(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の出力変動推定方法では、出力変動の周期別の相関が0(ゼロ)と1との間で直線的に推移するとして変動の大きさを推定するようにしているが、そのような推移は長期間のデータから求めた平均的なスペクトラムの傾向に基づく、あくまでも経験的なものにすぎない。実際の自然エネルギー型の電源群による出力変動には日々そして時時の気象条件が異なることの影響があるが、これを考慮すると相関が直線的に推移するとは言い難い。このため、特許文献1の方法は日々そして時時の出力変動の実態が求めた相関に正しく反映されていない虞があるという問題がある。したがって、特許文献1の方法は信頼性が高いとは言えない。
【0006】
また、実際の自然エネルギー型の電源群による出力変動の実態を把握しようとする場合に、自然エネルギー型分散電源群による合計出力の変動の大きさを知りたいエリアに多数の計測器を分散設置して天候データを収集すれば、当該エリアでの変動の大きさを見積もることができる。しかしながら、このような方法では計測器の設置とデータ回収とのために多大なコストと手間とが必要とされるという問題がある。また、データを収集したとしても、収集されるデータが大量であるためにデータ処理に多大な時間が必要とされるという問題もある。このようなことから、少量のデータから簡便な方法で検討対象とするエリアに多数の自然エネルギー型分散電源が設置された状況における合計出力の変動の大きさを推定する方法が必要とされる。
【0007】
そこで、本発明は、複数の自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさを少量のデータから簡便な方法で推定することができる自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法は、推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)において天候データ及び/又は発電出力データの計測を行い、天候データ及び/又は発電出力データを用いて計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の大きさの指標w
iとしての標準偏差若しくは変動幅とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力の変動の大きさの指標w
Mavとしての標準偏差若しくは変動幅とを推定したい時間帯を対象に計算し、発電出力の変動の大きさの指標w
i及び平均出力の変動の大きさの指標w
Mavを用いて数式1によってM箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の平均的な相関r
Mavを算出し、平均的な相関r
Mavを用いて数式2によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平滑化効果の指標ρ^
Nを推定し、平滑化効果の指標ρ^
Nを用いて数式3によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平均出力の変動の大きさw^
Navを推定し、平均出力の変動の大きさw^
NavをN箇所の自然エネルギー型分散電源の設備容量の合計に掛けてN箇所の自然エネルギー型分散電源の合計出力の推定したい時間帯における変動の大きさを推定するようにしている。
【0009】
また、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定装置は、推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)毎に計測された天候データ及び/又は発電出力データを記憶装置から読み込む手段と、天候データ及び/又は発電出力データを用いて計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の大きさの指標w
iとしての標準偏差若しくは変動幅とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力の変動の大きさの指標w
Mavとしての標準偏差若しくは変動幅とを推定したい時間帯を対象に計算する手段と、発電出力の変動の大きさの指標w
i及び平均出力の変動の大きさの指標w
Mavを用いて数式1によってM箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の平均的な相関r
Mavを算出する手段と、平均的な相関r
Mavを用いて数式2によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平滑化効果の指標ρ^
Nを推定する手段と、平滑化効果の指標ρ^
Nを用いて数式3によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平均出力の変動の大きさw^
Navを推定する手段と、平均出力の変動の大きさw^
NavをN箇所の自然エネルギー型分散電源の設備容量の合計に掛けてN箇所の自然エネルギー型分散電源の合計出力の推定したい時間帯における変動の大きさを推定する手段とを有するようにしている。
【0010】
また、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定プログラムは、推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)毎に計測された天候データ及び/又は発電出力データを記憶装置から読み込む手段、天候データ及び/又は発電出力データを用いて計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の大きさの指標w
iとしての標準偏差若しくは変動幅とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力の変動の大きさの指標w
Mavとしての標準偏差若しくは変動幅とを推定したい時間帯を対象に計算する手段、発電出力の変動の大きさの指標w
i及び平均出力の変動の大きさの指標w
Mavを用いて数式1によってM箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の平均的な相関r
Mavを算出する手段、平均的な相関r
Mavを用いて数式2によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平滑化効果の指標ρ^
Nを推定する手段、平滑化効果の指標ρ^
Nを用いて数式3によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平均出力の変動の大きさw^
Navを推定する手段、平均出力の変動の大きさw^
NavをN箇所の自然エネルギー型分散電源の設備容量の合計に掛けてN箇所の自然エネルギー型分散電源の合計出力の推定したい時間帯における変動の大きさを推定する手段としてコンピュータを機能させるようにしている。
【0011】
【数1】
ここに、r
Mav:M箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の
平均的な相関,
w
i:計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の
大きさの指標,
w
Mav:M箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力の変動の
大きさの指標,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数(数学的にはM≧2であれば良い)
をそれぞれ表す。
【数2】
ここに、ρ^
N:自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平滑化効果の指標,
r
Mav:M箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の
平均的な相関,
N:推定対象エリア内の自然エネルギー型分散電源の設置箇所数
(ただし、N>M。また、数学的にはN≧3であれば良い。)
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【数3】
ここに、w^
Nav:自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
平均出力の変動の大きさ,
ρ^
N:自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平滑化効果の指標
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、w
Mrmsは数式4によって算出される。
【数4】
ここに、w
i:計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の
大きさの指標,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
【0012】
一定以上の拡がりを有する広さの範囲で自然エネルギー型分散電源の出力を合計すると、合計出力の見かけの出力変動の大きさは一つ一つの分散電源の出力変動の大きさよりも小さくなる現象が平滑化効果として知られている。
【0013】
このような平滑化効果を前提として、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラムによると、推定対象エリア内の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の平均的な相関を算定して当該エリア内の自然エネルギー型分散電源の設置箇所数に応じた平滑化効果の程度を推定すると共にこの平滑化効果の程度に基づいて自然エネルギー型分散電源群の平均出力の変動の大きさを見積もることにより、少数箇所で計測されたデータから当該計測箇所数よりも多い数の自然エネルギー型分散電源による合計出力の変動の大きさを推定するようにしているので、少量のデータから、また処理内容としては簡便に、機器にとっては小さい計算負荷で、自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさが推定される。
【0014】
また、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法は、推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)において天候データ及び/又は発電出力データの計測を行い、天候データ及び/又は発電出力データを用いて計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の大きさの指標w
iとしての標準偏差若しくは変動幅とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力の変動の大きさの指標w
Mavとしての標準偏差若しくは変動幅とを計算し、発電出力の変動の大きさの指標w
i及び平均出力の変動の大きさの指標w
Mavを用いて数式5によって自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の平均的な相関r
Mavを算出し、平均的な相関r
Mavを用いて数式6によって自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの平均出力の変動の大きさw^
∞,avを推定し、平均出力の変動の大きさw^
∞,avを自然エネルギー型分散電源の設備容量の合計に掛けて自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の変動の大きさを推定するようにすることもできる。
【0015】
また、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定装置は、推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)毎に計測された天候データ及び/又は発電出力データを記憶装置から読み込む手段と、天候データ及び/又は発電出力データを用いて計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の大きさの指標w
iとしての標準偏差若しくは変動幅とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力の変動の大きさの指標w
Mavとしての標準偏差若しくは変動幅とを計算する手段と、発電出力の変動の大きさの指標w
i及び平均出力の変動の大きさの指標w
Mavを用いて数式5によって自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の平均的な相関r
Mavを算出する手段と、平均的な相関r
Mavを用いて数式6によって自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの平均出力の変動の大きさw^
∞,avを推定する手段と、平均出力の変動の大きさw^
∞,avを自然エネルギー型分散電源の設備容量の合計に掛けて自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の変動の大きさを推定する手段とを有するようにすることもできる。
【0016】
また、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定プログラムは、推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)毎に計測された天候データ及び/又は発電出力データを記憶装置から読み込む手段、天候データ及び/又は発電出力データを用いて計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の大きさの指標w
iとしての標準偏差若しくは変動幅とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力の変動の大きさの指標w
Mavとしての標準偏差若しくは変動幅とを計算する手段、発電出力の変動の大きさの指標w
i及び平均出力の変動の大きさの指標w
Mavを用いて数式5によって自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の平均的な相関r
Mavを算出する手段、平均的な相関r
Mavを用いて数式6によって自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの平均出力の変動の大きさw^
∞,avを推定する手段、平均出力の変動の大きさw^
∞,avを自然エネルギー型分散電源の設備容量の合計に掛けて自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の変動の大きさを推定する手段としてコンピュータを機能させるようにすることもできる。
【0017】
【数5】
ここに、r
Mav:M箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の
平均的な相関,
w
i:計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の
大きさの指標,
w
Mav:M箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力の変動の
大きさの指標,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
【数6】
ここに、w^
∞,av:自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
平均出力の変動の大きさ,
r
Mav:M箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の
平均的な相関
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、w
Mrmsは数式7によって算出される。
【数7】
ここに、w
i:計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の
大きさの指標,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
【0018】
これらの場合には、最初に挙げた自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラムによる上述の作用に加え、自然エネルギー型分散電源の導入設備容量が定量的に示されているものの設置箇所数が具体的な数値ではなくて漠然と大きな数値であるとの仮定でも自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさが推定されるという作用が発揮される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラムによれば、少量のデータから、また処理内容としては簡便に、機器にとっては小さい計算負荷で、自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさの推定を行うことができるので、データ収集にかかる費用と手間とを低減させ、また、特別の計算機器等の設備を用いることなく推定処理を行い、さらに、必要な場合には合計出力の変動傾向の速報性を高め、自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定技術としての汎用性の向上を図ることが可能になる。具体的には、自然エネルギー型分散電源の現状の設置状況に基づく、若しくは、将来の導入予測に基づく、自然エネルギー型分散電源の出力変動の対策のために用意しておく必要がある発電機の出力調整量と調整速度との検討において上述の作用効果を発揮して有用な技術になり得る。
【0020】
また、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラムによれば、自然エネルギー型分散電源の設置箇所数を具体的な数値で特定することなく、漠然と大きな数値であるとの仮定でも自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさを推定するようにもできるので、この点においても、自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定技術としての汎用性の向上を図ることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1及び
図2に、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラムの実施形態の一例を示す。
【0024】
本実施形態の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法は、
図1に示すように、自然エネルギー型分散電源がN箇所に設置された推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)において天候データ及び/又は発電出力データの計測を行い(S1)、天候データ及び/又は発電出力データを用いて計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の大きさの指標w
iとしての標準偏差若しくは変動幅とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力の変動の大きさの指標w
Mavとしての標準偏差若しくは変動幅とを計算し(S2)、発電出力の変動の大きさの指標w
i及び平均出力の変動の大きさの指標w
Mavを用いて数式8によってM箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の平均的な相関r
Mavを算出し(S3)、平均的な相関r
Mavを用いて数式9によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平滑化効果の指標ρ^
Nを推定し(S4)、平滑化効果の指標ρ^
Nを用いて数式10によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平均出力の変動の大きさw^
Navを推定し(S5)、平均出力の変動の大きさw^
NavをN箇所の自然エネルギー型分散電源の設備容量の合計に掛けてN箇所の自然エネルギー型分散電源の合計出力の推定したい時間帯における変動の大きさを推定する(S6)ようにしている。
【0025】
また、本実施形態の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定装置は、自然エネルギー型分散電源がN箇所に設置された推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)毎に計測された天候データ及び/又は発電出力データを記憶装置としてのデータサーバ(16)から読み込む手段(11a)と、天候データ及び/又は発電出力データを用いて計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の大きさの指標w
iとしての標準偏差若しくは変動幅とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力の変動の大きさの指標w
Mavとしての標準偏差若しくは変動幅とを計算する手段(11b)と、発電出力の変動の大きさの指標w
i及び平均出力の変動の大きさの指標w
Mavを用いて数式8によってM箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の平均的な相関r
Mavを算出する手段(11c)と、平均的な相関r
Mavを用いて数式9によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平滑化効果の指標ρ^
Nを推定する手段(11d)と、平滑化効果の指標ρ^
Nを用いて数式10によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平均出力の変動の大きさw^
Navを推定する手段(11e)と、平均出力の変動の大きさw^
NavをN箇所の自然エネルギー型分散電源の設備容量の合計に掛けてN箇所の自然エネルギー型分散電源の合計出力の推定したい時間帯における変動の大きさを推定する手段(11f)とを有する。
【0026】
さらに、本実施形態の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定プログラムは、自然エネルギー型分散電源がN箇所に設置された推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)毎に計測された天候データ及び/又は発電出力データを記憶装置としてのデータサーバ(16)から読み込む手段(11a)、天候データ及び/又は発電出力データを用いて計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の大きさの指標w
iとしての標準偏差若しくは変動幅とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力の変動の大きさの指標w
Mavとしての標準偏差若しくは変動幅とを計算する手段(11b)、発電出力の変動の大きさの指標w
i及び平均出力の変動の大きさの指標w
Mavを用いて数式8によってM箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の平均的な相関r
Mavを算出する手段(11c)、平均的な相関r
Mavを用いて数式9によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平滑化効果の指標ρ^
Nを推定する手段(11d)、平滑化効果の指標ρ^
Nを用いて数式10によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平均出力の変動の大きさw^
Navを推定する手段(11e)、平均出力の変動の大きさw^
NavをN箇所の自然エネルギー型分散電源の設備容量の合計に掛けてN箇所の自然エネルギー型分散電源の合計出力の推定したい時間帯における変動の大きさを推定する手段(11f)としてコンピュータを機能させる。
【0027】
【数8】
ここに、r
Mav:M箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の
平均的な相関,
w
i:計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の
大きさの指標,
w
Mav:M箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力の変動の
大きさの指標,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数(数学的にはM≧2であれば良い)
をそれぞれ表す。
【数9】
ここに、ρ^
N:自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平滑化効果の指標,
r
Mav:M箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の
平均的な相関,
N:推定対象エリア内の自然エネルギー型分散電源の設置箇所数
(ただし、N>M。また、数学的にはN≧3であれば良い。)
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【数10】
ここに、w^
Nav:自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
平均出力の変動の大きさ,
ρ^
N:自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平滑化効果の指標
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、w
Mrmsは数式11によって算出される。
【数11】
ここに、w
i:計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の
大きさの指標,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
【0028】
そして、自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法の実行にあたっては、まず、推定対象エリアにおける天候データと発電出力データとのうちの少なくとも一方の計測が行われる(S1)。
【0029】
本発明では、N箇所に自然エネルギー型分散電源が分散されて設置されているエリアを推定対象エリアとし、当該推定対象エリア内のM箇所に計測器を設置して計測された天候データや発電出力データを用いて当該推定対象エリア内のN箇所の自然エネルギー型分散電源による合計出力の変動の大きさを推定する。なお、N>Mである。また、以下においては、複数の自然エネルギー型分散電源による合計出力の変動の大きさを推定することを単に合計出力変動量推定という。
【0030】
本発明における自然エネルギー型分散電源とは、例えば日射や風や波のような天候・自然現象に発電出力が影響を受ける発電設備であり、具体的は例えば太陽光発電設備や風力発電設備や潮力発電設備などが挙げられる。
【0031】
そして、天候データを収集するための計測器として、推定対象エリア内に設置された自然エネルギー型分散電源の発電出力に関係する(言い換えると、発電出力が影響を受ける)天候・自然現象に纏わるデータを収集し得る機器が用いられ、具体的には例えば推定対象エリア内に太陽光発電設備が設置されていて太陽光発電の発電出力の変動の大きさを推定する場合には日射計,照度計,輝度計などが用いられ、風力発電設備が設置されていて風力発電の発電出力の変動の大きさを推定する場合には風量計,風速計などが用いられ、潮力発電設備が設置されていて潮力発電の発電出力の変動の大きさを推定する場合には波高計,風量計,風速計などが用いられる。なお、推定対象エリア内に複数種類の自然エネルギー型分散電源が設置されていてそれら複数種類の分散電源の発電出力の変動の大きさを推定する場合には各々に対応する天候データを収集するための複数種類の計測器が設置される。
【0032】
また、本発明では、天候データの代わりに発電出力を計測して得られる発電出力データを推定に用いるようにしても良く、具体的には、推定対象エリア内に太陽光発電設備が設置されていて太陽光発電の発電出力の変動の大きさを推定する場合には太陽光発電出力を計測し、風力発電設備が設置されていて風力発電の発電出力の変動の大きさを推定する場合には風力発電出力を計測し、潮力発電設備が設置されていて潮力発電の発電出力の変動の大きさを推定する場合には潮力発電出力を計測するようにしても良い。なお、発電出力を計測する場合には、推定対象エリア内に設置されている実際の発電設備に計測器を取り付けて当該実際の発電設備の発電出力を計測するようにしても良いし、発電出力データ収集用の発電設備を別に設置して発電出力を計測するようにしても良い。
【0033】
なお、天候データと発電出力データとを両方計測するようにしても良い。
【0034】
本発明における推定対象エリアは、複数の自然エネルギー型分散電源による合計出力の変動の大きさを把握する単位としての地域であり、広さなどは特定の大きさ(つまり面積)に限定されるものではなく、例えば電力系統における電力の需要と供給とのバランス運用の単位としての地域の拡がりなどを考慮し、具体的には例えば数十〜数万〔km
2〕程度の範囲で設定されることが考えられる。なお、推定対象エリアの面積や形状は本発明による推定内容には影響がない。
【0035】
また、自然エネルギー型分散電源の設置箇所数Nは、推定対象エリア内の分散電源の導入設備容量に応じて適宜設定されるものであり、特定の数値或いは範囲に限定されるものではない。具体的には例えば数十〜数百〔箇所〕程度の範囲で設定されることが考えられる。
【0036】
なお、本発明は、現状における合計発電出力の変動の大きさの推定に用いるようにしても良いし、将来における合計発電出力の変動の大きさの推定に用いるようにしても良い。すなわち、自然エネルギー型分散電源の設置箇所数Nは、現状の変動の大きさを推定する場合には推定対象エリア内に実際に存在する分散電源の設置箇所数とするようにしても良いし、将来における変動の大きさを推定する場合には推定対象エリアについて将来において想定される分散電源の設置箇所数とするようにしても良い。さらに言えば、後述するように、推定対象エリア内に現状において設置されている自然エネルギー型分散電源が非常に多い場合や将来において設置が想定される自然エネルギー型分散電源が非常に多い場合などには、自然エネルギー型分散電源の設置箇所数Nは具体的な数値ではなくて漠然と非常に大きな数値と捉えても良い。
【0037】
また、天候データや発電出力データを計測する計測器(発電出力データ収集用の発電設備を含む。以下同じ)の設置箇所数Mは、2以上であり且つ本発明における目的を考慮して自然エネルギー型分散電源の設置箇所数Nよりも小さい数値であれば、特定の数値或いは範囲に限定されるものではない。具体的には例えば、2〜数十〔箇所〕程度の範囲で設定されることが考えられる。なお、計測器の設置箇所数Mが多いほど合計出力変動量推定の精度が高くなるため好ましい。
【0038】
また、天候データや発電出力データを計測する計測器の配置の形態は、等間隔配置など一定規則配置でもランダム配置でも良く特定の配置形態に限定されるものではないが、推定対象エリア全体に亘って満遍なく分布して計測されたデータを用いることによって発電出力の変動の推定精度の向上を図ることができるため、推定対象エリア内の一部分に寄せ集められて配置されるよりも推定対象エリア内に偏り無く均等に分布していることが好ましい。
【0039】
天候データや発電出力データは、全ての計測器で時刻同期がとられて(即ち、同時刻に)計測される。計測において時刻同期をとる方法は、特定の方法に限定されるものではなく、例えばGPSを利用したりインターネット上の時刻サーバーを利用したり標準電波(電波時計)を利用したりすることが考えられる。
【0040】
次に、S1の処理によって計測され取得されたデータ(具体的には、天候データ,発電出力データ)を用いて自然エネルギー型分散電源の発電出力の推定したい時間帯における変動の大きさの指標の計算が行われる(S2)。
【0041】
ここで、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法におけるS2以降の処理は本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定装置によって実行され得る。
【0042】
そして、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法におけるS2以降の処理及びこれら処理を実行する自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定装置は、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定プログラムをコンピュータ上で実行することによっても実現され得る。本明細書では、自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定プログラムをコンピュータ上で実行することによってS2以降の処理を実行する自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定装置が実現されると共に自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法におけるS2以降の処理が実行される場合を説明する。
【0043】
自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定プログラム17を実行するためのコンピュータ10(本実施形態では、自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定装置10でもある)の全体構成を
図2に示す。このコンピュータ10(自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定装置10)は、制御部11、記憶部12、入力部13、表示部14及びメモリ15を備え相互にバス等の信号回線によって接続されている。また、コンピュータ10には記憶装置としてのデータサーバ16がバス等の信号回線によって接続されており、その信号回線を介してデータや制御指令等の信号の送受信(即ち出入力)が相互に行われる。
【0044】
制御部11は記憶部12に記憶されている自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定プログラム17によってコンピュータ10全体の制御並びに自然エネルギー型分散電源群による合計出力の変動の大きさの推定に係る演算を行うものであり、例えばCPU(中央演算処理装置)である。
【0045】
記憶部12は少なくともデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。
【0046】
メモリ15は制御部11が種々の制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となるものであり、例えばRAM(Random Access Memory の略)である。
【0047】
入力部13は少なくとも作業者の命令を制御部11に与えるためのインターフェイスであり、例えばキーボードである。
【0048】
表示部14は制御部11の制御によって文字や図形等の描画・表示を行うものであり、例えばディスプレイである。
【0049】
そして、本実施形態では、上述のS1の処理において計測され取得された天候データ,発電出力データが計測データベース18としてデータサーバ16に格納(保存)される。なお、S1の処理において計測されたデータは、例えば、各計測器から適当な記憶媒体に保存されて作業者によってデータサーバ16内の計測データベース18に記録・蓄積されるようにしても良いし、各計測器から通信手段(無線・有線)を介してデータサーバ16内の計測データベース18に自動的に記録・蓄積されるようにしても良い。
【0050】
ここで、本発明において用いられるデータは、日射量データや太陽光発電出力データ,風量データや風力発電出力データ,潮力データや潮力発電出力データなどであり、推定対象エリア内に存在して発電出力の変動の大きさの推定対象とされる自然エネルギー型分散電源の種類に応じたものが計測時刻と対応づけられて記録・蓄積される。以下では、S1の処理において計測され取得されたデータのことを具体の種類を問わずに単に計測データと呼ぶ。
【0051】
そして、コンピュータ10(本実施形態では、自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定装置10でもある)の制御部11には、自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定プログラム17を実行することにより、S1の処理において自然エネルギー型分散電源がN箇所に設置された推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)毎に計測された計測データを記憶装置としてのデータサーバ16から読み込む処理を行うデータ読込部11aと、計測データを用いて計測地点iでの推定したい時間帯における自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の大きさの指標w
iとしての標準偏差若しくは変動幅と推定したい時間帯におけるM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力の変動の大きさの指標w
Mavとしての標準偏差若しくは変動幅とを計算する処理を行う出力変動指標計算部11bと、発電出力の変動の大きさの指標w
i及び平均出力の変動の大きさの指標w
Mavを用いて数式8によって自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の平均的な相関r
Mavを算出する処理を行う平均的相関算出部11cと、平均的な相関r
Mavを用いて数式9によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平滑化効果の指標ρ^
Nを推定する処理を行う平滑化効果推定部11dと、平滑化効果の指標ρ^
Nを用いて数式10によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平均出力の変動の大きさw^
Navを推定する処理を行う平均出力変動推定部11eと、平均出力の変動の大きさw^
NavをN箇所の自然エネルギー型分散電源の設備容量の合計に掛けてN箇所の自然エネルギー型分散電源の合計出力の推定したい時間帯における変動の大きさを推定する処理を行う合計出力変動推定部11fとが構成される。
【0052】
自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定プログラム17が実行されることによる具体的な処理としては、まず、コンピュータ10(自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定装置10)の制御部11に構成されたデータ読込部11aが計測データの読み込みを行う(S2−1)。
【0053】
具体的には、データ読込部11aは、S1の処理において計測され取得されてデータサーバ16に格納されている計測データベース18に記録されている計測データを計測時刻と共にデータサーバ16から読み込む。
【0054】
データ読込部11aが読み込む計測データの時間帯は推定したい時間帯であり、例えば、或る一時間における合計出力変動量推定を行う場合には計測時刻から当該時間帯を判別して前記或る一時間分のデータを読み込み、又は、或る一日における合計出力変動量推定を行う場合には計測時刻から当該時間帯を判別して前記或る一日分のデータを読み込み、又は、或る一ヶ月における合計出力変動量推定を行う場合には計測時刻から当該時間帯を判別して前記或る一ヶ月分のデータを読み込む。
【0055】
データ読込部11aが読み込む計測データの時間帯は、例えば、読み込むデータの期間の指定を求める内容のメッセージをS2−1の処理を行う段階で表示部14に表示し、入力部13を介して入力された作業者の指定に合わせて決定されるようにすることが考えられる。
【0056】
データ読込部11aは、S2−1の処理によって計測データベース18から推定したい時間帯から読み込んだ計測データが天候データである場合には、当該天候データを自然エネルギー型分散電源の発電出力に換算して発電出力データに変換する(S2−2)。
【0057】
天候データを発電出力に換算する方法は、特定の方法に限定されるものではなく、例えば換算係数を掛ける方法や物理モデルを作成してシミュレーションする方法など複数のものがあり、いずれの方法であっても良い。また、これらの換算方法自体は周知の技術であるのでここでは詳細については省略する。なお、計測データベース18から読み込んだデータが元より発電出力データである場合にはこのS2−2の処理は行わない。
【0058】
また、データ読込部11aは、計測データベース18から読み込んだ天候データを変換した発電出力データ、或いは、計測データベース18から読み込んだままの発電出力データを0〜1の範囲の値に規格化し(S2−3)、計測時刻と対応づけてメモリ15に記憶させる。
【0059】
発電出力データの規格化は、発電出力の値を自然エネルギー型分散電源の設備容量(即ち定格容量・定格出力)で除すことによって行う。具体的には、天候データを変換して得られた発電出力データを規格化する場合には、換算処理によって得られた発電出力の値を、換算処理において前提とした設備容量で除すことによって行う。また、計測によって得られたままの発電出力データを規格化する場合には、計測データベース18から読み込んだ発電出力の値を、計測対象とした実際の発電設備の設備容量若しくは発電出力データ収集用の発電設備の設備容量で除すことによって行う。なお、規格化を行うための自然エネルギー型分散電源の設備容量(即ち定格容量)の値データは、例えば設備容量データファイルとして記憶部12やデータサーバ16に予め格納(保存)される。
【0060】
続いて、制御部11の出力変動指標計算部11bが、S2−3の処理によって規格化された発電出力データを用いて自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の大きさの指標の計算を行う(S2−4)。
【0061】
本発明では、自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の大きさの指標として標準偏差,変動幅を算出して用いる。
【0062】
標準偏差や変動幅の算出に当たっては、S2−1の処理において推定したい時間帯から読み込んだデータの長さ(例えば、1時間分,1日分,1ヶ月分など)をデータ長a〔分〕とすると共に、発電出力の変動の大きさの指標(即ち、標準偏差や変動幅)を算出する時間幅を時間窓b〔分〕とし、当該時間窓を移動させる時間を移動時間c〔分〕とする。なお、データ長a≧時間窓bである。
【0063】
本実施形態では、S1の処理において1分間隔で計測が行われ、以降の処理で用いる時刻tの間隔も1分とする。そして、データ長a,時間窓b,移動時間cも分単位で指定される。なお、S1の処理における計測の間隔は、1分に限定されるものではなく、1分間隔よりも短い間隔でも長い間隔でも構わない。また、時刻tの間隔も、1分に限定されるものではなく、計測間隔以上の間隔であれば1分間隔よりも短い間隔でも長い間隔でも構わない。
【0064】
時間窓b及び移動時間cの値は、例えば、時間窓b及び移動時間cの値の指定を求める内容のメッセージをS2−4の処理を行う段階で表示部14に表示し、入力部13を介して入力された作業者の指定に合わせて決定されるようにすることが考えられる。
【0065】
ここで、発電出力の変動の大きさの指標としては、標準偏差と変動幅とのうちのどちらか一方のみを算出して用いるようにしても良いし、両方を算出して用いるようにしても良い。そして、標準偏差と変動幅との両方を算出した場合には、以降の処理によって標準偏差をベースとした自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさが推定されると共に変動幅をベースとした自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさが推定される。この場合には、標準偏差をベースとした推定結果は時間窓b内の変動の平均値をベースとする合計出力の変動の大きさであって平均的な変動の大きさであり、変動幅をベースとした推定結果は時間窓b内の変動の最大値をベースとする合計出力の変動の大きさであって極端な場合での変動の大きさであるので、例えば、変動幅ベースの変動の大きさを活用して発電機の運用を検討し、標準偏差ベースの変動の大きさを参考値として使用することなどが考えられる。
【0066】
出力変動指標計算部11bが発電出力の変動の大きさの指標を計算する対象は以下の二つである。
【0067】
<1>計測データに基づく計測地点i別の自然エネルギー型分散電源の発電出力x
iについての標準偏差,変動幅
なお、発電出力x
iは、計測地点i毎の計測器で計測されたデータがS2−3の処理において0〜1の範囲の値に規格化された値である。
【0068】
<2>計測データに基づくM箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力(0〜1に規格化された値)の平均値x
Mav(平均出力x
Mav)についての標準偏差,変動幅
なお、平均出力x
Mavは数式12によって算出される。
【数12】
ここに、x
Mav(t):M箇所の自然エネルギー型分散電源の時刻tにおける平均出力,
x
i(t):計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の時刻tにおける出力,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
【0069】
発電出力の変動の大きさの指標である標準偏差の定義(言い換えると、計算イメージ)及び標準偏差とデータ長a,時間窓b,移動時間cとの間の関係を
図3に、また、変動幅の定義(言い換えると、計算イメージ)及び変動幅とデータ長a,時間窓b,移動時間cとの間の関係を
図4に示す。
【0070】
ここで、データ長a=時間窓bである場合には、データ長aの全体に対して発電出力の変動の大きさの指標が一つだけ計算されることになり、言い換えると、データ長aのデータの全てを一括して使って発電出力の変動の大きさの指標を一つだけ計算することになり、そして、最終的に推定される自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動の大きさも一つである。
【0071】
一方、データ長a>時間窓bである場合には、発電出力の変動の大きさの指標を計算する区分として例えば以下のものが挙げられ、これらの区分に従って発電出力の変動の大きさの指標が一つ若しくは複数計算されることになり、そして、最終的に推定される自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動の大きさも一つあるいは複数である。
ア)移動時間c分で移動する毎(指標は複数)
イ)データ長a分内における最大値(指標は一つ)
ウ)データ長a分内における平均値(指標は一つ)
エ)データ長a分内におけるXパーセンタイル値(一つのXにつき指標は一つ)
【0072】
ここで、発電出力の変動の大きさの指標を計算する区分は上記アからエまでのいずれでも良く、また、上記アからエまでのいずれであってもこれ以降の処理において特別に異なる点はないので、以降の説明では発電出力の変動の大きさの指標の計算区分を特定しないで説明する。
【0073】
なお、発電出力の変動の大きさの指標の計算区分は、例えば、当該計算区分の指定を求める内容のメッセージをS2−4の処理を行う段階で表示部14に表示し、入力部13を介して入力された作業者の指定に合わせて決定されるようにすることが考えられる。
【0074】
出力変動指標計算部11bは、数式13によって、時刻tにおける標準偏差σ(t)を計算する。なお、本実施形態では前述の通り計測の間隔及び時刻tの間隔が1分であると共に時間窓bが分単位で指定されるので、数式13では標準偏差を計算するデータの個数(即ち、√の中の分母)が「b+1」となっている。すなわち、時刻tの間隔や時間窓bの設定の仕方によっては「b+1」ではなく、標準偏差の定義通りにデータの個数を当てはめる。
【数13】
ここに、σ(t):時刻tにおける標準偏差,
x(t):計算対象の計測地点での時刻tにおける発電出力データ,
x
-:x(t)〜x(t+b)の平均値,
b:時間窓の長さ〔分〕
をそれぞれ表す。
【0075】
出力変動指標計算部11bは、また、時刻tから時刻t+bまでの間におけるx(t)の最大値x
max(t)と最小値x
min(t)とを用い、時刻tにおける変動幅f(t)をf(t)=x
max(t)−x
min(t)によって計算する。
【0076】
なお、出力変動指標計算部11bによって計算される標準偏差σ(t)や変動幅f(t)は、0≦x(t)≦1であるから、0〜1の範囲の値をとる。
【0077】
以上から、計測地点i別の自然エネルギー型分散電源の発電出力x
iについての変動の大きさの指標(標準偏差σ,変動幅f)及びM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力x
Mavについての変動の大きさの指標(標準偏差σ,変動幅f)が、発電出力の変動の大きさの指標の計算区分に従って計算される。
【0078】
そして、出力変動指標計算部11bは、計算した、計測地点i別の自然エネルギー型分散電源の発電出力x
iについての変動の大きさの指標の値及びM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力x
Mavについての変動の大きさの指標の値をメモリ15に記憶させる。
【0079】
次に、制御部11の平均的相関算出部11cが、S2の処理によって計算された自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の大きさの指標を用いて推定対象エリア内での自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の平均的な相関の算出を行う(S3)。
【0080】
具体的には、平均的相関算出部11cは、S2−4の処理においてメモリ15に記憶された計測地点i別の自然エネルギー型分散電源の発電出力x
iについての変動の大きさの指標の値及びM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力x
Mavについての変動の大きさの指標の値をメモリ15から読み込み、数式14によって、平均的な相関r
Mavを算出する(なお、数式14の理論的根拠については後記<参考1>を参照)。
【数14】
ここに、r
Mav:M箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の
平均的な相関,
w
i:計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の大きさ,
w
Mav:M箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力の変動の大きさ,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
【0081】
なお、発電出力の変動の大きさw
iは、より具体的には、計測地点iで計測されたデータから得られた個々の自然エネルギー型分散電源の発電出力についての変動の大きさの指標の値であり、S2−4の処理において発電出力の変動の大きさの指標の計算区分に従って計算された個々の自然エネルギー型分散電源の発電出力x
iについての変動の大きさの指標(標準偏差,変動幅)の値である。
【0082】
また、平均出力の変動の大きさw
Mavは、より具体的には、M箇所の計測地点で計測されたデータから得られた自然エネルギー型分散電源の平均出力についての変動の大きさの指標の値であり、S2−4の処理において発電出力の変動の大きさの指標の計算区分に従って計算されたM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力x
Mavについての変動の大きさの指標(標準偏差,変動幅)の値である。
【0083】
そして、平均的相関算出部11cは、算出した平均的な相関r
Mavの値をメモリ15に記憶させる。
【0084】
次に、制御部11の平滑化効果推定部11dが、S3の処理によって算出された自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の平均的な相関を用いて推定対象エリアにおける平滑化効果の指標の推定を行う(S4)。
【0085】
この処理(そしてこの処理によって推定される指標)は、本発明の特徴の一つであり、S3の処理によって得られた推定対象エリア内での自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の平均的な相関から、当該エリア内の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の平滑化効果の程度を表す指標を自然エネルギー型分散電源の設置箇所数に応じて推定するものである。
【0086】
具体的には、平滑化効果推定部11dは、S3の処理においてメモリ15に記憶された平均的な相関r
Mavの値をメモリ15から読み込み、数式15によって、N箇所に自然エネルギー型分散電源が分散配置されている推定対象エリアでの平滑化効果の指標ρ^
Nを推定する(なお、数式15の理論的根拠については後記<参考2>を参照)。
【数15】
ここに、ρ^
N:自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平滑化効果の指標,
r
Mav:M箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の
平均的な相関,
N:推定対象エリア内の自然エネルギー型分散電源の設置箇所数
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、自然エネルギー型分散電源の設置箇所数N>計測地点の箇所数Mである。
【0087】
そして、平滑化効果推定部11dは、推定した平滑化効果の指標ρ^
Nの値をメモリ15に記憶させる。
【0088】
次に、制御部11の平均出力変動推定部11eが、S4の処理によって推定された平滑化効果の指標を用いて推定対象エリアの自然エネルギー型分散電源の平均出力の変動の大きさの推定を行う(S5)。
【0089】
具体的には、平均出力変動推定部11eは、S4の処理においてメモリ15に記憶された平滑化効果の指標ρ^
Nの値をメモリ15から読み込み、数式16によって、推定対象エリア内のN箇所に自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の平均出力の変動の大きさw^
Navを推定する。
【数16】
ここに、w^
Nav:自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
平均出力の変動の大きさ,
ρ^
N:自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平滑化効果の指標
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、w
Mrmsは数式17によって算出される。
【数17】
ここに、w
i:計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の大きさ,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
【0090】
ここで、推定対象エリア内の自然エネルギー型分散電源の設置箇所数Nが例えば100以上の十分に大きい数である場合には1>>1/Nであると考えられる。このため、自然エネルギー型分散電源が多数導入されている推定対象エリアでは、数式15についてN→∞として収束させた場合のρ^
N=r
Mavを数式16に代入して得られる数式18によって平均出力の変動の大きさを推定するようにしても良い。
【数18】
ここに、w^
∞,av:自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
平均出力の変動の大きさ,
r
Mav:M箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の間の
平均的な相関
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、w
Mrmsは数式17によって算出される。
【0091】
数式18は、例えば将来の予測のように導入設備容量は定量的に示されていても自然エネルギー型分散電源の設置箇所数を具体的な数値で特定することが困難であるときに、具体的な設置箇所数に依らずに平均出力の変動の大きさを求める場合に用いられ得る。
【0092】
そして、平均出力変動推定部11eは、推定した、推定対象エリア内のN箇所に自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の平均出力の変動の大きさw^
Navの値、或いは、推定対象エリア内に多数の自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の平均出力の変動の大きさw^
∞,avの値をメモリ15に記憶させる。
【0093】
次に、制御部11の合計出力変動推定部11fが、S5の処理によって推定された平均出力の変動の大きさを用いて推定対象エリアの自然エネルギー型分散電源の合計出力の推定したい時間帯における変動の大きさの推定を行う(S6)。
【0094】
具体的には、合計出力変動推定部11fは、S5の処理においてメモリ15に記憶された推定対象エリア内のN箇所に自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の平均出力の変動の大きさw^
Navの値をメモリ15から読み込み、数式19によって、推定対象エリア内のN箇所に自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の合計出力の変動の大きさW(N)を推定する。
【数19】
ここに、W^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力の変動の大きさ,
C
N:N箇所の自然エネルギー型分散電源の設備容量の合計,
w^
Nav:自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
平均出力の変動の大きさ
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【0095】
あるいは、例えば将来の予測のように導入設備容量は定量的に示されていても自然エネルギー型分散電源の設置箇所数を具体的な数値で特定することが困難である場合で推定対象エリア内に自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときのこれら分散電源の合計出力の変動の大きさを推定する場合には、合計出力変動推定部11fは、S5の処理においてメモリ15に記憶された推定対象エリア内に多数の自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の平均出力の変動の大きさw^
∞,avの値をメモリ15から読み込み、数式20によって、推定対象エリア内に多数の自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の合計出力の変動の大きさW(∞)を推定する。
【数20】
ここに、W^(∞):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計出力の変動の大きさ,
C
∞:自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの設備容量の合計,
w^
∞,av:自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
平均出力の変動の大きさ
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【0096】
そして、合計出力変動推定部11fは、S6までの処理による推定結果として、自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさW^(N)(或いは、W^(∞))の値を、表示部14に表示したり、例えば記憶部12やデータサーバ16に推定結果データファイルとして保存したりする。
【0097】
そして、制御部11は、自然エネルギー型分散電源群による合計出力の変動の大きさの推定の処理を終了する(END)。
【0098】
以上の構成を有する本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラムによれば、推定したい時間帯における推定対象エリア内の自然エネルギー型分散電源の発電出力間の平均的な相関r
Mavを算定して当該エリア内の自然エネルギー型分散電源の設置箇所数Nに応じた平滑化効果の程度(平滑化効果の指標ρ^
N)を推定すると共にこの平滑化効果の程度に基づいて自然エネルギー型分散電源群の平均出力の変動の大きさを見積もることにより、少数箇所で計測されたデータから当該計測箇所数よりも多い数の自然エネルギー型分散電源による合計出力の推定したい時間帯における変動の大きさを推定するようにしているので、少量のデータから、また処理内容としては簡便に、機器にとっては小さい計算負荷で、自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさを推定することができ、データ収集にかかる費用と手間とを低減させ、また、特別の計算機器等の設備を用いることなく推定処理を行い、さらに、必要な場合には合計出力の変動傾向把握の即時性を高め、自然エネルギー型分散電源群の合計出力変動量推定技術としての汎用性の向上を図ることが可能になる。また、推定したい時間帯を指定できるので、当該時間帯における気象条件を考慮した相関を算定でき、信頼性の高い推定が可能になる。
【0099】
また、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラムによれば、自然エネルギー型分散電源の設置箇所数Nを具体的な数値で特定することなく、漠然と大きな数値であるとの仮定でも自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさを推定するようにもできるので、この点においても、自然エネルギー型分散電源群の合計出力変動量推定技術としての汎用性の向上を図ることが可能になる。
【0100】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるが本発明の実施の形態がこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では計測データが蓄積される記憶手段をデータサーバ16としているが、記憶部12でも良いし、他の記憶装置を用いるようにしても良い。また、計測データを記憶装置に一旦蓄積することなく、計測器からコンピュータ10(自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定装置10)に直接入力し、入力されたデータから処理を順次行うようにしても良い。
【0101】
<参考1>数式14の理論的根拠
複数の計測地点でデータを計測する場合において、地点iの計測器で時刻tに計測したデータに基づく発電出力をx
i(t)とする。また、地点iでの発電出力の平均値をm
iとすると共に標準偏差をσ
iとする。このとき、数式21で表される複数の計測地点の合計出力の標準偏差σ
totalは数式22で計算される。
【数21】
【数22】
ここに、E[ ]:期待値演算,
s
ij:地点iの発電出力と地点jの発電出力との間の共分散
をそれぞれ表す。
【0102】
一方、地点iの発電出力と地点jの発電出力との間の相関係数r
ijは数式23で定義される。
【数23】
【0103】
数式22と数式23とにより数式24が導出される。
【数24】
【0104】
数式24は数学的厳密性から言えば標準偏差について成立する式であるが、変動幅も標準偏差にある程度比例すると仮定することにより、数式24は変動幅にも近似的に成立するとして数式24を一般的な形式に拡張する。この考えより、数式25が導出される。
【数25】
ここに、w
M:M箇所の計測地点の合計出力の変動の大きさ(0〜M) を表す。
【0105】
数式25について、一般的には相関係数r
ijは地点i,jの組合せにより異なるが、全ての組合せの相関係数の平均値r
Mavにどの組合せの相関係数も一致していると仮定する。その結果、数式25より数式26が得られる。
【数26】
【0106】
以上により、数式14の平均的な相関の大きさが導出される。
【0107】
<参考2>数式15の理論的根拠
実際に計測したM箇所のデータから平滑化効果の指標ρ
Mを直接に計算する式は数式27のように表される。
【数27】
ここで、w
MrmsはM箇所での出力変動の大きさの二乗値の平均値の平方根であり、数式28で表される。
【数28】
【0108】
数式14に数式27を代入すると数式29が得られる。
【数29】
【0109】
ここで、推定対象エリア内ではいずれの計測地点での変動の大きさも同じであると仮定する。つまり、w
i2=w
Mrms2 及び w
iw
j=w
Mrms2 が成り立つと仮定する。この仮定により、平滑化効果の指標ρ
Mと平均的な相関r
Mavとの間の関係式として数式30又は数式31が得られる。
【数30】
【数31】
【0110】
なお、数式30又は数式31を導出する際、数式32に示す関係式を利用している。
【数32】
【0111】
数式31は、M箇所の計測地点で計測したデータについての平滑化効果の指標を平均的な相関によって算出する式である。そこで、自然エネルギー型分散電源が設置された箇所数がN(N>M)の場合について、自然エネルギー型分散電源の設置箇所数が増えても平均的な相関r
Mavの大きさは変わらないと仮定すると、数式31でMの代わりにNを用いることによりN箇所に自然エネルギー型分散電源がある場合の平滑化効果の指標が得られる。すなわち推定対象エリア内のN箇所に自然エネルギー型分散電源が分散配置されている場合の平滑化効果の指標の推定式である数式15が得られる。
【実施例1】
【0112】
本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法を模擬データに適用した実施例を
図5及び
図6を用いて説明する。なお、本実施例では、自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法プログラムをコンピュータ上で実行することによって自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法装置が実現されると共に自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定方法における処理が実行される場合を説明する。
【0113】
本実施例では、10km四方程度のエリアにおいてX1,X2,X3,X4,X5の5箇所の計測地点で計測したデータから得られた自然エネルギー型分散電源の発電出力を模擬したデータを用いて推定を行った。本実施例で用いた計測地点別の模擬データを
図5に示す。
【0114】
次に、各計測地点X1,X2,X3,X4,X5の自然エネルギー型分散電源の発電出力を模擬したデータからこれら5箇所の計測地点X1〜X5の自然エネルギー型分散電源の平均出力を求めて
図6に示す結果が得られた。
図6に示す結果から、平均出力の変動は個々の計測地点X1,X2,X3,X4,X5における個別出力の変動よりも平滑化効果によって小さいことが確認された。
【0115】
計測地点別の自然エネルギー型分散電源の個別出力の標準偏差と5箇所の計測地点の自然エネルギー型分散電源の平均出力の標準偏差とを計算して表1に示す結果が得られた。表1に示す結果から、5箇所の計測地点の自然エネルギー型分散電源の平均出力の標準偏差(X5av欄)は計測地点別の自然エネルギー型分散電源の個別出力の標準偏差(X1,X2,X3,X4,X5の各欄)よりも平滑化効果によって小さいことが確認された。
【0116】
【表1】
【0117】
表1の出力の変動の大きさの指標としての標準偏差の値と数式14とから分散電源5箇所設置時の平均的な相関を計算して表2左欄に示す結果が得られ、表1の標準偏差の値と数式27とから分散電源5箇所設置時の平滑化効果の指標を計算して表2右欄に示す結果が得られた。
【0118】
【表2】
【0119】
そして、本実施例では、当該エリアにおける10箇所に設置された自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさを推定した。表2左欄の平均的な相関の値と数式15とから10箇所設置したときの平滑化効果の指標の推定値を計算すると共に、当該平滑化効果の指標の推定値と数式16とから10箇所設置したときの平均出力の標準偏差の推定値を計算し、表3に示す結果が得られた。
【0120】
【表3】
【0121】
また、表2左欄と数式18とから自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの平均出力の変動の大きさを推定して0.030〔kW〕であるとの結果が得られた。
【0122】
以上の結果から、自然エネルギー型分散電源が複数設置された場合の、エリア全体としての発電の合計出力の変動の平滑化効果を考慮した合計出力の変動の大きさについて妥当な結果を推定可能であることが確認された。