特許第5946776号(P5946776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946776
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20160623BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   G01N35/02 A
   G01N35/02 G
   G01N21/03 Z
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-7049(P2013-7049)
(22)【出願日】2013年1月18日
(65)【公開番号】特開2014-137319(P2014-137319A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077816
【弁理士】
【氏名又は名称】春日 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100156524
【弁理士】
【氏名又は名称】猪野木 雄一
(72)【発明者】
【氏名】和久井 章人
(72)【発明者】
【氏名】牧野 彰久
【審査官】 渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−521485(JP,A)
【文献】 特開昭59−028642(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/098946(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/073604(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/004781(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/02
G01N 21/03
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動分析装置であって、
検体と試薬を混合し反応させた反応液を保持する、その底部がレンズ構造となっている反応容器と、
この反応容器を支持する反応容器支持部と、
前記反応容器に支持された前記反応液に光を照射する光源と、
この光源から照射された光を検出する検出部と、
前記反応容器内の前記反応液内に生起する前記光源からの光の焦点の高さ位置を調整する焦点調整部とを備えた
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記光源は、前記反応容器の下方に位置し、
前記検出部は、前記反応容器の側方に位置する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動分析装置において、
前記焦点調整部として、
前記反応容器と、
前記反応容器を複数保管する反応容器供給部と、
測定項目に応じた前記反応容器を選択する制御部と、
この制御部で選択された前記反応容器を、前記反応容器供給部から前記反応容器支持部に移送する反応容器移送機構とを更に備えた
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の自動分析装置において、
前記反応容器は、その底部のレンズ形状が異なる複数種類が存在し、
前記制御部は、測定項目に応じたレンズ形状の反応容器を選択する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項3に記載の自動分析装置において、
前記反応容器は、外形形状が異なる複数種類が存在し、
前記制御部は、測定項目に応じた外形形状の反応容器を選択する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の自動分析装置において、
前記焦点調整部として、
前記反応容器を複数保管する反応容器供給部と、
測定項目に応じて前記反応容器支持部に設置されたスペーサとを更に備えた
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の自動分析装置において、
前記焦点調整部として、
前記反応容器を複数保管する反応容器供給部と、
測定項目に応じた形状をした前記反応容器支持部を選択する制御部と、
この制御部で選択された前記反応容器支持部に、前記反応容器供給部から前記反応容器を移送する反応容器移送機構とを更に備えた
ことを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などの試料に含まれる成分量を分析する自動分析装置であって、特に生化学分析項目、免疫分析項目、血液凝固時間項目、凝固・線溶マーカ項目が測定可能な自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的検査装置で、光源からの光を試験されるサンプルに合焦させ、かつサンプルによって放射される光を集めるにあたって、単純な、あまり複雑でない構造で、サンプルウェルトレイの下からサンプルウェル内に入射する光を合焦し、かつサンプルによって放射される光を集光するために、サンプルウェルの底部にウェルレンズを配置し、光源からの励起光をサンプルの領域に合焦するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2005/001434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検体に含まれる成分量を分析する自動分析装置として、光源からの光を、検体又は試料と試薬とが混合した反応液に照射して、得られる単一または複数の波長の透過光量または散乱光量を測定し、光量と濃度の関係から成分量を算出するものが知られている。
【0005】
このような自動分析装置で測定する項目の一つとして、血液凝固能(血液凝固時間)に関するものがある。この項目は、いずれも凝固を開始させる試薬を添加することにより析出するフィブリンを、光学的、物理的、電気的手法で検出することによって測定する。光学的手段を用いる方法としては、反応液に光を照射し、散乱光や透過光の経時的な強度変化をとらえることで、フィブリンが析出し始める時間を算出する方法が知られている。
【0006】
血液凝固の測定では、血液凝固反応(特にFbg(フィブリノーゲン量)項目)の凝固時間は数秒と短いために0.1秒間隔程度の短い間隔での測光が必要なこと、反応液が凝固してしまうと洗浄による反応容器の再利用は不可能であることから、反応は独立した測光ポートで行われ、反応容器は使い捨てである。
【0007】
また、血液凝固・線溶検査分野には、上述の血液凝固時間測定のほか、凝固因子測定、凝固・線溶マーカ測定も含まれる。凝固因子測定は主に血液凝固時間測定部にて測定されるが、凝固・線溶マーカは合成基質法、ラテックス凝集法による分析が行われる。血液凝固時間項目は、従来からのPT(プロトロンビン時間),APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間),Fbgでほぼ固定されている。これに対し、凝固・線溶マーカ項目は、DIC(播種性血管内凝固)等の早期診断・治療の要求から今後も増加が見込まれ、自動分析装置の処理能力向上が必要となってきている。
【0008】
しかしながら、凝固・線溶マーカ項目は、透過光測定可能な測光ポートにて測定されるため、従来の血液凝固自動分析装置では、凝固時間も凝固・線溶マーカも固定の測光ポートで分析することが通常であった。
【0009】
ここで、血液凝固時間測定における反応時間は、項目により10秒から数分である。このため、血液凝固時間測定において1つの検体を測定するために、測定対象を保持する反応容器を測定開始から終了まで独立した測光ポートに占有させた状態とする必要があり、装置の処理能力が低下することになる。
【0010】
また、血液凝固時間測定では、再現性や低濃度検体の測定感度を向上させるために光源の光強度を大きくしており、一般的にレンズを用いて集光することで対応している。更に、血液凝固分析では、単一または複数の波長の透過光量または散乱光量を測定して、光量と濃度の関係から成分量を算出しているが、項目によって最適な検出角度は異なる。
このため、項目によって検出する角度が可変となれば、より測定感度の高い分析装置を提供することができるようになる。このためには、光源から照射された光の集光位置を変えればよい。
【0011】
上述の特許文献1は、サンプルウェルトレイの下からサンプルウェル内に入射する光を合焦して集光するために、サンプルウェルの底部にウェルレンズを配置している。しかし、測定項目によって最適な検出角度で散乱光測定を行うことについては配慮がなされていないため、効率的に感度の高い分析を実施することが難しいとの問題がある。
【0012】
本発明の目的は、分析項目に応じて最適な検出角度で散乱光測定を行うことができ、効率的に、感度の高い分析を実施することができる自動分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、自動分析装置であって、検体と試薬を混合し反応させた反応液を保持する、その底部がレンズ構造となっている反応容器と、この反応容器を支持する反応容器支持部と、前記反応容器に支持された前記反応液に光を照射する光源と、この光源から照射された光を検出する検出部と、前記反応容器内の前記反応液内に生起する前記光源からの光の焦点の高さ位置を調整する焦点調整部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、反応容器内での焦点を変える焦点調整部を備えることで、項目によって最適な検出角度で測定が可能となり、効率的に、測定感度を向上させた分析を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の自動分析装置の第1の実施形態の全体構成を示す概略図である。
図2】本発明の自動分析装置の第1の実施形態を構成する血液凝固時間測定部の概略の一例を示す縦断面図である。
図3】本発明の自動分析装置の第1の実施形態における血液凝固時間測定に用いる反応容器の概略の一例を示した縦断面図である。
図4】本発明の自動分析装置の第1の実施形態における血液凝固時間測定に用いる反応容器の概略の他の一例を示した縦断面図である。
図5】本発明の自動分析装置の第1の実施形態を構成する血液凝固時間測定部の概略の他の一例を示す縦断面図である。
図6】本発明の自動分析装置の第1の実施形態における血液凝固時間測定に用いる反応容器の概略の他の一例を示した縦断面図である。
図7】本発明の自動分析装置の第1の実施形態における血液凝固時間測定に用いる反応容器の概略の他の一例を示した縦断面図である。
図8】本発明の自動分析装置の第2の実施形態を構成する血液凝固時間測定部の概略の一例を示す縦断面図である。
図9】本発明の自動分析装置の第2の実施形態を構成する血液凝固時間測定部の概略の他の一例を示す縦断面図である。
図10】本発明の自動分析装置の第2の実施形態を構成する血液凝固時間測定部の概略の更に他の一例を示す縦断面図である。
図11】本発明の自動分析装置の第3の実施形態を構成する血液凝固時間測定部の概略の一例を示す縦断面図である。
図12】本発明の自動分析装置の第4の実施形態を構成する血液凝固時間測定部の概略の一例を示す縦断面図である。
図13】本発明の自動分析装置の第4の実施形態を構成する血液凝固時間測定部の概略の他の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の自動分析装置の実施形態を、図面を用いて説明する。
【0017】
<第1の実施形態>
本発明の自動分析装置の第1の実施形態を、図1乃至図7を用いて説明する。なお、図1乃至図7においては、自動分析装置として血液凝固能測定装置に適用した場合を例に挙げて説明する。また、本実施形態を含む他の実施形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付してあり、その繰り返しの説明は可能な限り省略するようにしている。
図1は本発明の自動分析装置の第1の実施形態の全体構成を示す概略図、図2は本発明の自動分析装置の第1の実施形態の血液凝固時間測定部の概略の一例を示す縦断面図、図3は本発明の自動分析装置の第1の実施形態における血液凝固時間測定に用いる反応容器の概略の一例を示した縦断面図、図4は本発明の自動分析装置の第1の実施形態における血液凝固時間測定に用いる反応容器の概略の他の一例を示した縦断面図、図5は本発明の自動分析装置の第1の実施形態を構成する血液凝固時間測定部の概略の他の一例を示す縦断面図、図6は本発明の自動分析装置の第1の実施形態における血液凝固時間測定に用いる反応容器の概略の他の一例を示した縦断面図、図7は本発明の自動分析装置の第1の実施形態における血液凝固時間測定に用いる反応容器の概略の他の一例を示した縦断面図である。
【0018】
図1において、血液凝固能測定装置1は、凝固時間検出部12を複数備えた反応容器温調ブロック11、測定に使用される反応容器13(この例では、ディスポーザブルの反応容器)が複数ストックされている反応容器供給部14、反応容器13を移送する反応容器移送機構16、試薬昇温機能を備えた試薬分注機構17、反応容器廃棄部18、検体分注機構20、検体が収容された検体容器22を多数保管する検体ディスク21、試薬容器24を多数保管する試薬ディスク23、コンピュータ31等により概略構成されている。
【0019】
次に、反応容器温調ブロック11に複数設けられた血液凝固時間測定部12と、この血液凝固時間測定部12に関連する部材の詳細について図2乃至図4を用いて説明する。
【0020】
図2に示すように、血液凝固時間測定部12は、反応容器13、反応容器支持部65、光源支持部56、光源57、照射側スリット64、受光側スリット61、検出器60等により概略構成されている。
【0021】
図3に示すように、反応容器13は、検体と試薬を混合した反応液を収容し、保持する容器である。反応容器13は、その底部がレンズのような集光可能な形状をしたレンズ部63を備えている。この反応容器13は、反応容器温調ブロック11の血液凝固時間測定部12において、反応容器13の設置位置を固定する機能を備えた反応容器支持部65によって固定され、支持される。この反応容器支持部65は、レンズ機能を備えた反応容器13の外形形状と合致する形状をしている。
【0022】
図4に示す反応容器13のレンズ部63は、図3に示す反応容器13のレンズ部63と異なる形状をしている。
このように、本発明の自動分析装置の第1の実施形態においては、反応容器13の底部のレンズ部63の形状は、複数種類存在している。図1に戻って、反応容器供給部14は、このようなレンズ部63のレンズ形状が異なる反応容器を複数保管している。
【0023】
図2に戻って、光源57は光源支持部56によって支持されている。
【0024】
照射側スリット64は、光源57から照射された光(照射光)58を絞るスリットである。
【0025】
異なる角度で設置された複数の検出器60および受光スリット61は、反応液52中の焦点62で散乱した光59を検出するよう、反応容器13の側面側に配置されている。
【0026】
本実施形態では、図5に示すように、底部のレンズ部63の形状が異なる反応容器13を用いると、レンズ部63の形状の違いによって、図3と比べて、反応容器13内における光源57から照射された光の焦点62が形成される高さ方向の位置を変更することができる。このように焦点62を変化させることによって、検出部に入射する光の角度を変えることができ、角度の異なる散乱光の検出が可能となる。
【0027】
次に、図1の自動分析装置1における制御系及び信号処理系について説明する。
【0028】
コンピュータ31は、分析処理前に行う初期準備動作や分析処理時の各部の分注動作、血液凝固時間測定部12での検出結果の分析処理等、血液凝固能測定装置1全体の動作を制御する。
特に、コンピュータ31は、操作者によって入力された測定依頼情報に基づき、反応容器供給部14に複数種類保管されている反応容器13のうち、測定項目に適した底部レンズ構造をしたレンズ部63の反応容器13を選択し、反応容器移送機構制御部19に対して指令を出力する。反応容器移送機構制御部19は、コンピュータ31から出力された指令が入力されると、反応容器移送機構16を作動させ、測定項目に適した底部レンズ構造をしたレンズ部63の反応容器13を反応容器供給部14から取り出し、凝固時間検体分注ポジション15に移送する。
また、測定項目に応じて検出部に入射する光の角度が変わるため、コンピュータ31は、複数設置された検出器60のうち最も切な位置の検出器60の検出結果を用いて処理を行うことで、光の焦点62の高さ方向位置を変更させたことに伴う角度の異なる散乱光の検出を実現する。
更に、コンピュータ31は、検体分注制御部33に対して指令を送り、検体の分注動作を制御する。更に、コンピュータ31は、試薬分注制御部34に対して指令を送り、試薬の分注動作を制御する。
【0029】
コンピュータ31は、インターフェース32を介して、反応容器移送機構制御部19、検体分注制御部33、試薬分注制御部34、A/D変換器35に接続されている。また、印字するためのプリンタ36、記憶装置であるメモリ37や外部出力メディア38、操作指令等を入力するためのキーボード39、画面表示するためのCRTディスプレイ(表示装置)40とも接続されている。
【0030】
A/D変換器35は、検出器60において検出された測光値をデジタル信号に変換し、コンピュータ31に取り込むための機器である。
【0031】
表示装置40としては、CRTディスプレイの他に液晶ディスプレイなどを採用できる。
メモリ37は、例えばハードディスクメモリまたは外部メモリにより構成される。メモリ37には、各操作者のパスワード、各画面の表示レベル、分析パラメータ、分析項目依頼内容、キャリブレーション結果、分析結果等の情報が記憶される。
【0032】
本実施形態においては、焦点調整部は、反応容器13,コンピュータ31,反応容器移送機構制御部19,反応容器移送機構16,反応容器供給部14とから構成される。また、検出部は、異なる角度で設置された複数の検出器60から構成されている。
【0033】
次に、各機構の血液凝固時間測定における動作の概略を説明する。
【0034】
まず、コンピュータ31は、測定依頼情報に基づき、反応容器供給部14に複数種類保管されている反応容器13のうち、測定項目に適した底部レンズ構造をしている反応容器13を選択する。
次いで、反応容器移送機構16に信号を出力して、反応容器供給部14から測定項目に適した底部レンズ構造をしている反応容器13を凝固時間検体分注ポジション15に移送する。
【0035】
次に、検体分注機構20に分注された検体を、生化学分析部の検体分注ポジションを通過させて、凝固時間検体分注ポジション15の反応容器13に分注する。
次いで、検体が分注された反応容器13を、反応容器移送機構16により反応容器温調ブロック11に備わる凝固時間検出部12へと移送する。そして、検体を37℃まで昇温し、保温する。
【0036】
また、試薬分注機構17により試薬を試薬容器24から吸引し、37℃にプリヒートする。次いで、プリヒートが完了した試薬を検体が入った反応容器13へ吐出する。このとき、試薬吐出勢いにより検体と試薬の攪拌が合わせて実施され、ここから血液凝固時間測定が開始される。この際、光源57から照射されて照射側スリット64を介した光58は、底部にレンズ部63を有する反応容器13を介して反応液52中の焦点62で集光される。そして焦点62で散乱した光59が、受光側スリット61を介して検出器60で検出される。
【0037】
血液凝固時間測定が完了した反応容器13は、反応容器移送機構16により反応容器廃棄部18から廃棄する。
また、凝固時間検出部12での検出結果がコンピュータ31に出力され、コンピュータ31により演算処理を行い、メモリ37に分析結果を記憶させる。
【0038】
上述のように、血液凝固時間測定では、1つの検体を測定するために測定対象の反応容器を測定開始から終了まで独立した測光ポートを占有する必要がある。このため、装置の処理能力が低下してしまうとの問題がある。
また、再現性や低濃度検体の測定感度を向上させるためには、光源の光強度を大きくする必要があるため、一般的にレンズを用いて集光しているものの、このレンズは測定結果に多大な影響を与える部品であるため、製造においては厳しい寸法公差が与えられており、そのコストが高くなってしまう。
このように、装置の処理能力や測定感度を向上させるためには測定器のポートを増やせばよいが、ポートを増やすごとにコストが増加し、装置価格が上昇してしまうとの問題があった。
【0039】
また、血液凝固分析では、単一または複数の波長の透過光量または散乱光量を測定して、光量と濃度の関係から成分量を算出しているが、項目によって最適な検出角度は異なる。
このため、項目によって検出する角度が可変となれば、より測定感度の高い分析装置を提供することができるようになる。このためには、光源から照射された光の集光位置を変えればよい。その方法の一つとして、測定部に設けられたレンズの位置を可変させることが考えられる。しかし、処理能力向上のために必要な複数の血液凝固時間測定部全てのレンズを可動とすると、装置が大型化、複雑化し、さらにコストが増加するという問題があった。
【0040】
上述の特許文献1は、測定項目によって最適な検出角度で散乱光測定を行うことについては配慮がなされていないため、効率的に感度の高い分析を実施することが難しく、またコスト増加の問題があった。
【0041】
これに対し、上述した本発明の自動分析装置の第1の実施形態では、血液凝固時間測定に用いる反応容器13がレンズ形状の異なる複数種類有しており、測定項目に応じたレンズ形状の反応容器13を選択する機能を備えている。
従って、単一または複数の波長の透過光量または散乱光量を測定して、光量と濃度の関係から成分量を算出する血液凝固分析において、測定部に設けられたレンズの位置を可変させることや、検出部を移動可能に構成することなく光源から照射された光の高さ方向の集光位置を容易に調整することができる。よって、測定項目に適した検出角度を容易に実現することができ、装置の大型化・複雑化・コストの増加を招くことなく効率的に測定感度を向上させることが可能となる。
また、反応容器13の底部がレンズ部63を備えているため、コストを増加させることなく測定器のポートを増やすことが容易であり、装置価格の上昇を招くことなく処理能力や測定感度を向上させることができる。
これらによって、装置コストの向上を抑制しつつ、測定感度を向上させた処理能力の高い自動分析装置を提供することができる。
【0042】
なお、反応容器13のレンズ部63は、図3および図4に示すような形状のみに限られない。
例えば、図6および図7に示すように、反応容器13は、その底部の形状が図3図4に示す反応容器13の底部とは形状が異なり、その底部のすべてがレンズ構造のレンズ部63を有しているものとすることができる。
【0043】
<第2の実施形態>
本発明の自動分析装置の第2の実施形態を図8乃至図10を用いて説明する。図8乃至図10においても、自動分析装置として血液凝固能測定装置に適用した場合を例に挙げて説明する。
図8は本発明の自動分析装置の第2の実施形態を構成する血液凝固時間測定部の概略の一例を示す縦断面図、図9は本発明の自動分析装置の第2の実施形態を構成する血液凝固時間測定部の概略の他の一例を示す縦断面図、図10は本発明の自動分析装置の第2の実施形態を構成する血液凝固時間測定部の概略の更に他の一例を示す縦断面図である。
【0044】
本実施形態における自動分析装置は、反応容器温調ブロック11に複数設けられた血液凝固時間測定部12と関連する部材の構成以外は第1の実施形態の自動分析装置と略同じであり、詳細は省略する。
【0045】
図8に示すように、本発明の自動分析装置の第2の実施形態に係る血液凝固時間測定部12は、反応容器13、反応容器支持部65、光源支持部56、光源57、照射側スリット64、受光側スリット61、検出器60等により概略構成されている。
【0046】
図8および図9に示すように、反応容器13は、その底部のレンズ部の形状は同一であるが、外形形状が異なる。
具体的には、図8に示す反応容器13は、反応容器支持部65の端部65aに支持されるフランジ部13aが形成されている。
これに対し、図9に示す反応容器13は、反応容器支持部65の内周側の段差部65bに支持されるフランジ部13bが形成されている。このため、図9に示す反応容器13では、図8に示す反応容器13に比べて、反応液52中で形成される焦点62がより底部に近い位置に形成されることになる。
【0047】
コンピュータ31は、測定依頼情報に基づき、反応容器供給部14に複数種類保管されている反応容器13のうち、測定項目に適した外形形状の反応容器13を選択し、反応容器移送機構制御部19に対して指令を出力する。反応容器移送機構制御部19は、コンピュータ31から出力された指令が入力されると、反応容器移送機構16を作動させ、測定項目に適した外形形状の反応容器13を反応容器供給部14から取り出し、凝固時間検体分注ポジション15に移送する。
【0048】
更に、図9に示すように測定項目として感度が重要であれば焦点62での散乱光を検出し、図10に示すように、ロバスト性を向上させるときは焦点62以外の点での光を検出することが可能である。この場合、コンピュータ31は、重要視する項目に合わせて、最も適切な位置に配置された検出器60の検出したデータを用いて演算処理を行う。
【0049】
なお、このようなロバスト性を向上させるために焦点62以外の点での光の検出を行うのはこの第2の実施形態に限られず、前述の第1の実施形態や後述する第3,4の実施形態においても可能である。
【0050】
本実施形態においては、焦点調整部は、反応容器13,コンピュータ31,反応容器移送機構制御部19,反応容器移送機構16,反応容器供給部14とから構成される。
【0051】
本発明の自動分析装置の第2の実施形態においても、前述した自動分析装置の第1の実施形態とほぼ同様な効果が得られる。
すなわち、反応容器13の外形形状の違いによって、反応容器支持部65における反応容器13の設置される位置を変化させることができる。よって、光源から照射された光の焦点62の高さ方向位置を容易に調整することができ、異なる角度での散乱光の検出が容易に実施可能となる。従って、測定項目に適した検出角度を容易に実現することができるとともに、コストを増加させることなく測定器のポートを増やすことが容易に実施でき、装置価格の上昇を招くことなく処理能力や測定感度を向上させることができる。
【0052】
<第3の実施形態>
本発明の自動分析装置の第3の実施形態を図11を用いて説明する。図11においても、自動分析装置として血液凝固能測定装置に適用した場合を例に挙げて説明する。
図11は本発明の自動分析装置の第3の実施形態を構成する血液凝固時間測定部の概略の一例を示す縦断面図である。
【0053】
本実施形態における自動分析装置も、反応容器温調ブロック11に複数設けられた血液凝固時間測定部12と関連する部材の構成以外は第1の実施形態の自動分析装置と略同じであり、詳細は省略する。
【0054】
図11に示すように、本発明の自動分析装置の第3の実施形態に係る血液凝固時間測定部12は、反応容器13、反応容器支持部65、光源支持部56、光源57、照射側スリット64、受光側スリット61、検出器60等により概略構成されている。
【0055】
また、図5と比べると、反応容器支持部65の形状が異なる。
【0056】
また、コンピュータ31は、測定依頼情報に基づき、測定項目に適した形状をした反応容器支持部65の血液凝固時間測定部12に反応容器13を移送するよう制御する。その際、血液凝固時間測定部12に反応容器13が設置されると測定が実施されるが、図11に示すように、反応容器支持部65の形状の違いにより、反応液52中で形成される焦点62が、図5に示す反応容器13に比べてより底部から離れた位置に形成される。
【0057】
本実施形態においては、焦点調整部は、反応容器13,コンピュータ31,反応容器移送機構制御部19,反応容器移送機構16,反応容器支持部65とから構成される。
【0058】
本発明の自動分析装置の第3の実施形態においても、前述した自動分析装置の第1の実施形態とほぼ同様な効果が得られる。
すなわち、反応容器支持部65の形状の違いによって、光源から照射された光の焦点62の形成される高さ方向位置を容易に調整することができ、異なる角度での散乱光の検出が容易に実施できる。
従って、測定項目に適した検出角度を容易に実現することができるとともに、コストを増加させることなく測定器のポートを増やすことが容易に実施でき、装置価格の上昇を招くことなく処理能力や測定感度を向上させることができる。
【0059】
<第4の実施形態>
本発明の自動分析装置の第4の実施形態を図12および図13を用いて説明する。図12および図13においても、自動分析装置として血液凝固能測定装置に適用した場合を例に挙げて説明する。
図12は本発明の自動分析装置の第4の実施形態を構成する血液凝固時間測定部の概略の一例を示す縦断面図、図13は本発明の自動分析装置の第4の実施形態を構成する血液凝固時間測定部の概略の他の一例を示す縦断面図である。
【0060】
第4の実施形態における自動分析装置も、反応容器温調ブロック11に複数設けられた血液凝固時間測定部12と関連する部材の構成以外は第1の実施形態の自動分析装置と略同じであり、詳細は省略する。
【0061】
図12図13に示すように、反応容器13は、フランジ部13aが形成されており、その底部のレンズ部63の形状を含む外形形状は同一である。
【0062】
これに対し、図12に示すように、本発明の自動分析装置の第4の実施形態に係る血液凝固時間測定部12は、反応容器13、反応容器支持部65、光源支持部56、光源57、照射側スリット64、受光側スリット61、検出器60に加えて、スペーサ66等により概略構成されている。
【0063】
スペーサ66は、反応容器支持部65の端部65a上に設置されている円筒状の物体である。このスペーサ66は、反応容器温調ブロック11に複数設けられた血液凝固時間測定部12のすべてに設けられているのではなく、一部の血液凝固時間測定部12に設けられている。その他の血液凝固時間測定部12には、スペーサ66が設けられていないものや、より高さのあるスペーサが設けられているものが設けられる。
【0064】
その上で、コンピュータ31は、測定依頼情報に基づき、測定項目に適したスペーサ66が設置されている血液凝固時間測定部12に反応容器13を移送するよう制御する。
【0065】
図12に示すようなスペーサ66が設けられた血液凝固時間測定部12に、フランジ部13aが設けられた反応容器13が設置されると、フランジ部13aがスペーサ66に干渉した状態で反応容器13がスペーサ66に支持,固定され、測定が実施される。
【0066】
これに対し、図13に示すように、スペーサ66が設けられていない血液凝固時間測定部12では、フランジ部13aが設けられた反応容器13が設置されても、フランジ部13aは反応容器支持部65の端部65aに干渉して端部65aに支持される。この違いにより、図13に示す血液凝固時間測定部12では、図12に示す血液凝固時間測定部12に比べて、反応液52中で形成される焦点62が、スペーサ66を用いる場合に形成される焦点68に比べてより底部から離れた位置に形成されている。
【0067】
本実施形態においては、焦点調整部は、反応容器13,コンピュータ31,反応容器供給部14,反応容器支持部65,スペーサ66とから構成される。
【0068】
本発明の自動分析装置の第4の実施形態においても、前述した自動分析装置の第1の実施形態とほぼ同様な効果が得られる。
すなわち、スペーサ66を用いることによって、同一形状の反応容器13、反応容器支持部65を備えた血液凝固時間測定部12において、光源から照射された光の焦点62の高さ方向の位置を容易に調整することができ、焦点62を変化させることで異なる角度での散乱光の検出が可能となる。従って、測定項目に適した検出角度を容易に実現することができるとともに、コストを増加させることなく測定器のポートを増やすことが容易に実施でき、装置価格の上昇を招くことなく処理能力や測定感度を向上させることができる。
【0069】
なお、スペーサ66は操作者が設置することができる。また、自動分析装置に、測定項目に応じて自動でスペーサ66を設置する機構を取り付け、自動で設置するよう構成することもできる。
【0070】
<その他>
なお、本発明は上記の実施形態に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。
【0071】
例えば、自動分析装置として血液凝固能測定装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、自動分析装置はこれに限定されず、免疫比濁法やラテックス凝集法項目の測定を行う自動分析装置にも本発明は適用することができる。
【0072】
また、反応容器13の形状はほぼ一定であるため、レンズ部63の精度に関しては特に問題にならない。
【符号の説明】
【0073】
1…血液凝固能測定装置、
11…反応容器温調ブロック、
12…凝固時間検出部、
13…反応容器、
14…反応容器供給部、
15…凝固時間検体分注ポジション、
16…反応容器移送機構、
17…試薬分注機構、
18…反応容器廃棄部、
19…反応容器移送機構制御部、
20…検体分注機構、
21…検体ディスク、
22…検体容器、
23…試薬ディスク、
24…試薬容器、
31…コンピュータ、
32…インターフェース、
33…検体分注制御部、
34…試薬分注制御部、
35…A/D変換機、
36…プリンタ、
37…メモリ、
38…外部出力メディア、
39…キーボード、
40…表示装置、
52…反応液、
56…光源支持部、
57…光源、
58…照射光、
59…散乱光、
60…検出器、
61…受光側スリット、
62…焦点、
63…レンズ部、
64…照射側スリット、
65…反応容器支持部、
66…スペーサ、
68…スペーサを用いる場合の焦点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13