝搬し、LP
21より高次のモードはカットオフされる。ファイバ増幅器の入力側の光アイソレータ14の入力ファイバ端、および出力側の光アイソレータ14の出力側ファイバ端には、それぞれ光コネクタが接続されている。
【0052】
図8は、本実施形態のファイバ増幅器における3モードLP
01、LP
11、LP
21の信号光に対する利得および雑音指数スペクトルを示している。
【0053】
図8では、入力信号光は、すべてのモードで40波のWDM信号である。パワーは−20 dBm/ch、励起光パワーは500 mWとした。
【0054】
図8から明らかなように、本実施形態のファイバ増幅器では、モード間の利得偏差が1.3 dBに抑制できることが確認できた。さらに、雑音指数についても、本実施形態のファイバ増幅器ではモード間偏差が0.1 dB未満に抑制できることも併せて確認できた。
【0055】
なお、第1〜第2実施形態ではモード数が2または3の場合について説明したが、ファイバ11のサイズを調整することで、モード数を任意に設定するようにしてもよい。
【0056】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態のファイバ増幅器について
図2および
図5を参照して説明する。
【0057】
本実施形態のファイバ増幅器が第1実施形態と異なるのは、ファイバ11のリングコア部102に添加されるエルビウムイオンの濃度分布のみであるため、この点を中心に以下説明する。
【0058】
本実施形態におけるファイバは、第1実施形態のファイバ11と同様に、リングコア部102の外径は14.0μm、リングコア部102の内径(内側コア直径)は5.6μm、クラッド部101の外径は125μmである。このファイバ11において、信号光及び励起光はリングコア部102を伝搬する。
【0059】
安定的に伝搬する信号光のモードはLP
01、LP
11の2モードであり、LP
11より高次のモードはカットオフされる。
【0060】
励起光の伝搬モードも複数あるが、マルチモードエルビウム添加ファイバへ入力する励起光のモードを制御することで、若干のモード変換により所望のモード以外の励起光モードも伝搬するが、所望のモードの励起光のみを支配的に伝搬させることができる。
【0061】
図9は、リングコア部102のファイバ径方向のエルビウムイオン分布を示す図である。
図9に示すように、エルビウムイオンは、LP
01及びLP
11の両モードの信号光のパワーモード分布がほぼ均等にエルビウムイオン分布と重なるように設定されている。
【0062】
本実施形態の励起光源12a,12bは、シングルモードの980 nm帯LDモジュールであり、クラッドと同心円の円形コアを有する従来のシングルモードファイバから励起光が出力される。
【0063】
本実施形態の合波器13a,13bの信号光の入出力ポートのファイバは、
図2に示したクラッド部101、リングコア部102および内側コア部103を有するファイバである。LP
01,LP
11の2モードの信号光のみが安定的に伝搬し、LP
11より高次のモードはカットオフされる。合波器13の励起光入力ポートのファイバは、励起光源12a,12bの出力ファイバと同等の断面構造のファイバであり、従来のシングルモードファイバである。
【0064】
入力したLP
01モードの励起光は合波器13a,13bの内部に備えられた変換器により円コアのLP
01からリングコアのLP
01へ変換されて出力ファイバのリングコア部102で結合され、ほぼLP
01モードのパワーモード分布で伝搬する。
【0065】
本実施形態の光アイソレータ14の入出力ファイバは、
図2に示したクラッド部101、リングコア部102および内側コア部103を有するファイバである。LP
01,LP
11の2モードの信号光のみが安定的に伝搬し、LP
11より高次のモードはカットオフされる。
【0066】
ファイバ増幅器の入力側の光アイソレータ14の入力ファイバ端、および出力側の光アイソレータ14の出力側ファイバ端には、それぞれ光コネクタが接続されている。
【0067】
図10は、本実施形態のファイバ増幅器におけるLP
01及びLP
11の各モードの信号光に対する利得および雑音指数スペクトルを示している。
【0068】
図10では、入力信号光は、両モードともに40波のWDM信号である。パワーは−20 dBm/ch、励起光パワーは500 mWとした。
【0069】
図10から明らかなように、本実施形態のファイバ増幅器では、モード間の利得偏差および雑音指数の偏差はそれぞれ、0.9 dB以下及び0.1 dB未満となり、第1実施形態の場合よりも抑制できることが確認できた。
【0070】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態のファイバ増幅器について
図2および
図5を参照して説明する。
【0071】
本実施形態のファイバ増幅器が第1実施形態と異なるのは、合波器13a,13bの内部に備えられた変換器のみであるため、この点を中心に以下説明する。
【0072】
本実施形態のファイバ増幅器は、
図5に示したものと同様に、ファイバ11のエルビウムイオンを励起する励起光源12a,12b、励起光と信号光を合波してファイバ11に入力する合分波器13a,13b、および光アイソレータ14a,14bを備える。
【0073】
しかし、第1実施形態のものと異なり、合波器13a,13bの内部に備えられた変換器では、合波器13a,13bの励起光入力ポートに入力したLP
01モードの励起光が、円コアのLP
01から任意のパワーモード分布になるよう変換するように構成されている。任意のパワーモード分布を有するLP
01モードの励起光が出力ファイバのリングコア部102で結合され、変換後のパワーモード分布で伝搬する。
【0074】
このことにより、リングコア部102に添加された信号光のパワーモードが大きい領域のエルビウムイオンを選択的に励起させることができ、励起効率を増加させることができる。
【0075】
図11は、本実施形態のファイバ増幅器におけるLP
01及びLP
11の各モードの信号光に対する利得および雑音指数スペクトルを示している。
【0076】
図11では、入力信号光は、両モードともに40波のWDM信号である。パワーは−20 dBm/ch、励起光パワーは400 mWとした。
【0077】
図11から明らかなように、本実施形態のファイバ増幅器では、モード間の利得偏差および雑音指数の偏差はそれぞれ、1.0 dB以下及び0.1 dB となり、第1実施形態の場合よりも抑制できることが確認できた。
【0078】
<第5実施形態>
以下、第5実施形態のファイバ増幅器について
図12を参照して説明する。
【0079】
図12は、第5実施形態のファイバ増幅器1Aを示すブロック図である。
図12において、ファイバ増幅器1Aは、マルチモードのエルビウムが添加されたファイバ21のエルビウムイオンを励起する励起光源22a,22b、励起光と信号光とを合波してファイバ21に入力する合分波器23a,23b、および光アイソレータ24a,24b,25a,25bを備える。
【0080】
図13は、ファイバ21の断面構造を示している。
図13の例では、ファイバ21は、2つのクラッド、すなわち第1クラッド部202および第2クラッド部201を持つダブルクラッド構造を有する。第1クラッド部202内には、複数のリングコア部203,204を持つファイバ断面構造を有している。
【0081】
なお、複数の異なるリングコア部203,204の中心位置(中心軸)は、クラッド部201,202内で同一である。
【0082】
本実施形態では、一例として、第1リングコア部203の外径を14.0μm、第1リングコア部203の内径(内側コア206の直径)を5.6μm、第2リングコア部204の外径を19.0μm、第2リングコア部204の内径を15.0μmとする。また、第1クラッド部202の外径を30μm、第2クラッド部201の外径を125μmとする。
【0083】
エルビウムイオンは各リングコア部203,204において、濃度がほぼ均等となるように添加されている。ファイバ21において、信号光及び励起光は2つのリングコア部を伝搬する。
【0084】
第1リングコア部203を安定的に伝搬する信号光のモードは、LP
01及びLP
11の2モードであり、LP
11より高次のモードはカットオフされる。
【0085】
第2リングコア部204を安定的に伝搬する信号光のモードは、LP
01、LP
11、LP
21及びLP
02の4モードであり、LP
02より高次のモードはカットオフされる。
【0086】
第1クラッド部203の屈折率は、第2クラッド部204の屈折率より大きく設定されており、励起光は第1クラッド部203を複数のモード(マルチモード)で伝搬する。所望のモードの励起光のみを支配的に伝搬させることができる。
【0087】
励起光源22a,22bは、マルチモードの980 nm帯のLDモジュールであり、マルチモードファイバから励起光が出力される。
【0088】
合波器23a,23bの信号入出力ファイバ230,231はそれぞれ、
図13に示したものと同様に、2つのクラッド部とリングコア部と内側コア部とを有するファイバである。この場合、ファイバ230,231では、各コア部のサイズが異なる。すなわち、ファイバ230のリングコアはLP
01及びLP
11の2モードの信号光のみが安定的に伝搬し、LP
11より高次のモードはカットオフされる。
【0089】
ファイバ21のリングコア部は、LP
01、LP
11、LP
21及びLP
02の4モードの信号光のみが安定的に伝搬し、LP
21より高次のモードはカットオフされる。
【0090】
合波器23a,23bの信号入出力ファイバ232は、
図13に示したダブルクラッド構造を有する構成を有する。すなわち、第1クラッド部内に複数のリングコア部を持つファイバ断面構造を有している。第1のリングコア部は、LP
01及びLP
11の2モードの信号光のみが安定的に伝搬し、LP
11より高次のモードはカットオフされる。
【0091】
第2リングコア部は、LP
01、LP
11、LP
21及びLP
02の4モードの信号光のみが安定的に伝搬し、LP
21より高次のモードはカットオフされる。
【0092】
合波器23a,23bの励起光用の入力ポートのファイバは、励起光源22a,22bの出力ファイバと同等の断面構造のファイバであり、マルチモードモードファイバである。入力したマルチモードモードの励起光は、ファイバ21の第1クラッド部203で結合され、マルチモードモードで伝搬する。
【0093】
光アイソレータ24a,24b,25a,25bの入出力ファイバは、
図13に示したものと同様に、それぞれ2つのクラッド部、リングコア部および内側コア部を有するファイバである。この場合、光アイソレータ24a,24bの入出力ファイバと光アイソレータ25a,25bの入出力ファイバとでは、各コア部のサイズが異なる。すなわち、光アイソレータ24a,24bの入出力ファイバのリングコアは、LP
01及びLP
11の2モードの信号光のみが安定的に伝搬し、LP
11より高次のモードはカットオフされる。
【0094】
光アイソレータ25a,25bの入出力ファイバのリングコア部は、LP
01、LP
11、LP
21及びLP
02の4モードの信号光のみが安定的に伝搬し、LP
21より高次のモードはカットオフされる。
【0095】
ファイバ増幅器1Aの入力側の光アイソレータ25a,25bの入力ファイバ端、及び出力側の光アイソレータ25a,25bの出力側のファイバ端には、それぞれ光コネクタが接続されている。
【0096】
図14は、本実施形態のファイバ増幅器1AにおけるモードLP
01,LP
11,LP
21,LP
02の信号光に対する利得および雑音指数スペクトルを示している。
【0097】
図14では、入力信号光は、すべてのモードは40波のWDM信号である。パワーは−20 dBm/ch、励起光パワーは2000 mW(2W)とした。
【0098】
図14から明らかなように、本実施形態のファイバ増幅器1Aでは、光アイソレータ24a,24bに入力するモードLP
01,LP
11の信号光は、モード間の利得偏差が1.0 dB以下、モード間雑音指数偏差が0.1 dB未満となった。また、光アイソレータ25a,25bに入力するモードLP
01,LP
11,LP
21,LP
02の信号光は、モード間利得偏差が1.3 dB以下、モード間雑音指数偏差が0.1 dB未満になり、いずれも抑制できることが確認できた。
【0099】
<第6実施形態>
以下、第6実施形態のファイバについて
図15を参照して説明する。
【0100】
図15は、第6実施形態のファイバの断面構造を示している。本実施形態のファイバは、一つのクラッド部101において、複数組のリングコア部102と内側コア部103とを有する。
【0101】
なお、複数のリングコア部102の中心位置(中心軸)は、クラッド部101内で異なる位置にある。
【0102】
それぞれのリングコア部102と内側コア部103とは、サイズがほぼ等しい。
図15の例では、リングコア部102の外径を14.0μm、リングコア部102の内径(内側コア直径)を5.6μm、クラッド部101の外径を125μmとする。
【0103】
エルビウムイオンは、各リングコア部102において、濃度がほぼ均等となるように添加されている。本実施形態のファイバにおいて、信号光及び励起光は各リングコア部102を伝搬する。
【0104】
安定的に伝搬する信号光のモードは、LP
01及LP
11の2モードであり、LP
11より高次のモードはカットオフされる。
【0105】
励起光の伝搬モードも複数あるが、本実施形態のファイバへ入力する励起光のモードを制御することで、若干のモード変換により所望のモード以外の励起光モードも伝搬するが、所望のモードの励起光のみを支配的に伝搬させることができる。
【0106】
本実施形態のファイバの各リングコア部102の利得・雑音指数の特性は、第1実施形態のものとほぼ同等になる。本実施形態のファイバ増幅器では、異なるリングコア部102を伝搬する信号に対して異なる情報を載せた信号光を同時に増幅することができる。
【0107】
以上、各実施形態について詳述してきたが、各実施形態の中で個別に述べたファイバ等は、任意の実施形態のファイバ増幅器と組み合わせて実施することができる。
【0108】
また、具体的な構成は各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更なども可能である。例えば、各実施形態で例示したファイバのサイズは、適宜変更することができる。