特許第5949268号(P5949268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5949268
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】二層成形用フィーダ
(51)【国際特許分類】
   B30B 11/00 20060101AFI20160623BHJP
   B22F 3/035 20060101ALI20160623BHJP
   B30B 11/02 20060101ALI20160623BHJP
   B22F 7/02 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   B30B11/00 F
   B22F3/035 C
   B30B11/02 Z
   B30B11/00 H
   B22F7/02
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-163801(P2012-163801)
(22)【出願日】2012年7月24日
(65)【公開番号】特開2014-24073(P2014-24073A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100110180
【弁理士】
【氏名又は名称】阿相 順一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 和人
(72)【発明者】
【氏名】三ヶ田 亜矢
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−010395(JP,A)
【文献】 実開昭62−101697(JP,U)
【文献】 特開2006−181605(JP,A)
【文献】 特開平09−291301(JP,A)
【文献】 特開昭54−154875(JP,A)
【文献】 特開平07−150202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 11/00
B22F 3/035
B22F 7/02
B30B 11/02
B30B 15/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイの型孔と下パンチとで形成される第1のキャビティに第1の原料粉末を充填した後、前記ダイに対して前記下パンチを相対的に引き下げて前記ダイの型孔と前記第1の原料粉末の上面とで第2のキャビティを形成し、この第2のキャビティに第2の原料粉末を充填することで前記第1の原料粉末上に前記第2の原料粉末を積層して充填し、積層した原料粉末を前記下パンチと上パンチとで圧縮成形して成形体とする二層成形に用いるフィーダであって、
フィーダ本体と、
前記フィーダ本体内に配設され、前記第1の粉末を収容する下面が開放された第1の粉箱と、
前記フィーダ本体内に配設され、前記第1の粉箱と、前記フィーダの進退方向に対して鉛直方向に配設され、前記第2の粉末を収容する下面が開放された第2の粉箱と、
前記第1の粉箱の下面であって、その外周面に沿って配設された第1の弾性部材からなる第1のシール部材と、
前記第2の粉箱の下面であって、その外周面に沿って配設された第2の弾性部材からなる第2のシール部材と、
前記フィーダ本体の下面であって前記第1の粉箱及び前記第2の粉箱の中間において、少なくとも前記第1の粉箱及び前記第2の粉箱から前記フィーダの前進方向に延びる弾性部材からなる遮蔽部材と、
を具えることを特徴とする二層成形用フィーダ。
【請求項2】
前記遮蔽部材の、前記第2の粉箱側の前記遮蔽部材の近傍に、吸引手段に接続する吸引口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の二層成形用フィーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末冶金法(特に押型法)において原料粉末の供給に用いられるフィーダに関し、特に成形方向に二種類の原料粉末を積層して成形する二層成形のために用いられるフィーダに関する。
【背景技術】
【0002】
粉末冶金法による焼結部品の製造は、ダイの型孔と下パンチとで形成されるキャビティに原料粉末を充填した後、原料粉末を下パンチと上パンチとで圧縮成形して成形体を作製(いわゆる押型法)し、得られた成形体を焼結炉中で加熱して焼結することで行われる。このような押型法は、焼結部品をニアネットシェイプに造形することができることに加え、一度押型を作製すれば同形状の製品を多量に生産可能であり、製造コストが低廉であるという利点を有していることから、各種機械部品の製造に用いられている。
【0003】
粉末冶金法を用いた焼結部品としては、製品の上面側と下面側とに異なる組成の材料を組み合わせた焼結部品の製造も行われている。例えば、内燃機関に用いられるバルブシートは、内燃機関のハウジングに固定され、燃焼ガスに曝されながら高温下で吸気バルブ及び排気バルブと当接を繰り返すことから高い耐摩耗性と耐食性が要求される。その一方で高い耐摩耗性と耐食性を備えた材料は高価であり、全体をこのような材料で構成すると部品のコストが増加することから、ハウジングに埋め込まれる側については、比較的安価な材料で構成した、いわゆる二層バルブシートとして製造される。
【0004】
このような製品の上面側と下面側に異なる組成の材料を組み合わせた焼結部品は、ダイの型孔と下パンチとで形成される第1のキャビティに第1の原料粉末を充填した後、ダイに対して下パンチを相対的に引き下げてダイの型孔と第1の原料粉末の上面とで第2のキャビティを形成し、この第2のキャビティに第2の原料粉末を充填することで第1の原料粉末状に第2の原料粉末を積層して充填し、その後、積層した原料粉末を下パンチと上パンチとで圧縮成形して成形体とすれば、第1の原料粉末と第2の原料粉末とが一体になった成形体、すなわち二層成形体とすることができる。
【0005】
次いで、上述のようにして得た二層成形体を、通常の方法で焼結することで上面側と下面側に異なる組成の材料を組み合わせた焼結部品を製造することができる。上記のような二種類の原料粉末を積層して成形する成形技術を、二層成形という。
【0006】
上記のような二層成形においては第1及び第2の原料粉末の供給ために特許文献1,2等のフィーダ(粉箱)が用いられる。この場合の成形金型各部の動作とフィーダの動作の一例を図1図7により説明する。なお、以下においては、フィーダがキャビティ内に原料粉末を充填するために移動する場合を“前進”と呼び、フィーダがキャビティ内に原料粉末を充填した後、退避するために移動する場合を“後退”あるいはそのまま“退避”と呼ぶ場合がある。
【0007】
フィーダ10は、第1の粉末Mを収容する空間すなわち第1の粉箱11と、第2の粉末Mを収容する空間すなわち第2の粉箱12を有しており、第1の粉箱11及び第2の粉箱12はフィーダの進退の方向(図では左右方向)に対し鉛直方向に並べて配置される。これらの第1の粉箱11及び第2の粉箱12は下面が開放されており、この開放面からダイに形成されるキャビティに収容する原料粉末M,Mを供給する。なお、第1の粉箱11及び第2の粉箱12は、フィーダ10の外形及び大きさを画定するフィーダ本体15内に配設されている。
【0008】
フィーダ10の下面には粉漏れを防止するため、第1の粉箱11の周囲にシール部材13が、第2の粉箱12の周囲にシール部材14がそれぞれ配置される。シール部材13,14は例えばゴム等の弾性部材で構成され、フィーダ10の下面とダイ20の間を封止して原料粉末M及びMの漏出を防止する。
【0009】
図1に示す初期段階では、ダイ20、コアロッド21及び下パンチ30で画定されるキャビティCが形成される位置から右方に離隔して配置されたフィーダ10は、図2に示す段階においては前進(図面左方に移動)し、第1の粉箱11がキャビティC上に配置され、キャビティCに第1の原料粉末Mが充填される。
【0010】
次いで、図3に示す段階では、フィーダ10は前進方向に対して鉛直方向(図面上方)に駆動されて、第2の粉箱12がキャビティC上に配置される。次いで、図4に示すように、下パンチ30がダイ20に対して相対的に降下し、下パンチ30の降下にともなって、キャビティCに充填された第1の原料粉末M上に第2のキャビティCが形成されるとともに、このキャビティCに第2の原料粉末Mが吸い込み充填され、先に充填された第1の原料粉末M上に第2の原料粉末Mが積層される。
【0011】
第2の原料粉末Mの充填が終了したら、図5に示すように、フィーダ10は後退して退避する。この後、図6に示すように、上パンチ40を降下するとともに、上パンチ40と下パンチ30とで積層して充填した原料粉末M,Mを同時に圧縮して一体に成形する。このとき成形体Pは下部の第1の原料粉末Mからなる成形体Pと、上部の第2の原料粉末Mからなる成形体Pが一体の二層成形体となる。この成形段階において、フィーダ10は初期段階の位置に復帰される。
【0012】
成形が終了したら、図7に示すように、上パンチ40を上方に退避させるとともに、下パンチ30をダイ20に対して相対的に上昇させて成形された二層成形体Pをダイ20のキャビティより抜き出す。以上が原料粉末の充填から成形を経て成形体の抜き出しまでの成形工程の1ストロークであり、これを繰り返し行うことで二層成形体を連続して成形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭54−154875号公報
【特許文献1】特開平07−150202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の二層成形においては、一方の原料粉末に他方の原料粉末が混入すると所望の特性が得られないことから、原料粉末の混入を防止して行う必要がある。しかしながら、現実には、原料粉末の混入を防止して健全な二層成形体を成形することは難しい。
【0015】
本発明は、上記のような原料粉末の混入を防止し、健全な二層成形体を成形することができる二層成形用フィーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成すべく、本発明者らは、原料粉末の混入について鋭意検討したところ次の知見を得た。図8図13は、原料粉末の混入過程を説明するための図である。
【0017】
一般にフィーダの原料粉末収容空間から外部への原料粉末の漏出の防止のために原料粉末収容空間の周囲には、ゴム等の弾性部材からなるシール部材が配置される。上述のように二層成形用フィーダにおいても同様であり、図8に示すように、フィーダ10の下面には、第1の粉箱11の周囲にシール部材13が、第2の粉箱12の周囲にシール部材14がそれぞれ配置される。このシール部材13,14は、フィーダ10下面とダイ20上面の間に配置され、フィーダ10の重量により弾性変形してダイ20上面密着することで原料粉末の漏出を防止する。
【0018】
この場合、図9に示すように、フィーダ10の下面とダイ20の上面との間にシール部材13,14が介在することにより、フィーダ10の下面とダイ20の上面とは密着せず隙間dが存在する。ここで、例えば図4に関連して説明したように、フィーダ10の第2の粉箱12からキャビティC内に第2の原料粉末Mを充填した後、フィーダ10を図5に関連して説明したように後退して退避させる場合、図10に示すように、フィーダ10の進行方向前面に位置するシール部材14がキャビティCを通過する際に、弾性変形していたシール部材14が弾性復帰して、キャビティCに充填された第2の原料粉末Mを掻き出すこととなり、第2の原料粉末Mの一部がフィーダ10の下面とダイ20の上面の隙間に漏出する。
【0019】
この第2の原料粉末Mの漏出にともない、図11に示すように、第2の粉箱12の進行方向前面においてはフィーダ10の下面とダイ20の上面の隙間に第2の原料粉末Mが分布することとなる。この後、フィーダ10が初期の位置に復帰すると、図12に示すように、前進方向前面においてフィーダ10の下面とダイ20の上面との隙間に分布する第2の原料粉末Mは、ダイ20の上面で引きずられ、薄くはなるものの広がって第1の粉箱11の前進方向前面にまで拡散して分布することとなる。
【0020】
この状態から再び図1〜7に示す一連の成形工程が開始され、フィーダ10が前進(図中左方)すると、図13に示すように、第1の粉箱11の進行方向前面に分布する第2の原料粉末Mが第1の原料粉末を充填するキャビティCに落下して、第2の原料粉末Mが第1の原料粉末Mに混入して充填されることとなる。
【0021】
本発明の二層成形用フィーダは、上述した一方の原料粉末に他方の原料粉末が混入するメカニズムの発見に基づいてなされたものであり、以下のような特徴を有する。
【0022】
すなわち、本発明の第1の二層成形用フィーダは、ダイの型孔と下パンチとで形成される第1のキャビティに第1の原料粉末を充填した後、前記ダイに対して前記下パンチを相対的に引き下げて前記ダイの型孔と前記第1の原料粉末の上面とで第2のキャビティを形成し、この第2のキャビティに第2の原料粉末を充填することで前記第1の原料粉末上に前記第2の原料粉末を積層して充填し、積層した原料粉末を前記下パンチと上パンチとで圧縮成形して成形体とする二層成形に用いるフィーダであって、フィーダ本体と、前記フィーダ本体内に配設され、前記第1の粉末を収容する下面が開放された第1の粉箱と、前記フィーダ本体内に配設され、前記第1の粉箱と、前記フィーダの進退方向に対して鉛直方向に配設され、前記第2の粉末を収容する下面が開放された第2の粉箱と、前記第1の粉箱の下面であって、その外周面に沿って配設された第1の弾性部材からなる第1のシール部材と、前記第2の粉箱の下面であって、その外周面に沿って配設された第2の弾性部材からなる第2のシール部材と、前記フィーダ本体の下面であって前記第1の粉箱及び前記第2の粉箱の中間において、少なくとも前記第1の粉箱及び前記第2の粉箱から前記フィーダの前進方向に延びる弾性部材からなる遮蔽部材と、を具えることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の第2の二層成形用フィーダは、本発明の第1の二層成形用フィーダにおいて、前記遮蔽部材の、前記第2の粉箱側の前記遮蔽部材の近傍に、吸引手段に接続する吸引口が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の二層成形用フィーダによれば、フィーダ10の下面とダイ20の上面の隙間に原料粉末が漏出しても、漏出した原料粉末がキャビティに落下することを防止できるため原料粉末の混入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】二層成形における二層成形用フィーダの動作を説明するための図である。
図2】二層成形における二層成形用フィーダの動作を説明するための図である。
図3】二層成形における二層成形用フィーダの動作を説明するための図である。
図4】二層成形における二層成形用フィーダの動作を説明するための図である。
図5】二層成形における二層成形用フィーダの動作を説明するための図である。
図6】二層成形における二層成形用フィーダの動作を説明するための図である。
図7】二層成形における二層成形用フィーダの動作を説明するための図である。
図8】従来の二層成形用フィーダを用いた場合の原料粉末の混入過程を説明するための図である。
図9】従来の二層成形用フィーダを用いた場合の原料粉末の混入過程を説明するための図である。
図10】従来の二層成形用フィーダを用いた場合の原料粉末の混入過程を説明するための図である。
図11】従来の二層成形用フィーダを用いた場合の原料粉末の混入過程を説明するための図である。
図12】従来の二層成形用フィーダを用いた場合の原料粉末の混入過程を説明するための図である。
図13】従来の二層成形用フィーダを用いた場合の原料粉末の混入過程を説明するための図である。
図14】第1の実施形態の二層成形用フィーダの概略構成を示す平面図である。
図15図14に示す二層成形用フィーダを用いて二層成形を実施した場合の作用効果について説明するための図である。
図16図14に示す二層成形用フィーダを用いて二層成形を実施した場合の作用効果について説明するための図である。
図17】第1の実施形態の二層成形用フィーダの概略構成を示す平面図である。
図18図17に示す二層成形用フィーダを用いて二層成形を実施した場合の作用効果について説明するための図である。
図19図17に示す二層成形用フィーダを用いて二層成形を実施した場合の作用効果について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1の実施形態)
図14は、本実施形態の二層成形用フィーダの概略構成を示す平面図であり、図15及び図16は、図14に示す二層成形用フィーダを用いて二層成形を実施した場合の作用効果について説明するための図である。なお、図1〜13に示す構成要素と類似あるいは同一の構成要素については同一の符号を用いている。
【0027】
図14に示す二層成形用フィーダ40は、フィーダ本体15と、フィーダ本体15内に配設され、第1の粉末Mを収容する下面が開放された第1の粉箱12と、フィーダ本体15内に配設され、第1の粉箱11と、フィーダ40の進退方向に対して鉛直方向に配設され、第2の粉末M2を収容する下面が開放された第2の粉箱12とを有している。
【0028】
第1の粉箱11の下面には、その外周面に沿って配設された第1の弾性部材からなる第1のシール部材13が配設され、第2の粉箱12の下面には、その外周面に沿って配設された第2の弾性部材からなる第2のシール部材14が配設されている。
【0029】
また、フィーダ本体15の下面であって第1の粉箱11及び第2の粉箱12の中間には、これら第1の粉箱11及び第2の粉箱12からフィーダ40の前方、すなわち前進方向に延びる弾性部材からなる遮蔽部材45が配設されている。遮蔽部材45はゴム等の弾性部材から構成することができる。
【0030】
また、本実施形態においては、第1の粉箱11及び第2の粉箱12からフィーダ40の前進方向にのみ遮蔽部材45を配設しているが、第1の粉箱11及び第2の粉箱12からフィーダ40の退避方向、すなわちフィーダ40がキャビティ内に原料粉末を充填した後、退避するために移動する前進方向と逆の方向にも配設してもよい。しかしながら、遮蔽部材45は、上述のように、第1の粉箱11及び第2の粉箱12からフィーダ40の前進方向に配設すれば、その作用効果を奏することができる。
【0031】
なお、上述のように、遮蔽部材45を退避方向に延在させた場合、遮蔽部材45の長さが大きくなるので、フィーダ駆動時の抵抗が大きくなるという問題が生じる場合がある。
【0032】
図14に示す二層形成用フィーダ40を用いた二層成形の工程は、図1図7に示す工程と同じであるので説明は省略する。しかしながら、図9及び図10に関連して説明したように、二層形成用フィーダ40の第2の粉箱12からキャビティC内に第2の原料粉末Mを充填した後、図5に関連して説明したように、フィーダ40を後退して退避させる場合、フィーダ40の進行方向前面に位置する第2のシール部材14がキャビティCを通過する際に、弾性変形していた第2のシール部材14が弾性復帰して、キャビティCに充填された第2の原料粉末Mを掻き出すこととなり、第2の原料粉末Mの一部がフィーダ10の下面とダイ20の上面の隙間に漏出し、第2の粉箱12の進行方向前面におけるフィーダ40の下面とダイ20の上面の隙間に第2の原料粉末Mが分布することとなる(図15参照)。
【0033】
しかしながら、本実施形態のフィーダ40においては、上述のように、フィーダ本体15の下面であって第1の粉箱11及び第2の粉箱12の中間に、これら第1の粉箱11及び第2の粉箱12からフィーダ40の前方、すなわち前進方向に延びる弾性部材からなる遮蔽部材45が配設されている。したがって、図16に示すように、遮蔽部材15が第2の原料粉末Mの移動を防止して、漏出した第2の原料粉末Mが第1の粉箱11の進行方向前面にまで分布することを防止する。
【0034】
このため、第1の粉箱11の前面に第2の原料粉末Mが存在しないので、フィーダ40を用いて、図1図7に示す工程に従って再び成形工程が開始され、特に図2に示すように、フィーダ40を前進させて、ダイ20、コアロッド21及び下パンチ30で画定されるキャビティCに、第1の原料粉箱11から第1の原料粉末Mを充填する際に、キャビティC内に充填すべき第1の原料粉末Mに対する第2の原料粉末Mの混入が防止されることとなる。
【0035】
遮蔽部材45の長さは、漏出する第2の原料粉末Mの移動を防止できるものであればかまわないが、遮蔽部材45の前端は、フィーダ本体15の前端部から形成すると、第2の原料粉末Mの移動を確実に防止できるため好ましい。
【0036】
また、第2の原料粉末Mの漏出は、第2の粉箱12の周囲に形成される第2のシール部材14の前面から生じるから、遮蔽部材45の後端は、少なくとも第2のシール部材14の前面と同じ距離に配置する。但し、遮蔽部材45の後端を第2のシール部材14のR部の位置を超えて後ろまで延長して配置しても、それ以上の漏出粉の遮蔽効果は得られず、かつ遮蔽部材45の長さが長くなることによるフィーダ駆動時の抵抗が大きくなることから、遮蔽部材45の後端は、第2の粉箱12の前面の位置までとするのが好ましい。
【0037】
なお、本実施形態のフィーダ40は、第1の粉箱11の下面に、その外周面に沿って配設された第1の弾性部材からなる第1のシール部材13が配設され、第2の粉箱12の下面には、その外周面に沿って配設された第2の弾性部材からなる第2のシール部材14が配設されている。したがって、第1の粉箱11及び第2の粉箱12から、それぞれ第1の原料粉末M及び第2の原料粉末Mを供給する際の粉漏れを防止することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
図17は、本実施形態の二層成形用フィーダの概略構成を示す平面図であり、図18及び図19は、図17に示す二層成形用フィーダを用いて二層成形を実施した場合の作用効果について説明するための図である。なお、図1〜16に示す構成要素と類似あるいは同一の構成要素については同一の符号を用いている。
【0039】
本実施形態の二層成形用フィーダ50は、遮蔽部材45の、第2の粉箱12側の遮蔽部材45の近傍に、吸引手段に接続する吸引口55が形成されている点を除き、第1の実施形態の二層形成用フィーダ40と同様の構成を採る。
【0040】
第1の実施形態の二層形成用フィーダ40の、図15及び16に関連して説明したように、フィーダ40を後退して退避させる場合、キャビティCに充填された第2の原料粉末Mを掻き出すこととなり、フィーダ10の下面とダイ20の上面の隙間に第2の原料粉末Mが漏出し、遮蔽部材45によって、フィーダ40の下面とダイ20の上面の隙間であって、第1の粉箱11の前面に第2の原料粉末Mが分布することとなる。
【0041】
しかしながら、第1の粉箱11の前面の分布した第2の原料粉末Mは、図1図7に示す工程を繰り返すことによって蓄積してしまう場合がある。
【0042】
本実施形態の二層成形フィーダ50は、図17に示すように、遮蔽部材45の第2の粉箱12側で、かつ遮蔽部材45の近傍に吸引口55が形成されているので、吸引口55を図示しない吸引手段に接続して、遮蔽部材45で移動を防止した漏出粉末を吸引口55により吸引して回収、除去することができる(図18参照)。
【0043】
その結果、本実施形態のフィーダ50においては、図19に示すように、漏出した第2の原料粉末Mが吸引口55より吸引され漏出粉末の蓄積が生じない。また、吸引されない原料粉末は遮蔽部材45により第1の粉箱11前面への移動が防止されるとともに、このような吸引されなかった漏出粉末は、遮蔽部材15の第2の粉箱12側に蓄積してゆくことにより吸引口16に吸引されて除去される。
【0044】
このように、第2の実施形態におけるフィーダ50においては、より確実に漏出粉末の混入を防止できるとともに、長期にわたり連続して成形工程を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の二層成形用フィーダによれば、混入を防止して二層成形を行うことができるため、例えば二層バルブシート等の製品の上面側と下面側に異なる組成の材料を組み合わせた各種焼結部品の製造に利用できる。
【符号の説明】
【0046】
10,40,50 二層形成用フィーダ
11 第1の粉箱(第1の原料粉末を収容する空間)
12 第2の粉箱(第2の原料粉末を収容する空間)
13 第1のシール部材
14 第2のシール部材
15 フィーダ本体
20 ダイ
21 コアロッド
30 下パンチ
40 上パンチ
45 遮蔽部材
55 吸引口
第1の原料粉末
第2の原料粉末
,C キャビティ
図1
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