特許第5948862号(P5948862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948862
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】新規化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 309/17 20060101AFI20160623BHJP
   C07C 303/22 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   C07C309/17CSP
   C07C303/22
【請求項の数】9
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2011-282950(P2011-282950)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-133281(P2013-133281A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】武元 一樹
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−039146(JP,A)
【文献】 特開2007−197718(JP,A)
【文献】 特開2010−204646(JP,A)
【文献】 特開2006−257078(JP,A)
【文献】 特開2007−197432(JP,A)
【文献】 特開2007−145822(JP,A)
【文献】 特開2011−170111(JP,A)
【文献】 特開2010−138330(JP,A)
【文献】 特開2002−214774(JP,A)
【文献】 特開2011−076084(JP,A)
【文献】 特開2011−158896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物。

[式(I)中、
Xは、水素原子又はメチル基を表す。
nは0又は1を表す。
1及びU2は、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す。
Lは炭素数1〜20の二価の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、芳香族炭化水素基及び脂肪族炭化水素基の組み合わせである炭化水素基であって、
該芳香族炭化水素基は、フェニレン基又はナフチレン基を表し、該脂肪族炭化水素基中のU1及びU2に隣接しないメチレン基は、酸素原子又は硫黄原子に置き代わっていてもよい。
1及びY2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。
は、スルホニウムカチオンを表す。]
【請求項2】
前記式(I)のY及びYがともに、フッ素原子である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記式(I)のXが、水素原子である請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
前記式(I)のnが1である請求項1〜3のいずれか記載の化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の化合物の製造方法であって、
式(II)

[式(II)中、
Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。Xは前記と同じ意味である。]
で表される化合物と、式(III)

[式(III)中、
n、U1、U2、L、Y1、Y2及びAは、前記と同じ意味である。]
で表される化合物とを反応させる工程を有する製造方法。
【請求項6】
前記式(II)のZが塩素原子である請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
式(III)で表される化合物。

[式(III)中、
nは0又は1を表す。
1及びU2は、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す。
Lは式(AR−39)〜式(AR−47)、式(AR−50)又は式(AR−52)で表される基を表す。

1及びY2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。
は、スルホニウムカチオンを表す。]
【請求項8】
前記式(III)のY及びYがともに、フッ素原子である請求項7記載の化合物。
【請求項9】
前記式(III)のnが1である請求項7又は8記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、活性光線又は放射線の照射によって、酸基を形成する基を有し、レジスト組成物用樹脂の製造に有用なモノマー(新規化合物)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の微細加工が進むにつれて、当該微細加工に用いられるレジスト組成物の解像度を向上させることが求められている。近年の微細加工には、波長193nmのArFエキシマレーザーによるリソグラフィー技術が検討されており、このリソグラフィー技術に適応するレジスト組成物が開発されている。さらに高解像度の微細加工を求める次世代の露光光源として、波長13nm付近の極端紫外光(EUV)又はX線を露光光源とするリソグラフィー技術や、電子線リソグラフィー技術に用いられるレジスト組成物の開発も進められている。
【0003】
ArFエキシマレーザーやEUVを露光光源とするリソグラフィー技術に用いられるレジスト組成物は、活性光線又は放射線の照射によって、酸を発生する酸発生剤と、酸の作用により、親水性基を形成し得る基(酸不安定基)を有する樹脂とが含有されている。また、活性光線又は放射線の照射によって、酸基を形成する基(光酸発生基)と、酸不安定基とを含有する樹脂を含有するレジスト組成物も散見されている。このような樹脂の製造は例えば、光酸発生基を有するモノマーと、酸不安定基を有するモノマーとを共重合させることで実施される。かかる光酸発生基を有するモノマーとして特許文献1には、以下の式(X)で表される化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−76084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、光酸発生基を側鎖として有する新規化合物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の発明を含む。
〔1〕式(I)で表される化合物。

[式(I)中、
Xは、水素原子又はメチル基を表す。
nは0又は1を表す。
1及びU2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は−NR−を表す。
Lは炭素数1〜20の二価の炭化水素基を表し、該炭化水素基中のU1及びU2に隣接しないメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、−NR−又はカルボニル基に置き代わっていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
1及びY2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。
は、有機対イオンを表す。]
〔2〕前記式(I)のY及びYがともに、フッ素原子である前記〔1〕記載の化合物。
〔3〕前記式(I)のXが、水素原子である前記〔1〕又は〔2〕記載の化合物。
〔4〕前記式(I)のnが1である前記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の化合物。
〔5〕前記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の化合物の製造方法であって、
式(II)

[式(II)中、
Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。Xは前記と同じ意味である。]
で表される化合物と、式(III)

[式(III)中、
n、U1、U2、L、Y1、Y2及びAは、前記と同じ意味である。]
で表される化合物とを反応させる工程を有する製造方法。
〔6〕前記式(II)のZが塩素原子である前記〔5〕記載の製造方法。
〔7〕式(III)で表される化合物。

[式(III)中、
nは0又は1を表す。
1及びU2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は−NR−を表す。
Lは炭素数1〜20の二価の炭化水素基を表し、該炭化水素基中のU1及びU2に隣接しないメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、−NR−又はカルボニル基に置き代わっていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
1及びY2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。
は、有機対イオンを表す。]
〔8〕前記式(III)のY及びYがともに、フッ素原子である前記〔7〕記載の化合物。
〔9〕前記式(III)のnが1である前記〔7〕又は〔8〕記載の化合物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、分子内に光酸発生基を有する新規化合物及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<式(I)で表される化合物>
本発明は、式(I)で表される化合物(以下、場合により「光酸発生モノマー(I)」という。)を提供する。繰り返しになるが、式(I)を以下に示す。

[式(I)中、
Xは、水素原子又はメチル基を表す。
nは0又は1を表す。
1及びU2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は−NR−を表す。
Lは炭素数1〜20の二価の炭化水素基を表し、該炭化水素基中のU1及びU2に隣接しないメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、−NR−又はカルボニル基に置き代わっていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
1及びY2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。
は、有機対イオンを表す。]
【0009】
光酸発生モノマー(I)について説明するに当たり、前記式(I)のX、U1、U2、L、Y1、Y2及びAの各々について具体例を示す。
【0010】
Xは水素原子又はメチル基を表すが、後述する光酸発生モノマー(I)の製造方法において、入手し易い原料から容易に該光酸発生モノマー(I)を製造できる点を考慮すると、Xは水素原子であると好ましい。
【0011】
及びYは、フッ素原子又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。ここで、ペルフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基及びペルフルオロブチル基が挙げられる。該ペルフルオロアルキル基はたとえば、ペルフルオロ−iso−プロピル基、ペルフルオロ−sec−ブチル基及びペルフルオロ−tert−ブチル基などのような分岐鎖であってもよい。その中でもフッ素原子、トリフルオロメチル基及びペンタフルオロエチル基が好ましく、フッ素原子がより好ましい。すなわち、Y及びYがともにフッ素原子であると好ましい。
【0012】
及びUはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は−NR−(Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である)を表す。ここで、−NR−とは、イミノ基又はアルキルイミノ基であり、該アルキルイミノ基としては、メチルイミノ基、エチルイミノ基、プロピルイミノ基及びブチルイミノ基である。該アルキルイミノ基に含まれるアルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよく、分岐鎖のアルキル基を含むアルキルイミノ基としては、イソプロピルイミノ基、sec−ブチルイミノ基及びtert−ブチルイミノ基などが挙げられる。以上、U及びUの具体例を示したが、これらの中でもU及びUはそれぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子であると好ましい。
【0013】
Lは炭素数1〜20の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であっても、芳香族炭化水素基であっても、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基の組み合わせであってもよい。なお、該脂肪族炭化水素基は鎖状であっても、環状であっても、鎖状の脂肪族炭化水素基(以下、場合により「鎖状脂肪族炭化水素基」という。)及び環状の脂肪族炭化水素基(以下、場合により「脂環式炭化水素基」という。)の組み合わせであってもよい。なお、Lの炭化水素基がメチレン基を含む炭化水素基である場合、当該メチレン基のうち、U又はUに隣接していないメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、−NR−又はカルボニル基に置き換わってもよい。
【0014】
鎖状脂肪族炭化水素基としては例えば、以下に例示する基が挙げられる。該鎖状脂肪族炭化水素基は、基中に不飽和結合を有しない飽和のものが好ましい。なお、これらの炭化水素基の具体例において、その両端の線は結合手を表すものであり、後述する具体例も同様である。
【0015】
【0016】
【0017】
脂環式炭化水素基としては例えば、以下に例示する基が挙げられる。該脂環式炭化水素基も、飽和のものが好ましい。
【0018】
鎖状脂肪族炭化水素基及び脂環式炭化水素基の組み合わせである脂肪族炭化水素基としては、以下に示すものが挙げられる。
【0019】
【0020】
芳香族炭化水素基としては、以下に示すものが挙げられる。

【0021】
【0022】
芳香族炭化水素基及び脂肪族炭化水素基の組み合わせである炭化水素基としては、以下に示すものが挙げられる。
【0023】
【0024】
以上、光酸発生モノマー(I)を構成する、X、U、U、Y、Y及びLについて説明したが、以下、該光酸発生モノマー(I)から有機対イオン(A)を取り除いたアニオン部の具体例を、X、U、U、Y、Y及びLの組み合わせで示すと、以下の表1〜表7に示すものを挙げることができる。なお、表中の「番号」とは、光酸発生モノマー(I)の具体例の識別番号を示す。X、U、U、Y、Y及びLは、上述の例示における符号、又は、具体的な基又は原子で表す(例えば、「O」、「S」とはそれぞれ酸素原子、硫黄原子を表し、「CF」とはトリフルオロメチル基を表し、「NH」とはイミノ基を表す)。
【0025】
まず、nが0、すなわち、U及びLを有しない光酸発生モノマー(I)の具体例を、該光酸発生モノマー(I)中のX、U、Y及びYの組み合わせで示すと、表1のとおりである。
【0026】
【表1】
【0027】
nが1であり、Lが鎖状の脂肪族炭化水素基である場合の光酸発生モノマー(I)の具体例は、表2及び表3のとおりである。
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
nが1であり、Lは環状の脂肪族炭化水素基である場合の光酸発生モノマー(I)の具体例は、表4及び表5のとおりである。
【0031】
【表4】
【0032】
【表5】
【0033】
nが1であり、Lが芳香族炭化水素基又は芳香族炭化水素基と脂肪族炭化水素基との組み合わせである場合の光酸発生モノマー(I)の具体例は、表6及び表7のとおりである。
【0034】
【表6】
【0035】
【表7】
【0036】
光酸発生モノマー(I)において、

で表される基と、CH=C(X)−で表される基とは互いにパラ位で結合しているものが好ましく、すなわち光酸発生モノマー(I)は以下の式(I’)で表されるものが好ましい。
(式(I’)中、全ての符号は式(I)と同じ意味である。)
【0037】
続いて、化合物(I)を構成する有機対イオン(A)について説明する。
該有機対イオンは、オニウムカチオンが好ましく、該オニウムカチオンとしては例えば、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ベンゾチアゾリウムカチオン及びホスホニウムカチオンなどが挙げられる。これらの中でも、スルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオンがより好ましく、アリールスルホニウムカチオンがさらに好ましい。
【0038】
特に好ましいオニウムカチオンを具体的に示すと、式(b2−1)〜式(b2−5)でそれぞれ表されるカチオンを挙げることができる。以下、式(b2−1)〜式(b2−5)でそれぞれ表されるカチオンの各々を、その式番号に応じて、「カチオン(b2−1)」〜「カチオン(b2−5)」などという。
【0039】
【0040】
【0041】
これらの式(b2−1)〜式(b2−5)において、
b4〜Rb6は、それぞれ独立に、炭素数1〜30の鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18のエーテル結合又はチオエーテル結合を含有してもよい芳香族炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基は飽和のものが好ましい。また、該脂肪族炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基で置換されていてもよく、該飽和環状炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基で置換されていてもよく、前記芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の飽和環状炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基で置換されていてもよい。また、前記芳香族炭化水素基は複数の芳香環がエーテル結合及び/又はチオエーテル結合で連結されたものであってもよい。
【0042】
b7及びRb8は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
m2及びn2は、それぞれ独立に0〜5の整数を表す。m2が2以上のとき、複数のRb7は互いに同一であっても異なってもよく、n2が2以上のとき、複数のRb8は互いに同一であっても異なってもよい。
【0043】
b9及びRb10は、それぞれ独立に、炭素数1〜18の鎖状脂肪族炭化水素基又は炭素数3〜18の飽和脂環式炭化水素基を表す。
b11は、水素原子、炭素数1〜18の鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の飽和脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。
b9〜Rb11の鎖状脂肪族炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜12であり、飽和脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数3〜18、より好ましくは炭素数4〜12である。
b12は、炭素数1〜12の鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の飽和脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。該芳香族炭化水素基は、炭素数1〜12の鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜18の飽和脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルキルカルボニルオキシ基で置換されていてもよい。
b9とRb10と、及びRb11とRb12とは、それぞれ独立に、互いに結合して3員環〜12員環(好ましくは3員環〜7員環)を形成していてもよく、これらの環を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
【0044】
b13〜Rb18は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12の鎖状脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
b11は、酸素原子又は硫黄原子を表す。
o2、p2、s2、及びt2は、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。
q2及びr2は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
u2は0又は1を表す。
o2が2以上である場合、複数のRb13は互いに同一であっても異なってもよく、p2が2以上である場合、複数のRb14は互いに同一であっても異なってもよく、s2が2以上である場合、複数のRb17は互いに同一であっても異なってもよく、u2が2以上である場合、複数のRb18は互いに同一であっても異なってもよく、q2が2以上である場合、複数のRb15は互いに同一であっても異なってもよく、r2が2以上である場合、複数のRb16は互いに同一であっても異なってもよい。
【0045】
b30〜Rb32は、それぞれ独立に、炭素数1〜30の鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の飽和脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。該芳香族炭化水素基は、炭素数1〜12の鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜18の飽和脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルキルカルボニルオキシ基で置換されていてもよい。Rb31とRb32は互いに結合して、環を形成してもよく、形成された環は酸素原子又は硫黄原子を含んでもよい。
【0046】
アルキルカルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、tert−ブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基及び2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0047】
鎖状脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、1−メチルエチル基(イソプロピル基)、n−ブチル基、1,1−ジメチルエチル基(tert−ブチル基)、2,2−ジメチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−プロピルブチル基、ペンチル基、1−メチルペンチル基、1,4−ジメチルヘキシル基、ヘプチル基、1−メチルヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などのアルキル基が挙げられる。中でも、好ましい鎖状脂肪族炭化水素基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基及び2−エチルヘキシル基である。
好ましい飽和脂環式炭化水素基は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基、2−アルキルアダマンタン−2−イル基、1−(アダマンタン−1−イル)アルカン−1−イル基、及びイソボルニル基である。
好ましい芳香族炭化水素基は、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−シクロへキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基、ビフェニリル基及びナフチル基である。
置換基が芳香族炭化水素基である鎖状脂肪族炭化水素基(アラルキル基)としては、ベンジル基などが挙げられる。
b9及びRb10が結合して形成する環としては、例えば、チオラン−1−イウム環(テトラヒドロチオフェニウム環)、チアン−1−イウム環及び1,4−オキサチアン−4−イウム環などが挙げられる。
b11及びRb12が結合して形成する環としては、例えば、オキソシクロヘプタン環、オキソシクロヘキサン環、オキソノルボルナン環及びオキソアダマンタン環などが挙げられる。
【0048】
カチオン(b2−1)〜カチオン(b2−5)の中でも、カチオン(b2−1)が好ましく、式(b2−1−1)で表されるカチオンがより好ましく、トリフェニルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=0)がさらに好ましい。
【0049】
式(b2−1−1)中、
b19〜Rb21は、それぞれ独立に、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜18の鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の飽和脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
鎖状脂肪族炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜12であり、飽和脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数4〜18である。
前記鎖状脂肪族炭化水素基は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。
前記飽和脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基で置換されていてもよい。
v2、w2及びx2は、それぞれ独立に0〜5の整数(好ましくは0又は1)を表す。v2が2以上である場合、複数のRb19は互いに同一であっても異なってもよく、w2が2以上である場合、複数のRb20は互いに同一であっても異なってもよく、x2が2以上である場合、複数のRb21は互いに同一であっても異なってもよい。
なかでも、Rb19〜Rb21は、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基であることが好ましく、ヒドロキシ基又は炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましい。
【0050】
カチオン(b2−1−1)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0051】
【0052】
カチオン(b2−2)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0053】
カチオン(b2−3)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0054】
【0055】
カチオン(b2−1)のエーテル結合又はチオエーテル結合を含む化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
カチオン(b2−5)の具体例として、以下のものが挙げられる。

【0060】
化合物(I)の具体例を、当該化合物(I)を構成するアニオンと、有機対イオンとの組み合わせで表記すると、以下の表8〜表13に示すようになる。
【0061】
【表8】
【0062】
【表9】
【0063】
【表10】
【0064】
【表11】
【0065】
【表12】
【0066】
【表13】
【0067】
前記した化合物(I)の具体例の中でも、アニオン部に含まれるGが、G−1、G−17、G−18、G−19、G−21、G−23、G−27、G−77、G−88、G−130、G−156、G−171又はG−175のいずれかであり、有機対イオンが、b2−1−1−1、b2−1−1−2、b2−1−1−6、b2−1−1−10、b2−1−13、b2−1−1−22、b2−2−1、b2−2−4、b2−3−8、b2−3−17、b2−4−6、b2−5−1又はb2−5−11のいずれかである化合物(I)がさらに好ましい。
【0068】
<化合物(I)の製造方法>
化合物(I)は例えば、
式(II)

(式(II)中、
X及びZは、前記と同じ意味である。)
で表される化合物(以下、場合により「化合物(II)」という。)と、式(III)

(式(III)中、
n、U1、U2、L、Y1、Y2及びAはいずれも、前記と同じ意味である。)
で表される化合物(以下、場合により「化合物(III)」という。)とを反応させる工程を有する製造方法により製造することができる。
【0069】
前記工程において、化合物(II)及び化合物(III)の使用割合(当量比)は、化合物(II):化合物(III)で表して、1:0.5〜2であると好ましい。
【0070】
前記工程において、化合物(II)と化合物(III)とは例えば、溶媒中、塩基存在下で反応させることが好ましい。この反応に用いる塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ジエチルアニリン及びN−メチルピロリジンなどの有機塩基;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムなどの無機塩基;並びに、これらの混合物などが挙げられる。なお、該塩基の使用量は、化合物(II)1当量に対して、例えば、1〜5当量の範囲であると好ましい。また、この反応に用いる溶媒としては例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、トルエン、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、モノクロロベンゼン、ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及び水、並びに、これらの混合物などが挙げられる。当該溶媒は、用いる化合物(II)や化合物(III)の溶解性などを考慮して、適宜、最適なものを選択できる。
【0071】
前記工程において、化合物(II)と化合物(III)とを反応させる温度(反応温度)は例えば、−10〜100℃の範囲から選択できる。反応時間は、反応温度にもよるが、1〜30時間から選択される。また、反応途中の反応液を適宜サンプリングして、高速液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーなどの分析手段により、反応液中の化合物(II)又は化合物(III)の消失の度合い、或いは化合物(I)の生成の度合いを求めることにより反応時間を定めることもできる。
【0072】
前記工程後の反応液から化合物(I)を取り出すのは、抽出、蒸留、再結晶、再沈殿及び各種クロマトグラフィーといった公知の精製手段、あるいはこれらの精製手段を組み合わせることにより実施できる。また、これらの精製手段或いはこれらを組み合わせる手段によれば、反応液から取り出した化合物(I)をさらに精製することもできる。
【0073】
<化合物(II)>
化合物(II)は、公知の方法により製造することもできるし、市場から容易に入手できる市販品を用いることもできる。例えば、化合物(II)はスチレンやα−メチルスチレンを公知の方法によりハロメチル化(例えば、クロロメチル化)すれば、容易に製造できる。このように、容易に製造できる点や、市販品を入手できる点を考慮すれば、化合物(II)中のZは、塩素原子であると好ましい。なお、すでに説明したとおり、好ましい化合物(I)である、式(I’)で表される化合物を製造する場合は、CH=C(X)−で表される基と、−CH−Zで表される基とが互いにパラ位で結合している化合物(II)を、化合物(I)の製造原料として用いればよい。
【0074】
<化合物(III)>
化合物(III)は、化合物(I)の製造原料として有用な新規化合物であり、本発明は、化合物(III)に係る発明を含む。化合物(III)の具体例は、上述の基Gの具体例において、結合手(メチレン基との結合手)を水素原子に置き換えたものが該当する。
【0075】
<化合物(III)の製造方法>
化合物(III)は例えば、式(IV)で表される化合物(以下、場合により「化合物(IV)という。)と、式(V)で表される化合物(以下、場合により「化合物(V)」という。)とを縮合(エステル化反応)させることで製造することができる。この反応を、反応式の形式で示すと以下のとおりである。
(式中の全ての符号は、前記と同じ意味である。)
【0076】
この反応において、化合物(IV)及び化合物(V)の使用割合(当量比)は、化合物(IV):化合物(V)で表して、1:0.5〜2であると好ましい。
【0077】
化合物(IV)と化合物(V)とは例えば、溶媒中で反応させることが好ましい。ここで用いる溶媒は例えば、ジクロロエタン、トルエン、エチルベンゼン、モノクロロベンゼン、アセトニトリル及びN,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性溶媒であり、当該非プロトン性溶媒中で、化合物(IV)と化合物(V)とを、20℃〜200℃程度の温度条件下、好ましくは、50℃〜150℃程度の温度条件下で反応させる。当該溶媒は、用いる化合物(IV)や化合物(V)の溶解性などを考慮して、適宜、最適なものを選択できる。
このエステル化反応においては、酸触媒として有機酸(p−トルエンスルホン酸など)及び/又は無機酸(硫酸など)を添加してもよい。または、脱水剤として1,1’−カルボニルジイミダゾール及びN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドなどを添加してもよい。
酸触媒を用いたエステル化反応は、ディーンスターク装置を用いるなどして、脱水しながら実施すると、反応時間が短縮化される傾向があることから好ましい。
エステル化反応における酸触媒の量は、触媒量でも溶媒に相当するほどの大量でもよいが、通常は、化合物(IV)1モルに対して、0.001モル程度〜5モル程度である。エステル化反応における脱水剤の量は、化合物(IV)1モルに対して、0.2〜5モル程度、好ましくは0.5〜3モル程度である。
【0078】
また、化合物(IV)と化合物(V)とを反応させる反応時間は、反応温度にもよるが、1〜30時間から選択される。この反応においても、反応途中の反応液を適宜サンプリングすることで反応追跡を行い、適切な反応時間を定めることもできる。
【0079】
以上、化合物(I)をその製造方法とともに説明したが、かかる化合物(I)はレジスト組成物用樹脂の製造原料として、極めて有用であり、かかる化合物(I)を提供できる本発明は、産業上の価値が極めて高いものである。
【実施例】
【0080】
以下、実施例を示して本発明を説明する。
【0081】
実施例1[化合物(I−1)の合成]
化合物(I−1)の合成スキームを以下に示す。

化合物(a)(13.4g;8.8ミリモル)及び化合物(b)(50.0g;114.0ミリモル)を、脱水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF;300g)に溶解して溶液とした。この溶液に、炭酸カリウム(24.3g;175.8ミリモル)を加えて、50℃〜54℃で24時間加熱攪拌した。冷却後、反応溶液を5%シュウ酸水で希釈して、クロロホルムで抽出した。有機層(クロロホルム層)を純水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ過で除去し、有機層を減圧下に濃縮して、油状物質(38.4g)を得た。得られた油状物質をクロロホルム(80g)に溶解した。クロロホルム層をメチル−t−ブチルエーテル(200g)で、5回分液洗浄した。洗浄後のクロロホルム層を濃縮して、化合物(I−1)を30.0g得た。(収率61.6%)

1H−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)7.72〜7.62(m,15H);7.34〜7.28(m,4H);6.63(q,1H);5.67(d,1H);5.26(s,2H) ;5.21(d,1H)

13C−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質クロロホルム):δ(ppm)162.55;137.37;136.15;134.41;134.22;131.45;131.09;128.04;126.14;124.34;114.19;113.43;(t,J=285Hz);67.69

19F−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質フルオロベンゼン):δ(ppm)−105.79

LC−MS : 263.0([M];C1815S=263.09)
291.0([M];C11S=291.01)

なお、NMR及びLC−MSの分析条件は次のとおりであり、その他の例における分析条件も同様である。

NMR:JEOL ECA−500を用いて測定を行った。

LC−MS:
LC装置:Agilient 1100
カラム:Kinetex C18(3.0mmφ×50mm)
移動相溶媒:A液:0.05%トリフルオロ酢酸水 、
B液:アセトニトリル(0.05%トリフルオロ酢酸添加)
グラジエント:初期 10%B液、70%A液
10分後 100%B液
15分後 100%B液 (分析終了)
流速:0.5mL/min
注入量:0.5μL
検出器:220、254、280nm UV検出
MS装置:HP LC/MSD
【0082】
実施例2[化合物(I−2)の合成]
(1)化合物(e)の合成
化合物(e)の合成スキームを以下に示す。


化合物(c)(3.0g;6.2ミリモル;特開2011−121937号公報記載の化合物)及び、1,1‘−カルボニルジイミダゾール(CDI:1.0g;6.2ミリモル)を脱水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF:20g)に溶解した後、28℃で40分間攪拌した。得られた溶液に、化合物(d)(0.8g;6.3ミリモル)の脱水DMF(4g)溶液を、28℃〜31℃で注加した。反応溶液を同温度で一晩攪拌した。反応溶液を2%シュウ酸溶液で希釈して、クロロホルムで抽出した。有機層(クロロホルム層)を純水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過により除去した後、濃縮して、化合物(e)3.7gを得た。当該化合物(e)はほぼ定量的に得られた。

1H−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)7.47(m,6H);7.41(m,6H);7.02(m,2H);6.81(m,2H);2.39(s,9H)

19F−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質フルオロベンゼン):δ(ppm)−103.46

LC−MS : 305.4([M];C2121S=305.14)
283.2([M];C=282.96)
【0083】
(2)化合物(I−2)の合成
化合物(I−2)の合成スキームを以下に示す。

化合物(e)(2.1g;3.6ミリモル)及び、トリエチルアミン(0.5g;4.9ミリモル)を脱水テトラヒドロフラン(THF;10g)に溶解して溶液とした。この溶液に、化合物(a)(0.6g;3.9ミリモル)の脱水THF(5g)溶液を、25℃で注加した。反応溶液を同温度で一晩攪拌した。反応溶液を純水で希釈して、クロロホルムで抽出した。有機層(クロロホルム層)を純水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ過により除去した後、濃縮して、油状物質(2.5g)を得た。得られた油状物質をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール展開)で精製して、化合物(I−2)を2.2g(収率87.5%)得た。

1H−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)7.72〜7.62(m,15H);7.34〜7.28(m,4H);6.63(q,1H);5.67(d,1H);5.26(s,2H) ;5.21(d,1H)
【0084】
実施例3[化合物(I−3)の合成]
(1)化合物(g)の合成
化合物(g)の合成スキームを以下に示す。

化合物(d)(0.5g;4.0ミリモル)及び、トリエチルアミン(0.5g;4.9ミリモル)をクロロホルム(5g)に溶解した。この溶液に、化合物(f)(2.0g;3.2ミリモル;特開2010−100830号明細書記載の化合物)のクロロホルム(20g)溶液を、27℃〜28℃で0.5時間かけて滴下した。反応溶液を同温度で6時間攪拌した。反応溶液を1%シュウ酸溶液で希釈して、クロロホルムで抽出した。有機層を純水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ過により除去し、濃縮して、化合物(g)2.1gを得た。当該化合物(g)はほぼ定量的に得られた。

LC−MS : 207.4([M];C1215OS=207.08)
467.2([M];C2029=467.14)
【0085】
(2)化合物(I−3)の合成
化合物(I−3)の合成スキームを以下に示す。

化合物(g)(2.1g;3.1ミリモル)及び、トリエチルアミン(0.4g;4.0ミリモル)を脱水テトラヒドロフラン(THF;20g)に溶解して溶液とした。この溶液に、化合物(a)(0.5g;3.3ミリモル)の脱水THF(5g)溶液を、25℃で注加した。反応溶液を同温度で一晩攪拌した。反応溶液を純水で希釈して、クロロホルムで抽出した。有機層(クロロホルム層)を純水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ過により除去し、濃縮して、油状物質(2.5g)を得た。得られた油状物質をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール展開)で精製して、化合物(I−3)1.9g(収率73.7%)を得た。

1H−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)8.01〜8.00(m,2H);7.62〜7.59(m,1H);7.47〜7.44(m,2H);7.40〜7.39(m,4H);7.35〜7.27(m,2H);6.90〜6.88(m,2H);6.70(q,1H);5.74(d,1H);5.35(s,2H);5.23(d,1H);5.01(s,2H) ;4.12(t,2H); 3.75〜3.59(m,4H);2.78(t,2H);2.49〜2.26(m,4H);1.88〜1.24(m,20H)

LC−MS : 207.4([M];C1215OS=207.08)
583.2([M];C2937=583.20)
【0086】
実施例4[化合物(I−4)の合成]
(1)化合物(i)の合成
化合物(i)の合成スキームを以下に示す。

化合物(d)(7.6g;60.2ミリモル)及び、化合物(h)(20.0g;60.0ミリモル:特開2010−100830号公報記載の化合物)を無水アセトニトリル(100g)に溶解して溶液とした。この溶液に、炭酸カリウム(10.0g;72.4ミリモル)を添加して、一晩室温(27℃〜29℃)で攪拌した。反応溶液を5%希塩酸で酸性(pH2)とした後、濃縮して、化合物(i)40gを得た。

1H−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)7.37〜7.28(m,2H);6.79〜6.74(m,2H);3.69(t,2H); 2.84(t,2H);1.75〜1.69(m,4H)
【0087】
(2)化合物(k)の合成
化合物(k)の合成スキームを以下に示す。

化合物(i)の3%水溶液(530g:純分15.9g;42.0ミリモル)及び、化合物(j)の13.4%水溶液(95g:純分12.7g;42.6ミリモル)を混合して、室温(27℃程度)で3日間攪拌した。反応溶液をクロロホルムで抽出した。有機層(クロロホルム層)を純水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ過により除去し、濃縮して、化合物(k)19.0g(収率:73.1%)を得た。

1H−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)9.55(s,1H:水酸基);7.89〜7.78(m,15H);7.24〜7.22(m,2H);6.77〜6.74(m,2H);4.24(t,2H); 2.80(t,2H);1.75〜1.69(m,2H);1.60〜1.54(m,2H)

13C−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質クロロホルム):δ(ppm)162.08(t,J=30Hz);156.65;134.33;132.79;131.34;131.21;125.06;123.55;116.08;113.13(t,J=284Hz);65.87;34.31;26.71;24.84

19F−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質フルオロベンゼン):δ(ppm)−105.21

LC−MS : 263.0([M];C1815S=263.09)
355.0([M];C1213=355.01)
【0088】
(3)化合物(I−4)の合成
化合物(I−4)の合成スキームを以下に示す。


化合物(k)(17.5g;28.3ミリモル)及び、化合物(a)(4.3g;28.2ミリモル)を、無水アセトニトリル(50g)に溶解して溶液にした。この溶液に、炭酸カリウム(5.9g;42.7ミリモル)及び微量のメトキノンを添加して、一晩室温(27℃程度)で攪拌した。反応溶液を2%シュウ酸水200gで希釈して、クロロホルムで抽出した。有機層(クロロホルム層)を純水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ過により除去し、濃縮して、油状物質(17.4g)を得た。得られた油状物質をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール展開)で精製して、化合物(I−4)を14.0g(収率:67.4%)得た。

1H−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)7.72〜7.64(m,15H);7.34〜7.37(m,4H);7.29〜7.27(m,2H);6.89〜6.87(m,2H);6.70(q,1H);5.74(d,1H);5.23(d,1H);5.01(s,2H) ;4.24(t,2H); 2.78(t,2H);1.84〜1.78(m,2H);1.68〜1.62(m,2H)

13C−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質クロロホルム):δ(ppm)162.53(t,J=29Hz);157.78;137.15;136.21;136.15;134.42;132.79;131.44;131.02;127.54;126.54;126.22;124.28;115.40;113.97;113.30(t,J=285Hz);69.66;66.11;34.95;26.95;25.08

19F−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質フルオロベンゼン):δ(ppm)−105.88

LC−MS : 263.0([M];C1815S=263.09)
471.2([M];C2121=471.08)
【0089】
実施例5[化合物(I−200)の合成]
(1)化合物(o)の合成
化合物(o)の合成スキームを以下に示す。

化合物(l)(43.6g;78.1ミリモル)及び、ジエチル硫酸(化合物(m):12.0g;77.8ミリモル)を、クロロホルム(220g)中で、内温(26℃〜31℃)で3時間攪拌した。得られた反応溶液に、化合物(n)(26g;78.1ミリモル)のクロロホルム(130g)溶液を加えて、さらに一晩室温(26℃〜29℃)で攪拌した。反応溶液に純水(200g)を注加して、さらに1時間攪拌した。反応溶液をクロロホルムで抽出した。有機層(クロロホルム層)を純水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ過により除去し、濃縮して、析出した結晶をろ過した。少量のt−ブチルメチルエーテルで洗浄した後、乾燥して、化合物(o)を47.3g(収率:96.6%)得た。

1H−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)7.84〜7.77(m,12H);4.25(t,2H); 3.55(t,2H);1.93〜1.87(m,2H);1.78〜1.72(m,2H);1.33(s,27H)

13C−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質クロロホルム):δ(ppm)162.04(t,J=30Hz);130.87;128.32;122.10;113.09(t,J=285Hz);65.38;35.07;34.46;30.57;28.48;26.53

19F−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質フルオロベンゼン):δ(ppm)−105.37
【0090】
(2)化合物(p)の合成
化合物(p)の合成スキームを以下に示す。


化合物(o)(34.4g;54.8ミリモル)及び、化合物(d)(6.9g;54.8ミリモル)を、無水アセトニトリル(100g)に溶解して溶液とした。この溶液に炭酸カリウム(10.1g;73.1ミリモル)及び微量のメトキノンを添加して、50℃で6時間加熱攪拌した。さらに一晩室温(〜20℃)で攪拌した。反応溶液を5%塩酸(68g)で酸性にして、クロロホルムで抽出した。有機層(クロロホルム層)を純水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ過により除去し、濃縮して、化合物(p)を34.4g(収率:93.3%)得た。

1H−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)7.95(s、1H:水酸基);7.66〜7.59(m,15H);7.05〜7.02(m,2H);6.81〜6.78(m,2H);4.17(t,2H); 2.61(t,2H);1.77〜1.67(m,2H);1.57〜1.52(m,2H);1.30(s,27H)

LC−MS : 431.4([M];C3039S=431.28)
355.2([M];C1213=355.01)
【0091】
(3)化合物(I−200)の合成
化合物(I−200)の合成スキームを以下に示す。

化合物(p)(12.1g;18.0ミリモル)及び、化合物(a)(4.2g;27.5ミリモル)を、無水アセトニトリル(60g)に溶解して溶液にした。この溶液に炭酸カリウム(5.0g;36.2ミリモル)及び微量のメトキノンを添加して、60℃で3時間加熱攪拌した。さらに一晩室温(〜23℃)で攪拌した。反応溶液を2%塩酸(95g)で希釈して、クロロホルムで抽出した。有機層(クロロホルム層)を純水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ過により除去し、濃縮して、油状物質(29.1g)を得た。得られた油状物質をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール展開)で精製して、化合物(I−200)を13.1g(収率:92.3%)得た。

1H−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)7.82〜7.75(m,12H);7.50〜7.41(m,4H);7.33〜7.30(m,2H);6.99〜6.97(m,2H);6.74(q,1H);5.84(d,1H);5.26(d,1H);5.08(s,2H) ;4.21(t,2H); 2.86(t,2H);1.76〜1.70(m,2H);1.61〜1.56(m,2H);1.32(s,27H)

13C−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質クロロホルム):δ(ppm)162.07(t,J=30Hz);157.50;157.22;136.64;136.53;136.21;131.86;130.86;128.31;127.88;126.25;126.14;122.08;115.58;114.35;113.11(t,J=285Hz);69.00;65.76;35.05;33.63;30.56;26.72;24.78

19F−NMR(測定溶媒 CDCl;内部標準物質フルオロベンゼン):δ(ppm)−105.21

LC−MS : 431.4([M];C3039S=431.28)
471.0([M];C2121=471.08)
【0092】
参考例1(樹脂X1の合成例)
化合物(I−1)をモノマーAとして用い、樹脂X1を合成した。


モノマーA(6.62g)、モノマーB(8.00g)、モノマーC(9.03g)及びモノマーD(10.45g)を、10:30:30:30のモル比で反応器に仕込み、全モノマー量の1.5重量倍のジオキサンを加えて溶液とした。そこに開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(0.21g)とアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(0.96g)を全モノマー量に対してそれぞれ1mol%、3mol%添加し、73℃で約5時間加熱した。その後、反応液を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させた。ろ過後、得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて、メタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させるという操作を2回行って精製し、重量平均分子量Mwが6.5×10の樹脂(22.03g:収率65.9%)を得た。この樹脂は、下記の構造単位を有するものであり、これを樹脂X1とする。
【0093】
参考例2(レジスト組成物の調製)
表Aに示す配合比で、樹脂X1、光酸発生剤P1、クエンチャーQ1及び溶剤S1を混合し、さらに、孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターでろ過して、レジスト組成物を調製した。
【0094】
<樹脂>
樹脂X1
<光酸発生剤>
光酸発生剤P1:
トリフェニルスルホニウム 4−オキソ−1−アダマンチルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホナートを、特開2007−224008号に記載の方法に従って合成した。
<クエンチャー>
クエンチャーQ1:2,6−ジイソプロピルアニリン
<溶剤>
溶媒S1:
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 450部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 150部
γ−ブチロラクトン 5部
【0095】
[表A]
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組成物No. 樹脂 光酸発生剤 クエンチャー 溶剤
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組成物1 X1=10部 なし なし 溶媒S1
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【0096】
参考例3(レジスト組成物の評価)
シリコンウェハーを、ダイレクトホットプレート上にて、ヘキサメチルジシラザンを用いて90℃で60秒処理した上で、参考例2で得られたレジスト組成物を乾燥後の膜厚が60nmとなるようにスピンコートした。レジスト液塗布後は、ダイレクトホットプレート上にて、表13の「PB」欄に示す温度で60秒間プリベークした。レジスト膜を形成したウェハーに、電子線描画機〔(株)日立製作所製の「HL−800D 50KeV〕を用い、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを露光した。
露光後は、ホットプレート上にて表1の「PEB」欄に示す温度で60秒間ポストエキスポジャーベークを行い、さらに2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。
シリコンウェハー上のレジストパターンを走査型電子顕微鏡で観察し、以下の評価を行い、その結果を表Bに示した。
【0097】
実効感度:
0.2μmのラインアンドスペースパターンが1:1となる露光量で表示した。
解像度:
実効感度の露光量で分離するラインアンドスペースパターンの最小寸法で表示した。
ラインエッジラフネス評価(LER):
リソグラフィプロセス後のレジストパターンの壁面を走査型電子顕微鏡で観察し、レジストパターンの側壁の凹凸の触れ幅が、
15nm以下であるものを○
15nmを超え、20nm以下であるものを△、
20nmを超えるものを×とした。
【0098】
[表B]
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例 組成物No. PB PEB 実効感度 解像度 LER
(μC/cm2) (nm)
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実施例1 組成物1 110℃ 110℃ 25 80 ○
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【0099】
これらの結果から、本発明の化合物[化合物(I)]を用いて得られる樹脂を含むレジスト組成物により形成されたレジストパターンは、LERに優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の化合物(I)は、半導体微細加工のレジスト組成物に含まれる樹脂製造用原料として利用できる。