特許第5949216号(P5949216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5949216
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】エチレン系重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/02 20060101AFI20160623BHJP
   C08F 4/642 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   C08F10/02
   C08F4/642
【請求項の数】1
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-145854(P2012-145854)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-9269(P2014-9269A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 彩樹
(72)【発明者】
【氏名】稲富 敬
(72)【発明者】
【氏名】阿部 成彦
【審査官】 井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−236410(JP,A)
【文献】 特開平09−291112(JP,A)
【文献】 特開2001−098021(JP,A)
【文献】 特開2006−282927(JP,A)
【文献】 特開2005−008711(JP,A)
【文献】 特開昭58−081612(JP,A)
【文献】 特開2003−055833(JP,A)
【文献】 特表2007−521380(JP,A)
【文献】 特開2003−128719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00−19/44
C08F6/00−246/00
C08F4/60−4/70
D01F1/00−6/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)固有粘度([η])が、9.0dL/g以上20dL/g以下
(2)Mwが、100万以上600万以下
(3)Mw/Mnが、3.0以上4.0未満
(4)分子量(M)における10000未満の成分の割合が、0.01%以下
[Mは、ポリスチレン(分子量分布Mw/Mn<1.2)の分子量(ピークトップ)をQ−ファクターを用いてポリエチレンの分子量に換算して得られた値と、それらの溶出時間から得られた検量線において、該当分子量が溶出する時間と同じ溶出時間の成分を示す]のエチレン系重合体を、
(5)一般式(1)
【化1】
[式中、Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、Xは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、Rは一般式(2)、(3)または(4)
【化2】
【化3】
【化4】
(式中、Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、Rは一般式(5)
【化5】
(式中、Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものである。)
で表されるMに配位する配位子であり、RとRはMと一緒にサンドイッチ構造を形成し、Rは一般式(6)または(7)
【化6】
【化7】
(式中、Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、Mはケイ素原子、ゲルマニウム原子または錫原子である。)
で表され、RとRを架橋するように作用しており、nは1〜5の整数である。]
で表される遷移金属化合物(A)、
N−メチル−エチル−ベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−エチル−ベヘニルアミンフッ化水素酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミンフッ化水素酸塩、N−メチル−エチル−ベヘニルアミン臭化水素酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミン臭化水素酸塩、N−メチル−エチル−ベヘニルアミンヨウ化水素酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミンヨウ化水素酸塩、N−メチル−エチル−ベヘニルアミン硫酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミン硫酸塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィンフッ化水素酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィンフッ化水素塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィンフッ化水素塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィン臭化水素酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィン臭化水素酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィン臭化水素酸塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィンヨウ化水素酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィンヨウ化水素酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィンヨウ化水素酸塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィン硫酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィン硫酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィン硫酸塩からなる群より選択される有機化合物にて変性した有機変性粘土(B)及び有機アルミニウム化合物(C)を含むエチレン系重合体製造用触媒を用い
(6)スラリー法により製造する
ことを特徴とするエチレン系重合体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属化合物(A)、有機変性粘土(B)及び有機アルミニウム化合物(C)を含むエチレン系重合体製造用触媒を用いたスラリー法プロセスにより得られる、固有粘度が9.0dL以上で、Mwが100万以上で、分子量分布が3.0以上4.0未満で、分子量(M)における10,000未満の成分の割合が0.01%以下であることを特徴とするエチレン系重合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超高分子量エチレン系重合体は、その粘度平均分子量(Mv)が100万〜700万に達するため、耐衝撃性、自己潤滑性、耐薬品性、寸法安定性、軽量性、食品安定性等に優れ、エンジニアリングプラスチックに匹敵する物性を有しているため、射出成形、押出成形、圧縮成形等の各種成形法によって成形され、ライニング材、食品工業のライン部品、機械部品、スポーツ用品等の用途に用いられている。
しかし、通常のチーグラー触媒によって製造された超高分子量エチレン系重合体は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(分子量分布)が4より大きく、その中に含まれる超高分子量成分が成形体の成形加工性を低下させていた。また、その中に含まれる低分子量成分が、耐摩耗性等の機械物性を低下させたり、繊維にした場合に分子鎖末端数が増え、結晶化を阻害することにより、繊維の強度を下げる要因となっていた。
【0003】
これらを解決する手段として、メタロセン系触媒を用いることにより分子量分布が、3.0以下である超高分子量エチレン系(共)重合体が提案されているが(特許文献1)、分子量分布を小さくし過ぎた結果、成形加工性に寄与する低分子量成分が減少し、成形体の成形加工性が低下するという問題があった。また、繊維にする場合において、紡糸工程で溶媒に溶解分散させにくいという問題があった。
【0004】
よって、ゲル紡糸によって製造される繊維等に用いた場合に、適度な分子量分布を有した磨耗性に優れる超高分子量エチレン系重合体は、見出されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−291112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゲル紡糸によって製造される繊維等に用いた場合に、適度な分子量分布を有することにより磨耗性に優れる超高分子量エチレン系重合体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゲル紡糸によって製造される繊維等に用いた場合に、適度な分子量分布を有することにより磨耗性に優れる超高分子量エチレン系重合体を提供するものである。
【0008】
本発明においては、遷移金属化合物(A)、有機変性粘土(B)及び有機アルミニウム化合物(C)を含むエチレン系重合体製造用触媒を用いたスラリー法プロセスにより、固有粘度が9.0dL/g以上20dL/g以下で、Mwが100万以上600万以下で、Mw/Mnが3.0以上4.0未満で、分子量(M)が10,000未満の成分が0.01%以下[Mは、ポリスチレン(分子量分布Mw/Mn<1.2)の分子量(ピークトップ)をQ−ファクターを用いてポリエチレンの分子量に換算して得られた値と、それらの溶出時間から得られた検量線において、該当分子量が溶出する時間と同じ溶出時間の成分を示す。]であることより、磨耗性に優れたエチレン系重合体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、一般式(1)
【0010】
【化1】
[式中、Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、Xは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、Rは一般式(2)、(3)または(4)
【0011】
【化2】
【0012】
【化3】
【0013】
【化4】
(式中、Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、Rは一般式(5)
【0014】
【化5】
(式中、Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものである。)
で表されるMに配位する配位子であり、RとRはMと一緒にサンドイッチ構造を形成し、Rは一般式(6)または(7)
【0015】
【化6】
【0016】
【化7】
(式中、Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、Mはケイ素原子、ゲルマニウム原子または錫原子である。)
で表され、RとRを架橋するように作用しており、nは1〜5の整数である。]
で表される遷移金属化合物(A)、一般式(8)
【0017】
N−メチル−エチル−ベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−エチル−ベヘニルアミンフッ化水素酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミンフッ化水素酸塩、N−メチル−エチル−ベヘニルアミン臭化水素酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミン臭化水素酸塩、N−メチル−エチル−ベヘニルアミンヨウ化水素酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミンヨウ化水素酸塩、N−メチル−エチル−ベヘニルアミン硫酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミン硫酸塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィンフッ化水素酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィンフッ化水素塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィンフッ化水素塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィン臭化水素酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィン臭化水素酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィン臭化水素酸塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィンヨウ化水素酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィンヨウ化水素酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィンヨウ化水素酸塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィン硫酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィン硫酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィン硫酸塩からなる群より選択される有機化合物にて変性した有機変性粘土(B)及び有機アルミニウム化合物(C)を含むエチレン系重合体製造用触媒を用いたスラリー法プロセスにより製造された、固有粘度が9.0dL以上20dL/g以下で、Mwが100万以上600万以下で、分子量分布が3.0以上4.0未満で、分子量(M)における10000未満の成分の割合が0.01%以下[Mは、ポリスチレン(分子量分布Mw/Mn<1.2)の分子量(ピークトップ)をQ−ファクターを用いてポリエチレンの分子量に換算して得られた値と、それらの溶出時間から得られた検量線において、該当分子量が溶出する時間と同じ溶出時間の成分を示す]であることにより、磨耗性に優れたエチレン系重合体の製造方法を提供するものである。
【0018】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0019】
遷移金属化合物(A)は、一般式(1)
【0020】
【化9】
[式中、Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、Xは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、Rは一般式(2)、(3)または(4)
【0021】
【化10】
【0022】
【化11】
【0023】
【化12】
(式中、Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、Rは一般式(5)
【0024】
【化13】
(式中、Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものである。)
で表されるMに配位する配位子であり、RとRはMと一緒にサンドイッチ構造を形成し、Rは一般式(6)または(7)
【0025】
【化14】
【0026】
【化15】
(式中、Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、Mはケイ素原子、ゲルマニウム原子または錫原子である。)
で表され、RとRを架橋するように作用しており、nは1〜5の整数である。]
で表される化合物である。
【0027】
Xの具体例としては、水素原子、塩素原子、メチル基、フェニル基、ベンジル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基、トリメチルシリル基などが挙げられる。Rの具体例としては、シクロペンタジエニル基、メチル−シクロペンタジエニル基、n−ブチル−シクロペンタジエニル基、インデニル基、2−メチル−インデニル基、4−フェニル−インデニル基、テトラヒドロインデニル基などが挙げられる。Rの具体例としては、フルオレニル基、2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル基などが挙げられる。Rの具体例としては、ジフェニルシランジイル基、ジフェニルメチレン基などが挙げられる。R、RおよびRの具体例としては、水素原子、塩素原子、メチル基、フェニル基、ベンジル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基、トリメチルシリル基などが挙げられる。
【0028】
遷移金属化合物(A)は、シクロペンタジエニル基(若しくは置換シクロペンタジエニル基)又はインデニル基(若しくは置換インデニル基)とフルオレニル基(若しくは置換フルオレニル基)を組み合わせた構造の配位子を有する。シクロペンタジエニル基(若しくは置換シクロペンタジエニル基)の具体例としては、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエン)(9−フルオレン)、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエン)(9−フルオレン)、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエン)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレン)などが挙げられる。インデニル基(若しくは置換インデニル基)とフルオレニル基(若しくは置換フルオレニル基)を組み合わせた構造の配位子の具体例としては、ジフェニルシランジイル(1−インデン)(9−フルオレン)、ジフェニルシランジイル(2−メチル−1−インデン)(9−フルオレン)、ジフェニルメチレン(1−インデン)(9−フルオレン)、ジフェニルメチレン(1−インデン)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレン)、ジフェニルメチレン(4−フェニル−1−インデン)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレン)などが挙げられる。遷移金属化合物(A)の具体例として、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(2−メチル−1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(4−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドなどのジルコニウム化合物、ジルコニウム原子をチタン原子、ハフニウム原子に変えた化合物や上記遷移金属化合物のジクロロ体をジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体に変えた化合物などを例示することができるが、これらに限定するものではない。
【0029】
有機変性粘土(B)は、以下の一般式(8)
【0030】
【化16】
(式中、R〜Rは各々独立して炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキルアミノ基、炭素数1〜30のアルキルシリル基、上記炭素数1〜30の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜30の炭化水素基の一部を炭素数1〜30のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜30の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、Mは周期表第15族の原子であり、[A]はアニオンである。)
で表される有機化合物にて変性したものであり、一般式(8)において、R、RおよびRの炭素数1〜30の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基等を例示することができる。
【0031】
炭素数1〜30のアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、フェノキシ基等を例示することができる。
【0032】
炭素数1〜30のアルキルアミノ基は、前記炭素数1〜30の炭化水素基を置換基として有するアミノ基であり、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基等を例示することができる。
【0033】
炭素数1〜30のアルキルシリル基は、前記炭素数1〜30の炭化水素基を置換基として有するシリル基であり、トリメチルシリル基、トリtert−ブチルシリル基、ジtert−ブチルメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等を例示することができる。
【0034】
上記炭素数1〜30の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したものとしては、メトキシメチレン基、エトキシメチレン基等を例示することができる。
【0035】
上記炭素数1〜30の炭化水素基の一部を炭素数1〜30のアルキルアミノ基に置換したものとしては、ジメチルアミノメチレン基、ジエチルアミノメチレン基等を例示することができる。
【0036】
上記炭素数1〜30の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものとしては、トリメチルシリルメチレン基、tert−ブチルジメチルシリルメチレン基等を例示することができる。
【0037】
は、周期律表第15族の原子であり窒素原子またはリン原子を例示することができる。Mが窒素原子である場合の一般式()で表される有機化合物の具体例としては、N,N−ジメチル−ベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−N−エチル−ベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミン塩酸塩等の化合物および上記化合物の塩酸塩をフッ化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩または硫酸塩に置き換えた化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
がリン原子であるものとしては、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィン塩酸塩等の化合物および上記化合物の塩酸塩をフッ化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩または硫酸塩に置き換えた化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
[A]はアニオンであり、例えばフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン、シュウ酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオンまたはヘキサフルオロリン酸イオンを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
また、有機変性粘土(B)に用いる粘土化合物は、シリカ四面体が二次元上に連続した四面体シートと、アルミナ八面体やマグネシア八面体等が二次元上に連続した八面体シートが1:1もしくは2:1で組合わさって構成されるシリケート層と呼ばれる層が何枚にも重なって形成されたものであり、一部のシリカ四面体のSiがAlに、アルミナ八面体のAlがMgに、マグネシア八面体のMgがLi等に同型置換されることにより層内部の正電荷が不足し、層全体として負電荷を帯びているものであり、この負電荷を補償するために層間にはNaやCa2+等の陽イオンが存在しているものである。天然品、または合成品としてカオリナイト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、雲母、脆雲母、縁泥石等が存在するが、入手のしやすさと変性の容易さからスメクタイトが好ましく、スメクタイトのなかでもヘクトライトまたはモンモリロナイトがさらに好ましい。
【0041】
有機化合物にて変性された有機変性粘土は、粘土化合物層間に有機イオンを導入し、イオン複合体を形成する。
【0042】
有機化合物変性処理においては、粘土化合物の濃度は0.1〜30重量%、処理温度は0〜150℃の条件を選択して処理を行うことが好ましい。また、有機化合物は固体として調製して溶媒に溶解させて使用しても良いし、溶媒中での化学反応により有機化合物の溶液を調製してそのまま使用しても良い。粘土化合物と有機化合物の反応量比については、粘土化合物の交換可能なカチオンに対して当量以上の有機化合物を用いることが好ましい。処理溶媒としては、ペンタン、ヘキサンもしくはヘプタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼンもしくはトルエン等の芳香族炭化水素類、エチルアルコールもしくはメチルアルコール等のアルコール類、エチルエーテルもしくはn−ブチルエーテル等のエーテル類、塩化メチレンもしくはクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、アセトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランまたは水等を用いることができるが、好ましくは、アルコール類または水を単独もしくは溶媒の一成分として用いることである。
【0043】
また、本発明に使用するエチレン系重合体の重合で用いる有機変性粘土(B)の粒径は特に制限されるものではないが、小さすぎると沈降しづらく触媒調製を効率よく行えなくなり、大きすぎると触媒をスラリーで移送する際に途中の配管に詰まったりするため、1〜100μmであることが好ましい。粒径を調節する方法も特に制限されず、大きな粒子を粉砕して適切な粒径にしても、小さな粒子を造粒して適切な粒径にしても良く、あるいは粉砕と造粒を組み合わせても良い。また、粒径の調節は未変性の粘土に行っても、変性後の有機変性粘土に行っても良い。
【0044】
粉砕や造粒の方法も特に制限されず、粉砕ならばインパクトミル、回転ミル、カスケードミル、カッターミル、ケージミル、衝撃式粉砕機、コニカルミル、コロイドミル、コンパウンドミル、ジェットミル、振動ミル、スタンプミル、チューブミル、ディスクミル、タワーミル、媒体攪拌ミル、ハンマーミル、ピンミル、フレットミル、ペブルミル、ボールミル、摩砕機、遊星ミル、リングボールミル、リングロールミル、ロッドミル、ローラーミル、ロールクラッシャー等を、造粒としては転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、圧縮造粒、押出造粒、破砕造粒、溶融造粒、噴霧造粒等いずれの方法を用いてもよい。
【0045】
有機アルミニウム化合物(C)は、本発明に使用されるエチレン系重合体の製造用触媒の構成成分であり、遷移金属化合物(A)、および有機変性粘土(B)と共に用いられる。
【0046】
有機アルミニウム化合物(C)は、下記一般式(9)
【0047】
【化17】
(式中、R10は炭素数1〜20の炭化水素基であり、R11は各々独立して炭素数1〜20の炭化水素基、水素原子または塩素原子である。)
で表され、遷移金属化合物をアルキル化することが可能な化合物が好ましく、具体的にはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0048】
本発明に使用するエチレン系重合体の重合で用いる遷移金属化合物(A)((A)成分)と有機変性粘土(B)((B)成分)、および有機アルミニウム化合物(C)((C)成分)の比に制限はないが、次に示す比であることが望ましい。
【0049】
(A)成分と(C)成分の金属原子当たりのモル比は(A成分):(C成分)=100:1〜1:100000の範囲にあり、特に1:1〜1:10000の範囲であることが好ましく、(A)成分と(B)成分の重量比が(A成分):(B成分)=10:1〜1:10000にあり、特に3:1〜1:1000の範囲であることが好ましい。
【0050】
本発明に使用するエチレン系重合体の重合で用いる(A)成分、(B)成分および(C)成分を含むエチレン系重合体製造用触媒を調製する方法に関して制限はなく、調製の方法として、各成分に関して不活性な溶媒中あるいは重合を行うモノマーを溶媒として用い、混合する方法などを挙げることができる。また、これらの成分を反応させる順番に関しても制限はなく、この処理を行う温度、処理時間も制限はない。また、(B)成分、(C)成分を2種類以上用いてエチレン系重合体製造用触媒を調製することも可能である。
【0051】
本発明において重合とはエチレンの単独重合のみならず他のオレフィンとの共重合も意味し、これら重合により得られるエチレン系重合体は、単独重合体のみならず共重合体も含む意味で用いられる。
【0052】
本発明に使用されるエチレン系重合体におけるエチレンの重合は、スラリー法で行うことができ、粒子形状の整ったエチレン系重合体を効率よく安定的に生産することができる。また、用いる溶媒は、一般に用いられている有機溶媒であればいずれでもよく、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられ、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、1−ヘキセンなどのオレフィンを溶媒として用いることもできる。
【0053】
本発明のエチレン系重合体の製造に用いるエチレンとの共重合に用いる他のオレフィンとして、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン、スチレンおよびスチレン誘導体、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の共役および非共役ジエン、シクロブテン等の環状オレフィン等が挙げられる。さらに、エチレンとプロピレンとスチレン、エチレンと1−ヘキセンとスチレン、エチレンとプロピレンとエチリデンノルボルネンのように、3種以上の成分を混合して重合することもできる。
【0054】
本発明のエチレン系重合体を製造する上で、重合温度、重合時間、重合圧力、モノマー濃度などの重合条件について特に制限はないが、重合温度は30〜90℃、重合時間は10秒〜20時間、重合圧力は常圧〜100MPaの範囲で行うことが好ましい。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて、2段以上に分けて行うことも可能である。また、重合終了後に得られるエチレン系重合体は、従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0055】
本発明のエチレン系重合体の固有粘度([η])は、9.0dL/g以上20dL/g以下であり、9.0dL/g未満の場合、耐摩耗性等の機械物性が低下するという問題があり、20dL/gを超える場合、成形体に成形加工できないという問題があった。
【0056】
本発明のエチレン系重合体のMwは、100万以上600万以下であり、100万未満の場合、耐摩耗性等の機械物性が低下するという問題があり、600万を超える場合、成形体に成形加工できないという問題があった。
【0057】
本発明のエチレン系重合体のMw/Mnは、3.0以上4.0未満であり、3.0未満の場合、成形加工性に寄与する低分子量成分が減少し、成形体の成形加工性が低下するという問題があり、4.0以上の場合、その中に含まれる超高分子量成分が成形体の成形加工性を低下させて、またその中に含まれる低分子量成分が、耐摩耗性等の機械物性を低下させるという問題があった。
【0058】
本発明のエチレン系重合体の分子量(M)における10,000未満の成分の割合が0.01%以下であり、10,000未満の成分が0.01%以上存在する場合、耐摩耗性等の機械物性を低下する。
【0059】
遷移金属化合物(A)は、シクロペンタジエニル基(若しくは置換シクロペンタジエニル基)又はインデニル基(若しくは置換インデニル基)とフルオレニル基(若しくは置換フルオレニル基)を組み合わせた構造の配位子に有することが必須であり、そうでない場合、目的とする固有粘度([η])およびMwを有するエチレン系重合体を得ることはできない。
【0060】
また、助触媒成分として有機変性粘土(B)およびは有機アルミニウム化合物(C)を用いることにより、Mw/Mnが3.0〜4.0であるエチレン系重合体を得ることが出来る。従来から知られているホウ素系触媒またはメチルアルモキサン系触媒より得られるエチレン系重合体は、Mw/Mnが3.0未満であり、目的となるエチレン系重合体を得ることはできない。
【0061】
また、遷移金属化合物(A)、有機変性粘土(B)およびは有機アルミニウム化合物(C)からなる触媒系を用いてスラリー法により分子量分布の制御された超高分子量エチレン系重合体を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0062】
本発明は、ゲル紡糸によって製造される繊維等に用いた場合に、十分な磨耗性を有する超高分子量エチレン系重合体を提供することができる。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。なお、断りのない限り、用いた試薬等は市販品、あるいは既知の方法に従って合成したものを用いた。
【0064】
有機変性粘土の粉砕にはジェットミル(セイシン企業社製(商品名)CO−JET SYSTEM α MARK III)を用い、粉砕後の粒径はマイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製(商品名)MT3000)を用いてエタノールを分散剤として測定した。
【0065】
エチレン系重合体製造用触媒の調製、エチレン系重合体の製造および溶媒精製は全て不活性ガス雰囲気下で行った。トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(20wt%)は東ソーファインケム(株)製を用いた。
【0066】
さらに、実施例におけるエチレン系重合体の諸物性は、以下に示す方法により測定した。重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は、GPCによって測定した。GPC装置(東ソー(株)製(商品名)HLC−8121GPC/HT)およびカラム(東ソー(株)製(商品名)TSKgel GMHhr−H(20)HT)を用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4−トリクロロベンゼンを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mlの濃度で調製し、0.3ml注入して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正した。なお、MwおよびMnは直鎖状ポリエチレン換算の値として求めた。
【0067】
固有粘度は、ウベローデ型粘度計を用い、ODCB(オルトジクロルベンゼン)135℃において、ポリマー濃度10%で測定した。
【0068】
磨耗量は、サンプル200gを金型に投入し、金型温度190℃、面圧力50kg/cm2にて20分間プレス成形し、縦横各150mm、厚さ10mmの板状成形品を得た。
【0069】
この成形品を平削り機にて切削加工して、直径5mm高さ8mmの丸棒を試験用サンプルとして調製し、オリエンテック(株)製摩擦摩耗試験機(型式EFM−III−EN)を用いて、JISK7218に準拠して、速度2.0m/秒、荷重25MPa、時間360分、相手材料SS400の条件で摩耗量を測定した。
【0070】
実施例1
(1)粘土の変性
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF−3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸15.0g及びジオレイルメチルアミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンM20)64.2g(120mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより160gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
(2)触媒懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドを0.669g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:11.5wt%)。
(3)重合
10Lのオートクレーブにヘキサンを6.0L、20%トリイソブチルアルミニウムを5.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を2,820mg(固形分324mg相当)加え、60℃に昇温後、分圧が0.70MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで260gのポリマーを得た(活性:800g/g触媒)。得られたポリマーの物性は、表1に示す。
【0071】
実施例2
(1)粘土の変性
(2)触媒懸濁液の調製
実施例1と同様に行った。
(3)重合
10Lのオートクレーブにヘキサンを6.0L、20%トリイソブチルアルミニウムを5.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を1,156mg(固形分133mg相当)加え、70℃に昇温後、分圧が0.80MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで245gのポリマーを得た(活性:1,840g/g触媒)。得られたポリマーの物性は、表1に示す。
【0072】
実施例3
(1)粘土の変性
(2)触媒懸濁液の調製
実施例1と同様に行った。
(3)重合
10Lのオートクレーブにヘキサンを6.0L、20%トリイソブチルアルミニウムを5.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を687mg(固形分79mg相当)加え、80℃に昇温後、分圧が0.85MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで320gのポリマーを得た(活性:4,050g/g触媒)。得られたポリマーの物性は、表1に示す。
【0073】
実施例4
(1)粘土の変性
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF−3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸15.0g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM22D)42.4g(120mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより125gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
(2)触媒懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドを0.669g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:13.1wt%)。
(3)重合
10Lのオートクレーブにヘキサンを6.0L、20%トリイソブチルアルミニウムを5.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を3,474mg(固形分455mg相当)加え、60℃に昇温後、分圧が0.70MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで252gのポリマーを得た(活性:550g/g触媒)。得られたポリマーの物性は表1に示す。
【0074】
実施例5
(1)粘土の変性
(2)触媒懸濁液の調製
実施例4と同様に行った。
(3)重合
10Lのオートクレーブにヘキサンを6.0L、20%トリイソブチルアルミニウムを5.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を1,552mg(固形分204mg相当)加え、70℃に昇温後、分圧が0.80MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで248gのポリマーを得た(活性:1,220g/g触媒)。得られたポリマーの物性は表1に示す。
【0075】
実施例6
(1)粘土の変性
(2)触媒懸濁液の調製
実施例4と同様に行った。
(3)重合
10Lのオートクレーブにヘキサンを6.0L、20%トリイソブチルアルミニウムを5.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を447mg(固形分59mg相当)加え、80℃に昇温後、分圧が0.85MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで309gのポリマーを得た(活性:5,240g/g触媒)。得られたポリマーの物性は表1に示す。
【0076】
実施例7
(1)粘土の変性
実施例1と同様に行った。
(2)触媒懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジフェニルメチレン(4−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドを0.795g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:11.9wt%)。
(3)重合
10Lのオートクレーブにヘキサンを6.0L、20%トリイソブチルアルミニウムを5.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を3,529mg(固形分420mg相当)加え、60℃に昇温後、分圧が0.70MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで252gのポリマーを得た(活性:600g/g触媒)。得られたポリマーの物性は表1に示す。
【0077】
実施例8
(1)粘土の変性
(2)触媒懸濁液の調製
実施例7と同様に行った。
(3)重合
10Lのオートクレーブにヘキサンを6.0L、20%トリイソブチルアルミニウムを5.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を1,076mg(固形分128mg相当)加え、70℃に昇温後、分圧が0.80MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで268gのポリマーを得た(活性:2,090g/g触媒)。得られたポリマーの物性は表1に示す。
【0078】
実施例9
(1)粘土の変性
(2)触媒懸濁液の調製
実施例7と同様に行った。
(3)重合
10Lのオートクレーブにヘキサンを6.0L、20%トリイソブチルアルミニウムを5.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を543mg(固形分65mg相当)加え、80℃に昇温後、分圧が0.85MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで270gのポリマーを得た(活性:4,150g/g触媒)。得られたポリマーの物性は表1に示す。
【0079】
実施例10
(1)粘土の変性
実施例4と同様に行った。
(2)触媒懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジフェニルメチレン(4−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドを0.795g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:13.6wt%)。
(3)重合
10Lのオートクレーブにヘキサンを6.0L、20%トリイソブチルアルミニウムを5.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を7,960mg(固形分1,080mg相当)加え、60℃に昇温後、分圧が0.70MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで280gのポリマーを得た(活性:260g/g触媒)。得られたポリマーの物性は表1に示す。
【0080】
実施例11
(1)粘土の変性
(2)触媒懸濁液の調製
実施例10と同様に行った。
(3)重合
10Lのオートクレーブにヘキサンを6.0L、20%トリイソブチルアルミニウムを5.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を3,800mg(固形分516mg相当)加え、70℃に昇温後、分圧が0.80MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで300gのポリマーを得た(活性:580g/g触媒)。得られたポリマーの物性は表1に示す。
【0081】
実施例12
(1)粘土の変性
(2)触媒懸濁液の調製
実施例10と同様に行った。
(3)重合
10Lのオートクレーブにヘキサンを6.0L、20%トリイソブチルアルミニウムを5.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を720mg(固形分86mg相当)加え、80℃に昇温後、分圧が0.85MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで300gのポリマーを得た(活性:3,490g/g触媒)。得られたポリマーの物性は表1に示す。
【0082】
比較例1
(1)粘土の変性
実施例1と同様に行った。
(2)触媒懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシランジイルビス(インデニル)ジルコニウムジクロライドを0.449g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:12.5wt%)。
(3)重合
10Lのオートクレーブにヘキサンを6.0L、20%トリイソブチルアルミニウムを5.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を13,360mg(固形分1,670mg相当)加え、60℃に昇温後、分圧が0.70MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで250gのポリマーを得た(活性:150g/g触媒)。得られたポリマーの物性は表1に示す。
【0083】
比較例2
(1)粘土の変性
実施例1と同様に行った。
(2)触媒懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでエチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライドを0.418g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:12.5wt%)。
(3)重合
10Lのオートクレーブにヘキサンを6.0L、20%トリイソブチルアルミニウムを5.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を15,360mg(固形分1,920mg相当)加え、60℃に昇温後、分圧が0.70MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで250gのポリマーを得た(活性:130g/g触媒)。得られたポリマーの物性は表1に示す。
【0084】
比較例3
(1)触媒液の調製
50mLのシュレンク管に、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを13.4mg(20μmol)を取り、トルエン12.0mLで溶解し、ポリメチルアルモキサンのトルエン溶液(2.85M)をアルミニウム原子当たり80mmol(28.0mL)加えることにより触媒を調製した(ジルコニウム濃度0.5mmol/L)。
(2)重合
10Lのオートクレーブにヘキサンを6.0L、20%トリイソブチルアルミニウムを5.0mL、(2)で得られた触媒液を26ml(Zr当たり13μmol)加え、60℃に昇温後、分圧が0.70MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで260gのポリマーを得た(活性:20kg/mmolZr)。得られたポリマーの物性は、表1に示す。
【0085】
比較例4
(1)触媒液の調製
50mLのシュレンク管に、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを13.4mg(20μmol)、トルエン14.0mL、およびトリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(0.85M)をアルミニウム原子当たり5.0mmol(6.0mL)加えた後、1時間攪拌した(これを溶液Aとする)。
【0086】
一方、別に用意した50mLのシュレンク管に、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート19.2mg(24μmol)、トルエン20.0mLを加えた後、得られた溶液Aの全量20mLを加えることにより触媒を調製した(ジルコニウム濃度0.5mmol/L)。
(2)重合
10Lのオートクレーブにヘキサンを6.0L、20%トリイソブチルアルミニウムを5.0mL、(2)で得られた触媒液を36ml(Zr当たり18μmol)加え、60℃に昇温後、分圧が0.70MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで270gのポリマーを得た(活性:15kg/mmolZr)。得られたポリマーの物性は、表1に示す。
【0087】
比較例5〜8
市販品ポリエチレン(比較例5〜7:三井化学(株)製 商品名ハイゼックスミリオン グレード030S、145M、240M、比較例8:東ソー(株)製 商品名ニポロンハード グレード4000)について、実施例と同様に物性を測定した。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】