特許第5949698号(P5949698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5949698
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】有機樹脂粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 17/52 20060101AFI20160630BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   B01F17/52
   G03G9/08 384
【請求項の数】11
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-164072(P2013-164072)
(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-29986(P2015-29986A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(72)【発明者】
【氏名】松村 和之
(72)【発明者】
【氏名】坂詰 功晃
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−039702(JP,A)
【文献】 特開2011−173779(JP,A)
【文献】 特開2008−273757(JP,A)
【文献】 特開2008−174430(JP,A)
【文献】 特開2008−291186(JP,A)
【文献】 特開2003−149855(JP,A)
【文献】 特開2002−256170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 17
C08J 2
C01B 33/00−33/193
G03G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性球状シリカ粒子を親水性有機化合物の存在下で水性媒体中に分散させてなる分散安定剤の存在下で、重合性単量体を含む単量体組成物を懸濁重合させてなる有機樹脂粒子の製造方法であって、該シリカ粒子が、粒子径(体積基準メジアン径)が0.005〜1.00μm(5〜1000nm)の範囲で、粒度分布D90/D10の値が3以下であり、平均円形度が0.8〜1であり、かつ疎水化度が60%以上である疎水性球状シリカ粒子であることを特徴とする、有機樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記疎水性球状シリカ粒子が、
(A1)4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合生成物またはこれらの混合物を、加水分解および縮合することによって実質的にSiO単位からなる親水性球状シリカ粒子を得る工程と、
(A2)該親水性球状シリカ粒子の表面に、RSiO3/2単位(式中、Rは置換または非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である)を導入する工程と、
(A3)該親水性球状シリカ粒子の表面に更にRSiO1/2単位(式中、各Rは同一または異なり、置換または非置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)を導入する工程とを含む方法により製造されることを特徴とする、請求項1に記載の有機樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
前記疎水性球状シリカ粒子が、
(A1)一般式(I):
Si(OR (I)
(式中、各Rは同一または異種の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)で示される4官能性シラン化合物、その部分加水分解生成物またはこれらの混合物を、塩基性物質の存在下、親水性有機溶媒と水の混合液中で加水分解及び縮合することによって実質的にSiO単位からなる親水性球状シリカ粒子の混合溶媒分散液を得、
(A2)得られた該親水性球状シリカ粒子の混合溶媒分散液に、一般式(II):
Si(OR (II)
(式中、Rは置換または非置換の炭素原子数1〜20の一価炭化水素基、各R4は同一または異種の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)で示される3官能性シラン化合物、その部分加水分解生成物、またはこれらの混合物を添加して該親水性球状シリカ粒子の表面を処理することにより、該親水性球状シリカ粒子の表面にRSiO3/2単位(Rは前記の通りである)を導入して第一の疎水性球状シリカ粒子の混合溶媒分散液を得、
(A3)得られた該第一の疎水性球状シリカ粒子の混合溶媒分散液に、一般式(III):
SiNHSiR (III)
(式中、各Rは同一または異種の置換または非置換の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)
で示されるシラザン化合物、一般式(IV):
SiX (IV)
(式中、Rは一般式(III)で定義した通りであり、XはOH基または加水分解性基である)で示される1官能性シラン化合物、またはこれらの混合物を添加して、前記第一の疎水性球状シリカ粒子の表面を該シラザン化合物、該1官能性シラン化合物、またはこれらの混合物により処理して、該第一の疎水性球状シリカ微粒子の表面にRSiO1/2単位(Rは一般式(III)で定義した通りである)を導入することにより、第二の疎水性シリカ粒子として得られる疎水性球状シリカ粒子である、請求項1又は2に記載の有機樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
前記シリカ粒子の製造工程(A2)と(A3)の間に、濃縮工程を含む、請求項2又は3に記載の有機樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
得られる有機樹脂粒子が、体積平均粒径が0.1〜500μmであり、粒径分布(体積平均粒径/個数平均粒径の比)が1.6以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
前記単量体組成物が、重合性単量体と、(共)重合体、着色剤、及びその他の添加剤から選ばれる少なくとも1種とを含む組成物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
前記単量体組成物が、重合性単量体と着色剤とを含む組成物であることを特徴とする、請求項6に記載の有機樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
疎水性球状シリカ粒子親水性有機化合物の存在下で水性媒体中に分散している、重合性単量体の懸濁重合用の分散安定剤であって、該疎水性球状シリカ粒子が、粒子径(体積基準メジアン径)が0.005〜1.00μm(5〜1000nm)の範囲で、粒度分布D90/D10の値が3以下であり、平均円形度が0.8〜1であり、かつ疎水化度が60%以上である疎水性球状シリカ粒子であることを特徴とする、重合性単量体の懸濁重合用の分散安定剤。
【請求項9】
上記親水性有機化合物が、炭素原子数1〜3のアルコールである、請求項に記載の分散安定剤。
【請求項10】
上記水性媒体が、水又は水/アルコール混合物である、請求項8又は9に記載の分散安定剤。
【請求項11】
(A1)4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合生成物またはこれらの混合物を、加水分解および縮合することによって実質的にSiO2単位からなる親水性球状シリカ粒子を得る工程と、
(A2)該親水性球状シリカ粒子の表面に、RSiO3/2単位(式中、Rは置換または非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である)を導入する工程と、
(A3)該親水性球状シリカ粒子の表面に更にRSiO1/2単位(式中、各Rは同一または異なり、置換または非置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)を導入する工程
とを含む方法により疎水性球状シリカ粒子を製造し、該疎水性球状シリカ粒子を親水性有機化合物の存在下で水性媒体中に分散させることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1項に記載の重合性単量体の懸濁重合用の分散安定剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁重合用の無機系分散安定剤、及びこれを用いてなる有機樹脂粒子の製造方法に関する。本発明は、懸濁重合時の安定性を向上させることのできる懸濁重合用分散安定剤、及びこれを用いることで、粒径分布が狭く、得られた有機樹脂粒子を乾燥粒子として取り出した時の流動性が優れ、粒子の接着、合一がみられず、環境特性が良好で、さらに液中への分散が必要な場合は再分散性に非常に優れる有機樹脂粒子を得ることのできる有機樹脂粒子の製法に関する。さらに本発明は、負に帯電した静電荷像現像用トナーとして有用な有機樹脂粒子の製法、及び該有機樹脂粒子を用いた静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法は、セレン、酸化亜鉛、硫化カドミウム等の無機光導電体材料、または有機光導電体材料によって構成された感光体上に電気的潜像を形成せしめ、これを粉体現像剤で現像化し、紙などに転写して定着するものである。
【0003】
従来、電子写真の現像に用いられるトナーは、一般に熱可塑性樹脂に着色剤及びその他添加剤(電荷制御剤、オフセット防止剤、潤滑剤等)を溶融混合して分散させた後、得られた固化物を微粉砕、分級して所望の粒径の着色微粒子として製造していた。
【0004】
しかしながら、上記の粉砕によりトナーを製造する方法には、種々の欠点が存在する。第一には、樹脂を製造する工程、樹脂と着色剤やその他の添加剤とを混練する工程、固形物を粉砕する工程、粉砕物を分級して所望の粒径の着色微粒子を得る工程等、多くの工程とそれに伴う多種の装置が必要であり、この方法により製造されるトナーは必然的に高価格となる。特に、鮮明でかぶりの少ない画像を形成するための最適な粒子径範囲のトナーを得るために、分級工程は必須の要件であるが、生産性かつ収率の上において問題がある。第二に、混練工程において着色剤やその他の添加剤が樹脂に均一に分散するのは極めて困難であり、故にこの方法で製造されたトナーは、着色剤、電荷制御剤等が分散不良のために各粒子の摩擦帯電特性が異なり、これが解像度の低下につながる。このような問題は今後、画像の高画質化のための必須条件となるトナーの小粒子径化に伴って、更に顕著なものとなる。すなわち、現状の粉砕機では小粒子径のトナーを得るには限界があり、よしんば小粒子径トナーが得られたとしても、着色剤及び電荷制御剤の分散不良のため、帯電量のより大きなバラツキが発生する。
【0005】
これらの粉砕法によるトナーにみられるさまざまな欠点を改良するために、単量体の懸濁重合法によるトナーの製造方法が提案されている。
【0006】
これらの方法は、重合性単量体にカーボンブラック等の着色剤物質、その他の添加剤を加えて懸濁重合せしめて、着色剤物質を含有する樹脂粒子のトナーを一気に合成する方法である。この方法により、従来の粉砕法の欠点をかなり改善することが可能である。すなわち、粉砕工程を全く含まないため、脆性の改良は必要ではなく、形状が球形で流動性に優れるために摩擦帯電性が均一である。
【0007】
しかしながら、このような懸濁重合法による樹脂粒子の製造において、単量体組成物の液滴の合一のない、安定に懸濁した系で重合を行うこと、また、重合によって均一な粒径分布を有する微細な樹脂粒子を得ることは、技術的に困難なことである。
【0008】
そのため重合性単量体組成物を水系媒体中で懸濁重合するに際し、重合の進行に伴い重合体粒子の合一を防止するために、分散安定剤を使用することが従来行われている。
【0009】
分散安定剤としては、従来、難溶性の微粉末状の無機化合物、例えば、BaSO4、CaSO4、MgCO3、BaCO3、CaCO3、Ca3(PO42のような難溶性塩類、珪藻土、タルク、珪酸、粘土のような無機高分子、金属酸化物の粉末、あるいはポリビニルアルコール、ゼラチン、澱粉などの水溶性高分子が用いられている(特許文献1,2)。
【0010】
しかしながら、難水溶性の無機物質を分散安定剤として用いる場合、得られる重合体粒子の粒径分布が比較的狭くなる可能性があるが、2〜30μm程度といった所望の粒径を得ようとするとその使用量が比較的多くなってしまい、また分散安定助剤として用いる界面活性剤(乳化剤)のため、乳化重合の併発によって生じる微小粒子の発生のような粒径分布制御上での問題があった。さらに、重合工程後の酸洗及び/又は水洗処理による分散安定剤の除去操作が必要であり、これが不十分である場合には電気的特性の低下といった問題が生じる、といった欠点があった。
【0011】
一方、分散安定剤として水溶性高分子を用いた場合には、単量体の懸濁重合によって得られた樹脂粒子は、微小粒径のものを多く含むため、粒径分布が広いものとなってしまい、粒径分布の狭い樹脂粒子を得るには、複数回の煩雑な分級等の操作が必要となる。加えて、樹脂粒子表面に付着した分散安定剤の除去が困難であるため、電気的特性が極めて悪くなる、粒子同士の接着・合一が起こる、という欠点があった。
【0012】
上記の分散安定剤を改良したものとして疎水性無機酸化物(疎水性シリカ)を用いることも特許文献3に開示されているが、上記の分散安定剤(難水溶性無機物質及び水溶性高分子)よりも良好に樹脂粒子を製造可能であるが、疎水性シリカの形状や粒度分布のばらつきがあるため、製造される有機樹脂粒子の粒度分布や粒子の形状もばらつきや、有機樹脂粒子の性能に問題が発生する、という欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭63−198075号公報
【特許文献2】特開平4−127162号公報
【特許文献3】特許第4704317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明は、単量体の懸濁重合による有機樹脂粒子の製造において、分散安定剤として新規な疎水性球状シリカ粒子を用いた有機樹脂粒子の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0015】
本発明はまた、懸濁重合時の安定性を向上させることのできる疎水性球状シリカ粒子分散安定剤、及びこれを用いることで、粒径分布が狭く、得られた有機樹脂粒子を乾燥粒子として取り出した時の流動性が優れ、粒子の接着、合一がみられず、環境特性が良好で、さらに液中への分散が必要な場合は、非常に再分散性に優れる有機樹脂粒子を得ることのできる樹脂粒子の製法を提供することを目的とする。
【0016】
更に本発明は、粒径分布が狭いため、分級工程が簡略化でき、且つ歩留まりが高く生産性に優れており、静電荷像現像用トナーとして用いた場合に、極めて狭い粒径分布と良好な電気的特性に基づき、画像は安定し、細線の再現性が良く、カブリがなくなる等の画像特性に優れた負に帯電した静電荷像現像用トナーとして有用な有機樹脂粒子を得ることができる樹脂粒子の製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に至った。
【0018】
上記目的は、疎水性球状シリカ粒子を親水性有機化合物の存在下で水性媒体中に分散させてなる分散安定剤の存在下で、重合性単量体を含む単量体組成物を分散させ、重合させることを特徴とする有機樹脂粒子の製造方法によって達成される。
詳しくは、本願は下記<1>〜<12>の発明を含む。
【0019】
<1> 疎水性球状シリカ粒子を親水性有機化合物の存在下で水性媒体中に分散させてなる分散安定剤の存在下で、重合性単量体を含む単量体組成物を懸濁重合させてなる有機樹脂粒子の製造方法であって、該シリカ粒子が、粒子径(体積基準メジアン径)が0.005〜1.00μm(5〜1000nm)の範囲で、粒度分布D90/D10の値が3以下であり、平均円形度が0.8〜1であり、かつ疎水化度が60%以上である疎水性球状シリカ粒子であることを特徴とする、有機樹脂粒子の製造方法。
【0020】
<2> 前記疎水性球状シリカ粒子が、
(A1)4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合生成物またはこれらの混合物を、加水分解および縮合することによって実質的にSiO2単位からなる親水性球状シリカ粒子を得る工程と、
(A2)該親水性球状シリカ粒子の表面に、R1SiO3/2単位(式中、R1は置換または非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である)を導入する工程と、
(A3)該親水性球状シリカ粒子の表面に更にR23SiO1/2単位(式中、各R2は同一または異なり、置換または非置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)を導入する工程とを含む方法により製造されることを特徴とする、<1>に記載の有機樹脂粒子の製造方法。
【0021】
<3> 前記疎水性球状シリカ粒子が、
(A1)一般式(I):
Si(OR34 (I)
(式中、各R3は同一または異種の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)で示される4官能性シラン化合物、その部分加水分解生成物またはこれらの混合物を、塩基性物質の存在下、親水性有機溶媒と水の混合液中で加水分解及び縮合することによって実質的にSiO2単位からなる親水性球状シリカ粒子の混合溶媒分散液を得、
(A2)得られた該親水性球状シリカ粒子の混合溶媒分散液に、一般式(II):
1Si(OR43 (II)
(式中、R1は置換または非置換の炭素原子数1〜20の一価炭化水素基、各R4は同一または異種の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)で示される3官能性シラン化合物、その部分加水分解生成物、またはこれらの混合物を添加して該親水性球状シリカ粒子の表面を処理することにより、該親水性球状シリカ粒子の表面にR1SiO3/2単位(R1は前記の通りである)を導入して第一の疎水性球状シリカ粒子の混合溶媒分散液を得、
(A3)得られた該第一の疎水性球状シリカ粒子の混合溶媒分散液に、一般式(III):
23SiNHSiR23 (III)
(式中、各R2は同一または異種の置換または非置換の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)
で示されるシラザン化合物、一般式(IV):
23SiX (IV)
(式中、R2は一般式(III)で定義した通りであり、XはOH基または加水分解性基である)で示される1官能性シラン化合物、またはこれらの混合物を添加して、前記第一の疎水性球状シリカ粒子の表面を該シラザン化合物、該1官能性シラン化合物、またはこれらの混合物により処理して、該第一の疎水性球状シリカ微粒子の表面にR23SiO1/2単位(R2は一般式(III)で定義した通りである)を導入することにより、第二の疎水性シリカ粒子として得られる疎水性球状シリカ粒子である、<1>又は<2>に記載の有機樹脂粒子の製造方法。
【0022】
<4> 前記シリカ粒子の製造工程(A2)と(A3)の間に、濃縮工程を含む、<2>又は<3>に記載の有機樹脂粒子の製造方法。
【0023】
<5> 得られる有機樹脂粒子が、体積平均粒径が0.1〜500μmであり、粒径分布(体積平均粒径/個数平均粒径の比)が1.6以下であることを特徴とする、<1>〜<4>に記載の有機樹脂粒子の製造方法。
【0024】
<6> 前記単量体組成物が、重合性単量体と、(共)重合体、着色剤、及びその他の添加剤から選ばれる少なくとも1種とを含む組成物であることを特徴とする、<1>〜<5>に記載の有機樹脂粒子の製造方法。
【0025】
<7> 前記単量体組成物が、重合性単量体と着色剤とを含む組成物であることを特徴とする、<6>に記載の有機樹脂粒子の製造方法。
【0026】
<8> <7>に記載の製造方法で製造された着色有機樹脂粒子を含有してなる静電荷像現像用トナー。
【0027】
<9> 疎水性球状シリカ粒子を親水性有機化合物の存在下で水性媒体中に分散させてなる、重合性単量体の懸濁重合用の分散安定剤であって、該疎水性球状シリカ粒子が、粒子径(体積基準メジアン径)が0.005〜1.00μm(5〜1000nm)の範囲で、粒度分布D90/D10の値が3以下であり、平均円形度が0.8〜1であり、かつ疎水化度が60%以上である疎水性球状シリカ粒子であることを特徴とする、重合性単量体の懸濁重合用の分散安定剤。
【0028】
<10> 前記疎水性球状シリカ粒子が、
(A1)4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合生成物またはこれらの混合物を、加水分解および縮合することによって実質的にSiO2単位からなる親水性球状シリカ粒子を得る工程と、
(A2)該親水性球状シリカ粒子の表面に、R1SiO3/2単位(式中、R1は置換または非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である)を導入する工程と、
(A3)該親水性球状シリカ粒子の表面に更にR23SiO1/2単位(式中、各R2は同一または異なり、置換または非置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)を導入する工程
とを含む方法により製造されることを特徴とする、<9>に記載の重合性単量体の懸濁重合用の分散安定剤。
【0029】
<11> 上記親水性有機化合物が、炭素原子数1〜3のアルコールである、<9>又は<10>に記載の分散安定剤。
【0030】
<12> 上記水性媒体が、水又は水/アルコール混合物である、<9>〜<11>に記載の分散安定剤。
【発明の効果】
【0031】
本発明による製造方法により得られる有機樹脂粒子は極めて粒径分布が狭く、乾燥して粒子として取り出した時の流動性に優れ、粒子の接着、合一がみられず、環境特性が良好である。静電荷像現像用トナーとして用いた場合には極めて狭い粒径分布と良好な電気的特性に基づき、画像は安定し、細線の再現性が良く、カブリがなくなる等の画像特性に優れた静電荷像現像用トナー材料として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明について詳細に説明する。
[分散安定剤]
本発明の懸濁重合用分散安定剤は、疎水性球状シリカ粒子を親水性有機化合物の存在下で水性媒体中に分散させてなることを特徴とするものである。
【0033】
<疎水性球状シリカ粒子>
有機樹脂粒子を製造する際の懸濁重合用分散安定剤として使用する、疎水性球状シリカ粒子の特徴について、詳細に説明する。
本発明で使用される疎水性球状シリカ粒子は、
(A1)4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合生成物またはそれらの組み合わせを加水分解および縮合することによって実質的にSiO2単位からなる親水性球状シリカ粒子を得る工程と、
(A2)該親水性球状シリカ粒子の表面に、R1SiO3/2単位(式中、R1は置換または非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である)を導入する工程と、
(A3)該親水性球状シリカ粒子の表面に更にR23SiO1/2単位(式中、各R2は同一または異なり、置換または非置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)を導入する工程と
を含む方法により製造され、
粒子径が0.005〜1.0μmの範囲で、粒度分布D90/D10の値が3以下であり、かつ平均円形度が0.8〜1である疎水性球状シリカ粒子(1)である。
【0034】
・粒子径
上記疎水性球状シリカ粒子は粒子径が0.005〜1.00μm(5〜1000nm)であり、好ましくは0.01〜0.30μm(10〜300nm)、特に好ましくは0.01〜0.20μm(10〜200nm)である。ここで粒子径とは、動的光散乱法/レーザードップラー法ナノトラック粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、商品名:UPA−EX150)により測定し、その体積基準メジアン径を粒子径とした。なお、メジアン径とは粒度分布を累積分布として表した時の累積50%に相当する粒子径である。この粒子径が0.005μmよりも小さいと、重合性単量体組成物液滴の水系媒体中における分散安定性の向上効果が小さくなるため好ましくない。また1.00μmよりも大きいと、重合性単量体組成物液滴の水系媒体中における分散安定性の向上効果が大きく成り過ぎるため好ましくない。
【0035】
・粒度分布
本発明の疎水性球状シリカ粒子の粒度分布の指標であるD90/D10の値は、3以下である。ここで、D10及びD90はそれぞれ、粒子径を測定することによって得られる値である。粒子の粒度分布は、動的光散乱法/レーザードップラー法ナノトラック粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、商品名:UPA−EX150)により測定し、その体積基準メジアン径を粒子径とし、小さい側から累積10%となる粒子径をD10、小さい側から累積90%となる粒子径をD90という。メジアン径とは、前記の通り、粒度分布を累積分布として表した時の累積50%に相当する粒子径である。本発明の疎水性球状シリカ粒子は、D90/D10が3以下であることが特徴であり、この粒度分布がシャープな粒子であるため、製造される有機樹脂粒子の粒度分布もシャープにできる点で好ましい。上記D90/D10は、2.9以下であることがより好ましい。
【0036】
・平均円形度
本発明の疎水性球状シリカ粒子の平均円形度は0.8〜1が好ましく、0.92〜1がより好ましい。ここで「球状」とは、真球だけでなく、若干歪んだ球も含む。このような「球状」の形状とは、粒子を二次元に投影した時の円形度で評価し、平均円形度が0.8〜1の範囲にあるものを云う。本願で円形度とは、(粒子面積と等しい円の周囲長)/(粒子周囲長)である。この円形度は電子顕微鏡等で得られる粒子像を画像解析することにより測定することができる。平均円形度は、電子顕微鏡により観察し、1次粒子100個を測定して、平均することにより得ることができる。
【0037】
・疎水性の尺度
本発明の疎水性球状シリカ粒子の疎水性の尺度としては、特に限定されるものではないが、例えば、疎水化度(メタノールウェッタビリティー)が好適に用いることができる。下記の手順で測定された場合の疎水化度が60%以上、特に65%以上のものが好ましい。この値が60%未満であると、得られる有機樹脂粒子に良好な耐環境性を付与できなかったり、該有機樹脂粒子を静電荷現像用トナーとして応用する場合、帯電安定性が悪くなる場合がある。
【0038】
ここで、本発明でいう上記疎水化度とは、以下の手順で得られた数値をいう。
1)試料0.2gを200mlビーカーに秤取し純水50mlを加える。
2)電磁攪拌しながら、液面下へメタノールを加える。
3)液面上に試料が認められなくなった点を終点とする。
4)要したメタノール量から次式により疎水化度を算出する。
【0039】
【数1】
【0040】
上記(A1)工程において、親水性球状シリカ粒子が「実質的にSiO2単位からなる」とは、該粒子は基本的にはSiO2単位から構成されているが該単位のみから構成されている訳ではなく、少なくとも表面に通常知られているようにシラノール基を多数個有してもよいことを意味する。また、場合によっては、原料である4官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合生成物に由来する加水分解性基(ヒドロカルビルオキシ基)が一部シラノール基に転化されずに若干量そのまま粒子表面や内部に残存していてもよいことを意味する。
【0041】
以上のように、本発明においては、(A1)工程でテトラアルコキシシラン等の4官能性シラン化合物の加水分解によって得られる小粒径ゾルゲル法シリカをシリカ原体(疎水化処理前のシリカ)として、これに特定の表面処理を行なうことにより、粉体として得たときに、疎水化処理後の粒子径がシリカ原体の一次粒子径を維持しており、凝集しておらず、小粒径であり、懸濁重合用分散安定剤として良好な疎水性シリカ粒子が得られる。
【0042】
小粒径のシリカ原体として、アルコキシ基の炭素原子数が小さいテトラアルコキシシランを用いること、溶媒として炭素原子数の小さいアルコールを用いること、加水分解温度を高めること、テトラアルコキシシランの加水分解時の濃度を低くすること、加水分解触媒の濃度を低くすることなど、反応条件を変更することにより、任意の小粒径のシリカ原体を得ることができる。
【0043】
この小粒径のシリカ原体に、前述の通り、そして更に詳しく以下に述べるように、特定の表面処理を行なうことにより、所望の疎水性シリカ粒子が得られる。
【0044】
次に、上記疎水性球状シリカ粒子の製造方法の一つについて、以下に詳細に説明する。
【0045】
<疎水性球状シリカ粒子(1)の製造方法>
本発明の疎水性球状シリカ粒子は、
工程(A1):4官能性シラン化合物等から親水性球状シリカ粒子の合成工程、
工程(A2):3官能性シラン化合物による表面処理工程、
工程(A3):1官能性シラン化合物による表面処理工程
によって得られる。以下、各工程を順次説明する。
【0046】
・工程(A1):親水性球状シリカ粒子の合成工程
一般式(I):
Si(OR34 (I)
(式中、各R3は同一または異種の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)で示される4官能性シラン化合物、その部分加水分解生成物、またはこれらの混合物を、塩基性物質を含む親水性有機溶媒と水の混合液中で加水分解及び縮合することによって、親水性球状シリカ粒子の混合溶媒分散液が得られる。
【0047】
上記一般式(I)中、R3は、炭素原子数1〜6の一価炭化水素基であるが、好ましくは炭素原子数1〜4、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R3で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のようなアルキル基;フェニル基のようなアリール基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基、特に好ましくはメチル基又はエチル基が挙げられる。
【0048】
上記一般式(I)で示される4官能性シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;及びテトラフェノキシシランが挙げられ、好ましくは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びテトラブトキシシラン、特に好ましくは、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランが挙げられる。また、一般式(I)で示される4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物としては、例えば、メチルシリケート、エチルシリケート等のアルキルシリケートが挙げられる。
【0049】
前記親水性有機溶媒としては、一般式(I)で示される4官能性シラン化合物と、この部分加水分解縮合生成物と、水とを溶解するものであれば特に制限されず、例えば、アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸セロソルブ等のセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられ、好ましくは、アルコール類、セロソルブ類であり、特に好ましくはアルコール類が挙げられる。該アルコール類としては、一般式(V):
5OH (V)
[式中、R5は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]で示されるアルコールが挙げられる。
【0050】
上記一般式(V)中、R5は、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であるが、好ましくは炭素原子数1〜4、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R5で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基、より好ましくはメチル基及びエチル基が挙げられる。一般式(V)で示されるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられ、好ましくはメタノール、エタノールが挙げられる。アルコールの炭素原子数が増えると、生成する球状シリカ粒子の粒子径が大きくなる。従って、目的とする小粒径のシリカ粒子を得るためには、メタノールが好ましい。
【0051】
上記塩基性物質としては、アンモニア、ジメチルアミン、ジエチルアミン等、好ましくは、アンモニア、ジエチルアミン、特に好ましくはアンモニアが挙げられる。これらの塩基性物質は、所要量を水に溶解した後、得られた水溶液(塩基性)を前記親水性有機溶媒と混合すればよい。
該塩基性物質の使用量は、一般式(I)で示される4官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合生成物のヒドロカルビルオキシ基の合計1モルに対して0.01〜2モルであることが好ましく、0.02〜0.5モルであることがより好ましく、0.04〜0.12モルであることが特に好ましい。このとき、塩基性物質の量が少ないほど所望の小粒径シリカ粒子となる。
【0052】
上記加水分解及び縮合で使用される水の量は、一般式(I)で示される4官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合生成物のヒドロカルビルオキシ基の合計1モルに対して0.5〜5モルであることが好ましく、0.6〜2モルであることがより好ましく、0.7〜1モルであることが特に好ましい。水に対する上記親水性有機溶媒の比率(親水性有機溶媒:水)は、質量比で0.5〜10であることが好ましく、3〜9であることがより好ましく、5〜8であることが特に好ましい。親水性有機溶媒の量が多いほど所望の小粒径のシリカ粒子が得られる。
【0053】
一般式(I)で示される4官能性シラン化合物等の加水分解および縮合は、周知の方法、即ち、塩基性物質を含む親水性有機溶媒と水との混合物中に、一般式(I)で示される4官能性シラン化合物等を添加することにより行われる。
【0054】
この工程(A1)で得られる親水性球状シリカ粒子の混合溶媒分散液中のシリカ粒子の濃度は一般に、3〜15質量%であり、好ましくは5〜10質量%である。
【0055】
・工程(A2):3官能性シラン化合物による表面処理工程
工程(A1)で得られた親水性球状シリカ粒子の混合溶媒分散液に、一般式(II):
1Si(OR43 (II)
(式中、R1は置換または非置換の炭素原子数1〜20の一価炭化水素基、各R4は同一または異種の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)で示される3官能性シラン化合物、またはその部分加水分解生成物、またはこれらの混合物を添加して、該親水性球状シリカ粒子の表面をこれにより処理することにより、前記親水性球状シリカ粒子の表面にR1SiO3/2単位(R1は前記の通り)を導入して、第一の疎水性球状シリカ粒子の混合溶媒分散液を得る。
【0056】
工程(A2)は、次の工程である濃縮工程においてシリカ粒子の凝集を抑制するために不可欠である。凝集を抑制できないと、得られるシリカ系粉体の個々の粒子は一次粒子径を維持できないため、分散安定剤としての効果が悪くなる。
【0057】
上記一般式(II)中、R1は、置換または非置換の炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であるが、好ましくは炭素原子数1〜3、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R1で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基、特に好ましくは、メチル基又はエチル基が挙げられる。また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部または全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換されていてもよい。
【0058】
上記一般式(II)中、R4は、炭素原子数1〜6の一価炭化水素基であるが、好ましくは炭素原子数1〜3、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R4で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、好ましくは、メチル基、エチル基又はプロピル基、特に好ましくは、メチル基又はエチル基が挙げられる。
【0059】
一般式(II)で示される3官能性シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等の非置換若しくはハロゲン置換のトリアルコキシシラン等、好ましくは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン及びエチルトリエトキシシラン、より好ましくは、メチルトリメトキシシラン及びメチルトリエトキシシラン、または、これらの部分加水分解縮合生成物が挙げられる。
【0060】
一般式(II)で示される3官能性シラン化合物の添加量は、使用された親水性球状シリカ粒子のSi原子1モル当り0.001〜1モル、好ましくは0.01〜0.1モル、特に好ましくは0.01〜0.05モルである。添加量が0.001モルより少ないと、得られる疎水性球状シリカ粒子の分散性が悪くなるため、分散安定化効果が悪化する場合があり、1モルより多いとシリカ粒子の凝集が生じ得る。
【0061】
工程(A2)で得られる第一の疎水性球状シリカ粒子の混合溶媒分散液中の該シリカ粒子の濃度は通常3質量%以上15質量%未満、好ましくは5〜10質量%である。かかる濃度が低すぎると生産性が低下することがあり、高すぎるとシリカ粒子の凝集が生じてしまうことがある。
【0062】
・濃縮工程
このようにして得られた第一の疎水性球状シリカ粒子の混合溶媒分散液から前記親水性有機溶媒と水の一部を除去し、濃縮することにより、第一の疎水性球状シリカ粒子の混合溶媒濃縮分散液を得る。この際、疎水性有機溶媒をあらかじめ(濃縮工程前)、或いは濃縮工程中に加えてもよい。この際、使用する疎水性溶媒としては、炭化水素系又はケトン系溶媒が好ましい。具体的には該溶媒として、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、メチルイソブチルケトンが好ましい。前記親水性有機溶媒と水の一部を除去する方法としては、例えば留去、減圧留去などが挙げられる。得られる濃縮分散液はシリカ粒子濃度が15〜40質量%であるのが好ましく、20〜35質量%であるのがより好ましく、25〜30質量%であるのが特に好ましい。15質量%より少ないと後工程の表面処理が円滑に進まないことがあり、40質量%より大きいとシリカ粒子の凝集が生じてしまうことがある。
【0063】
濃縮工程は、次の工程(A3)において表面処理剤として使用される一般式(III)で表されるシラザン化合物および一般式(IV)で表される一官能性シラン化合物がアルコールや水と反応して表面処理が不十分となり、その後に乾燥を行った時に凝集を生じ、得られるシリカ粉体は一次粒子径を維持できず、分散安定化効果が悪くなる、といった不具合を抑制するという意義もある。
【0064】
・工程(A3):1官能性シラン化合物による表面処理工程
工程(A2)で得られ、場合によっては濃縮工程に付した第一の疎水性球状シリカ粒子の混合溶媒分散液に、一般式(III):
23SiNHSiR23 (III)
(式中、各R2は同一または異種の置換または非置換の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)
で示されるシラザン化合物、又は一般式(IV):
23SiX (IV)
(式中、R2は一般式(III)で定義した通りであり、XはOH基または加水分解性基である)で示される1官能性シラン化合物またはこれらの混合物を添加し、これにより前記第一の疎水性球状シリカ粒子の表面を処理し、該粒子の表面にR23SiO1/2単位(但し、R2は一般式(III)で定義の通り)を導入することにより、第二の疎水性球状シリカ粒子を得る。この工程の処理により、第一の疎水性球状シリカ粒子の表面に残存するシラノール基をトリオルガノシリル化する形でR23SiO1/2単位が該表面に導入される。
【0065】
上記一般式(III)および(IV)中、R2は、好ましくは炭素原子数1〜4、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R2で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基、好ましくは、メチル基、エチル基又はプロピル基、特に好ましくは、メチル基又はエチル基が挙げられる。また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部または全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子、で置換されていてもよい。
【0066】
Xで表される加水分解性基としては、例えば、塩素原子、アルコキシ基、アミノ基、アシルオキシ基が挙げられ、好ましくはアルコキシ基又はアミノ基、特に好ましくはアルコキシ基が挙げられる。
【0067】
一般式(III)で示されるシラザン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン等、好ましくはヘキサメチルジシラザンが挙げられる。一般式(IV)で示される1官能性シラン化合物としては、例えば、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール等のモノシラノール化合物;トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン等のモノクロロシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン;トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン等のモノアミノシラン;トリメチルアセトキシシラン等のモノアシルオキシシランが挙げられ、好ましくは、トリメチルシラノール、トリメチルメトキシシラン又はトリメチルシリルジエチルアミン、特に好ましくは、トリメチルシラノール又はトリメチルメトキシシランが挙げられる。
【0068】
前記シラザン化合物又は/及び官能性シラン化合物の使用量は、使用した親水性球状シリカ粒子のSi原子1モルに対して0.1〜0.5モル、好ましくは0.2〜0.4モル、特に好ましくは0.25〜0.35モルである。使用量が0.1モルより少ないと、得られる疎水性シリカ粒子の分散性が悪くなるため、分散安定剤としての効果が現れない。使用量が0.5モルより多いと、経済的に不利である。
【0069】
上記疎水性球状シリカ粒子は、常圧乾燥、減圧乾燥等の常法によって粉体として得られる。
【0070】
<親水性有機化合物>
上記の疎水性球状シリカ粒子は、そのままでは水性媒体中に均一分散させることが困難であるため、本発明においては、親水性有機化合物の存在下で疎水性球状シリカ粒子を水性媒体中に分散させ、均一分散体として、懸濁重合における分散安定剤として疎水性球状シリカ粒子を有効に作用させるものである。
【0071】
親水性有機化合物としては、水性媒体中に疎水性球状シリカ粒子を均一分散化できるものであれば特に限定されず、各種のものを用いることができるが、望ましくは懸濁重合後に得られる有機樹脂粒子よりも容易に除去可能であるものが好ましい。具体的には例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのようなアルコール類、テトラヒドロフランなどのようなエーテル・アセタール類、アセトン、ジアセトンアルコールなどのようなケトン・アルデヒド類、乳酸メチルなどのようなエステル類、グリセリン、エチレングリコールなどのような多価アルコール誘導体類、プロピオン酸などのようなカルボン酸・無水物類、N,N−ジメチルホルムアミドなどのような含窒素化合物類、ジメチルスルホキシドなどのような含硫黄化合物類、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールなどのようなフッ素化合物類などが好ましく例示できる。特に好ましくは、水性媒体中への疎水性球状シリカ粒子の均一分散性が優れる、疎水性球状シリカ粒子が均一分散された水系媒体中において重合性単量体を懸濁させた際に所望の粒径の液滴(重合性単量体組成物粒子)に制御しやすい、懸濁重合途中に重合性単量体組成物への影響が少なく安定に重合が行える、懸濁重合後に得られる有機樹脂粒子の物性への影響が少なくかつ容易に除去可能である等の点から、アルコール類、中でもメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0072】
本発明に係る懸濁重合用の分散安定剤中の疎水性球状シリカ粒子および親水性有機化合物の配合量は、特に限定されるものではないが、最終的な懸濁重合系における使用形態において、疎水性球状シリカ粒子の配合量が重合性単量体組成物100質量部に対し、0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部が適当である。疎水性球状シリカ粒子の配合量が重合性単量体組成物100質量部に対して0.1質量部未満であると、重合過程における重合性単量体組成物の液滴の分散安定性が十分なものとならないおそれがあり、一方、20質量部を越えてもその効果の向上は望めず経済的でないばかりでなく、得られる有機樹脂粒子に固着する疎水性球状シリカ粒子が増えてしまい、有機樹脂粒子の特性を低下させてしまうおそれがある。
また、親水性有機化合物の配合量は、疎水性球状シリカ粒子100質量部に対し、1〜3000質量部、より好ましくは10〜1000質量部が適当である。親水性有機化合物の配合量が疎水性球状シリカ粒子100質量部に対して1質量部未満であると、懸濁重合系において疎水性球状シリカ粒子が均一分散できず、結果的に重合過程における重合性単量体組成物の液滴の分散安定性が十分なものとならないおそれがある。一方、上記配合量が3000質量部を越えても、疎水性球状シリカ粒子の均一分散の向上は望めず経済的でないばかりでなく、重合性単量体組成物の液滴の形成が不十分であったり、重合安定性が不十分なものとなるおそれがある。
【0073】
<水性媒体>
本発明の分散安定剤に用いる水性媒体としては、水又は水/アルコール混合物を用いることができる。該アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが挙げられる。該水性媒体としては、水が好ましい。
【0074】
なお、本発明に係る有機樹脂粒子の製法においては、親水性有機化合物の存在下で疎水性球状シリカ粒子を水性媒体中に分散させ、均一分散体とした後、この均一分散体(即ち、本発明の分散安定剤)中又は必要に応じてこの均一分散体にさらに水系媒体を添加したものの中に、重合性単量体組成物を懸濁させることが必要である。
【0075】
親水性有機化合物の存在下で疎水性球状シリカ粒子を水性媒体中に分散させ、均一分散体とするための乳化分散装置としては、特に限定されるものではないが、例えばT.K.ホモミクサー(特殊機化工業(株)製)などのような高速剪断タービン型分散機、ピストン型高圧式均質化機(ゴーリン社製)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)などのような高圧ジェットホモジナイザー、超音波ホモジナイザー((株)日本精機製作所製)などのような超音波式乳化分散機、アトライター(三井鉱山(株)製)などのような媒体撹拌型分散機、コロイドミル((株)日本精機製作所製)などのような強制間隙通過型分散機等の乳化分散装置を用いることにより、均一分散処理することが望ましい。
【0076】
[重合性単量体組成物]
重合性単量体組成物は、重合性単量体と、場合によっては(共)重合体、着色剤、及びその他の添加剤から選ばれる少なくとも1種を含むものである。
【0077】
<重合性単量体>
本発明の有機樹脂粒子の製法において、使用される重合性単量体としては、懸濁重合可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン等のスチレン系モノマー、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル等のアクリル酸あるいはメタクリル酸系モノマー、さらには、エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリルといったその他のビニル系重合性単量体を単独でまたは2種以上組合せて用いることが可能である。このうち特に、スチレン系モノマー、アクリル酸あるいはメタアクリル酸系モノマー、またはこれらの組合せが望ましい。
【0078】
さらに分子間に架橋構造を有する有機樹脂粒子を得ようとする場合、例えば、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸デカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタデカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタコンタヘクタエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレン、メタクリル酸アリル、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、テトラメタクリル酸ペンタエリスリトール、ジメタクリル酸フタル酸ジエチレングリコール等の重合性二重結合基を分子中に複数個有する(メタ)アクリル系モノマー、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、これらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等の架橋剤、さらに、ポリブダジエン、ポリイソプレン不飽和ポリエステルおよび特公昭57−56507号公報、特開昭59−221304号公報、特開昭59−221305号公報、特開昭59−221306号公報、特開昭59−221307号公報等に記載される反応性重合体などを使用することも可能である。
【0079】
<(共)重合体>
重合性単量体組成物中に更に、該重合性単量体組成物の組成と同様の組成よりなる(共)重合体あるいはその他の(共)重合体、例えば、スチレン系樹脂、スチレン・アクリレート系樹脂、ロジン誘導体、芳香族系石油樹脂、ピネン系樹脂、エポキシ系樹脂、クマロン系樹脂などを添加することで、粒径分布の均一化を図ることができる。該(共)重合体としては特に限定されるものではないが、例えば重量平均分子量500〜100000程度、より好ましくは1000〜50000程度のものが適当である。このような(共)重合体の添加量は、重合性単量体100質量部に対し0〜50質量部程度が適当である。
【0080】
<着色剤・その他の添加剤>
さらに重合性単量体組成物中には、必要に応じて顔料、染料などの着色剤、あるいはその他の添加剤、例えば磁性粉、オフセット防止剤、電荷制御剤、可塑剤、重合安定剤、帯電防止剤、難燃剤などを配合ないし添加することもできる。
【0081】
・顔料
上記顔料としては、例えば、鉛白、鉛丹、黄鉛、カーボンブラック、群青、酸化亜鉛、酸化コバルト、二酸化チタン、酸化鉄、シリカ、チタン黄、チタンブラック等の無機顔料;ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザーイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロン、レッド4R、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオミンレーキ、ローダミンレーキB、アザリンレーキ、ブリリアントカーミンB 等の赤色顔料;ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、ジオキサンバイオレット等の紫色顔料;アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファストスカイブルー、インダンスブルーBC等の青色顔料;ビグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG等の緑色顔料:その他、イソインドリノン、キナクリドン、ペリノン顔料、ペリレン顔料、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、染色レーキ等の有機顔料が用いられる。
【0082】
・染料
上記染料としては、例えば、ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン染料、ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン染料、インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料等が用いられる。
【0083】
・磁性粉
上記磁性粉としては、例えば鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉体;マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の金属化合物の粉体等が挙げられる。なおこれら磁性粉は着色剤としても作用する。
【0084】
これらの着色剤及びその他の添加剤は、重合性単量体への分散性の向上を目的として、種々の方法により表面処理されたものであってもよい。表面処理方法としては、ステアリン酸、オレイン酸等の長鎖の炭化水素で処理する方法、アクリル酸、メタクリル酸等の極性基を有する重合性単量体で処理する方法、トリメチロールプロパン等の多価アルコールで処理する方法、トリエタノールアミン等のアミン類等で処理する方法、各種カップリング剤で処理する方法、あるいは着色剤またはその他の添加剤の表面の官能基と反応し得るアジリジン基、オキサゾリン基、N−ヒドロキシアルキルアミド基、エポキシ基、チオエポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、ケイ素系加水分解基、アミノ基等の反応基を有する重合体を20〜350℃の温度で反応させ、着色剤またはその他の添加剤の表面に該重合体をグラフト化する方法などを挙げることができる。特に、例えば着色剤としてカーボンブラックを用いた場合は、該重合体として、特開昭63−270767号および特開昭63−265913号に記載のカーボンブラックグラフトポリマーを用いるのが好適である。具体的には次の2種の方法が好ましい。
【0085】
(イ)カーボンブラックの有する官能基と反応し得る反応性基(X)を有する重合体(P)で、カーボンブラックを表面処理する方法、および(ロ)カーボンブラックの存在下で二重結合基1個を有するビニル系単量体(A)を重合してカーボンブラックを表面処理する方法。
【0086】
最初に、(イ)の方法について説明する。
【0087】
カーボンブラックの有する官能基と反応し得る反応性基(X)としては、カーボンブラックの官能基と反応し得るものであれば、特に限定はされないが、エポキシ基、チオエポキシ基、アジリジン基およびオキサゾリン基などの複素環基;イソシアネート基、N−ヒドロキシアルキルアミド基およびアミノ基などが例示できる。中でも、複素環基が好ましく、特に、カーボンブラックの有する官能基との反応性を考慮すると、エポキシ基、アジリジン基およびオキサゾリン基が好ましい。反応性基(X)の数は、カーボンブラックの有する官能基の数との関係にもよるが、重合体1分子当り平均して50〜1、好ましくは20〜1程度であることが望ましい。
【0088】
反応性基(X)を有する重合体(P)としては、カーボンブラックの有する官能基と反応し得る反応性基(X)を備えるものであれば特に限定はされない。重合体(P)としては、例えば、ポリシロキサン系構造、ポリ(メタ)アクリル系構造、ポリエーテル系構造、ポリエステル系構造、ポリアルキレン構造、ポリアミド系構造、ポリイミド系構造、ポリウレタン系構造およびポリスチレン系構造あるいはこれらの共重合体などが挙げられ、直鎖状、分岐状の構造であってもよい。
【0089】
特に、二重結合基を2個以上有するビニル系単量体(B)への分散性を高くできる点で、該重合体(P)としては、ビニル系重合体、ビニル系重合体とブロックまたはグラフト型の重合体を形成する共重合体などが好ましい。ビニル系重合体としては、特に限定されないが、好ましくはカーボンブラックの有する官能基と反応し得る反応性基(X)を有するビニル系モノマー単独または該モノマーと共重合可能なその他のビニル系モノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド、スチレン類など)とを(共)重合することによって得られるビニル系重合体(ポリ(メタ)アクリル系、ポリスチレン系)が挙げられる。
【0090】
また、重合体(P)中に二重結合基を2個以上有するビニル系単量体(B)と反応し得る反応性基(Y)を有していると、ビニル系単量体(B)と反応性基(Y)が反応する結果、得られる粒子中にカーボンブラックが固定化されるため、粒子の強度や硬度がギャップコントロールし易いものになり、顔料やそれに由来する不純物のブリードが少なくなって、高信頼性の着色スペーサーが得られるため、好ましい。
【0091】
かかる重合体(P)の分子量は、特に限定はされないが、カーボンブラックに対する顕著な処理効果やカーボンブラックの作業性の面から、Mn=200〜1×106であるのが好ましく、より好ましくは300〜1×105、さらに好ましくは1000〜5×104である。
【0092】
二重結合基を2個以上有するビニル系単量体(B)と反応し得る反応性基(Y)は、特に限定されないが、二重結合基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基およびアルコキシシリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種または2種以上のものであることが好ましく、特に、ビニル系単量体(B)との反応性の点から、二重結合基が好ましい。また、反応性基(Y)の数は、特に限定されるものではないが、重合体1分子当り平均して20〜1が好ましく、さらに10〜1程度が好ましい。
【0093】
これらの反応性基(X)を有する重合体(P)は、対応する単量体から従来公知の方法、例えば塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、沈殿重合法、溶液重合法などによる重合により得られる。また、予め、重合体を形成したのち反応性基をかかる重合体に導入してもよい。
【0094】
カーボンブラックと、カーボンブラックの有する官能基と反応し得る反応性基(X)を有する重合体(P)との処理は、種々の方法で行うことができ、例えば、カーボンブラックと重合体(P)とを常温〜350℃の温度条件下で撹拌混合することにより反応させることができる。この方法によれば、原料に用いた二次凝集状態にあるカーボンブラックが撹拌混合して反応する際に、効率よく解砕されて微細かつ均一な粒子径となり、しかも反応効率も向上する。
【0095】
また、必要により、上記の反応は、分散媒液の存在下で行うこともできる。使用される分散媒としては、沸点が150℃以下の非極性溶媒が、反応性基(X)と反応しないために、好ましい。
【0096】
このような分散媒液存在下におけるカーボンブラックと重合体(P)との反応は、例えば、50〜150℃、好ましくは70〜140℃の温度で、0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間撹拌混合することにより行われる。
【0097】
カーボンブラックと重合体(P)との割合は、特に限定されないが、カーボンブラック100質量部に対して重合体(P)を1〜5000質量部、好ましくは1〜1000質量部、さらに好ましくは2〜250質量部とすることが望ましい。すなわち、重合体(P)の割合が1質量部未満であると、カーボンブラックの性状、特に表面性状を十分に改質することが困難となるおそれがあり、一方、重合体(P)の割合が5000質量部を越えると、カーボンブラックに結合する重合体(P)の割合が多くなり、経済的でないのみならず、要求されるカーボンブラックの特性を損なうおそれがある。
【0098】
次に、(ロ)の方法について説明する。
【0099】
二重結合基1個を有するビニル系単量体(A)としては、特に限定されないが、好ましくは(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエステル類などが挙げられる。これらビニル系単量体(A)が重合する際に、重合中の成長末端のラジカルがカーボンブラックのベンゼン環にトラップされて、カーボンブラック表面にビニル系単量体(A)の重合物がグラフトされる。ビニル系単量体(A)には、上記のような反応性基(X)がなくても前述の機構によりカーボンブラック表面がビニル系単量体(A)の重合物で処理される。
【0100】
カーボンブラックの存在下でビニル系単量体(A)を重合する方法としては、従来公知の重合方法、例えば塊状重合法、溶液重合法などが挙げられるが、ビニル系単量体(A)の重合物がカーボンブラック表面に効率よくグラフトされる点で、塊状重合法、溶液重合法が好ましく、塊状重合法が最も好ましい。水を用いる懸濁重合法や乳化重合法ではカーボンブラックが水中に存在するため、グラフト効率が悪くなる。例えば、重合は、カーボンブラックとビニル系単量体(A)とをそのままあるいは溶媒の存在下、重合開始剤とともに、常温〜350℃、好ましくは50〜200℃の温度条件下で撹拌、混合することにより行われる。
【0101】
この方法により、原料に用いた二次凝集状態にあるカーボンブラックが撹拌混合されて反応する際に、効率よく解砕されて微細かつ均一な粒子径となる。
【0102】
カーボンブラックとビニル系単量体(A)との割合は、特に限定されないが、カーボンブラック100質量部に対してビニル系単量体(A)を1〜5000、好ましくは10〜5000,さらに好ましくは20〜5000質量部とすることが望ましい。ビニル系単量体(A)の割合が1質量部未満であると、カーボンブラックの性状、特に表面性状を十分に改質することが困難となるおそれがあり、一方、5000質量部を越えると、重合の発熱を抑制できなくなるとともに、カーボンブラックに結合する重合体の割合が多くなり、経済的でないのみならず、要求されるカーボンブラックの特性を損なうおそれがある。
【0103】
上記の(イ)および(ロ)の方法により得られる、重合体(P)で表面処理されたカーボンブラックは、そのまま使用してよいが、カーボンブラック表面に反応していない重合物を除去する方が望ましい。
【0104】
また、カーボンブラック以外の着色剤を用いる場合も、特開平1−118573号に記載の方法により得られる表面処理された着色剤が好適である。
【0105】
・低分子量ポリマー
さらに重合性単量体組成物中に低分子量ポリマーを添加することで、カーボンブラック等の重合性単量体への分散性の向上を図ることができる。低分子量ポリマーとしては特に限定されるものではないが、例えば重量平均分子量500〜100000程度、より好ましくは1000〜50000程度の、スチレン系樹脂、スチレン・アクリレート系樹脂、ロジン誘導体、芳香族系石油樹脂、ピネン系樹脂、エポキシ系樹脂、クマロン系樹脂などが挙げられる。低分子量ポリマーの添加量は、カーボンブラック等の配合量にも左右されるが、重合性単量体100質量部に対し0〜50質量部程度が適当である。
【0106】
・オフセット防止剤
本発明の有機樹脂粒子の製法により静電荷像現像用トナー粒子母材を製造しようとする場合には、上記のような着色剤および/または磁性粉に加えて、オフセット防止剤を添加することが望まれる。オフセット防止剤としては、特に限定されるものではないが、環球法軟化点80〜180℃の重合体、例えば、重量平均分子量1000〜45000、より好ましくは2000〜6000程度のポリオレフィン、いわゆるポリオレフィンワックスが用いられ得る。例えば、ポリオレフィンワックスとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなどの単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ペンテン共重合体、エチレン−3−メチル−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体などのオレフィン共重合体、あるいは、オレフィンとその他の単量体、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルアセテート、ビニルブチレート等のビニルエステル類、弗化ビニル、弗化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラクロロエチレン等のハロオレフィン類、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、n−ブチルメタアクリレート、ステアリルメタアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレート、t−ブチルアミノエチルメタアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロニトリル、N,N−ジメチルアクリルアミド等のアクリル酸誘導体、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の有機酸類、ジエチルフマレート、β−ピネン等、との共重合体など挙げられる。
【0107】
さらにオフセット防止剤としては、上記したようなポリオレフィン以外にも、天然あるいは合成のパラフィンワックス類、特に融点60〜70℃の高融点パラフィンワックス類、ステアリン酸の亜鉛塩、バリウム塩、鉛塩、コバルト塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩及びマグネシウム塩、オレフィン酸の亜鉛塩、マンガン塩、鉄塩、鉛塩、並びにパルチミン酸の亜鉛塩、コバルト塩、マグネシウム塩などのような脂肪酸金属塩、特に炭素数17以上の高級脂肪酸塩類、同様にミリシルアルコールなどの高級アルコール類、ステアリン酸グリセリド、パルミチン酸グリセリド等の多価アルコールエステル類、ミリシルステアレート、ミリシルパルミテート等の脂肪酸エステル類、モンタン酸部分ケン化エステル等の肪酸部分ケン化エステル類、ステアリン酸、パルミチン酸、モンタン酸等の高級脂肪酸類、エチレンビスステアロイルアミド等の脂肪酸アミド及びこれらの混合物などが用いられる。
【0108】
さらにまた、オフセット防止剤として、特開平6−148936号、特開平6−194874号および特開平6−194877号などに記載されるような結晶性(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを使用することも可能である。結晶性(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを使用すると、耐オフセット性、離型性、流動性、帯電立ち上り性等の諸特性の向上が期待できる。
【0109】
オフセット防止剤として用いられる結晶性(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーとしては、例えば、下記一般式(VI)で示される単量体を構成単位として好ましくは100〜50モル%、より好ましくは100〜60モル%、さらに好ましくは100〜70モル%含有するものが挙げられる。
【0110】
【化1】
(式中、R6は水素またはメチル基を表し、またnは15〜32の整数、より好ましくは18〜32の整数、更に好ましくは21〜32の整数である。)
【0111】
上記一般式(VI)で示される単量体として具体的には、例えば、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸ヘプタデシル、メタクリル酸ヘプタデシル、アクリル酸ノナデシル、メタクリル酸ノナデシル、アクリル酸アラキル、メタクリル酸アラキル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ベヘニル、アクリル酸ペンタシル、メタクリル酸ペンタシル、アクリル酸ヘプタシル、メタクリル酸ヘプタシル、アクリル酸ノナシル、メタクリル酸ノナシル、アクリル酸ドテリアシル、メタクリル酸ドテリアシル等が挙げられる。このうち特に好ましくは、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ベヘニル、アクリル酸ペンタシル、メタクリル酸ペンタシル等である。
【0112】
上記一般式(VI)で示される単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン等のスチレン系モノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等の非晶性アクリル酸エステル系または非晶性メタアクリル酸エステル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸系モノマー;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン系モノマー;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物系モノマー;その他、エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、酢酸ビニルなどの各種ビニル系モノマーなどが挙げられる。
【0113】
このような結晶性(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーの重量平均分子量は、35000〜500000、より好ましくは35000〜450000、さらに好ましくは35000〜400000程度である。すなわち、重量平均分子量が35000未満のものであると、溶融粘度が低くすぎて、所望のオフセット防止効果が得られず、またトナー粒子中における結晶性(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーの良好な分散性およびトナーの良好な貯蔵安定性が得られないおそれがあり、一方、重量平均分子量が500000を越えるものであると、溶融粘度が高すぎて、溶融特性が低下し、耐オフセット性が発揮できなくなるおそれが大きいためである。
【0114】
低温定着用トナーを得ようとする場合には、クマロン樹脂、エポキシ樹脂、低分子量ポリスチレンなどを上記のようなオフセット防止剤に代えてあるいは併用して用いることも望ましい。
【0115】
・電荷制御剤
静電荷像現像用トナーを得ようとする場合に用いられる電荷制御剤としては、例えば、ニグロシン、モノアゾ染料、亜鉛、ヘキサデシルサクシネート、ナフトエ酸のアルキルエステルまたはアルキルアミド、ニトロフミン酸、N,N−テトラメチルジアミンベンゾフェノン、N,N−テトラメチルベンジジン、トリアジン、サリチル酸金属錯体等が挙げられる。なお、後述するようにこのような電荷制御剤は、懸濁重合時に添加するよりも、懸濁重合後に得られた樹脂粒子に対し外部添加する方が望ましい。
【0116】
・重合開始剤
重合性単量体の重合に用いる重合開始剤としては、通常懸濁重合に用いられる油溶性の過酸化物系あるいはアゾ系開始剤が利用できる。一例を挙げると、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等がある。該重合開始剤は、重合性単量体に対して、0.01〜20質量%、特に、0.1〜10質量%使用されるのが好ましい。
【0117】
[有機樹脂粒子の製造方法(懸濁重合)]
<製法>
本発明に関わる有機樹脂粒子の製法は、前記したような重合性単量体および任意にその他の各種配合物又は添加剤を含んでなる重合性単量体組成物を、上記したような本発明に係る分散安定剤ないしはこれを含む水系媒体中に添加し、撹拌して所望の粒径の液滴(重合性単量体組成物粒子)を形成して懸濁重合を行なうものである。この懸濁重合は、液滴の粒子径の規制を行なった後あるいは粒子径の規制を行ないながら、反応を行なうことが好ましいが、特に粒子径の規制を行なった後に反応を行なうことが好ましい。この粒子径の規制は、例えば、所定の成分を水性媒体に分散させた懸濁液をT.K.ホモミクサー(特殊機化工業(株)製)により撹拌して行なう。あるいはラインミキサー(例えば荏原製作所社製エバラマイルダー)等の高速撹拌機に1回ないし数回通過させることにより行われる。このようにして、上記液滴の粒子径が所定の大きさ、例えば0.1〜500μm、好ましくは0.5〜100μm、さらに好ましくは0.5〜50μm程度のものとする。
【0118】
<界面活性剤>
本発明の有機樹脂粒子の製法において、懸濁重合時に、重合安定性の向上を図るために、さらに界面活性剤を添加することも可能である。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれを用いることも可能である。
【0119】
アニオン性界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等がある。
カチオン性界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等がある。
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド等がある。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等がある。
【0120】
これらの界面活性剤は、重合性単量体組成物に対して0〜5質量%、好ましくは0.1〜1質量%の量で添加可能である。
【0121】
<乳化重合禁止剤>
また、本発明の有機樹脂粒子の製法において、懸濁重合時においては、水相中で併発する乳化重合を防ぐために、さらに乳化重合禁止剤を添加することも可能である。乳化重合禁止剤としては、例えばチオシアン酸アンモニウム、塩化第二銅、酢酸銅、五酸化バナジウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、二クロム酸カリウム、シュウ酸カリウム、クエン酸三ナトリウムといった無機水溶性禁止剤、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、システイン、グルタチオン、ジメルカプロール、1,4−ジチオスレイトール、ジメルカプト琥珀酸、2,3−ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸といった水溶性メルカプタン化合物、エチレンジアミン化合物、水溶性ニグロシン、ホウ水素化物、モノアゾ染料の金属錯体化合物等がある。また、特開平8−183807号に示される、−SH、−S−S−、−COOH、−NO2および−OHからなる群から選ばれる少なくとも一種の構造単位を有し、水に対して実質的に不溶性でかつ重合性単量体に対して難溶性の化合物、あるいは特開平7−316209号に示される、少なくとも−NO2、−SO3Naおよび2級アミノ基をそれぞれ一つ以上有する芳香族化合物を含んでなる乳化重合防止剤等がある。
【0122】
<重合温度>
重合温度は、使用する重合性単量体の種類等にも左右されるが、10〜90℃、好ましくは30〜80℃程度が適当である。
【0123】
[有機樹脂粒子]
上記したような本発明の有機樹脂粒子の製造方法によって得られる有機樹脂粒子は、懸濁重合の際に、前記したような懸濁重合用分散安定剤の作用によって懸濁液滴の分散安定性が良好に保たれるため、体積平均粒径が0.1〜500μm、特に0.5〜100μm、さらに特に0.5〜50μm程度で、粒径分布(体積平均粒径/個数平均粒径の比)が1.6以下の極めて狭いものとなる。
【0124】
<用途>
本発明の製造方法によって得られる有機樹脂粒子は、上記のごとく粒径分布が極めて狭いため、得られた有機樹脂粒子を乾燥粒子として取り出した時の流動性が優れ、粒子の接着、合一がみられず、かつ懸濁重合時に添加された疎水性球状シリカ粒子が有機樹脂粒子表面に固定化されることで耐湿性等の環境特性が良好で、さらに液中への分散が必要な場合は、非常に再分散性に優れる等、熱的特性、電気的特性、粉体特性といった諸物性に優れるものとなることから、各種の用途において好適に用いられる。また、粒径分布が極めて狭いため、分級工程が簡略化でき、且つ歩留まりが高く生産性に優れる。
【0125】
例えば、懸濁重合において重合性単量体に着色剤を添加して得られた着色有機樹脂粒子は静電荷像現像用トナーとして用いることができる。
【0126】
<静電荷像現像用トナー>
このような本発明に係る静電荷像現像用トナーは、粒径分布が狭いため、分級工程が簡略化でき、且つ歩留まりが高く生産性に優れており、しかも、このようにして得られた有機樹脂粒子の表面には分散安定剤の一成分として用いられた疎水性球状シリカ粒子が固定化されているため、得られる有機樹脂粒子は、環境条件による電気的特性の変化が少なく、かつ負帯電性を付与することも可能であるため、静電荷像現像用トナーとして用いた場合に、極めて狭い粒径分布と良好な電気的特性とに基づき、画像は安定し、細線の再現性が良く、カブリがなくなる等の画質特性に優れた静電荷像現像用トナーとして好適に使用できる。
【0127】
本発明による静電荷像現像用トナーは、前記着色有機樹脂粒子を用いてなるものであるが、該トナーの帯電性を適正な状態とするためには、その体積平均粒径を3.5〜20μm、好ましくは4〜15μm、粒径分布(体積平均粒径/個数平均粒径の比)が1.6以下とするのが好適である。該着色有機樹脂粒子はそのまま静電荷像現像用トナーとすることもできる。
また、電荷調整のための電荷制御剤や流動化剤等の通常のトナーに常用させる添加剤が適宜配合されていてもよい。
【0128】
電荷制御剤を配合する方法は特に制限されるものではなく、従来公知のいかなる方法も採用できる。例えば、着色剤を分散させた重合性単量体を重合する際に電荷制御剤を予め該単量体内に含ませておく方法や、本発明の着色有機樹脂粒子を電荷制御剤で後処理して該着色有機樹脂粒子表面に該電荷制御剤を付着させる方法等を適宜採用できる。また有機樹脂粒子表面に荷電制御剤をさらに外添することで、所望の帯電特性を有する正もしくは負のいずれの帯電性にも容易に調整することが可能である。
【0129】
また本発明の有機樹脂粒子は、その他、該有機樹脂粒子を樹脂組成物中に含有させて、フィルム成形品へのブロッキング防止剤および滑り性向上剤、透光性(透明性)樹脂の光拡散剤、艶消し剤といった用途に、また着色剤を含有した態様の熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の着色剤、被覆組成物、化粧板用添加剤、人工大理石用添加剤、さらに着色剤を含有しないあるいは含有する態様のクロマトグラフィーのカラム充填剤、静電荷像現像用トナー用添加剤、コールターカウンターの表示粒子、免疫診断薬用担体、化粧品用充填剤、紙処理剤、粉体塗料などの用途、また液晶表示板用スペーサー、タッチパネル用スペーサー用途などにも好適に使用可能である。
【実施例】
【0130】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、下記の実施例は、本発明を何ら制限するものではない。
【0131】
[疎水性球状シリカ粒子の合成]
<合成例1>
・工程(A1):親水性球状シリカ粒子の合成工程
攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた3リットルのガラス製反応器に、メタノール989.5gと、水135.5gと、28%アンモニア水66.5gとを入れて混合した。この溶液を35℃となるように調整し、攪拌しながらテトラメトキシシラン436.5g(2.87モル)を6時間かけて滴下した。この滴下が終了した後も、さらに0.5時間攪拌を継続して加水分解を行うことにより、親水性球状シリカ粒子の懸濁液を得た。
【0132】
・工程(A2):3官能性シラン化合物による表面処理工程
工程(A1)で得られた懸濁液に室温でメチルトリメトキシシラン4.4g(0.03モル)を0.5時間かけて滴下し、滴下後も12時間攪拌を継続し、シリカ粒子表面を疎水化処理することにより、疎水性球状シリカ粒子の分散液を得た。
【0133】
・濃縮工程
次いで、ガラス製反応器にエステルアダプターと冷却管とを取り付け、前工程で得られた分散液を60〜70℃に加熱してメタノールと水の混合物1021gを留去し、疎水性球状シリカ粒子の混合溶媒濃縮分散液を得た。このとき、濃縮分散液中の疎水性球状シリカ粒子の含有量は28質量%であった。
【0134】
・工程(A3):1官能性シラン化合物による表面処理工程
前工程で得られた濃縮分散液に、室温において、ヘキサメチルジシラザン138.4g(0.86モル)を添加した後、この分散液を50〜60℃に加熱し、9時間反応させることにより、該分散液中のシリカ粒子をトリメチルシリル化した。次いで、この分散液中の溶媒を130℃、減圧下(6650Pa)で留去することにより、疎水性球状シリカ粒子(1)186gを得た。
【0135】
工程(A1)で得られた親水性球状シリカ粒子について、下記の測定方法1に従って測定を行った。また、上記の工程(A1)〜(A3)の各段階を経て得られた疎水性球状シリカ粒子について、下記の測定方法2〜4に従って測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0136】
[測定方法1〜4]
1.工程(A1)で得られた親水性球状シリカ粒子の粒子径測定
メタノールにシリカ粒子懸濁液を、該シリカ粒子が0.5質量%となるように添加し、10分間超音波にかけることにより、該粒子を分散させた。このように処理した該粒子の粒度分布を、動的光散乱法/レーザードップラー法ナノトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製、商品名:UPA−EX150)により測定し、その体積基準メジアン径を粒子径とした。なお、メジアン径とは粒度分布を累積分布として表した時の累積50%に相当する粒子径である。
【0137】
2.工程(A3)において得られた疎水性球状シリカ粒子の粒子径測定及び粒度分布D90/D10の測定
メタノールに該シリカ粒子を0.5質量%となるように添加し、10分間超音波にかけることにより、該粒子を分散させた。このように処理した該粒子の粒度分布を、動的光散乱法/レーザードップラー法ナノトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製、商品名:UPA−EX150)により測定し、その体積基準メジアン径を粒子径とした。粒度分布D90/D10の測定は、上記粒子径測定した際の分布において小さい側から累積が10%となる粒子径をD10、小さい側から累積が90%となる粒子径をD90とし、測定された値からD90/D10を計算した。
【0138】
3.疎水性球状シリカ粒子の形状測定
疎水性球状シリカ粒子を電子顕微鏡(日立製作所製、商品名:S−4700型、倍率:10万倍)によって観察を行い、形状を確認した。「球状」とは、真球だけでなく、若干歪んだ球も含む。このような粒子の形状は、粒子を二次元に投影した時の円形度で評価し、平均円形度が0.8〜1の範囲にあるものとする。ここで円形度とは、(粒子面積と等しい円の周囲長)/(粒子周囲長)である。平均円形度は上記電子顕微鏡により観察し、1次粒子100個を測定して、平均した値を用いた。
【0139】
4.疎水化度の測定
試料0.2gを200mlビーカーに秤取し純水50mlを加え、電磁攪拌しながら、液面下へメタノールを加える。液面上に試料が認められなくなった点を終点とする。要したメタノール量から次式により疎水化度を算出する。
【0140】
<合成例2>
合成例1において、工程(A1)でメタノール、水、及び28%アンモニア水の量を、メタノール1045.7g、水112.6g、28%アンモニア水33.2gに変えたこと以外は同様にして、疎水性球状シリカ粒子(2)188gを得た。この疎水性球状シリカ粒子を用いて合成例1における測定と同様に測定した。この結果を表1に示す。
【0141】
<合成例3>
・工程(A1):
撹拌機、滴下ロート及び温度計を備えた3リットルのガラス製反応器に、メタノール623.7g、水41.4g、28%アンモニア水49.8gを添加して混合した。この溶液を35℃に調整し、撹拌しながら該溶液にテトラメトキシシラン1163.7gおよび5.4%アンモニア水418.1gを同時に添加開始し、前者は6時間、そして後者は4時間かけて滴下した。テトラメトキシシラン滴下後も0.5時間撹拌を続けて加水分解を行い、シリカ粒子の懸濁液を得た。
【0142】
・工程(A2):
こうして得られた懸濁液に室温でメチルトリメトキシシラン11.6g(テトラメトキシシランに対してモル比で0.01相当量)を0.5時間かけて滴下し、滴下後も12時間撹拌して、シリカ粒子表面の処理を行った。
【0143】
・濃縮工程
該ガラス製反応器にエステルアダプターと冷却管を取り付け、上記の表面処理を施したシリカ粒子を含む分散液にメチルイソブチルケトン1440gを添加した後、80〜110℃に加熱して、メタノール水を7時間かけて留去した。
【0144】
・工程(A3):
こうして得られた分散液に、室温でヘキサメチルジシラザン357.6gを添加し、120℃に加熱し、3時間反応させて、シリカ粒子をトリメチルシリル化した。その後溶媒を減圧下で留去して、疎水性球状シリカ粒子(3)472gを得た。
【0145】
こうして得られたシリカ粒子(3)について、合成例1と同様の測定を行った。シリカ粒子(1)〜(3)の結果を、比較例として市販のアエロジルR972、R974(日本アエロジル社製)の結果と共に、表1に示す。
【0146】
[処理カーボンブラックの合成例]
<合成例4>
撹拌機、不活性ガス導入管、還流冷却管及び温度計を備えたフラスコに、ポリビニルアルコール0.2部を溶解した脱イオン水400部を仕込んだ。そこへ、予め調整しておいたスチレン194.9部およびグリシジルメタクリレート5.1部からなる重合性単量体にベンゾイルパーオキサイド16部を溶解した混合物を仕込み、高速で撹拌して均一な懸濁液とした。ついで窒素ガスを吹き込みながら80℃に加熱し、この温度で5時間撹拌を続けて重合反応を行った後に、冷却して重合体懸濁液を得た。この重合体懸濁液を濾過、洗浄した後に乾燥して、反応性基としてエポキシ基を平均して1分子中に1個有する重合体を得た。この重合体の分子量はGPC測定によると数平均分子量Mn=5,500であった。
【0147】
反応性基としてエポキシ基を平均して1分子中に1個有する重合体40部とカーボンブラックMA−100R(三菱化学(株)製)20部とをラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて160℃、100rpmの条件下に混練して反応させた後に、冷却及び粉砕して、処理カーボンブラック(1)を得た。
【0148】
[有機樹脂粒子の製造]
<実施例1>
疎水性球状シリカ粒子(1)8gを、エチルアルコール30gおよびイオン交換水120gからなる水性媒体中に投入し高剪断力混合装置であるT.K.ホモミクサー(特殊機化工業(株)製)により4000rpmで5分間撹拌して、疎水性球状シリカ粒子が均一分散した水性分散液を調製した。この疎水性球状シリカ粒子の水性分散液を光学顕微鏡(1000倍)で観察したところ、疎水性球状シリカ粒子が均一に微分散されており、1μm以上の粗粒子はみられなかった。
【0149】
[重合性単量体組成物]
スチレン 85g
n−ブチルアクリレート 15g
ジビニルベンゼン 0.3g
カーボンブラック(1) 10g
低分子量ポリスチレン 5g
(Mw=10,000)
ポリエチレンワックス 3g
(Mn=2,000)
2,2´−アゾビスイソブチロニトリル 1g
2,2´−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル) 1g
【0150】
上記重合性単量体組成物を、パールミル(アシザワ(株)製)を用いて30℃で、ベッセル内滞留時間を30分間として混合して、上記顔料が均一分散した重合性単量体組成物分散液を調製した。この重合性単量体組成物分散液を光学顕微鏡(1000倍)で観察したところ、カーボンブラックが均一に微分散されており、1μm以上の粗粒子はみられなかった。
【0151】
次いで、前記のように調製した疎水性球状シリカ粒子水性分散液に、上記により得た重合性単量体組成物分散液およびイオン交換水300gを投入し、室温で高剪断力を有する混合機であるT.K.ホモミクサー(特殊機化工業(株)製)により10000rpmで10分間撹拌して、重合性単量体組成物の液滴(単量体組成物粒子)を造粒した。
【0152】
この造粒した重合性単量体組成物水分散液を、撹拌翼を装着した反応器に入れ、単量体組成物粒子が沈降しない程度に全体を均一撹拌しながら、予めポリオキシエチレンアルキルスルフォアンモニウム(ハイテノールN−08、第一工業製薬(株)製)0.4gを溶解したイオン交換水30gを投入した後、窒素雰囲気下で75℃に加熱し、この温度で6時間撹拌を続けて懸濁重合反応を完結させた。
【0153】
上記により得た重合体組成物の水分散液を、常温(40℃以下)まで冷却し、固液分離した後、繰り返し水で洗浄し、乾燥させることにより本発明の有機樹脂粒子(1)を得た。
【0154】
得られた有機樹脂粒子(1)の粒子径をコールターカウンター(日科機社製、アパーチャー100μm)を用いて測定したところ、その体積平均粒径(dv)は10.1μmで、微小粒径および粗大粒径が少なく、その粒径分布、すなわち体積平均粒径と個数平均粒径(dp)との比(dv/dp)は1.26と、粒径分布の狭いものであった。
【0155】
また、この有機樹脂粒子(1)の体積固有抵抗値を、誘電体損測定器(TR−1100型、安藤電気(株)製)を用い温度25℃、周波数1kHzの条件下で測定したところ、その体積固有抵抗は5.3×1010Ω・cmであった。
【0156】
またさらに、この有機樹脂粒子(1)を光学顕微鏡(1000倍)で観察したところ、それぞれの粒子は、完全に黒い球状を示し、粒子内におけるカーボンブラックの遍在は認められなかった。
【0157】
この有機樹脂粒子(1)30gとスチレンアクリル樹脂コートフェライトキャリア720gを混合して2成分現像剤とした。レオドライ7610複写機(東芝(株)製)により温度25℃、湿度60%の常温常湿下でこの現像剤の画像評価を行ったところ、画像濃度が高く、カブリ、ムラのない解像度の極めて良好な画像が得られた。また連続画像出しにおいても実用上画像の劣化もなく、シャープな高い濃度の画像が得られた。さらに、温度35℃、湿度85%の高温高湿の環境下で同様の画像評価を行ったところ、常温常湿の環境下と同様に良好な画像が得られた。
【0158】
<実施例2>
上記実施例1において、疎水性球状シリカ粒子として疎水性球状シリカ粒子(2)を6gとした以外は、実施例1と同様の操作で本発明の有機樹脂粒子(2)を得た。
【0159】
得られた有機樹脂粒子(2)の粒子径をコールターカウンター(日科機社製、アパーチャー100μm)を用いて測定したところ、その体積平均粒径(dv)は9.0μmで、微小粒径および粗大粒径が少なく、その粒径分布、すなわち体積平均粒径と個数平均粒径(dp)との比(dv/dp)は、1.21と、粒径分布の狭いものであった。
【0160】
また、この有機樹脂微粒子(2)の体積固有抵抗値を、誘電体損測定器(TR−1100型、安藤電気(株)製)を用い温度25℃、周波数1kHzの条件下で測定したところ、その体積固有抵抗は5.2×1010Ω・cmであった。
【0161】
またさらに、この有機樹脂粒子(2)を光学顕微鏡(1000倍)で観察したところ、それぞれの粒子は、完全に黒い球状を示し、粒子内におけるカーボンブラックの遍在は認められなかった。
【0162】
この有機樹脂粒子(2)を用い、実施例1と同様にして2成分現像剤を調製し、画像評価を行ったところ、常温常湿下、高温高湿下ともに、画像濃度が高く、カブリ、ムラのない解像度の極めて良好な画像が得られた。また連続画像出しにおいても実用上画像の劣化もなく、シャープな高い濃度の画像が得られた。
【0163】
<実施例3>
上記実施例1において、疎水性球状シリカ粒子として疎水性球状シリカ粒子(3)を10gとした以外は、実施例1と同様の操作で本発明の有機樹脂粒子(3)を得た。
【0164】
得られた有機樹脂粒子(3)の粒子径をコールターカウンター(日科機社製、アパーチャー100μm)を用いて測定したところ、その体積平均粒径(dv)は12.3μmで、微小粒径および粗大粒径が少なく、その粒径分布すなわち体積平均粒径と個数平均粒径(dp)との比(dv/dp)は、1.25と、粒径分布の狭いものであった。
【0165】
また、この有機樹脂粒子(3)の体積固有抵抗値を、誘電体損測定器(TR−1100型、安藤電気(株)製)を用い温度25℃、周波数1kHzの条件下で測定したところ、その体積固有抵抗は4.9×1010Ω・cmであった。
【0166】
またさらに、この有機樹脂粒子(3)を光学顕微鏡(1000倍)で観察したところ、それぞれの粒子は、完全に黒い球状を示し、粒子内におけるカーボンブラックの遍在は認められなかった。
【0167】
この有機樹脂粒子(3)を用い、実施例1と同様にして2成分現像剤を調製し、画像評価を行ったところ、常温常湿下、高温高湿下ともに、画像濃度が高く、カブリ、ムラのない解像度の極めて良好な画像が得られた。また連続画像出しにおいても実用上画像の劣化もなく、シャープな高い濃度の画像が得られた。
【0168】
<比較例1>
上記実施例1において、疎水性球状シリカ粒子として、市販の日本アエロジル社製アエロジルR972を6gとした以外は、実施例1と同様の操作で有機樹脂粒子(4)を得た。
【0169】
得られた有機樹脂粒子(4)の粒子径をコールターカウンター(日科機社製、アパーチャー100μm)を用いて測定したところ、その体積平均粒径(dv)は9.5μmであったが、微小粒径および粗大粒径が多く、その粒径分布すなわち体積平均粒径と個数平均粒径(dp)との比(dv/dp)は、2.80と、粒径分布の広いものであった。
【0170】
また、この有機樹脂粒子(4)の体積固有抵抗値を、誘電体損測定器(TR−1100型、安藤電気(株)製)を用い温度25℃、周波数1kHzの条件下で測定したところ、その体積固有抵抗は5.0×1010Ω・cmであった。
【0171】
またさらに、この有機樹脂粒子(4)を光学顕微鏡(1000倍)で観察したところ、それぞれの粒子は、黒い球状を示しめしてはいたが、粒子内におけるカーボンブラックの遍在が認められた。
【0172】
この有機樹脂粒子(4)を用い、実施例1と同様にして2成分現像剤を調製し、画像評価を行ったところ、高温高湿下では、画像濃度が低く、カブリ、ムラのない解像度がやや不鮮明な画像が得られた。
【0173】
<比較例2>
上記実施例1において、疎水性球状シリカ粒子として、市販の日本アエロジル社製アエロジルR974を5gとした以外は、実施例1と同様の操作で有機樹脂粒子(5)を得た。
【0174】
得られた有機樹脂粒子(5)の粒子径をコールターカウンター(日科機社製、アパーチャー100μm)を用いて測定したところ、その体積平均粒径(dv)は8.8μmであったが、微小粒径および粗大粒径が多く、その粒径分布すなわち体積平均粒径と個数平均粒径(dp)との比(dv/dp)は、2.75と、粒径分布の広いものであった。
【0175】
また、この有機樹脂粒子(5)の体積固有抵抗値を、誘電体損測定器(TR−1100型、安藤電気(株)製)を用い温度25℃、周波数1kHzの条件下で測定したところ、その体積固有抵抗は5.1×1010Ω・cmであった。
【0176】
またさらに、この有機樹脂粒子(5)を光学顕微鏡(1000倍)で観察したところ、それぞれの粒子は、黒い球状を示しめしてはいたが、粒子内におけるカーボンブラックの遍在が認められた。
【0177】
この有機樹脂粒子(5)を用い、実施例1と同様にして2成分現像剤を調製し、画像評価を行ったところ、高温高湿下では、画像濃度が低く、カブリ、ムラのない解像度がやや不鮮明な画像が得られた。
【0178】
【表1】
<注>
1)工程(A1)で得られた分散液の親水性球状シリカ粒子の粒子径
2)最終的に得られた疎水性シリカ粒子の粒子径