特許第5949091号(P5949091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5949091発光素子、並びに、銀錯体および該銀錯体を含有する素子用インク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5949091
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】発光素子、並びに、銀錯体および該銀錯体を含有する素子用インク
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20160623BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20160623BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20160623BHJP
   C07F 19/00 20060101ALI20160623BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20160623BHJP
   C07F 1/10 20060101ALN20160623BHJP
   C07F 5/02 20060101ALN20160623BHJP
   C07F 9/50 20060101ALN20160623BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   C09D11/00
   C09K11/06 660
   C07F19/00CSP
   H05B33/10
   !C07F1/10
   !C07F5/02 D
   !C07F9/50
【請求項の数】5
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2012-99602(P2012-99602)
(22)【出願日】2012年4月25日
(65)【公開番号】特開2013-229425(P2013-229425A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】小林 憲史
(72)【発明者】
【氏名】東村 秀之
(72)【発明者】
【氏名】開▲高▼ 敬
【審査官】 岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−155825(JP,A)
【文献】 特表2007−504272(JP,A)
【文献】 特開2010−093181(JP,A)
【文献】 特開2012−012381(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/118606(WO,A1)
【文献】 特開2012−012584(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/152358(WO,A1)
【文献】 特開2006−278782(JP,A)
【文献】 Chemistry of the Group IB elements. XII. Some poly(pyrazolyl)borate complexes of silver,Australian Journal of Chemistry,1979年,Vol.32, No.7,p.1613-19
【文献】 Solution and solid-state structural properties of silver(I) poly(pyrazolyl)borate compounds with bidentate diphosphines,Inorganica Chimica Acta,2001年,Vol.315, No.2,p.153-162
【文献】 Synthesis, characterization and X-ray structural studies of novel dinuclear silver(I) complexes of poly(azolyl)borate ligands,Inorganica Chimica Acta,2000年,Vol.308, No.1-2,p.65-72
【文献】 Silver(I) and gold(I) complexes of hydrotris(3,5-dimethylpyrazol-1-yl)borate: synthesis, spectroscopic and structural characterization, and reactivity toward C-, N- and S-donor ligands,Polyhedron,1998年,Vol.17, No.18,p.3201-3210
【文献】 Synthesis and NMR structural studies of allyl(polypyrazolylborate)palladium and platinum complexes,Inorganica Chimica Acta,1992年,Vol.198-200,p.275-282
【文献】 Photoluminescence Properties, Moleculea Structures and Theorial Study of Heteroleptic Silver(1)Complexes Containing Diphoisphine Ligands,Inorganic Chemistry,2012年 4月30日,Vol.51, No.10,p.5805-5813
【文献】 Photochemistry and photophysics of the tetrahedral siliver(1)complex with diphosphine ligands: [Ag(dppb)2]PF6,Chemical Communication,2008年,No.47,p.6384-6386
【文献】 INORGANIC CHEMISTRY COMMUNICATIONS,2008年,Vol.11, No.4,p.415-417,Fig.3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
C07F 19/00
C09D 11/00
C09K 11/06
H05B 33/10
C07F 1/10
C07F 5/02
C07F 9/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式()で表される銀錯体を含有する発光素子。
【化1】
(3)
(式(3)中、
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基である。複数存在するRおよびRはそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
は、水素原子または炭素原子数1〜12のアリール基である。複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。
は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、sec−ブトキシ基またはtert−ブトキシ基である。
は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基またはドデシル基である。
は、水素原子、メチル基、エチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基またはメトキシ基である。
は、水素原子である。
は、水素原子、メチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基である。
複数存在するR、R、R、RおよびRはそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記R、R、R、RよびRが、水素原子である、請求項に記載の発光素子。
【請求項3】
前記Rが、炭素原子数1〜12のアリール基である、請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記式()で表される銀錯体のSエネルギーとTエネルギーの差が0.50eV以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項5】
下記式()で表される銀錯体を含有する素子用インク。
【化2】
(3)
(式(3)中、
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基である。複数存在するRおよびRはそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
は、水素原子または炭素原子数1〜12のアリール基である。複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。
は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、sec−ブトキシ基またはtert−ブトキシ基である。
は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基またはドデシル基である。
は、水素原子、メチル基、エチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基またはメトキシ基である。
は、水素原子である。
は、水素原子、メチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基である。
複数存在するR、R、R、RおよびRはそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、並びに、銀錯体および該銀錯体を含有する素子用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子(以下、「発光素子」と言う。)において、電子とホールが再結合することで、三重項励起子と一重項励起子が、理論上3:1の比で生成される。電子とホールの再結合により発生した三重項励起子から発光することができる材料として、イリジウム錯体を代表とする白金族金属錯体が広く知られている。近年、三重項励起子からの発光を示すイリジウムよりも安価な金属を用いた錯体として、銀錯体が知られており、発光素子のの発光材料として期待されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Chem.Commun.6384−6386(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の銀錯体を用いて製造される発光素子の発光効率は、十分ではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、銀錯体を用いて製造される発光効率に優れる発光素子を提供することを目的とする。本発明はまた、発光効率に優れる発光素子の製造に有用な銀錯体および該銀錯体を含有する素子用インクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の発光素子、並びに、銀錯体および該銀錯体を含有する素子用インクを提供する。
【0007】
[1] 下記式(1)で表される銀錯体を含有する発光素子。
【化1】
(1)
(式(1)中、
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1〜18の1価の有機基である。複数存在するRおよびRはそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
は、水素原子または炭素原子数1〜36の1価の有機基である。複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。
は、多座配位子である。Lが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
1はアニオンである。X1が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
aおよびbは、それぞれ独立に、0.5〜1.5の数である。
cは0〜0.5の数である。)
[2] 前記Lが、リン原子を2個含有する多座配位子である、[1]に記載の発光素子。
[3] 前記Lが、リン原子を2個含有する多座配位子であり、かつ、該リン原子が3個の芳香族基とぞれぞれ結合している、[2]に記載の発光素子。
[4] 前記式(1)で表される銀錯体が、下記式(2)で表される銀錯体である、[1]〜[3]のいずれか一つに記載の発光素子。
【化2】
(2)
(式(2)中、
、R、R、X1、a、bおよびcは、前記と同じ意味を表す。
、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1〜18の1価有機基である。複数存在するR、R、R、RおよびRはそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。)
[5] 前記式(2)で表される銀錯体が、下記式(3)で表される銀錯体である、[4]に記載の発光素子。
【化3】
(3)
(式(3)中、
、R、R、R、R、R、RおよびRは、前記と同じ意味を表す。)
[6] 前記Rが、ハロゲン原子または炭素原子数1〜18の1価の有機基である、[4]または[5]に記載の発光素子。
[7] 前記R、R、R、R、RおよびRが、水素原子である、[4]〜[6]のいずれか一つに記載の発光素子。
[8] 前記Rが、炭素原子数1〜12のアリール基である、[1]〜[7]のいずれか一つに記載の発光素子。
[9] 前記Lに分布する最高占有軌道の割合が10%以上である、[1]〜[8]のいずれか一つに記載の発光素子。
[10] 前記式(1)で表される銀錯体のSエネルギーとTエネルギーの差が0.50eV以下である、[1]〜[9]のいずれか一つに記載の発光素子。
[11] 下記式(2)で表される銀錯体。
【化4】
(2)
(式(2)中、
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1〜18の1価の有機基である。複数存在するRおよびRはそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
は、水素原子または炭素原子数1〜36の1価の有機基である。複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。
、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1〜18の1価有機基である。複数存在するR、R、R、RおよびRはそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
1はアニオンである。X1が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
aおよびbは、それぞれ独立に、0.5〜1.5の数である。
cは0〜0.5の数である。)
[12] 下記式(1)で表される銀錯体を含有する素子用インク。
【化5】
(1)
(式(1)中、
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1〜18の1価の有機基である。複数存在するRおよびRはそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
は、水素原子または炭素原子数1〜36の1価の有機基である。複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。
は、多座配位子である。Lが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
1はアニオンである。X1が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
aおよびbは、それぞれ独立に、0.5〜1.5の数である。
cは0〜0.5の数である。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、銀錯体を用いて製造される発光効率に優れる発光素子を提供することができる。本発明はまた、発光効率に優れる発光素子の製造に有用な銀錯体および該銀錯体を含有する素子用インクを提供することができる。また、本発明の好ましい実施形態によれば、芳香族系溶媒への溶解性に優れる銀錯体を提供することができる。更に、本発明の好ましい実施形態によれば、発光量子効率に優れる銀錯体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を説明する。
【0010】
本明細書において、Meはメチル基、Etはエチル基、n−Prはノルマルプロピル基、i−Prはイソプロピル基、n−Buはノルマルブチル基、i−Buおよびiso−ブチル基はイソブチル基、s−Buおよびsec−ブチル基はセカンダリブチル基、t−Buおよびtert−ブチル基はターシャリブチル基、n−Hexはノルマルヘキシル基、n−Octはノルマルオクチル基、Phはフェニル基を、それぞれ表す。
【0011】
本明細書において、ヒドロカルビル基が、直鎖状、分岐鎖状または環状の区別なく表記されている場合、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれであってもよいが、特に説明されていない場合は、直鎖状または分岐鎖状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
【0012】
本明細書における炭素原子数C〜Cの1価の有機基は、置換基を有していてもよい。なお、1価の有機基の炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。本明細書における炭素原子数C〜Cの1価の有機基は、特に説明されていない場合は、置換基を有していないことが好ましい。
【0013】
本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、その直後に記載された基を構成する水素原子の一部または全部が置換基で置換されていてもよいことを意味する。該置換基は、特に説明されていない場合は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜30のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数1〜30のヒドロカルビルメルカプト基、炭素原子数1〜30のヒドロカルビルカルボニル基および炭素原子数12〜30のジアリールアミノ基が挙げられ、これらの中でも、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜18のヒドロカルビルオキシ基または炭素原子数1〜18のヒドロカルビルメルカプト基であることが好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基または炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基であることがより好ましく、ハロゲン原子または炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基であることが特に好ましく、炭素原子数1〜8のヒドロカルビル基であることがとりわけ好ましい。置換基が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0014】
本明細書において、電荷記号を省略して記載することがある。例えば、式(1)におけるAgは、中性のAgに限定されるものではない。
【0015】
本発明の発光素子は、下記式(1)で表される銀錯体を含有する。
【0016】
【化6】
(1)
(式(1)中、
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1〜18の1価の有機基である。複数存在するRおよびRはそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
は、水素原子または炭素原子数1〜36の1価の有機基である。複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。
は、多座配位子である。Lが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
1はアニオンである。X1が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
aおよびbは、それぞれ独立に、0.5〜1.5の数である。
cは0〜0.5の数である。)
【0017】
Agは銀であるが、1価のカチオン(即ち、Ag)であることが好ましい。
【0018】
におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子またはヨウ素原子であり、より好ましくはフッ素原子または塩素原子であり、更に好ましくはフッ素原子である。
【0019】
における炭素原子数1〜18の1価の有機基としては、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のヒドロカルビルチオ基、および、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18の置換シリル基が挙げられる。
これらの炭素原子数1〜18の1価の有機基の中でも、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビルチオ基または置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12の置換シリル基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基または置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基がより好ましく、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基が更に好ましい。
【0020】
における「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基」におけるヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、2,2−ジフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基および1−ピレニル基が挙げられる。
これらのヒドロカルビル基の中でも、好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、フェニル基、2−トリル基または4−トリル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基またはフェニル基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基またはtert−ブチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0021】
における「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のヒドロカルビルオキシ基」におけるヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロプロパノキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、ベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジロキシ基、2−フェネチルオキシ基、1−フェネチルオキシ基、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、および2−ナフチルオキシ基が挙げられる。
これらのヒドロカルビルオキシ基の中でも、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基または3,7−ジメチルオクチルオキシ基であり、より好ましくは、メトキシ基またはエトキシ基である。
【0022】
における「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のヒドロカルビルチオ基」におけるヒドロカルビルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、1−プロピルチオ基、2−プロピルチオ基、1−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、シクロプロピルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、1−アダマンチルチオ基、2−アダマンチルチオ基、ベンジルチオ基、α,α−ジメチルベンジルチオ基、2−フェネチルチオ基、1−フェネチルチオ基、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基および2−ナフチルチオ基が挙げられる。
これらのヒドロカルビルチオ基の中でも、好ましくは、メチルチオ基、エチルチオ基、1−プロピルチオ基、2−プロピルチオ基、1−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基または3,7−ジメチルオクチルチオ基であり、より好ましくは、メチルチオ基またはエチルチオ基である。
【0023】
における「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18の置換シリル基」における置換シリル基とは、シリル基における水素原子の1個、2個または3個が、アルキル基、アリール基およびアリールアルキル基からなる群から選ばれる1個、2個または3個の基で置換されたシリル基をいう。置換シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、ジメチル−イソプロピルシリル基、ジエチル−イソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、ドデシルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基およびジメチルモノフェニルシリル基が挙げられる。
これらの置換シリル基の中でも、好ましくは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基またはtert−ブチルジメチルシリル基であり、より好ましくはトリメチルシリル基である。
【0024】
における1価の有機基が有していてもよい置換基(以下、「Rにおける任意の置換基」という場合がある。)としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシ基、スルホ基、−OP(=O)(OH)で表される基、−OP(OH)で表される基、ニトロ基、炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜18のヒドロカルビルオキシ基および炭素原子数1〜18のヒドロカルビルチオ基が挙げられる。
これらの置換基の中でも、好ましくは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基または炭素原子数1〜18のヒドロカルビルオキシ基であり、より好ましくは、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基または炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基であり、更に好ましくは、フッ素原子、炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基または炭素原子数1〜6のヒドロカルビルオキシ基である。
【0025】
における任意の置換基における炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜18のヒドロカルビルオキシ基および炭素原子数が1〜18のヒドロカルビルチオ基の具体例および好ましい例は、Rにおける炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜18のヒドロカルビルオキシ基および炭素原子数が1〜18のヒドロカルビルチオ基の具体例および好ましい例と同じである。
【0026】
は、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1〜18の1価の有機基であるが、水素原子または炭素原子数1〜18の有機基であることが好ましい。
【0027】
2におけるハロゲン原子、炭素原子数1〜18の1価の有機基の具体例および好ましい例は、上記R1におけるハロゲン原子、炭素原子数1〜18の1価の有機基の具体例および好ましい例と同じである。
【0028】
における1価の有機基が有していてもよい置換基の具体例および好ましい例は、上記Rにおける1価の有機基が有していてもよい置換基の具体例および好ましい例と同じである。
【0029】
2は、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1〜18の1価の有機基であるが、水素原子または炭素原子数1〜18の1価の有機基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0030】
隣り合うRとRは互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよく、隣り合う2つのRは互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
【0031】
における炭素原子数1〜36の1価有機基としては、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜36のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜36の1価の複素環基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜36の飽和ヒドロカルビル基、および、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜36のヒドロカルビルオキシ基が挙げられる。
これらの炭素原子数1〜36の1価有機基の中でも、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18の1価の複素環基または置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18の飽和ヒドロカルビル基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12の1価の複素環基または置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12の飽和ヒドロカルビル基がより好ましく、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のアリール基または置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12の1価の複素環基が更に好ましく、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のアリール基が特に好ましい。
【0032】
における「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜36のアリール基」におけるアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基および9−アントラセニル基が挙げられる。
これらのアリール基の中でも、好ましくは、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基または4−ヘキシルフェニル基であり、より好ましくは、フェニル基または2−メチルフェニル基であり、更に好ましくはフェニル基である。
【0033】
における「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜36の1価の複素環基」における1価の複素環基としては、例えば、ピラゾリル基、ベンゾピラゾリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピロリル基、ベンゾピロリル基、フリル基、ベンゾフリル基、ホスホリル基、ピリジル基、ピペリジル基、ピペラジル基、キノリル基、イソキノリル基、トリアジル基、キナゾリニル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、オキサゾリル基およびチエニル基が挙げられる。
これらの1価の複素環基の中でも、好ましくは、ピラゾリル基、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ホスホリル基またはピリジル基であり、より好ましくは、ピラゾリル基またはピリジル基であり、更に好ましくは1−ピラゾリル基である。
【0034】
における「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜36の飽和ヒドロカルビル基」における飽和ヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、2−エチルヘキシル基、および3,7−ジメチルオクチル基が挙げられる。
これらの飽和ヒドロカルビル基の中でも、好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基またはオクタデシル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0035】
における「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜36のヒドロカルビルオキシ基」におけるヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロプロパノキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、ベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジロキシ基、2−フェネチルオキシ基、1−フェネチルオキシ基、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、および2−ナフチルオキシ基が挙げられる。
これらのヒドロカルビルオキシ基の中でも、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基または3,7−ジメチルオクチルオキシ基であり、より好ましくは、メトキシ基またはエトキシ基である。
【0036】
における1価の有機基が有していてもよい置換基の具体例および好ましい例は、上記Rにおける1価の有機基が有していてもよい置換基の具体例および好ましい例と同じである。なお、R同士は互いに結合して、それぞれが結合するホウ素原子とともに環を形成してもよい。
【0037】
式(1)で表される銀錯体において、a個存在する配位子としては、下記式1−1〜式1−12で表される配位子が挙げられる。該配位子は1価のアニオンあることが好ましい。
【0038】
【化7】
【0039】
式1−1〜式1−12で表される配位子の中でも、式(1)で表される銀錯体の芳香族炭化水素系溶媒に対する溶解性がより優れるので、好ましくは、式1−1、式1−2、式1−5、式1−6、式1−9または式1−10で表される配位子であり、より好ましくは、1−1、式1−5または式1−9で表される配位子である。
【0040】
式(1)で表される銀錯体は、単核錯体、二核錯体または三核以上の錯体のいずれでもよいが、単核錯体または二核錯体であることが好ましく、単核錯体であることがより好ましい。
【0041】
式(1)で表される銀錯体において、aは、0.5〜1.5の数である。なお、aは、式(1)で表される銀錯体においてAgの数を1とした場合の相対値である。すなわち、式(1)で表される銀錯体においては、1個のAgに対し、a個の構造を有する。aは、好ましくは、0.5〜1.1の数であり、より好ましくは、0.5〜1.0の数であり、更に好ましくは、1.0である。
【0042】
式(1)で表される銀錯体において、X1はアニオンである。X1は、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモンイオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン、テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートイオン、および、これらのイオンの構造を有する繰り返し単位を含む高分子化合物が挙げられる。また、X1は、例えば、フェノールやパラフルオロフェノールに代表される、水酸基を有する有機化合物から、該水酸基の水素原子を除いてなるアニオン;チオフェノールやトリフェニルメタンチオールに代表される、メルカプト基を有する有機化合物から、該メルカプト基の水素原子を除いてなるアニオン;パラ−tert−ブチル安息香酸やトリフェニル酢酸に代表される、カルボキシル基を有する有機化合物から、該カルボキシル基の水素原子を除いてなるアニオン;ベンゼンスルホン酸やパラ−n−ブチルベンゼンスルホン酸に代表される、スルホ基を有する有機化合物から、該スルホ基の水素原子を除いてなるアニオン;ジフェニルホスフィン酸やビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸に代表される、P(=O)OHで表される2価の基を有する有機化合物から、該P(=O)OHで表される2価の基の水素原子を除いてなるアニオン等も挙げられる。
これらの中でも、発光素子の発光効率がより優れるため、好ましくは、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン、テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートイオン、または、これらのイオンの構造を有する繰り返し単位を含む高分子化合物であり、より好ましくは、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオンまたはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンであり、更に好ましくは、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオンまたはヨウ化物イオンであり、特に好ましくは、塩化物イオン、臭化物イオンまたはヨウ化物イオンである。
【0043】
式(1)で表される銀錯体において、cは、0〜0.5の数である。なお、cは、式(1)で表される銀錯体においてAgの数を1とした場合の相対値である。すなわち、式(1)で表される銀錯体においては、1個のAgに対し、c個のXを有する。cは、通常、式(1)で表される銀錯体が全体で中性になるように決定される。cは、好ましくは0または0.5であり、好ましくは0である。
【0044】
式(1)で表される銀錯体において、Lは多座配位子であり、二座配位子または三座以上の配位子のいずれでもよいが、二座配位子、三座配位子または四座配位子が好ましく、二座配位子がより好ましい。また、該多座配位子としては、配位結合部位が、炭素原子、窒素原子、酸素原子、リン原子および硫黄原子からなる群より選ばれる1種以上の原子であることが好ましく、窒素原子、酸素原子、リン原子および硫黄原子からなる群より選ばれる1種以上の原子であることがより好ましく、窒素原子、酸素原子およびリン原子からなる群より選ばれる1種以上の原子であることが更に好ましく、窒素原子およびリン原子からなる群より選ばれる1種以上の原子であることが特に好ましく、リン原子であることがとりわけ好ましい。なお、該配位結合部位は、中性でも電荷を帯びていてもよいが、中性であることが好ましい。
【0045】
の炭素原子数は、通常10〜150であり、好ましくは15〜125であり、より好ましくは20〜100であり、更に好ましくは25〜75であり、特に好ましくは30〜60である。
【0046】
式(1)で表される銀錯体において、bは、0.5〜1.5の数である。なお、bは、式(1)で表される銀錯体においてAgの数を1とした場合の相対値である。すなわち、式(1)で表される銀錯体においては、1個のAgに対し、b個のLを有する。bは、好ましくは、0.5〜1.1の数であり、より好ましくは、0.9〜1.1の数であり、更に好ましくは、1.0である。
【0047】
は、発光素子の発光効率がより優れるので、リン原子を2個含有する多座配位子であることが好ましい。
【0048】
1は、下記式(A)で表される多座配位子であることが好ましい。
【0049】
(R112P−R12−P(R112 (A)
(式(A)中、
11は、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。4個のR11は同一でも異なっていてもよい。
12は、2価の有機基である。
隣り合う同士R11同士は互いに結合して、それぞれが結合するリン原子とともに環を形成してもよい。)
【0050】
11における置換基を有していてもよいヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素原子数1〜36のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基、アダマンチル基等の炭素原子数4〜36の環状飽和炭化水素基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の炭素原子数2〜26のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、2−ブチルフェニル基、2−イソブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、2−ヘキシルフェニル基、2−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基、9−フルオレニル基等の炭素原子数6〜36のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基、6−フェニル−1−ヘキシル基等の炭素原子数7〜36のアラルキル基が挙げられる。
【0051】
11における置換基を有していてもよいヒドロカルビル基としては、好ましくは、置換基を有していてもよいアリール基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0052】
12における2価の有機としては、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のアルカンジイル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2〜18のアルケンジイル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2〜18のアルキンジイル基、置換基を有していてもよい炭素原子数4〜18のシクロアルカンジイル基、および、置換基を有していてもよい下記式r1〜式r12のいずれかで表される基(より具体的には後述の式r1'〜式r12'のいずれかで表される基)が挙げられる。なお、式r1〜式r12および式r1'〜式r12'で表される基は、置換基を有していてもよい。
【0053】
【化8】
(式中、
1は、−(CH2n−、−O−、−S−、−N(R50)−、−C(R512−、−Si(R512−、−O(CH2n−または−O(CH2nO−で表される2価の基である。 Y2は、−(CH2n−、−O−、−S−、−C(R512−またはSi(R512−で表される2価の基である。
nは、1〜3の整数である。
50は、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリール基であり、R51は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基である。
1およびR51が複数存在する場合、それらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0054】
50における置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−(2−エチルヘキシル)フェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基、および9−フルオレニル基が挙げられる。
これらのアリール基の中でも、好ましくは、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基または4−ヘキシルフェニル基であり、より好ましくはフェニル基、2−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基または4−ヘキシルフェニル基であり、更に好ましくはフェニル基である。
【0055】
51における置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等の炭素原子数1〜18のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基、アダマンチル基等の炭素原子数4〜18の環状飽和炭化水素基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−(2−エチルヘキシル)フェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基、9−フルオレニル基等の炭素原子数6〜18のアリール基が挙げられる。
これらのヒドロカルビル基の中でも、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等の炭素原子数1〜18のアルキル基;フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−(2−エチルヘキシル)フェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基等の炭素原子数6〜18のアリール基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素原子数1〜8のアルキル基またはフェニル基であり、更に好ましくはメチル基である。
【0056】
51が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0057】
【化9】
(式中、
3は、−(CH2m−、−O−、−S−、−N(R52)−、−C(R532−、−C(R532−またはSi(R532−で表される2価の基である。
mは、1または2である。
52は、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜12のアリール基であり、R53は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基である。
53が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0058】
52における置換基を有していてもよい炭素原子数6〜12のアリール基の具体例および好ましい例示は、上記R50における置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリール基の具体例および好ましい例示のうち、炭素原子数が6〜12であるものと同じである。
【0059】
53における置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基の具体例および好ましい例示構造は、上記R51における置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基の具体例および好ましい例示のうち、炭素原子数が1〜12であるものと同じである。
【0060】
がリン原子2個を含有する多座配位子である場合、該リン原子は、発光素子の発光効率がより優れるので、3個の芳香族基とそれぞれ結合していることが好ましい。具体的には、式(A)において、R11とR12の組み合わせとして、R11が置換基を有していてもよいアリール基であり、かつ、R12が式r1〜式r12で表されるいずれかの基(好ましくは、式r1'〜式r12'で表されるいずれかの基であることが好ましい。
【0061】
12は、式r1、式r2、式r5、式r6、式r8または式r9で表される基;式r10で表される基であって、式中のY1が−O−またはN(R50)−で表される2価の基;式r11で表される基であって、式中のY1が−O−またはS−で表される2価の基;式r12で表される基であって、式中のY1が−O−で表される2価の基あり、かつ、Y2が−C(R512−で表される2価の基;式r12で表される基であって、式中のY1が−O−で表される2価の基あり、かつ、Y2が−Si(R512−で表される2価の基;のいずれかであることが好ましく、式r1'、式r5'または式r10'で表されるいずれかの基;式r12'で表される基であって、式中のY3が、−C(R532−で表される2価の基;式r12'で表される基であって、式中のY3が−Si(CH32−で表される2価の基;のいずれかであることがより好ましく、式r1'で表される基であることが更に好ましい。
【0062】
1の具体例としては、下記式a1〜式a41で表される多座配位子が挙げられる。なお、式a1〜式a41で表される多座配位子は、置換基を有していてもよい。
【0063】
【化10】
【0064】
【化11】
【0065】
式a1〜式a41で表される多座配位子の中でも、発光素子の発光効率がより優れるので、好ましくは、式a9〜式a41で表されるいずれかの多座配位子であり、より好ましくは、式a9、式a11〜式a16、式a25〜式a28、式a31、式a33〜式a38、式a40および式a41で表されるいずれかの多座配位子であり、更に好ましくは、式a13、式a25、式a31および式a33〜式a38で表されるいずれかの多座配位子であり、特に好ましくは、式a13で表される多座配位子である。
【0066】
1が、式a13で表される多座配位子であるとき、式(1)で表される銀錯体は、下記式(2)で表される銀錯体である。
【0067】
【化12】
(2)
(式(2)中、
、R、R、X1、a、bおよびcは、前記と同じ意味を表す。
、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1〜18の1価有機基である。複数存在するR、R、R、RおよびRはそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。)
【0068】
式(1)で表される銀錯体(式(2)で表される銀錯体であってもよい。)において、a、bおよびcの組み合わせとしては、aおよびbが1.0であり、かつ、cが0であることが好ましく、式(3)で表される銀錯体であることが好ましい。
【0069】
【化13】
(3)
(式(3)中、
、R、R、R、R、R、RおよびRは、前記と同じ意味を表す。)
【0070】
1は、発光素子の発光効率がより優れるため、嵩高い構造を有する多座配位子であることが好ましい。このため、Rが、ハロゲン原子または炭素原子数1〜18の1価の有機基であることが好ましい。
【0071】
4におけるハロゲン原子および炭素原子数1〜18の1価の有機基の具体例としては、上記Rにおけるハロゲン原子および上記R1における有機基のうち炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基の具体例と同じものが挙げられる。
これらの中でも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビルチオ基または置換基を有していてもよいジアリールアミノ基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基または置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基がより好ましい。
【0072】
上記の中でも、R4としては、フッ素原子、塩素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のヒドロカルビル基または置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のヒドロカルビルオキシ基が好ましく、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基または置換基を有していてもよい炭素原子数1〜6のヒドロカルビルオキシ基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、sec−ブトキシ基またはtert−ブトキシ基が更に好ましい。
【0073】
5における水素原子、ハロゲン原子および炭素原子数1〜18の1価の有機基の具体例としては、上記R4における水素原子、ハロゲン原子および炭素原子数1〜18の1価の有機基の具体例と同じものが挙げられる。
これらの中でも、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビルチオ基または置換基を有していてもよいジアリールアミノ基が好ましく、水素原子、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基または置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基がより好ましく、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、シクロへキシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基またはフェノキシ基が更に好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基またはドデシル基が特に好ましく、水素原子またはメチル基がとりわけ好ましく、水素原子がことさら好ましい。
【0074】
6における水素原子、ハロゲン原子および炭素原子数1〜18の1価の有機基の具体例としては、上記R5における水素原子、ハロゲン原子および炭素原子数1〜18の1価の有機基の具体例と同じものが挙げらる。
これらの中でも、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、エテニル基、1−プロペニル基、3−ブテニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、フェニルチオ基またはジフェニルアミノ基が好ましく、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基またはジフェニルアミノ基がより好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基またはフェノキシ基が更に好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基またはメトキシ基が特に好ましく、水素原子がとりわけ好ましい。
【0075】
7における水素原子、ハロゲン原子および炭素原子数1〜18の1価の有機基の具体例としては、上記R5における水素原子、ハロゲン原子および炭素原子数1〜18の1価の有機基の具体例と同じものが挙げられる。
これらの中でも、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基またはフェニルチオ基が好ましく、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基またはtert−ブトキシ基がより好ましく、水素原子またはフッ素原子が更に好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0076】
8における水素原子、ハロゲン原子および炭素原子数1〜18の1価の有機基の具体例としては、上記R5における水素原子、ハロゲン原子および炭素原子数1〜18の1価の有機基の具体例と同じものが挙げられる。
これらの中でも、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基またはフェノキシ基が好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、sec−ブトキシ基またはtert−ブトキシ基がより好ましく、水素原子、メチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基が更に好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0077】
複数存在するR4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。すなわち、複数存在するR4は、同一であっても異なっていてもよく、複数存在するR5は、同一であっても異なっていてもよく、複数存在するR6は、同一であっても異なっていてもよく、複数存在するR7は、同一であっても異なっていてもよく、複数存在するR8は、同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、複数存在するR4が同一であり、複数存在するR5が同一であり、複数存在するR6が同一であり、複数存在するR7が同一あり、かつ、複数存在するR8が同一である。
【0078】
5、R6、R7およびR8の組み合わせとしては、R8が水素原子であることが好ましく、R7およびR8が水素原子であることがより好ましく、R6、R7およびR8が水素原子であることが更に好ましく、R5、R6、R7およびR8が全て水素原子であることが特に好ましい。
【0079】
1およびR2の組み合わせとしては、R1およびR2が全て水素原子であることが好ましい。
【0080】
1、R2、R5、R6、R7およびR8の組み合わせとしては、R1、R2、R5、R6、R7およびR8の全てが水素原子であることが好ましい。
【0081】
式(2)で表される銀錯体(式(3)で表される銀錯体であってもよい。)における下記式2−Aに対応する多座配位子の具体例としては、下記式a50〜式a81、式a551、式a611、式a621および式a631で表される多座配位子が挙げられる。
【0082】
【化14】
(2−A)
【0083】
【化15】
【0084】
【化16】
【0085】
これらの式2−Aに対応する多座配位子の中でも、好ましくは、式a50〜式a67、式a70、式a71、式a73、式a75〜式a81または式a551で表される多座配位子であり、より好ましくは、式a50〜式a67、式a70、式a73、式a75、式a76、式a80、式a81または式a551で表される多座配位子であり、更に好ましくは、式a50〜式a58、式a61〜式a64または式a551で表される多座配位子であり、特に好ましくは、式a50〜式a57または式a551で表される多座配位子である。
【0086】
式(3)で表される銀錯体の具体例としては、下記式2−1〜式2−19で表される銀錯体が挙げられる。
【0087】
【化17】
【0088】
【化18】
【0089】
これらの式(3)で表される銀錯体の中でも、好ましくは、式2−1〜式2−16で表される銀錯体のいずれかであり、より好ましくは、式2−1〜式2−13で表される銀錯体のいずれかあり、更に好ましくは、式2−1〜式2−9で表される銀錯体のいずれかであり、特に好ましくは、式2−1〜式2−6で表される銀錯体のいずれかである。
【0090】
式(1)で表される銀錯体は、発光素子の発光効率がより優れるため、多座配位子であるLに分布する最高占有軌道の割合が10%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましく、60%以上であることが特に好ましい。
【0091】
本発明の発光素子が含有する式(1)で表される銀錯体は発光性を示すが、該銀錯体の発光寿命は長い方が、発光素子の発光効率がより優れるため好ましい。そのためには、SエネルギーとTエネルギーとの差が0.50eV以下であることが好ましく、0.40eV以下であることがより好ましく、0.30eV以下であることが更に好ましく、0.20eV以下であることが特に好ましい。
【0092】
ここで、式(1)で表される銀錯体のSエネルギーとTエネルギーとの差の求め方について、以下で説明する。まず、密度汎関数法により式(1)で表される銀錯体の初期構造について構造最適化計算を行う。なお、構造最適化計算の際、汎関数としてB3LYP、銀原子およびハロゲン原子には基底関数としてLANL2DZ、銀原子およびハロゲン原子以外の原子には基底関数として6−31G(d)を用いる。計算プログラムはGaussian09(Gaussian Inc.製)を用いる。
【0093】
本明細書において、Sエネルギーとは、1電子励起状態において、基底状態を基準としたときの最低励起1重項状態のエネルギーである。Tエネルギーとは、1電子励起状態において、基底状態を基準としたときの最低励起3重項状態のエネルギーである。SエネルギーおよびTエネルギーは、上記の構造最適化計算により得られる最適化された構造に対して、時間依存密度汎関数法を適用し、一電子励起状態を計算することにより求めることができる。
【0094】
本発明はまた、式(2)で表される銀錯体を提供する。式(2)で表される銀錯体は、発光効率に優れる発光素子の製造に有用である。
【0095】
本発明の発光素子が含有する式(1)で表される銀錯体は、銀塩と、配位子と、を溶媒中で混合する等の通常の合成方法により製造することができる。即ち、ジクロロメタンやアセトニトリル等の溶媒中において、テトラフルオロホウ酸銀(I)やヘキサフルオロホスフェート銀(I)等の銀塩と、式(1)における多座配位子であるLと、上記式(I)におけるa個存在する配位子と、を反応させることで製造できる。式(2)で表される銀錯体は、式(1)におけるLを、式(2)においてb個存在する配位子とすることで、製造することができる。
【0096】
本発明の式(1)で表される銀錯体の製造方法について、式2−2で表される銀錯体を例に挙げて、具体的に説明する。
反応容器内を大気ガス雰囲気(不活性ガス雰囲気でもよい。)とした後、テトラフルオロホウ酸銀(I)(例えば、1mmol)と、式a50で表される多座配位子(銀塩とほぼ同モル量。例えば、1mmol前後。)と、を溶媒(例えば、ジクロロメタンやアセトニトリル。該溶媒量は、例えば、テトラフルオロホウ酸銀1mmolに対して、20mL)中でを撹拌する(例えば、室温で10分程度撹拌する。)。その後、例えば、式1−1で表される配位子のカリウム塩を加え、40℃〜70℃に加熱して10〜30分程度撹拌する。得られた反応液をろ過し、得られたろ液を濃縮し、得られた残渣から再結晶等の精製(例えば、ジクロロメタン(良溶媒として機能する。)に該残渣を溶かして、ヘキサン(貧溶媒として機能する。)を徐々に拡散させて再結晶を行う。)を行うことにより、式2−2で表される銀錯体を製造することができる。
【0097】
本発明の発光素子が含有する式(1)で表される銀錯体は、製造時に使用した中性の低分子が含有していてもよい。具体的には、反応液に、アセトニトリルや水分が含有するメタノールを用いた場合には、式(1)で表される銀錯体は、若干量のアセトニトリルや水を含有していてもよい。なお、アセトニトリルや水は、式(1)で表される銀錯体におけるAg原子に配位結合していてもよい。
【0098】
本発明の発光素子は、式(1)で表される銀錯体を含有する。以下、発光素子について説明する。
【0099】
本発明の発光素子は、式(1)で表される銀錯体を含有するが、該銀錯体をそのまま含有していてもよいし、該銀錯体と共存成分との組成物の状態で成型したものを含有していてもよい。このうち、後者が好ましく、中でも、該錯体と共存成分との組成物の状態で膜状態に成型したものを含有することがより好ましい。
【0100】
本発明の発光素子は、通常、基板と、陽極と陰極からなる一対の電極と、該電極間に挟持される1または2以上の層とを有する。該層のうち少なくとも1層が、式(1)で表される銀錯体を含有する。式(1)で表される錯体を含有する層は、有機層であることが好ましい。有機層の定義については後述する。
【0101】
本発明の発光素子の層構成としては、例えば、単層型(陽極/発光層/陰極)および多層型が挙げられる。多層型の発光素子の層構成としては、例えば、以下の層構成(a)〜(e)が挙げられる。
(a)陽極/正孔注入層/(正孔輸送層)/発光層/陰極
(b)陽極/発光層/電子注入層/(電子輸送層)/陰極
(c)陽極/正孔注入層/(正孔輸送層)/発光層/電子注入層/(電子輸送層)/陰極(d)陽極/発光層/(電子輸送層)/電子注入層/陰極
(e)陽極/正孔注入層/(正孔輸送層)/発光層/(電子輸送層)/電子注入層/陰極
(ここで、/は各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0102】
層構成(a)〜(e)において、「(正孔輸送層)」および「(電子輸送層)」は、その位置にこれらの層がそれぞれ存在していてもしなくてもよい任意の層であることを意味する。
【0103】
本発明の発光素子において、層構成が単層型か多層型かを問わず、式(1)で表される銀錯体が含まれる層は、発光層であることが好ましく、有機層としての発光層であることがより好ましい。
【0104】
陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層等の層に正孔を供給するものである。陽極の材料は、4.5eV以上の仕事関数を有する材料であることが好ましい。陽極の材料には、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、および、これらの組み合わせを用いることができる。
具体的には、例えば、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これらの導電性金属酸化物と金属との混合物および積層物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン類、ポリチオフェン類〔ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン等〕、ポリピロール等の有機導電性材料;これらの各材料とITOとの組み合わせを用いることができる。
【0105】
陰極は、電子注入層、電子輸送層、発光層等の層に電子を供給するものである。陰極の材料には、例えば、金属、合金、金属ハロゲン化物、金属酸化物、電気伝導性化合物、および、これらの組み合わせを用いることができる。
具体的には、例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)およびそのフッ化物並びに酸化物、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Ba等)およびそのフッ化物並びにその酸化物、金、銀、鉛、アルミニウム、合金および混合金属類〔ナトリウム−カリウム合金、ナトリウム−カリウム混合金属、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−アルミニウム混合金属、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−銀混合金属等〕、希土類金属〔イッテルビウム等〕を用いることができる。
陰極は、仕事関数の異なる2種類以上を積層してもよく、2種類以上を積層する場合、最も陽極に近い側の陰極の仕事関数は、最も陽極に遠い側の陰極の仕事関数より小さいことが好ましい。
【0106】
正孔注入層および正孔輸送層は、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、または、陰極から注入された電子を障壁する機能を有する。
これらの層に用いられる材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、および、これらの残基を含む重合体;アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマーが挙げられる。
正孔注入層および正孔輸送層は、それぞれが、これらの材料のうち1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0107】
電子注入層および電子輸送層は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、または、陽極から注入された正孔を障壁する機能を有する。
これらの層に用いられる材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、芳香環(ナフタレン、ペリレン等)のテトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、金属錯体(例えば、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニンを配位子とする金属錯体、ベンゾオキサゾールを配位子とする金属錯体、ベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体)、有機シラン誘導体、および、アンモニウム塩やカルボン酸塩等のイオン性基を有する化合物が挙げられる。
電子注入層および電子輸送層は、それぞれが、これらの材料のうち1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、電子注入層および前記電子輸送層は、それぞれが、フラーレンもしくはその誘導体、および/または、カーボンナノチューブもしくはその誘導体を含有していてもよい。
【0108】
電子注入層および電子輸送層の材料としては、絶縁体、半導体等の無機化合物も使用できる。電子注入層および電子輸送層が、絶縁体、半導体等の無機化合物で構成されていることで、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。
このような絶縁体としては、例えば、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選ばれる一種の金属化合物が挙げられ、CaO、BaO、SrO、BeO、BaSまたはCaSeであることが好ましい。
また、電子注入層および電子輸送層を構成する半導体としては、例えば、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnからなる群から選ばれる一種の元素の酸化物、窒化物および酸化窒化物が挙げられる。
【0109】
発光層は、電界印加時に陽極、正孔注入層または正孔輸送層より正孔を注入することができ、陰極、電子注入層または電子輸送層より電子を注入することができる機能;注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能;電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能のいずれかを有する。
発光層は、上記式(1)で表される銀錯体を含有することが好ましい。発光層は更に、上記式(1)で表される銀錯体以外のホスト材料(この場合、式(1)で表される銀錯体はゲスト材料となる。)を含有していることが好ましい。ホスト材料としては、例えば、フルオレン骨格を有する化合物、カルバゾール骨格を有する化合物、トリアリールアミン骨格を有する化合物、トリアリールホスフィン骨格を有する化合物、チオフェン骨格を有する化合物、ピリジン骨格を有する化合物、ピラジン骨格を有する化合物、トリアジン骨格を有する化合物およびアリールシラン骨格を有する化合物が挙げられる。また、ホスト材料として、後述する樹脂を用いてもよい。ホスト材料のTエネルギーは、ゲスト材料のTエネルギーより大きいことが好ましい。ホスト材料は、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。該高分子化合物は、数平均分子量が2000以上であることがより好ましい。ホスト材料は、更に電解質を含有してもよく、該電解質としては、例えば、支持塩(支持塩の例:トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸カリウムおよびテトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム)を含有している溶媒(溶媒の例:プロピレンカーボネート、アセトニトリル、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソフラン、ニトロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリセリン、プロピルアルコールおよび水)、および、該溶媒で膨潤したゲル状の高分子(ゲル状の高分子の例:ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンの共重合体)が挙げられる。なお、ホスト材料と式(1)で表される銀錯体と有機溶媒と、を混合して塗布する、または、ホスト材料と式(1)で表される銀錯体を共蒸着することにより、式(1)で表される銀錯体とホスト材料とを含有する発光層を形成することができる。
【0110】
本発明の発光素子において、各層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法〔抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法等〕、スパッタリング法、LB法、分子積層法および塗布法が挙げられる。これらのうち、製造プロセスを簡略化できる点で、塗布法が好ましい。
【0111】
塗布法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、ディップコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法およびインクジェット印刷法が挙げられ、これらのうち、スピンコート法、キャスティング法、ロールコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法またはインクジェット印刷法が好ましく、ロールコート法、スプレーコート法またはフレキソ印刷法がより好ましい。
【0112】
本発明の発光素子においては、一対の電極間に挟持される層のうち、有機層としての発光層を塗布法によって形成することが好ましく、有機層としての発光層、および、発光層以外に発光素子が含有する有機層の一層以上選ばれるを、塗布法によって形成することがより好ましく、有機層としての発光層、および、発光層以外に発光素子が含有する有機層のすべてを、塗布法によって形成することが更に好ましい。
【0113】
本明細書において、有機層とは、有機物を含有する層のことである。通常は、発光素子を構成する層のうち、上記の正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層および電子輸送層等の層が有機物を含有することが好ましい。
【0114】
本発明の発光素子は、通常、有機層を含有する。有機層の厚さは、1nm〜100μmであることが好ましく、2nm〜1μmであることがより好ましく、3nm〜200nmであることが更に好ましく、10nm〜120nmであることが特に好ましい。
【0115】
塗布法により各層を形成する手順の一例を挙げると、式(1)で表される銀錯体、または、上述した各層の材料を、溶媒と混合して塗布液を調製し、該塗布液を、任意の層(または電極)上に、塗布し、乾燥させることによって形成することができる。乾燥させる際は、加熱して乾燥させることが好ましい。
【0116】
上記の塗布液を調製するための溶媒としては、水や有機溶媒を使用することができ、好ましくは、有機溶媒を使用する。
【0117】
有機溶媒は、式(1)で表される銀錯体を溶解または均一に分散できるものが好ましい。有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン、フェニルシクロヘキサン、ビシクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、酢酸フェニル等のエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコールおよびその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒が挙げられる。また、これらの有機溶媒は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
これらの有機溶媒の中でも、均一な膜が得られる観点から、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒またはケトン系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、n−ヘキシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1−メチルナフタレン、テトラリン、アニソール、エトキシベンゼン、シクロヘキサン、ビシクロヘキシル、シクロヘキセニルシクロヘキサノン、n−ヘプチルシクロヘキサン、n−ヘキシルシクロヘキサン、デカリン、安息香酸メチル、シクロヘキサノン、2−プロピルシクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、ジシクロヘキシルケトン、アセトフェノンまたはベンゾフェノンがより好ましい。
【0118】
塗布液中には、上記ホスト材料および/またはバインダー(例えば、樹脂である。)を含有させてもよい。この樹脂は、有機溶媒に溶解させてもよいし、有機溶媒に分散(懸濁)させてもよいが、有機溶媒に溶解させることが好ましい。
【0119】
樹脂としては、ポリビニルカルバゾール等の非共役系高分子、または、ポリオレフィン系高分子等の共役系高分子を使用することができる。具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂およびシリコン樹脂が挙げられる。
【0120】
インクジェット印刷法においては、例えば、ノズルからの蒸発を押さえるために高沸点の溶媒〔アニソール、ビシクロヘキシルベンゼン等〕を用いることができる。また、溶液の粘度は、25℃において、1〜100mPa・sであることが好ましい。
【0121】
塗布後に溶媒を乾燥させることにより膜(層)が得られる。具体的には、例えば、風乾、加熱乾燥、減圧乾燥、加熱しながらの減圧乾燥および窒素ガスを吹き付けて行う乾燥が挙げられ、風乾または加熱乾燥が好ましく、加熱乾燥がより好ましい。
【0122】
本発明の発光素子は、例えば、照明用光源、サイン用光源、バックライト用光源、ディスプレイ装置、プリンターヘッドに用いることができる。ディスプレイ装置としては、公知の駆動技術および/または公知の駆動回路等を用い、セグメント型、ドットマトリクス型等の構成とすることができる。
【0123】
本発明はまた、式(1)で表される銀錯体を含有する素子用インクを提供する。該インクは発光素子用インクであることが好ましい。
【0124】
本発明のインクは、室温で液体状態である溶媒と、室温で固体である溶質と、からなる混合物であり、式(1)で表される銀錯体を溶質として含んでいればよく、好ましくは、式(1)で表される銀錯体以外に上述のホスト材料を溶質として含む。
【0125】
本発明のインクは、均一な溶液状態でも、溶液中に固体が分散した状態でもよいが、均一な溶液状態が好ましい。
【0126】
本発明のインクにおける式(1)で表される銀錯体の割合は、溶媒を除いた全体の重量(すなわち、溶質の重量)に対して、通常10重量%〜100重量%であり、好ましくは20重量%〜50重量%である。
【0127】
本発明のインクにおける式(1)で表される銀錯体の割合は、インク全体の重量(すなわち、溶媒と溶質の総重量)に対して、通常0.01重量%〜80重量%であり、好ましくは0.1重量%〜10重量%であり、より好ましくは0.3重量%〜5重量%である。
本発明のインクの粘度は、選択する塗布法によって異なるが、インクジェット印刷法等のインクが吐出装置を経由するものの場合には、吐出時の目づまりや飛行曲がりを防止するために、粘度が25℃において1〜20mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0128】
本発明のインクが含有する溶媒の具体例および好ましい例は、上述の有機溶媒が挙げられる。本発明のインクは、沸点が100℃以上の溶媒を含有することが好ましく、沸点が130℃以上の溶媒を含有することがより好ましい。
【0129】
本発明のインクが2種類以上の溶媒を含有する場合、成膜性の観点から、最も沸点が高い溶媒が、溶媒の全重量の30重量%〜99重量%であることが好ましく、50重量%〜90重量%であることがより好ましい。
【実施例】
【0130】
次に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0131】
NMR測定には、Varian社製、300MHzNMRスペクトロメーターを用いた。
【0132】
ポリスチレン換算の数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と言う。)(島津製作所製、商品名:LC−10Avp)により求めた。測定する高分子化合物は、約0.5重量%の濃度になるようテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに30μL注入した。GPCの移動相にはテトラヒドロフランを用い、0.6mL/分の流速で流した。カラムは、TSKgel SuperHM−H(東ソー製)2本とTSKgel SuperH2000(東ソー製)1本を直列に繋げた。検出器には示差屈折率検出器(島津製作所製、商品名:RID−10A)を用いた。
【0133】
実施例1(銀錯体1の合成)
1,2−ビス[ビス(2−メチルフェニル)ホスフィノ]ベンゼンを、Organometallics 23,6077−6079(2004)に記載の方法に従って合成した。
【0134】
反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、テトラフルオロホウ酸銀(I)(111mg,0.570mmol)、ジクロロメタン(5mL)および1,2−フェニレンビス[ビス(2−メチルフェニル)]ホスフィン(287mg,0.570mmol)を加え、室温で5分間撹拌した。その後、ジフェニルビス(ピラゾール−1−イル)ボランのカリウム塩(193mg,0.570mmol)を加え、40℃で10分間撹拌した。得られた反応液をろ過し、得られたろ液を濃縮し、得られた残渣を、クロロホルムを良溶媒として用い、ヘキサンを貧溶媒として用いる再結晶を2回行い、その後乾燥させることで、無色固体の銀錯体1を132mg(収率25.4%)得た。
【0135】
【化19】
【0136】
実施例1で得られた銀錯体1の組成比は、元素分析から決定した。銀錯体1の元
素分析測定の結果を下記に示す。
【0137】
Anal.Calcd for C52484AgBP2・H2O(%):C,67.33;H,5.43;N,6.04.found:C,67.61;H,5.41;N,5.83.
【0138】
実施例1で得られた銀錯体1のH−NMRデータ、31P−NMRデータおよび19F−NMRデータを下記に示す。
【0139】
H−NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=7.46−7.43(m,2H),7.33−6.82(m,26H),6.65−6.59(m,6H),5.94(t,J=1.8Hz,2H),1.98(br,12H).
【0140】
31P−NMR(122MHz、CDCl3):δ(ppm)=−23.6(d,J(31P−107Ag,109Ag)=286,330Hz).
【0141】
19F−NMR(282MHz、CDCl3):δ(ppm)検出されず.
【0142】
上記のNMRデータから、実施例1で得られた銀錯体1は下記構造であると判断される。
【0143】
【化20】
【0144】
(発光量子効率の測定)
実施例1で合成した銀錯体1の発光量子効率は、錯体単体で99%であった。
【0145】
なお、発光量子効率の測定は以下の方法で行った。
【0146】
大気雰囲気中、室温において、18mm角、厚さ0.3mmの2枚の石英板に、実施例1で合成した銀錯体1を約1.5mg挟み込み、直径10mm程度の円形に引き伸ばして、発光量子効率の検体を作製した。大気雰囲気中、室温において、作製した発光量子効率の検体を量子効率測定装置(住友重機械メカトロニクス社製)の積分球に取り付け、発光量子効率を測定した。
【0147】
量子効率測定装置の機器構成は以下の通りである。
光源には、Kimmon社製のクラス3BのHe−Cd式CWレーザーを用いた。出射部には、OFR社製のNDフィルターFDU0.5を挿入し、光ファイバーで積分球へ導いた。量子効率測定装置の積分球から検出された信号は、ポリクロメータおよびCCDマルチチャンネル検出器を介し、KEYTHLEY社製の型式2400ソースメーターを連結して、一般的なノート型PCに接続してデータを受診した。
【0148】
発光量子効率測定時の条件は以下の通りである。
レーザー励起光を325nmとし、積分時間を300ms、励起光積分範囲を315〜335nm、PL波長積分範囲を380〜800nmとした。
【0149】
合成例1(正孔輸送性高分子材料の合成)
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、下記式3−1で表される化合物(1.983g、3.98mmol)、下記式3−2で表される化合物(1.561g、3.40mmol)、下記式3−3で表される化合物(0.258g、0.60mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(2.8mg)およびトルエン(44ml)を混合し、105℃に加熱した。得られた反応液に20重量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(13.3ml)を滴下した後、12時間還流させた。
【0150】
【化21】
【0151】
得られた反応液に、フェニルボロン酸(49mg)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(2.8mg)およびトルエン(44ml)を加え、更に17時間還流させた。得られた反応液にジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え、80℃で2時間撹拌した。得られた反応液を冷却後、水(52ml)で2回、3重量%酢酸水溶液(52ml)で2回、水(52ml)で2回洗浄し、得られた溶液をメタノール(620mL)に滴下し、ろ取することで沈殿物が得られた。得られた沈殿物をトルエン(124mL)に溶解させ、アルミナカラム、シリカゲルカラムを順番に通すことにより精製した。得られた溶液をメタノール(620ml)に滴下し、撹拌することで沈殿物が得られた。得られた沈殿物をろ取し、乾燥させることにより、正孔輸送性高分子材料を1.94g得た。正孔輸送性高分子材料のポリスチレン換算数平均分子量は4.4×10であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は1.1×10であった。
【0152】
実施例2(発光素子1の作製と評価)
ガラス基板表面に形成された厚さが45nmのITO陽極上に、正孔注入材料溶液を用いたスピンコート法によって、厚さが80nmの膜を得た。該膜が形成された基板を、窒素ガス雰囲気下において、170℃で10分間加熱し、該基板を室温まで自然冷却させ、正孔注入層が形成された基板を得た。
【0153】
ここで、正孔注入材料溶液には、ポリチオフェン・スルホン酸系の正孔注入材料であるAQ−1200(Plextronics社製)を用いた。
【0154】
次に、上記の正孔輸送性高分子材料をキシレンに溶解させ、0.6重量%の正孔輸送性高分子材料を含む正孔輸送材料溶液を得た。
【0155】
次に、正孔注入層が形成された基板上に、上記の正孔輸送層材料溶液を用いたスピンコート法によって、厚さが25nmの膜を得た。該膜が形成された基板を、窒素ガス雰囲気下において、200℃で15分間加熱し、該膜を不溶化させた後、該基板を室温まで自然冷却させ、正孔輸送層が形成された基板を得た。
【0156】
次に、実施例1で得られた銀錯体1と、2,8−ビス(ジフェニルホスホリル)ヂベンゾ[b,d]チオフェン(Luminescence Technology Corp.製)と、をクロロベンゼンに溶解させ、1.9重量%の発光材料溶液(銀錯体1/2,8−ビス(ジフェニルホスホリル)ヂベンゾ[b,d]チオフェン=35重量%/65重量%)を得た。なお、該発光材料溶液は、本発明のインクに該当する。
【0157】
次に、正孔輸送層が形成された基板上に、上記の発光材料溶液を用いたスピンコート法によって、厚さが70nmの膜を得た。該膜が形成された基板を、窒素ガス雰囲気下において、50℃で10分間加熱し、該基板を室温まで自然冷却させ、発光層が形成された基板を得た。
【0158】
次に、発光層が形成された基板上に、陰極として、フッ化リチウムを約1nm、次いでアルミニウムを約80nm、真空蒸着法により蒸着して、発光素子1を作製した。
【0159】
得られた発光素子1に8.0Vの電圧を印加したところ、この素子から520nmにピークを有するEL発光が得られ、発光効率は13cd/Aであった。
【0160】
実施例3(インク1の作製)
実施例1で得られた銀錯体1(100mg)にキシレン(1.0mL)を加えたところ、銀錯体1が完全に溶解したインク1が得られた。
【0161】
実施例4(インク2の作製)
実施例1で得られた銀錯体1(10mg)にクロロホルム(1.0g)を加えたところ、銀錯体1が完全に溶解したインク2が得られた。
【0162】
比較例1(銀錯体C1の合成)
反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、テトラフルオロホウ酸銀(I)(13.7mg,0.0704mmol)、ジクロロメタン(2mL)およびトリフェニルホスフィン(36.9mg,0.141mmol)を加え、室温で5分間撹拌した。その後、ジフェニルビス(ピラゾール−1−イル)ボランのカリウム塩(19.3mg,0.0572mmol)を加え、40℃で10分間撹拌した。得られた反応液をろ過し、得られたろ液を濃縮し、得られた残渣をジエチルエーテルに懸濁させてろ過し、得られたろ液を濃縮して、無色固体の銀錯体C1を49.5mg(収率92.9%)得た。
【0163】
【化22】
【0164】
比較例1で得られた銀錯体C1のH−NMRデータ、31P−NMRデータおよび19F−NMRデータを下記に示す。比較例1で得られた錯体の構造は、NMRデータから判断した。
【0165】
H−NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=7.63−7.62(m,2H),7.59−7.56(m,2H),7.38−6.94(m,40H),6.17(t,J=2.0Hz,2H).
【0166】
31P−NMR(122MHz、CDCl3):δ(ppm)=10.1(s).
【0167】
19F−NMR(282MHz、CDCl3):δ(ppm)検出されず.
【0168】
上記のNMRデータから、比較例1で得られた銀錯体C1は上記構造であると判断される。
【0169】
比較例1で得られた銀錯体C1の発光量子効率を、上記実施例1で得られた銀錯体1と同様に測定したところ、錯体単体で1%であった。このため、銀錯体C1を用いた発光素子は、高い発光効率を示さない。
【0170】
<計算例1>
実施例1で得られた銀錯体1について、Gaussian09プログラム(リビジョン D.02、Gaussian Inc.製)の密度汎関数法を用い、構造最適化計算を行った。得られた最適化された構造に対し、同じくGaussian09プログラムを用いて、時間依存密度汎関数法を用いて1電子励起状態の計算を行った。構造最適化計算および1電子励起状態の計算はいずれも、汎関数としてB3LYP、基底関数としてAg原子に対してはLANL2DZ、基底関数としてAg原子以外の原子に対しては6−31G(d)を用いた。
1電子励起状態の計算の結果、Sエネルギーが3.43eVであり、Tエネルギーが3.23eVであり、SエネルギーとTエネルギーの差が0.20eVであった。また、1,2−フェニレンビス[ビス(2−メチルフェニル)]ホスフィンに分布する最高占有軌道の割合は、68%であった。
【0171】
<計算例C1>
比較例1で得られた銀錯体C1についても、計算例1と同様に計算を行った。
1電子励起状態の計算の結果、Sエネルギーが4.31eVであり、Tエネルギーが3.57eVであり、SエネルギーとTエネルギーの差が0.74eVであった。また、2つのトリフェニルホスフィンに分布する最高占有軌道の割合は、それぞれ、1%であった。