特許第5949985号(P5949985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5949985
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】粉体処理剤及び処理粉体
(51)【国際特許分類】
   C09C 3/12 20060101AFI20160630BHJP
   C09C 3/10 20060101ALI20160630BHJP
   C09C 1/04 20060101ALI20160630BHJP
   C09C 1/36 20060101ALI20160630BHJP
   C08L 83/08 20060101ALI20160630BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   C09C3/12
   C09C3/10
   C09C1/04
   C09C1/36
   C08L83/08
   C08K3/22
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-52240(P2015-52240)
(22)【出願日】2015年3月16日
(62)【分割の表示】特願2011-220179(P2011-220179)の分割
【原出願日】2011年10月4日
(65)【公開番号】特開2015-145499(P2015-145499A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2015年3月17日
(31)【優先権主張番号】特願2010-231350(P2010-231350)
(32)【優先日】2010年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】森谷 浩幸
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−182680(JP,A)
【文献】 特開2001−114647(JP,A)
【文献】 特表2009−540040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 3/12
C08K 3/22
C08L 83/08
C09C 1/04
C09C 1/36
C09C 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(3)で表されるオルガノポリシロキサンを含有する粉体処理剤。
【化1】

[式(3)中、Rは互いに独立に、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のフロロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、及び炭素数7〜30のアラルキル基から選択される基であり、R10は下記一般式(1)
【化2】

[式(1)中、X及びYはそれぞれ独立に、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であり、mは0〜4の整数であり、Raは水素原子又は炭素数1〜4の1価の炭化水素基である。Zは下記一般式(2)
【化3】

(式(2)中、dは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜22のアシル基から選択される基であり、bはアミノ酸の側鎖であり、dが水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基の場合、Rcは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rdが炭素数1〜22のアシル基の場合、Rcは炭素数1〜6のアルキル基であるが、RbとRdがアルキレン基によって連結してプロリン環を形成し、かつRcが水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基であってもよい。
で表される有機基である。]
で表される有機基であり、R11はR又はR10から選択される有機基であり、Aは下記一般式(4)
【化4】

(式(4)において、R及びR10は上記の通りであり、Qは酸素原子、又は炭素数1〜3の2価の炭化水素基である。)
で表されるセグメントであり、式(3)及び式(4)において、a、b及びcは互いに独立に0〜3の整数であり、eは0〜100の整数であり、fは0〜5,000の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0〜100の整数であり、jは0〜5,000の整数であり、但し、R11がR10である場合、1≦a+b+c+e+g+iであり、R11がRである場合、1≦a+b+c+e+iである。]
【請求項2】
アミノ酸が、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、サルコシン、γ−アミノ酪酸、オルニチン、クレアチン、オパイン、シスチン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、チロキシン、デスモシン、O−ホスホセリン、又はバリンである請求項1に記載の粉体処理剤。
【請求項3】
粉体100質量部に対して請求項1又は2に記載の粉体処理剤0.1〜30質量部で処理された処理粉体。
【請求項4】
粉体が酸化亜鉛である請求項3に記載の処理粉体。
【請求項5】
粉体が酸化チタンである請求項3に記載の処理粉体。
【請求項6】
粉体が体質顔料である請求項3に記載の処理粉体。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載の処理粉体を油剤に分散してなる油中粉体分散物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種粉体に対し凝集性を少なくし、優れた分散性を与える粉体処理剤及びこの粉体処理剤で処理された粉体に関する。
【背景技術】
【0002】
未処理の粉体は、粉体表面の持つ電荷や極性、微量の不純物等による凝集が起こり易く、これが粉体の分散性や安定性を阻害する。そこで、粉体の分散性や安定性を向上させると共に、化粧料に用いる場合の感触の改善を目的として、粉体の表面を種々の処理剤で処理することが提案されている。この粉体の表面処理に用いる処理剤や処理方法は、目的により、被処理粉体の表面の性質や分散媒に対する特性等を考慮して選択される。
【0003】
このような処理としては、例えば油剤や金属石鹸などによる親油化処理、界面活性剤や水溶性高分子等による親水化処理、シリコーン油等による撥水撥油処理等が知られていた。これらの中でも、特に感触や撥水性、安全性等に優れているシリコーン化合物が、油剤として使用されることが多くなってきている。そこで、粉体の相溶性改良としてメチルハイドロジェンシロキサンによる表面処理(特許文献1:特許第2719303号公報)や、直鎖状の片末端アルコキシ変性シリコーンによる表面改質方法(特許文献2:特開平7−196946号公報)が提案されている。また、シリコーンオイル中での分散性改良として、特許文献3:特開平10−167946号公報には、HLBが2〜7のポリエーテル変性シリコーンを分散助剤とする方法が開示されている。更に、特許文献4:特開平10−316536号公報ではポリグリセリン変性シリコーンを用いた改質粉体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2719303号公報
【特許文献2】特開平7−196946号公報
【特許文献3】特開平10−167946号公報
【特許文献4】特開平10−316536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの表面処理粉体は、いずれも粉体の凝集や沈降の改良に効果があるもののその効果は未だ十分なものではなかった。また、処理剤や処理方法によっては、使用時に粉体と処理剤が分離し、経時によって粉体が凝集したりして再分散性が悪くなり、製品の品質や使用感等を損ねるという欠点があった。また、特開平10−167946号公報や特開平10−316536号公報で示される改質粉体は、ポリエーテルやポリグリセリン等の親水基が粉体表面に配向していると考えられるが、これら親水基は親水性が不十分であった。
【0006】
従って、本発明は、凝集性が少なく、分散性及び経時安定性に優れた粉体を与える粉体処理剤及びこの粉体処理剤で処理された処理粉体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、粉体処理剤としてアミド結合で連結したアミノ酸変性オルガノポリシロキサンを用いることにより、凝集性が少なく、分散性に優れた粉体を与えることができることを知見し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、下記粉体処理剤及び処理粉体を提供する。
〔1〕
下記一般式(3)で表されるオルガノポリシロキサンを含有する粉体処理剤。
【化1】

[式(3)中、Rは互いに独立に、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のフロロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、及び炭素数7〜30のアラルキル基から選択される基であり、R10は下記一般式(1)
【化2】

[式(1)中、X及びYはそれぞれ独立に、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であり、mは0〜4の整数であり、Raは水素原子又は炭素数1〜4の1価の炭化水素基である。Zは下記一般式(2)
【化3】

(式(2)中、dは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜22のアシル基から選択される基であり、bはアミノ酸の側鎖であり、dが水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基の場合、Rcは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rdが炭素数1〜22のアシル基の場合、Rcは炭素数1〜6のアルキル基であるが、RbとRdがアルキレン基によって連結してプロリン環を形成し、かつRcが水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基であってもよい。
で表される有機基である。]
で表される有機基であり、R11はR又はR10から選択される有機基であり、Aは下記一般式(4)
【化4】

(式(4)において、R及びR10は上記の通りであり、Qは酸素原子、又は炭素数1〜3の2価の炭化水素基である。)
で表されるセグメントであり、式(3)及び式(4)において、a、b及びcは互いに独立に0〜3の整数であり、eは0〜100の整数であり、fは0〜5,000の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0〜100の整数であり、jは0〜5,000の整数であり、但し、R11がR10である場合、1≦a+b+c+e+g+iであり、R11がRである場合、1≦a+b+c+e+iである。]
〔2〕
アミノ酸が、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、サルコシン、γ−アミノ酪酸、オルニチン、クレアチン、オパイン、シスチン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、チロキシン、デスモシン、O−ホスホセリン、又はバリンである〔1〕に記載の粉体処理剤。
〔3〕
粉体100質量部に対して〔1〕又は〔2〕に記載の粉体処理剤0.1〜30質量部で処理された処理粉体。
〔4〕
粉体が酸化亜鉛である〔3〕に記載の処理粉体。
〔5〕
粉体が酸化チタンである〔3〕に記載の処理粉体。
〔6〕
粉体が体質顔料である〔3〕に記載の処理粉体。
〔7〕
〔3〕〜〔6〕のいずれかに記載の処理粉体を油剤に分散してなる油中粉体分散物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粉体処理剤を用いて粉体を処理することにより、凝集性が少なく、分散性に優れた粉体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の粉体処理剤は、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも一つに、下記一般式(1)で表される有機基が結合してなるアミノ酸変性オルガノポリシロキサンを含有するものである。
【化5】

[式(1)中、X及びYはそれぞれ独立に、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であり、mは0〜4の整数であり、Raは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基等の1価の炭化水素基である。Zは下記一般式(2)
【化6】

(式(2)中、Rbはアミノ酸の側鎖、Rcは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rdは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜22のアシル基である。)
で表される有機基である。]
【0011】
この場合、アミノ酸変性オルガノポリシロキサンは、実質的にアミノ変性オルガノポリシロキサンとアミノ酸又はアミノ酸誘導体に由来するカルボキシル基の塩を含有しないアミノ酸変性オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0012】
X、Yの2価の炭化水素基としては、アルキレン基等が挙げられ、また、上記Rdのアシル基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ベンゾイル基であることが好ましい。
更に、上記アミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、サルコシン、γ−アミノ酪酸、オルニチン、クレアチン、オパイン、シスチン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、チロキシン、デスモシン、O−ホスホセリン、バリン等が挙げられる。
【0013】
上記オルガノポリシロキサンとしては、特に下記一般式(3)で表されるものが好ましい。
【化7】

[式(3)中、Rは互いに独立に、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のフロロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、及び炭素数7〜30のアラルキル基から選択される基であり、R10は上記の式(1)で表される有機基であり、R11はR又はR10から選択される有機基であり、Aは下記一般式(4)
【化8】

(式(4)において、R及びR10は上記の通りであり、Qは酸素原子、又は炭素数1〜3のアルキレン基等の2価の炭化水素基である。)
で表されるセグメントであり、式(3)及び式(4)において、a、b及びcは互いに独立に0〜3の整数であり、eは0〜100の整数であり、fは0〜5,000の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0〜100の整数であり、jは0〜5,000の整数であり、但し、R11がR10である場合、1≦a+b+c+e+g+iであり、R11がRである場合、1≦a+b+c+e+iである。]
【0014】
ここで、Rの炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のフロロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、及び炭素数7〜30のアラルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ステアリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、トリフロロプロピル基、ヘプタデカフロロデシル基等のフロロアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基を挙げることができる。これらのうち、炭素数1〜15のアルキル基及びフェニル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。また、式(3)、(4)において、a、b及びcは互いに独立に0〜3の整数である。eは0〜100、好ましくは1〜50の整数であり、fは0〜5,000、好ましくは1〜2,000の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0〜100、好ましくは0〜50の整数であり、jは0〜5,000、好ましくは0〜2,000の整数であり、但し、R11がR10である場合、1≦a+b+c+e+g+iであり、R11がRである場合、1≦a+b+c+e+iである。
【0015】
本発明で使用されるオルガノポリシロキサンは、有機金属触媒存在下、アミノ変性オルガノポリシロキサンとアミノ酸又はアミノ酸誘導体のエステルを反応させることによって得られる。
更に詳しくは、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも一つに下記一般式(1’)
【化9】

(式(1’)中、X及びYはそれぞれ独立に、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であり、mは0〜4の整数であり、Raは水素原子又は炭素数1〜4の1価の炭化水素基である。)
で表されるアミノ基が結合してなるアミノ変性オルガノポリシロキサンと、下記一般式(2’)
【化10】

(式(2’)中、R’は炭素数1〜7の1価の炭化水素基、Rbはアミノ酸の側鎖、Rcは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rdは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜22のアシル基である。)
で表されるアミノ酸のカルボキシル基がエステル化されたアミノ酸エステル又はアミノ酸誘導体のカルボキシル基がエステル化されたアミノ酸誘導体エステル化物とを有機金属触媒存在下に反応させることによって得ることができる。
【0016】
この場合、アミノ変性オルガノポリシロキサンとしては、下記一般式(7)で示されるアミノ変性オルガノポリシロキサンが好ましい。
【化11】

[式(7)中、Rは上記式(3)と同じものを意味し、R12は上記式(1’)で表される有機基であり、R13はR又はR12から選択される有機基であり、A1は下記一般式(8)
【化12】

(式(8)において、R及びR12、Qは上記の通りである。)
で表されるセグメントである。
また、式(7)及び式(8)において、a1、b1及びc1は互いに独立に0〜3の整数である。e1は0〜100、好ましくは1〜50の整数であり、fは0〜5,000、好ましくは1〜2,000の整数であり、g1は0又は1であり、h1は0又は1であり、i1は0〜100、好ましくは0〜50の整数であり、jは0〜5,000、好ましくは0〜2,000の整数であり、但し、R13がR12である場合、1≦a1+b1+c1+e1+g1+i1であり、R13がRである場合、1≦a1+b1+c1+e1+i1である。]
【0017】
本発明で使用されるオルガノポリシロキサンの製造で用いられるアミノ酸エステルは、市販品として得られる。前躯体のアミノ酸は下記一般式
【化13】

で示される構造であり、Rbはアミノ酸の側鎖を意味する。具体的には、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、サルコシン、γ−アミノ酪酸、オルニチン、クレアチン、オパイン、シスチン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、チロキシン、デスモシン、O−ホスホセリン、バリン等が挙げられる。
【0018】
アミノ酸誘導体エステル化物のアミノ酸誘導体残基としてはN−アシルアミノ酸が挙げられる。N−アシルアミノ酸はアミノ酸のアミノ基がアミド化によって保護された化合物であり、アミノ酸部位としては上記で示されたものが挙げられ、N−アシル基としてはアセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ベンゾイル基、ラウロイル基、ステアロイル基等が挙げられ、好ましくはアセチル基、ベンゾイル基である。
【0019】
アミノ酸エステルは上記のアミノ酸誘導体であり、下記一般式で表されるものである。
【化14】

bはアミノ酸の側鎖、Rcは水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基である。Rdは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ベンゾイル基、ラウロイル基、ステアロイル基、ベヘノイル基等の炭素数1〜22のアシル基から選択される基であり、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、アセチル基、ベンゾイル基、ラウロイル基である。アミノ基は塩酸塩になっていてもよい。また、RbとRdがアルキレン基によって連結して環状体を形成し、かつRcが水素原子、又はメチル基、エチル基、プロピル基のプロリンエステルも挙げられる。R’はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、ベンジル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
【0020】
本発明で使用されるオルガノポリシロキサンの製造方法では、有機金属触媒として、第4族、又は13族元素から選択される金属原子が用いられ、好ましくはチタン、ジルコニウム、アルミニウムである。特に、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシジルコニウム、トリアルコキシアルミニウムが好ましく、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、1−プロポキシ基、2−プロポキシ基、1−ブトキシ基が好ましい。これら触媒の使用量としては、原料のアミノ変性オルガノポリシロキサンのアミノ基に対して、特に限定はされないが、0.01〜1当量が好ましく、より好ましくは0.1〜0.5当量である。
【0021】
反応は無溶剤でも進行するが、有機溶剤を用いてもよい。有機溶剤としては、エステル系以外の有機溶剤であれば特に限定されず、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶剤、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、アセトニトリル等が挙げられる。
【0022】
本反応の反応温度としては特に限定されないが、25℃以上120℃以下であり、好ましくは60〜100℃である。また、本反応は単純なエステル−アミド交換反応と異なり、触媒的な反応であるため、必ずしもエステルから排出されるアルコール成分を取り除きながら反応させなければならない訳ではない。反応時間は特に限定されないが、1〜15時間であり、好ましくは1〜5時間である。
【0023】
本反応はアミンとエステルとの反応であり、使用割合は、アミノ変性オルガノポリシロキサン中のアミノ基1当量に対してアミノ酸エステル又はアミノ酸誘導体エステル化物を0.3〜1.5当量であり、好ましくは0.8〜1.1当量であり、より好ましくは1.0当量である。本反応の進行確認はNMR(核磁気共鳴装置)やIRスペクトル測定によって確認することができる。
【0024】
本発明の粉体処理剤は各種粉体の処理に用いられて粉体に非凝集性、分散性を与える。
【0025】
本発明で用いられる粉体は、無機粉体、有機粉体、界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)、有色顔料、パール顔料、金属粉末顔料、タール色素、天然色素のいずれであってもよい。
【0026】
無機粉体としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン、シリカ等が挙げられる。化粧料の用途に対しては、マイカ、セリサイト等の体質顔料や、酸化亜鉛、酸化チタン等が好ましい。
【0027】
有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、テトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロースパウダー、シルクパウダー、12ナイロンや6ナイロン等のナイロンパウダーを始め、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン、スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、微結晶繊維粉体、デンプン、ラウロイルリジン等のパウダーが挙げられる。
【0028】
界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム等が挙げられる。
【0029】
有色顔料としては、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色系顔料、γ−酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色系顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した複合粉体等が挙げられる。
【0030】
パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母等、金属粉末顔料としては、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー、ステンレスパウダー等が挙げられる。
【0031】
タール色素としては、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等、天然色素としては、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等が挙げられる。
【0032】
これらの粉体は、その形状(球状、針状、板状等)や粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)、粒子構造(多孔質、無孔質等)を問わず、いずれも使用することができる。また、これらの粉体同士を複合化したり、油剤や、本発明の粉体処理剤以外のシリコーン、又はフッ素化合物で表面処理を行ったものであってもよい。
【0033】
本発明の前記一般式(1)で表される新規なシリコーン粉体処理剤は、公知の方法で粉体表面に処理することができる。処理方法は公知の方法の中から適宜選択することができるが、例えば、以下の方法が挙げられる。
1.目的の粉体を、粉体処理剤の配合された水あるいは有機溶剤から選択される媒体中に分散して表面処理する方法。
2.粉体と粉体処理剤を混合した後、ボールミル、ジェットミルなどの粉砕器を用いて表面処理する方法。
【0034】
また、本発明において、本発明の粉体処理剤で処理された粉体を油剤中に分散してもよく、あるいは油剤中に本発明の粉体処理剤を溶解又は分散し、これに粉体を添加して混合分散処理するようにしてもよく、その形態は液状分散物である。この油中粉体分散物は、例えば下記の方法のような公知の方法によって適宜調製することが可能である。
1.前記の如くして得た処理粉体を、エステル油やシリコーン油等の油剤中に添加して分散する方法。
2.上記の油剤中に本発明の粉体処理剤を溶解又は分散し、これに粉体を添加してボールミル、ビーズミル、サンドミル等の分散機器で混合する方法。
得られた油中粉体分散物は、そのまま使用、配合することができる。
【0035】
本発明における一般式(1)の粉体処理剤で粉体を処理する場合には、粉体100質量部に対して0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜10質量部使用する。
このように処理された粉体は、各種熱可塑性又は熱硬化性組成物やゴム組成物等に充填剤として配合することができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を合成例と実施例及び比較例によって更に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。また、粘度はオストワルド粘度計による25℃の粘度である。
【0037】
[合成例1]
反応器にアミン当量が4,800g/molで粘度(25℃)が110mm2/sの側鎖アミノプロピルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体450質量部、チタンテトラブトキシド4質量部、N−アセチルグリシンエチル14質量部を100℃にて8時間撹拌した。
得られた反応混合物を減圧下、120℃でストリップすることにより、430質量部の淡黄色微濁液体を93%収率で得た。1H−NMRの測定結果からアミノ原料由来の2.6ppmのピークが消失し、アミド結合生成に由来するピークが3.1ppm付近に観測された。また、IRスペクトルの測定結果から、1,650cm-1(アミド結合由来)に吸収が見られたことで、上記アミノプロピル基含有ポリシロキサンとN−アセチルグリシンエチルが連結したことを確認した。
【0038】
[合成例2]
反応器にアミン当量が6,500g/molで粘度(25℃)が130mm2/sの側鎖アミノプロピルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体550質量部、チタンテトラブトキシド7質量部、チロシンエチル17質量部を100℃にて8時間撹拌した。
得られた反応混合物を減圧下、120℃でストリップすることにより、539質量部の淡黄色微濁の高粘度液体を95%収率で得た。1H−NMRの測定結果からアミノ原料由来の2.6ppmのピークが消失し、アミド結合生成に由来するピークが3.1ppm付近に観測された。また、IRスペクトルの測定結果から、1,650cm-1(アミド結合由来)に吸収が見られたことで、上記アミノプロピル基含有ポリシロキサンとチロシンエチルが連結したことを確認した。
【0039】
[合成例3]
反応器にアミン当量が1,500g/molで粘度(25℃)が160mm2/sの側鎖アミノプロピルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体600質量部、チタンテトラエトキシド10質量部、1−エチル−プロリンエチル64質量部を100℃にて8時間撹拌した。
得られた反応混合物を減圧下、120℃でストリップすることにより、630質量部の淡黄色微濁の高粘度液体を95%収率で得た。1H−NMRの測定結果からアミノ原料由来の2.6ppmのピークが消失し、アミド結合生成に由来するピークが3.1ppm付近に観測された。また、IRスペクトルの測定結果から、1,660cm-1(アミド結合由来)に吸収が見られたことで、上記アミノプロピル基含有ポリシロキサンと1−エチル−プロリンエチルが連結したことを確認した。
【0040】
[合成例4]
反応器にアミン当量が4,950g/molで粘度(25℃)が230mm2/秒の側鎖アミノプロピルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体100質量部、チタンテトラエトキシド4質量部、N−ラウロイルサルコシンイソプロピル6.6質量部を入れ、100℃にて8時間撹拌した。
得られた反応混合物を減圧下、120℃でストリップすることにより、99質量部の淡黄色微濁液体を93%収率で得た。アミノ原料由来の2.6ppmのピークが消失し、アミド結合生成に由来するピークが3.1ppm付近に観測された。また、IRスペクトルの測定結果から、1,652cm-1(アミド結合由来)に吸収が見られたことで、上記アミノプロピル基含有ポリシロキサンとN−ラウロイルサルコシンイソプロピルが連結したことを確認した。
【0041】
[参考例1]
合成例1で得られたオルガノポリシロキサン8gをデカメチルシクロペンタシロキサン52gに溶解した後、酸化チタン(TTO−S−2:石原産業(株)製の商品名)40gを加え、ビーズミルを用いて分散させ、表面処理された酸化チタンの分散物(A)を得た。
【0042】
[参考例2]
合成例1で得られたオルガノポリシロキサン6gをデカメチルシクロペンタシロキサン44gに溶解した後、酸化亜鉛(ZnO350:住友大阪セメント(株)製の商品名)50gを加え、ビーズミルを用いて分散させ、表面処理された酸化亜鉛の分散物(B)を得た。
【0043】
[実施例1]
合成例2で得られたオルガノポリシロキサン6gをデカメチルシクロペンタシロキサン54gに溶解した後、酸化チタン(TTO−S−2:石原産業(株)製の商品名)40gを加え、ビーズミルを用いて分散させ、表面処理された酸化チタンの分散物(C)を得た。
【0044】
[実施例2]
合成例2で得られたオルガノポリシロキサン8gをデカメチルシクロペンタシロキサン42gに溶解した後、酸化亜鉛(ZnO350:住友大阪セメント(株)製の商品名)50gを加え、ビーズミルを用いて分散させ、表面処理された酸化亜鉛の分散物(D)を得た。
【0045】
[実施例3]
合成例3で得られたオルガノポリシロキサン6gをデカメチルシクロペンタシロキサン10g、イソドデカン44gの混合液に溶解した後、酸化チタン(TTO−S−2:石原産業(株)製の商品名)40gを加え、ビーズミルを用いて分散させ、表面処理された酸化チタンの分散物(E)を得た。
【0046】
[比較例1]
ポリエーテル変性シリコーン(KF6017:信越化学工業(株)製の商品名)6gをデカメチルシクロペンタシロキサン44gに溶解し、酸化亜鉛(ZnO350:住友大阪セメント(株)製の商品名)50gを加え、ビーズミルを用いて分散させ、表面処理された酸化亜鉛の分散物(F)を得た。
【0047】
[比較例2]
ポリグリセリン変性シリコーン(KF6104:信越化学工業(株)製の商品名)6gをデカメチルシクロペンタシロキサン44gに溶解し、酸化亜鉛(ZnO350:住友大阪セメント(株)製の商品名)50gを加え、ビーズミルを用いて分散させ、表面処理された酸化亜鉛の分散物(G)を得た。
【0048】
[比較例3]
ポリグリセリン変性シリコーン(KF6104:信越化学工業(株)製の商品名)6gをデカメチルシクロペンタシロキサン10g、イソドデカン44gの混合液に溶解した後、酸化チタン(TTO−S−2:石原産業(株)製の商品名)40gを加え、ビーズミルを用いて分散させ、表面処理された酸化チタンの分散物(H)を得た。
【0049】
[参考例3]
合成例1で得られたオルガノポリシロキサン6gを2−プロパノールに溶解した後、酸化チタン(TTO−S−1:石原産業(株)製の商品名)50gを加えて分散させ、溶媒を留去して表面処理酸化チタン(I)を得た。
【0050】
[実施例4]
合成例2で得られたオルガノポリシロキサン5gを2−プロパノールに溶解した後、酸化亜鉛(ZnO350:住友大阪セメント(株)製の商品名)50gを加えて分散させ、溶媒を留去して表面処理酸化亜鉛(J)を得た。
【0051】
[比較例4]
ポリエーテル変性シリコーン(KF6017:信越化学工業(株)製の商品名)6gを2−プロパノールに溶解した後、酸化チタン(TTO−S−2:石原産業(株)製の商品名)50gを加えて分散させ、溶媒を留去して表面処理酸化チタン(K)を得た。
【0052】
[比較例5]
メチルハイドロジェンポリシロキサン(KF99:信越化学工業(株)製の商品名)6gを2−プロパノールに溶解した後、酸化亜鉛(ZnO350:住友大阪セメント(株)製の商品名)50gを加え、100℃で乾燥し、表面処理酸化亜鉛(L)を得た。
【0053】
分散性評価:
粉体の濃度が5%になるように、実施例1〜4、参考例1〜3及び比較例1〜5の処理粉体及び油中粉体分散物をデカメチルシクロペンタシロキサンに混合し、この混合液を50mlの試験管にいれ、2日後の沈降性を次の評価基準にて目視で観察した。結果は下記表1に示した通りである。
◎:粉の沈降がほとんどない。
○:粉の沈降が少し確認できる。
△:粉がかなり沈降している。
×:粉の大部分が沈降している。
【0054】
【表1】
【0055】
表1から明らかな如く、実施例1〜4の場合にはいずれも沈降することなく均一であり、分散性は良好であった。しかしながら、比較例1〜5の場合にはいずれも不均一となり、沈降していた。