(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記原料ガス供給路には、前記圧力調節ガス供給部から圧力調節用のガスが供給される位置と、前記バッファーガス供給部からバッファーガスが供給される位置との間の圧力差を大きくするための差圧形成部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の原料ガス供給装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1を参照しながら、本発明の原料ガス供給装置を備えた成膜装置の構成例について説明する。成膜装置は、基板例えばウエハW対してCVD法による成膜処理を行うための成膜処理部1と、この成膜処理部1に原料ガスを供給するための原料ガス供給装置と、を備えている。
【0015】
成膜処理部1は、バッチ式のCVD装置の本体として構成され、例えば縦型の反応チャンバー11内に、ウエハWを多数枚搭載したウエハボート12を搬入した後、真空ポンプなどからなる真空排気部15により、排気ライン110を介して反応チャンバー11内を真空排気する。しかる後、原料ガス供給装置から原料ガスを導入して、反応チャンバー11の外側に設けられた加熱部13によりウエハWを加熱することによって成膜処理が行われる。
【0016】
例えばポリイミド系の有機絶縁膜を成膜する場合を例に挙げると、成膜は、ピロメリット酸二無水物(PMDA:Pyromellitic Dianhydride)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA:4,4'-Oxydianiline)との二種類の原料ガスを反応させることによって進行する。
図1には、これらの原料ガスのうち、常温で固体のPMDAを加熱して昇華(気化)させ、キャリアガスと共に成膜処理部1へと供給する原料ガス供給装置の構成例を示してある。
【0017】
本例の原料ガス供給装置は、原料のPMDAを収容した原料容器3と、この原料容器3にキャリアガスを供給するキャリアガス供給部41と、原料容器3にて得られた原料ガス(気化したPMDAとキャリアガスとを含む)を成膜処理部1に供給する原料ガス供給路210と、を備えている。
【0018】
原料容器3は、固体原料300であるPMDAを収容した容器であり、抵抗発熱体を備えたジャケット状の加熱部31で覆われている。例えば原料容器3は、温度検出部34にて検出した原料容器3内の気相部の温度に基づいて、給電部36から供給される給電量を増減することにより、原料容器3内の温度を調節することができる。加熱部31の設定温度は、固体原料300が気化し、且つ、PMDAが分解しない範囲の温度、例えば250℃に設定される。
【0019】
原料容器3内における固体原料300の上方側の気相部には、キャリアガス供給部41から供給されたキャリアガスを原料容器3内に導入するキャリアガスノズル32と、原料容器3から原料ガス供給路210へ向けて原料ガスを抜き出すための抜き出しノズル33と、が開口している。
また、原料容器3には、気相部の圧力を計測する圧力検出部35が設けられている。
【0020】
キャリアガスノズル32は、MFC(マスフローコントローラ)42が介設されたキャリアガス流路410に接続されており、このキャリアガス流路410の上流側にキャリアガス供給部41が設けられている。キャリアガスは、例えば窒素(N
2)ガスやヘリウム(He)ガスなどの不活性ガスが用いられる。本例ではN
2ガスを用いる場合について説明する。
【0021】
MFC42は、例えば熱式のMFM(マスフローメータ)と、このMFMにて測定されたキャリアガスの流量測定値に基づいて、予め設定された設定値にキャリアガスの流量を調節する流量調節部とを備えている。MFC42のMFMは、本実施の形態の第1の流量測定部に相当する。以下、このMFMにて測定されたキャリアガスの流量測定値(後述のように、MFC42の流量設定値にほぼ一致する)をQ1とする。
【0022】
一方、前記抜き出しノズル33は原料ガス供給路210に接続されており、原料容器3から抜き出された原料ガスは、この原料ガス供給路210を介して成膜処理部1に供給される。原料容器3の内部は、真空排気部15により、原料ガス供給路210及び反応チャンバー11を介して真空排気され、減圧雰囲気に保たれている。
【0023】
原料ガス供給路210には、原料ガスの流量を測定するMFM(マスフローメータ)2と、原料容器3内の圧力調節を行う圧力調節部である圧力調節バルブPC1と、開閉バルブV1とが、上流側からこの順に介設されている。MFM2と圧力調節バルブPC1との位置関係は、この例に限られるものではなく、圧力調節バルブPC1をMFM2の上流側に配置してもよい。
【0024】
図3に示すように、原料ガス供給路210に設けられたMFM2は、原料ガス供給路210の配管流路上に介設され、原料容器3から供給された原料ガスが通過する細管部24と、この細管部24の上流側位置及び下流側位置の管壁に巻きつけられた抵抗体231、232と、細管部24内をガスが通流することに起因する細管部24の管壁の温度変化を各抵抗体231、232の抵抗値の変化として取り出し、ガスの質量流量に対応する流量信号に変換して出力するブリッジ回路22及び増幅回路21と、を備えた熱式の流量計として構成されている。
【0025】
本MFM2はキャリアガス(N
2ガス)によって校正されており、原料(PMDA)を含まないキャリアガスを通流させたとき、このキャリアガスの流量に対応する流量信号を出力する。流量信号は、例えば0〜5[V]の範囲で変化し、0〜フルレンジ[sccm](0℃、1気圧、標準状態基準)の範囲のガス流量に対応付けられている。これらの対応に基づき、流量信号をガス流量に換算した値が流量測定値となる。流量信号から流量測定値への換算は、後述の流量演算部51で実行してもよいし、MFM2内で実行してもよい。
【0026】
このMFM2に原料ガス(PMDAとキャリアガスとを含む)を通流させると、原料ガスの流量に対応する流量測定値を得ることができる。MFM2は、本実施の形態の第2の流量測定部に相当する。以下、このMFM2にて測定された原料ガスの流量測定値をQ3とする。
【0027】
以上に説明した構成を備えた成膜装置(成膜処理部1及び原料ガス供給装置)は、制御部5と接続されている。制御部5は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には成膜装置の作用、即ちウエハボート12を反応チャンバー11内に搬入し、真空排気後、原料ガス供給装置から原料ガスを供給して成膜を行い、原料ガスの供給を停止してからウエハボート12を搬出するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0028】
特にPMDAの気化量の調節に関し、制御部5は、原料容器3にて気化したPMDAの流量測定値を算出する機能と、算出したPMDAの流量測定値を原料容器3の圧力調節にフィードバックさせてPMDAの流量制御を行う機能と、を備えている。
【0029】
先に、PMDAの流量制御を行う手法について説明する。原料容器3内の圧力と、この原料容器3内で単位時間あたりに気化するPMDAの量(気化流量)との関係について述べると、
図2に示すように、原料容器3内の圧力が上昇するとPMDAの気化流量は減少し、原料容器3内の圧力が低下するとPMDAの気化流量は増大する。気化したPMDAの全量が成膜処理部1に供給される場合には、この気化流量が原料ガス中のPMDAの流量となる。
【0030】
そこで本例においては、原料容器3内の圧力を調節する操作量として圧力調節バルブPC1の開度を採用している。即ち、圧力調節バルブPC1の開度を絞ることにより、原料容器3内の圧力を上昇させてPMDAの気化流量を低下させ、圧力調節バルブPC1の開度を開くことにより、原料容器3内の圧力を低下させてPMDAの気化流量を増大させることができる。
【0031】
そこで制御部5は、予め設定された目標値と、気化したPMDAの流量測定値とを比較し、流量測定値が目標値よりも高い場合には、圧力調節バルブPC1の開度を絞ってPMDAの気化流量を低下させる。また、流量測定値が目標値よりも低い場合には、圧力調節バルブPC1の開度を開いてPMDAの気化流量を増大させる制御を行う。圧力制御時のハンチングの発生を防ぐため、PMDA流量の目標値に調節範囲を設定し、調節範囲の上限値を超えたとき圧力調節バルブPC1の開度を絞り、下限値を下回ったとき圧力調節バルブPC1の開度を開く構成としてもよい。
【0032】
このように本例の制御部5は、MFM2から取得した原料ガスの流量測定値に基づいて算出したPMDAの流量測定値を目標値と比較して原料容器3の圧力制御を行う。このため、PMDAの流量制御を正確に行うためには、制御部5にて算出するPMDAの流量測定値が、原料容器3内で気化したPMDAの気化流量を正しく示している必要がある。
【0033】
一方で、
図3に示した熱式のMFM2は、通常、成分比が変化しないガスの流量測定に用いられる。ガスの成分比が変化した場合には、MFM2の測定結果を実際の流量に換算するコンバージョンファクタの値を修正する必要がある。従って、刻々と変化する原料ガスの成分比に応じてコンバージョンファクタを変更しなければ、正しい流量測定値を把握することは困難である。
そこで本例の原料ガス供給装置においては、以下の手法によりPMDAの流量測定値を算出している。
【0034】
既述のように、MFM2はキャリアガスによって校正されている。このMFM2に、PMDAとキャリアガスとを含む原料ガスを通流させて得られた流量測定値Q3は、そのときのPMDAやキャリアガスの成分比における原料ガスの流量を正しく示しているとは限らない。一方、このMFM2にPMDAを含まないキャリアガスを単独で通流させた場合には、正しい流量に対応した流量測定値を得ることができる。また当該ガス供給装置においては、原料容器3の上流側に設けられたMFC42にて、キャリアガスは設定値に対応した流量Q1に調節されていることが分かっている。
【0035】
そこで
図3に示すように、本例の制御部5は、MFM2にて測定した原料ガスの流量測定値Q3と、予め把握しているキャリアガスの流量Q1とを利用して、原料ガス中に含まれる原料の気化流量Q2を求める流量演算部51の機能を備えている。
【0036】
図4は、キャリアガスの流量Q1及び原料の気化流量Q2を変化させたとき、MFM2にて測定される原料ガスの流量Q3の変化を示している。
図4の横軸はPMDAの気化流量Q2[sccm]、縦軸はMFM2にて検出された原料ガスの流量測定値Q3[sccm]を表している。この図では、キャリアガスの流量Q1[sccm]をパラメータとした対応関係が示されている。
【0037】
例えばQ1=0[sccm]の場合に示すように、PMDAの気化流量Q2と、このPMDAをMFM2に通流させて得られた流量測定値Q3との間には、比例関係があると考える。また、このPMDAのガスに既知量Q1=150、250[sccm]のキャリアガスを混合すると、キャリアガスにより校正されているMFM2は、Q1=0のときの流量測定値に、キャリアガスの流量を加算した値を流量測定値Q3として出力するとする。
【0038】
これらの関係が成り立つ場合には、MFM2に原料ガスを通流させて得た流量測定値Q3から、MFC42にて予め把握している設定値Q1を差し引いた差分値Q3−Q1は、
図4のQ1=0ときの値を示していることになる。そこで、PMDAの気化流量Q2と、このPMDAのガスをMFM2に通流させて得られた流量測定値Q3との比例係数C
fを予め求めておき、前記差分値に比例係数を乗じると、PMDAの気化流量Q2を求めることができる。
Q2=C
f(Q3−Q1) …(1)
【0039】
流量演算部51は、制御部5の記憶部に記憶されたプログラムに基づき、上述の演算を実行してPMDAの気化流量Q2を算出する。この手法によれば、原料ガス中のPMDAの濃度が変化し、当該原料ガスの正しい流量を測定するためのコンバージョンファクタが求められない場合であっても原料の気化流量を求めることができる。
【0040】
例えばC
fの値は、以下の手法により求めることができる。固体原料300を収容した原料容器3の秤量を行いながら、加熱部31の加熱温度を変化させると共に、流量Q1のキャリアガスを供給して原料ガスを発生させる。固体原料300の重量変化から気化流量Q2を求めると共に、この原料ガスをMFM2に通流させて流量測定値Q3を得る。これら気化流量Q2及び流量測定値Q3の測定をキャリアガスの流量Q1や気化流量Q2を変化させて、
図4に示すように、複数本の気化流量Q2と流量測定値Q3との対応関係を得る。そして、これらの対応関係から、キャリアガスの流量Q1が、キャリアガスが0のときの流量測定値Q3に加算されている関係が成立することを確認したら、差分値Q3−Q1算出し、この差分値を気化流量Q2で除して比例係数C
fを求める。
【0041】
このように前記(1)式を利用すれば、キャリアガスにて校正されたMFM2を用いて、原料ガス中の原料の気化流量を計測することが可能であることは、PMDA(粘度1.4×10
−5[Pa・s]、分子量218)の代替ガスを用いて実験的に確認している。PMDAに粘度が近い水素(H
2)ガス(粘度1.3×10
−5[Pa・s]、分子量2)、及びPMDAに分子量が近い六フッ化硫黄(SF
6)ガス(粘度2.5×10
−5[Pa・s]、分子量146)を代替ガスとして、各代替ガスをMFCで流量調節(流量設定値Q2)しながら、MFCで流量調節されたN
2ガス(流量設定値Q1)と混合し、この混合ガスの流量Q3をMFM2で測定する実験を行った。
【0042】
この実験において、最小二乗法により供給流量Q2に対する差分値Q3−Q1近似直線を求めた。この近似直線に差分値Q3−Q1を入力して得た供給流量の推算値と実際の供給流量Q2との誤差を算出したところ、いずれの代替ガスにおいても誤差は±2%以内であった。
【0043】
以下、
図1、
図6、
図7を参照しながら本例の成膜装置の作用について説明する。
はじめに、反応チャンバー11にウエハボート12を搬入した後、反応チャンバー内を真空排気する。そして、成膜処理を開始する準備が整ったら、開閉バルブV1を開くと共に、キャリアガス供給部41から設定値の流量に調節されたキャリアガスを原料容器3に供給して原料ガスを発生させる。発生した原料ガスは成膜処理部1へ供給され、加熱部13により加熱されたウエハWの表面にて、この原料ガス中のPMDAと、不図示のODAの原料ガス供給ラインから供給されたODAとが反応してポリイミド系の有機絶縁膜が成膜される。
【0044】
このとき制御部5は、MFM2から取得した原料ガスの流量測定値に基づき、気化したPMDAの流量測定値Q2を算出し(
図6のステップS101)、流量測定値Q2と目標値とを比較してこれらの値のずれ量を解消する方向に圧力調節バルブPC1の開度を調節する(ステップS102)。
【0045】
ステップS101にて気化したPMDAの流量測定値Q2を算出する動作について説明すると、抜き出しノズル33から抜き出された原料ガスが、MFM2を通流し、原料ガスの流量測定値Q3が測定される(
図7のステップS201)。流量演算部51は、この流量測定値Q3から、キャリアガスの設定値Q1を差し引いて差分値Q3−Q1を算出する(ステップS202)。
【0046】
ここで内部に設けられたMFMを用いて測定したキャリアガスの流量測定値に基づいて流量調節を行うMFC42においては、流量が安定しているとき、キャリアガスの流量が設定値に対して調整誤差の範囲内にあることが保証されている。そこで、上述の例においては、キャリアガスの流量Q1としてMFC42の設定値を用いた。この例に替えて、流量演算部51がMFC42内のMFMから流量測定値を取得し、この流量測定値Q1に基づいて差分値Q3−Q1を算出してもよいことは勿論である。
【0047】
しかる後、流量演算部51は、差分値Q3−Q1に比例係数C
fを乗じてPMDAの流量測定値(気化流量)Q2を算出する(ステップS203)。
このようにして得られたPMDAの流量測定値Q2に基づいて圧力調節バルブPC1の開度を調節し、原料容器3の圧力制御をすることにより、例えば原料容器3の温度を変更してPMDAの流量を調節する場合よりも応答時間を短くすることができる。また、キャリアガスの増減によりPMDAの流量を調節する場合に比べて、原料容器3や各供給路410、210の配管内を通過するガスの流動状態が安定しているので、これらの部位の内壁面に付着したパーティクルが流量の変動に伴って飛散すること(発塵)を抑えることができる。
【0048】
予め設定した時間が経過したら、キャリアガス供給部41からのキャリアガスの供給を停止すると共に、開閉バルブV1を閉じ、PMDAを含む原料ガスの供給を停止する。また、ODAを含む原料ガスの供給も停止した後、反応チャンバー11内を大気雰囲気とする。しかる後、反応チャンバー11からウエハボート12を搬出して一連の動作を終える。
【0049】
本実施の形態に係わる原料ガス供給装置によれば以下の効果がある。PMDAを気化させる原料容器3の圧力を調節することにより、原料ガスに含まれるPMDAの流量を調節するので、応答性の高い制御を行うことができる。また、原料容器3の圧力を操作することにより、キャリアガスの流量を一定に保ったままでも気化した原料の流量を調節することができるので、流量安定性の高い原料ガス供給を実現できる。
【0050】
次に他の実施の形態に係る原料ガ供給装置の構成について
図8を参照しながら説明する。
図8において、
図1に示したものと共通の構成要素には、
図1に使用したものと同じ符号を付してある。
図8に示した原料ガス供給装置は、圧力調節バルブPC1に替えて、圧力調節ガス供給路610から原料ガス供給路210に圧力調節用のガスを供給することにより原料容器3内の圧力を調節する点が、
図1に示した実施の形態と異なっている。また、原料ガスの流量測定値Q3とキャリアガスの流量設定値Q1との差分値Q3−Q1からPMDAの流量測定値Q2を算出する手法に替えて、PMDAを収容した原料容器3の重量変化に基づいて流量測定値Q2を算出する点も異なる。
【0051】
圧力調節ガス供給路610は、MFC63を介してN
2ガス供給部65に接続されており、これらは本実施の形態の圧力調節ガス供給部を構成している。本例において圧力調節用のガスは、キャリアガスと同じN
2ガスが採用されている。また、圧力調節用のガスが供給される位置は、原料容器3から当該位置までの配管の圧力損失などを考慮し、圧力調節用のガスの供給量の増減により、原料容器3内の圧力を所望の範囲で変化させることが可能な位置に設定されている。
【0052】
次に、
図9を参照しながら圧力調節ガス供給部のガスの供給量とPMDAの量(気化流量)との関係について述べる。例えば流量q
1[sccm]の圧力調節用のガスが原料ガス供給路210に供給されているとき、この状態から圧力調節用のガスの供給量を増やすと、原料ガス供給路210を介して原料容器3内の圧力が上昇し、PMDAの気化流量は減少する。一方、圧力調節用のガスの供給量を減らすと、原料容器3内の圧力が低下し、PMDAの気化流量は増大する。
【0053】
そこで制御部5は、予め設定された目標値と、PMDAの流量測定値とを比較し、流量測定値が目標値よりも高い場合には、圧力調節用のガスの供給流量q
1を増やしてPMDAの気化流量を低下させる。また、流量測定値が目標値よりも低い場合には、前記供給流量q
1を減らしてPMDAの気化流量を増大させる制御を行う。圧力制御時のハンチングの発生を防ぐため、PMDA流量の目標値に調節範囲を設定してもよいことは、圧力調節バルブPC1の開度調節の場合と同様である。
【0054】
また本例では、制御部5は、PMDAの気化流量(流量測定値)Q2は、重量測定部である重量計37にて、原料容器3の重量を測定し、この重量測定値の経時変化に基づいて算出する流量演算部としての機能も備えている。
なお、PMDAの気化流量Q2を求める手法は、特定の方法に限定されるものではなく、
図2を用いて説明した原料ガスの流量測定値Q3とキャリアガスの流量設定値Q1との差分値Q3−Q1から算出してもよいし、他の手法を用いてもよい。これとは反対に、
図1に示した圧力調節バルブPC1を用いる方式の圧力調節において、重量計37にて取得した重量測定値から算出したPMDAの流量測定値Q2を用いてもよいことは勿論である。
【0055】
また、上述のように圧力調節用のガスを供給して原料容器3内の圧力を調節する場合には、成膜処理部1に供給される原料ガス(キャリアガス、圧力理調節用のガス、PMDAの総量)中のPMDAの濃度の濃度が変化してしまうおそれがある。そこで
図8に示した実施の形態にでは、原料ガス供給路210において、圧力調節用のガスが供給される位置の下流側の位置に、当該圧力調節用のガスの供給量の変動の影響を抑えるためのバッファーガスを供給している。
【0056】
バッファーガスは、バッファーガス供給路620を介して原料ガス供給路210に供給される。このバッファーガス供給路620は、MFC64を介してN
2ガス供給部65に接続されており、これらは本実施の形態のバッファーガス供給部を構成している。
【0057】
そして、制御部5はPMDAの気化流量に応じて圧力調節ガス供給路610から供給される圧力調節用のガスの供給量q
1[sccm]が変化すると、当該圧力調節用のガスの供給量q
1と、バッファーガス供給路620から供給されるバッファーガスの供給量q
2[sccm]との合計q
1+q
2が予め設定された値でほぼ一定となるようにバッファーガス用のMFC64の流量調節を行う。
【0058】
この結果、原料ガス中のキャリアガス、圧力調節用のガス、バッファーガスの合計流量がほぼ一定となるので、原料容器3の圧力を制御することによりPMDAの流量が目標値に調節されると、PMDAの濃度が安定した原料ガスを成膜処理部1に供給することが可能となる。
【0059】
図8には、圧力調節用のガスが供給される位置と、バッファーガスが供給される位置との圧力差を大きくするための差圧形成部であるオリフィス22を原料ガス供給路210に介設した例が記載されている。オリフィス22を設けることにより、圧力調節用のガスによる原料容器3内の圧力調節に対して、バッファーガスが与える影響(外乱)を抑えることができる。ここで差圧形成部の構成は、オリフィス22の例に限られるものではなく、例えば開度調節されたバルブを設けてもよい。
【0060】
また、原料ガス供給路210の配管径が細い場合や、圧力調節用のガスが供給される位置と、バッファーガスが供給される位置とが離れている場合などにおいて、配管自体の圧力損失が十分に大きく、バッファーガスの供給が原料容器3の圧力調節に与える影響が小さい場合には、差圧形成部は設けなくてもよい。
【0061】
ここで
図1、
図8に示した例においては、圧力調節部として圧力調節バルブPC1や圧力調節ガス供給部を個別に設けた例を示したが、1台の原料ガス供給装置に、これら圧力調節バルブPC1と圧力調節ガス供給部との双方を設けて原料容器3内の圧力調節を行ってもよい。
【0062】
以上に説明した各例においては、ポリイミド系の有機絶縁膜の原料であり、常温で固体のPMDAを、本発明の原料ガス供給装置を用いて供給する場合について説明した。しかしながら本発明を適用可能な原料の種類はPMDAの例に限られるものではない。例えば前記ポリイミド系の有機絶縁膜のもう一方の原料であり、常温で固体のODAを液体になるまで加温し、この液体にキャリアガスをバブリングして得た原料ガス中の原料の流量を上述の手法により求めてもよい。また、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)、テトラジメチルアミノハフニウム(TDMAH)、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム(TEMAH)、テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZ)など、アルミニウムやハフニウム、ジルコニウムなどの種々の金属を含む薄膜の成膜に用いる原料の流量測定に適用してもよい。
【0063】
また
図1、
図8の各実施の形態に示した原料供給装置では、原料容器3の温度やキャリアガスの流量Q1を一定とした場合について説明したが、必要に応じてこれらの値を増減してもよいことは勿論である。