(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持体上に、請求項3又は5に記載のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を含むレジストパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
≪化合物≫
本発明の第一の態様の化合物は、下記一般式(1−1)で表される化合物(以下、「化合物(1−1)」ということがある。)である。
【0014】
【化3】
[式中、Y
1、Y
2はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基であり、R
1、R
2はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は下記一般式(1−2)で表される基であって、R
1、R
2の少なくともいずれか一方は下記一般式(1−2)で表される基である。]
【0015】
【化4】
[式中、V
1は置換基を有していてもよい炭素数1〜4のフッ素化アルキレン基であり、M
m+はm価の対カチオンであり、mは1〜3の整数である。]
【0016】
式(1−1)中、Y
1、Y
2はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基である。
Y
1、Y
2の2価の連結基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
Y
1、Y
2の2価の連結基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
炭化水素基が「置換基を有する」とは、該炭化水素基における水素原子の一部または全部が置換基(水素原子以外の基または原子)で置換されていることを意味する。
該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。
前記Y
1、Y
2における2価の炭化水素基としての脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0017】
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましく、1〜3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[−CH
2−]、エチレン基[−(CH
2)
2−]、トリメチレン基[−(CH
2)
3−]、テトラメチレン基[−(CH
2)
4−]、ペンタメチレン基[−(CH
2)
5−]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、−CH(CH
3)−、−CH(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CH
3)(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)(CH
2CH
2CH
3)−、−C(CH
2CH
3)
2−等のアルキルメチレン基;−CH(CH
3)CH
2−、−CH(CH
3)CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2CH
2−、−CH(CH
2CH
3)CH
2−、−C(CH
2CH
3)
2−CH
2−等のアルキルエチレン基;−CH(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2−等のアルキルトリメチレン基;−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2−等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0018】
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては前記と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては炭素数3〜6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては炭素数7〜12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0019】
芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。
前記Wにおける2価の炭化水素基としての芳香族炭化水素基は、炭素数が3〜30であることが好ましく、5〜30であることがより好ましく、5〜20がさらに好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜10が最も好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環;等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
該芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基);前記芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基);等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
前記芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。たとえば当該芳香族炭化水素基が有する芳香族炭化水素環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0020】
前記Y
1、Y
2の「ヘテロ原子を含む2価の連結基」におけるヘテロ原子とは、炭素原子および水素原子以外の原子であり、たとえば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等が挙げられる。
ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−、−NH−C(=O)−(NHのHはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。)、−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−、=N−、一般式−Y
11−O−Y
12−、−Y
12−O−、−[Y
11−C(=O)−O]
m’−Y
12−または−Y
11−O−C(=O)−Y
12−で表される基[式中、Y
11およびY
12はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子であり、m’は0〜3の整数である。]等が挙げられる。
Y
1、Y
2が−NH−の場合、そのHはアルキル基、アリール基(芳香族基)等の置換基で置換されていてもよい。該置換基(アルキル基、アリール基等)は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜8であることがさらに好ましく、1〜5であることが特に好ましい。
式−Y
11−O−Y
12−、−Y
12−O−、−[Y
11−C(=O)−O]
m’−Y
12−または−Y
11−O−C(=O)−Y
12−中、Y
11およびY
12は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。該2価の炭化水素基としては、前記でY
1、Y
2における「置換基を有していてもよい2価の炭化水素基」として挙げたものと同様のものが挙げられる。
Y
11としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
Y
12としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基またはアルキルメチレン基がより好ましい。該アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
式−[Y
11−C(=O)−O]
m’−Y
12−で表される基において、m’は0〜3の整数であり、0〜2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、1が特に好ましい。つまり、式−[Y
11−C(=O)−O]
m’−Y
12−で表される基としては、式−Y
11−C(=O)−O−Y
12−で表される基が特に好ましい。なかでも、式−(CH
2)
a’−C(=O)−O−(CH
2)
b’−で表される基が好ましい。該式中、a’は、1〜10の整数であり、1〜8の整数が好ましく、1〜5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。b’は、1〜10の整数であり、1〜8の整数が好ましく、1〜5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。
ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、ヘテロ原子として酸素原子を有する直鎖状の基、例えばエーテル結合またはエステル結合を含む基、が好ましく、前記式−Y
11−O−Y
12−、−Y
12−O−、−[Y
11−C(=O)−O]
m’−Y
12−または−Y
11−O−C(=O)−Y
12−で表される基がより好ましい。
【0021】
Y
1、Y
2は同じであっても異なっていてもよい。
なかでも、隣接したR
1又はR
2が前記式(1−2)で表される基である場合のY
1又はY
2としては、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基がより好ましく、メチレン基又はエチレン基が特に好ましい。また、隣接したR
1又はR
2が置換基を有していてもよい炭化水素基である場合のY
1又はY
2としては、単結合又はヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましく、単結合、又は、エーテル結合を有する2価の連結基がより好ましく、単結合、又は式−Y
12−O−で表される基が特に好ましい。
【0022】
式(1−1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は前記式(1−2)で表される基であって、R
1、R
2の少なくともいずれか一方は前記式(1−2)で表される基である。
【0023】
R
1、R
2の置換基を有していてもよい炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。
R
1、R
2の炭化水素基における芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素数は3〜30であることが好ましく、5〜30であることがより好ましく、5〜20がさらに好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜12が最も好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香族炭化水素基として、具体的には、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いたアリール基、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。前記アリールアルキル基中のアルキル鎖の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、1〜2であることが特に好ましい。
該芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。たとえば当該芳香族炭化水素基が有する芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、当該芳香族炭化水素基が有する芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。
前者の例としては、前記アリール基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基、前記アリールアルキル基中の芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部が前記ヘテロ原子で置換されたヘテロアリールアルキル基等が挙げられる。
後者の例における芳香族炭化水素基の置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、ニトロ基等が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子としては、R
1のアルコキシ基、ハロゲン原子と同様のものが挙げられる、
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0024】
R
1、R
2の炭化水素基における脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
脂肪族炭化水素基は、当該脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよく、当該脂肪族炭化水素基を構成する水素原子の一部または全部がヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい。「ヘテロ原子」としては、炭素原子および水素原子以外の原子であれば特に限定されず、たとえばハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子等が挙げられる。
ヘテロ原子を含む置換基は、前記ヘテロ原子のみからなるものであってもよく、前記ヘテロ原子以外の基または原子を含む基であってもよい。
炭素原子の一部を置換する置換基として、具体的には、たとえば−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−(Hがアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい)、−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−等が挙げられる。脂肪族炭化水素基が環状である場合、これらの置換基を環構造中に含んでいてもよい。
水素原子の一部または全部を置換する置換基として、具体的には、たとえばアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基としては、芳香族炭化水素基の置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基とそれぞれ同様である。
【0025】
R
1、R
2の炭化水素基における脂肪族炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状の飽和炭化水素基、直鎖状もしくは分岐鎖状の1価の不飽和炭化水素基、または環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族環式基)が好ましい。
直鎖状の飽和炭化水素基(アルキル基)としては、炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
分岐鎖状の飽和炭化水素基(アルキル基)としては、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜15であることがより好ましく、3〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
【0026】
R
1、R
2の炭化水素基における不飽和炭化水素基としては、炭素数が2〜10であることが好ましく、2〜5が好ましく、2〜4が好ましく、3が特に好ましい。直鎖状の1価の不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状の1価の不飽和炭化水素基としては、例えば、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基などが挙げられる。
不飽和炭化水素基としては、上記の中でも、特にプロペニル基が好ましい。
【0027】
R
1、R
2の炭化水素基における環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族環式基)は置換基を有していてもよい炭素数3〜30の脂肪族環式基であることが好ましい。
脂肪族環式基としては、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。その炭素数は5〜30であることが好ましく、5〜20がより好ましく、6〜15がさらに好ましく、6〜12が特に好ましい。
具体的には、たとえば、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
脂肪族環式基が、その環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含まない場合は、脂肪族環式基としては、多環式基が好ましく、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が最も好ましい。
脂肪族環式基が、その環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含むものである場合、該ヘテロ原子を含む置換基としては、−O−、−C(=O)−O−、−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−が好ましい。かかる脂肪族環式基の具体例としては、たとえば下記式(L1)〜(L6)、(S1)〜(S4)で表される基等が挙げられる。
【0028】
【化5】
[式中、Q”は炭素数1〜5のアルキレン基、−O−、−S−、−O−R
94−または−S−R
95−であり、R
94およびR
95はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基であり、mは0または1の整数である。]
【0029】
前記式中、Q”、R
94およびR
95におけるアルキレン基としては、それぞれ、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、該アルキレン基の炭素数は1〜5であり、1〜3であることが好ましい。
該アルキレン基として具体的には、たとえば、メチレン基[−CH
2−];−CH(CH
3)−、−CH(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CH
3)(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)(CH
2CH
2CH
3)−、−C(CH
2CH
3)
2−等のアルキルメチレン基;エチレン基[−CH
2CH
2−];−CH(CH
3)CH
2−、−CH(CH
3)CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2CH
2−、−CH(CH
2CH
3)CH
2−、−CH(CH
2CH
3)CH
2−等のアルキルエチレン基;トリメチレン基(n−プロピレン基)[−CH
2CH
2CH
2−];−CH(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2−等のアルキルトリメチレン基;テトラメチレン基[−CH
2CH
2CH
2CH
2−];−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2−等のアルキルテトラメチレン基;ペンタメチレン基[−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2−]等が挙げられる。
【0030】
これらの脂肪族環式基は、その環構造を構成する炭素原子に結合した水素原子の一部が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、たとえばアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)等が挙げられる。置換基としてのアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子はそれぞれ、前記芳香族炭化水素基の置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0031】
また、上記炭化水素基は、酸の作用により解裂し得る酸解離性を有する酸解離性基であってもよい。
酸解離性基であるR
1、R
2の具体例としては、たとえば、
(1)該R
1又はR
2に結合したY
1又はY
2が、単結合、または−C(=O)O−を末端に有し、該Y
1又はY
2の末端の酸素原子に該R
1又はR
2により構成される3級炭素原子が結合することで、該R
1又はR
2が後述する第3級アルキルエステル型酸解離性基となる場合、又は、
(2)該R
1又はR
2に結合したY
1又はY
2が−C(=O)−O−(C)(R
01)(R
02)−O−(式中、R
01、R
02はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜5のアルキル基)または−(C)(R
01)(R
02)−O−(式中、R
01、R
02は前記と同じ)を末端に有し、該Y
1又はY
2の末端の酸素原子に該R
1又はR
2の炭化水素基が結合して、後述するアセタール型酸解離性基となる場合、が挙げられる。第3級アルキルエステル型酸解離性基、アセタール型酸解離性基については、レジスト組成物の説明中にて後述する。
R
1又はR
2が酸解離性基であることにより、当該化合物(1−1)をレジスト組成物に用いた場合に、当該化合物(1−1)が酸発生能を有するのみならず、酸によって当該化合物(1−1)自身の現像液に対する溶解性が変化するため、好ましい。
また、R
1又はR
2が酸解離性基であることにより、当該化合物(1−1)を第四の態様の酸発生剤として用いた場合、当該酸解離性基の分解前後でアニオン部の分子量が変動し、酸の拡散長を変化させることができるため好ましい。
【0032】
R
1又はR
2の少なくともいずれか一方は下記式(1−2)で表される基である。以下、式(1−2)で表される基について具体的に説明する。
【0033】
【化6】
[式中、V
1は置換基を有していてもよい炭素数1〜4のフッ素化アルキレン基であり、M
m+はm価の対カチオンであり、mは1〜3の整数である。]
【0034】
式(1−2)中、V
1は置換基を有していてもよい炭素数1〜4のフッ素化アルキレン基である。
V
1のフッ素化アルキレン基としては、該アルキレン基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
V
1として、具体的には、−CF
2−、−CF
2CF
2−、−CF
2CF
2CF
2−、−CF(CF
3)CF
2−、−CF(CF
2CF
3)−、−C(CF
3)
2−、−CF
2CF
2CF
2CF
2−、−CF(CF
3)CF
2CF
2−、−CF
2CF(CF
3)CF
2−、−CF(CF
3)CF(CF
3)−、−C(CF
3)
2CF
2−、−CF(CF
2CF
3)CF
2−、−CF(CF
2CF
2CF
3)−、−C(CF
3)(CF
2CF
3)−;−CHF−、−CH
2CF
2−、−CH
2CH
2CF
2−、−CH
2CF
2CF
2−、−CH(CF
3)CH
2−、−CH(CF
2CF
3)−、−C(CH
3)(CF
3)−、−CH
2CH
2CH
2CF
2−、−CH
2CH
2CF
2CF
2−、−CH(CF
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CF
3)CH
2−、−CH(CF
3)CH(CF
3)−、−C(CF
3)
2CH
2−;−CH
2−、−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH
2−、−CH(CH
3)CH
2−、−CH(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−CH
2CH
2CH
2CH
2−、−CH(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2−、−CH(CH
3)CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2CH
2−、−CH(CH
2CH
3)CH
2−、−CH(CH
2CH
2CH
3)−、−C(CH
3)(CH
2CH
3)−等が挙げられる。
【0035】
式(1−2)中、M
m+はm価の対カチオンである。
対カチオンとしては、特に限定されるものではなく、金属カチオンであってもよく、m価の有機カチオンであってもよい。
【0036】
M
m+における金属カチオンとしては特に限定されるものではないが、アルカリ金属イオンであることが好ましく、具体的にはナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン等が挙げられ、ナトリウムイオン又はリチウムイオンであることがより好ましい。
【0037】
M
m+におけるm価の有機カチオンとしては特に限定されるものではなく、例えば、従来、レジスト組成物のオニウム系酸発生剤等のカチオン部として知られている有機カチオンを用いることができる。
m価の有機カチオンとしてはスルホニウムカチオンまたはヨードニウムカチオンであることが好ましく、特に下記一般式(ca−1)〜(ca−4)で表されるものが好ましい。
【0038】
【化7】
[式中、R
201〜R
207、およびR
210〜R
212は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基、アルキル基またはアルケニル基を表し、R
201〜R
203のいずれか2つ、R
206〜R
207、R
211〜R
212は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。
R
208〜R
209はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、
L
201は−C(=O)−または−C(=O)O―を表し、
Y
201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基またはアルケニレン基を表し、
xは1または2であり、W
201は(x+1)価の連結基を表す。]
【0039】
R
201〜R
207、およびR
210〜R
212におけるアリール基としては、炭素数6〜20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
【0040】
R
201〜R
207、およびR
210〜R
212におけるアルキル基としては、鎖状・環状のアルキル基であって、炭素数1〜30のものが好ましい。
R
201〜R
207、およびR
210〜R
212におけるアルケニル基としては、炭素数が2〜10であることが好ましい。
【0041】
R
201〜R
207、およびR
210〜R
212が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、オキソ基(=O)、シアノ基、アミノ基、アリール基、下記式(ca−r−1)〜(ca−r−6)で表される置換基が挙げられる。
【0042】
【化8】
[式中、R’
201はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基である。]
【0043】
R’
201の炭化水素基は、上記R
1、R
2の置換基を有していてもよい炭化水素基と同様である。
R
201〜R
203、R
206〜R
207、R
211〜R
212は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子や、カルボニル基、−SO−、−SO
2−、−SO
3−、−COO−、−CONH−または−N(R
N)−(該R
Nは炭素数1〜5のアルキル基である。)等の官能基を介して結合してもよい。
形成される環としては、式中のイオウ原子をその環骨格に含む1つの環が、イオウ原子を含めて、3〜10員環であることが好ましく、5〜7員環であることが特に好ましい。
形成される環の具体例としては、たとえばチオフェン環、チアゾール環、ベンゾチオフェン環、チアントレン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、9H−チオキサンテン環、チオキサントン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、テトラヒドロチオフェニウム環、テトラヒドロチオピラニウム環等が挙げられる。
【0044】
xは1または2である。
W
201は、(x+1)価、すなわち2価または3価の連結基である。
W
201における2価の連結基としては、上記Y
2の2価の連結基と同様のものが挙げられ、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、環状であることが好ましい。なかでも、アリーレン基の両端に2個のカルボニル基が組み合わさった基が好ましい。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。
W
201における3価の連結基としては、2価の連結基から水素原子を1個除いた基、2価の連結基にさらに2価の連結基が結合した基、等が挙げられる。2価の連結基としては上記Y
2の2価の連結基と同様のものが挙げられる。W
1における3価の連結基としては、アリーレン基に3個のカルボニル基が組み合わさった基が好ましい。
【0045】
式(ca−1)のカチオンの好適なものとして具体的には、下記式で表されるカチオンが挙げられる。
【0047】
【化10】
[式中、g1、g2、g3は繰返し数を示し、g1は1〜5の整数であり、g2は0〜20の整数であり、g3は0〜20の整数である。]
【0048】
【化11】
[式中、Rdは水素原子又は置換基であって、置換基としては前記R
201〜R
207、およびR
210〜R
212が有していてもよい置換基として挙げたものと同様である。]
【0049】
M
m+における有機カチオンとしては、前記式(c−1)又は(c−3)で表される有機カチオンが好ましい。
【0050】
R
1、R
3としては、両方が上記式(1−2)で表される基であってもよい。両方に(1−2)で表される基を有することで、たとえば、第二の態様の高分子化合物や、第四の態様の酸発生剤において、酸発生能を相対的に増加させることができる。
本発明においてR
1、R
3としては、いずれか一方のみが上記式(1−2)で表される基であることが好ましく、いずれか一方のみが上記式(1−2)で表される基であることが好ましく、いずれか一方のみが上記式(1−2)で表される基であり、且つ、他方が置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることがより好ましい。同一構成単位内または同一分子内に、異なる特性を付与することで、レジスト組成物として好適な特性の向上を図ることができる。
【0051】
本発明の化合物としては、下記一般式(1−1−1)〜(1−1−4)に示す化合物が好ましい。以下の各式中、(M
m+)
1/mは前記同様である。
【0053】
以下に、上記一般式(1−1−1)〜(1−1−4)で表される化合物の具体例を例示する。以下の各式中、(M
m+)
1/mは前記同様である。
【0056】
(化合物(1−1)の製造方法)
本発明の化合物(1−1)の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、R
1に上記式(1−2)で表される基を有する化合物(1−11)を製造する場合であれば、下記一般式(i−1)で表される化合物(i−1)と、下記一般式(i−2)で表される化合物(i−2)とを反応させることにより、下記一般式(i−3)で表される化合物(i−3)を得た後、下記一般式(i−3)で表される化合物(i−4)とを反応させることにより、下記一般式(1−11)で表される化合物(1−11)が製造される。
【0057】
【化15】
[式中、R
2、Y
2、Y
1、V
1、(M
m+)
1/mは上記同様であり、HAはハロゲン原子である。]
【0058】
まず、化合物(i−1)と化合物(i−2)とを反応させ、化合物(i−3)を得る。
式(i−2)中、R
2、Y
2は前記同様である。HAはハロゲン原子であり、塩素、臭素等が挙げられる。
化合物(i−1)、化合物(i−2)としては、それぞれ、市販のものを用いてもよく、合成してもよい。
化合物(i−1)と化合物(i−2)とを反応させ、化合物(i−3)を得る方法としては特に限定されないが、たとえば、適当な縮合剤や塩基の存在下で、有機溶媒中で反応させた後、反応混合物を洗浄して回収する方法などが挙げられる。
【0059】
上記反応における縮合剤は、例えばジイソプロピルカルボジイミド等のカルボジイミド基を含む化合物が挙げられ、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。縮合剤の使用量は、化合物(i−2)1モルに対して0.01〜10モル程度が好ましい。
上記反応における塩基は、炭酸カリウム、トリエチルアミン等の脂肪族アミン、ピリジン等の芳香族系アミンやこれらアミンの塩等が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。塩基の使用量は、通常、化合物(i−2)1モルに対して0.01〜10モル程度が好ましい。
【0060】
上記反応における有機溶媒としては、原料である化合物(i−1)及び化合物(i−2)を溶解できるものであればよく、具体的にはジクロロメタン等が挙げられ、その使用量は化合物(i−1)に対して0.5〜100質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがより好ましい。溶媒は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
上記反応における化合物(i−2)の使用量は、通常、化合物(i−1)1モルに対して0.5〜5モル程度が好ましく、0.8〜4モル程度がより好ましい。
【0061】
上記反応における反応時間は、化合物(i−1)と化合物(i−2)との反応性や、反応温度等によっても異なるが、通常、1〜80時間が好ましく、3〜60時間がより好ましい。
上記反応における反応温度は20℃〜200℃が好ましく、20℃〜150℃程度がより好ましい。
【0062】
次いで、得られた化合物(i−3)と、化合物(i−4)とを反応させ、化合物(1−11)を得る。
化合物(i−4)としては、市販のものを用いてもよく、合成してもよい。
式(i−4)中、Y
1、V
1、(M
m+)
1/mは上記同様である。
化合物(i−3)と化合物(i−4)とを反応させ、化合物(1−11)を得る方法としては特に限定されないが、たとえば、適当な縮合剤や塩基の存在下で、有機溶媒中で反応させた後、反応混合物を洗浄して回収する方法などが挙げられる。
上記反応における縮合剤、塩基としては上記同様のものが挙げられる。
【0063】
上記反応における有機溶媒としては、原料である化合物(i−1)及び化合物(i−2)を溶解できるものであればよく、具体的にはピリジン等が挙げられ、その使用量は化合物(i−3)に対して0.5〜100質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがより好ましい。溶媒は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
上記反応における化合物(i−4)の使用量は、通常、化合物(i−3)1モルに対して0.5〜5モル程度が好ましく、0.8〜4モル程度がより好ましい。
上記反応における反応時間は化合物(1−11)の種類等によっても異なるが、通常、1〜80時間が好ましく、3〜60時間がより好ましい。
上記反応における反応温度は20℃〜200℃が好ましく、20℃〜150℃程度がより好ましい。
【0064】
反応終了後、反応液中の化合物(1−11)を単離、精製してもよい。単離、精製には、従来公知の方法が利用でき、たとえば濃縮、溶媒抽出、蒸留、結晶化、再結晶、クロマトグラフィー等をいずれか単独で、またはこれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
上記のようにして得られる化合物(1−11)の構造は、
1H−核磁気共鳴(NMR)スペクトル法、
13C−NMRスペクトル法、
19F−NMRスペクトル法、赤外線吸収(IR)スペクトル法、質量分析(MS)法、元素分析法、X線結晶回折法等の一般的な有機分析法により確認できる。
【0066】
上記本発明の第一の態様の化合物は、R
1、R
2の少なくともいずれか一方に上記式(1−2)で表される基を有するため、前記M
m+の対カチオンがm価の有機カチオンである場合、酸発生能を有する。なお、対カチオンがが金属カチオンである場合は、所望の有機カチオンを有するオニウム塩と塩交換することにより、容易に酸発生能を有する化合物を得ることができる。
そのため、前記M
m+がm価の有機カチオンである第一の態様の化合物は、後述する第四の態様のように酸発生剤として用いることができ、該酸発生剤は、後述する第五の態様のようにレジスト組成物に好適に用いることができる。
また、第一の態様の化合物は、その構造中に重合性基を有するため、該重合性基を開裂させて該化合物を構成単位とし、該構成単位を重合又は他の構成単位と共に共重合することにより、後述する第二の態様のように高分子化合物を形成することができる。該高分子化合物は、後述する第三の態様のようにレジスト組成物のベース樹脂として好適に用いることができる。該高分子化合物及び該ベース樹脂は、前記M
m+がm価の有機カチオンであることにより、酸発生能を有する。
【0067】
≪高分子化合物≫
本発明の第二の態様の高分子化合物は、上記第一の態様の化合物から誘導される構成単位を有する高分子化合物であって、前記M
m+がm価の有機カチオンである高分子化合物である。前記M
m+がm価の有機カチオンである上記第一の態様の化合物から誘導される構成単位としては、上記式(1−1)で表される化合物中の、2つの−C(=O)−O−に結合した二重結合が開裂して単結合となった構造の構成単位が挙げられ、具体的には下記式(a0)で表される構成単位(a0)が挙げられる。
【0068】
【化16】
[式中、Y
1、Y
2はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基であり、R
1、R
2はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は下記一般式(1−2’)で表される基であって、R
1、R
2の少なくともいずれか一方は下記一般式(1−2’)で表される基である。]
【0069】
【化17】
[式中、Y
0は置換基を有していてもよい炭素数1〜4のフッ素化アルキレン基であり、M’
m+はm価の対カチオンであり、mは1〜3の整数である。]
【0070】
式(a0)中、R
1〜R
2、Y
1〜Y
2はそれぞれ前記同様である。
式(1−2’)中、V
1は前記同様である。M’
m+はm価の有機カチオンであって、前記M
+の有機カチオンと同様のものが挙げられる。
本発明の第二の態様の高分子化合物についての説明は、後述する第三の態様のレジスト組成物の(A1’)成分についての説明と同じである。
【0071】
本発明の第二の態様の高分子化合物は、酸発生能を有するため、レジスト組成物のベース樹脂として好適に用いることができる。
【0072】
≪レジスト組成物1≫
本発明の第三の態様のレジスト組成物(以下、「レジスト組成物1」ということがある。)は、露光により酸を発生し、且つ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A’)(以下「(A’)成分」という。)を含有するレジスト組成物であって、(A’)成分が前記第二の態様の高分子化合物(A1’)(以下、「(A1’)成分」ということがある。)、すなわち、前記構成単位(a0)を有する高分子化合物(A1’)含有する。
【0073】
<(A’)成分>
本発明のレジスト組成物1は、露光により酸を発生し、且つ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する(A’)成分を含有する。
かかるレジスト組成物を用いて形成されるレジスト膜は、レジストパターン形成時に選択的露光を行うと、(A’)成分から酸が発生し、該酸が(A)成分の現像液に対する溶解性を変化させる。その結果、当該レジスト膜の露光部の現像液に対する溶解性が変化する一方で、未露光部は現像液に対する溶解性が変化しないため、現像することにより、ポジ型パターンの場合は露光部が、ネガ型パターンの場合は未露光部がそれぞれ溶解除去されてレジストパターンが形成される。
本発明のレジスト組成物は、ネガ型レジスト組成物であってもよく、ポジ型レジスト組成物であってもよい。
また、本発明のレジスト組成物は、レジストパターン形成時の現像処理にアルカリ現像液を用いるアルカリ現像プロセス用であってもよく、該現像処理に有機溶剤を含む現像液(有機系現像液)を用いる溶剤現像プロセス用であってもよい。
【0074】
[(A1’)成分]
本発明のレジスト組成物1における(A’)成分は、露光により酸を発生し、且つ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分であって、上記第二の態様の高分子化合物(A1’)(以下、「(A1’)成分」という。)を含有する。
本発明において、「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物であり、好ましくは分子量が500以上の有機化合物が用いられる。該有機化合物の分子量が500以上であることにより、膜形成能が向上し、また、ナノレベルのレジストパターンを形成しやすい。
前記基材成分として用いられる「分子量が500以上の有機化合物」は、非重合体と重合体とに大別される。
非重合体としては、通常、分子量が500以上4000未満のものが用いられる。以下、分子量が500以上4000未満の非重合体を低分子化合物という。
重合体としては、通常、分子量が1000以上のものが用いられる。以下、分子量が1000以上の重合体を高分子化合物という。高分子化合物の場合、「分子量」としてはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の質量平均分子量を用いるものとする。以下、高分子化合物を単に「樹脂」ということがある。
【0075】
本発明のレジスト組成物1は、アルカリ現像プロセスにおいてポジ型パターンを形成し、溶剤現像プロセスにおいてネガ型パターンを形成するレジスト組成物であることが好ましい。このような要求を満たすレジスト組成物及び(A1’)成分を用いることにより、露光前後で基材成分の極性が変化するため、アルカリ現像プロセスだけでなく、溶剤現像プロセスにおいても良好な現像コントラストを得ることができる。
【0076】
具体的には、アルカリ現像プロセスを適用する場合、該(A1’)成分は、露光前はアルカリ現像液に対して難溶性であり、露光により(A’)成分から酸が発生すると、該酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解性が増大する。そのため、レジストパターンの形成において、当該レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部はアルカリ現像液に対して難溶性から可溶性に変化する一方で、未露光部はアルカリ難溶性のまま変化しないため、アルカリ現像することによりポジ型パターンが形成できる。
また、溶剤現像プロセスを適用する場合は、該(A1’)成分は、露光前は有機系現像液に対して溶解性が高く、露光により(A1’)成分から酸が発生すると、該酸の作用により極性が増大して有機系現像液に対する溶解性が減少する。そのため、レジストパターンの形成において、当該レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部は有機系現像液に対して可溶性から難溶性に変化する一方で、未露光部は可溶性のまま変化しないため、有機系現像液で現像することにより、露光部と未露光部との間でコントラストをつけることができ、ネガ型パターンが形成できる。
【0077】
本発明のレジスト組成物1において、(A1’)成分は上記の様に、前記一般式(a0)で表される構成単位(a0)を有する。
本発明のレジスト組成物1における(A1’)成分は、さらに、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)を有することが好ましい。
本発明のレジスト組成物1における(A1’)成分は、さらに、ラクトン含有環式基を含む構成単位(a2)、及びSO
2−含有環式基を含む構成単位(a5)からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位を有することが好ましい。
また、本発明のレジスト組成物1における(A1’)成分は、さらに、極性基含有脂肪族炭化水素基を含む構成単位(a3)を有することが好ましい。
【0078】
(構成単位(a0))
構成単位(a0)は、前記一般式(a0)で表される構成単位であって、露光により酸を発生する。
【0079】
式(a0)、(1−2’)中、R
1〜R
2、Y
1〜Y
2、V
1、M’
m+、mはそれぞれ前記同様である。
構成単位(a0)の具体例としては、前記第一の態様の化合物で挙げた具体例において、重合性基が開裂して得られる構成単位が挙げられる。
なかでも、構成単位(a0)中のR
1又はR
2のいずれか一方が脂環式基を有し、且つ該脂環式基が上述した酸解離性基となることが好ましい。構成単位(a0)は酸発生能を有する構成単位であるため、該構成単位(a0)中に併せて酸解離性基を有することで、異なる構成単位に酸発生能と酸解離性基をそれぞれ有する場合よりも、解像性・ラフネス等のリソグラフィー特性及びパターン形状が良好になる。
【0080】
(A1’)成分において、構成単位(a0)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A1’)成分中、構成単位(a0)の割合は、当該(A1’)成分を構成する全構成単位の合計に対し、0.1〜80モル%であることが好ましく、0.5〜60モル%であることがより好ましく、1〜50モル%であることがさらに好ましく、1.5〜40モル%が特に好ましい。下限値以上とすることによりLWR、解像性等のリソグラフィー特性や、レジストパターン形状が良好となり、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0081】
(構成単位(a1))
構成単位(a1)は、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位である。
「酸分解性基」は、露光により構成単位(a0)から発生する酸の作用により、当該酸分解性基の構造中の少なくとも一部の結合が開裂し得る酸分解性を有する基である。
酸の作用により極性が増大する酸分解性基としては、たとえば、酸の作用により分解して極性基を生じる基が挙げられる。
極性基としては、たとえばカルボキシ基、水酸基、アミノ基、スルホ基(−SO
3H)等が挙げられる。これらのなかでも、構造中に−OHを含有する極性基(以下「OH含有極性基」ということがある。)が好ましく、カルボキシ基または水酸基が好ましく、カルボキシ基が特に好ましい。
酸分解性基としてより具体的には、前記極性基を酸解離性基で保護した基(たとえばOH含有極性基の水素原子を酸解離性基で保護した基)が挙げられる。
「酸解離性基」は、露光により(A1)成分(構成単位(a0))から発生する酸の作用により、少なくとも、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る酸解離性を有する基である。酸分解性基を構成する酸解離性基は、当該酸解離性基の解離により生成する極性基よりも極性の低い基であることが必要で、これにより、酸の作用により該酸解離性基が解離した際に、該酸解離性基よりも極性の高い極性基が生じて極性が増大する。その結果、(A1)成分全体の極性が増大する。極性が増大することにより、相対的に、現像液に対する溶解性が変化し、現像液がアルカリ現像液の場合には溶解性が増大し、他方、現像液が有機溶剤を含む現像液(有機系現像液)の場合には溶解性が減少する。
【0082】
酸解離性基としては、特に限定されず、これまで、化学増幅型レジスト用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものを使用することができる。一般的には、(メタ)アクリル酸等におけるカルボキシ基と環状又は鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基、アルコキシアルキル基等のアセタール型酸解離性基などが広く知られている。
ここで、「第3級アルキルエステル」とは、カルボキシ基の水素原子が、鎖状又は環状のアルキル基で置換されることによりエステルを形成しており、そのカルボニルオキシ基(−C(=O)−O−)の末端の酸素原子に、前記鎖状又は環状のアルキル基の第3級炭素原子が結合している構造を示す。この第3級アルキルエステルにおいては、酸が作用すると、酸素原子と第3級炭素原子との間で結合が切断され、カルボキシ基が形成される。
前記鎖状又は環状のアルキル基は、置換基を有していてもよい。
以下、カルボキシ基と第3級アルキルエステルを構成することにより、酸解離性となっている基を、便宜上、「第3級アルキルエステル型酸解離性基」という。
【0083】
第3級アルキルエステル型酸解離性基としては、脂肪族分岐鎖状酸解離性基、脂肪族環式基を含有する酸解離性基が挙げられる。
ここで、「脂肪族分岐鎖状」とは、芳香族性を持たない分岐鎖状の構造を有することを示す。「脂肪族分岐鎖状酸解離性基」の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。
脂肪族分岐鎖状酸解離性基としては、たとえば、−C(R
71)(R
72)(R
73)で表される基が挙げられる。式中、R
71〜R
73は、それぞれ独立に、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基である。−C(R
71)(R
72)(R
73)で表される基は、炭素数が4〜8であることが好ましく、具体的にはtert−ブチル基、2−メチル−2−ブチル基、2−メチル−2−ペンチル基、3−メチル−3−ペンチル基などが挙げられる。特にtert−ブチル基が好ましい。
【0084】
「脂肪族環式基」は、芳香族性を持たない単環式基又は多環式基であることを示す。
「脂肪族環式基を含有する酸解離性基」における脂肪族環式基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、フッ素原子、炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
該脂肪族環式基の置換基を除いた基本の環の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。また、該炭化水素基は、飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。
脂肪族環式基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。
脂肪族環式基としては、炭素数が3〜30であるものが好ましく、5〜30であるものがより好ましく、5〜20がさらに好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜12が最も好ましい。単環式の脂肪族環式基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては炭素数3〜6のものが好ましく、具体的にはシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂肪族環式基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては炭素数7〜12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。また、これらの脂肪族環式基の環を構成する炭素原子の一部がエーテル基(−O−)で置換されたものであってもよい。
【0085】
脂肪族環式基を含有する酸解離性基としては、たとえば、
(i)1価の脂肪族環式基の環骨格上の、当該酸解離性基に隣接する原子(たとえば−C(=O)−O−における−O−)と結合する炭素原子に置換基(水素原子以外の原子または基)が結合して第3級炭素原子が形成されている基;
(ii)1価の脂肪族環式基と、これに結合する第3級炭素原子を有する分岐鎖状アルキレンとを有する基などが挙げられる。
前記(i)の基において、脂肪族環式基の環骨格上、当該酸解離性基に隣接する原子と結合する炭素原子に結合する置換基としては、たとえばアルキル基が挙げられる。該アルキル基としては、たとえば後述する式(1−1)〜(1−9)中のR
14と同様のものが挙げられる。
前記(i)の基の具体例としては、たとえば下記一般式(1−1)〜(1−9)で表される基等が挙げられる。
前記(ii)の基の具体例としては、たとえば下記一般式(2−1)〜(2−6)で表される基等が挙げられる。
【0086】
【化18】
[式中、R
14はアルキル基であり、gは0〜8の整数である。]
【0087】
【化19】
[式中、R
15およびR
16は、それぞれ独立してアルキル基である。]
【0088】
式(1−1)〜(1−9)中、R
14のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、直鎖状または分岐鎖状が好ましい。
該直鎖状のアルキル基は、炭素数が1〜5であることが好ましく、1〜4がより好ましく、1または2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基またはn−ブチル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
該分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が3〜10であることが好ましく、3〜5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、イソプロピル基であることが最も好ましい。
該環状のアルキル基は、炭素数3〜20であることが好ましく、4〜12がより好ましい。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。環状のアルキル基の環を構成する炭素原子の一部がエーテル性酸素原子(−O−)で置換されていてもよい。
gは0〜3の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましい。
【0089】
式(2−1)〜(2−6)中、R
15〜R
16のアルキル基としては、前記R
14のアルキル基と同様のものが挙げられる。
上記式(1−1)〜(1−9)、(2−1)〜(2−6)中、環を構成する炭素原子の一部がエーテル性酸素原子(−O−)で置換されていてもよい。
また、式(1−1)〜(1−9)、(2−1)〜(2−6)中、環を構成する炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素化アルキル基が挙げられる。
【0090】
「アセタール型酸解離性基」は、一般的に、カルボキシ基、水酸基等のOH含有極性基末端の水素原子と置換して酸素原子と結合している。そして、露光により酸が発生すると、この酸が作用して、アセタール型酸解離性基と、当該アセタール型酸解離性基が結合した酸素原子との間で結合が切断され、カルボキシ基、水酸基等のOH含有極性基が形成される。
アセタール型酸解離性基としては、たとえば、下記一般式(p1)で表される基が挙げられる。
【0091】
【化20】
[式中、R
1’,R
2’はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、nは0〜3の整数を表し、Yは炭素数1〜5のアルキル基または脂肪族環式基を表す。または、R
1’およびYがアルキル基であって、R
1’の末端とYの末端とが結合して環を形成していてもよい。]
【0092】
式(p1)中、nは、0〜2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、0が最も好ましい。
R
1’,R
2’のアルキル基としては、上記α置換アクリル酸エステルについての説明で、α位の炭素原子に結合してもよい置換基として挙げたアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
Yにおける炭素数1〜5のアルキル基としては、上記R
1’,R
2’における炭素数1〜5のアルキル基と同様のものが挙げられる。
Yにおける環状のアルキル基としては、炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。具体的には、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基など、上記「脂肪族環式基」と同様のものを例示できる。中でもアダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。
また、R
1’及びYがそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基であって、R
1’の末端とYの末端とが結合していてもよい。この場合、結合により形成された環式基は、4〜7員環が好ましく、4〜6員環がより好ましい。該環式基の具体例としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
【0093】
構成単位(a1)としては、酸分解性基を有するものであれば他の部位の構造は特に限定されないが、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a11)が好ましい。
【0094】
〔構成単位(a11)〕
構成単位(a11)としては、たとえば、下記一般式(a11−0−1)で表される構成単位、下記一般式(a11−0−2)で表される構成単位等が挙げられる。
【0095】
【化21】
[式中、Rは前記同様であり;X
1は酸解離性基であり;Ya
1は2価の連結基であり;X
2は酸解離性基である。]
【0096】
X
1は、酸解離性基であれば特に限定されることはなく、たとえば上述した第3級アルキルエステル型酸解離性基、アセタール型酸解離性基などを挙げることができ、第3級アルキルエステル型酸解離性基が好ましい。
一般式(a11−0−2)において、Rは上記と同様である。
X
2は、式(a11−0−1)中のX
1と同様である。
【0097】
Ya
1の2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、前記Y
1、Y
2の2価の連結基として挙げた置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基と同様である。
【0098】
上記のなかでも、Ya
1の2価の連結基としては、特に、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基、又はヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましい。これらの中でも、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、又はヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましい。
【0099】
構成単位(a11)として、より具体的には、下記一般式(a1−1)〜(a1−4)で表される構成単位が挙げられる。
【0100】
【化22】
[式中、R、R
1’、R
2’、n、YおよびYa
1はそれぞれ前記と同じであり、X’は第3級アルキルエステル型酸解離性基を表す。]
【0101】
式中、X’は、前記第3級アルキルエステル型酸解離性基と同様のものが挙げられる。
R
1’、R
2’、n、Yとしては、それぞれ、上述の「アセタール型酸解離性基」の説明において挙げた一般式(p1)におけるR
1’、R
2’、n、Yと同様のものが挙げられる。
Y
2としては、上述の一般式(a11−0−2)におけるY
2と同様のものが挙げられる。
以下に、上記一般式(a1−1)〜(a1−4)で表される構成単位の具体例を示す。
以下の各式中、R
αは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0109】
(A1’)成分が含有する構成単位(a1)は1種であってもよく2種以上であってもよい。
構成単位(a1)としては、構成単位(a11)が好ましい。
(A1’)成分中、構成単位(a1)の割合は、(A1’)成分を構成する全構成単位に対し、30〜70モル%が好ましく、30〜65モル%がより好ましく、40〜60モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることによって、レジスト組成物とした際に容易にパターンを得ることができ、感度、解像性、パターン形状等のリソグラフィー特性も向上する。また、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0110】
(構成単位(a2)・構成単位(a5))
構成単位(a2)はラクトン含有環式基を含む構成単位であり、構成単位(a5)は−SO
2−含有環式基を含む構成単位である。構成単位(a2)、(a5)の−SO
2−含有環式基またはラクトン環式基は、(A1’)成分をレジスト膜の形成に用いた場合に、レジスト膜の基板への密着性を高めうえで有効なものである。また、アルカリ現像液等の水を含有する現像液との親和性が向上する点で、アルカリ現像プロセスにおいて有効である。
【0111】
[構成単位(a2)]
「ラクトン含有環式基」とは、その環骨格中に−O−C(=O)−を含む環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。
なお、前記構成単位(a0)、(a1)がその構造中にラクトン含有環式基を含むものである場合、該構成単位は構成単位(a2)にも該当するが、このような構成単位は構成単位(a1)に該当し、構成単位(a2)には該当しないものとする。
ラクトン環をひとつ目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。ラクトン含有環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
ラクトン含有環式基として、より具体的には、下記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)で表される基が挙げられる。
【0112】
【化30】
[式中、Ra’
21はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり;R”は水素原子またはアルキル基であり;
A”は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり
n’は0〜2の整数であり
m’は0または1である。]
【0113】
Ra’
21ののアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。該アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
Ra’
21のアルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。該アルコキシ基は、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、前記置換基としてのアルキル基として挙げたアルキル基に酸素原子(−O−)に結合した基が挙げられる。
Ra’
21のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
Ra’
21のハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
Ra’
21のハロゲン化アルキル基としては、前記置換基としてのアルキル基として挙げたアルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン化アルキル基としてはフッ素化アルキル基が好ましく、特にパーフルオロアルキル基が好ましい。
Ra’
21の−COOR”、−OC(=O)R”におけるR”は、いずれも、水素原子または炭素数1〜15の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基である。
R”が直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基の場合は、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜5であることがさらに好ましく、メチル基またはエチル基であることが特に好ましい。
R”が環状のアルキル基の場合は、炭素数3〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。具体的には、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカンや、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
Ra’
21のヒドロキシアルキル基としては、炭素数が1〜6であるものが好ましく、具体的には、前記置換基としてのアルキル基として挙げたアルキル基の水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換された基が挙げられる。
【0114】
A”としては、炭素数1〜5のアルキレン基または−O−が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。
s”は1〜2の整数が好ましい。
以下に、前記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)で表される具体的な環式基を例示する。なお、式中の波線は結合手を示す。
【0117】
構成単位(a2)としては、ラクトン含有環式基を有するものであれば他の部分の構造は特に限定されず、下記一般式(a2−1)で表される構成単位が挙げられる。
【0118】
【化33】
[式中、Rは前記同様であり、Va
21は2価の炭化水素基であり、La
21は−C(=O)−O−または−O−C(=O)−結合であり、n
a21は0〜2であり、Ra
21は上記式(a2−r−1)〜(a2−r−7)で表されるラクトン含有環式基である。]
【0119】
式(a2−1)中、Va
21における2価の炭化水素基としては、特に限定されず、たとえば、前記Y
1、Y
2で挙げた2価の炭化水素基と同様のものが挙げられる。それらの中でも、アルキレン基が好ましい。
該アルキレン基は、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。具体的には、前記Y
1、Y
2における脂肪族炭化水素基として挙げた直鎖状のアルキレン基、分岐鎖状のアルキレン基と同様のものが挙げられる。
n
a21は0〜2であり、n
a21が2となるときは、Va
21およびLa
21はそれぞれ異なっていてもよい。
上記一般式(a2−1)で表される構成単位としてより具体的には、下記一般式(a2−1−1)〜(a2−1−3)で表される構成単位が挙げられる。
【0120】
【化34】
[式中、RおよびRa
21はそれぞれ前記と同様であり、c〜eはそれぞれ独立に1〜3の整数である。]
【0121】
[構成単位(a5)]
「−SO
2−含有環式基」とは、その環骨格中に−SO
2−を含む環を含有する環式基を示し、具体的には、−SO
2−における硫黄原子(S)が環式基の環骨格の一部を形成する環式基である。その環骨格中に−SO
2−を含む環をひとつ目の環として数え、該環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。−SO
2−含有環式基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。
−SO
2−含有環式基は、特に、その環骨格中に−O−SO
2−を含む環式基、すなわち−O−SO
2−中の−O−S−が環骨格の一部を形成するサルトン(sultone)環を含有する環式基であることが好ましい。
−SO
2−含有環式基として、より具体的には、下記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−4)で表される基が挙げられる。
【0122】
【化35】
[式中、Ra’
51はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり;R”は水素原子またはアルキル基であり;
A”は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり
n’は0〜2の整数である。]
【0123】
前記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−4)中、A”は、酸素原子(−O−)もしくは硫黄原子(−S−)を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子である。
A”における炭素数1〜5のアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。
該アルキレン基が酸素原子または硫黄原子を含む場合、その具体例としては、前記アルキレン基の末端または炭素原子間に−O−または−S−が介在する基が挙げられ、たとえば−O−CH
2−、−CH
2−O−CH
2−、−S−CH
2−、−CH
2−S−CH
2−等が挙げられる。
A”としては、炭素数1〜5のアルキレン基または−O−が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。
Ra’
51としては、Ra’
21と同様である。
以下に、前記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−4)で表される具体的な環式基を例示する。なお、式中の「Ac」はアセチル基を示す。
【0127】
構成単位(a5)としては、−SO
2−含有環式基を有するものであれば他の部分の構造は特に限定されず、構成単位(a2)の前記式(a2−1)で表される構成単位において、Ra
21を上記−SO
2−含有環式基に置き換えた構成単位が好ましく、構成単位(a2)の前記式(a2−1−1)〜(a2−1−3)で表される構成単位において、Ra
21を上記−SO
2−含有環式基に置き換えた構成単位がより好ましい。
【0128】
(A1’)成分は、構成単位(a2)を1種単独で又は2種以上含有していてもよく、構成単位(a5)を1種単独で又は2種以上含有していてもよく、構成単位(a2)と((a5)とを併せて含有していてもよい。
(A1’)成分が構成単位(a2)及び(a5)からなる群から選ばれる1種以上を有する場合、構成単位(a2)及び(a5)の割合は、当該(A1’)成分を構成する全構成単位の合計に対し、1〜80モル%であることが好ましく、10〜70モル%であることがより好ましく、10〜65モル%であることがさらに好ましく、10〜60モル%が特に好ましい。下限値以上とすることにより構成単位(a2)及び(a5)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができ、DOF、CDU等の種々のリソグラフィー特性及びパターン形状が良好となる。上記割合は、(A1’)成分がいずれか一方の構成単位(つまり、構成単位(a2)のみ、または(a5)のみ)を有する場合も同様である。
【0129】
(構成単位(a3))
構成単位(a3)は、極性基含有脂肪族炭化水素基を含む構成単位(ただし、上述した構成単位(a0)、(a1)、(a2)に該当するものを除く)である。
(A1’)成分が構成単位(a3)を有することにより、(A)成分の親水性が高まり、解像性の向上に寄与する。
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基等が挙げられ、特に水酸基が好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基(好ましくはアルキレン基)や、環状の脂肪族炭化水素基(環式基)が挙げられる。該環式基としては、単環式基でも多環式基でもよく、例えばArFエキシマレーザー用レジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。該環式基としては多環式基であることが好ましく、炭素数は7〜30であることがより好ましい。
その中でも、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、またはアルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基を含有する脂肪族多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位がより好ましい。該多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどから2個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。これらの多環式基の中でも、アダマンタンから2個以上の水素原子を除いた基、ノルボルナンから2個以上の水素原子を除いた基、テトラシクロドデカンから2個以上の水素原子を除いた基が工業上好ましい。
【0130】
構成単位(a3)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基を含むものであれば特に限定されることなく任意のものが使用可能である。
構成単位(a3)としては、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって極性基含有脂肪族炭化水素基を含む構成単位が好ましい。
構成単位(a3)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基における炭化水素基が炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基のときは、アクリル酸のヒドロキシエチルエステルから誘導される構成単位が好ましく、該炭化水素基が多環式基のときは、下記の式(a3−1)で表される構成単位、式(a3−2)で表される構成単位、式(a3−3)で表される構成単位が好ましいものとして挙げられる。
【0131】
【化39】
[式中、Rは前記と同じであり、jは1〜3の整数であり、kは1〜3の整数であり、t’は1〜3の整数であり、lは1〜5の整数であり、sは1〜3の整数である。]
【0132】
式(a3−1)中、jは1又は2であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。jが2の場合、水酸基が、アダマンチル基の3位と5位に結合しているものが好ましい。jが1の場合、水酸基が、アダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
jは1であることが好ましく、特に、水酸基が、アダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
【0133】
式(a3−2)中、kは1であることが好ましい。シアノ基は、ノルボルニル基の5位または6位に結合していることが好ましい。
式(a3−3)中、t’は1であることが好ましい。lは1であることが好ましい。sは1であることが好ましい。これらは、アクリル酸のカルボキシ基の末端に、2−ノルボルニル基または3−ノルボルニル基が結合していることが好ましい。フッ素化アルキルアルコールは、ノルボルニル基の5又は6位に結合していることが好ましい。
【0134】
(A1’)成分が含有する構成単位(a3)は1種であってもよく2種以上であってもよい。
(A1’)成分中、構成単位(a3)の割合は、当該(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対し、5〜50モル%であることが好ましく、5〜40モル%がより好ましく、5〜25モル%がさらに好ましい。
構成単位(a3)の割合を下限値以上とすることにより、構成単位(a3)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとりやすくなる。
【0135】
(A1’)成分は、さらに、必要に応じて、酸非解離性環式基を含む構成単位(a4)を有してもよい。(A1’)成分が構成単位(a4)を有することにより、形成されるレジストパターンのドライエッチング耐性が向上する。また、(A1’)成分の疎水性が高まる。疎水性の向上は、特に有機溶剤現像の場合に、解像性、レジストパターン形状等の向上に寄与する。
構成単位(a4)における「酸非解離性環式基」は、露光により前記構成単位(a0)や後述する任意の酸発生剤成分(B)から酸が発生した際に、該酸が作用しても解離することなくそのまま当該構成単位中に残る環式基である。
構成単位(a4)としては、例えば酸非解離性の脂肪族多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位等が好ましい。該多環式基は、例えば、前記の構成単位(a1)の場合に例示したものと同様のものを例示することができ、ArFエキシマレーザー用、KrFエキシマレーザー用(好ましくはArFエキシマレーザー用)等のレジスト組成物の樹脂成分に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
特にトリシクロデシル基、アダマンチル基、テトラシクロドデシル基、イソボルニル基、ノルボルニル基から選ばれる少なくとも1種であると、工業上入手し易いなどの点で好ましい。これらの多環式基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を置換基として有していてもよい。
また、構成単位(a4)としては、酸非解離性の芳香族基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位、スチレンから誘導される構成単位、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位等も好ましい。
構成単位(a4)として、具体的には、下記一般式(a4−1)〜(a4−6)の構造のもの、ビニル(ヒドロキシ)ナフタレン、(ヒドロキシ)ナフチル(メタ)アクリレート
(ヒドロキシ)ベンジル(メタ)アクリレート等を例示することができる。
【0136】
【化40】
[式中、Rは前記と同じである。]
【0137】
かかる構成単位(a4)を(A1’)成分に含有させる際、構成単位(a4)の割合は、(A1’)成分を構成する全構成単位の合計に対し、1〜30モル%であることが好ましく、10〜20モル%であることがより好ましい。
【0138】
(A1’)成分は、構成単位(a0)を有する重合体であって、構成単位(a0)に加えて構成単位(a1)を有する共重合体であることが好ましい。
かかる共重合体としては、たとえば、構成単位(a0)、(a1)及び(a2)からなる共重合体;構成単位(a0)、(a1)及び(a5)からなる共重合体;たとえば、構成単位(a0)、(a1)及び(a3)からなる共重合体;構成単位(a0)、(a1)、(a2)及び(a3)からなる共重合体;構成単位(a0)、(a1)、(a2)、(a5)及び(a3)からなる共重合体;構成単位(a0)、(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)からなる共重合体;構成単位(a0)、(a1)、(a5)、(a3)及び(a4)からなる共重合体等;構成単位(a0)、(a1)、(a2)、(a5)、(a3)及び(a4)からなる共重合体等等が例示できる。
【0139】
(A1’)成分の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算基準)は、特に限定されるものではなく、1000〜50000が好ましく、1500〜30000がより好ましく、2000〜20000が最も好ましい。この範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのに充分なレジスト溶剤への溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。
分散度(Mw/Mn)は、特に限定されず、1.0〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.0〜2.5が最も好ましい。なお、Mnは数平均分子量を示す。
【0140】
(A1’)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(A’)成分中の(A1’)成分の割合は、(A’)成分の総質量に対し、25質量%以上が好ましく、50質量%がより好ましく、75質量%がさらに好ましく、100質量%であってもよい。該割合が25質量%以上であると、MEF、真円性(Circularity)、ラフネス低減等のリソグラフィー特性がより向上する。
【0141】
(A’)成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A1’)成分以外の、酸の作用により極性が増大する基材成分(以下「(A2’)成分」という。)を含有してもよい。
(A2’)成分としては、分子量が500以上4000未満であって、上述の(A1’)成分の説明で例示したような酸解離性基と、親水性基とを有する低分子化合物などが挙げられる。具体的には、複数のフェノール骨格を有する化合物の水酸基の水素原子の一部または全部が上記酸解離性基で置換されたものが挙げられる。
該低分子化合物としては、たとえば、非化学増幅型のg線やi線レジストにおける増感剤や、耐熱性向上剤として知られている低分子量フェノール化合物の水酸基の水素原子の一部を上記酸解離性基で置換したものが好ましく、そのようなものから任意に用いることができる。
該低分子量フェノール化合物としては、たとえば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾールまたはキシレノールなどのフェノール類のホルマリン縮合物の2〜6核体などが挙げられる。勿論これらに限定されるものではない。特には、トリフェニルメタン骨格を2〜6個有するフェノール化合物が、解像性、ラインエッジラフネス(LWR)に優れることから好ましい。該酸解離性基も特に限定されず、上記したものが挙げられる。
【0142】
本発明で用いるレジスト組成物1中、(A’)成分の含有量は、形成しようとするレジスト膜厚等に応じて調整すればよい。
【0143】
<任意成分>
[(B)成分]
本発明のレジスト組成物1は、上記(A’)成分に加えて、さらに、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下「(B)成分」という。)を含有していてもよい。
この(B)成分としては、特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものを使用することができる。
このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
【0144】
オニウム塩系酸発生剤としては、例えば下記一般式(b−1)又は(b−2)で表される化合物を用いることができる。
【0145】
【化41】
[式中、R
101は置換基を有していてもよい炭化水素基であり
Y
101は単結合または酸素原子を含む2価の連結基であり、
V
101は単結合、アルキレン基、またはフッ素化アルキレン基であり、
R
102はフッ素原子または炭素数1〜5のフッ素化アルキル基であり、
R
104、R
105は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基またはフッ素化アルキル基であり、互いに結合して環を形成していてもよい。
M’
m+は前記同様にm価の有機カチオンである。]
【0146】
R
101は置換基を有していてもよい炭化水素基であって、上記R
1、R
2の置換基を有していてもよい炭化水素基と同様のものが挙げられる。
本発明において、R
101は、置換基を有していてもよい環式基であることが好ましい。該環式基は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であってもよく、置換基を有していてもよい脂肪族環式基であってもよく、置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましい。
前記芳香族炭化水素基としては、置換基を有していてもよいナフチル基、または置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。
置換基を有していてもよい脂肪族環式基としては、置換基を有していてもよい多環式の脂肪族環式基が好ましい。該多環式の脂肪族環式基としては、前記ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基、前記式(L2)〜(L6)、(S3)〜(S4)で表される基等が好ましい。
【0147】
Y
101の酸素原子を含む2価の連結基は、酸素原子以外の原子を含有してもよい。酸素原子以外の原子としては、たとえば炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
酸素原子を含む2価の連結基としては、たとえば、酸素原子(エーテル結合:−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−C(=O)−NH−)、カルボニル基(−C(=O)−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)等の非炭化水素系の酸素原子含有連結基;該非炭化水素系の酸素原子含有連結基とアルキレン基との組み合わせ等が挙げられる。当該組み合わせに、さらにスルホニル基(−SO
2−)が連結されていてもよい。
該組み合わせとしては、たとえば、−R
91−O−、−R
92−O−C(=O)−、−C(=O)−O−R
93−O−C(=O)−、−SO
2−O−R
94−O−C(=O)−、−R
95−SO
2−O−R
94−O−C(=O)−(式中、R
91〜R
95はそれぞれ独立にアルキレン基である。)等が挙げられる。
R
91〜R
95におけるアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、該アルキレン基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
該アルキレン基として、具体的には、たとえばメチレン基[−CH
2−];−CH(CH
3)−、−CH(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CH
3)(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)(CH
2CH
2CH
3)−、−C(CH
2CH
3)
2−等のアルキルメチレン基;エチレン基[−CH
2CH
2−];−CH(CH
3)CH
2−、−CH(CH
3)CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2CH
2−、−CH(CH
2CH
3)CH
2−等のアルキルエチレン基;トリメチレン基(n−プロピレン基)[−CH
2CH
2CH
2−];−CH(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2−等のアルキルトリメチレン基;テトラメチレン基[−CH
2CH
2CH
2CH
2−];−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2−等のアルキルテトラメチレン基;ペンタメチレン基[−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2−]等が挙げられる。
Q
’としては、エステル結合またはエーテル結合を含む2価の連結基が好ましく、なかでも、−R
91−O−、−R
92−O−C(=O)−または−C(=O)−O−R
93−O−C(=O)−が好ましい。
【0148】
V
101におけるアルキレン基としては上記と同様のものが挙げられ、炭素数1〜5であることが好ましい。
V
101におけるフッ素化アルキレン基としては前記V
1と同様のものが挙げられる。炭素数1〜5であることが好ましく、1〜2がより好ましい。
【0149】
R
102の炭素数1〜5のフッ素化アルキル基としては、前記V
1の炭素数1〜4のフッ素化アルキル基と同様のものが挙げられる。
【0150】
R
104、R
105は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基またはフッ素化アルキル基であり、互いに結合して環を形成していてもよい。
R
104、R
105は直鎖状または分岐鎖状の(フッ素化)アルキル基であることが好ましい。該(フッ素化)アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは炭素数1〜7、より好ましくは炭素数1〜3である。R
104、R
105の(フッ素化)アルキル基の炭素数は、上記炭素数の範囲内において、レジスト溶媒への溶解性も良好である等の理由により、小さいほど好ましい。
また、R
104、R
105の(フッ素化)アルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなり、また200nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するので好ましい。
該(フッ素化)アルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基またはパーフルオロアルキル基である。
【0151】
式(b−1)で表されるアニオン部の具体例としては、例えば下記式(b1)〜(b9)のいずれかで表されるアニオンが挙げられる。
【0153】
【化43】
[式中、q1〜q2はそれぞれ独立に1〜5の整数であり、q3は1〜12の整数であり、t3は1〜3の整数であり、r1〜r2はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、gは1〜20の整数であり、R
7は置換基であり、n1〜n6はそれぞれ独立に0または1であり、v0〜v6はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、w1〜w6はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、Q”は前記と同じである。]
【0154】
R
7の置換基としては、前記X
3の説明で、脂肪族環式基の環構造を構成する炭素原子に結合した水素原子の一部を置換してもよい置換基として挙げたものや、芳香族炭化水素基が有する芳香環に結合した水素原子を置換してもよい置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
R
7に付された符号(r1〜r2、w1〜w6)が2以上の整数である場合、当該化合物中の複数のR
7はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0155】
M’
m+はm価の有機カチオンであって、前記同様である。
【0156】
オキシムスルホネート系酸発生剤としては、特開平9−208554号公報(段落[0012]〜[0014]の[化18]〜[化19])に開示されているオキシムスルホネート系酸発生剤、国際公開第04/074242号パンフレット(65〜86頁目のExample1〜40)に開示されているオキシムスルホネート系酸発生剤を好適に用いることができる。
ジアゾメタン系酸発生剤としては、特開平11−035551号公報、特開平11−035552号公報、特開平11−035573号公報に開示されているジアゾメタン系酸発生剤を好適に用いることができる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、例えば、特開平11−322707号公報に開示されている、1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカンなどを挙げることができる。
【0157】
(B)成分は、上述した酸発生剤を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のレジスト組成物1が(B)成分を含有する場合、(B)成分の含有量は、(A’)成分100質量部に対して0.5〜60質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましく、1〜40質量部がさらに好ましい。(B)成分の含有量を上記範囲とすることで、パターン形成が充分に行われる。また、レジスト組成物の各成分を有機溶剤に溶解した際、均一な溶液が得られ、保存安定性が良好となるため好ましい。
【0158】
[(D)成分]
本発明のレジスト組成物1は、任意の成分として、塩基性化合物成分(D)(以下、「(D)成分」という。)を含有していてもよい。本発明において、(D)成分は、酸拡散制御剤、すなわち露光により前記(A’)成分や(B)成分等から発生する酸をトラップするクエンチャーとして作用するものである。なお、本発明において「塩基性化合物」とは、(B)成分に対して相対的に塩基性となる化合物をいう。
本発明における(D)成分は、カチオン部と、アニオン部とからなる塩基性化合物(D1)(以下、「(D1)成分」という。)であってもよく、該(D1)成分に該当しない塩基性化合物(D2)(以下「(D2)成分」という。)であってもよい。
【0159】
((D1)成分)
本発明において、(D1)成分は、下記一般式(d1−1)で表される化合物(d1−1))(以下、「(d1−1)成分」という。)、下記一般式(d1−2)で表される化合物(d1−2)(以下、「(d1−2)成分」という。)、及び下記一般式(d1−3)で表される化合物(d1−3)(以下、「(d1−3)成分」という。)からなる群から選ばれる1つ以上を含有することが好ましい。(d1−1)〜(d1−3)成分は、露光前はクエンチャーとしては作用せず、露光によりクエンチャーとして作用する光反応型クエンチャーである。
【0160】
【化44】
[式中、R
51は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Z
2cは置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基(ただし、Sに隣接する炭素にはフッ素原子は置換されていないものとする)であり、R
52は有機基であり、Y
5は直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基またはアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり、(M’
m+)
1/mはそれぞれ独立に有機カチオンである。]
【0161】
{(d1−1)成分}
式(d1−1)中、R
51は置換基を有していてもよい炭化水素基である。
R
51の置換基を有していてもよい炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよく、第一の態様で説明したR
1、R
2の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
なかでもR
51の置換基を有していてもよい炭化水素基としては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましく、置換基を有していてもよいフェニル基やナフチル基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
【0162】
また、R
51の置換基を有していてもよい炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状、あるいは脂環式アルキル基、又は、フッ素化アルキル基であることも好ましい。
R
51の直鎖状、分岐鎖状あるいは脂環式アルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基等の分岐鎖状のアルキル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の脂環式アルキル基が挙げられる。
【0163】
R
51のフッ素化アルキル基は、鎖状であっても環状であってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
フッ素化アルキル基の炭素数は、1〜11が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基を構成する一部又は全部の水素原子がフッ素原子により置換された基や、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基等の分岐鎖状のアルキル基を構成する一部又は全部の水素原子がフッ素原子により置換された基が挙げられる。
また、R
51のフッ素化アルキル基は、フッ素原子以外の原子を含有してもよい。フッ素原子以外の原子としては、たとえば酸素原子、炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
なかでも、R
51のフッ素化アルキル基としては、直鎖状のアルキル基を構成する一部又は全部の水素原子がフッ素原子により置換された基であることが好ましく、直鎖状のアルキル基を構成する水素原子の全てがフッ素原子で置換された基(パーフルオロアルキル基)であることが好ましい。
【0164】
以下に(d1−1)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0166】
(d1−1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0167】
{(d1−2)成分}
式(d1−2)中、Z
2cは置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基である。
Z
2cの置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよく、第一の態様で説明したR
1、R
2の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
なかでもZ
2cの置換基を有していてもよい炭化水素基としては、置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましく、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、カンファー等から1個以上の水素原子を除いた基(置換基を有していてもよい)であることがより好ましい。
Z
2cの炭化水素基は置換基を有していてもよく、置換基としては、第一の態様で説明したR
1、R
2と同様のものが挙げられる。ただし、Z
2cにおいて、SO
3−におけるS原子に隣接する炭素は、フッ素置換されていないものとする。SO
3−とフッ素原子とが隣接しないことにより、当該(d1−2)成分のアニオンが適度な弱酸アニオンとなり、(D)成分のクエンチング能が向上する。
以下に(d1−2)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0169】
(d1−2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0170】
{(d1−3)成分}
式(d1−3)中、R
52は有機基である。
R
52の有機基は特に限定されるものではないが、アルキル基、アルコキシ基、−O−C(=O)−C(R
C2)=CH
2(R
C2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である)、または−O−C(=O)−R
C3(R
C3は炭化水素基である)である。
R
52のアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。R
52のアルキル基の水素原子の一部が水酸基、シアノ基等で置換されていてもよい。
R
52のアルコキシ基は、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜5のアルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。なかでも、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
【0171】
R
52が−O−C(=O)−C(R
C2)=CH
2である場合、R
C2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。
R
C2における炭素数1〜5のアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
R
C2におけるハロゲン化アルキル基は、前記炭素数1〜5のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
R
C2としては、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子又はメチル基が最も好ましい。
【0172】
R
52が−O−C(=O)−R
C3である場合、R
C3は炭化水素基である。
R
C3の炭化水素基は、芳香族炭化水素基であっても、脂肪族炭化水素基であってもよい。R
C3の炭化水素基として具体的には、第一の態様で説明したR
1、R
2の炭化水素基と同様のものが挙げられる。
なかでも、R
C3の炭化水素基としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた脂環式基、又は、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基が好ましい。R
C3が脂環式基である場合、レジスト組成物が有機溶剤に良好に溶解することによりリソグラフィー特性が良好となる。また、R
C3が芳香族基である場合、EUV等を露光光源とするリソグラフィーにおいて、該レジスト組成物が光吸収効率に優れ、感度やリソグラフィー特性が良好となる。
【0173】
なかでも、R
52としては、−O−C(=O)−C(R
C2’)=CH
2(R
C2’は水素原子又はメチル基である。)、又は、−O−C(=O)−R
C3’(R
C3’は脂肪族環式基である。)であることが好ましい。
【0174】
式(d1−3)中、Y
5は直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基又はアリーレン基である。
Y
5の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基又はアリーレン基としては、上記式(1−1)中のY
1、Y
2における2価の連結基のうち、「直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基」、「環状の脂肪族炭化水素基」、「芳香族炭化水素基」と同様のものが挙げられる。
なかでも、Y
5としては、アルキレン基であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることがより好ましく、メチレン基又はエチレン基であることがさらに好ましい。
【0175】
式(d1−3)中、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基である。
Rfのフッ素原子を含む炭化水素基は、フッ素化アルキル基であることが好ましく、R
51のフッ素化アルキル基と同様のものがより好ましい。
以下に(d1−3)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0178】
(d1−3)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0179】
(D1)成分は、上記(d1−1)〜(d1−3)成分のいずれか1種のみを含有していてもよく、2種以上を組み合わせて含有していてもよい。
(d1−1)〜(d1−3)成分の合計の含有量は、(A’)成分100質量部に対して、0.5〜10.0質量部であることが好ましく、0.5〜8.0質量部であることがより好ましく、1.0〜5.0質量部であることがさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、特に良好なリソグラフィー特性及びレジストパターン形状が得られる。前記範囲の上限値以下であると、感度を良好に維持でき、スループットにも優れる。
【0180】
{(D1)成分の製造方法}
本発明における(d1−1)成分、(d1−2)成分の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の方法により製造することができる。
また、(d1−3)成分の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、前記式(d1−3)中のR
52が、Y
5と結合する末端に酸素原子を有する基である場合、下記一般式(i−1)で表される化合物(i−1)と、下記一般式(i−2)で表される化合物(i−2)とを反応させることにより、下記一般式(i−3)で表される化合物(i−3)を得、化合物(i−3)と、所望のカチオン(M’
m+)
1/mを有するZ
−(M’
m+)
1/m(i−4)とを反応させることにより、一般式(d1−3)で表される化合物(d1−3)が製造される。
【0181】
【化49】
[式中、R
52、Y
5、Rf、(M’
m+)
1/mは、それぞれ、前記一般式(d1−3)中のR
52、Y
5、Rf、(M’
m+)
1/mと同じである。R
52aはR
52から末端の酸素原子を除いた基であり、Z
−は対アニオンである。]
【0182】
まず、化合物(i−1)と化合物(i−2)とを反応させ、化合物(i−3)を得る。
式(i−1)中、R
52は前記同様であり、R
52aは前記R
52から末端の酸素原子を除いた基である。式(i−2)中、Y
5、Rfは前記同様である。
化合物(i−1)、化合物(i−2)としては、それぞれ、市販のものを用いてもよく、合成してもよい。
化合物(i−1)と化合物(i−2)とを反応させ、化合物(i−3)を得る方法としては、特に限定されないが、たとえば、適当な酸触媒の存在下で、化合物(i−2)と化合物(i−1)とを有機溶媒中で反応させた後に、反応混合物を洗浄、回収することにより、実施できる。
【0183】
上記反応における酸触媒は、特に限定されるものではなく、例えばトルエンスルホン酸等が挙げられ、その使用量は化合物(i−2)1モルに対して0.05〜5モル程度が好ましい。
上記反応における有機溶媒としては、原料である化合物(i−1)及び化合物(i−2)を溶解できるものであればよく、具体的には、トルエン等が挙げられ、その使用量は、化合物(i−1)に対して、0.5〜100質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがより好ましい。溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
上記反応における化合物(i−2)の使用量は、通常、化合物(i−1)1モルに対して0.5〜5モル程度が好ましく、0.8〜4モル程度がより好ましい。
【0184】
上記反応における反応時間は、化合物(i−1)と化合物(i−2)との反応性や、反応温度等によっても異なるが、通常、1〜80時間が好ましく、3〜60時間がより好ましい。
上記反応における反応温度は、20℃〜200℃が好ましく、20℃〜150℃程度がより好ましい。
【0185】
次いで、得られた化合物(i−3)と、化合物(i−4)とを反応させ、化合物(d1−3)を得る。
式(i−4)中、(M’
m+)
1/mは前記同様であり、Z
−は対アニオンである。
化合物(i−3)と化合物(i−4)とを反応させ、化合物(d1−3)を得る方法としては、特に限定されないが、たとえば、適当なアルカリ金属水酸化物の存在下で、化合物(i−3)を適当な有機溶媒及び水に溶解し、化合物(i−4)を添加して攪拌により反応させることにより実施できる。
【0186】
上記反応におけるアルカリ金属水酸化物は、特に限定されるものではなく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、その使用量は化合物(i−3)1モルに対して0.3〜3モル程度が好ましい。
上記反応における有機溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル等の溶媒が挙げられ、その使用量は、化合物(i−3)に対して、0.5〜100質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがより好ましい。溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
上記反応における化合物(i−4)の使用量は、通常、化合物(i−3)1モルに対して0.5〜5モル程度が好ましく、0.8〜4モル程度がより好ましい。
【0187】
上記反応における反応時間は、化合物(i−3)と化合物(i−4)との反応性や、反応温度等によっても異なるが、通常、1〜80時間が好ましく、3〜60時間がより好ましい。
上記反応における反応温度は、20℃〜200℃が好ましく、20℃〜150℃程度がより好ましい。
反応終了後、反応液中の化合物(d1−3)を単離、精製してもよい。単離、精製には、従来公知の方法が利用でき、たとえば濃縮、溶媒抽出、蒸留、結晶化、再結晶、クロマトグラフィー等をいずれか単独で、またはこれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0188】
上記のようにして得られる化合物(d1−3)の構造は、
1H−核磁気共鳴(NMR)スペクトル法、
13C−NMRスペクトル法、
19F−NMRスペクトル法、赤外線吸収(IR)スペクトル法、質量分析(MS)法、元素分析法、X線結晶回折法等の一般的な有機分析法により確認できる。
【0189】
((D2)成分)
(D2)成分としては、(B)成分に対して相対的に塩基性となる化合物であり、酸拡散制御剤として作用するものであり、且つ(D1)成分に該当しないものであれば特に限定されず、公知のものから任意に用いればよい。たとえば脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミンが挙げられ、なかでも脂肪族アミン、特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンが好ましい。
【0190】
脂肪族アミンとは、1つ以上の脂肪族基を有するアミンであり、該脂肪族基は炭素数が1〜12であることが好ましい。
脂肪族アミンとしては、アンモニアNH
3の水素原子の少なくとも1つを、炭素数12以下のアルキル基またはヒドロキシアルキル基で置換したアミン(アルキルアミンまたはアルキルアルコールアミン)又は環式アミンが挙げられる。
アルキルアミンおよびアルキルアルコールアミンの具体例としては、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げられる。これらの中でも、炭素数5〜10のトリアルキルアミンがさらに好ましく、トリ−n−ペンチルアミン又はトリ−n−オクチルアミンが特に好ましい。
【0191】
環式アミンとしては、たとえば、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環化合物が挙げられる。該複素環化合物としては、単環式のもの(脂肪族単環式アミン)であっても多環式のもの(脂肪族多環式アミン)であってもよい。
脂肪族単環式アミンとして、具体的には、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
脂肪族多環式アミンとしては、炭素数が6〜10のものが好ましく、具体的には、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0192】
その他の脂肪族アミンとしては、トリス(2−メトキシメトキシエチル)アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシプロポキシ)エチル}アミン、トリス[2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、トリエタノールアミントリアセテート等が挙げられ、トリエタノールアミントリアセテートが好ましい。
【0193】
芳香族アミンとしては、アニリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ピロール、インドール、ピラゾール、イミダゾールまたはこれらの誘導体、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、2,6−ジイソプロピルアニリン、N−tert−ブトキシカルボニルピロリジン等が挙げられる。
【0194】
(D2)成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D2)成分は、(A’)成分100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。上記範囲とすることにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等が向上する。
【0195】
(D)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のレジスト組成物1が(D)成分を含有する場合、(D)成分は、(A’)成分100質量部に対して、0.1〜15質量部であることが好ましく、0.3〜12質量部であることがより好ましく、0.5〜10質量部であることがさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、ポジ型レジスト組成物とした際、ラフネス等のリソグラフィー特性がより向上する。また、より良好なレジストパターン形状が得られる。前記範囲の上限値以下であると、感度を良好に維持でき、スループットにも優れる。
【0196】
[(E)成分]
本発明のレジスト組成物1は、感度劣化の防止や、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等の向上の目的で、任意の成分として、有機カルボン酸、ならびにリンのオキソ酸およびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(E)(以下「(E)成分」という。)を含有してもよい。
有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられ、これらの中でも特にホスホン酸が好ましい。
リンのオキソ酸の誘導体としては、たとえば、上記オキソ酸の水素原子を炭化水素基で置換したエステル等が挙げられ、前記炭化水素基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基等が挙げられる。
リン酸の誘導体としては、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸エステルなどが挙げられる。
ホスホン酸の誘導体としては、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸エステルなどが挙げられる。
ホスフィン酸の誘導体としては、フェニルホスフィン酸、ホスフィン酸エステルなどが挙げられる。
(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(E)成分は、(A’)成分100質量部に対して、通常、0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0197】
[(F)成分]
レジスト組成物1には、レジスト膜に撥水性を付与するために、フッ素添加剤(以下、「(F)成分」という。)を含有させることができる。(F)成分としては、例えば、特開2010−002870号公報、特開2010−032994号公報、特開2010−277043号公報、特開2011−13569号公報、特開2011−128226号公報に記載の含フッ素高分子化合物を用いることができる。
(F)成分としてより具体的には、下記式(f1−1)で表される構成単位を有する重合体が挙げられ、下記式(f1−1)で表される構成単位のみからなる重合体(ホモポリマー);下記式(f1−1)で表される構成単位と、前記構成単位(a1)との共重合体;下記式(f1−1)で表される構成単位と、アクリル酸又はメタクリル酸から誘導される構成単位と、前記構成単位(a1)との共重合体、であることが好ましい。ここで、下記式(f1−1)で表される構成単位と共重合される前記構成単位(a1)としては、1−エチル−1−シクロオクチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0198】
【化50】
[式中、Rは前記同様であり、a1は1〜5の整数であり、R
2”はフッ素原子を含む有機基である。]
【0199】
式(f1−1)中、R
2”はフッ素原子を含む有機基であって、フッ素原子を含む炭化水素基であることが好ましい。フッ素原子を含む炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基(好ましくは直鎖状のアルキル基)の水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換された基が挙げられる。
なかでも、R
2”としては、「−(CH
2)
o−CF
3」で表される基が好ましい(式中、oは1〜3の整数である)。
式(f1−1)中、a1は1〜5の整数であって、1〜3の整数が好ましく、1又は2であることがより好ましい。
式(f1−1)中、Rは前記同様である。Rとしては、水素原子またはメチル基が好ましい。
(F)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(F)成分は、(A’)成分100質量部あたり0.1〜10質量部の割合で用いられる。
【0200】
本発明のレジスト組成物には、さらに、所望により、混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させることができる。
【0201】
[(S)成分]
本発明のレジスト組成物1は、材料を有機溶剤(以下「(S)成分」ということがある)に溶解させて製造することができる。
(S)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
例えば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤などを挙げることができる。
これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
中でも、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、ELが好ましい。
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶媒も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2の範囲内とすることが好ましい。たとえば極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。また、極性溶剤としてPGMEおよびシクロヘキサノンを配合する場合は、PGMEA:(PGME+シクロヘキサノン)の質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。
また、(S)成分として、その他には、PGMEA、EL、または前記PGMEAと極性溶剤との混合溶媒と、γ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
(S)成分の使用量は、特に限定されず、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%の範囲内となる様に用いられる。
【0202】
上記本発明の第三の態様のレジスト組成物(レジスト組成物1)は、解像性、LWR、ELマージン等の種々のリソグラフィー特性及びレジストパターン形状に優れたものである。
上記効果が得られる理由は明らかではないが、レジスト組成物1は、露光により酸を発生する構成単位(a0)が基材である(A’)成分内に含有されることで(A’)成分と共にレジスト膜内で均一に分布し、露光部では該構成単位(a0)から均一に酸が発生することで、露光部の(A’)成分中の酸分解性基が均一に開裂し、上記効果が得られると考えられる。
【0203】
≪酸発生剤≫
本発明の第四の態様の酸発生剤は、M
m+がm価の有機カチオンである上記第一の態様の化合物からなる。本発明の第四の態様の酸発生剤の説明は、前記第一の態様の化合物のうち、M
m+がm価の有機カチオンである化合物の説明と同様である。
本発明の第四の態様の酸発生剤は、レジスト組成物の酸発生剤として好適に用いることができる。
【0204】
≪レジスト組成物2≫
本発明の第五の態様のレジスト組成物(以下、「レジスト組成物2」ということがある。)は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)(以下「(A)成分」という。)、及び露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下、「(B)成分」という。)を含有し、(B)成分が前記第四の態様の酸発生剤(B1)、すなわち、M
m+がm価の有機カチオンである前記第一の態様の化合物からなる酸発生剤(B1)を含有する。
【0205】
<(A)成分>
(A)成分としては、通常、化学増幅型レジスト用の基材成分として用いられている有機化合物を1種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0206】
本発明のレジスト組成物2がアルカリ現像プロセスにおいてネガ型パターンを形成する「アルカリ現像プロセス用ネガ型レジスト組成物」である場合、(A)成分としてはアルカリ現像液に可溶性の基材成分が用いられ、さらに、架橋剤成分が配合される。
かかるアルカリ現像プロセス用ネガ型レジスト組成物は、露光により(B)成分から酸が発生すると、当該酸が作用して基材成分と架橋剤成分との間で架橋が起こり、アルカリ現像液に対して難溶性へ変化する。そのため、レジストパターンの形成において、当該ネガ型レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜を選択的に露光すると、露光部はアルカリ現像液に対して難溶性へ転じる一方で、未露光部はアルカリ現像液に対して可溶性のまま変化しないため、アルカリ現像することによりレジストパターンが形成できる。
アルカリ現像プロセス用ネガ型レジスト組成物の(A)成分としては、通常、アルカリ現像液に対して可溶性の樹脂(以下「アルカリ可溶性樹脂」という。)が用いられる。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば特開2000−206694号公報に開示されている、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸、またはα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸のアルキルエステル(好ましくは炭素数1〜5のアルキルエステル)から選ばれる少なくとも一つから誘導される単位を有する樹脂;米国特許6949325号公報に開示されている、スルホンアミド基を有するα位の炭素原子に水素原子以外の原子又は置換基が結合していてもよいアクリル樹脂またはポリシクロオレフィン樹脂;米国特許6949325号公報、特開2005−336452号公報、特開2006−317803号公報に開示されている、フッ素化アルコールを含有し、α位の炭素原子に水素原子以外の原子又は置換基が結合していてもよいアクリル樹脂;特開2006−259582号公報に開示されている、フッ素化アルコールを有するポリシクロオレフィン樹脂等が、膨潤の少ない良好なレジストパターンが形成でき、好ましい。
なお、前記α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸は、α位の炭素原子に水素原子以外の原子又は置換基が結合していてもよいアクリル酸のうち、カルボキシ基が結合するα位の炭素原子に水素原子が結合しているアクリル酸と、このα位の炭素原子にヒドロキシアルキル基(好ましくは炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基)が結合しているα−ヒドロキシアルキルアクリル酸の一方または両方を示す。
架橋剤成分としては、例えば、通常は、メチロール基またはアルコキシメチル基を有するグリコールウリルなどのアミノ系架橋剤、メラミン系架橋剤などを用いると、膨潤の少ない良好なレジストパターンが形成でき、好ましい。架橋剤成分の配合量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し、1〜50質量部であることが好ましい。
【0207】
本発明のレジスト組成物2が、アルカリ現像プロセスにおいてポジ型パターンを形成し、溶剤現像プロセスにおいてネガ型パターンを形成するレジスト組成物である場合、(A)成分としては、酸の作用により極性が増大する基材成分(A0)(以下「(A0)成分」という。)を用いることが好ましい。(A0)成分を用いることにより、露光前後で基材成分の極性が変化するため、アルカリ現像プロセスだけでなく、溶剤現像プロセスにおいても良好な現像コントラストを得ることができる。
アルカリ現像プロセスを適用する場合、該(A0)成分は、露光前はアルカリ現像液に対して難溶性であり、露光により前記(B)成分から酸が発生すると、該酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解性が増大する。そのため、レジストパターンの形成において、当該レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部はアルカリ現像液に対して難溶性から可溶性に変化する一方で、未露光部はアルカリ難溶性のまま変化しないため、アルカリ現像することによりポジ型パターンが形成できる。
また、溶剤現像プロセスを適用する場合は、該(A0)成分は、露光前は有機系現像液に対して溶解性が高く、露光により前記(B)成分から酸が発生すると、該酸の作用により極性が高くなり有機系現像液に対する溶解性が減少する。そのため、レジストパターンの形成において、当該レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部は有機系現像液に対して可溶性から難溶性に変化する一方で、未露光部は可溶性のまま変化しないため、有機系現像液で現像することにより、露光部と未露光部との間でコントラストをつけることができ、ネガ型パターンが形成できる。
【0208】
本発明のレジスト組成物2において、(A)成分は、酸の作用により極性が増大する基材成分((A0)成分)であることが好ましい。すなわち、本発明のレジスト組成物2は、アルカリ現像プロセスにおいてポジ型となり、溶剤現像プロセスにおいてネガ型となる化学増幅型レジスト組成物であることが好ましい。
該(A0)成分は、酸の作用により極性が増大する樹脂成分(A1)(以下「(A1)成分」ということがある。)であってもよく、酸の作用により極性が増大する低分子化合物成分(A2)(以下「(A2)成分」ということがある。)であってもよく、又はこれらの混合物であってもよい。
【0209】
[(A1)成分]
(A1)成分としては、通常、化学増幅型レジスト用の基材成分として用いられている樹脂成分(ベース樹脂)を1種単独で、又は2種以上混合して使用することができる。
本発明のレジスト組成物2においては、特に、(A1)成分が、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)を有することが好ましい。
また、(A1)成分は、構成単位(a1)に加えて、さらに、ラクトン含有環式基を含む構成単位(a2)、及びSO
2−含有環式基を含む構成単位(a5)からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位を有することが好ましい。
また、(A1)成分は、さらに、極性基含有脂肪族炭化水素基を含む構成単位(a3)を有することが好ましい。
また、(A1)成分は、上記構成単位(a1)〜(a3)、(a5)に該当しない構成単位(a4)を有していてもよい。
【0210】
構成単位(a1)〜(a5)としては、上記第三の態様のレジスト組成物1における構成単位(a1)〜(a5)と同様である。また、(A1)成分は、構成単位(a0)を必須構成として含有しない以外は、前記(A1’)成分と同様である。
【0211】
[(A2)成分]
(A2)成分は、上記第三の態様のレジスト組成物1の(A2)成分と同様である。
【0212】
<(B)成分>
[(B1)成分]
本発明のレジスト組成物2において、(B)成分は、上記第四の態様の酸発生剤(B1)(以下「(B1)成分」という。)を含有する。
(B1)成分は、上記第一及び第四の態様と同様である。
【0213】
(B1)成分としては、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のレジスト組成物において、(B)成分中の(B1)成分の含有割合は、40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、100質量%でもよい。
下記(B2)成分と組み合わせる場合の(B)成分中の(B1)成分の含有割合は、50〜95質量%であることが好ましく、60〜85質量%であることがより好ましい。(B2)成分として、フッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩系酸発生剤を用いることが好ましい。
【0214】
[(B2)成分]
本発明のレジスト組成物は、(B)成分として、上記(B1)成分に加えて、必要に応じて上記(B1)成分に該当しない酸発生剤成分(以下「(B2)成分」という。)を含有してもよい。
(B2)成分としては特に限定されるものではないが、例えば、上記第三の態様のレジスト組成物1において、任意成分の(B)成分として挙げた酸発生剤のうち、(B1)成分に該当しないものが挙げられる。
(B2)成分は、上記酸発生剤を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0215】
本発明のレジスト組成物2における(B)成分全体の総含有量は、(A)成分100質量部に対し、1〜70質量部が好ましく、3〜60質量部がより好ましく、5〜50質量部が最も好ましい。上記範囲とすることでパターン形成が充分に行われる。また、均一な溶液が得られ、保存安定性が良好となるため好ましい。
【0216】
本発明のレジスト組成物2は、任意成分として、上記第三の態様のレジスト組成物1と同様に、(D)成分、(E)成分、(F)成分を含有していてもよく、(S)成分に溶解されて製造されてもよい。(D)成分、(E)成分、(F)成分、(S)成分としては、上記第三の態様のレジスト組成物1と同様である。
【0217】
上記本発明の第五の態様のレジスト組成物(レジスト組成物2)は、解像性、LWR、ELマージン等のリソグラフィー特性やパターン形状に優れたものである。
上記効果が得られる理由は明らかではないが、レジスト組成物2は、第四の態様の酸発生剤の(S)成分への溶解性や、(A)成分との良好な相互作用により、レジスト膜内均一性の向上や、露光により発生する酸の拡散長制御が可能になるため、良好なリソグラフィー特性が得られるものと考えられる。
【0218】
≪レジストパターン形成方法≫
本発明の第六の態様のレジストパターン形成方法は、支持体上に、前記第三の態様のレジスト組成物(レジスト組成物1)又は第五の態様のレジスト組成物(レジスト組成物2)を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を含むレジストパターン形成方法である。
具体的には、上記のようなレジスト組成物を用いて、例えば、以下のようなレジストパターン形成方法により、レジストパターンを形成することができる。
まず支持体上に、前記レジスト組成物をスピンナーなどで塗布し、80〜150℃の温度条件下、プレベーク(ポストアプライベーク(PAB))を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施し、これに例えば電子線描画機などにより、電子線(EB)を所望のマスクパターンを介して選択的に露光した後、80〜150℃の温度条件下、PEB(露光後加熱)を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施す。次いで、これを現像処理する。
アルカリ現像プロセスの場合は、アルカリ現像液、例えば0.1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用いてアルカリ現像処理を行う。
また、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を用いて現像処理を行う。この有機溶剤としては、(A)成分(露光前の(A)成分)を溶解し得るものであればよく、公知の有機溶剤のなかから適宜選択できる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられ、なかでもエステル系溶剤が好ましい。エステル系溶剤としては、酢酸ブチルが好ましい。上記の様に本発明のレジスト組成物は、コンタクトホールパターン形成において重用される溶剤現像プロセス用ネガ型レジスト組成物とした際に、該コンタクトホールパターンが逆テーパー状となることを効果的に防ぐことができるため、溶剤現像プロセスにおいて用いられることが好ましい。
現像処理後、好ましくはリンス処理を行う。アルカリ現像プロセス後の場合は純水を用いた水リンスが好ましい。溶剤現像プロセス後の場合は、上記で挙げた有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
その後は乾燥を行う。また、場合によっては、上記現像処理後にベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。このようにして、マスクパターンに忠実なレジストパターンを得ることができる。
【0219】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
また、支持体としては、上述のような基板上に、無機系および/または有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。
【0220】
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、F
2エキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。
本発明のレジスト組成物は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EB又はEUVに対してより有効であり、ArFエキシマレーザーに対して特に有効である。
【0221】
レジスト膜の露光は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光であってもよい。
液浸露光では、露光時に、従来は空気や窒素等の不活性ガスで満たされているレンズとウェーハ上のレジスト膜との間の部分を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たした状態で露光を行う。
より具体的には、液浸露光は、上記のようにして得られたレジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で、所望のマスクパターンを介して露光(浸漬露光)することによって実施できる。
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ当該浸漬露光によって露光されるレジスト膜の有する屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましい。かかる溶媒の屈折率としては、前記範囲内であれば特に制限されない。
空気の屈折率よりも大きく、かつレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒としては、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
フッ素系不活性液体の具体例としては、C
3HCl
2F
5、C
4F
9OCH
3、C
4F
9OC
2H
5、C
5H
3F
7等のフッ素系化合物を主成分とする液体等が挙げられ、沸点が70〜180℃のものが好ましく、80〜160℃のものがより好ましい。フッ素系不活性液体が上記範囲の沸点を有するものであると、露光終了後に、液浸に用いた媒体の除去を、簡便な方法で行えることから好ましい。
フッ素系不活性液体としては、特に、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されたパーフロオロアルキル化合物が好ましい。パーフロオロアルキル化合物としては、具体的には、パーフルオロアルキルエーテル化合物やパーフルオロアルキルアミン化合物を挙げることができる。
さらに、具体的には、前記パーフルオロアルキルエーテル化合物としては、パーフルオロ(2−ブチル−テトラヒドロフラン)(沸点102℃)を挙げることができ、前記パーフルオロアルキルアミン化合物としては、パーフルオロトリブチルアミン(沸点174℃)を挙げることができる。
液浸媒体としては、コスト、安全性、環境問題、汎用性等の観点から、水が好ましく用いられる。
【実施例】
【0222】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
なお、本実施例において、NMRによる分析において、
1H−NMRの化学シフト基準物質はテトラメチルシラン(TMS)である。
【0223】
[合成例1:化合物(B)−1の合成]
窒素雰囲気下、化合物1(10g)をジクロロメタン(50g)に溶解させ、トリエチルアミン(8.7g)を滴下し、30分攪拌した。その混合溶液に化合物2(6.4)を滴下し、室温で18時間攪拌した。反応後、50gの水で4回洗浄した。洗浄後濃縮後シリカゲルクロマトグラフィーにて生成することで化合物3を5.9g得た。
【0224】
【化51】
【0225】
次いで、窒素雰囲気下、化合物3(2g)と化合物4(1.6)をピリジン(10g)に30分攪拌し溶解させた。その混合溶液に化合物5(1.1g)を滴下し、室温で42時間攪拌した。反応後、50gの水を添加しトリフェニルスルホニウムブロマイド(3.0g)とジクロロメタンを50g添加し30分攪拌後、5%塩酸溶液50gで洗浄後、水50gで5回洗浄した。その後、混合溶液を濃縮しシリカゲルクロマトグラフィーにて生成することで化合物(B)−1を1.2g得た。
【0226】
【化52】
【0227】
得られた化合物はNMRにて同定した。
1H−NMR(DMSO、400MHz):δ(ppm)=7.74−7.90(m,15H,ArH),6.44−6.77(m,1H,CH),6.06−6.14(m,1H,CH),5.87(s,2H,CH
2),5.20−5.32(t,2H,CH
2),3.49(s,1H,CH),1.00−1.81(m,10H,cyclohexyl)
19F−NMR(DMSO,376MHz):δ(ppm)=−111.2
【0228】
[合成例2〜4:化合物(B)−2〜(B)−4の合成]
上記合成例1と同様にして、以下に示す化合物を合成した。NMRデータと、NMRにより特定した各化合物の構造を以下に示す。
【0229】
【化53】
[
1H−NMR(DMSO、400MHz):δ(ppm)=7.74−7.90(m,15H,ArH),7.28−7.32(m,1H,CH),6.87−6.91(m,1H,CH),5.87(s,2H,CH
2),5.25−5.32(t,2H,CH
2),3.49(s,1H,CH),0.97−1.85(m,10H,cyclohexyl)
19F−NMR(DMSO,376MHz):δ(ppm)=−111.8]
【0230】
【化54】
[
1H−NMR(DMSO、400MHz):δ(ppm)=7.74−7.90(m,15H,ArH),6.47−6.50(m,1H,CH),6.11−6.14(m,1H,CH),5.23−5.35(t,2H,CH
2),5.12−5.23(m,2H,CH
2),4.08(s,1H,CH),3.03−3.27(m,3H,CH+CH
2),2.51(s,1H,CH),1.87(m,1H,CH),1.56(m,1H,CH)
19F−NMR(DMSO,376MHz):δ(ppm)=−112.5]
【0231】
【化55】
[
1H−NMR(DMSO、400MHz):δ(ppm)=7.74−7.90(m,15H,ArH),6.79−6.82(m,1H,CH),6.08−6.11(m,1H,CH),5.25−5.32(m,2H,CH
2),4.34(s,1H,OH),2.80−2.85(m,1H,CH),1.73−2.27(m,13H,Adamantyl)
19F−NMR(DMSO,376MHz):δ(ppm)=−111.2]
【0232】
[実施例1〜4、比較例1〜2]
表1に示す各成分を混合して溶解し、ポジ型のレジスト組成物を調製した。
【0233】
【表1】
【0234】
表1中の各略号は以下の意味を有する。また、[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(A)−1:下記化学式(A)−1で表される共重合体(A)−1(Mw:7000、Mw/Mn:1.75。該化学式中、構成単位( )の右下の数値はその構成単位の割合(モル%)を示す)。
(B)−1〜(B)−4:前記化合物(B)−1〜(B)−4。
(B)−5:下記化合物(B)−5。
(B)−6:トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート。
(D)−1:トリフェニルスルホニウムd−カンファー−10−スルホネート。
(D)−2:トリ−n−ペンチルアミン。
(E)−1:サリチル酸。
(S)−1:PGMEA/PGME=6/4(質量比)の混合溶剤。
【0235】
【化56】
【0236】
[レジストパターンの形成1]
12インチのシリコンウェーハ上に、有機系反射防止膜組成物「ARC29A」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚89nmの有機系反射防止膜を形成した。
次いで、該有機系反射防止膜上に、上記レジスト組成物をそれぞれ、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、110℃で60秒間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。
次に、前記レジスト膜上に、保護膜形成用塗布液「TILC−057」(商品名、東京応化工業株式会社製)を、スピンナーを用いて塗布し、90℃で60秒間加熱することにより、膜厚35nmのトップコートを形成した。
次いで、ArF液浸露光装置NSR−S609B(ニコン社製;NA(開口数)=1.07)により、マスクを介して、トップコートが形成された前記レジスト膜に対して、ArFエキシマレーザー(193nm)を選択的に照射した。
そして、110℃で60秒間の露光後加熱(PEB)処理を行い、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液「NMD−3」(商品名、東京応化工業社製)で10秒間のアルカリ現像処理を行い、その後30秒間、純水リンスし、振り切り乾燥を行った。
続いて、100℃で45秒間のポストベークを行った。
その結果、いずれの例においても、前記レジスト膜に、幅49nmのラインパターンが等間隔(ピッチ98nm)に配置されたラインアンドスペースのレジストパターン(以下「LSパターン」という。)が形成された。
【0237】
[レジストパターンの評価1]
[マスクエラーファクタ(MEF)の評価]
上記LSパターンの形成と同じ手順に従い、同一露光量において、ラインパターンのターゲットサイズを45〜54nm(1nm刻み、計10点)、とするマスクパターンをそれぞれ用い、ピッチ98nmのLSパターンを形成した。このとき、ターゲットサイズ(nm)を横軸に、各マスクパターンを用いてレジスト膜に形成されたラインパターンのサイズ(nm)を縦軸にプロットしたときの直線の傾きをMEFとして算出した。MEF(直線の傾き)は、その値が1に近いほどマスク再現性が良好であることを意味する。その結果を表2に示す。
【0238】
[LWR(ラインワイズラフネス)評価]
上記LSパターンにおいて、測長SEM(走査型電子顕微鏡、加速電圧300V、商品名:S−9380、日立ハイテクノロジーズ社製)により、スペース幅を、スペースの長手方向に400箇所測定し、その結果から標準偏差(s)の3倍値(3s)を求め、400箇所の3sについて平均化した値を、LWRを示す尺度として算出した。その結果を表2に示す。
この3sの値が小さいほど、その線幅のラフネスが小さく、より均一幅のLSパターンが得られたことを意味する。
【0239】
[露光余裕度(ELマージン)の評価]
上記LSパターンが形成される露光量において、LSパターンのラインがターゲット寸法の±5%の範囲内で形成される際の露光量を求め、次式によりELマージン(単位:%)を求めた。その結果を表2に示す。
ELマージン(%)=(|E1−E2|/EOP)×100
E1:ホール直径46.5nmのLSパターンが形成された際の露光量(mJ/cm
2)
E2:ホール直径51.5nmのLSパターンを形成された際の露光量(mJ/cm
2)
なお、ELマージンは、その値が大きいほど、露光量の変動に伴うパターンサイズの変化量が小さいことを示す。
【0240】
[パターン形状評価]
上記最適露光量Eopにおいて形成された1:1LSパターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡(商品名:SU−8000、日立ハイテクノロジー社製)を用いて観察し、その形状を評価した。結果を表2に示す。
【0241】
【表2】
【0242】
上記の結果から、実施例1〜4のレジスト組成物は、比較例1〜2のレジスト組成物に比べて、MEF、LWR、ELマージン等のリソグラフィー特性及びパターン形状が良好であることが確認できた。
【0243】
[ポリマー合成例1:高分子化合物1の合成]
温度計、還流管を繋いだ3つ口フラスコに、20g(117.5mmol)のモノマー1、27.5g(117.5mmol)のモノマー2、13.9g(58.8mmol)のモノマー3、5.54g(8.73mmol)のモノマー4を、80gのシクロヘキサノンに溶解させた。この溶液に、重合開始剤としてアゾビスイソ酪酸ジメチル(V−601)を7.77g添加し溶解させた。
これを80℃に加熱した30gのシクロヘキサノンに、窒素雰囲気下、4時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液を1時間加熱攪拌し、その後、反応液を室温まで冷却した。
得られた反応重合液を大量のメタノールに滴下して重合体を析出させる操作を行い、沈殿した白色粉体をろ別、メタノールおよびヘプタンにて洗浄、乾燥して、目的物であるポリマー1を53.1g得た。
この高分子化合物についてGPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は7300であり、分子量分散度(Mw/Mn)は1.73であった。
また、13C−NMRにより求められた共重合体の組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))は、l/m/n/o=40.1/36.9/19.1/3.9であった。
【0244】
【化57】
【0245】
[ポリマー合成例2〜5:高分子化合物2〜5の合成]
モノマー種、配合比等を変更した他は、ポリマー合成1と同様にして、以下に示す高分子化合物2〜5を合成した。
【0246】
【化58】
【0247】
[実施例5〜13、比較例3〜6]
表3に示す各成分を混合して溶解し、ポジ型のレジスト組成物を調製した。
【0248】
【表3】
【0249】
表3中の各略号は以下の意味を有する。なお、(D)−1、(D)−2、(E)−1、(S)−1は上記と同様である。また、[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(A)−2:上記高分子化合物1。
(A)−3:上記高分子化合物2(Mw:7800、Mw/Mn:1.81、l/m/n/o=36.8/40.4/19.5/3.3(モル比))。
(A)−4:上記高分子化合物3(Mw:6800、Mw/Mn:1.85、l/m/n/o=39.3/41.5/15.1/4.1(モル比))。
(A)−5:上記高分子化合物1において、Mw:7500、Mw/Mn:1.76、l/m/n/o=40.5/37.1/20.5/1.9(モル比)の高分子化合物。
(A)−A:下記高分子化合物(A)−A(Mw:7000、Mw/Mn:1.70、l/m/n=45/35/20(モル比))。
(A)−B:下記高分子化合物(A)−B(Mw:7600、Mw/Mn:1.79、l/m/n/o=38.3/37.9/19.7/4.1(モル比))。
(A)−8:上記高分子化合物4(Mw:8200、Mw/Mn:1.89、l/m/n=40.1/24.6/35.3(モル比))。
(B)−A;下記化合物(B)−A。
【0250】
【化59】
【0251】
[レジストパターンの形成2]
実施例5〜13及び比較例3〜6のレジスト組成物を用い、PEBを表30に示す温度で行った以外は、上記[レジストパターンの形成1]と同様にして、幅49nmのラインパターンが等間隔(ピッチ98nm)に配置されたラインアンドスペースのレジストパターン(以下「LSパターン」という。)を得た。
【0252】
[レジストパターンの評価2]
上記[レジストパターンの評価1]と同様に、MEF、LWR、ELマージン、パターン形状について評価した。結果を表4に示す。
【0253】
【表4】
【0254】
上記の結果から、実施例5〜13のレジスト組成物は、比較例3〜6のレジスト組成物に比べて、MEF、LWR、ELマージン等のリソグラフィー特性及びパターン形状が良好であることが確認できた。
【0255】
[実施例14〜17、比較例7〜8]
表5に示す各成分を混合して溶解し、ポジ型のレジスト組成物を調製した。
【0256】
【表5】
【0257】
表5中の各略号は以下の意味を有する。なお、(A)−2〜5、(A)−A、(A)−B、(B)−A、(D)−1、(D)−2、(E)−1、(S)−1は上記と同様である。また、[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(F)−1:下記高分子化合物(F)−1(Mw:18000、Mw/Mn:1.5該化学式中、構成単位( )の右下の数値はその構成単位の割合(モル%)を示す)。
【0258】
【化60】
【0259】
[レジストパターンの形成3]
実施例14〜17及び比較例7〜8のレジスト組成物を用い、トップコート形成工程を除き、PEBを表6に示す温度で行った以外は、上記[レジストパターンの形成1]と同様にして、幅49nmのラインパターンが等間隔(ピッチ98nm)に配置されたラインアンドスペースのレジストパターン(以下「LSパターン」という。)を得た。
【0260】
[レジストパターンの評価3]
上記[レジストパターンの評価1]と同様に、MEF、LWR、ELマージン、パターン形状について評価した。結果を表6に示す。
【0261】
【表6】
【0262】
上記の結果から、実施例14〜17のレジスト組成物は、比較例7〜8のレジスト組成物に比べて、MEF、LWR、ELマージン等のリソグラフィー特性及びパターン形状が良好であることが確認できた。