(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オレフィン系エラストマーが、エチレン−α−オレフィン共重合エラストマー及びエチレン−プロピレン−ジエン共重合エラストマーから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の、巻回された蓄電要素の巻き止め用の粘着フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の有機電解液系蓄電デバイス用の粘着フィルムは、架橋環状オレフィン重合体とエラストマーとを含む樹脂組成物からなる基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成されたアクリル系粘着剤からなる粘着層とを有する粘着フィルムである。
【0011】
まず、基材フィルムを構成する樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0012】
(架橋環状オレフィン重合体)
本発明で用いられる架橋環状オレフィン重合体は、環状オレフィンモノマーの重合により得られる重合体(環状オレフィン重合体)であって、三次元架橋構造を有するものである。本発明で用いられる架橋環状オレフィン重合体は、1,2−ジクロロベンゼンに、23℃で24時間浸漬させ、得られた溶液を80メッシュの金網でろ過したときの不溶分で表される架橋度が、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上である。架橋度が低すぎると、所望の耐熱性や機械的強度が発現できない場合がある。
【0013】
架橋環状オレフィン重合体の製造に用いられる環状オレフィンモノマーは、炭素原子で形成される環構造を有し、該環中に炭素−炭素二重結合を有する化合物である。その例として、ノルボルネン系モノマー及び単環環状オレフィンなどが挙げられるが、ノルボルネン系モノマーが好ましい。ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環を含むモノマーであり、たとえば、ノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類、テトラシクロドデセン類などが挙げられる。これらは、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基、アリール基などの炭化水素基や、カルボキシル基又は酸無水物基などの極性基が置換基として含まれていてもよい。
【0014】
また、ノルボルネン系モノマーとしては、ノルボルネン環の二重結合以外に、さらに二重結合を有していてもよい。これらの中でも、得られる粘着フィルムの耐電解液性を向上させることができるという点より、非極性の、すなわち、極性基を有さず、炭素原子と水素原子のみで構成されるノルボルネン系モノマーが好ましい。
【0015】
非極性のノルボルネン系モノマーとしては、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ−8−エンとも言う。)などの非極性のジシクロペンタジエン類;
【0016】
テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−メチルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−エチルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−シクロヘキシルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−シクロペンチルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−メチレンテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデンテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−ビニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−プロペニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−シクロヘキセニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−シクロペンテニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−フェニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エンなどの非極性のテトラシクロドデセン類;
【0017】
2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシル−2−ノルボルネン、5−シクロペンチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−シクロヘキセニル−2−ノルボルネン、5−シクロペンテニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、テトラシクロ[9.2.1.0
2,10.0
3,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンとも言う。)、テトラシクロ[10.2.1.0
2,11.0
4,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9,9a,10−ヘキサヒドロアントラセンとも言う。)などの非極性のノルボルネン類;
【0018】
トリシクロペンタジエン、ペンタシクロ[6.5.1.1
3,6.0
2,7.0
9,13]ペンタデカ−4,10−ジエン、ペンタシクロ[9.2.1.1
4,7.0
2,10.0
3,8]ペンタデカ−5,12−ジエン、ヘキサシクロ[6.6.1.1
3,6.1
10,13.0
2,7.0
9,14]ヘプタデカ−4−エンなどの五環体以上の非極性の環状オレフィン類;などが挙げられる。
【0019】
これらの非極性のノルボルネン系モノマーの中でも、入手が容易で耐熱性の高い架橋重合体が得られるとの観点から、非極性のジシクロペンタジエン類及び非極性のテトラシクロドデセン類が好ましく、非極性のジシクロペンタジエン類がより好ましい。
【0020】
また、極性基を含むノルボルネン系モノマーとしては、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4−メタノール、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、2−メチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、酢酸5−ノルボルネン−2−イル、5−ノルボルネン−2−メタノール、5−ノルボルネン−2−オール、5−ノルボルネン−2−カルボニトリル、2−アセチル−5−ノルボルネン、7−オキサ−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
【0021】
単環の環状オレフィンとしては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセン、1,5−シクロオクタジエン、及び置換基を有するこれらの誘導体が挙げられる。
【0022】
これらの環状オレフィンモノマーは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。ただし、環状オレフィンモノマー中における、単環環状オレフィンの添加量は、環状オレフィンモノマーの全量に対して、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。単環環状オレフィンの添加量が多すぎると、得られる架橋環状オレフィン重合体の耐熱性が不十分となる場合がある。
【0023】
本発明に用いる架橋環状オレフィン重合体は、上述した環状オレフィンモノマーを、重合触媒を用いて開環メタセシス重合することにより得ることができる。重合触媒としては、環状オレフィンモノマーを、開環メタセシス重合させるものであれば特に限定されない。
【0024】
重合触媒としては、遷移金属原子を中心原子として、イオン、原子、多原子イオン及び/又は化合物が複数結合してなる錯体を用いることができる。遷移金属原子としては、5族、6族及び8族(長周期型周期表による。以下、同じ。)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、5族の原子としては、好ましくは、タンタルが挙げられ、族の原子としては、好ましくは、モリブデンやタングステンが挙げられ、8族の原子としては、好ましくは、ルテニウムやオスミウムが挙げられる。
【0025】
これらの中でも、8族のルテニウムやオスミウムの錯体を重合触媒として用いることが好ましく、カルベン化合物がルテニウムに配位してなるルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性に優れるため、残留未反応モノマーが少ない架橋環状オレフィン重合体を生産性よく得ることができる。ここで、「カルベン化合物」とは、メチレン遊離基を有する化合物の総称であり、(>C:)で表されるような電荷のない2価の炭素原子(カルベン炭素)を持つ化合物をいう。
【0026】
ルテニウムカルベン錯体としては、より高活性な重合触媒が得られるとの観点から、下記一般式(1)又は一般式(2)で表される錯体が、好ましい。
【化1】
【0027】
上記一般式(1)、(2)において、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい、環状又は鎖状の、炭素数1〜20の炭化水素基;を表す。X
1及びX
2はそれぞれ独立して、任意のアニオン性配位子を示す。L
1及びL
2はそれぞれ独立して、中性電子供与性化合物を表す。また、R
1とR
2は互いに結合して、脂肪族環又は芳香族環を形成していてもよく、この場合においては、ヘテロ原子を含んでいてもよい。さらに、R
1、R
2、X
1、X
2、L
1及びL
2は、任意の組合せで互いに結合して多座キレート化配位子を形成していてもよい。
【0028】
本発明においてヘテロ原子とは、周期表15族及び16族の原子をいう。ヘテロ原子の具体例としては、窒素原子(N)、酸素原子(O)、リン原子(P)、硫黄原子(S)、砒素原子(As)、セレン原子(Se)などが挙げられる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、N、O、P、及びSが好ましく、Nが特に好ましい。
【0029】
上記式(1)、(2)において、L
1及びL
2で表される中性電子供与性化合物は、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子であればいかなるものでもよいが、通常、ヘテロ原子含有カルベン化合物と、その他の中性電子供与性化合物とに大別することができ、重合触媒がより高活性なものとなるとの観点から、ヘテロ原子含有カルベン化合物が好ましい。ヘテロ原子含有カルベン化合物の中でも、カルベン炭素原子の両側に、ヘテロ原子が隣接して結合していることが好ましく、カルベン炭素原子と、その両側に隣接しているヘテロ原子とを含むヘテロ環が形成されているものがより好ましい。また、カルベン炭素原子に隣接するヘテロ原子には嵩高い置換基が結合されていることが好ましい。
【0030】
ヘテロ原子含有カルベン化合物としては、下記一般式(3)又は一般式(4)で表される化合物が、好ましい。
【化2】
【0031】
上記一般式(3)、(4)において、R
3〜R
6はそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでもよい、環状又は鎖状の、炭素数1〜20個の炭化水素基;を表す。また、R
3〜R
6は任意の組合せで互いに結合して環を形成していてもよい。
【0032】
上記一般式(3)又は一般式(4)で表される化合物の具体例としては、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1−シクロヘキシル−3−メシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデンなどが挙げられる。
【0033】
また、ヘテロ原子含有カルベン化合物としては、上記一般式(3)又は一般式(4)で表される化合物以外にも、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、1,3,4−トリフェニル−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3−ジヒドロチアゾール−2−イリデンなどを用いることもできる。
【0034】
なお、ヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物としては、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子であればよく、その具体例としては、カルボニル類、アミン類、ピリジン類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、チオエーテル類、芳香族化合物、オレフィン類、イソシアニド類、チオシアネート類などが挙げられる。これらの中でも、ホスフィン類、エーテル類及びピリジン類が好ましく、トリアルキルホスフィンがより好ましい。
【0035】
また、上記一般式(1)、(2)において、X
1及びX
2で表されるアニオン(陰イオン)性配位子は、中心金属原子から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、例えば、弗素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、沃素原子(I)などのハロゲン原子、ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基などを挙げることができる。これらの中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0036】
本発明においては、上記一般式(1)において、X
2とL
2とが互いに結合して多座キレート化配位子を形成しているルテニウムカルベン錯体の一例として、下記式(5)で表されるシッフ塩基配位錯体が挙げられる。
【化3】
【0037】
上記一般式(5)において、Zは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、NR
12、PR
12又はAsR
12を表す。なお、R
12は、R
1及びR
2と同様である。
【0038】
また、上記一般式(5)中、R
7〜R
9は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい1価の有機基を表す。ヘテロ原子を含んでいてもよい1価の有機基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、アリール基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数2〜20のアルキニルオキシ基、アリールオキシ基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、炭素数1〜20のカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数1〜20のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜20のアルキルスルホン酸基、アリールスルホン酸基、炭素数1〜20のホスホン酸基、アリールホスホン酸基、炭素数1〜20のアルキルアンモニウム基及びアリールアンモニウム基を挙げることができる。
【0039】
これらのヘテロ原子を含んでいてもよい1価の有機基は、置換基を有していてもよく、また、互いに結合して環を形成していてもよい。置換基の例としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基及びアリール基を挙げることができる。また、環を形成する場合の環は、芳香環、脂環及びヘテロ環のいずれであってもよい。
【0040】
上記一般式(5)中、R
10及びR
11は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又はヘテロアリール基を表し、これらの基は、置換基を有していてもよく、また、互いに結合して環を形成していてもよい。置換基の例としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基及びアリール基を挙げることができ、環を形成する場合の環は、芳香環、脂環及びヘテロ環のいずれであってもよい。
【0041】
上記一般式(1)で表される錯体化合物の具体例としては、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(3−フェニル−1H−インデン−1−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(2−フェニルエチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−フェニルエチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)[(フェニルチオ)メチレン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの、ヘテロ原子含有カルベン化合物及び中性電子供与性化合物が各々1つ結合したルテニウム錯体化合物;
【0042】
ベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの、2つの中性電子供与性化合物が結合したルテニウム錯体化合物;
【0043】
ベンジリデンビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデンビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ルテニウムジクロリドなどの、2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が結合したルテニウム錯体化合物;
【0044】
下記一般式(6)で表される、X
2とL
2が互いに結合して多座キレート化配位子を形成しているルテニウムカルベン錯体化合物;などが挙げられる。
【化4】
【0045】
上記一般式(6)において、Mesはメシチル基を表す。R
7及びR
8は、それぞれ、水素原子又はメチル基であって、少なくとも一方はメチル基である。R
13及びR
14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい1価の有機基を表す。なお、「1価の有機基」としては、上述したR
7〜R
9と同様のものが挙げられる。
【0046】
また、上記一般式(2)で表される錯体化合物の具体例としては、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(フェニルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(t−ブチルビニリデン)(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0047】
上記したルテニウム錯体化合物の中でも、上記一般式(1)で表される化合物であって、配位子として上記一般式(3)又は(4)で表される化合物を1つ有するものが特に好ましい。
【0048】
これらのテニウム錯体化合物は、たとえば、Org. Lett.,1999年,第1巻,953頁や、Tetrahedron. Lett.,1999年,第40巻,2247頁や、国際公開公報2003/062253号パンフレットなどに記載された方法によって製造することができる。
【0049】
重合触媒の使用量は、(重合触媒中の金属原子:環状オレフィンモノマー)のモル比で、通常1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1:1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲である。重合触媒の量が少なすぎると、重合反応率が低下して重合体中にモノマーが残留したり、架橋環状オレフィン重合体の架橋度が低下して得られる粘着フィルムの耐熱性が低下したりするおそれがある。一方、重合触媒の量が多すぎると、製造コストの上昇を招き、また反応速度が速くなりすぎて、塊状重合を行った際に、フィルム状の成形体とすることができない場合がある。
【0050】
重合触媒の重合活性を制御し、重合反応率を向上させる目的で、上述した重合触媒とともに、活性剤(共触媒)を併用することもできる。活性剤としては、アルミニウム、スカンジウム、スズ、珪素のアルキル化物、ハロゲン化物、アルコキシ化物及びアリールオキシ化物などを例示することができる。具体的には、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド等のアルミニウム化合物;トリアルコキシスカンジウム等のスカンジウム化合物;テトラアルコキシチタン等のチタン化合物;テトラアルキルズズ、テトラアルコキシスズ等のスズ化合物;テトラアルコキシジルコニウム等のジルコニウム化合物;ジメチルモノクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラクロロシラン、ビシクロヘプテニルメチルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン等のシラン化合物;などを用いることができる。
活性剤の使用量は、(重合触媒中の中心金属原子:活性剤)のモル比で、通常、1:0.05〜1:100、好ましくは1:0.2〜1:20、より好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
【0051】
重合触媒の重合活性を制御し、重合反応速度を調節する目的で、上述した重合触媒とともに、重合調節剤を併用することもできる。重合調節剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタンなどのリン化合物;エーテル、エステル、ニトリルなどのルイス塩基;等が好適に挙げられる。これらの使用量は、重合触媒1モルに対し、通常0.01〜50モル、好ましくは0.05〜10モルである。
【0052】
(エラストマー)
本発明で用いるエラストマーとしては、0℃以上でゴム弾性を有するとともに、ガラス転移点を、0℃以下に少なくとも一つ有するものであればよく、特に限定されない。エラストマーを用いることにより、樹脂組成物中に含有される架橋環状オレフィン重合体の耐熱性能を維持しつつ、得られる粘着フィルムに柔軟性を付与させることができる。
【0053】
このようなエラストマーの具体例としては、エチレン−α−オレフィン共重合エラストマー、エチレン−プロピレン−ジエン共重合エラストマー、ブチルゴム等のオレフィン系エラストマー;天然ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等の共役ジエンゴム及びその架橋物;スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)及びその水素化物(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)及びその水素化物(SEPS)等のスチレン含有熱可塑性エラストマー;などが挙げられる。
【0054】
これらの中でも、樹脂組成物中に含有される架橋環状オレフィン重合体の有する耐熱性能を維持しつつ、得られる粘着フィルムに柔軟性を付与でき、しかも耐電解液性に優れるものとすることができるとの観点から、炭化水素モノマーのみの重合体からなる非極性なエラストマーが好ましく、オレフィン系エラストマーがより好ましく、入手が容易で安価であるとの観点から、エチレン−α−オレフィン共重合エラストマー及びエチレン−プロピレン−ジエン共重合エラストマーがより好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合エラストマーとしては、たとえば、エチレン−プロピレンエラストマー、エチレン−ブテンエラストマー及びエチレン−オクテンエラストマーが挙げられ、これらのなかでも、エチレン−プロピレンエラストマーが好ましい。
【0055】
エラストマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エラストマーの使用量は、架橋環状オレフィン重合体100重量部に対し、好ましくは0.5〜90重量部、より好ましくは2〜60重量部、さらに好ましくは2〜30重量部の範囲である。使用量が少なすぎると、得られる粘着フィルムの柔軟性が低くなる場合があり、一方、多すぎると、高温での機械的強度が低下する場合がある。
【0056】
本発明に用いる樹脂組成物には、各種の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、たとえば、酸化防止剤、充填材、消泡剤、発泡剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、難燃剤、湿潤剤及び分散剤、離型滑剤、可塑剤などが挙げられる。特に、樹脂組成物中に含有される架橋環状オレフィン重合体の耐久性及び保存安定性を向上するためには、酸化防止剤を含有させることが好ましい。
【0057】
酸化防止剤としては、例えばパラベンゾキノン、トルキノン、ナフトキノン等のキノン類;ハイドロキノン、パラ−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン等のハイドロキノン類;ジ−t−ブチル・パラクレゾール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール等のフェノール類;ナフテン酸銅やオクテン酸銅等の銅塩;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムマレエート、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類;キノンジオキシムやメチルエチルケトオキシム等のオキシム類;トリエチルアミン塩酸塩やジブチルアミン塩酸塩等のアミン塩酸塩類;などが挙げられる。これら酸化防止剤は、架橋環状オレフィン重合体の高温時の機械的特性や、エラストマーとの相溶性、フィルム形成作業性及び保存安定性等の条件により適宜、種類及び量を選択すればよい。中でも、フェノール類が、架橋環状オレフィン重合体との相溶性が高く、樹脂組成物中に均等に分散することが可能であり、得られる粘着フィルムの耐久性及び保存安定性を向上できるため好ましい。酸化防止剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。酸化防止剤を使用する場合における酸化防止剤の使用量は、架橋環状オレフィン重合体100重量部に対し、好ましくは0.001〜10重量部である。
【0058】
充填材としては、例えば、シリカ、珪砂、ガラス粉、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレーなどの無機充填材;ポリエステルやポリスチレンビーズなどの有機充填材;などが挙げられる。充填材を配合することにより、得られる粘着フィルムの収縮率、弾性率や熱伝導率などの物性を向上させることができる。充填材の粒径、形状、アスペクト比、品位などのグレードは架橋環状オレフィン重合体の物性により、適宜決めることができる。充填材は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。充填材を使用する場合における充填材の使用量は、架橋環状オレフィン重合体100重量部に対し、好ましくは5〜400重量部、より好ましくは10〜300重量部である。
【0059】
(基材フィルム)
本発明の粘着フィルムを構成する基材フィルムは、上述した各成分を有する樹脂組成物からなるフィルム状の成形体である。
本発明において、基材フィルムは、たとえば、上述した環状オレフィンモノマー、エラストマー、及び重合触媒、ならびに必要に応じて用いられる各種添加剤を含有する重合性組成物を調製し、これを塊状重合させてフィルム状に成形し、塊状重合を行った後、あるいは、塊状重合と同時に、塊状重合により得られた環状オレフィン重合体を架橋させて、架橋環状オレフィン重合体とすることで、製造することができる。
【0060】
重合性組成物は、上述した環状オレフィンモノマー、エラストマー、及び重合触媒、ならびに必要に応じて用いられる各種添加剤を混合することにより調製される。重合触媒は必要に応じて、少量の不活性溶剤に溶解又は懸濁して使用することができる。このような溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン、ミネラルスピリットなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;インデン、テトラヒドロナフタレンなどの脂環と芳香環とを有する炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素;などが挙げられる。これらの中では芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、及び脂環と芳香環とを有する炭化水素の使用が好ましい。また、重合触媒としての活性を低下させないものであれば、液状の老化防止剤、可塑剤又はエラストマーを溶剤として用いてもよい。
【0061】
重合性組成物の室温における粘度は、製造する基材フィルムの厚みにもよるが、通常、3〜30,000Pa・s、好ましくは5〜500Pa・sである。エラストマーとして、環状オレフィンモノマーに溶解するものを用いると、その種類及び使用量を適宜選択することで、重合性組成物の粘度を調整することができる。
【0062】
また、重合性組成物を塊状重合してフィルム形状に成形する方法としては、例えば、重合性組成物を支持体上に注ぐか、あるいは塗布した後に、塊状重合する方法や、重合性組成物を型内で塊状重合する方法などが挙げられる。薄く均一なフィルムを連続的に製造することができるという点より、重合性組成物を支持体上に注ぐか、あるいは塗布した後に、塊状重合する方法が好ましい。
【0063】
用いられる支持体としては、樹脂、ガラス、金属など一般公知の素材を幅広く選択できる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレートなどのポリエステル;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン;ナイロンなどのポリアミド;ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂;が挙げられ、入手が容易であるのでポリエステルが好ましい。支持体の形状としては、材料が金属であればドラムやベルト、樹脂であればフィルムやベルトなどが挙げられる。樹脂フィルムが、入手が容易で安価なため好ましい。
【0064】
重合性組成物を支持体へ塗布する方法は特に制限されず、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法などの公知の塗布方法が挙げられる。
【0065】
塊状重合は、必要に応じて重合触媒が活性を発現する温度まで加熱することにより行う。重合させるための加熱温度は、通常0〜250℃、好ましくは20〜200℃である。重合性組成物を加熱する方法としては特に制約されず、加熱プレート上に載せて加熱する方法、プレス機を用いて加圧しながら加熱(熱プレス)する方法、加熱したローラーで押圧する方法、加熱炉を用いる方法などが挙げられる。重合反応の時間は、重合触媒の量及び加熱温度により適宜決めることができるが、通常1分間〜24時間である。
【0066】
そして、本発明においては、塊状重合により得られた環状オレフィン重合体を、架橋させることにより架橋環状オレフィン重合体とする。架橋は重合後に行っても、重合と同時に行ってもよいが、より少ない工程で工業的有利に基材フィルムを得ることができるという点より、重合と同時に架橋を行なうことが好ましい。
【0067】
架橋の方法としては、(a)環状オレフィンモノマーの少なくとも一部に架橋性モノマーを用いて、これを重合させることにより三次元架橋構造を有する重合体とする方法;(b)重合性組成物に架橋剤を添加して塊状重合を行い、さらに重合と同時に、又は重合後に架橋反応を行って架橋する方法;(c)塊状重合により得られた環状オレフィン重合体に光又は電子線を照射することにより、重合後に架橋反応を行って架橋する方法;などが挙げられる。これらの方法は2以上を併用してもよい。これらのうち、得られる基材フィルムの物性制御のし易さや経済性の点から、(a)の方法が好ましい。
【0068】
上記(a)の方法に用いられる架橋性モノマーとしては、炭素−炭素二重結合を2以上有する環状オレフィンモノマーを用いることができ、具体的にはジシクロペンタジエン及びトリシクロペンタジエンが挙げられる。架橋性モノマーの使用量や、重合時の加熱温度により架橋密度を制御することができる。架橋性モノマーの使用量は、所望の架橋密度に応じて適宜選択すればよく特に限定されないが、環状オレフィンモノマー全量中の架橋性モノマーの割合で、0.1〜100モル%となる量が好ましい。
【0069】
上記(b)の方法に用いられる架橋剤としては、公知の熱架橋剤や光架橋剤を用いることができる。熱架橋剤としては、有機過酸化物、ジアゾ化合物及び非極性ラジカル発生剤などのラジカル発生剤が好ましい。架橋剤の使用量は、環状オレフィンモノマー100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。熱架橋剤を用いる場合の架橋を行う温度は、通常100〜250℃、好ましくは150〜200℃である。また、架橋する時間は特に制約されないが、通常数分間から数時間である。
【0070】
本発明において、塊状重合及び架橋は、酸素及び水の不存在下で行うことが好ましい。具体的には、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で塊状重合及び架橋を行う方法;真空下で塊状重合及び架橋を行う方法;支持体上に塗布した重合性組成物を樹脂フィルムなどで覆って密閉した状態で塊状重合及び架橋を行う方法;などが挙げられる。樹脂フィルムとしては、上記支持体として例示したものを用いることができる。酸素及び水の不存在下で塊状重合及び架橋を行うことにより、得られる基材フィルムの表面が、酸素や水により酸化され、これにより、所望の機械的強度が得られなくなるという不具合を有効に防止することができる。
【0071】
あるいは、本発明に用いる基材フィルムは、溶液重合により製造してもよい。溶液重合による方法では、まず、上述した環状オレフィンモノマー及び重合触媒を用いて公知の溶液重合法により環状オレフィン重合体を得る。次いで、溶液重合により得られた環状オレフィン重合体、上述したエラストマーならびに必要に応じ用いられる添加剤及び架橋剤を混合し、公知の成形法によりフィルム形状に成形する。そして、成形後又は成形と同時に、環状オレフィン重合体を架橋させて架橋環状オレフィン重合体とすることで、基材フィルムを得ることができる。
【0072】
基材フィルムの厚さは、特に限定されないが、好ましくは1〜500μm、より好ましくは2〜200μm、さらに好ましくは10〜100μmである。基材フィルムの厚さが薄すぎると、機械的強度が低くなったり、取り扱いが困難となる場合がある。一方、基材フィルムの厚さが厚すぎると、有機電解液系蓄電デバイス内において、蓄電に関与しない部材の割合が高くなってしまうため、好ましくない。
【0073】
(粘着層)
本発明の有機電解液系蓄電デバイス用の粘着フィルムは、上述した樹脂組成物からなる基材フィルム上に、アクリル系粘着剤からなる粘着層を備えてなる。
【0074】
アクリル系粘着剤としては、例えば、粘着性を与え、ガラス転移点(Tg)が比較的低いポリマーを形成し得る主モノマーに、接着性や凝集力を与え、Tgが比較的高いポリマーを形成し得るコモノマーや、架橋点の形成や接着性を改良し得る官能基含有モノマー等の単量体成分を重合させたアクリル系共重合体からなる粘着剤が用いられる。
【0075】
主モノマーとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル等のアクリル酸アルキルエステル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸シクロアルキルエステル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸アラルキルエステルや、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸シクロアルキルエステル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アラルキルエステルなどが挙げられる。
【0076】
コモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルエーテル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニル基含有化合物が挙げられる。
【0077】
官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール等のヒドロキシル基含有モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の3級アミノ基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有モノマー;
N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド等のN−置換アミド基含有モノマー;グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマーなどが挙げられる。これらのモノマーは1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0078】
上記単量体成分の種類や組み合わせを適宜選択することにより、優れた粘着性、凝集性、耐久性を有するアクリル系共重合体を得ることができる。
【0079】
アクリル系粘着剤を構成するアクリル系共重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、50,000〜1,500,000、好ましくは100,000〜1,000,000である。分子量が小さ過ぎると、粘着剤の粘着力や凝集力が劣り、一方、分子量が大き過ぎると粘着剤が硬くなり、粘着性が不十分となって貼着の作業性が低下しやすい。アクリル系共重合体のTgは、特に限定されないが、−20℃以下であるのが好ましい。Tgが−20℃を超える場合、使用温度によっては粘着剤が硬くなり、粘着性を維持できなくなる場合がある。
【0080】
アクリル系粘着剤は、架橋型、非架橋型のいずれのものも使用できる。架橋型の場合には、アクリル系粘着剤には、上記アクリル系共重合体の他に架橋剤が含有されていてもよい。架橋剤としては、粘着剤が有する架橋性官能基の種類に応じて適宜選択でき、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアナート系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属塩系架橋剤、アミン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤等が挙げられる。これらの架橋剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0081】
アクリル系粘着剤には、上記のほかに、必要に応じて、紫外線吸収材、粘着付与剤、軟化剤(可塑剤)、老化防止剤、安定剤、充填剤、老化防止剤、粘着付与剤、顔料、染料、シランカップリング剤等の添加剤が含まれていてもよい。粘着付与剤としては、例えば、ロジン及びその誘導体、ポリテルペン、テルペンフェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂、スチレン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。軟化剤としては、例えば、液状ポリエーテル、グリコールエステル、液状ポリテルペン、液状ポリアクリレート、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル等が挙げられる。
【0082】
粘着層の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜30μmである。粘着層の厚みが薄すぎると粘着強度が不十分となる場合があり、一方、粘着層の厚みが厚すぎると、有機電解液系蓄電デバイス内において、蓄電に関与しない部材の割合が高くなってしまうため、好ましくない。
【0083】
基材フィルム上に、アクリル系粘着剤からなる粘着層を形成する方法としては、特に限定されないが、アクリル系粘着剤を、直接、基材フィルム上に塗布する方法や、アクリル系粘着剤を溶剤に溶解又は分散させて、これを基材フィルム上に塗布し、次いで、乾燥する方法などが挙げられる。
【0084】
本発明の有機電解液系蓄電デバイス用の粘着フィルムは、架橋環状オレフィン重合体とエラストマーとを含む樹脂組成物からなる基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成されたアクリル系粘着剤からなる粘着層とを有するため、耐熱性、及び耐電解液性に優れ、かつ、高い接着強度を有するものである。なお、本発明の有機電解液系蓄電デバイス用の粘着フィルムが、耐電解液性に優れる理由としては、次の理由が考えられる。すなわち、本発明の有機電解液系蓄電デバイス用の粘着フィルムは、基材フィルムとして、架橋環状オレフィン重合体を含有するものを用いており、この架橋環状オレフィン重合体は、炭化水素を主成分とするものであり、そのため、有機電解液系蓄電デバイスに用いられる有機電解液に対して膨潤し難いこと、さらには、基材フィルムに含有される架橋環状オレフィン重合体と、粘着層を構成するアクリル系粘着剤とが、アンカー効果により高い密着力で密着していることなどが挙げられる。
【0085】
そして、このような本発明の有機電解液系蓄電デバイス用の粘着フィルムは、有機電解液系蓄電デバイスの巻回された蓄電要素の巻き止め用の粘着フィルムや、蓄電要素へ電力の入出力を行なうためのタブ部の絶縁用の粘着フィルム(一対のタブ同士の接触や、外装缶との接触による、短絡の発生を防止するための粘着フィルム)として好適に用いることができる。
【0086】
ここで、有機電解液系蓄電デバイスとしては、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタなどが挙げられる。
【0087】
リチウムイオン二次電池としては、特に限定されないが、たとえば、集電体の両面に正極活物質層を形成してなる正極と、集電体層の両面に負極活物質層を形成してなる負極とをセパレータを介して巻回してなる蓄電要素と、蓄電要素へ電力の入出力を行なうための一対のタブと、有機電解液とを備えるものなどが挙げられる。なお、集電体としては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などの金属材料が挙げられる。正極活物質としては、LiCoO
2、LiMnO
2、LiNiO
2、LiMn
2O
4、V
2O
5、V
6O
13などが挙げられ、負極活物質としては、金属リチウムや、リチウムの吸蔵・放出が可能な合金、酸化物及びカーボン材料などが挙げられる。セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン製の微孔膜又は不織布、無機セラミック粉末を含む多孔質の樹脂コートなどが挙げられる。また、一対のタブとしては、銅、アルミニウム、ニッケルなどの金属材料が挙げられる。さらに、有機電解液としては、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、CF
3SO
3Li、C
4F
9SO
3Li、CF
3COOLi、(CF
3CO)
2NLi、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)NLiなどのリチウム塩を、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)などのカーボネート類に溶解したものなどが挙げられる。
【0088】
また、電気二重層キャパシタとしては、集電体の両面に分極性電極層を形成してなる一対の分極性電極を、セパレータを介して巻回してなる蓄電要素と、蓄電要素へ電力の入出力を行なうための一対のタブと、有機電解液とを備えるものなどが挙げられる。集電体としては、アルミニウム、酸化アルミニウム、白金、ニッケル、タンタル、チタンなどが挙げられる。また、分極性電極層を構成する活物質としては、活性炭、ポリアセン、カーボンウィスカ、グラファイトなどが挙げられる。セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン製の微孔膜、不織布、パルプを主原料とする多孔質膜、レーヨン系の多孔膜、セルロースなどが挙げられる。また、一対のタブとしては、銅、アルミニウム、ニッケルなどの金属材料が挙げられる。電解液としては、(C
2H
5)
4NBF
4、(C
2H
5)
3(CH
3)NBF
4、(C
2H
5)
4NPF
6などのアンモニウム塩を、プロピレンカーボート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)などのカーボネート類に溶解したものなどが挙げられる。
【0089】
さらに、リチウムイオンキャパシタとしては、集電体の両面に分極性電極層を形成してなる分極性電極と、集電体層の両面に負極活物質層を形成してなる負極とをセパレータを介して巻回してなる蓄電要素と、蓄電要素へ電力の入出力を行なうための一対のタブと、有機電解液とを備えるものなどが挙げられる。集電体としては、アルミニウム、白金、ニッケル、タンタル、チタン、ステンレス鋼、銅などが挙げられる。分極性電極層を構成する活物質としては、活性炭、ポリアセン、カーボンウィスカ、グラファイトなどが挙げられる。負極活物質としては、金属リチウムや、リチウムの吸蔵・放出が可能な合金、酸化物及びカーボン材料などが挙げられる。セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン製の微孔膜、不織布、パルプを主原料とする多孔質膜、レーヨン系の多孔膜、セルロースなどが挙げられる。また、一対のタブとしては、銅、アルミニウム、ニッケルなどの金属材料が挙げられる。電解液としては、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、CF
3SO
3Li、C
4F
9SO
3Li、CF
3COOLi、(CF
3CO)
2NLi、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)NLiなどのリチウム塩を、プロピレンカーボート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)などのカーボネート類に溶解したものなどが挙げられる。
【実施例】
【0090】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。各例中の〔部〕及び〔%〕は、特段の事情がない限り、重量基準である。
なお、各特性の定義及び評価方法は、以下のとおりである。
【0091】
<引張強度、伸び>
基材フィルムの引張強度及び伸びを、JIS K6871に準拠して、温度180℃の条件にて測定した。引張強度は高いほど好ましい。また、伸びは2〜20%の範囲にあることが好ましい。
【0092】
<耐熱性>
粘着フィルムを、アルミニウム板に張り付けることにより、アルミ貼付サンプルを作製し、作製したアルミ貼付サンプルを、200℃に加熱したホットプレートに10分間載せて加熱し、加熱後の外観を観察した。
【0093】
<耐電解液性>
粘着フィルムを、23℃の電解液(EC(エチレンカーボネート):DEC(ジエチレンカーボネート)=1:2(体積比))に、72時間浸漬させた後、乾燥し、厚さ2mmのアルミ板に張り付けることにより、アルミ貼付サンプルを作製した。そして、作製したアルミ貼付サンプルについて、剥離速度50mm/分、引張角度180°の条件で、剥離強度(N/20mm幅)を測定した。剥離強度が高いほど、耐電解液性に優れると判断できる。
【0094】
<セパレータに対する接着強度>
粘着フィルムを、ポリオレフィン系材料から構成されるセパレータに貼り付け、セパレータ貼付サンプルを作製した。そして、作製したセパレータ貼付サンプルについて、剥離速度50mm/分、引張角度180°の条件で、剥離強度(N/20mm幅)を測定した。なお、粘着フィルムを、巻回された蓄電要素の巻き止め用とする場合には、蓄電要素を構成するセパレータとの接着強度が高いことが要求されるため、セパレータに対する接着強度が高いほど、巻回された蓄電要素の巻き止め用として適しているといえる。
【0095】
<ニッケル板に対する接着強度>
粘着フィルムを、ニッケル板に貼り付け、ニッケル貼付サンプルを作製した。そして、作製したニッケル貼付サンプルについて、剥離速度50mm/分、引張角度180°の条件で、剥離強度(N/20mm幅)を測定した。なお、蓄電要素へ電力の入出力を行なうためのタブ部(一対のタブのうち、少なくとも一方のタブ)としては、一般的にニッケル板が用いられるため、ニッケル板に対する接着強度が高いほど、蓄電要素へ電力の入出力を行なうためのタブ部の絶縁用として適しているといえる。
【0096】
(実施例1)
環状オレフィンモノマーとしてのジシクロペンタジエン43部及び対称型トリシクロペンタジエン5部からなる混合モノマーに、エラストマーとしてのエチレン−プロピレン共重合エラストマー(ダウケミカル社製、バーシファイ(登録商標)2300エラストマー)2部、重合触媒としての下記式(7)に示す構造を有するルテニウム触媒(「VC843」)0.032部、及び酸化防止剤(チバスペシャリティーケミカル社製、イルガノックス(登録商標)1010)2部を混合し、反応原液(A)を得た。
【化5】
【0097】
また、上記とは別に、環状オレフィンモノマーとしてのジシクロペンタジエン43部及び対称型トリシクロペンタジエン5部からなる混合モノマーに、エラストマーとしてのエチレン−プロピレン共重合エラストマー(ダウケミカル社製、バーシファイ2300エラストマー)2部、及び活性剤としてのフェニルトリクロロシラン(和光純薬工業社製)0.09部を混合し、反応原液(B)を得た。
【0098】
次いで、上記にて得られた反応原液(A)及び反応原液(B)を、ラインミキサーで混合し、50μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)製キャリアフィルム上に、得られた混合液を、25℃でキャストすることにより製膜を行った。次いで、得られたキャスト膜を窒素雰囲気下、80℃で10分間加熱した後、窒素雰囲気下、150℃で1時間加熱して、厚さ50μmの基材フィルムを得た。
【0099】
そして、上記にて得られた基材フィルムに、アクリル系粘着剤としてのアクリル酸2−エチルヘキシル−アクリル酸共重合体(アクリル酸2−エチルヘキシル単位:アクリル酸単位=95:5(重量比);Mw=130000)を塗布し、乾燥することで、厚み20μmの粘着剤層を形成し、総厚み70μmの粘着フィルムを得た。そして、得られた基材フィルムについて、引張強度及び伸びの各評価を、また、得られた粘着フィルムについて、耐熱性、耐電解液性、ならびにセパレータ及びニッケル板に対する接着強度の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
(実施例2)
エラストマーとして、エチレン−プロピレン共重合エラストマーの代わりに、エチレン−α−ブテン共重合エラストマー(ダウケミカル社製エンゲージ(登録商標)7467)を使用した以外は、実施例1と同様にして、基材フィルム及び粘着フィルムを作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
(実施例3)
反応原液(A)及び反応原液(B)を作製する際における、ジシクロペンタジエンの配合量を38部、対称型トリシクロペンタジエンの配合量を4.5部、エチレン−プロピレン共重合体の配合量を7.5部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして基材フィルムを作製した。そして、得られた基材フィルムを用いて、アクリル系粘着剤として、アクリル酸2−エチルヘキシル単位:アクリル酸単位=97:3(重量比)(Mw=115000)であるアクリル酸2−エチルヘキシル−アクリル酸共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして、総厚み70μmの粘着フィルムを得た。そして、得られた基材フィルム及び粘着フィルムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
(実施例4)
反応原液(A)及び反応原液(B)を作製する際における、ジシクロペンタジエンの配合量を41.17部、対称型トリシクロペンタジエンの配合量を3.83部、エチレン−プロピレン共重合体の配合量を5部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして基材フィルムを作製した。なお、実施例4においては、基材フィルムの厚みを20μmとした。そして、得られた基材フィルムを用いて、アクリル系粘着剤として、アクリル酸2−エチルヘキシル単位:アクリル酸単位=96:4(重量比)であるアクリル酸2−エチルヘキシル−アクリル酸共重合体(Mw=120000)を用いた以外は、実施例1と同様にして、総厚み40μmの粘着フィルムを得た。そして、得られた基材フィルム及び粘着フィルムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
(実施例5)
厚みを80μmとした以外は、実施例4と同様にして、基材フィルムを得た。そして、得られた基材フィルムを用いて、実施例4と同様にして、総厚み100μmの粘着フィルムを得た。そして、得られた基材フィルム及び粘着フィルムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
(比較例1)
エラストマーとしてのエチレン−プロピレン共重合エラストマーを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、基材フィルム及び粘着フィルムを作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
(比較例2)
実施例1と同様にして基材フィルムを作製した。そして、得られた基材フィルムを用いて、アクリル系粘着剤としてのアクリル酸2−エチルヘキシル−アクリル酸共重合体に代えて、ポリブタジエンを用いた以外は、実施例1と同様にして、総厚み70μmの粘着フィルムを得た。そして、得られた基材フィルム及び粘着フィルムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
(比較例3)
基材フィルムとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ株式会社製、エンブレット(登録商標))を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ70μmの粘着フィルムを得た。そして、得られた基材フィルム及び粘着フィルムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
(比較例4)
基材フィルムとして、厚さ40μmのポリプロピレンフィルム(東洋紡績株式会社製、パイレン(登録商標)フィルム)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ60μmの粘着フィルムを得た。そして、得られた基材フィルム及び粘着フィルムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
(比較例5)
ポリイミド粘着フィルム(寺岡製作所製、No.653F、ポリイミド基材上に、アクリル系粘着剤層が形成された粘着フィルム)について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
表1に示すように、架橋環状オレフィン重合体とエラストマーとを含む基材フィルム上に、アクリル系粘着剤層を形成してなる粘着フィルムは、基材フィルムの引張強度及び伸びが良好であり、耐熱性及び耐電解液性に優れ、セパレータ及びニッケル板との接着強度に優れる結果となった(実施例1〜5)。
【0111】
一方、基材フィルム中にエラストマーを配合しなかった場合には、基材フィルムの伸びに劣る結果となった(比較例1)。
また、粘着層をポリブタジエンで形成した場合、ならびに、基材フィルムをポリエチレンテレフタレート及びポリプロピレンで形成した場合には、耐熱性および耐電解液性に劣る結果となった(比較例2〜4)。
さらに、ポリイミド基材上に、アクリル系粘着剤層が形成された粘着フィルムは、耐電解液性に劣るものであった(比較例5)。