(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検査対象の試料パターンの観察画像と、前記試料パターンに対応する設計レイアウトデータとを比較して、前記被検査対象の欠陥を解析する欠陥解析支援装置で実行されるプログラムを記録した記憶媒体において、
前記プログラムは、
前記観察画像のうち全部または一部の解析対象画像を製造工程に対応した階層ごとに分割して複数のレイヤー分割画像を生成するレイヤー分割部と、
前記レイヤー分割画像のそれぞれに対して、前記設計レイアウトデータの各設計レイヤーとの一致度を求めるマッチング処理部と、
前記各設計レイヤーのうち前記一致度が最も高い設計レイヤーを当該レイヤー分割画像に対応する設計レイヤーとして特定する設計レイヤー特定部とを備えることを特徴とするプログラムを記録した記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
システマティック欠陥解析を効率的に行う機能を備えたSEM式観察システムの構成例を説明する。なお、以下のSEM式観察システムの一構成例としてSEM式観察装置でシステマティック欠陥解析を行う例について説明するが、システムの構成はこれに限られず、システムを構成する装置の一部または全部が異なる装置で構成されていてもよい。例えば、本実施例のシステマティック欠陥解析処理をSEM式観察装置とネットワークで接続された欠陥分類装置で行ってもよいし、システム内の汎用のコンピュータに搭載された汎用CPUにより、所望の演算処理を実行するプログラムを実行することで実現してもよい。このプログラムが記録された記録媒体により、既存の装置をアップグレードすることも可能である。
【0013】
また、本発明の適用はSEM式観察システムに限られず、レビュー装置等の観察装置と接続された欠陥解析支援装置や、欠陥解析システムにも当然ながら適用可能である。
【0014】
以下で、SEM式観察装置とは、光学式またはSEM式検査装置といった、上位の欠陥検査装置で検出された欠陥座標を、あるいは設計レイアウトデータに基づくシミュレーションなどにより抽出された観察点の座標情報を入力情報として、観察座標の高画質なSEM画像を取得するための装置である。更に、取得した画像や設計レイアウトデータを入力情報として、欠陥が発生しやすいパターンやレイヤーの特定を行うシステマティック欠陥解析機能を有した構成例を説明する。本実施例でシステマティック欠陥とは、同じまたは類似したパターン箇所またはレイヤーに発生する欠陥のことであり、設計パターンのレイアウトに依存性が高い欠陥をいう。
【0015】
図1は、本実施例のSEM式観察装置の全体構成を示す模式図である。
図1のSEM式観察装置は、電子銃101、レンズ102、走査偏向器103、対物レンズ104、試料105、二次粒子検出器109などの光学要素により構成される電子光学系、観察対象となる試料を保持する試料台をXY面内に移動させるステージ106、当該電子光学系に含まれる各種の光学要素を制御する電子光学系制御部110、二次粒子検出器109の出力信号を量子化するA/D変換部111、ステージ106を制御するステージ制御部112、全体制御部および解析部113、画像処理部114、ディスプレイ、キーボード、マウスなどを備えた操作部115、取得した画像などのデータを保持する記憶装置116、光学式顕微鏡117などにより構成されている。また、電子光学系、電子光学系制御部110、A/D変換部111、ステージ106、ステージ制御部112は、SEM画像の撮像手段である走査電子顕微鏡を構成する。なお、撮像手段は走査電子顕微鏡に限られない。
【0016】
電子銃101から発射された一次電子ビーム107は、レンズ102で集束され、走査偏向器103で偏向された後、対物レンズ104で集束されて、被検査対象の試料105に照射される。一次電子ビーム107が照射された試料105から、試料の形状や材質に応じて二次電子や反射電子等の二次粒子108が発生する。発生した二次粒子108は、二次粒子検出器109で検出された後、A/D変換部111でデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された二次粒子検出器の出力信号を画像信号と称する場合もある。A/D変換部111の出力信号は、画像処理部114に入力されSEM画像を形成する。画像処理部114は、生成したSEM画像を使用して欠陥検出などの画像処理を実行するADR(Automatic Defect Review)処理など、各種の画像処理を実行する。
【0017】
レンズ102、走査偏向器103、対物レンズ104など、電子光学系内部の光学要素の制御は、電子光学系制御部110で行われる。試料の位置制御は、ステージ制御部112で制御されたステージ106で実行される。全体制御部113は、SEM式観察装置全体を統括的に制御する制御部であり、ディスプレイ、キーボード、マウスなどを備えた操作部115、記憶装置116からの入力を解釈し、電子光学系制御部110、ステージ制御部112、画像処理部114等を制御し、必要に応じて操作部115に含まれる表示部、記憶装置116に処理結果を出力する。画像処理部114で実行される処理は、ハードウェア、ソフトウェアいずれの方式でも実現可能である。ハードウェアにより構成する場合には、処理を実行する複数の演算器を配線基板上、あるいは半導体チップないしはパッケージ内に集積することにより実現できる。ソフトウェアにより構成する場合には、画像処理部114に高速な汎用CPUを搭載して、所望の演算処理を実行するプログラムを実行することで実現できる。
【0018】
図2は、
図1の全体制御部および解析部113の詳細図を示している。
図2に示す操作・解析部206は、
図1の全体制御部および解析部113と操作部115を統合して表現したもので、操作部115からの操作指示に対応して、全体制御および解析部113に組み込まれたCPUが所定のプログラムを実行することにより実現される複数の機能ブロックにより実現されている。このように、
図1に示すSEM式観察装置に組み込まれた構成が可能であるが、
図1に示すSEM式観察装置とは独立して
図2に示す操作・解析部を構成し、ネットワーク接続により
図1と
図2の構成が連結されてもよい。
図1に示すSEM式観察装置に組み込まれる場合には、欠陥データ記憶部201、画像データ記憶部202、設計レイアウトデータ記憶部203、解析パラメータ記憶部204、解析結果データ記憶部205は、
図1の記憶装置116と共通であってもよい。欠陥データ記憶部201には、欠陥座標などの情報が格納された欠陥データが格納されている。画像データ記憶部202にはSEM式観察装置で撮影した欠陥画像が格納された画像データが格納されている。設計レイアウトデータ記憶部203には設計レイアウト情報など設計情報が格納された設計レイアウトデータが格納されている。解析パラメータ記憶部204には解析時に欠陥画像に対して実行する画像処理などの解析条件を格納した解析パラメータが格納されている。
【0019】
操作・解析部206では、欠陥データ、画像データ、設計レイアウトデータ、解析パラメータを入力として、欠陥画像と設計レイアウトデータを重ね合わせて、欠陥が発生している設計パターンまたはレイヤーを特定して、システマティック欠陥として判定する処理を行う。なお、本実施例の操作・解析部206は、撮像された欠陥画像を製造工程に対応した階層ごとに分割して複数のレイヤー分割画像を生成するレイヤー分割部と、レイヤー分割画像のそれぞれに対して、設計レイアウトデータの各設計レイヤーとの一致度を求めるマッチング処理部と、各設計レイヤーのうち前記一致度が最も高い設計レイヤーを当該レイヤー分割画像に対応する設計レイヤーとして特定する設計レイヤー特定部と、解析対象とする欠陥画像をサンプリングする第一サンプリング部、第二サンプリング部とを含むものとする。レイヤー分割部、マッチング処理部、設計レイヤー特定部、第一サンプリング部、第二サンプリング部の処理内容については後述する。処理結果は解析結果データ記憶部205に格納される。また、解析の際に、解析パラメータを調整した場合には、調整結果を解析パラメータ記憶部204に格納して、次の解析に活用できるようにしてもよい。
【0020】
図3は、従来技術によるシステマティック欠陥解析の手順を示すフローチャートである。まず、欠陥データと画像データを読み込む(301)。また、設計レイアウトデータを読み込む(302)。ステップ301とステップ302の処理は並列に行われてもよいし、逆順に行われてもよい。
【0021】
次に、設計レイアウトデータの中から、欠陥画像と重ね合わせ処理するレイヤーを選択する(303)。従来は、ユーザが、画像と設計パターンを見比べて、適切と思われるレイヤーを選択していた。設計パターンのレイヤーの数は百を超えることもあり、重ね合わせ対象となるレイヤーが多い場合に、レイヤーの選択作業に多くの時間を要していた。したがって、このとき、重ね合わせ処理するレイヤー数に比例して処理時間は増加するので、必要最小限のレイヤーに絞り込むことが望ましい。
【0022】
観察画像を撮影した工程名と設計レイアウトデータのレイヤー名称が、対応関係が容易に類推できる命名ルールで管理されている場合は、比較的容易にレイヤーを選択することができるが、観察画像を撮影した工程名を命名する担当部署と、設計レイアウトデータのレイヤー名称を決定する担当部署と、更にはシステマティック欠陥の解析を担当する部署が異なる場合が多く、設計レイアウトデータから重ね合わせ処理すべきレイヤーを絞り込む作業は、担当者の知識や経験に依存してしまう。このため特に初心者には負担となる作業になっていた。
【0023】
次に、画像と設計レイアウトデータを自動マッチングさせる(304)。具体的には、画像から抽出したパターン情報をテンプレートとして、設計レイアウトデータ上で最も一致度が高い位置をマッチング座標として求める処理を行う。例えば、欠陥観察画像を
図4の(a)とし、これをテンプレートとする。401は欠陥領域を表している。マッチング対象である設計レイアウトデータは
図4の(b)のように、欠陥観察画像の観察視野(FOV)より広く領域をマッチング対象エリアとして設定する。これは、欠陥位置情報には検査装置、またはSEM式観察装置のステージ精度に起因する誤差が含まれているためである。
図4の(c)は、(a)の欠陥観察画像をテンプレートとして、(b)の設計レイアウトデータの領域内をサーチした結果、もっとも一致度が高い部分をマッチング位置として重ね合わせ表示したものである(例えば402)。このように、欠陥が発生した位置を、設計レイアウトデータ上で特定することができる。
【0024】
欠陥検査装置が特定した欠陥位置には、検査装置のステージ精度などの要因から、ミクロンオーダーの誤差が含まれる場合があり、ナノオーダーサイズのパターンに発生する欠陥を解析する場合には、この誤差が原因で正確な解析が実現できない事例が発生している。このような場合には、従来、手動で欠陥位置と設計レイアウトデータを重ね合わせるなど、マニュアルアシスト作業により対応していたが、作業効率の観点で問題となっていた。
【0025】
また、欠陥画像によってはマッチング精度が低下する問題もある。
図4の事例や、
図5の(a)のように、FOVに対して欠陥領域が大きくない場合(例えば501)には、特許文献2に開示されているマッチング処理で対応可能である。ところが、特許文献2はパターン計測を目的としているため、
図5の(b)のように、観察画像のFOVに対して欠陥領域が多くを占める場合(例えば502)が想定されていない。SEM式観察装置で取得した欠陥画像を解析対象とする場合には、解析対象画像に製造パターンだけでなく欠陥画像が含まれるため、特に欠陥サイズがFOV(Field Of View)に対して巨大な場合などに、画像と設計レイアウトデータの重ね合わせに失敗する場合がある。このような場合にマッチング精度が低下してしまい、マニュアルアシストによる重ね合わせ結果の修正作業が必要となるため、システマティック欠陥解析の作業負担を最小化することはできない、という課題があった。
【0026】
画像と設計レイアウトデータとのマッチング精度が信頼できない場合には、目視によるマッチング結果確認作業が必要となる(305)。マッチング結果が良好な場合は、システマティック欠陥判定(307)に処理を進めることができるが、マッチング結果が良好でない場合には、手動でマッチング処理を行ってから(306)、システマティック欠陥判定処理に進む(307)。このような、マッチング結果の確認作業、および手動によるマッチング結果修正作業は作業者の負担となっており、マッチング精度の向上が求められている。
【0027】
画像と設計レイアウトデータの重ね合わせが完了したら、システマティック欠陥判定処理を行う(307)。具体的には、画像と設計レイアウトデータを重ね合わせた上に、更に欠陥情報を重ね合わせて、欠陥が発生している設計レイアウトデータ、またはレイヤーを特定する。特許文献1に欠陥位置を特定した後に統計処理を行い、欠陥が発生しやすいレイヤーを特定する方法が開示されているが、前述のように設計レイアウトデータ上での欠陥位置の特定までに時間を要し、また手作業による作業負担が問題となっており、広く実用化されているとは言えない状況である。以下に説明する本実施例では、このような課題を解決し、システマティック欠陥解析作業負担の最小化を実現することができる。
【0028】
図6は、
図3の設計レイヤー選択処理(303)の自動化を実現するフローチャートである。
【0029】
まず、欠陥占有率による第一のサンプリングを行う(601)。以下、サンプリングとは複数の画像の中から解析対象として用いる画像を選択して抽出することである。これは操作・解析部206の中の第一サンプリング部によって行われる。このとき、判断基準として重要なのは、欠陥の実サイズそのものよりも、欠陥画像のFOVに占める欠陥面積の大きさであるため、数式(1)で欠陥占有率を定義して、サンプリング基準とする。数式(1)では、欠陥占有率をP、欠陥面積をS
Defect、FOV面積をS
FOVとしている。
【0031】
欠陥面積は検査装置の出力情報として、欠陥情報に格納されているものを用いてもよいが、SEM式観察装置で欠陥画像を取得する際にADRを実行している場合には、より正確な欠陥位置とサイズが検出されているので、これを用いるのが望ましい。数式(1)で定義した欠陥占有率を基準として、欠陥占有率が低い欠陥をサンプリングする。但し、欠陥が存在しない場合には、システマティック欠陥判定の対象外としてよい。欠陥占有率が低いと、
図5の(a)のように、欠陥に隠れて消失するパターンが少ないため、設計レイアウトデータとのマッチング精度を向上させることができる。また、欠陥占有率が低いと、欠陥部分のエッジを製造パターンのエッジと誤認識してマッチングスコアを算出する可能性が低下するので、設計レイアウトデータとのマッチング精度を向上させることができる。マッチングスコア算出式に関しては、数式(2)(3)を用いて後述する。
【0032】
次に、欠陥占有率によりサンプリングした画像に対して、画像解析によりレイヤー分割を行う(602)。ステップ602においてレイヤー分割処理とは、製造工程に対応した階層ごとに分割して複数のレイヤー分割画像を生成することである。これは操作・解析部206の中のレイヤー分割部によって行われる。レイヤー分割方法の一例としては、特許文献2に開示されているエッジ検出によりレイヤー分割を行ってもよいし、
図7に例示するように、解析対象のSEM画像の輝度分布ヒストグラムからレイヤー数を推定し、レイヤー数に応じてレイヤー分割を行ってもよい。ここで、レイヤーとは製造工程に対応した階層のことをいう。
【0033】
図7では、レイヤー数が(a)1層の場合、(b)2層の場合、(c)3層の場合を例示している。なお、ここでレイヤー数とは基板(
図7(a)(b)(c)の各図において一番暗い部分)上に形成されたレイヤーの数を表すものである。レイヤー数はSEM画像の輝度分布ヒストグラムから、自動で求めることが可能であるが、SEM画像に出現するレイヤー数が既知である場合や、より確実にレイヤー数を特定したい場合には、
図1の操作部115や
図2の操作・解析部206を用いて、オペレータに入力させてもよい。
【0034】
図8は、レイヤー分割処理(602)前の観察画像(a)と、前述の
図7の方法で、またはオペレータが入力したレイヤー数に応じてレイヤー分割した後のレイヤー分割画像である、レイヤー分割で抽出したレイヤー1(b1)、レイヤー分割で抽出したレイヤー2(b2)、レイヤー分割で抽出したレイヤー3(b3)の模式図である。また(b1)から(b3)のそれぞれに対応する設計レイヤーを(c1)から(c3)に示している。(c1)から(c3)の設計レイヤーは設計データベースに保存されている。後述するようにステップ605では分割画像(b1)から(b3)のそれぞれに対して対応する設計レイアウトデータを抽出するが、(c1)から(c3)のレイヤーはこのときの目標レイヤーとなるものである。
【0035】
画像解析によるレイヤー分割(602)により、レイヤー毎のパターン抽出が完了したら、抽出したパターンの密度を基準として第二のサンプリングを行う(603)。これは操作・解析部206の中の第二サンプリング部によって行われる。画像と設計レイアウトデータとのマッチングを正確に行うためには、より多くのパターンがFOV内に出現しているのが好ましいため、パターン密度が高いものをサンプリングする。パターン密度は、FOV内に占めるパターン部分の占有率や、パターンエッジの総和長などで定義することができる。どのような定義を採用するかは、観察画像と設計レイアウトデータとのマッチングアルゴリズムにあわせて、適切なアルゴリズムを採用すればよい。
図9の例では、左から右に行くほどパターン密度が高くなるように観察画像を並べ替えている。パターン密度が高い右側の画像から優先的に評価対象とする。但し、各レイヤーのパターン密度に極端な差がある場合、パターン密度に基づきサンプリングした結果、パターン密度が高い特定のレイヤーが出現している画像のみがサンプリングされることがあるため、対策が必要である。具体的な対策としては、
図9のように、レイヤー毎にパターン密度を求めて、レイヤー毎にパターン密度が高いものをサンプリングすることで、特定レイヤーが出現した観察画像にサンプリング結果が偏ることを防止することができる。
【0036】
観察画像のFOVに対する欠陥占有率を基準としたサンプリング、更には、観察画像に出現しているパターンの密度を基準としたサンプリングにより、マッチング処理対象を絞り込んだ後に、画像と設計レイアウトデータのマッチング処理を行う(604)。ステップ604においてマッチング処理とは、前記レイヤー分割画像のそれぞれに対して、前記設計レイアウトデータの各設計レイヤーとの一致度を求める処理のことである。これは操作・解析部206の中のマッチング処理部によって行われる。ステップ604では、画像解析によるレイヤー分割で抽出されたレイヤー毎にマッチングスコアを求める。マッチングスコアとは、レイヤー分割画像と設計レイアウトデータとの一致度が高くなるように定義された算出式である。一例として一般的な相関係数の算出式を数式(2)に示す。ここでは、相関係数をρ
ijk、レイヤー分割画像をM、設計レイアウトデータをI、レイヤー分割画像Mの画素値の平均値をM(上付きバー)
、設計レイアウトデータIの画素値の平均値をI(上付きバー)
として表している。なお、pは画像に含まれる各画素、qは画像に含まれる総画素数を表している。
【0038】
各画像に対してレイヤー分割を行い、数式(2)のように、画像と設計レイアウトデータとの一致度に応じてスコアが高くなるように定義された算出式を用いて、マッチングスコアを求める。数式(2)のρ
ijkは、i番目の画像に含まれるj番目のレイヤー分割画像とk番目の設計レイヤーとの相関値を表している。なお、ステップ601、603でサンプリングされた結果評価対象としてx枚の画像が残ったとすると1≦i≦xであり、ステップ602で分割されたレイヤー数がy枚とすると1≦j≦yであり、マッチング対象の設計レイヤー数がz枚とすると1≦k≦zである。
【0039】
各画像から抽出したレイヤー分割画像(
図8の例では、b1〜b3)のそれぞれに対して各マッチング対象の設計レイヤー(
図8の例では、c1〜c3を含む複数の設計レイヤー)とのマッチングスコアを算出する。すなわち、各(i,j,k)の組ごとにρ
ijkを求める。ここで、マッチング対象のレイヤーは、設計レイアウトデータの全レイヤーでもよいし、予めユーザが選んだ複数の設計レイヤーであってもよい。全設計レイヤーをマッチング対象とすることで、ユーザのレイヤーの選び方に依存せず適切な設計レイヤーを抽出することができる。また、ユーザが複数の設計レイヤーをマッチング対象として選ぶときは、マッチング対象を広く選択するのが確実性は高い。一方で、演算コストの面からは必要最小限のレイヤー選択が求められる。例えば、製造工程名と設計レイヤー名との対応が分かる場合には、製造レイヤー名に対応した設計レイヤーを含む前後複数レイヤーを選択すると、マッチング対象とすべきレイヤーを効果的に選択することができる。
【0040】
次に、数式(3)のように、画像から抽出した各レイヤー分割画像に対して、一致度が高い設計レイヤーが判定できる算出式を定義して、画像から抽出した各レイヤーとの一致度が高い設計レイヤーを抽出する(605)。これは操作・解析部206の中の設計レイヤー特定部によって行われる。ここで、数式(3)のF
jkは、各画像(i=1〜n)から抽出したj番目のレイヤー分割画像に対するk番目の設計レイヤーの相関値をn枚の画像にわたって平均した値を表しており、これをマッチングスコアとして利用する。数式(3)では、単純平均をマッチングスコアとして定義しているが、パターン密度などを反映した係数を導入してもよい。
【0042】
このように、画像から抽出した各レイヤー分割画像に対する各設計レイヤーとのマッチングスコアを求めて、画像から抽出したレイヤー分割画像毎に、マッチングスコアが最大の設計レイヤーを抽出する。すなわち、F
j1…F
jk…F
jzのz個のマッチングスコアを求め、このうち最大のものがF
jkmaxであるとすると、k
max番目の設計レイヤーをj番目のレイヤー分割画像に対応するレイヤーとして特定する。これをj=1〜zまでレイヤー分割画像のレイヤー数zだけ繰り返すことで、全てのレイヤー分割画像に最も一致度の高い設計レイヤーが特定される。
【0043】
以上の処理により、画像と重ね合わせ評価すべき設計レイヤーを自動で抽出することができる。これにより、オペレータの知識や経験に依らず、画像と重ね合わせ評価すべき設計レイヤーが自動選択できるので、オペレータの作業負担を最小化することができる。また、撮像された画像に対応して設計レイヤーを選択するので、画像を撮像したレイヤーによって同じレイヤーの見え方が変わってしまう場合にも、適切な設計レイヤーを抽出することができる。
【0044】
また、本実施例ではステップ601、603により、予め設計データとのマッチングに用いる観察画像をサンプリングする例を説明したが、サンプリングを行わず全ての観察画像の各々に対して、ステップ602、604、605の処理を行い、マッチングスコアが高いレイヤーを抽出しても良い。ただし、計算コストの観点から、上述のように、レイヤー抽出に用いるのに適切な画像を、設計データとのマッチングの前にサンプリングしておくのが望ましい。本実施例では欠陥占有率によるサンプリング、またはパターン密度によるサンプリングにより、マッチング対象画像を最小限に限定しているので、処理時間の最小化を実現している。
【0045】
図10は、画像と設計レイアウトデータとの位置合わせを自動的にかつ高精度に行う処理を説明するフローチャートである。
図3の従来技術のフローチャートでは、ステップ304に対応する。従来は、
図3で説明したように、画像と設計レイアウトデータの自動マッチング(304)の後に、マッチング結果の良否を目視確認して(305)、マッチング結果が悪い画像に対しては、手動によるマッチング結果の修正(306)が必要であった。マッチング精度の低下は、マッチング対象の画像に出現している欠陥の占有率が高く、マッチング対象となるパターン情報が少ない場合、または欠陥をパターンと誤認識した場合、またはマッチング対象とすべき設計レイヤーの選択が不適切な場合に発生していた。本実施例によれば、
図6を用いて説明した、欠陥占有率を基準としたサンプリング(601)により、欠陥占有率が高すぎる観察画像をマッチング対象から除外することができ、更には、画像と一致度が高い設計レイヤーを抽出しているので(605)、マッチング対象とする設計レイヤーに不適切なレイヤーが選択されることが無く、マッチング精度の低下を抑制することができる。
【0046】
また、仮に分割されたレイヤーそれぞれと欠陥画像をマッチングすることで位置合わせを行おうとすると、周期的なパターンがある場合には周期の整数倍だけずれた場所でマッチングされてしまう可能性がある。そこで、本実施例では、統合したレイヤーに対して欠陥画像をマッチングさせることで、あるレイヤーに周期的なパターンがある場合でもマッチング精度を向上させることができる。
【0047】
図10の具体的なフローを説明する。
まず、自動マッチング処理を実行する前処理として、
図6で説明したように抽出したマッチングスコアが高いレイヤー(605)を統合して、マッチング対象の設計レイアウトデータとする(1001)。
【0048】
次に、この統合した設計レイアウトデータと欠陥画像のマッチング(位置合わせ)を行い、マッチングスコアを求め(1002)、マッチングスコアが最大の位置を画像と設計レイアウトデータの重ね合わせ位置として特定する(1003)。この重ね合わせ位置の確定処理を全ての評価対象画像に対して実行する(1004)。
【0049】
図11は、システマティック欠陥判定を高精度に行う処理を説明するフローチャートである。
図3の従来技術のフローチャートでは、ステップ307に対応する。まず、
図10で抽出した画像と設計レイアウトデータの重ね合わせ位置と同じ位置に、欠陥座標も重ね合わせる(1101)。これにより、欠陥座標と設計レイアウトデータを最適な位置で重ね合わせることができるため、欠陥が発生しているパターン、レイヤーを正確に特定することができる(1102)。この欠陥発生パターン、レイヤーの特定処理を、評価対象の全画像に対して実行する(1103)。評価対象の全画像に対して、欠陥発生パターン、レイヤーの特定を行い、同じパターンまたはレイヤーに発生している頻度が高い欠陥を抽出して、これをシステマティック欠陥と判定する(1104)。これによってシステマティック欠陥が発生しているパターン、またはレイヤーが分かるので、ユーザはそのパターンやレイヤーの設計レイアウトや製造工程を見直すことで欠陥の発生を抑制することができる。
【0050】
図12は、
図3の従来技術におけるシステマティック欠陥判定フローチャートに対して、本実施例による改善処理を組み込んだシステマティック欠陥判定のフローチャートである。まず、欠陥データと画像データを読み込む(1201)。
図3の(301)に対応する処理であり、
図1のSEM式観察装置の記憶装置116、またはSEM式観察装置とネットワーク接続された解析システムの場合には、
図2の欠陥データ記憶部201や画像データ記憶部202からデータを読み込む。
【0051】
次に、設計レイアウトデータを読み込む(1202)。
図3の(302)に対応する処理であり、
図1のSEM観察装置の記憶装置116、またはSEM式観察装置とネットワーク接続された解析システムの場合には、
図2の設計レイアウトデータ記憶部203からデータを読み込む。読み込んだ欠陥データ、画像データを解析して、欠陥占有率が低い画像をサンプリングする(1203)。
図6の(601)に対応した処理である。
【0052】
次に、サンプリングにより抽出した欠陥占有率が低い画像を対象として、画像解析によりレイヤー分割を行う(1204)。
図6の(602)に対応した処理である。レイヤー分割した結果に基づき、パターン密度によるサンプリングを行い(1205)、解析対象とすべきレイヤー抽出のための画像と設計レイアウトデータマッチング処理の対象画像を更に絞り込む。
図6の(603)に対応した処理である。
【0053】
更に、サンプリングにより限定した画像を対象に、画像から抽出したレイヤー毎に、設計レイアウトデータとのマッチング処理を行う(1206)。
図6の(604)に対応した処理である。画像から抽出したレイヤー毎にマッチングスコアを求めて、画像から抽出したレイヤー分割画像毎にマッチングスコアが高い設計レイヤーを評価対象レイヤーとして抽出する(1207)。
図6の(605)に対応した処理である。
【0054】
次に、
図3の画像・設計レイアウトデータ自動マッチング処理(304)を改善した処理フローに入る。まず、評価対象として抽出した設計レイヤーを統合して、画像との重ね合わせ処理の対象となる設計レイアウトデータを作成する(1208)。
図10の(1001)に対応した処理である。
【0055】
次に、欠陥発生位置と設計パターンとの位置関係を正確に解析するために、統合した設計レイアウトデータと評価対象画像とのマッチング処理を行う(1209)。
図10の(1002)に対応した処理である。
【0056】
マッチングスコアが最大の位置を特定して、画像と設計レイアウトデータとの重ね合わせ位置とする(1210)。
図10の(1003)に対応した処理である。
【0057】
(1210)で求められた重ね合わせ位置に、更に、欠陥座標を重ね合わせる(1211)。
図11の(1101)に対応した処理である。欠陥座標を正確に設計レイアウトデータに重ね合わせることができるので、欠陥が発生しているパターン、またはレイヤーを正確に特定することができる(1212)。
図11の(1102)に対応した処理である。
【0058】
解析対象の全画像に対して処理を実行して(1213)、同じパターンまたはレイヤーに発生している頻度が高い欠陥を抽出して、システマティック欠陥と判定し、システマティック欠陥が発生しているパターンまたはレイヤーを特定する(1214)。
図11の(1104)に対応した処理である。
【0059】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。