特許第5950174号(P5950174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5950174光学材料用樹脂組成物、光学フィルム及び液晶表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950174
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】光学材料用樹脂組成物、光学フィルム及び液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/00 20060101AFI20160630BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20160630BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20160630BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20160630BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   C08L33/00
   G02B5/30
   G02F1/1335 510
   C08K5/101
   C08K5/06
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-539149(P2015-539149)
(86)(22)【出願日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】JP2014074668
(87)【国際公開番号】WO2015046009
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2015年9月2日
(31)【優先権主張番号】特願2013-201479(P2013-201479)
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】田尻 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】吉村 洋志
【審査官】 小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−068438(JP,A)
【文献】 特開2011−140637(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/184909(WO,A1)
【文献】 特開2011−116912(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/077776(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が15,000〜100,000の(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体(A)と、下記一般式(1)
【化1】
(式中、A、Aはそれぞれ独立に炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数6〜18のアリール基である。R〜Rは、それぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキル基である。X、Xはそれぞれ独立に2価の連結基である。)
で表される化合物(B)とを含有する光学材料用樹脂組成物であり、該化合物(B)の含有量が、前記重合体(A)100質量部に対して1〜10質量部であることを特徴とする光学材料用樹脂組成物。
【請求項2】
前記化合物(B)が、下記一般式(1−1)または一般式(1−2)
【化2】
(式中、L、Lはそれぞれ独立に炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数6〜18のアリール基である。R〜Rは、それぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキル基である。)
で表されるものである、請求項1記載の光学材料用樹脂組成物。
【請求項3】
前記L、Lがそれぞれフェニル基またはトリル基である請求項2記載の光学材料用樹脂組成物。
【請求項4】
前記R〜Rがそれぞれメチル基である請求項2記載の光学材料用樹脂組成物。
【請求項5】
前記重合体(A)がメタクリル酸メチルの単独重合体またはメタクリル酸メチルと他の単量体との共重合体である請求項1記載の光学材料用樹脂組成物。
【請求項6】
前記重合体(A)の数平均分子量が20,000〜50,000である請求項1記載の光学材料用樹脂組成物
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の光学材料用樹脂組成物を含有することを特徴とする光学フィルム。
【請求項8】
偏光板保護用である請求項7記載の光学フィルム。
【請求項9】
少なくとも一軸方向の延伸物で、光弾性係数の絶対値が2(×10−12/Pa)以下である請求項7または8記載の光学フィルム。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項記載の光学フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外力による複屈折の変化が小さく、光学部材の製造に好適に用いることができる樹脂組成物と、該樹脂組成物を用いて得られる光学フィルム及びこれを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、例えば、ディスプレイ市場の拡大に伴い、より画像を鮮明にみたいという要求が高まっており、単なる透明材料ではなく、より高度な光学特性が付与された光学材料が求められている。
【0003】
一般に高分子は分子主鎖方向とそれに垂直方向とで屈折率が異なるために複屈折を生じる。用途によっては、この複屈折を厳密にコントロールすることが求められており、液晶の偏光板に用いられる保護フィルムの場合は、全光線透過率が同じであっても複屈折がより小さい高分子材料成形体が必要とされ、トリアセチルセルロースが代表的な材料として用いられる。
【0004】
このような中、近年は、液晶ディスプレイが大型化し、それに必要な高分子光学材料成形品が大型化するにつれて、外力の偏りによって生じる複屈折の分布を小さくするために、外力による複屈折の変化が小さい材料が求められている。
【0005】
外力による複屈折の変化が小さい成形品が得られる材料は、即ち、光弾性係数が小さい成形品が得られる高分子光学材料であり、このような材料の中でも、安価な材料としてアクリル系樹脂が注目されている。具体的には、アクリル系樹脂と、可塑剤として脂肪族ポリエステル系樹脂とを含む樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、該特許文献1に開示された光学材料を用いても、光弾性係数が十分に小さい光学フィルムを得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/077776号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、外力による複屈折の変化が小さく、光学部材の製造に好適に用いることができる樹脂組成物と、該樹脂組成物を用いて得られる光学フィルム及びこれを用いた液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、アクリル系樹脂と、ビフェニル骨格を有する化合物であり、該化合物の末端が炭化水素基やアリール基で封止された構造を有する化合物を含有する組成物を用いることにより、外力による複屈折の変化が小さい光学部材が得られること、該樹脂組成物は特に光学フィルムを製造する際に好適なこと、該光学フィルムは液晶表示装置を製造する際の部材として好適に使用できる事等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、数平均分子量が15,000〜100,000の(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体(A)と、下記一般式(1)
【0010】
【化1】
(式中、A、Aはそれぞれ独立に炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数6〜18のアリール基である。R〜Rは、それぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキル基である。X、Xはそれぞれ独立に2価の連結基である。)
で表される化合物(B)とを含有する光学材料用樹脂組成物であり、該化合物(B)の含有量が、前記重合体(A)100質量部に対して1〜10質量部であることを特徴とする光学材料用樹脂組成物を提供するものである。


【0011】
また、本発明は、前記光学材料用樹脂組成物を含有することを特徴とする光学フィルムを提供するものである。
【0012】
更に、本発明は、前記光学フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安価な材料であるアクリル系樹脂を用いて、外力による複屈折の変化が小さく、光学部材の製造に好適に用いることができる樹脂組成物を提供することができる。この樹脂組成物を用いることにより、外力による複屈折の変化が小さい光学フィルムを容易に得ることができる。そして、この光学フィルムを用いることで、外力により画面の見え具合が変わりにくい液晶表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で用いる重合体(A)は、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いて得られ、具体的には、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須として必要に応じて他の重合性単量体を併用して重合さえて得られる。前記(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸;メタクリル酸:メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0015】
本発明で用いる重合体(A)の中でも、メタクリル酸メチルの単独重合体または、メタクリル酸メチルと他の単量体との共重合体が光学特性に優れるフィルムが得られ、しかも、経済性にも優れていることから好ましい。
【0016】
前記他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸類またはメタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類;無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;マレイン酸等の不飽和酸類等が挙げられる。
【0017】
前記他の単量体としてとして例示した芳香族ビニル化合物類,シアン化ビニル類,マレイミド類,不飽和カルボン酸無水物類,不飽和酸類等の単量体は、メタクリル酸メチルを使用しない場合でも本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0018】
前記メタクリル酸メチルと他の単量体とを共重合させて重合体(A)として用いる重合体を得る場合、他の単量体としては、芳香族ビニル化合物類が耐熱性と経済性に優れる光学フィルムが得られることから好ましく、中でも、スチレン、α−メチルスチレンがより好ましい。ここで、芳香族ビニル化合物類の使用量は、メタクリル酸メチル100質量部に対し、1〜50質量部が好ましく、2〜30質量部がより好ましい。
【0019】
また、前記他の単量体としては、不飽和カルボン酸無水物類を用いることで耐熱性に優れる光学フィルムが得られる効果が期待できる。不飽和カルボン酸無水物類の中でも無水マレイン酸が好ましい。ここで、不飽和カルボン酸無水物類の使用量は、メタクリル酸メチル100質量部に対し、1〜100質量部が好ましく、5〜90質量部がより好ましい。
【0020】
本発明で用いる重合体(A)は、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。また、前記他の単量体についても単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0021】
本発明で用いる重合体(A)の重量平均分子量は、50,000〜200,000が、強度のある光学フィルム等の成形品が得られ、且つ、流動性が十分で、成形加工性にも優れる樹脂組成物が得られることから好ましく、70,000〜150,000がより好ましい。
【0022】
また、本発明で用いる重合体(A)の数平均分子量は、15,000〜100,000が好ましく、20,000〜50,000がより好ましい。
【0023】
ここで、本発明において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はGPC測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
【0024】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HHR−H」(6.0mmI.D.×4cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:ELSD(オルテック製「ELSD2000」)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/分
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)。
標準試料:前記「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0025】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
東ソー株式会社製「F−550」
【0026】
本発明で用いる重合体(A)を製造する方法としては、例えば、キャスト重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、アニオン重合等の種々の重合方法を用いることができる。製造方法の中でも、塊状重合や溶液重合が、微小な異物の混入が少ない重合体が得られることから好ましい。溶液重合を行う場合には、原料の混合物をトルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素の溶媒に溶解して調整した溶液を用いることができる。塊状重合により重合させる場合には、通常行われるように加熱により生じる遊離ラジカルや電離性放射線照射により重合を開始させることができる。
【0027】
前記重合反応に用いられる開始剤としては、一般にラジカル重合において用いられる任意の開始剤を使用することができ、例えば、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物等が用いられる。重合する際に、90℃以上の高温下で重合を行わせる場合には、溶液重合が一般的であるので、10時間半減期温度が80℃以上でかつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤などが好ましく、具体的には1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等を挙げることができる。これらの開始剤は0.005〜5質量%の範囲で用いられる。
【0028】
本発明で用いる重合体(A)を重合する際には、必要に応じて分子量調整剤を使用しても良い。前記分子量調節剤は、一般的なラジカル重合において用いる任意のものが使用され、例えば、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のメルカプタン化合物が特に好ましいものとして挙げられる。これらの分子量調節剤は、重合度が上記の範囲内に制御されるような濃度範囲で添加される。
【0029】
本発明で用いる化合物(B)は、下記一般式(1)
【0030】
【化2】
(式中、A、Aはそれぞれ独立に炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数6〜18のアリール基である。R〜Rは、それぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキル基である。X、Xはそれぞれ独立に2価の連結基である。)
で表されるように、ビフェノール骨格を含む。ビフェニル骨格有する事によりアクリル系樹脂の光弾性係数の絶対値を小さくするという効果が期待できる。また、末端が前記AやAで封止されていることにより、保存安定性等の安定性に優れた樹脂組成物となる。
【0031】
前記本発明で用いる(ビフェノール骨格を含む)化合物(B)中のX、Xは同一のものでも良いし、異なっていても良い。前記X、Xとしては、例えば、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、イミノ基等が挙げられる。中でもアクリル樹脂への相溶性の理由から、エステル基またはエーテル基が好ましい。
【0032】
前記A、Aの具体的な例である炭素原子数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−ヘキシル基、ジメチルブチル基、エチルブチル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。炭素原子数6〜18のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、tert−ブチルフェニル、2,4-ジターシャリーブチルフェニル基、2,6−ジターシャリーブチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。中でも、保存安定性等の安定性に優れた樹脂組成物となることから、フェニル基、トリル基が好ましい。
【0033】
前記本発明で用いる化合物(B)の具体例としては、例えば、下記一般式で表される化合物等を、本発明の効果を奏すると共に容易に得ることが出来ることから好ましく例示できる。
【0034】
【化3】
【0035】
(式中、L、Lはそれぞれ独立に炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数6〜18のアリール基である。R〜Rは、それぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキル基である。)
【0036】
前記一般式(1−1)で表される化合物は、例えば、ビフェニル骨格を有するエポキシ化合物と、炭素原子数2〜8のアルキル基を有するモノカルボン酸または、炭素原子数7〜18の芳香族モノカルボン酸とを反応させることにより得ることができる。また、前記一般式(1−2)で表される化合物は、例えば、ビフェニル骨格を有するエポキシ化合物と、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するモノアルコールまたはそのアルコキシド誘導体、炭素原子数6〜18の芳香族モノアルコールとを反応させることにより得ることができる。
【0037】
前記ビフェニル骨格を有するエポキシ化合物としては、例えば、ビフェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるジグリシジルエーテル型のエポキシ化合物等が挙げられる。このエポキシ化合物の具体的な例として、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジグリシジルオキシビフェニル(市販品では、ジャパンエポキシレジン株式会社製「jER YX−4000」(エポキシ当量180〜192))等のビフェノール型エポキシ化合物を使用できる。
【0038】
前記炭素原子数2〜8のアルキル基を有するモノカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸等が挙げられる。前記炭素原子数7〜18の芳香族モノカルボン酸としては、例えば、安息香酸、ジメチル安息香酸、トリメチル安息香酸、テトラメチル安息香酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、クミン酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、アニス酸、エトキシ安息香酸、プロポキシ安息香酸、シアノ安息香酸、フルオロ安息香酸、ニトロ安息香酸、4−フェニル安息香酸、4−(3−メチルフェニル)安息香酸、4−(4−メチルフェニル)安息香酸、4−(3,5−ジメチルフェニル)安息香酸、2−メチル−4−フェニル安息香酸、2,6−ジメチル−4−フェニル安息香酸、2,6−ジメチル−4−(3,5−ジメチルフェニル)安息香酸、ナフトエ酸、ニコチン酸、フロ酸、1−ナフタレンカルボン酸、2−ナフタレンカルボン酸等が挙げられる。炭素原子数2〜8のアルキル基を有するモノカルボン酸や前記炭素原子数7〜18の芳香族モノカルボン酸は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。尚、本発明において、「炭素原子数2〜8のアルキル基を有するモノカルボン酸」の炭素原子数は、カルボニル基の炭素原子数も数に含める。また、「炭素原子数7〜18の芳香族モノカルボン酸」の炭素原子数についてもカルボニル基の炭素原子数を数に含める
【0039】
前記炭素原子数1〜8のアルキル基を有するモノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ペンタノール、イソペンチルアルコール、t−ペンチルアルコール、シクロペンタノール、n−ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘサノール、ヘプタノール、オクタノール等が挙げられる。前記炭素原子数6〜18の芳香族モノアルコールとしては、例えば、フェノール、ベンジルアルコール、メチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、tert−ブチルフェノール、2,4-ジターシャリーブチルフェノール、2,6−ジターシャリーブチルフェノール、1−ナフトール、2-ナフトール等が挙げられる。
【0040】
前記の通り、一般式(1−1)で表される化合物は、例えば、ビフェニル骨格を有するエポキシ化合物と、炭素原子数2〜8のアルキル基を有するモノカルボン酸または炭素原子数7〜18の芳香族モノカルボン酸とを反応させることにより得ることができる。
【0041】
また、一般式(1−2)で表される化合物は、例えば、ビフェニル骨格を有するエポキシ化合物と、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するモノアルコールまたは炭素原子数6〜18の芳香族モノアルコールとを反応させることにより得ることができる。前記エポキシ化合物と、前記モノカルボン酸や前記モノアルコールとを反応させる際の反応温度としては、80〜130℃の範囲が好ましく、100℃〜115℃の範囲がより好ましい。反応時間としては、10〜25時間の範囲が好ましい。また、前記エポキシ化合物と、前記モノカルボン酸やモノアルコールとの仕込み比は、エポキシ化合物のエポキシ基のモル数と、前記モノカルボン酸のモル数やモノアルコールのモル数の比(エポキシ基モル数)/(モノカルボン酸のモル数またはモノアルコールのモル数)が、1/0.9〜1.1の範囲であることが好ましい。
【0042】
前記エポキシ化合物のエポキシ基と、前記モノカルボン酸のカルボキシル基又は前記モノアルコールの水酸基とを反応において、必要に応じて触媒を用いてもよい。この触媒としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−フェニル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物;トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリアミルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリアチレンジアミン、ジメチルフェニルアミン、ジメチルベンジルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のアミン化合物;ジメチルアミノピリジン等のピリジン化合物などが挙げられる。これらの触媒は、前記エポキシ化合物及び前記芳香族モノカルボン酸の合計100質量部に対して0.05〜1質量部使用することが好ましい。
【0043】
前記一般式(1−1)で表される化合物や一般式(1−2)で表される化合物の中でも、L、Lがそれぞれフェニル基又はトリル基のものが、アクリル樹脂に対する相溶性が良好なことから好ましい。中でも、一般式(1−1)で表される化合物でLがフェニル基又はトリル基のものがより好ましい。
【0044】
更に、前記一般式(1−1)で表される化合物、一般式(1−2)で表される化合物において、R〜Rは、それぞれメチル基が重合体(A)との相溶性に優れる化合物となることから好ましい。
【0045】
本発明で用いる化合物(B)の性状は、組成などの要因により異なるが、通常、常温にて液体、固体、ペースト状などである。
【0046】
本発明の光学材料用樹脂組成物中の化合物(B)の含有量は、使用する重合体(A)の光弾性係数にもよるが、樹脂組成物の光弾性係数の絶対値を小さくできることから前記重合体100質量部に対して1〜10質量部が好ましく、2〜8質量部がより好ましい。
【0047】
本発明の光学フィルムは、前記本発明の光学材料用樹脂組成物を含有することを特徴とする。本発明の光学フィルムは、光弾性係数が極めて小さい特徴を有し、具体的には光弾性係数の絶対値が2.0×10−12/Pa以下、より好ましくは1.0×10−12/Pa以下である。このように、本発明の光学フィルムは光弾性係数が小さく、その結果外力による複屈折の変化が小さくなり、外力により画面の見え具合が変わりにくい液晶表示装置を提供することができる。
【0048】
本発明において、光弾性係数は、下記に示す方法にて測定した。
<光弾性係数(C)の測定方法>
本発明の光学フィルムの一例として延伸して得られる光学フィルムを用い、この光学フィルムを延伸方向に幅15mmで切り抜き、測定サンプルを得る。この測定サンプルを光弾性測定用引張治具(王子計測機器株式会社製)に固定し、127.3g・fから727.3g・fまで100g・f毎に測定サンプルを引っ張る際の加重を変化させ、各々の加重をかけた際の588nmにおける面内位相差変化を位相差測定装置KOBRA−WR(王子計測機器株式会社製)にて測定する。測定は23℃、相対湿度55%雰囲気下で行う
【0049】
本発明の光学材料用組成物を用いる事により、種々の光学用の成形体の製造に用いる事ができる。中でも、フィルム状の成形体(光学フィルム)を製造するのに本発明の光学材料用組成物を用いることができる。前記光学フィルムにおいて、例えば、少なくとも一軸方向に延伸されており、光弾性係数の絶対値が2(×10−12/Pa)以下である光学フィルムは、位相差フィルム等の位相差を必要とし応力による複屈折の変化が小さい特性を要求される用途に好適に用いることができる。前記位相差フィルムとしては、光弾性係数の絶対値が1(×10−12/Pa)以下である光学フィルムが好ましく、光弾性係数の絶対値が0.5(×10−12/Pa)以下である光学フィルムがより好ましい。このような光学フィルムのTD方向とMD方向の延伸倍率は、目的によって適宜選択し、前記化合物(B)の量を調整することにより、複屈折の小さい光学的に等方な光学フィルムから複屈折の大きな位相差フィルムまで得ることができる。
【0050】
本発明の光学材料用樹脂組成物には、前記重合体(A)以外の重合体を、本発明の目的を損なわない範囲で混合することができる。前記重合体(A)以外の重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂;ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂;及びフェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらは1種類を混合しても良いし、2種以上を混合しても良い。
【0051】
さらに、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、各種目的に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は,樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。添加剤としては、例えば、無機充填剤、酸化鉄等の顔料;ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤;離型剤;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、りん系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、ビタミンE系熱安定剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾエート系光安定剤等の光安定剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;難燃剤;帯電防止剤;有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤;着色剤、その他添加剤或いはこれらの混合物等が挙げられる。
【0052】
本発明の光学材料用樹脂組成物は、前記重合体(A)と化合物(B)とを含有すればよく、その製造方法は特に制限がない。具体的には、例えば、前記重合体(A)と化合物(B)と、必要に応じて上記添加剤を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて溶融混練する方法により得ることができる。
【0053】
本発明の光学フィルムは、本発明の光学材料用樹脂組成物を含有することを特徴とする。本発明の光学フィルムを得るには、例えば、押し出し成形、キャスト成形等の手法が用いられる。具体的には、例えば、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、未延伸状態の光学フィルムを押し出し成形することができる。押し出し成形により本発明の光学フィルムを得る場合は、事前に前記重合体(A)、化合物(B)を溶融混錬して得られる本発明の光学材料用樹脂組成物を用いることもできれば、押し出し成形時に重合体(A)と化合物(B)とを溶融混錬し、そのまま押し出し成形することもできる。また、前記重合体(A)及び化合物(B)成分を溶解する溶媒を用いて、前記重合体(A)、化合物(B)を該溶媒中に溶解し、いわゆるドープ液を得たうえで、キャスト成形する溶液流延法(ソルベントキャスト法)により未延伸状態の本発明の光学フィルムを得ることもできる。
【0054】
以下に、溶液流延法について、詳述する。溶液流延法で得られる光学フィルムは、実質的に光学等方性を示す。前記光学等方性を示すフィルムは、例えば液晶ディスプレイなどの光学材料に使用することができ、中でも偏光板用保護フィルムに有用である。また、前記方法によって得られたフィルムは、その表面に凹凸が形成されにくく、表面平滑性に優れる。
【0055】
前記溶液流延法は、一般に、前記重合体(A)と前記化合物(B)とを有機溶剤中に溶解させ、得られた樹脂溶液を金属支持体上に流延させる第1工程と、流延させた前記樹脂溶液中に含まれる有機溶剤を留去し乾燥させてフィルムを形成する第2工程、それに続く、金属支持体上に形成されたフィルムを金属支持体から剥離し加熱乾燥させる第3工程からなる。
【0056】
前記第1工程で使用する金属支持体としては、無端ベルト状又はドラム状の金属製のものなどを例示でき、例えば、ステンレス製でその表面が鏡面仕上げの施されたものを使用することができる。
【0057】
前記金属支持体上に樹脂溶液を流延させる際には、得られるフィルムに異物が混入することを防止するために、フィルターで濾過した樹脂溶液を使用することが好ましい。
【0058】
前記第2工程の乾燥方法としては、特に限定しないが、例えば30〜50℃の温度範囲の風を前記金属支持体の上面及び/又は下面に当てることで、流延した前記樹脂溶液中に含まれる有機溶剤の50〜80質量%を蒸発させ、前記金属支持体上にフィルムを形成させる方法が挙げられる。
【0059】
次いで、前記第3工程は、前記第2工程で形成されたフィルムを金属支持体上から剥離し、前記第2工程よりも高い温度条件下で加熱乾燥させる工程である。前記加熱乾燥方法としては、例えば100〜160℃の温度条件にて段階的に温度を上昇させる方法が、良好な寸法安定性を得ることができるため、好ましい。前記温度条件にて加熱乾燥することにより、前記第2工程後のフィルム中に残存する有機溶剤をほぼ完全に除去することができる。
【0060】
尚、前記第1工程〜第3工程で、有機溶媒は回収し再使用することも可能である。
【0061】
前記重合体(A)と前記化合物(B)を有機溶剤に混合させ溶解する際に使用できる有機溶剤としては、それらを溶解可能なものであれば特に限定しないが、例えば、クロロホルム、二塩化メチレン、塩化メチレン等の溶媒を挙げることができる。
【0062】
前記樹脂溶液中の重合体(A)の濃度は、10〜50質量%が好ましく、15〜35質量%がより好ましい。
【0063】
本発明の光学フィルムの膜厚は、20〜120μmの範囲が好ましく、25〜100μmの範囲がより好ましく、25〜80μmの範囲が特に好ましい。
【0064】
本発明においては、例えば、前記の方法で得られる未延伸状態の光学フィルムを必要に応じて、機械的流れ方向に縦一軸延伸、機械的流れ方向に直行する方向に横一軸延伸することで延伸された光学フィルムを得ることができる。また、ロール延伸とテンター延伸の逐次2軸延伸法、テンター延伸による同時2軸延伸法、チューブラー延伸による2軸延伸法等によって延伸することにより2軸延伸された延伸フィルムを得ることができる。延伸倍率は少なくともどちらか一方向に0.1%以上1000%以下であることが好ましく、0.2%以上600%以下であることがさらに好ましく、0.3%以上300%以下であることがとりわけ好ましい。この範囲に設計することにより、複屈折、耐熱性、強度の観点で好ましい延伸された光学フィルムが得られる。
【0065】
本発明に係る光学フィルムは、光学材料として、液晶表示装置、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板、視野角制御フィルム、液晶光学補償フィルム等の位相差フィルム、ディスプレイ前面板等に好適に用いることができる。また、本発明の光学材料用樹脂組成物は、その他にも、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、レンズ、光ファイバー、光ファイバーの基材、被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバーなどにも用いることができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例に基づき更に具体的に説明する。例中の部及び%は断りがない限り質量基準である。
【0067】
合成例1〔化合物(B)の合成〕
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量187)299g、安息香酸195gおよび触媒としてトリフェニルホスフィン1gを加え、115℃で20時間反応させて、前記一般式(1−1)で表される化合物(B1)を得た。化合物(B1)の酸価は、0.7で、水酸基価は178であった。
【0068】
合成例2(同上)
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量187)299g、フェノール195gおよび触媒としてトリフェニルホスフィン1gを加え、115℃で20時間反応させて、前記一般式(1−2)で表される化合物(B2)を得た。化合物(B2)の酸価は、0.7で、水酸基価は178であった。
【0069】
合成例3(同上)
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量187)299g、パラトルイル酸217gおよび触媒としてトリフェニルホスフィン1gを加え、115℃で24時間反応させて、前記一般式(1−1)で表される化合物(B3)を得た。化合物(B3)の酸価は、0.2で、水酸基価は171であった。
【0070】
合成例4〔比較対照用ポリエステル樹脂(b´)の合成〕
温度計、攪拌器及び還流冷却器を備えた内容積1リットルの四つ口フラスコに、エチレングリコール341g、アジピン酸659gを仕込んだ。更に、テトライソプロピルチタネートをエチレングリコール及びアジピン酸の合計量に対して30ppm加えて、窒素気流下で攪拌しながら220℃まで昇温し、24時間反応させ、数平均分子量が1,100で、酸価が0.19で、水酸基価が112の比較対照用ポリエステル樹脂(b´1)を得た。
【0071】
合成例5(同上)
コハク酸770g、1,2−プロピレングリコール595g及び、テトライソプロピルチタネートをコハク酸と1,2−プロピレングリコールの合計量に対して60ppm使用した以外は合成例3と同様にして数平均分子量が11,000で、酸価が0.7で、水酸基価が8の比較対照用ポリエステル樹脂(b´2)を得た。
【0072】
実施例1(光学材料用樹脂組成物の調製)
アクリル樹脂(A1)〔メチルメタアクリル酸/無水マレイン酸/スチレン=50/40/10(モル比)の共重合体、数平均分子量27,800〕100部、ポリエステル樹脂(B1)5部を、塩化メチレン270部及びメタノール30部からなる混合溶剤に加えて溶解し本発明の光学材料用樹脂組成物(ドープ液)を得た。
【0073】
このドープ液をガラス板上に厚さ0.5mmとなるように流延し、室温で16時間乾燥させた後、50℃で30分間、さらに100℃で60分間乾燥させて、膜厚100μmの未延伸フィルムを得た。
【0074】
得られた未延伸フィルムを示差走査熱量計(DSC)により求めた光学材料用樹脂組成物(1)のガラス転移温度(Tg)+5℃の温度にて一軸延伸(延伸倍率2倍,延伸速度100%/分)を行い、延伸フィルム(1)を作成した。ここで、示唆走査熱量計(DSC)を用いたTgの測定は下記の条件に従った。
【0075】
<ガラス転移温度Tgの測定条件>
示差走査熱量測定計DSC822e(METTLER TOLEDO社製)を用いた。具体的には、樹脂組成物5mgを軽量アルミパンに入れ、窒素雰囲気下、25℃から150℃まで毎分10℃で昇温した(1st run)後、0℃まで一旦急冷し、再度、0℃から150℃まで毎分10℃で昇温させた(2nd run)。ガラス転移温度Tgは2nd runから得られたDSC曲線より中点法によって決定した。
【0076】
得られた延伸フィルム(1)の光学特性、具体的には面内複屈折(Δn)、面外複屈折(ΔP)光弾性係数(C)及びヘーズを下記に示す方法に従って評価した。評価結果を第1表に示す。
【0077】
<面内複屈折(Δn)及び面外複屈折(ΔP)の評価方法>
位相差測定装置KOBRA−WR(王子計測機器株式会社製)を用い、588nmにおける屈折率を求めた上で、下記式に従って面内複屈折(Δn)及び面外複屈折(ΔP)を求めた。
面内複屈折(Δn)=(n)−(n
面外複屈折(ΔP)=[(nx)+(n)]/2−(n
〔(n):延伸方向の屈折率、(n):延伸方向と直交する方向の屈折率、(n):フィルム厚み方向の屈折率〕
尚、測定は23℃、相対湿度55%雰囲気下で行った。
【0078】
<光弾性係数(C)の評価方法>
延伸フィルムを延伸方向と平行に幅15mmで切抜いた延伸フィルムを光弾性測定用引張治具(王子計測機器株式会社製)に固定し、127.3g・fから727.3g・fまで100g・f毎に加重を変化させたときの588nmにおける面内位相差(Re)の変化を位相差測定装置KOBRA−WR(王子計測機器株式会社製)にて測定した。測定は23℃、相対湿度55%雰囲気下で行った。面内位相差(Re)は、下記式に従って求めた。
Re=(n−n)×d
〔(n):延伸方向の屈折率、(n):延伸方向と直交する方向の屈折率、d:フィルムの厚み(μm)〕
【0079】
測定値について、横軸に応力(σ)、縦軸に面内位相差(Re)をプロットし、最小二乗近似により線形領域の直線の傾きから光弾性係数(C)を求めた。傾きの絶対値が小さいほど光弾性係数が0に近いことを示し、外力による複屈折の変化が小さい光学フィルムであることを示す。
【0080】
<ヘーズの評価>
日本電色工業株式会社製NDH−5000を用いてJIS K 7136に準拠した。
【0081】
実施例2〜8及び比較例1〜6
第1表〜第2表に示す配合及び延伸条件で光学材料用樹脂組成物(ドープ液)を得た以外は実施例1と同様にして光学フィルム(2)〜(8)及び比較対照用延伸フィルム(1´)〜(5´)を得た。実施例1と同様の評価を行い、その結果を第1表〜第2表に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
第1表の脚注
測定不能:フィルムのヘーズが大きく光学特性測定ができなかった。
【0084】
【表2】
【0085】
第2表の脚注
アクリルフィルム(A2):メタクリル酸メチル/α‐メチルスチレン=93/7(モル比)の共重合体、数平均分子量30,000)
測定不能:フィルムのヘーズが大きく光学特性測定ができなかった。
【0086】
本発明の光学用樹脂組成物を用いて得られる光学フィルムは、光学弾性係数が小さく、外力による複屈折の変化が小さいフィルムである。一方、比較例の光学フィルムは光学弾性係数の絶対値が大きく外力による複屈折の変化が大きい。