(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を説明する。尚、本明細書において、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0028】
<金属含有共重合体>
本発明の金属含有共重合体は、前記一般式(1)で示される構造および一般式(2)で示される構造から選ばれる構造を1つ以上有する2価金属含有共重合体である。かかる構成を有する金属含有共重合体を用いた防汚塗料用組成物を含む防汚塗料は、得られる塗膜に高い加水分解性を付与することができる。さらに、この塗膜は、耐クラック性にも優れ、優れた防汚効果を長期間に亘って発揮させることが可能となる。得られる塗膜に長期間の防汚性、耐クラック性を付与する観点から、金属含有共重合体は一般式(1)で示される構造を有することが好ましい。
【0029】
また、一般式(1)で示される構造は、前記一般式(3)で示される構造、一般式(4)で示される構造、および一般式(5)で示される構造の群から選ばれる構造であることが好ましい。
【0030】
前記構造式中に含まれる2価金属としては、必要に応じて適宜選択することができるが、金属含有共重合体の水への溶解性の観点から、亜鉛、銅、マグネシウムおよびカルシウムの群から選ばれる1種類以上であることが好ましく、塗膜の耐水性の観点から、亜鉛および銅が特に好ましい。
【0031】
金属含有共重合体中における、前記一般式(1)または一般式(2)で示される構造の含有量は、好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上である。1質量%以上であれば、得られた塗膜の加水分解性が良好となり、さらには耐クラック性が良好となり、優れた防汚効果を長期間に亘って発揮できる。
【0032】
<金属含有共重合体の製造方法>
本発明の2価金属を含有する共重合体は、例えば以下の(1)または(2)の方法によって得ることができる。
(1)2価金属含有重合性単量体(a)と2価金属非含有重合性単量体(b)とを重合する「製造方法1」。
(2)酸基含有共重合体(c)に対して、金属化合物と必要に応じて一塩基有機酸を反応させるか、または、酸基含有共重合体(c)に対して、一塩基有機酸の金属エステルを用いエステル交換させる「製造方法2」。
【0033】
[2価金属含有共重合体の製造方法1]
先ず、2価金属含有重合性単量体(a)と2価金属非含有重合性単量体(b)との重合によって得られる「製造方法1」について説明する。
【0034】
2価金属含有重合性単量体(a)としては、前記一般式(6)で示される重合性単量体(a6)、一般式(7)で示される重合性単量体(a7)、一般式(8)で示される重合性単量体(a8)、一般式(9)で示される重合性単量体(a9)、および一般式(10)で示される重合性単量体(a10)の群から選ばれる重合性単量体を1種以上含有する単量体または単量体混合物が挙げられる。塗膜に長期間の防汚性、および耐クラック性が付与できることから、重合性単量体(a6)、(a7)、および(a8)が特に好ましい。
【0035】
〔重合性単量体(a6)〕
前記一般式(6)で示される重合性単量体(a6)の具体例として以下のものが挙げられる。ジ(3−アクリロイルオキシプロピオン酸)亜鉛、ジ(3−アクリロイルオキシプロピオン酸)銅、ジ(3−アクリロイルオキシプロピオン酸)マグネシウム、ジ(3−メタクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸)亜鉛、ジ(3−メタクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸)銅、ジ(3−メタクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸)マグネシウム、(メタ)アクリル酸3−アクリロイルオキシプロピオン酸亜鉛、(メタ)アクリル酸3−アクリロイルオキシプロピオン酸銅、(メタ)アクリル酸3−アクリロイルオキシプロピオン酸マグネシウム、(メタ)アクリル酸3−メタクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸亜鉛、(メタ)アクリル酸3−メタクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸銅、および、(メタ)アクリル酸3−メタクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸マグネシウム等。
【0036】
〔重合性単量体(a7)〕
前記一般式(7)で示される重合性単量体(a7)の具体例として以下のものが挙げられる。コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル3−アクリロイルオキシプロピオン酸亜鉛、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル3−アクリロイルオキシプロピオン酸銅、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル3−アクリロイルオキシプロピオン酸マグネシウム、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル3−メタクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸亜鉛、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル3−メタクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸銅、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル3−メタクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸マグネシウム、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル3−アクリロイルオキシプロピオン酸亜鉛、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル3−アクリロイルオキシプロピオン酸銅、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル3−アクリロイルオキシプロピオン酸マグネシウム、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル3−メタクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸亜鉛、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル3−メタクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸銅、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル3−メタクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸マグネシム、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル3−アクリロイルオキシプロピオン酸亜鉛、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル3−アクリロイルオキシプロピオン酸銅、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル3−アクリロイルオキシプロピオン酸マグネシウム、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル3−メタクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸亜鉛、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル3−メタクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸銅、およびヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル3−メタクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸マグネシウム等。
【0037】
〔重合性単量体(a8)〕
前記一般式(8)で示される重合性単量体(a8)の具体例として以下のものが挙げられる。3−(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸(バーサチック酸)亜鉛、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸(オクチル酸)亜鉛、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸(ステアリン酸)亜鉛、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸(アビチエン酸)亜鉛、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸(バーサチック酸)銅、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸(オクチル酸)銅、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸(ステアリン酸)銅、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸(アビチエン酸)銅、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸(バーサチック酸)マグネシウム、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸(オクチル酸)マグネシウム、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸(ステアリン酸)マグネシウム、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸(アビチエン酸)マグネシウム、3−(メタ)アクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸(バーサチック酸)亜鉛、3−(メタ)アクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸(オクチル酸)亜鉛、3−(メタ)アクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸(ステアリン酸)亜鉛、3−(メタ)アクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸(アビチエン酸)亜鉛、3−(メタ)アクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸(バーサチック酸)銅、3−(メタ)アクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸(オクチル酸)銅、3−(メタ)アクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸(ステアリン酸)銅、3−(メタ)アクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸(アビチエン酸)銅、3−(メタ)アクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸(バーサチック酸)マグネシウム、3−(メタ)アクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸(オクチル酸)マグネシウム、3−(メタ)アクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸(ステアリン酸)マグネシウム、および3−(メタ)アクリロイルオキシ2−メチルプロピオン酸(アビチエン酸)マグネシウム等。
【0038】
〔重合性単量体(a9)〕
前記一般式(9)で示される重合性単量体(a9)の具体例として以下のものが挙げられる。ジ(コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)亜鉛、ジ(コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)銅、ジ(コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)マグネシウム、ジ(フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)亜鉛、ジ(フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)銅、ジ(フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)マグネシウム、ジ(ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)亜鉛、ジ(ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)銅、ジ(ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)マグネシウム、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(メタ)アクリル酸亜鉛、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(メタ)アクリル酸銅、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(メタ)アクリル酸マグネシウム、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(メタ)アクリル酸亜鉛、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(メタ)アクリル酸銅、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(メタ)アクリル酸マグネシウム、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(メタ)アクリル酸亜鉛、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(メタ)アクリル酸銅、およびヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(メタ)アクリル酸マグネシウム等。
【0039】
〔重合性単量体(a10)〕
前記一般式(10)で示される重合性単量体(a10)の具体例として以下のものが挙げられる。コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(バーサチック酸)亜鉛、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(オクチル酸)亜鉛、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(ステアリン酸)亜鉛、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(アビチエン酸)亜鉛、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(バーサチック酸)銅、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(オクチル酸)銅、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(ステアリン酸)銅、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(アビチエン酸)銅、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(バーサチック酸)マグネシウム、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(オクチル酸)マグネシウム、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(ステアリン酸)マグネシウム、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(アビチエン酸)マグネシウム、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(バーサチック酸)亜鉛、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(オクチル酸)亜鉛、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(ステアリン酸)亜鉛、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(アビチエン酸)亜鉛、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(バーサチック酸)銅、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(オクチル酸)銅、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(ステアリン酸)銅、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(アビチエン酸)銅、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(バーサチック酸)マグネシウム、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(オクチル酸)マグネシウム、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(ステアリン酸)マグネシウム、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(アビチエン酸)マグネシウム、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(バーサチック酸)亜鉛、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(オクチル酸)亜鉛、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(ステアリン酸)亜鉛、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(アビチエン酸)亜鉛、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(バーサチック酸)銅、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(オクチル酸)銅、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(ステアリン酸)銅、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(アビチエン酸)銅、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(バーサチック酸)マグネシウム、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(オクチル酸)マグネシウム、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(ステアリン酸)マグネシウム、およびヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル(アビチエン酸)マグネシウム等。
【0040】
[2価金属含有重合性単量体(a)の製造方法]
重合性単量体(a6)、(a7)および(a9)は、例えば、無機金属化合物とカルボキシル基含有重合性単量体とを反応させる方法によって製造できる。また、重合性単量体(a8)および(a10)は、例えば、無機金属化合物と、カルボキシル基含有重合性単量体およびカルボキシル基含有非重合性化合物(以下、両者を併せて「カルボキシル基含有化合物」という場合がある。)とを反応させる方法によって製造できる。尚、ここで「重合性単量体」とは重合性不飽和2重結合を有する化合物を意味し、「非重合性化合物」とは重合性不飽和2重結合を有しない化合物を意味する。
【0041】
反応温度は、カルボキシル基含有重合性単量体が重合しない温度で行えばよく、120℃以下が好ましい。反応方法としては、無機金属化合物とカルボキシル基含有化合物とをアルコール系化合物を含有する有機溶剤中で反応させる方法が好ましい。この方法により、2価金属含有重合性単量体(a)と2価金属非含有重合性単量体(b)との相溶性が良好となり、金属含有共重合体を得るための重合が容易となる。有機溶剤中に含有されるアルコール系化合物としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。
【0042】
無機金属化合物としては、酸化マグネシウム、酸化銅、酸化亜鉛等の金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化銅、水酸化亜鉛等の金属水酸化物;塩化マグネシウム、塩化銅、塩化亜鉛等の金属塩化物等が挙げられる。
【0043】
カルボキシル基含有重合性単量体としては、前記一般式(6)、(7)、(8)、(9)および(10)で示される金属含有重合性単量体の群から選ばれる金属含有重合性単量体が1種以上生成されるように選べばよく、例えば以下のものが挙げられる。2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシプロピルメタクリレート、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、(メタ)アクリル酸、及び、β―CEA(ダイセル・サイテック(株)製)等。得られる塗膜の防汚性が良好な点から、2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシプロピルメタクリレート、およびβ―CEA(ダイセル・サイテック(株)製)が好ましい。
【0044】
カルボキシル基含有非重合性化合物としては、例えば以下のものが挙げられる。酢酸、モノクロル酢酸、モノフルオロ酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、カプリン酸、バーサチック酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、クレソチン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸、リシノール酸、リシノエライジン酸、ブラシジン酸、エルカ酸、α−ナフトエ酸、β−ナフトエ酸、安息香酸、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、キノリンカルボン酸、ニトロ安息香酸、ニトロナフタレンカルボン酸、プルビン酸、ナフテン酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、水添アビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、レボピマル酸、デキストロピマル酸、およびサンダラコピマル酸等。得られる塗膜の耐クラック性および耐剥離性等の物性の観点から、脂肪酸系一塩基酸が好ましい。
【0045】
無機金属化合物中の金属原子とカルボキシル基含有重合性単量体との比率は、カルボキシル基含有重合性単量体1モルに対して金属原子が0.3モル以上2.5モル以下であることが好ましい。金属原子が0.3モル以上であれば、金属と未反応のカルボキシル基の量が少なくなり、塗膜の耐水性が良好となりやすい。金属原子が2.5モル以下であれば反応用の原料混合物中の重合性単量体の量が多くなることから、生成される金属含有重合性単量体の量が多くなり、結果的に長期間に亘って塗膜の溶解が継続され易くなる。
【0046】
無機金属化合物中の金属原子とカルボキシル基含有化合物との比率は、カルボキシル基含有化合物1モルに対して、金属原子が0.6モル以下であることが好ましい。金属原子が0.6モル以下であればカルボキシル基と未反応の金属原子が少なくなり、2価金属含有重合性単量体(a)と2価金属非含有重合性単量体(b)との混合物の透明性が良好となりやすい。
【0047】
[2価金属非含有重合性単量体(b)]
本発明において、2価金属非含有重合性単量体(b)とは、2価金属を含有しない重合性単量体であり、重合性不飽和2重結合を有する単量体であれば特に限定されず、例えば以下のものが挙げられる。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、γ−ブチロラクトンまたはε−カプロラクトン等との付加物;(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ソルビン酸等のカルボキシル基含有単量体;無水イタコン酸、無水マレイン酸等のカルボン酸無水物基含有単量体;イタコン酸モノアルキル、マレイン酸モノアルキル等のジカルボン酸モノエステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体の二量体または三量体;グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基を複数有する(メタ)アクリル酸エステル単量体;ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等の第一級および第二級アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系単量体;アリルグリコール、ポリエチレングリコールアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリプロピレングリコールアリルエーテル、メトキシポリプロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリプロピレングリコールアリルエーテル等のアリル基含有単量体;並びに、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル酸エステル単量体等。これらの単量体は単独であるいは2種類以上で使用される。
【0048】
2価金属含有重合性単量体(a)と、2価金属非含有重合性単量体(b)と重合させる方法として、例えば、公知の溶液重合法を用いることができる。
【0049】
2価金属含有重合性単量体(a)を使用する場合、重合時のカレットの生成を抑制するために連鎖移動剤を使用することが特に好ましい。連鎖移動剤と2価金属含有重合性単量体(a)との相溶性の点から、連鎖移動剤としては、メルカプタン以外の連鎖移動剤が好ましく、スチレンダイマー等が好ましい。溶剤としては、既知の有機溶媒を使用することができ、例えば以下のものが挙げられる。キシレン、プピレングリコールメチルエーテル、トルエン、メチルイソブチルケトン、酢酸n−ブチル、およびn−ブタノール等。溶剤は1種を用いても、2種以上を併用しても良い。重合温度は、特に限定されず、例えば60〜180℃程度である。重合時間は、特に限定されず、例えば2〜14時間程度である。
【0050】
重合原料としての、2価金属含有重合性単量体(a)と2価金属非含有重合性単量体(b)との仕込み量の割合は、特に限定されず、5:95〜70:30(質量%)程度である。
【0051】
[2価金属含有共重合体の製造方法2]
「製造方法2」は、酸基含有共重合体(c)に対して、金属化合物と必要に応じて一塩基有機酸を反応させる方法、または、酸基含有共重合体(c)に対して、一塩基有機酸の金属エステルを用いエステル交換させる製造方法である。
【0052】
酸基含有共重合体(c)の製造方法としては、例えば、酸基含有重合性単量体を他の重合性単量体と共重合する方法、水酸基含有重合性単量体を他の重合性単量体と共重合した後に、水酸基部分に酸無水物等を反応させて酸基を導入させる方法等が挙げられる。
【0053】
酸基含有重合性単量体としては、一般式(1)または(2)で表される構造を有する2価金属含有共重合体が得られるように選べばよく、例えば以下のものが挙げられる。2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシプロピルメタクリレート、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、(メタ)アクリル酸、およびβ―CEA(ダイセル(株)・サイテック製)等。得られる塗膜の防汚性が良好な点から、2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシプロピルメタクリレート、β―CEA(ダイセル・サイテック(株)製)が好ましい。
【0054】
水酸基含有重合性単量体としては、例えば以下のものが挙げられる。2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;並びに、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、γ−ブチロラクトンまたはε−カプロラクトン等との付加物等。
【0055】
水酸基部分に反応させる酸無水物としては、例えば以下のものが挙げられる。無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、およびコハク酸などの2塩基酸無水物等。
【0056】
酸基含有共重合体(c)の製造方法としては、例えば、公知の溶液重合法を用いることができる。重合時の溶剤としては、既知の有機溶媒を使用することができ、例えば以下のものが挙げられる。キシレン、プピレングリコールメチルエーテル、トルエン、メチルイソブチルケトン、酢酸n−ブチル、およびn−ブタノール等。溶剤は1種を用いても、2種以上を併用しても良い。重合温度は、特に限定されず、例えば60〜180℃程度である。重合時間は、特に限定されず、例えば2〜14時間程度である。
【0057】
酸基含有共重合体(c)に反応させる金属化合物としては、酸化マグネシウム、酸化銅、酸化亜鉛等の金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化銅、水酸化亜鉛等の金属水酸化物;塩化マグネシウム、塩化銅、塩化亜鉛等の金属塩化物等が挙げられる。
【0058】
反応には必要に応じて一塩基有機酸を用いることが出来る。一塩基有機酸としては、以下の化合物が挙げられる。酢酸、モノクロル酢酸、モノフルオロ酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、カプリン酸、バーサチック酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、クレソチン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸、リシノール酸、リシノエライジン酸、ブラシジン酸、エルカ酸、α−ナフトエ酸、β−ナフトエ酸、安息香酸、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、キノリンカルボン酸、ニトロ安息香酸、ニトロナフタレンカルボン酸、プルビン酸、ナフテン酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、水添アビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、レボピマル酸、デキストロピマル酸、およびサンダラコピマル酸等。得られる塗膜の耐クラック性および耐剥離性等の物性の観点から、脂肪酸系一塩基酸が好ましい。
【0059】
「製造方法2」におけるエステル交換法は、酸基含有共重合体(c)と一塩基有機酸の金属エステルとを用いる方法である。一塩基有機酸の金属エステルとしては、前述の一塩基有機酸とマグネシウム、銅、亜鉛等の金属から構成される化合物が使用でき、例えば以下のものが挙げられる。酢酸銅、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム、プロピオン酸銅、プロピオン酸亜鉛、およびプロピオン酸マグネシウム等。
【0060】
エステル交換の際に用いられる溶剤としては、例えば以下の有機溶媒が挙げられる。キシレン、プピレングリコールメチルエーテル、トルエン、メチルイソブチルケトン、酢酸n−ブチル、およびn−ブタノール等。溶剤は1種を用いても、2種以上を併用しても良い。反応温度は、特に限定されないが、金属エステルの分解温度以下で行うことが好ましい。
【0061】
〔金属含有量〕
前記の「製造方法1」または「製造方法2」においては、金属含有共重合体中の金属含有量が2質量%以上20質量%以下となるように、2価金属含有重合性単量体(a)または酸基含有共重合体(c)等の使用量を設定することが好ましい。金属含有共重合体中の金属含有量が2質量%以上である場合は、塗膜の加水分解性が良好となり、防汚性能が良好となる。また20質量%以下である場合は、塗膜の耐クラック性および耐水性が良好となる。塗膜の防汚性、耐クラック性、および耐水性を考慮すると、金属含有量は4質量%以上15質量%以下であることが特に好ましい。
【0062】
〔カルボキシル基含有重合性単量体単位の含有量〕
また金属含有共重合体中においては、前記一般式(1)または一般式(2)で示される構造が1種以上生成するように選ばれたカルボキシル基含有重合性単量体単位の含有量は、好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上である。1質量%以上であれば、得られた塗膜の加水分解性が良好となり、さらには耐クラック性が良好となり、優れた防汚効果を長期間に亘って発揮できる。尚、カルボキシル基含有重合性単量体単位の含有量は、下記計算式より算出される量である。
【0063】
【数1】
<防汚塗料用組成物>
本発明の防汚塗料用組成物は、前記金属含有共重合体及びこの共重合体の製造の際に使用される溶剤を含む防汚塗料用組成物である。本発明の防汚塗料用組成物は、前記金属含有共重合体を含有することによって、形成される塗膜に優れた防汚性能を保持させることができる。本発明の防汚塗料用組成物は、さらに、防汚薬剤を配合することによって、防汚性能を向上させることができる。
【0064】
<防汚塗料>
本発明の防汚塗料は、本発明の防汚塗料用組成物に、防汚薬剤、希釈のための溶剤、および顔料等の添加剤を配合することによって調製することができる。本発明の防汚塗料が、防汚薬剤および顔料成分等を含む場合における、防汚塗料中の金属含有共重合体の割合は、樹脂成分として通常15質量%(固形分換算)以上であることが好ましい。この配合量が15質量%以上であれば、防汚塗料中における金属含有共重合体の溶解性が良好であって、塗膜の防汚性および耐クラック性が良好である。
【0065】
防汚薬剤としては、要求性能に応じて適宜選択して使用することができ、例えば以下のものが挙げられる。亜酸化銅、チオシアン銅、銅粉末等の銅系防汚剤;鉛、亜鉛、ニッケル等の金属化合物;ジフェニルアミン等のアミン誘導体;ニトリル化合物、ベンゾチアゾール系化合物、マレイミド系化合物、ピリジン系化合物等。これらは、単独あるいは複数で使用することができる。
【0066】
特に(社)日本造船工業会等によって、調査研究の対象とされ選定されたものが好ましく、例えば以下のものが挙げられる。マンガニーズエチレンビスジチオカーバメイト、ジンクジメチルジチオカーバメート、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、ジンクエチレンビスジチオカーバメイ−ト、ロダン銅、4,5−ジクロロ−2−nオクチル−3(2H)イソチアゾロン、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N’−ジメチル−N’−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩、テトラメチルチウラムジサルファイド、Cu−10%Ni固溶合金、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、3−ヨード−2−プロピニールブチルカーバメイ−ト、ジヨードメチルパラトリスルホン、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート、フェニル(ビスピリジル)ビスマスジクロライド、2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾール、およびピリジン−トリフェニルボラン等。
【0067】
本発明の防汚塗料には、塗膜表面に潤滑性を付与し、生物の付着を防止する目的でジメチルポリシロキサンおよびシリコーンオイル等のシリコン化合物や、フッ化炭素等の含フッ素化合物等も配合することができる。さらに、本発明の防汚塗料には、体質顔料、着色顔料、可塑剤、各種塗料用添加剤、その他の樹脂等を必要に応じて配合することができる。
【0068】
本発明の防汚塗料に用いられる希釈のための溶剤としては、キシレン、プロピレングリコールメチルエーテル、トルエン、メチルイソブチルケトン、酢酸n−ブチル、およびn−ブタノール等の有機溶剤を挙げることができる。有機溶剤は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
【0069】
<塗膜を有する物品>
本発明の防汚塗料の塗膜を有する物品としては、船舶、各種漁網、発電所導水管、オイルフェンス、橋梁、ブイ、および潜水艦等が挙げられる。
【0070】
本発明の防汚塗料を用いた塗膜の形成は、例えば以下の(1)または(2)の方法で行われる。
(1)防汚塗料を船舶、各種漁網、港湾施設、オイルフェンス、橋梁、海底基地等の水中構造物等の基材表面に直接に塗布する。
(2)基材にウオッシュプライマー、塩化ゴム系、エポキシ系等のプライマー、および中塗り塗料等を塗布し、これによって得られた塗膜の上に、刷毛塗り、吹き付け塗り、ローラー塗り、沈漬塗り等の手段で防汚塗料を塗布する。
【0071】
塗布量は、一般的には乾燥塗膜の厚みが50〜400μmとなる量である。塗膜の乾燥は一般的には室温で行われるが、加熱乾燥を行っても差し支えない。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳しく説明する。また、実施例に先立って、各種評価方法、並びに、金属含有共重合体の製造例1〜20、およびワニスの製造例28〜53を説明する。尚、実施例中の「部」は「質量部」を表す。また、実施例において使用した化合物等の略号を表1に示す。
【0073】
<評価方法>
[1.ワニスの固形分]
試料約0.5gを105℃で2時間加熱乾燥した後、その残分の質量を測定し、下記の計算式より算出した。
【0074】
【数2】
[2.ワニスの固形分の酸価]
ワニスの固形分1gを中和するのに要した水酸化カリウムのmg数を滴定にて測定した。得られた値(mgKOH/g)をワニスの固形分の酸価とした。
【0075】
[3.塗膜の消耗度試験]
縦50mm、横50mm、厚み2mmの硬質塩化ビニル製の板の上に厚み約300μmの塗膜を形成し、得られた試験片を海水中に設置した回転ドラムに取り付けた。そして、周速7.7m/s(15ノット)で回転させて、3ヵ月後、6ヵ月後および12ヶ月後の消耗膜厚を測定した。
【0076】
[4.塗膜の防汚性試験]
あらかじめ防錆塗料が塗布されているサンドブラスト鋼製の板の上に厚み約300μmの塗膜を形成し、得られた試験片を広島県広島湾内で12ヶ月間静置浸漬し、6ヵ月後、および12ヶ月後の付着生物の付着面積(%)を調べた。判定は以下の基準で行った。
A:12ヶ月後の付着生物の付着面積が0%以上10%未満である。
B:12ヶ月後の付着生物の付着面積が10%以上40%未満である。
C:12ヶ月後の付着生物の付着面積が40%以上80%未満である。
D:12ヶ月後の付着生物の付着面積が80%以上100%以下である。
【0077】
[5.塗膜の耐クラック性試験]
あらかじめ防錆塗料が塗布されているサンドブラスト鋼製の板の上に厚み約300μmの塗膜を形成し、得られた試験片を滅菌濾過した海水中に20℃で、6ヶ月間および12ヶ月間浸漬した後、20℃で1週間乾燥した。そして、塗膜表面を観察した。評価は以下の基準で行った。
A:クラックおよび剥離が全く観察されない。
B:クラックがわずかに観察される。
C:クラックおよび剥離が一部に観察される。
D:クラックおよび剥離が全面に観察される。
【0078】
<製造例>
[製造例1:金属含有重合性単量体(a)の混合物M1の製造]
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコ内に、初期溶剤としてのPGM(プロピレングリコールメチルエーテル)142部および酸化亜鉛41部を仕込み、撹拌しながらフラスコ内の液体の温度を75℃に昇温した。一方、滴下ロート内に2−カルボキシエチルアクリレート144部および水5部からなる混合物(反応原料)を入れた。この混合物を、単位時間当たりの添加量を一定にして、3時間かけてフラスコ内に滴下した。さらにフラスコ内の液体を2時間撹拌した後、PGM10部を添加して透明な金属含有重合性単量体(a)の混合物M1を得た。混合物M1の固形分は51.4質量%であった。混合物M1の金属含有量は9.6質量%であった。尚、混合物の金属含有量は、下記の計算式より算出した。
【0079】
【数3】
[製造例2〜20:金属含有性単量体(a)の混合物M2〜M20の製造]
四つ口フラスコ内の初期溶剤の使用量並びに滴下ロート内の反応原料の種類と使用量を表2または表3に示す条件に変更したこと以外は製造例1と同様にして、金属含有性単量体の混合物M2〜M20を製造した。混合物M2〜M20の固形分および金属含有量(計算値)を表2または表3に示す。
【0080】
[製造例21:ワニスC1の製造]
冷却器、温度計、滴下タンクおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコ内に、キシレン66.4部、PGM(プロピレングリコールメチルエーテル)15部、エチルアクリレート4部を仕込み、撹拌しながらフラスコ内の液体の温度を100℃に昇温した。一方、メチルメタクリレート30部、エチルアクリレート22.7部、n−ブチルアクリレート20部、混合物M1:53.1部(固形分27.3部)、キシレン10部、連鎖移動剤(日本油脂(株)製ノフマーMSD)1部、AIBN2部、AMBN8部からなる透明な混合物を調製して滴下タンク内に入れた。この滴下タンク内の混合物を、単位時間当たりの添加量を一定にして、6時間かけて四つ口フラスコ内に滴下した。滴下終了後、さらにt−ブチルパーオクトエート0.5部とキシレン15部の混合物を30分間かけて四つ口フラスコ内に滴下し、さらに1時間30分間、撹拌した。その後、300メッシュのナイロンメッシュを用いて四つ口フラスコ内の混合物をろ過して、ガードナー粘度QRを有する不溶解物のないワニスC1を得た。ワニスC1の固形分は46.2質量%であり、共重合体中の金属含有量は5.1質量%であった。尚、共重合体中の金属含有量は、下記の計算式より算出した。
【0081】
【数4】
[製造例22〜46:ワニスC2〜C26の製造]
初期溶剤の使用量並びに滴下タンク内の材料の種類と使用量を表4または表5に示す条件に変更したこと以外は製造例21と同様にしてワニスC2〜C26を製造した。各ワニスの固形分および共重合体中の金属含有量(計算値)を表4または表5に示す。
【0082】
[製造例47:ワニスC27の製造]
〔反応1〕
冷却器、温度計、滴下タンクおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコ内に、初期溶剤として、キシレン60部、PGM(プロピレングリコールメチルエーテル)15部を仕込み、撹拌しながらフラスコ内の液体の温度を100℃に昇温した。一方、表6に示す種類と量の酸基含有重合性単量体、他の重合性単量体、および重合開始剤からなる透明な混合物を調製して滴下タンク内に入れた。この滴下タンク内の混合物を、単位時間当たりの添加量を一定にして、4時間かけて四つ口フラスコ内に滴下した。滴下終了後さらに、t−ブチルパーオクトエート0.5部とキシレン25部の混合物を四つ口フラスコ内に30分間かけて滴下し、さらに1時間30分撹拌してワニスを得た。このフラスコ内からワニス4gを取り出し、固形分および固形分の酸価を測定した。評価結果を表6に示す。
【0083】
〔反応2〕
次いで、上記フラスコ内に、表6に示す種類と量の金属化合物、有機酸、および溶剤(キシレン)の混合物を投入した。フラスコ内の液体の温度をリフラックス温度まで昇温し、フラスコから水および溶剤の混合溶液を除去し、除去した混合溶液と同量のキシレンを補充しながら反応を18時間継続した。その後、300メッシュのナイロンメッシュを用いてフラスコ内の混合物をろ過して、ガードナー粘度ZZ1を有する不溶解物のないワニスC27を得た。ワニスC27の固形分は45.9質量%であり、共重合体中の金属含有量(計算値)は7.7質量%であった。
【0084】
[製造例48〜53:ワニスC28〜C33の製造]
〔反応1〕
初期溶剤の使用量並びに滴下タンク内の混合物の材料の種類と使用量を表6に示す条件に変更したこと以外は製造例47と同様にしてワニスを得た。各ワニス(反応1の生成物)の評価結果を表6に示す。
【0085】
〔反応2〕
次いで、上記の各ワニスを含む各フラスコ内に、表6に示す種類と量の金属化合物、有機酸、および溶剤(キシレン)の各混合物を投入し、製造例47と同様にして、ワニスC28〜C33を得た。ワニスの評価結果を表6に示す。尚、製造例50のワニス30は僅かに濁りを有していたが、その他のワニスは不溶解物のないワニスであった。
【0086】
[実施例1]
下記の5種類の材料を混合し防汚塗料を調製した。尚、適量のキシレンを加えて、ストマー粘度計(25℃)にて80〜90KUとなるように粘度を調整した。
・ワニスC1:40部、
・亜酸化銅:50部、
・酸化鉄:1.5部、
・粉末状シリカ:3部、
・ディスパロン4200−20(楠本化成(株)製、沈降防止剤):1部。
【0087】
得られた防汚塗料を乾燥膜厚が約300μmになるように所定の基板上に塗布し室温で1週間乾燥させた。得られた塗膜について消耗度試験、防汚性試験、および耐クラック性試験を行なった。評価結果を表7に示す。
【0088】
[実施例2〜4、6〜14、および16〜28]
材料の種類を表7〜表9に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様にして防汚塗料を調製し、基板上に塗布して塗膜を得た。評価結果を表7〜表9に示す。
【0089】
[実施例5]
下記の6種類の材料を混合し防汚塗料を調製した。尚、適量のキシレンを加えて、ストマー粘度計(25℃)にて80〜90KUとなるように粘度を調整した。
・ワニスC4:40部、
・ロダン銅:40部、
・2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩:3部、
・酸化チタン:10部、
・粉末状シリカ:3部、
・ディスパロン4200−20:1部。
【0090】
得られた防汚塗料を実施例1と同様にして基板上に塗布し、塗膜を得た。評価結果を表7に示す。
【0091】
[実施例15]
材料の種類を表7に示す条件としたこと以外は、実施例5と同様にして防汚塗料を調製し、基板上に塗布して塗膜を得た。評価結果を表8に示す。
【0092】
[比較例1〜6]
材料の種類を表7〜表9に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様にして塗料を調製し、基板上に塗布して塗膜を得た。評価結果を表7〜表9に示す。比較例1〜6では、金属含有共重合体中に本発明の構造が含まれてないため、塗膜消耗度が不十分であるか、または、クラック剥離がランクDであり、結果的に十分な防汚性が得られなかった。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
【表7】
【0100】
【表8】
【0101】
【表9】