【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゲル紡糸によって製造される繊維等に用いた場合に、適度な分子量分布を有することにより磨耗性に優れる超高分子量エチレン系重合体を提供するものである。
【0008】
本発明においては、遷移金属化合物(A)、有機変性粘土(B)及び有機アルミニウム化合物(C)を含むエチレン系重合体製造用触媒を用いたスラリー法プロセスにより、固有粘度が9.0dL/g以上20dL/g以下で、Mwが100万以上600万以下で、Mw/Mnが3.0以上4.0未満で、分子量(M)が10,000未満の成分が0.01%以下[Mは、ポリスチレン(分子量分布Mw/Mn<1.2)の分子量(ピークトップ)をQ−ファクターを用いてポリエチレンの分子量に換算して得られた値と、それらの溶出時間から得られた検量線において、該当分子量が溶出する時間と同じ溶出時間の成分を示す。]であることより、磨耗性に優れたエチレン系重合体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、一般式(1)
【0010】
【化1】
[式中、M
1はチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、Xは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、R
1は一般式(2)、(3)または(4)
【0011】
【化2】
【0012】
【化3】
【0013】
【化4】
(式中、R
4は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、R
2は一般式(5)
【0014】
【化5】
(式中、R
5は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものである。)
で表されるM
1に配位する配位子であり、R
1とR
2はM
1と一緒にサンドイッチ構造を形成し、R
3は一般式(6)または(7)
【0015】
【化6】
【0016】
【化7】
(式中、R
6は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、M
2はケイ素原子、ゲルマニウム原子または錫原子である。)
で表され、R
1とR
2を架橋するように作用しており、nは1〜5の整数である。]
で表される遷移金属化合物(A)、一般式(8)
【0017】
N−メチル−エチル−ベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−エチル−ベヘニルアミンフッ化水素酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミンフッ化水素酸塩、N−メチル−エチル−ベヘニルアミン臭化水素酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミン臭化水素酸塩、N−メチル−エチル−ベヘニルアミンヨウ化水素酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミンヨウ化水素酸塩、N−メチル−エチル−ベヘニルアミン硫酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミン硫酸塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィンフッ化水素酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィンフッ化水素塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィンフッ化水素塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィン臭化水素酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィン臭化水素酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィン臭化水素酸塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィンヨウ化水素酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィンヨウ化水素酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィンヨウ化水素酸塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィン硫酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィン硫酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィン硫酸塩からなる群より選択される有機化合物にて変性した有機変性粘土(B)及び有機アルミニウム化合物(C)を含むエチレン系重合体製造用触媒を用いたスラリー法プロセスにより製造された、固有粘度が9.0dL以上20dL/g以下で、Mwが100万以上600万以下で、分子量分布が3.0以上4.0未満で、分子量(M)における10000未満の成分の割合が0.01%以下[Mは、ポリスチレン(分子量分布Mw/Mn<1.2)の分子量(ピークトップ)をQ−ファクターを用いてポリエチレンの分子量に換算して得られた値と、それらの溶出時間から得られた検量線において、該当分子量が溶出する時間と同じ溶出時間の成分を示す]であることにより、磨耗性に優れたエチレン系重合体
の製造方法を提供するものである。
【0018】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0019】
遷移金属化合物(A)は、一般式(1)
【0020】
【化9】
[式中、M
1はチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、Xは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、R
1は一般式(2)、(3)または(4)
【0021】
【化10】
【0022】
【化11】
【0023】
【化12】
(式中、R
4は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、R
2は一般式(5)
【0024】
【化13】
(式中、R
5は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものである。)
で表されるM
1に配位する配位子であり、R
1とR
2はM
1と一緒にサンドイッチ構造を形成し、R
3は一般式(6)または(7)
【0025】
【化14】
【0026】
【化15】
(式中、R
6は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、M
2はケイ素原子、ゲルマニウム原子または錫原子である。)
で表され、R
1とR
2を架橋するように作用しており、nは1〜5の整数である。]
で表される化合物である。
【0027】
Xの具体例としては、水素原子、塩素原子、メチル基、フェニル基、ベンジル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基、トリメチルシリル基などが挙げられる。R
1の具体例としては、シクロペンタジエニル基、メチル−シクロペンタジエニル基、n−ブチル−シクロペンタジエニル基、インデニル基、2−メチル−インデニル基、4−フェニル−インデニル基、テトラヒドロインデニル基などが挙げられる。R
2の具体例としては、フルオレニル基、2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル基などが挙げられる。R
3の具体例としては、ジフェニルシランジイル基、ジフェニルメチレン基などが挙げられる。R
4、R
5およびR
6の具体例としては、水素原子、塩素原子、メチル基、フェニル基、ベンジル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基、トリメチルシリル基などが挙げられる。
【0028】
遷移金属化合物(A)は、シクロペンタジエニル基(若しくは置換シクロペンタジエニル基)又はインデニル基(若しくは置換インデニル基)とフルオレニル基(若しくは置換フルオレニル基)を組み合わせた構造の配位子を有する。シクロペンタジエニル基(若しくは置換シクロペンタジエニル基)の具体例としては、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエン)(9−フルオレン)、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエン)(9−フルオレン)、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエン)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレン)などが挙げられる。インデニル基(若しくは置換インデニル基)とフルオレニル基(若しくは置換フルオレニル基)を組み合わせた構造の配位子の具体例としては、ジフェニルシランジイル(1−インデン)(9−フルオレン)、ジフェニルシランジイル(2−メチル−1−インデン)(9−フルオレン)、ジフェニルメチレン(1−インデン)(9−フルオレン)、ジフェニルメチレン(1−インデン)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレン)、ジフェニルメチレン(4−フェニル−1−インデン)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレン)などが挙げられる。遷移金属化合物(A)の具体例として、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(2−メチル−1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(4−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドなどのジルコニウム化合物、ジルコニウム原子をチタン原子、ハフニウム原子に変えた化合物や上記遷移金属化合物のジクロロ体をジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体に変えた化合物などを例示することができるが、これらに限定するものではない。
【0029】
有機変性粘土(B)は、以下の一般式(8)
【0030】
【化16】
(式中、R
7〜R
9は各々独立して炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキルアミノ基、炭素数1〜30のアルキルシリル基、上記炭素数1〜30の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜30の炭化水素基の一部を炭素数1〜30のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜30の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、M
3は周期表第15族の原子であり、[A
−]はアニオンである。)
で表される有機化合物にて変性したものであり、一般式(8)において、R
7、R
8およびR
9の炭素数1〜30の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基等を例示することができる。
【0031】
炭素数1〜30のアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、フェノキシ基等を例示することができる。
【0032】
炭素数1〜30のアルキルアミノ基は、前記炭素数1〜30の炭化水素基を置換基として有するアミノ基であり、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基等を例示することができる。
【0033】
炭素数1〜30のアルキルシリル基は、前記炭素数1〜30の炭化水素基を置換基として有するシリル基であり、トリメチルシリル基、トリtert−ブチルシリル基、ジtert−ブチルメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等を例示することができる。
【0034】
上記炭素数1〜30の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したものとしては、メトキシメチレン基、エトキシメチレン基等を例示することができる。
【0035】
上記炭素数1〜30の炭化水素基の一部を炭素数1〜30のアルキルアミノ基に置換したものとしては、ジメチルアミノメチレン基、ジエチルアミノメチレン基等を例示することができる。
【0036】
上記炭素数1〜30の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものとしては、トリメチルシリルメチレン基、tert−ブチルジメチルシリルメチレン基等を例示することができる。
【0037】
M
3は、周期律表第15族の原子であり窒素原子またはリン原子を例示することができる。M
3が窒素原子である場合の一般式(
8)で表される有機化合物の具体例としては、N,N−ジメチル−ベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−N−エチル−ベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミン塩酸塩等の化合物および上記化合物の塩酸塩をフッ化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩または硫酸塩に置き換えた化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
M
3がリン原子であるものとしては、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィン塩酸塩等の化合物および上記化合物の塩酸塩をフッ化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩または硫酸塩に置き換えた化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
[A
−]はアニオンであり、例えばフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン、シュウ酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオンまたはヘキサフルオロリン酸イオンを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
また、有機変性粘土(B)に用いる粘土化合物は、シリカ四面体が二次元上に連続した四面体シートと、アルミナ八面体やマグネシア八面体等が二次元上に連続した八面体シートが1:1もしくは2:1で組合わさって構成されるシリケート層と呼ばれる層が何枚にも重なって形成されたものであり、一部のシリカ四面体のSiがAlに、アルミナ八面体のAlがMgに、マグネシア八面体のMgがLi等に同型置換されることにより層内部の正電荷が不足し、層全体として負電荷を帯びているものであり、この負電荷を補償するために層間にはNa
+やCa
2+等の陽イオンが存在しているものである。天然品、または合成品としてカオリナイト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、雲母、脆雲母、縁泥石等が存在するが、入手のしやすさと変性の容易さからスメクタイトが好ましく、スメクタイトのなかでもヘクトライトまたはモンモリロナイトがさらに好ましい。
【0041】
有機化合物にて変性された有機変性粘土は、粘土化合物層間に有機イオンを導入し、イオン複合体を形成する。
【0042】
有機化合物変性処理においては、粘土化合物の濃度は0.1〜30重量%、処理温度は0〜150℃の条件を選択して処理を行うことが好ましい。また、有機化合物は固体として調製して溶媒に溶解させて使用しても良いし、溶媒中での化学反応により有機化合物の溶液を調製してそのまま使用しても良い。粘土化合物と有機化合物の反応量比については、粘土化合物の交換可能なカチオンに対して当量以上の有機化合物を用いることが好ましい。処理溶媒としては、ペンタン、ヘキサンもしくはヘプタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼンもしくはトルエン等の芳香族炭化水素類、エチルアルコールもしくはメチルアルコール等のアルコール類、エチルエーテルもしくはn−ブチルエーテル等のエーテル類、塩化メチレンもしくはクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、アセトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランまたは水等を用いることができるが、好ましくは、アルコール類または水を単独もしくは溶媒の一成分として用いることである。
【0043】
また、本発明に使用するエチレン系重合体の重合で用いる有機変性粘土(B)の粒径は特に制限されるものではないが、小さすぎると沈降しづらく触媒調製を効率よく行えなくなり、大きすぎると触媒をスラリーで移送する際に途中の配管に詰まったりするため、1〜100μmであることが好ましい。粒径を調節する方法も特に制限されず、大きな粒子を粉砕して適切な粒径にしても、小さな粒子を造粒して適切な粒径にしても良く、あるいは粉砕と造粒を組み合わせても良い。また、粒径の調節は未変性の粘土に行っても、変性後の有機変性粘土に行っても良い。
【0044】
粉砕や造粒の方法も特に制限されず、粉砕ならばインパクトミル、回転ミル、カスケードミル、カッターミル、ケージミル、衝撃式粉砕機、コニカルミル、コロイドミル、コンパウンドミル、ジェットミル、振動ミル、スタンプミル、チューブミル、ディスクミル、タワーミル、媒体攪拌ミル、ハンマーミル、ピンミル、フレットミル、ペブルミル、ボールミル、摩砕機、遊星ミル、リングボールミル、リングロールミル、ロッドミル、ローラーミル、ロールクラッシャー等を、造粒としては転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、圧縮造粒、押出造粒、破砕造粒、溶融造粒、噴霧造粒等いずれの方法を用いてもよい。
【0045】
有機アルミニウム化合物(C)は、本発明に使用されるエチレン系重合体の製造用触媒の構成成分であり、遷移金属化合物(A)、および有機変性粘土(B)と共に用いられる。
【0046】
有機アルミニウム化合物(C)は、下記一般式(9)
【0047】
【化17】
(式中、R
10は炭素数1〜20の炭化水素基であり、R
11は各々独立して炭素数1〜20の炭化水素基、水素原子または塩素原子である。)
で表され、遷移金属化合物をアルキル化することが可能な化合物が好ましく、具体的にはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0048】
本発明に使用するエチレン系重合体の重合で用いる遷移金属化合物(A)((A)成分)と有機変性粘土(B)((B)成分)、および有機アルミニウム化合物(C)((C)成分)の比に制限はないが、次に示す比であることが望ましい。
【0049】
(A)成分と(C)成分の金属原子当たりのモル比は(A成分):(C成分)=100:1〜1:100000の範囲にあり、特に1:1〜1:10000の範囲であることが好ましく、(A)成分と(B)成分の重量比が(A成分):(B成分)=10:1〜1:10000にあり、特に3:1〜1:1000の範囲であることが好ましい。
【0050】
本発明に使用するエチレン系重合体の重合で用いる(A)成分、(B)成分および(C)成分を含むエチレン系重合体製造用触媒を調製する方法に関して制限はなく、調製の方法として、各成分に関して不活性な溶媒中あるいは重合を行うモノマーを溶媒として用い、混合する方法などを挙げることができる。また、これらの成分を反応させる順番に関しても制限はなく、この処理を行う温度、処理時間も制限はない。また、(B)成分、(C)成分を2種類以上用いてエチレン系重合体製造用触媒を調製することも可能である。
【0051】
本発明において重合とはエチレンの単独重合のみならず他のオレフィンとの共重合も意味し、これら重合により得られるエチレン系重合体は、単独重合体のみならず共重合体も含む意味で用いられる。
【0052】
本発明に使用されるエチレン系重合体におけるエチレンの重合は、スラリー法で行うことができ、粒子形状の整ったエチレン系重合体を効率よく安定的に生産することができる。また、用いる溶媒は、一般に用いられている有機溶媒であればいずれでもよく、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられ、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、1−ヘキセンなどのオレフィンを溶媒として用いることもできる。
【0053】
本発明のエチレン系重合体の製造に用いるエチレンとの共重合に用いる他のオレフィンとして、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン、スチレンおよびスチレン誘導体、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の共役および非共役ジエン、シクロブテン等の環状オレフィン等が挙げられる。さらに、エチレンとプロピレンとスチレン、エチレンと1−ヘキセンとスチレン、エチレンとプロピレンとエチリデンノルボルネンのように、3種以上の成分を混合して重合することもできる。
【0054】
本発明のエチレン系重合体を製造する上で、重合温度、重合時間、重合圧力、モノマー濃度などの重合条件について特に制限はないが、重合温度は30〜90℃、重合時間は10秒〜20時間、重合圧力は常圧〜100MPaの範囲で行うことが好ましい。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて、2段以上に分けて行うことも可能である。また、重合終了後に得られるエチレン系重合体は、従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0055】
本発明のエチレン系重合体の固有粘度([η])は、9.0dL/g以上20dL/g以下であり、9.0dL/g未満の場合、耐摩耗性等の機械物性が低下するという問題があり、20dL/gを超える場合、成形体に成形加工できないという問題があった。
【0056】
本発明のエチレン系重合体のMwは、100万以上600万以下であり、100万未満の場合、耐摩耗性等の機械物性が低下するという問題があり、600万を超える場合、成形体に成形加工できないという問題があった。
【0057】
本発明のエチレン系重合体のMw/Mnは、3.0以上4.0未満であり、3.0未満の場合、成形加工性に寄与する低分子量成分が減少し、成形体の成形加工性が低下するという問題があり、4.0以上の場合、その中に含まれる超高分子量成分が成形体の成形加工性を低下させて、またその中に含まれる低分子量成分が、耐摩耗性等の機械物性を低下させるという問題があった。
【0058】
本発明のエチレン系重合体の分子量(M)における10,000未満の成分の割合が0.01%以下であり、10,000未満の成分が0.01%以上存在する場合、耐摩耗性等の機械物性を低下する。
【0059】
遷移金属化合物(A)は、シクロペンタジエニル基(若しくは置換シクロペンタジエニル基)又はインデニル基(若しくは置換インデニル基)とフルオレニル基(若しくは置換フルオレニル基)を組み合わせた構造の配位子に有することが必須であり、そうでない場合、目的とする固有粘度([η])およびMwを有するエチレン系重合体を得ることはできない。
【0060】
また、助触媒成分として有機変性粘土(B)およびは有機アルミニウム化合物(C)を用いることにより、Mw/Mnが3.0〜4.0であるエチレン系重合体を得ることが出来る。従来から知られているホウ素系触媒またはメチルアルモキサン系触媒より得られるエチレン系重合体は、Mw/Mnが3.0未満であり、目的となるエチレン系重合体を得ることはできない。
【0061】
また、遷移金属化合物(A)、有機変性粘土(B)およびは有機アルミニウム化合物(C)からなる触媒系を用いてスラリー法により分子量分布の制御された超高分子量エチレン系重合体を製造することが可能となる。