特許第5946418号(P5946418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946418
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】揚げ玉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/10 20160101AFI20160623BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20160623BHJP
   A23L 5/00 20160101ALN20160623BHJP
【FI】
   A23L5/10
   A23L35/00
   !A23L5/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-40286(P2013-40286)
(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公開番号】特開2014-168384(P2014-168384A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】日本製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【弁理士】
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】辻口 礼華
【審査官】 伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−299293(JP,A)
【文献】 特開2010−22245(JP,A)
【文献】 特開2000−73(JP,A)
【文献】 特開2009−284827(JP,A)
【文献】 特開2005−151876(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0003331(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
みかけ比重を0.85以上0.9以下、pHを3.5以上4.5以下及び粘度を2500mPa・s以上4000mPa・s以下に調製した揚げ玉生地を使用することを特徴とする揚げ玉の製造方法。
【請求項2】
pHの調整を可食用酸を配合することにより行う請求項1に記載の揚げ玉の製造方法。
【請求項3】
可食用酸が乳酸、リンゴ酸、酢酸からなる群から選択される可食用酸である請求項1又は請求項2に記載の揚げ玉の製造方法。
【請求項4】
さらに糖類を配合する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の揚げ玉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ玉の製造方法。
【背景技術】
【0002】
揚げ玉は、もともと天ぷらを揚げる際に副次的に生成されるが、そば、うどん、お好み焼き、たこ焼き等の具材として広く使用されているため、揚げ玉自体を目的として生産、販売が行われている。
揚げ玉は、一般的に形状がふぞろいなものや扁平でいびつなものより球状のものが好まれている。
球状の揚げ玉を得る方法として、例えば、小麦粉を主体とする揚げ玉生地配合物20質量部〜100質量部に無水炭酸ナトリウム0.01質量部〜0.05質量部及び/又は焼きミョウバン0.1質量部〜0.3質量部を添加し、更にこれに水温0℃〜3℃の冷水60質量部〜200質量部を加えて混練して得た揚げ玉生地を、生地温度を0℃〜10℃に保った状態で油温170℃〜190℃に保持したフライヤーの油槽の油溜りに落とし入れ、約40秒間加熱して得た揚げ玉を遠心分離機に入れて脱油することを特徴とするクリスピー性にすぐれた揚げ玉の製造方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−299293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、球状の揚げ玉を安定して製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、揚げ玉生地(揚げ玉の原料となるバッター)のみかけ比重、pH及び粘度を特定の範囲となるように調整することにより安定して球状の揚げ玉を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、
(1)みかけ比重を0.85以上0.9以下、pHを3.5以上4.5以下及び粘度を2500mPa・s以上4000mPa・s以下に調製した揚げ玉生地を使用することを特徴とする揚げ玉の製造方法である。
(2)pHの調整を可食用酸(溶液)を配合することにより行う前記製造方法である。
(3)可食用酸が乳酸、リンゴ酸、酢酸からなる群から選択される可食用酸である前記製造方法である。
(4)さらに糖類を配合する前記製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
揚げ玉の製造方法により食感の良好な球状の揚げ玉を安定して製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の揚げ玉の製造方法は、揚げ玉生地のみかけ比重、粘度及びpHを特定の範囲に調整する方法に特徴がある。これ以外は、原料、製造方法ともに従来の揚げ玉の製造方法と同様でよい。
本発明では、みかけ比重、粘度及びpHを特定の範囲とすることで球状の揚げ玉を安定して製造することができる。
【0008】
本発明の揚げ玉生地のみかけ比重調整は、生地の泡立て時間と速度を調整することで容易に行うことができる。
揚げ玉生地のみかけ比重は0.85以上0.9以下である。
揚げ玉生地のみかけ比重が0.85以上0.9以下の場合に揚げ玉が綺麗に膨らみ球状となる。
揚げ玉生地のみかけ比重が0.85未満又は0.9を超えた場合は、安定して球状となり難くいびつな形状になってしまう。
なお、本発明において、みかけ比重とは、生地を計量カップ等に自然落下により流し込んだときの、生地重量÷生地体積により算出した値をいう。
【0009】
本発明の揚げ玉生地のpH調整は、生地中に可食用酸を配合する量により行うことができる。
可食用酸の配合方法には、特に限定はないが、生地に加える水にあらかじめ溶かしておくことにより生地に均一に混合することができる。
使用できる可食用酸は食用の酸であれば特に限定はなく、例えば、乳酸、リンゴ酸、酢酸等が使用できる。
可食用酸を配合すると酸味が付与されてしまうので味の点からは酸味が弱い乳酸やリンゴ酸が好ましい。
揚げ玉生地のpHは3.5以上4.5以下である。
揚げ玉生地のpHが3.5以上4.5以下の場合に揚げ玉が綺麗に膨らみ球状となる。
揚げ玉生地のpHが3.5未満又は4.5を超えた場合は、安定して球状となり難くいびつな形状になってしまう。
【0010】
本発明の揚げ玉生地の粘度調整は、生地への加水量により行うことができる。
揚げ玉生地の粘度は2500mPa・s以上4000mPa・s以下である。
揚げ玉生地の粘度が2500mPa・s以上4000mPa・s以下の場合に揚げ玉が綺麗に膨らみ球状となる。
揚げ玉生地の粘度が2500mPa・s未満又は4000mPa・sを超えた場合は、安定して球状となり難くいびつな形状になってしまう。
加える水の温度は、従来の揚げ玉の製造方法と同様に低温であることが好ましく、調製した揚げ玉生地の温度が15℃以下になるような冷水を使用することが好ましい。
なお、本発明の揚げ玉生地の粘度は、生地を調製してから1分間以内に生地温度5〜10℃でBH型粘度計により測定した値である。
【0011】
本発明の揚げ玉生地は、可食用酸を配合するので酸味を抑えるために糖類を配合することが好ましい。
使用できる糖類は、特に限定されないが、甘みが強いものほど効果的で、グラニュー糖、果糖ブドウ糖液糖、砂糖混合ブドウ糖果糖液糖、フルクトースなどが好ましい。
配合量は、小麦粉100gに対して2g程度である。
【0012】
前記のとおり、揚げ玉生地のみかけ比重、粘度及びpHを特定の範囲に調整する以外は、原料、製造方法ともに従来の揚げ玉と同様でよい。
例えば、使用できる原料として、穀粉類、澱粉類、油脂類、蛋白素材、膨脹剤、食物繊維、増粘多糖類、調味料、香辛料、乳化剤、ビタミン類、ミネラル類等を挙げることができる。
揚げ玉生地の調製方法は、粉体原料に加水して混練する従来の方法が使用できる。
本発明で使用する水は可食用酸を溶かしている場合があるが、それ以外は従来の揚げ玉生地の調製方法に使用する水の場合と同様でよく、冷水を使用することが好ましい。
揚げ玉生地を油揚する方法も、揚げ玉生地を油中に滴加する従来の方法が使用できる。
例えば、揚げ玉生地を油面から10〜15cmの高さから直径2mm〜5mmのノズルから揚げ玉生地を途切れさせることなく、流動的かつ連続的に油槽の油溜りに落とし入れる。
油揚時の油温は、170℃乃至175℃程度で、揚げ玉生地の投入により油温がこの範囲から外れないような油量と加熱により行う。
油揚後の揚げ玉は、従来の揚げ玉の製造方法と同様に遠心分離機などで脱油を行う。
得られた揚げ玉は従来の揚げ玉と同様に使用することができる。
【実施例】
【0013】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜2、比較例1〜4]みかけ比重の影響
薄力小麦粉100質量部に対し、5℃の乳酸溶液140質量部及び果糖2質量部を加え、泡だて器(商品名「キッチンエイド」:株式会社エフ・エム・アイ製))の速度4(中速)で表1に示すみかけ比重となるように攪拌し生地を調製した。
なお、乳酸溶液は、生地のpHが4.0になるように冷水140質量部に対して乳酸0.42質量部を加えて調整した。
前記生地を、生地温度を10〜15℃に保った状態で、穴の開いた金属板に流し入れ、油温170〜175℃に保持したフライヤーの油槽の油溜りに落とし入れた後、約2分半〜3分油揚して揚げ玉を得た。
この揚げ玉を遠心分離機で脱油した。
得られた揚げ玉の形状を以下の評価基準で目視による評価を行った。
結果を表1に示す。
・形状
5点 球状のものが90%以上あり非常に良い
4点 球状のものが70%以上90%未満あり良い
3点 普通
2点 球状のものが20%以上40%未満ありやや悪い。
1点 球状のものが20%未満で悪い
【表1】
【0014】
[実施例3〜5、比較例5〜6]pHの影響
実施例1においてpHを表2に示す値になるように乳酸の量を調整した以外は実施例1と同様にして評価を行った。
結果を表2に示す。
【0015】
【表2】
【0016】
[実施例6〜9、比較例7〜8]粘度の影響
実施例1において粘度とみかけ比重が表3に示す値となるように加水量及び攪拌時間を調整した以外は実施例1と同様にして評価を行った。
結果を表3に示す。
【0017】
【表3】
【0018】
みかけ比重を0.85以上0.9以下、pHを3.5以上4.5以下及び粘度を2500mPa・s以上4000mPa・s以下に調整した揚げ玉生地を使用することで安定した球状の揚げ玉が得られた。
実施例で得られた揚げ玉の食感はいずれもサクサクとして良好であった。