(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係る光変調器1の構成例を示す断面図である。光変調器1は、例えば、フレキシブルケーブルCによって外部と接続される。外部とは、他の基板であり、例えば、光通信用の信号源等である。以下では、説明の便宜上、光通信用の信号源を、単に信号源と称して説明する。また、以下では、他の基板が信号源内部に搭載される基板であるとして説明する。光変調器1は、信号源から出力されたRF(Radio Frequency)信号が入力される。光変調器1は、信号源から取得されたRF信号を、中継基板BとワイヤボンドWを介して光変調部チップLに伝送して光信号を変調する。なお、本実施形態におけるRF信号は、光変調部チップLによって光信号をマイクロ波の波長に変調する程度の振動数(例えば、数十[GHz]程度)であるとするが、他の振動数であってもよい。RF信号は、電気信号の一例である。
【0016】
光変調器1は、光変調部チップLと、筐体2と、5層の中継基板B1〜B4と、2枚のシールド3−1、3−2を備える。なお、光変調器1は、5枚以上の中継基板を備えていてもよく、3枚以下の中継基板を備えていてもよい。また、光変調器1は、3枚以上のシールドを備えていてもよく、1枚のみシールドを備えていてもよい。以下では、説明の便宜上、中継基板B1〜B4を区別して説明する必要が無い限り、まとめて中継基板Bと称して説明する。また、以下では、シールド3−1、3−2を区別して説明する必要が無い限り、まとめてシールド3と称して説明する。
【0017】
光変調部チップLは、ニオブ酸リチウムを含む基板を備え、図示しないニオブ酸リチウムを含む基板に図示しない光源から入力される光信号を光変調器1が取得したRF信号によって変調する。光変調部チップLは、変調部の一例である。
筐体2は、内部に中継基板Bと、シールド3と、光変調部チップLとが設置される金属製の容器である。筐体2は、例えば、SUS(Steel Special Use Stainless)材等によって形成される。なお、本実施形態において筐体2は、直方体形状であるとするが、これに代えて、他の形状であってもよい。
【0018】
中継基板B1〜B4はそれぞれ、1以上のビアVを備えるセラミック製の基板であってRF信号を伝送する伝送路Fが設けられた基板である。ここで、伝送路Fは、伝送路F1〜F10の総称である。また、中継基板B1〜B4は、前述の伝送路Fが上層と下層の両層に設けられた基板である。なお、中継基板B1〜B4は、伝送路が上層と下層のうちいずれか一方に設けられた基板であってもよい。
【0019】
ビアVとは、中継基板Bを貫通し、中継基板Bの上層の伝送路Fと下層の伝送路Fを中継するための線路である。また、ビアVは、
図1に示したように中心導体CCとグラウンド導体GCが同軸を中心として同心円状に設けられ、中心導体CCとグラウンド導体GCとの間の空間に誘電体DB(例えば、アルミナやガラス等)が設けられた同軸線路である。本実施形態において、ビアVは、例えば、中心導体CCの直径が0.1ミリメートルであり、グラウンド導体GCの内径が1.36ミリメートルであり、誘電体DBの誘電率が9.8であるが、これに代えて、他の直径や、他の誘電体率であってもよい。ここで、
図1にに示した矢印S1〜矢印S12はそれぞれ、ビアV1〜ビアV12それぞれの中心導体CCにより伝送されるRF信号の伝送方向を示す。なお、中継基板B1〜B4の上層と下層のうちいずれか一方又は両方に設けられた伝送路Fは、第1伝送路の一例である。また、ビアVは、第2伝送路の一例である。
【0020】
中継基板B1は、ビアV1と、ビアV6と、ビアV7を備える。中継基板B2は、ビアV2と、ビアV5と、ビアV8を備える。中継基板B3は、ビアV3と、ビアV4と、ビアV9と、ビアV10と、ビアV11(
図1においてビアV11は、ビアV10に隠れて見えない)を備える。中継基板B4は、ビアV12を備える。なお、本実施形態において、ビアVという呼称は、ビアV1〜ビアV12のうちのいずれか1つを示す呼称であるとする。
【0021】
中継基板Bは、
図1に示したように、筐体2の内部空間の底面側から中継基板B1、中継基板B2、中継基板B3、中継基板B4の順に積層される。また、中継基板Bは、シールド3−2を介して筐体2と接着される。このように接着されることで、中継基板Bは、シールド3−1とシールド3−2によって挟まれた構造を有することとなる。このような構造にすることで、光変調器1は、後述するRF信号(すなわち、電気信号)の放射成分による空洞共振現象をより確実に抑制することができる。それに加えて、セラミック製の中継基板Bは、金属製の筐体2に直接接着されてしまうと、中継基板Bと筐体2の間の熱による体積変化の差によってクラックが生じてしまう場合がある。これを抑制するため、最下層の中継基板B1は、筐体2とシールド3−2を介して接着されることが望ましい。また、中継基板B1は、シールド3−2と絶縁体Iによって電気的に分離されている。この絶縁体Iは、例えば、
図1に示したビアV6、伝送路F4、ビアV7のうちの一部又は全部とシールド3−2とが電気的に接続されることを抑制する。また、最下層の中継基板B1は、フレキシブルケーブルCからガラスリードピン等を介してRF信号が入力可能なように接続される。
【0022】
以下では、積層された中継基板B1〜中継基板B4を、まとめて多層基板と称して説明する。多層基板は、フレキシブルケーブルCから取得されるRF信号を、中継基板Bに設けられた伝送路と、ビアVと、ワイヤボンドWとを経由して光変調部チップLに伝送させる。中継基板を多層化することにより、インピーダンスマッチングを行うために必要とされる電極を集積化することができる。ここで、
図1とともに
図2を参照して、多層基板によるRF信号の伝送について説明する。
図2は、
図1に示した光変調器1を鉛直上方から鉛直下方に向けて見たときの筐体2内部の一例を示す図である。なお、
図2では、説明の便宜上、シールド3−1を省略している。
【0023】
RF信号は、ビアVを経由することで、多層基板を構成する中継基板B1〜中継基板B4のそれぞれに設けられた伝送路Fに伝送される。換言すると、RF信号は、ビアVを経由することで多層基板を
図1において中継基板Bが積層される方向(上下方向)に伝送される。また、RF信号は、
図1及び
図2に矢印によって示した伝送路F1〜F10を介して、ビアV1からビアV12まで伝送される。そして、RF信号は、ビアV12から中継基板B4の上層に設けられた伝送路によってワイヤボンドWまで伝送される。ワイヤボンドWに伝送されたRF信号は、ワイヤボンドWを介して光変調部チップLまで伝送され、光信号を変調する。なお、上記で説明した中継基板B1〜中継基板B4のそれぞれにおけるビアVや伝送路Fが設けられる位置や、ビアVや伝送路Fの形状等は、あくまで一例であり、これらに限られるわけではない。また、
図2における伝送路Fは、図を簡略化するため、ビアVのグラウンド導体GCと接触しているように示されているが、実際には、ビアVのグラウンド導体GCと接触しないように中継基板Bに設けられる。
【0024】
シールド3−1は、例えば、
図2に示した多層基板の最上層上のほぼ全面を覆う板状の物体である。なお、シールド3−1は、多層基板の複数の層のうちの一部又は全部の間にそれぞれ設置される構成であってもよい。また、シールド3−1の材質は、導電性材料であり、例えば、金、アルミ、銅等である。また、シールド3−1は、筐体2と別体の部材である。ここで、
図3を参照して、シールド3−1について説明する。
図3は、
図1に示した筐体2の内部の一例を鉛直上方から鉛直下方に向けて見たときの図である。
図3に示したように、ほぼ全面とは、中継基板B4の上層のうち、ワイヤボンドWが設置される位置の近傍Nを除く範囲を示す。なお、シールド3−1は、
図2に示した多層基板上の全面を覆う板状の物体であってもよい。その場合、多層基板から光変調部チップLへのRF信号の伝送は、中継基板Bの間からワイヤボンドWによって行われるとする。
【0025】
また、シールド3−1は、
図2に示した各ビアVの直上から筐体2の内部空間(筐体2の内部の上面)へ向けて放出されるRF信号の放射成分を遮蔽する。なお、ビアVを直上から見たときのビアVの面は、電気信号の放射成分の放出面の一例である。ここで、
図4を参照して、シールド3−1が遮蔽するRF信号の放射成分について説明する。
図4は、シールド3−1を備えていない光変調器Xの構成例を示す図である。なお、
図4では、伝送路Fを省略している。
【0026】
ビアVは、光変調器Xがシールド3−1を備えていない場合、筐体2の内部空間に対してビアVの直上方向(
図4に示した多層基板を構成する中継基板B1から中継基板B4へ向かう方向)にRF信号の放射成分を放出する。以下では、説明の便宜上、RF信号の放射成分を、単に放射成分と称して説明する。
図4における各ビアVの直上に示した矢印は、この放射成分を示す。各ビアVからの放射成分の放出は、ビアVがRF信号を伝送する際、ビアVがアンテナとして機能してしまうことに起因する現象である。このビアVの直上方向に放出される放射成分が筐体2の内部空間に放出されると、筐体2は、この放射成分を反射する。
【0027】
このような反射が起こる時、所定の条件が満たされると、放出された放射成分と、反射された放射成分とが干渉を起こし、空洞共振現象が発生する。前述の所定の条件とは、RF信号の4分の1波長が、放射成分が放出される位置から、放射成分が反射される位置までの距離(例えば、ビアV12から放出される放射成分の場合、
図4に示した高さh)と一致する場合である。例えば、高さhを3mmとした場合、放射成分が再結合される伝送距離は6mmである。この場合、RF信号の周波数が25GHz付近の時、空洞共振現象が生じ、後述するように空洞共振現象によってRF信号の透過特性が減衰してしまう。
【0028】
空洞共振現象が発生した場合、共振を起こした放射成分の影響によって、光変調器XがフレキシブルケーブルCから光変調部チップLへ伝送するRF信号の透過特性が劣化する。
図5は、光変調器XがフレキシブルケーブルCから光変調部チップLへ伝送するRF信号の透過特性と、RF信号の振動数の関係の一例を示す図である。以下では、説明の便宜上、光変調器XがフレキシブルケーブルCから光変調部チップLへ伝送するRF信号の透過特性を、単に透過特性と称して説明する。
【0029】
図5に示したグラフの横軸は、RF信号の振動数(例えば、単位は[GHz])を示す。なお、RF信号の波長は、振動数の逆数に比例するため、
図5では、RF信号の振動数と、前述の透過特性の関係を示している。
図5に示したグラフの縦軸は、透過特性(単位は[dB])を示す。
図5に示したように、透過特性は、RF信号の振動数が大きくなる(すなわち、RF信号の波長が小さくなる)と減少する傾向があることが分かる。この減少傾向は、光変調器Xのおける伝送効率によって生じる(伝送効率が100%の場合、劣化しない)。また、
図5に示したグラフからは、RF信号がある振動数の時に生じるディップDが確認できる。ディップDとは、RF信号のある振動数の近傍において、透過特性が急激に小さくなる箇所のことを示す。このディップDは、前述した空洞共振現象によって生じる。
【0030】
シールド3−1は、このような空洞共振現象によって生じるディップDを発生させないため、多層基板の上層を覆うことでビアVの直上から放出される放射成分を遮蔽する。また、シールド3−1は、接地されていることが望ましい。シールド3−1の接地のされ方は、この一例において、
図1に示したようにワイヤーGによって筐体2に接続されるとするが、これに代えて、他の方法で接地される構成であってもよい。このようにすることで、シールド3−1は、放射成分の一部を遮蔽した時、シールド3−1自体がアンテナとして機能することがない。その結果、シールド3−1は、放射成分を筐体2と多層基板との間の空洞内に放出させることなく、放射成分を効率よく遮蔽することができる。なお、シールド3−1は、接地されない構成であってもよい。その場合、何らかの方法により放射成分の遮蔽を効率化する(すなわち、シールド3−1から放射される放射成分を抑制する)ことが望ましい。
【0031】
なお、放射成分は、多層基板を構成する中継基板Bそれぞれの間でも反射を起こす。しかし、例えば、中継基板Bの厚さ(
図1に示した多層基板を構成する中継基板Bが積層される方向の厚さ)が0.25ミリメートル程度の場合、RF信号の波長帯が数百MHz〜数十GHzであるため、RF信号の4分の1波長は、放射成分が放出される位置から放射成分が反射される位置までの距離と一致しない。このため、この反射による空洞共振現象は、起こらない。
【0032】
シールド3−2は、筐体2と直接接続、又はワイヤー等を介して間接的に接続される。また、シールド3−1と同様に、ビアVから放出される放射成分を遮蔽する。シールド3−2は、各ビアVの直下から放出される放射成分を遮蔽する。また、シールド3−2は、筐体2と中継基板B1が熱による体積変化によって破損しないように接着させる。また、シールド3−2の上には、多層基板に加えて、
図1に示したように光変調部チップLが設置される。また、シールド3−2の材質は、導電性材料であり、例えば、金、アルミ、銅等である。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る光変調器1は、中継基板Bと、中継基板Bの平面上に設けられ、外部(例えば、信号源等)から入力されるRF信号を中継基板Bの平面に沿って伝送する伝送路Fと、中継基板Bに設けられ、中継基板Bの平面とは異なる方向にRF信号を伝送するビアVと、伝送路F及びビアVにより伝送されたRF信号により光信号を変調する変調部と、伝送路FとビアVの接合部分から放出される放射成分を遮蔽するシールド3−1と、を備える。これにより、光変調器1は、RF信号の透過特性の劣化を抑制することができる。
【0034】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について、図面を参照して説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様な構成部には、同じ符号を付して説明を省略する。第2実施形態に係る光変調器1のシールド3−1は、
図2に示した多層基板上のほぼ全面を覆う板状の物体に代えて、
図6に示したように多層基板におけるビアVの直上にのみ設置され、ビアVを覆い隠す円盤状の物体である。
図6は、第2実施形態に係る光変調器1の筐体2の内部の一例を鉛直上方から鉛直下方に向けて見たときの図である。なお、
図6では、シールド3−1と筐体2の接続と、伝送路Fとを省略している。
【0035】
図6に示したように、シールド3−1は、各ビアVの直上にのみ設置される。ここで、例えば、中心導体CCの直径が0.1ミリメートルであり、グラウンド導体GCの内径が1.36ミリメートルであり、誘電体DBの誘電率が9.8であるビアVが中継基板Bに設けられている場合、シールド3−1は、
図7に示したような構造を有することで、ビアVから放出される放射成分を十分に遮蔽することができる。十分に遮蔽することができる状態とは、遮蔽し切れずに漏れ出た放射成分によって前述した空洞共振現象が起きた場合であっても、その空洞共振現象が光変調器1の透過特性にディップDを生じさせない程度にしか生じない状態であることを示す。また、シールド3−1は、ビアVの直上にのみ設けられることにより、何らかの事象によってシールド3−1と筐体2の間に放射成分が漏れてしまった場合に生じる空洞共振現象を、より確実に抑制することができる。
図7は、第2実施形態に係るシールド3−1の上面図及び側面図の一例を示す図である。
【0036】
図7(A)には、シールド3−1の上面図を示す。また、
図7(B)には、シールド3−1の側面図を示す。
図7(A)に示したように、シールド3−1の上面は、直径が1.36ミリメートルの円形状の面積(ビアVを覆い隠せる範囲)以上の面積を有する。また、
図7(B)に示したように、シールド3−1の側面は、厚さが0.1ミリメートル以上である。なお、これらの数値は、上述したように中心導体CCの直径が0.1ミリメートルであり、グラウンド導体GCの内径が1.36ミリメートルであり、誘電体DBの誘電率が9.8であるビアVが中継基板Bに設けられている場合の一例である。もし、ビアVの中心導体CCの直径、グラウンド導体GCの内径、誘電体DBの誘電率のうちの一部又は全部が変わった場合、それに応じてシールド3−1の直径や厚さは、
図7に示した値とは異なる。また、シールド3−1は、ビアVを覆い隠すことができれば、円形状である必要はなく、四角形状であってもよいし、他の形状であってもよい。このように、シールド3−1は、ビアVの直上のみを覆い隠すように設置されることで、ビアVから放出される放射成分を十分に遮蔽することができる。なお、ビアVの直上は、第1伝送路と第2伝送路の接合部分の放射成分の放射側の一例である。
【0037】
以上説明したように、第2実施形態に係る光変調器1は、ビアVの直上にのみ設けられた円形状のシールド3−1が多層基板上に設けられている。これにより、光変調器1は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0038】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態について、図面を参照して説明する。なお、第3実施形態では、第1実施形態と同様な構成部には、同じ符号を付して説明を省略する。第3実施形態に係る光変調器1のシールド3−1は、
図2に示した多層基板上のほぼ全面を覆う板状の物体に代えて、
図8に示したように多層基板におけるビアVの直上に2本のワイヤーが交差するように設けられるワイヤボンドやワイヤボンドよりも太いリボンである。
【0039】
図8は、第3実施形態に係る光変調器1の筐体2の内部の一例を鉛直上方から鉛直下方に向けて見たときの図である。なお、
図8では、シールド3−1と筐体2の接続と、伝送路Fとを省略している。
図6に示したように、シールド3−1は、各ビアVの直上にのみ設けられる。ここで、中心導体CCの直径が0.1ミリメートルであり、グラウンド導体GCの内径が1.36ミリメートルであり、誘電体DBの誘電率が9.8であるビアVが中継基板Bに設けられている場合、シールド3−1は、
図9に示したような構造を有することで、ビアVから放出される放射成分を低減することができる。この時、放射成分は、第2実施形態において説明した「十分に遮蔽すること」が可能な程度に低減される。
【0040】
図9は、第3実施形態に係るシールド3−1の側面図の一例を示す図である。なお、
図9において、
図8に示したシールド3−1の2本のワイヤーのうちの1本のみを示し、他の1本を省略している。
図9に示したように、シールド3−1は、ビアVの中心からシールド3−1までの高さが0.96ミリメートル、シールド3−1のワイヤーの長さLWが2.36ミリメートルとなるようにビアVの直上に設けられる。なお、これらの数値は、上述したように中心導体CCの直径が0.1ミリメートルであり、グラウンド導体GCの内径が1.36ミリメートルであり、誘電体DBの誘電率が9.8であるビアVが中継基板Bに設けられている場合の一例である。もし、ビアVの中心導体CCの直径、グラウンド導体GCの内径、誘電体DBの誘電率のうちの一部又は全部が変わった場合、それに応じてシールド3−1の直径や厚さは、
図9に示した値とは異なる。
【0041】
また、シールド3−1は、
図9に示した構造を有するワイヤーを、
図8に示したようにビアVの直上で交差するように設けられる。
図9に示したシールド3−1の構造によりビアVから放出される放射成分が低減されると、ビアVから放出される放射成分は、光変調器1のRF信号の透過特性にディップDを発生させない程度の空洞共振現象しか起こさない。これにより、シールド3−1は、ビアVから放出される放射成分による空洞共振現象を抑制することができ、その結果、光変調器1の透過特性にディップDが発生することを抑制することができる。
【0042】
なお、シールド3−1は、ビアVの直上において2本のワイヤーが交差する構成に代えて、例えば、ビアVの直上において2本のワイヤーが平行に並んで設けられる構成であってもよく、1本のワイヤーが設けられる構成であってもよく、3本以上のワイヤーが設けられる構成等、1本以上のワイヤーを用いた他の構成であってもよい。
【0043】
以上説明したように、第3実施形態に係る光変調器1は、多層基板におけるビアVの直上に2本のワイヤーが交差するように設けられるワイヤボンドとしてシールド3−1が多層基板上に設けられている。これにより、光変調器1は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
<第4実施形態>
以下、本発明の第4実施形態について、図面を参照して説明する。なお、第4実施形態では、第1実施形態と同様な構成部には、同じ符号を付して説明を省略する。第4実施形態に係る光変調器1のシールド3−1は、
図2に示した多層基板上のほぼ全面を覆う板状の物体に代えて、
図10に示したように多層基板におけるビアVの直上に2本のワイヤーが交差するように設けられるメッシュ状の物体である。
【0045】
図10は、第4実施形態に係るシールド3−1の側面図の一例を示す図である。
図10に示したように、このメッシュ状の物体であるシールド3−1は、ビアVから放出される放射成分を、ビアVの直上を通過する2本のワイヤーによって低減する。この時、放射成分は、第2実施形態において説明した「十分に遮蔽すること」が可能な程度に低減される。これにより、シールド3−1は、ビアVから放出される放射成分による空洞共振現象を抑制する。その結果、シールド3−1は、光変調器1の透過特性にディップDが発生することを抑制することができる。なお、ビアVの直上を通過するワイヤーは、ビアVから放出される放射成分を十分に遮蔽することが可能であれば、2本以外の数であってもよい。
【0046】
以上説明したように、第4実施形態に係る光変調器1は、多層基板におけるビアVの直上に2本のワイヤーが交差するように設けられるメッシュ状の物体としてシールド3−1が多層基板上に設けられている。これにより、光変調器1は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
<第5実施形態>
以下、本発明の第5実施形態について説明する。なお、第5実施形態では、第1実施形態と同様な構成部には、同じ符号を付して説明を省略する。第5実施形態に係る光スイッチ4は、第1〜第4実施形態で説明した光変調器1と、光変調器1の光変調部チップLが図示しない光源からニオブ酸リチウムを含む基板へ入力される光信号のオン/オフを切り替える(出力を切り替える)スイッチとを備える。
【0048】
なお、第5実施形態に係る光スイッチ4は、光変調器1の光変調部チップLが図示しない光源からニオブ酸リチウムへ入力される光信号のオン/オフを切り替える(出力を切り替える)スイッチを備える構成に代えて、光変調器1により変調された光信号の出力先が複数あった場合、その複数のうちのいずれか1つを出力先として選択するスイッチを備える構成であってもよい。
以上説明したように、第5実施形態に係る光スイッチ4は、第1〜第4実施形態で説明した光変調器1を備えるため、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
なお、シールド3−1は、上記で説明した実施形態のうちの一部又は全部を組み合わせた構成であってもよい。
【0050】
<本発明に係る背景>
以下、本発明に係る背景について、
図4に示したシールド3−1を備えていない光変調器Xを例にとって説明する。光変調器Xでは、中継基板Bに設けられたリードピンやビアVから鉛直上方又は鉛直下方に向けて筐体2内に放出されるRF信号の放射成分が筐体2の内壁面に反射することで引き起こす空洞共振現象によって、光変調器Xに入力されるRF信号の透過特性を劣化させてしまう場合があった。
【0051】
空洞共振現象において透過特性を劣化させてしまうことの有効な解決策として、筐体2の内部空間を小さくして、空洞共振の周波数を光変調器Xが使用する周波数帯域より高くする方法や、光変調器Xにおける最大の使用周波数帯域で空洞共振を減衰状態にする方法がある。
【0052】
しかしながら、筐体2の高さは、内部に実装する部品のサイズよって制約を受ける。例えば、光変調部チップL上に実装されるバイアスモニタ用のフォトディテクタや、中継基板B上に配値するインピーダンス変成器を含むチップコンデンサやチップ抵抗、RF信号を終端する為の終端抵抗を実装した基板等、光変調器X内部の電子部品実装スペースを確保する必要がある。また、偏波多重変調器のように、偏波回転素子、位相差板やコリメーターレンズなどの数mm程度の光学部品を多数搭載する構成においては、筐体2自体の高さを小さくすることが難しい。
【0053】
また、光変調部チップLの材料としてLiNbO
3などの強誘電体結晶材料を用いる場合、チップ上の信号配線は、一般的に高アスペクトかつワイドギャップ(信号線の高さ/幅の比が大きく、一般的に1以上であり、またに接地電極間の広い50μm以上)のCPW(Co-Planar Waveguide)が用いられている。この場合、光変調部チップLの信号線路の上方に導体があると、透過特性等が劣化する。一例をあげると、CPWの接地電極間距離のおよそ2倍以下の高さの位置に金属筐体内壁があると、インピーダンスやマイクロ波の伝搬速度に影響(実効屈折率に周波数依存性)を及ぼし、透過特性の劣化に繋がる。
【0054】
また、光変調部チップLの光伝搬方向の長さは、広帯域化や低駆動電圧化により数十ミリとならざるを得ない。この事は、複数の基板モードの重なりが生じ、信号劣化を及ぼす一因にもなっている。
【0055】
このように、光変調器Xでは、筐体2の高さを小さくすることが難しく、中継基板Bに設けられたリードピンやビアVから鉛直上方又は鉛直下方に放出されるRF信号の放射成分を遮蔽する何らかの方法が求められていた。光変調器1は、シールド3−1とシールド3−2によって中継基板Bに設けられたリードピンやビアVから鉛直上方又は鉛直下方に放出されるRF信号の放射成分を遮蔽し、光変調器Xに比べてより確実に透過特性の劣化を抑制することができる。
【0056】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。