(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
球体試料が挿入される容器状のベースと、前記ベースの底に設けられた2つの支持部と、前記ベースの内外に挿通され軸に沿った移動と軸を中心とした回転とで前記球体試料を回転させる回転伝達軸とを備え、前記支持部は、少なくとも前記球体試料と当接する頭部が球面とされ、前記2つの支持部と前記回転伝達軸との3点で前記球体試料を支持することを特徴とする球体試料用ホルダー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で示される従来例は、円筒部に設けられた軸と3個の球体支えとで球体試料を上下から挟持する構造である。つまり、軸は球体試料に回転を与えるだけの役割を担い、これだけでは球体試料を円筒部内において位置決め及び保持ができないため、3個の球体支えが備えられ、これらが円筒の中心線と垂直面内における球体試料の位置決め、また、円筒の中心線方向に球体試料を押圧する。これにより押圧され軸に突き当たり円筒の中心線方向の球体試料の位置決めがされ、空間における位置決めが実現される。この構成の特徴として、球体試料の赤道部を境として上方に3個の球体支えを備え、反対の下方に軸を備える必要があるため球体試料を挟む構成をとることになる。つまり、球体試料をホルダーへ嵌めこむという構成である。しかし、当該構成が原因で以下のような課題があった。
球体試料の装着に際しては、球体試料を上方より押し込む操作が必要となり、傷の付きやすい球体試料の設置には気を使う必要があった。
また、球体試料の取り外しに際しては、円筒部の切欠きに棒状の物を差し込んで持ち上げるという操作が必要となる。そのため、球体試料の取り外しに際して、取り外し用の棒状の道具を用意する必要があった。また、傷の付きやすい球体試料の取り外しは気を使う必要があった。
このため、球体試料への押圧力による変形の影響が問題となる場合には、適用が難しかった。この従来方法では構造上の問題で、押圧と位置決めを同時に行なっている関係で、押圧だけをやめることができない。
【0006】
一方、ホルダーの構造上、側面には開口を設けることが難しい。そのため、球体試料の水平方向からの観察・測定に適用することが容易でなかった。別な対応方法として、ホルダーごと90°回転させて設置することも考えられる。しかし、回転を与えるための軸が球体試料の水平方向に位置することで、球体試料の重力の方向から90°ずれる。このため、回転伝達に必要な摩擦を得ることが難しくなる。これに対応するため、押圧力を高めることで対応できるが、前述のような変形の影響が問題となる場合や傷が気になる場合には、この方法は適用できない。
そして、ホルダーの構造上、側面に開口を設けることが難しい点から、球体試料の上からと水平方向からの、観察・測定に対応したホルダーを実現することが困難である。さらに、特許文献の構造は、部品点数が多く、複雑で、組み立て時の調整に時間が掛かる。
【0007】
本発明の目的は、構造が簡易で、球体試料の着脱が簡単で、球体試料に傷を付けにくく、上から及び水平方向からの観察・測定用の開口を持つ、球体試料を所定の位置に再現よく位置決めできる球体試料用ホルダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の球体試料用ホルダーは、球体試料が挿入される容器状のベースと、前記ベースの底に設けられた2つの支持部と、前記ベースの内外に挿通され軸に沿った移動と軸を中心とした回転とで前記球体試料を回転させる回転伝達軸とを備え、
前記支持部は、少なくとも前記球体試料と当接する頭部が球面とされ、前記2つの支持部と前記回転伝達軸との3点で前記球体試料を支持することを特徴とする。
この構成の本発明では、回転伝達軸と複数の支持部との上に球体試料を、ピンセット等を用いて配置する。球体試料は、その自重によって、回転伝達軸の上の1点と2つの支持部の2点の合計3点で安定的に支持されており、この状態で、観察、測定あるいは加工等が実施される。
球体試料の観察等される部位を変更するには、回転伝達軸を回転あるいは進退させる。これにより、回転伝達軸と球体試料との間の摩擦力により回転伝達軸の回転や進退が球体試料に伝達されて球体試料が回転する。球体試料が回転する際に、球体試料の球面が支持部に対して滑ることになり、球体試料はその中心位置が動くことなく回転伝達軸と2つの支持部との上で安定的に支持されたままとなる。
従って、本発明では、ベースにそれぞれ設けられた2つの支持部及び回転伝達軸によって、球体試料が3点で安定的に支持されており、この状態で、回転伝達軸を操作することで、球体試料を所定の位置に再現よく位置決めできる。しかも、観察等に際して、球体試料の上部を押さえる部材が不要となるから、球体試料用ホルダーの構造を簡易なものにし、球体試料の着脱操作を容易に行うことができる。
【0009】
ここで、本発明では、前記ベースには前記球体試料の脱落を防止する脱落防止壁部が設けられ、前記脱落防止壁部には前記球体試料の表面を露出させる開口が設けられている構成が好ましい。
この構成の本発明では、ベースに脱落防止壁部が設けられているので、観察等や球体試料の回転操作に際して、球体試料が脱落することがない。さらに、脱落防止壁部には球体試料の表面を露出させる開口が設けられているから、この開口を通じて球面試料の側面方向からのアクセスが可能となり、観察、測定あるいは加工等が実施される。
従って、本発明では、ベースに脱落防止壁部が設けられているので、観察等や球体試料を回転する際に球体試料が脱落することを防止することができる。さらに、脱落防止壁部には球体試料の表面を露出させる開口が設けられているから、観察等に際して側方からのアクセスが可能となる。
【0010】
前記開口は、前記脱落防止壁部の正面側と背面側とにそれぞれ形成され、かつ、前記球体試料の直径より小さな寸法とされる構成が好ましい。
この構成の本発明では、正面側と背面側との2つの開口から球体試料を容易に回転伝達機構及び支持部に設置し、あるいは、回転伝達機構及び支持部の上から取り出すことが可能となる。
【0011】
前記脱落防止壁部は回転対称形である構成が好ましい。
この構成の本発明では、脱落防止壁部が回転対称形であるから、脱落防止壁部とベースとの一体形成が容易となり、球体試料用ホルダーの構造をより簡易なものにできる。
【0012】
前記支持部は、球体を備え、前記ベースに形成された凹部には前記球体を回転自在に支持する複数の転動体が配置されている構成が好ましい。
この構成の本発明では、球体が複数の転動体により回転自在となるので、球体試料が回転する際に、球体試料が支持部に対してより円滑に滑ることになり、球体試料の回転が支持部により妨げられることがなく、回動後の球体試料の位置ずれを防止できる。
【0013】
前記支持部の前記球体試料に対する摩擦抵抗は前記回転伝達軸の前記球体試料に対する摩擦抵抗より小さい構成が好ましい。
この構成の本発明では、回転伝達軸の回転や進退の動きを確実に球体試料に伝達できるとともに、球体試料が支持部に対して滑らかに回動する。そのため、球体試料を滑らかに回転させることができ、回転後の球体試料の位置ずれを防止することができる。
【0014】
前記ベースには前記球体試料を少なくとも前記回転伝達軸に向けて予圧する予圧機構が設けられている構成が好ましい。
この構成の本発明では、予圧機構によって球体試料と回転伝達軸との摩擦力を大きくすることで、球体試料が軽量であっても、回転伝達軸を回転あるいは進退させることで球体試料を確実に回転させることができる。
【0015】
前記予圧機構は、前記球体試料を押圧する押圧部材と、前記球体試料を押圧する位置から前記押圧部材を退避させる退避機構とを備えた構成が好ましい。
この構成の本発明では、退避機構によって押圧部材を、球体試料を押圧する位置から押圧部材を退避させておけば、観察等に際して予圧機構が邪魔になることがない。
【0016】
前記押圧部材は、前記球体試料を前記支持部及び前記回転伝達軸に向けて押圧する平面が形成されている構成が好ましい。
この構成の本発明では、押圧部材の先端が平面とされているので、押圧部材の中心が球体試料の頂部に対してずれていても、球体試料を支持部及び回転伝達軸に向けて均等な力で押圧することができる。
【0017】
前記押圧部材は、前記球体試料を前記回転伝達軸に向けて押圧するように前記球体試料の中心に対して偏心して配置されている構成が好ましい。
この構成の本発明では、押圧部材が球体試料に対して偏心しているので、押圧部材を押圧操作すると、球体試料が回転伝達軸に向けて押圧されることになり、球体試料と回転伝達軸との摩擦が大きくなる。そのため、回転伝達軸の回転あるいは進退の動きを確実に球体試料に伝達することができるから、回転伝達軸の回動操作を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から
図3には本発明の第1実施形態に係る球体試料用ホルダー1の全体構成が示されている。
図1と
図2はそれぞれ異なる方向から見た球体試料用ホルダー1の斜視図であり、
図3は球体試料用ホルダー1の平面図である。
図1から
図3において、球体試料用ホルダー1は、円筒容器状のベース11と、このベース11にそれぞれ設けられ球体試料Sを支持する2つの支持部121,122及び回転伝達軸13と、ベース11に一体に設けられ球体試料Sの脱落を防止する脱落防止壁部14と、回転伝達軸13を固定するクランプねじ15とを備えた構成である。なお、ベース11の底部に必要に応じて円柱状の支持台16を着脱自在に設けるものであってもよい。
【0020】
ベース11は円板部11Aと円筒部11Bとを有する有底円筒部材の正面側を一部切り欠いた形状であり、ポリウレタン等の合成樹脂から形成される。
円板部11Aは一部に切り欠きを有する円板部材であり、その中心部には、球体試料Sを載置した際に、球体試料Sの底部との干渉を防止するための逃げ穴11Cが形成されている。この逃げ穴11Cは段付に形成されている。
円筒部11Bは、その外周面が円板部11Aの外周面と一致する。
【0021】
脱落防止壁部14はそれぞれ円筒部11Bから軸方向に延びて一体に形成された一対の立上部であり、その外周面がベース11の外周面と一致し、かつ、その内周面が円筒部11Bの内周面と一致する。これらの脱落防止壁部14は、円筒部11Bの軸芯を円中心とした回転対称形とされている。
脱落防止壁部14の内周の直径は球体試料Sの直径より大きい。そして、円筒部11Bと脱落防止壁部14との内周の上方は球体試料Sを着脱するための空間として開放されている。
【0022】
回転伝達軸13は、ベース11に対して、球体試料Sの中心位置を動かさずに球体試料Sの表面の位置を選択させるように、回転伝達軸13の軸Xを中心として回転自在かつ軸に沿って進退自在に設けられている。つまり、支持部121,122の球体試料Sを支持する支持点P1,P2と回転伝達軸13の球体試料Sを支持する支持点P3とはそれぞれ正三角形Aの頂点となるように配置されている。正三角形Aの頂点を結ぶ円SBは、その中心が脱落防止壁部14の内周の円中心と一致する。
【0023】
回転伝達軸13は、軸芯が2つの支持部121,122を結ぶ直線Bと平行になるようにベース11を貫通して設けられた軸本体130と、この軸本体130の両端部にそれぞれ設けられた摘部131とを有するものである。また、回転伝達軸13は、熱伝導性の小さな材質から形成されており、回転伝達軸13の球体試料Sに対する摩擦抵抗より支持部121,122の球体試料Sに対する摩擦抵抗が小さい。
軸本体130は、ベース11に対して軸回りに回転自在かつ軸方向に進退自在に設けられた丸軸部材であり、その直径が球体124の直径とほぼ同じである。
摘部131は、ベース11の軸本体130が挿通される孔の径より大きい径を有する短寸円柱状部材であり、回転伝達軸13を回転あるいは進退させるための摘みとして機能する他、回転伝達軸13のベース11からの抜け止めとしても機能する。
クランプねじ15は、その頭部で回転伝達軸13を固定するものであり、回転伝達軸13の軸方向とは直交する方向に延びてベース11の背面側に設けられている。
【0024】
本実施形態では、ベース11の外部から回転伝達軸13から遠い方向であって支持点P1,P2を結ぶ直線に近接する方向を正面方向R1とし、ベース11の外部から回転伝達軸13に近接する方向を背面方向R2とする。ベース11及び脱落防止壁部14には、支持部121,122の近傍に正面方向R1からアクセスするための開口14Aが形成され、回転伝達軸130側に背面方向R2からアクセスするための開口14Bがそれぞれ形成されている。
これらの開口14A,14Bは、その幅方向(ベース11の軸方向と直交する平面内での方向)の寸法Lは観察や測定に必要な寸法であって球体試料Sの直径より小さく設定されている。
脱落防止壁部14の高さは支持部121,122及び回転伝達軸13に支持された状態の球体試料Sの高さより低く設定されている。つまり、球体試料Sは球体試料用ホルダー1に設置されている状態では、その頂部側球面部と、正面側球面部及び背面側球面部が露出する。
【0025】
支持部121,122の取付構造が
図4に詳細に示されている。
図4において、支持部121,122は、ベース11の円板部11Aに形成された凹部11Dに回転自在に設けられた複数の転動体123と、これらの転動体123に支持された球体124と、複数の転動体123を互いに連結するリテーナ125とを備えている。
2つの球体124は、それぞれ同じポリアセタール等の合成樹脂から同一直径の球状に形成されている。複数の転動体123は、それぞれ同じポリアセタール等の合成樹脂から同一直径の球状に形成されている。
円板部11Aの凹部11Dは半球面状に形成されており、その端縁には転動体123及び球体124が円板部11Aから抜け出ないようにするための抜止部11Eが設けられている。抜止部11Eは、その内周面が上方に向けて絞られるようなテーパ状に形成されている。球体124の球体中心Oは円板部11Aの上面よりも下方に位置する。
【0026】
以上の構成の球体試料用ホルダー1を用いて測定する方法を
図5及び
図6に基づいて説明する。
図5は球体試料用ホルダー1を使用して測定を行う状態の平面を示し、
図6は球体試料用ホルダー1を使用して測定を行う状態の側面を示す。
図5及び
図6では、球面試料の表面形状を干渉測定する際に用いた例が示されている。
図5及び
図6において、球体試料用ホルダー1の2つの球体124及び回転伝達軸13の上に球体試料Sを、ピンセット等を用いて載置しておき、この球体試料用ホルダー1に近接してフィゾー干渉計等の横型の球面干渉測定装置100を配置する。なお、
図5及び
図6には球体試料面干渉装置の一部が図示されている。
この球面干渉測定装置100は、図示しない参照球面が設けられた参照球面原器101とフィゾー干渉計102とを備え、円錐状の測定光Qが球体試料用ホルダー1の開口14Aから露出した球体試料Sに水平方向から任意の位置に照射される。
球体試料Sの当該位置の測定が終了したら、クランプねじ15を緩めて回転伝達軸13が回転あるいは進退できる状態にしておく。
【0027】
図7には回転伝達軸13の動きを説明する図が示されている。
図7において、球体試料用ホルダー1の2つの球体123及び回転伝達軸13の上に球体試料Sが載置された状態で、回転伝達軸13を回転あるいは軸方向に進退させる。
例えば、回転伝達軸13を矢印M1方向に回転すると、球体試料Sは、矢印M2方向に回転し、回転伝達軸13を矢印N1方向に進退させると、球体試料Sは、矢印N1方向と平行する平面内で矢印N2方向に回転する。球体試料Sは、その自重によって、回転伝達軸13との間に摩擦力が働き、回転伝達軸13が矢印M1方向に回転し、矢印N1方向に進退することで、球体試料Sが矢印M2,N2に回転する。球体試料Sが回転しても、球体試料Sと支持部121,122との間は滑るので、球体試料Sの重心(球体中心)がベース11の円中心からずれることがない。
球体試料Sの開口14Aから露出する被測定面が変更されたら、クランプねじ15を締め付け回転伝達軸13がベース11に対して動かない状態にしておく。
さらに、開口14Aから露出した球体試料Sの変更された測定位置に測定光Qを照射し、測定を行う。
【0028】
従って、第1実施形態では次の作用効果を奏することができる。
(1)容器状のベース11にそれぞれ球体試料Sを支持する1本の回転伝達軸13と2つの支持部121,122とを設け、回転伝達軸13を、ベース11に対して軸回りに回転自在かつ軸方向に沿って移動自在に設け、2つの支持部121,122と回転伝達軸13との3点で球体試料Sを支持する構成としたから、観察等される部位を変更するには、1本の回転伝達軸13を回転あるいは進退させればよく、変更後も球体試料Sが2つの支持部121,122と回転伝達軸13との3点で安定的に支持されることで、球体試料Sを所定の位置に再現よく位置決めできる。しかも、球体試料Sの上部を押さえる部材が不要となるので、球体試料用ホルダー1の構造を簡易なものにすることができ、さらに、球体試料Sの着脱操作を容易に行うことができる。
【0029】
(2)ベース11に球体試料Sの脱落防止のための脱落防止壁部14を設けて球体試料用ホルダー1を構成し、脱落防止壁部14に球体試料Sの表面を露出させる開口14A,14Bを設けたので、球体試料Sの水平方向からのアクセスが可能となり、横型のフィゾー干渉計を用いた測定等を実施することができる上、脱落防止壁部14によって球体試料Sが脱落することを防止することができる。
【0030】
(3)支持部121,122の球体試料Sを支持する支持点P1,P2と、球体試料Sを支持する回転伝達軸13の支持点P3とは、正三角形の頂点となるように配置されているので、球体試料Sが極めて安定的に支持されることになり、観測等において、球体試料Sが動くことがない。
【0031】
(4)脱落防止壁部14の正面側に開口14Aが形成され、脱落防止壁部14の背面側に開口14Bが形成されており、これらの開口14A,14Bの幅寸法Lが球体試料Sの直径より小さな寸法とされるから、正面側と背面側との2つの方向から球体試料Sを露出させることができることになる。そのため、互いに対向する開口14A,14Bを通してピンセット等で球体試料Sを保持可能であるため、球体試料Sのベース11への着脱操作が容易に行える。しかも、測定や観測時に開口14A,14Bから球体試料Sが脱落することがない。
【0032】
(5)脱落防止壁部14の高さは、支持部121,122及び回転伝達軸13に支持された球体試料Sの高さより低く設定されているから、ベース11に載置された球体試料Sを上部から回動操作することができる。また、球体試料Sを従来方式と同様に上からも測定や観察することができる。
【0033】
(6)脱落防止壁部14が回転対称形であるから、脱落防止壁部14とベース11との一体形成が容易となり、球体試料用ホルダー1の構造をより簡易なものにできる。
【0034】
(7)ベース11の円板部11Aに逃げ穴11Cを形成したから、球体試料Sの底部がベース11に干渉することがない。
【0035】
(8)支持部121,122は、球体試料Sを支持する球体124と、この球体124を支持しベース11に形成された凹部11Dの上で回転自在に設けられた複数の転動体123とを備えているから、球体試料Sの回転に伴って、転動体123が滑らかに回転することにより、球体試料Sの回転を円滑の行うことができ、球体試料Sの回転が支持部121,122により妨げられることがなく、回動後の球体試料Sの位置ずれを防止できる。
【0036】
(9)支持部121,122の球体試料Sに対する摩擦抵抗が回転伝達軸13の球体試料Sに対する摩擦抵抗より小さいので、回転伝達軸13の回転や進退の動きを確実に球体試料Sに伝達できるとともに、球体試料Sが支持部に対して滑らかに回動する。そのため、球体試料Sの滑らかな回転と回転後の球体試料Sの位置ずれ防止とを実現することができる。
【0037】
(10)支持部121,122の球体124を合成樹脂製としたから、支持される球体試料Sにキズがつくことを少なくすることができる。
【0038】
(11)ベース11は合成樹脂製であるから、球体試料用ホルダー1の軽量化を図ることができる。
【0039】
(12)回転伝達軸13は、軸本体130と、この軸本体130の両端部にそれぞれ設けられた摘部131とを有するから、摘部131によって回転伝達軸13を回転あるいは進退させるための操作が容易にできる他、回転伝達軸13がベース11から抜け止めされることになる。
【0040】
(13)回転伝達軸13を固定するクランプねじ15をベース11に設けたから、測定や観察中に球体試料Sの位置が不用意にずれることがない。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態を
図8及び
図9に基づいて説明する。
第2実施形態は第1実施形態の球体試料用ホルダー1に予圧機構を連結したものである。ここで、第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素は同一符号を付して説明を省略する。
図8は第2実施形態の球体試料用ホルダー2の斜視図である。
図8において、球体試料用ホルダー2は、ベース11、2つの支持部121,122、回転伝達軸13、2つの脱落防止壁部14、クランプねじ(
図8では図示省略)及び支持台16を有する第1実施形態の球体試料用ホルダーと、ベース11に設けられた予圧機構20とを備えて構成されている。
【0042】
予圧機構20は、測定や観察する球面位置を変更する際に、球体試料Sを少なくとも回転伝達軸13に向けて予圧するものであり、2つの脱落防止壁部14のうち一方の頂部に設けられた支柱21と、この支柱21に対して一端部が設けられた板状のプランジャベース22と、このプランジャベース22の他端部に固定された押圧部材としての押圧部材23とを備えて構成される。
プランジャベース22は支柱21の軸Yに対して回転自在に取り付けられており、これにより、球体試料Sを押圧する位置と球体試料Sから退避させる位置とに切り換える退避機構24が構成される。なお、支柱21はプランジャベース22を所定の位置で支持するために段付形状としてもよく、さらに、プランジャベース22を所定の回転角度で保持するために段付部分に突起等の係止部を設け、この係止部に係止する係止凹部をプランジャベース22に設ける構成を採用することができる。
押圧部材23は、筒状のケース230と、このケース230の内部に設けられたスプリング(図示せず)と、このスプリングによって球体試料Sを少なくとも回転伝達軸13に向けて押圧する先端部231とを備えたもので、その具体的な構造は公知のスプリングプランジャやボールプランジャである。なお、先端部231で球体試料Sを所定の圧力で予圧するように、先端部231の突出量を予め調整しておく。
【0043】
押圧部材23の具体的な構造が
図9に示されている。なお、
図9において、支持部121(122)は球体124のみが図示されている。
図9(A)には押圧部材23で球体試料Sを回転伝達軸13と支持部121(122)との双方に向けて押圧する場合が図示されている。
図9(A)において、先端部231は、その軸芯が球体試料Sの中心Cと通るように配置されており、かつ、球体試料Sを支持部121(122)及び回転伝達軸13に向けて均等に押圧するための平面231Aが先端に形成されている。
【0044】
図9(B)には押圧部材23で球体試料Sを回転伝達軸13に向けて押圧する場合が図示されている。
図9(B)において、先端部231は、その軸芯が球体試料Sの中心Cとずれる位置になるように偏心して配置されており、かつ、回転伝達軸13に向けて球体試料Sを押圧するための球面状の突出部231Bが先端に形成されている。つまり、突出部231Bは球体試料Sの中心Cより回転伝達軸13から離れる位置に配置されており、かつ、先端部231が支持部121(122)側に向けて下方に押圧されることにより、突出部231Bが当接する球体試料Sの球面には下側に向けて押圧される力と水平方向に向けて押圧する力とが働き、その合力が回転伝達軸13に向かう。なお、突出部231Bは、その具体的な構造は限定されるものではないが、例えば、先端が球状のものを使用してもよい。
【0045】
従って、第2実施形態では、第1実施形態の(1)〜(13)の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(14)ベース11に球体試料Sを支持部121,122及び回転伝達軸13に向けて予圧する予圧機構20を設けたから、この予圧機構20によって球体試料Sと回転伝達軸13との摩擦力を大きくすることで、球体試料Sが軽量であっても、回転伝達軸13を回転あるいは進退させることで確実に球体試料Sを回転させることができる。
【0046】
(15)予圧機構20は、球体試料Sを押圧する押圧部材23と、この押圧部材23で球体試料Sを押圧する位置から退避させる退避機構24とを備えたから、退避機構20によって押圧部材23を、球体試料Sを押圧する位置から退避させておけば、観察等に際して予圧機構20が邪魔になることがない。
【0047】
(16)押圧部材23は、球体試料Sを支持部121,122及び回転伝達軸13に向けて押圧する平面231Aが形成された先端部231を有する構成とすれば、押圧部材23の中心が球体試料Sの頂部に対してずれていても、球体試料Sを支持部121,122及び回転伝達軸13に向けて均等な力で押圧することができる。
【0048】
(17)押圧部材23を球体試料Sの中心に対して偏心して配置し、押圧部材23の先端部231に、球体試料Sを回転伝達軸13に向けて押圧するための突出部231Bを形成すれば、球体試料Sと回転伝達軸13との摩擦がより大きくなるので、回転伝達軸13の回転あるいは進退の動きを確実に球体試料Sに伝達することができる。
【0049】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含む。
例えば、前記実施形態では、支持部121,122を、それぞれ2つの転動体123と1つの球体124とを備えて構成したが、本発明では、支持部121,122をベース11に埋設された球体124のみから構成するものでもよい。この場合、球体124に代えて球体試料Sと当接する頭部のみを球面とし、ベース11に固定される部分を軸部とした構成としてもよい。
【0050】
本発明において、予圧機構20を設ける場合にあっては、第2実施形態の構造に限定されるものではない。例えば、
図9(A)において、先端部231の形状を平面231Aが形成されたものに代えて、突出部231Bを先端に有する形状であってもよい。また、
図9(B)において、押圧部材23を球体試料Sの中心Cに対して偏心させる構造としたが、本発明では、押圧部材23をその軸芯が中心Cを通るように斜めに配置する構成としてもよい。
さらに、退避機構24を必ずしも設けることを要しないが、設ける場合にあっても、第2実施形態の構造に限定されるものではない。例えば、支柱21を軸方向に沿って進退可能な構成とし、球体試料Sをベース11に着脱する場合や測定、観測する場合には、支柱21をのばし、押圧部材23を球体試料Sから離隔させる構成としてもよい。
【0051】
さらに、本発明では、脱落防止壁部14を必ずしも設けることを要せず、設ける場合にあっては、脱落防止壁部14は回転対称形に限定されるものではない。仮に、回転対称形であっても、脱落防止壁部14の数は3つ以上であってもよい。
また、本発明において、ベース11と脱落防止壁部14の構造は前記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、ベースを、球体試料を収納するための円錐状の収納面が形成された構造とし、このベースに回転伝達軸を回転自在及び軸方向移動自在に設け、この回転伝達軸の1箇所と収納面の2箇所の支持部との合計3箇所で球体試料を安定して支持する構成であってもよい。
また、ベース11の形状を平面矩形状としてもよい。
さらに、ベース11と脱落防止壁部14とを別体に設けてもよい。さらに、支持部121,122や回転伝達軸13を金属製としてもよい。