特許第5950175号(P5950175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5950175フッ素系界面活性剤、コーティング組成物、レジスト組成物及び硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950175
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】フッ素系界面活性剤、コーティング組成物、レジスト組成物及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   C09D 7/12 20060101AFI20160630BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20160630BHJP
   C08F 293/00 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   C09D7/12
   C09D201/00
   C08F293/00
【請求項の数】9
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-549879(P2015-549879)
(86)(22)【出願日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】JP2015056489
(87)【国際公開番号】WO2015137229
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2015年10月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-50176(P2014-50176)
(32)【優先日】2014年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】清水 良平
(72)【発明者】
【氏名】笹本 慎
(72)【発明者】
【氏名】高野 啓
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−244729(JP,A)
【文献】 特開2013−209505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 293/00
C09D 7/12
C09D 101/00−201/10
B01F 17/52
G02B 5/20
G03F 7/004
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素原子が直接結合した炭素原子の数が1〜6のフッ素化アルキル基と重合性不飽和基とを有する重合性単量体(a1)を含む重合性単量体を用いる重合体セグメント(A1)と、橋かけ環炭化水素の骨格と重合性不飽和基とを有する重合性単量体(a2)を含む重合性単量体を用いる重合体セグメント(A2)を含むブロック共重合体であることを特徴とするフッ素系界面活性剤を含有することを特徴とするコーティング組成物。
【請求項2】
前記重合性単量体(a2)が有する橋かけ環炭化水素の骨格が、アダマンタン環、ジシクロペンタン環、ジシクロペンテン環、ノルボルナン環またはノルボルネン環である請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記重合性単量体(a2)が有する橋かけ環炭化水素の骨格が、アダマンタン環である請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記重合性単量体(a2)が有する橋かけ環炭化水素の骨格が、水酸基を有するものである請求項2または3記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記重合体セグメント(A2)が重合性単量体(a2)を、重合体セグメント(A2)を構成する全重合性単量体の質量を基準として10〜100質量%用いる重合体セグメントである請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記重合性単量体(a1)が、下記一般式(1)で表される単量体である請求項1記載のコーティング組成物。
【化1】
〔上記一般式(1)中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基、シアノ基、フェニル基、ベンジル基又は−C2n−Rf’(nは1〜8の整数を表し、Rf’は下記式(Rf−1)〜(Rf−4)のいずれか1つの基を表す。)を表し、Xは、下記式(X−1)〜(X−10)のいずれか1つの基を表し、Rfは下記式(Rf−1)〜(Rf−4)のいずれか1つの基を表す。〕
【化2】
〔上記式(X−1)、(X−3)、(X−5)、(X−6)及び(X−7)中のnは1〜8の整数を表す。上記式(X−8)、(X−9)及び(X−10)中のmは1〜8の整数を表し、nは0〜8の整数を表す。上記式(X−6)及び(X−7)中のRf’’は下記式(Rf−1)〜(Rf−4)のいずれか1つの基を表す。〕
【化3】
〔上記式(Rf−1)及び(Rf−2)中のnは1〜6の整数を表す。上記式(Rf−3)中のnは2〜6の整数を表す。上記式(Rf−4)中のnは4〜6の整数を表す。〕
【請求項7】
前記ブロック共重合体が、リビングラジカル重合体である請求項1〜6のいずれか1項記載のコーティング組成物。
【請求項8】
上記リビングラジカル重合が原子移動ラジカル重合である請求項7記載のコーティング組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載のコーティング組成物硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ性の溶液や酸性の溶液に曝されても塗膜が変色しにくい(水しみが起こりにくい)塗膜が得られるフッ素系界面活性剤とこれを用いたコーティング組成物、レジスト組成物及びこれらの組成物の硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置や有機EL表示装置に用いられるカラーフィルターは、一般に赤(R)、緑(G)、青(B)の各画素と、その間に表示コントラスト向上等の目的でブラックマトリックス(BM)が形成された基本構成を有する。カラーフィルターの作製においては、一般的にガラス基板上にレジスト組成物をスピンコート、スリットコート等の塗布方法によって塗布し、乾燥後マスクを用いて露光、次いで現像して着色パターンを形成させる。
【0003】
上記現像は、現像液としてアルカリ性の現像液を用い、未露光部分は洗浄(リンス)により洗い流す。その時に、洗浄液中に存在する未露光部の樹脂などの残渣が露光部の着色パターンの硬化塗膜表面に付着する問題もあり、残渣の着色パターンへの付着しにくい特性もレジスト組成物に求められる。
【0004】
上記残渣が着色パターン上に付着しにくいカラーフィルター画素形成用組成物として、例えば、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有するラジカル重合性単量体とポリアルキレングリコール鎖を有するラジカル重合性単量体とを共重合させて得られる反応性官能基を有する共重合体と該反応性官能基と反応性を有する基とラジカル重合性基を有する化合物とを反応させて得られるフッ素原子含有界面活性剤を含むカラーフィルター画素形成用組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に記載されたカラーフィルター画素形成用組成物を用いて得られる着色パターンは、前記現像工程において用いられるアルカリ性の現像液に曝された場合、着色パターン(塗膜)が変色する現象(水しみ)が発生する問題がある。このような水しみは、ポストベーク後に消えるので製品としては問題がないが、現像後にパターニング面の外観検査において、ムラ異常として検出されてしまい、正常品と異常品の区別がつかないという問題が生じていた。そのため、外観検査において検査装置の検査感度を下げると、結果として最終的なカラーフィルター製品の歩留まり低下を引き起こし、問題となる。従って、現像工程や洗浄工程において水しみが発生しにくい硬化塗膜が得られるレジスト組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−250256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、アルカリ性の溶液や酸性の溶液に曝されても塗膜が変色しにくい(水しみが起こりにくい)塗膜が得られるフッ素系界面活性剤とこれを用いたコーティング組成物、レジスト組成物及びこれらの組成物の硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究した結果、フッ素化アルキル基と重合性不飽和基とを有する重合性単量体からなる重合体セグメントと、橋かけ環炭化水素の骨格と重合性不飽和基とを有する重合性単量体、具体的には、アダマンタン環と重合性不飽和基とを有する重合性単量体や、ジシクロペンタン環と重合性不飽和基とを有する重合性単量体や、ジシクロペンテン環と重合性不飽和基とを有する重合性単量体や、ノルボルナン環と重合性不飽和基とを有する重合性単量体や、ノルボルネン環と重合性不飽和基とを有する重合性単量体を含む重合性単量体からなる重合体セグメントからなるブロック共重合体が、上記課題を解決するフッ素系界面活性剤となること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、フッ素原子が直接結合した炭素原子の数が1〜6のフッ素化アルキル基と重合性不飽和基とを有する重合性単量体(a1)を含む重合性単量体を用いる重合体セグメント(A1)と、橋かけ環炭化水素の骨格と重合性不飽和基とを有する重合性単量体(a2)を含む重合性単量体を用いる重合体セグメント(A2)を含むブロック共重合体であることを特徴とするフッ素系界面活性剤を含有することを特徴とするコーティング組成物を提供するものである。
【0011】
更に、本発明は、前記コーティング組成物の硬化物を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフッ素系界面活性剤を用いることで、塗膜等の硬化物への水しみが発生しにくいコーティング組成物やレジスト組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のフッ素系界面活性剤は、フッ素原子が直接結合した炭素原子の数が1〜6のフッ素化アルキル基と重合性不飽和基とを有する重合性単量体(a1)を含む重合性単量体を用いて得られる重合体セグメント(A1)と、橋かけ環炭化水素の骨格と重合性不飽和基とを有する重合性単量体(a2)を含む重合性単量体を用いて得られる重合体セグメント(A2)を含むブロック共重合体であることを特徴とする。
【0014】
本発明において、ブロック共重合体を構成する重合体セグメント(A1)は、重合性単量体(a1)が2以上重合して得られるセグメントを言う。このようなセグメントを得るために、本発明の効果を損なわない範囲で重合性単量体(a1)以外の重合性単量体を併用することができる。併用できる重合性単量体としては、例えば、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合成単量体、炭素原子数1〜18の直鎖状のアルキル基を有する重合成単量体及び炭素原子数1〜18の分岐状のアルキル基を有する重合成単量体等が挙げられる。
【0015】
本発明において、重合性単量体(a1)を含む重合性単量体として、重合性単量体(a1)の含有率が高い単量体を用いることが好ましく、重合性単量体(a1)の含有率が100質量%のものが特に好ましい。
【0016】
本発明で用いるフッ素原子が直接結合した炭素原子の数が1〜6のフッ素化アルキル基と重合性不飽和基とを有する重合性単量体(a1)としては、分子中に前記フッ素化アルキル基と重合性不飽和基とを有する化合物であれば、特に制限なく用いることができる。
【0017】
ここで、フッ素原子が直接結合した炭素原子の数が1〜6のフッ素化アルキル基は、フッ素原子が直接結合した炭素原子の数が1〜6のパーフルオロアルキル基又は水素原子の一部をフッ素原子とした部分フッ素化アルキル基である。これらのフッ素化アルキル基の中でも、界面活性剤としての効果が高いことからパーフルオロアルキル基が好ましい。さらに、フッ素原子が直接結合した炭素原子の数は多いほど好ましく、フッ素原子が直接結合した炭素原子の数は4〜6のものが特に好ましい。
【0018】
前記重合性単量体(a1)が有する重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、マレイミド基等が挙げられる。これらの中でも、原料の入手容易性、各種コーティング組成物やレジスト組成物中の配合成分に対する相溶性を制御することの容易性、あるいは重合反応性が良好であることから、(メタ)アクリロイル基が好ましい。この(メタ)アクリロイル基を有する具体としては、例えば、下記一般式(1)で表される単量体を好ましく例示できる。また、前記重合性単量体(a1)は、1種類だけ使用しても2種以上を併用しても構わない。
【0019】
【化1】
〔上記一般式(1)中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基、シアノ基、フェニル基、ベンジル基又は−C2n−Rf’(nは1〜8の整数を表し、Rf’は下記式(Rf−1)〜(Rf−4)のいずれか1つの基を表す。)を表し、Xは、下記式(X−1)〜(X−10)のいずれか1つの基を表し、Rfは下記式(Rf−1)〜(Rf−4)のいずれか1つの基を表す。〕
【0020】
【化2】
〔上記式(X−1)、(X−3)、(X−5)、(X−6)及び(X−7)中のnは1〜8の整数を表す。上記式(X−8)、(X−9)及び(X−10)中のmは1〜8の整数を表し、nは0〜8の整数を表す。上記式(X−6)及び(X−7)中のRf’’は下記式(Rf−1)〜(Rf−4)のいずれか1つの基を表す。〕
【0021】
【化3】
〔上記式(Rf−1)及び(Rf−2)中のnは1〜6の整数を表す。上記式(Rf−3)中のnは2〜6の整数を表す。上記式(Rf−4)中のnは4〜6の整数を表す。〕
【0022】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方をいう。
【0023】
本発明で用いる重合性単量体(a2)は橋かけ環炭化水素の骨格と重合性不飽和基とを有する。本発明のフッ素系界面活性剤を含むレジスト組成物やコーティング組成物の塗膜の表面には、本発明のフッ素系界面活性剤を含む層(以下、ブロック層と言うことがある。)が表面に偏在する。本発明のフッ素系界面活性剤は、前記橋かけ環炭化水素の骨格の存在によりガラス転移温度(Tg)が高く、その結果、前記ブロック層は固い層になる。つまり、活性エネルギー線が照射されることにより硬化塗膜が形成されるが、十分な活性エネルギー線が照射されなくとも、橋かけ環炭化水素の骨格の存在により十分に硬化した塗膜が得られる。その結果、本発明のフッ素系界面活性剤を用いて得られる塗膜は水しみが起こりにくい塗膜が得られると本発明者らは考えている。
【0024】
前記橋かけ環炭化水素の骨格としては、例えば、アダマンタン環、パーヒドロインデン環、デカリン環、パーヒドロフルオレン環、パーヒドロアントラセン環、パーヒドロフェナントレン環、ジシクロペンタン環、ジシクロペンテン環、パーヒドロアセナフテン環、パーヒドロフェナレン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環等が挙げられる。中でも、塗膜際表面によりTgが高いブロック層を形成でき、その結果、より水しみしにくい硬化塗膜が得られることから、アダマンタン環、ジシクロペンタン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環が好ましく、アダマンタン環がより好ましい。
【0025】
前記重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、マレイミド基等が挙げられる。これらの中でも、原料の入手容易性、各種コーティング組成物やレジスト組成物中の配合成分に対する相溶性を制御することの容易性、あるいは重合反応性が良好であることから、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0026】
以下、本発明で重合性単量体(a2)として好ましく用いることができるアダマンタン環と重合性不飽和基を有する重合性単量体について説明する。
【0027】
前記アダマンタン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体としては、例えば、下記式(a2−1)、(a2−2)で表される化合物等が挙げられる。
【0028】
【化4】
(式中、Lは反応性官能基を表し、X及びYは2価の有機基又は単結合を表し、Rは水素原子、メチル基又はCFを表す。)
【0029】
前記反応性官能基としては、例えば、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基、酸無水物基等が挙げられる。中でも、コーティング組成物との相溶性が良いフッ素系界面活性剤が得られることから水酸基が好ましい。
【0030】
上記一般式(a2−1)中の−X−Lで表される前記反応性官能基を有する有機基及びYの結合位置は、アダマンタン環中のどの炭素原子に結合していてもよく、また、−X−Lについては2つ以上有していてもよい。さらに、アダマンタン環を構成する炭素原子に結合している水素原子は、その一部又は全部がフッ素原子、アルキル基等に置換されていても構わない。また、上記一般式(a2−1)中のX及びYは2価の有機基又は単結合であるが、この2価の有機基としては、メチレン基、プロピル基、イソプロピリデン基等の炭素原子数1〜8のアルキレン基が挙げられる。
【0031】
また、前記式(a2−2)で表される化合物において、(メタ)アクリロイル基は、アダマンタン環中のどの炭素原子に結合していてもよい。また、上記一般式(a2−1)中のアダマンタン構造を構成する炭素原子に結合している水素原子は、その一部又は全部がフッ素原子、アルキル基等に置換されていても構わない。
【0032】
前記一般式(a2−1)で表される重合性単量体のより具体的な例としては、例えば、下記で表される化合物等が挙げられる。
【0033】
【化5】
【0034】
また、一般式(a2−2)で表される重合性単量体のより具体的な例としては、例えば、下記で表される化合物等が挙げられる。
【0035】
【化6】
【0036】
アダマンタン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体の中でも、コーティング組成物中の他の構成成分との相溶性が良好なフッ素系界面活性剤が得られることから前記式(a2−1)で表される化合物が好ましく、前記式(a2−1−1)、式(a2−1−3)及び前記式(a2−1−5)で表される化合物がより好ましい。
【0037】
以下、本発明で重合性単量体(a2)として好ましく用いることができるジシクロペンタン環と重合性不飽和基を有する重合性単量体について説明する。
【0038】
前記ジシクロペンタン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体としては、例えば、下記式(a2−3)で表される化合物等が挙げられる。
【0039】
【化7】
(式中、Rは水素原子、メチル基又はCFを表す。)
【0040】
また、前記式(a2−3)で表される化合物において、(メタ)アクリロイル基は、ジシクロペンタン環中のどの炭素原子に結合していてもよい。また、上記一般式(a2−3)中のジシクロペンタン環を構成する炭素原子に結合している水素原子は、その一部又は全部がフッ素原子、アルキル基等に置換されていても構わない。
【0041】
前記一般式(a2−3)で表される重合性単量体のより具体的な例としては、例えば、下記で表される化合物等が挙げられる。
【0042】
【化8】
【0043】
ジシクロペンタン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体の中でも、塗膜のTgが高いことから前記式(a2−3−2)で表される化合物が好ましい。
【0044】
以下、本発明で重合性単量体(a2)として好ましく用いることができるジシクロペンテン環と重合性不飽和基を有する重合性単量体について説明する。
【0045】
前記ジシクロペンテン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体としては、例えば、下記式(a2−4)で表される化合物等が挙げられる。
【0046】
【化9】
(式中、Rは水素原子、メチル基又はCFを表す。)
【0047】
また、前記式(a2−4)で表される化合物において、(メタ)アクリロイル基は、ジシクロペンテン環中のどの炭素原子に結合していてもよい。また、上記一般式(a2−3)中のジシクロペンテン環を構成する炭素原子に結合している水素原子は、その一部又は全部がフッ素原子、アルキル基等に置換されていても構わない。
【0048】
前記一般式(a2−4)で表される重合性単量体のより具体的な例としては、例えば、下記で表される化合物等が挙げられる。
【0049】
【化10】
【0050】
ジシクロペンテン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体の中でも、塗膜のTgが高くなることから前記式(a2−4−2)で表される化合物が好ましい。
【0051】
以下、本発明で重合性単量体(a2)として好ましく用いることができるノルボルナン環と重合性不飽和基を有する重合性単量体について説明する。
【0052】
前記ノルボルナン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体としては、例えば、下記式(a2−5)で表される化合物等が挙げられる。
【0053】
【化11】
(式中、Rは水素原子、メチル基又はCFを表す。)
【0054】
また、前記式(a2−5)で表される化合物において、(メタ)アクリロイル基は、ノルボルナン環中のどの炭素原子に結合していてもよい。また、上記一般式(a2−5)中のノルボルナン環を構成する炭素原子に結合している水素原子は、その一部又は全部がフッ素原子、アルキル基等に置換されていても構わない。
【0055】
前記一般式(a2−5)で表される重合性単量体のより具体的な例としては、例えば、下記で表される化合物等が挙げられる。
【0056】
【化12】
【0057】
ノルボルナン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体の中でも、塗膜のTgが高くなることから前記式(a2−5−2)で表される化合物が好ましい。
【0058】
以下、本発明で重合性単量体(a2)として好ましく用いることができるノルボルネン環と重合性不飽和基を有する重合性単量体について説明する。
【0059】
前記ノルボルネン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体としては、例えば、下記式(a2−6)、(a2−7)で表される化合物等が挙げられる。
【0060】
【化13】
(式中、Rは水素原子、メチル基又はCFを表す。)
【0061】
また、前記式(a2−6)で表される化合物において、(メタ)アクリロイル基は、ノルボルネン環中のどの炭素原子に結合していてもよい。また、上記一般式(a2−6)中のノルボルネン環を構成する炭素原子に結合している水素原子は、その一部又は全部がフッ素原子、アルキル基等に置換されていても構わない。
【0062】
前記一般式(a2−6)で表される重合性単量体のより具体的な例としては、例えば、下記で表される化合物等が挙げられる。
【0063】
【化14】
【0064】
ノルボルネン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体の中でも、塗膜のTgが高くなることから前記式(a2−6−2)で表される化合物が好ましい。
【0065】
本発明のフッ素系界面活性剤は、前記の通り、フッ素原子が直接結合した炭素原子の数が1〜6のフッ素化アルキル基と重合性不飽和基とを有する重合性単量体(a1)を含む重合性単量体を用いて得られる重合体セグメント(A1)と、橋かけ環炭化水素の骨格と重合性不飽和基とを有する重合性単量体(a2)を含む重合性単量体を用いて得られる重合体セグメント(A2)を含むブロック共重合体であることを特徴とする。ここで、重合体セグメント(A1)と重合体セグメント(A2)の割合は、コーティング組成物との相溶性が良好なフッ素系界面活性剤が得られることから質量比で(A1):(A2)=5:95〜90:10が好ましく、10:90〜80:20がより好ましい。
【0066】
また、前記重合体セグメント(A2)は、重合性単量体(a2)を、重合体セグメント(A2)を得る際に用いる〔重合体セグメント(A2)を構成する〕全重合性単量体の質量を基準として10〜100質量%用いて得られるものが、塗膜表面により堅固な層を形成できるフッ素系界面活性剤が得られることから好ましく、20〜90質量%用いて得られるものがより好ましい。
【0067】
上記の通り、前記重合体セグメント(A2)を得る際には、本発明の効果を損なわない範囲で重合性単量体(a2)以外の重合性単量体を併用して得ても良い。併用できる重合性単量体としては、例えば、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合成単量体、炭素原子数1〜18の直鎖状のアルキル基を有する重合成単量体及び炭素原子数1〜18の分岐状のアルキル基を有する重合成単量体等が挙げられる。
【0068】
本発明のフッ素系界面活性剤を製造する方法としては、特に制限はないが、重合性単量体(a1)を含む重合性単量体を用いて得られる重合体セグメント(A1)と、重合性単量体(a2)を含む重合性単量体を用いて得られる重合体セグメント(A2)からなるブロック共重合体を得るための重合反応の制御し易さからリビングラジカル重合が好ましい。
【0069】
一般にリビングラジカル重合においては、活性重合末端が原子又は原子団により保護されたドーマント種が可逆的にラジカルを発生させてモノマーと反応することにより生長反応が進行し、第一のモノマーが消費されても生長末端が活性を失うことなく、逐次的に追加される第二モノマーと反応してブロックポリマーを得ることができる。このようなリビングラジカル重合の例としては、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加−開裂型ラジカル重合(RAFT)、ニトロキシドを介するラジカル重合(NMP)、有機テルルを用いるラジカル重合(TERP)等が挙げられる。これらのうちどの方法を使用するかは特に制約はないが、制御の容易さなどから上記ATRPが好ましい。ATRPは、有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属化合物と配位子からなる金属錯体を触媒として重合される。
【0070】
上記ATRPで使用する重合開始剤には、有機ハロゲン化化合物を用いることができる。具体的には、1−フェニルエチルクロライド及び1−フェニルエチルブロマイド、クロロホルム、四塩化炭素、2−クロロプロピオニトリル、α,α’−ジクロロキシレン、α,α’−ジブロモキシレン、ヘキサキス(α−ブロモメチル)ベンゼン、炭素原子数1〜6の2−ハロゲン化カルボン酸(例えば2−クロロプロピオン酸、2−ブロモプロピオン酸、2−クロロイソ酪酸、2−ブロモイソ酪酸など)の炭素原子数1〜6のアルキルエステル等が挙げられる。また、炭素原子数1〜6の2−ハロゲン化カルボン酸の炭素原子数1〜6のアルキルエステルのより具体的な例としては、例えば、2−クロロプロピオン酸メチル、2−クロロプロピオン酸エチル、2−ブロモプロピオン酸メチル、2−ブロモイソ酪酸エチル等が挙げられる。
【0071】
上記ATRPで使用する遷移金属化合物は、Mn+で表されるものである。遷移金属であるMn+は、Cu、Cu2+、Fe2+、Fe3+、Ru2+、Ru3+、Cr2+、Cr3+、Mo、Mo、Mo2+、Mo3+、W2+、W3+、Rh3+、Rh4+、Co、Co2+、Re2+、Re3+、Ni、Ni、Mn3+、Mn4+、V2+、V3+、Zn、Zn2+、Au、Au2+、Ag及びAg2+からなる群から選択することができる。また、Xは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルコキシル基、(S01/2、(P01/3、(HP01/2、(HP0)、トリフラート、ヘキサフルオロホスフェート、メタンスルホネート、アリールスルホネート(好ましくはベンゼンスルホネート又はトルエンスルホネート)、SeR、CN及びRCOOからなる群から選択することができる。ここで、Rは、アリール、直鎖状又は分岐状の炭素原子数1〜20(好ましくは炭素原子数1〜10)のアルキル基を表し、Rは、水素原子、ハロゲンで1〜5回(好適にはフッ素もしくは塩素で1〜3回)置換されていてもよい直鎖状又は分岐状の炭素原子数1〜6のアルキル基(好ましくはメチル基)を表す。さらに、nは、金属上の形式電荷を表し、0〜7の整数である。
【0072】
上記遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましいものとして、7、8、9、10、11族の遷移金属錯体が、さらに好ましいものとして、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの錯体が挙げられる。
【0073】
上記の遷移金属と配位結合可能な配位子を有する化合物としては、遷移金属とσ結合を介して配位できる1つ以上の窒素原子、酸素原子、リン原子又は硫黄原子を含む配位子を有する化合物、遷移金属とπ結合を介して配位できる2つ以上の炭素原子を含む配位子を有する化合物、遷移金属とμ結合又はη結合を介して配位できる配位子を有する化合物が挙げられる。
【0074】
上記配位子を有する化合物の具体例としては、例えば、中心金属が銅の場合は2,2’−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等の配位子との錯体が挙げられる。また2価のルテニウム錯体としては、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリブチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)ルテニウム、ジクロロベンゼンルテニウム、ジクロロp−シメンルテニウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)ルテニウム、シス−ジクロロビス(2,2’−ビピリジン)ルテニウム、ジクロロトリス(1,10−フェナントロリン)ルテニウム、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等が挙げられる。さらに2価の鉄錯体としては、ビストリフェニルホスフィン錯体、トリアザシクロノナン錯体等が挙げられる。
【0075】
また、上記リビングラジカル重合においては、溶媒を使用することが好ましい。使用する溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。また、これらの溶媒は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0076】
本発明のフッ素系界面活性剤の製造にあたっては、以下の方法を好ましく例示することができる。
方法1:重合開始剤、遷移金属化合物、該遷移金属と配位結合可能な配位子を有する化合物、及び溶媒の存在下で、重合性単量体(a1)を含む重合性単量体をリビングラジカル重合、好ましくは原子移動ラジカル重合させ、重合体セグメント(A1)を得た後、重合性単量体(a2)を含む重合性単量体を加えて重合体セグメント(A1)に更に重合性単量体(a2)を含む重合性単量体をリビングラジカル重合、好ましくは原子移動ラジカル重合させる方法。
【0077】
方法2:重合開始剤、遷移金属化合物、該遷移金属と配位結合可能な配位子を有する化合物、及び溶媒の存在下で、重合性単量体(a2)を含む重合性単量体をリビングラジカル重合、好ましくは原子移動ラジカル重合させ重合体セグメント(A2)を得た後、重合性単量体(a1)を含む重合性単量体を反応系に加えて重合体セグメント(A2)に更に重合性単量体(a1)を含む重合性単量体をリビングラジカル重合、好ましくは原子移動ラジカル重合させる方法。
【0078】
上記リビングラジカル重合の際の重合温度は、室温から120℃の範囲が好ましい。
【0079】
また、本発明のフッ素系界面活性剤をリビングラジカル重合により製造する場合は、該フッ素系界面活性剤中に、重合で用いた遷移金属化合物に起因する金属が残留することがある。そこで、金属が残留すると問題を生じるフォトレジスト組成物等の半導体用途に用いる場合には、重合反応後に活性アルミナ等を用いて残留金属を除去することが好ましい。
【0080】
本発明のフッ素系界面活性剤の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、より堅固な塗膜表面が得られるフッ素系界面活性剤となることから、500〜200,000が好ましく、1,000〜150,000の範囲がより好ましく、1,500〜100,000の範囲がさらに好ましい。また、本発明のフッ素系界面活性剤の分散度(Mw/Mn)は、より堅固な塗膜表面が得られるフッ素系界面活性剤となることから、1.5以下が好ましく、1.00〜1.40の範囲がより好ましく、1.05〜1.30の範囲がさらに好ましい。
【0081】
ここで、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
【0082】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HHR−H」(6.0mmI.D.×4cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:ELSD(オルテックジャパン株式会社製「ELSD2000」)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/分
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)。
標準試料:前記「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0083】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
東ソー株式会社製「F−550」
【0084】
本発明のフッ素系界面活性剤中のフッ素原子含有率は、塗布ムラの少ない良好なレベリング性が得られることから、4〜40質量%の範囲が好ましく、5〜35質量%の範囲がより好ましく、6〜30質量%の範囲がさらに好ましい。なお、フッ素原子含有率は、燃焼イオンクロマトグラフィーにより測定できる。
【0085】
本発明のコーティング組成物は、上記の本発明のフッ素系界面活性剤を添加剤として用いたものである。コーティング組成物中の該フッ素系界面活性剤の添加量は、コーティング樹脂の種類、塗工方法、目的とする膜厚等によって異なるが、コーティング組成物のうち固形分100質量部に対して0.0001〜10質量部が好ましく、0.001〜5質量部がより好ましく、0.01〜2質量部がさらに好ましい。フッ素系界面活性剤がこの範囲の添加量であれば、十分に表面張力を低下させることができ、目的とするレベリング性が得られ、塗工時の泡立ち等不具合の発生を抑制できる。
【0086】
コーティング組成物の添加剤として、本発明のフッ素系界面活性剤を用いることで、従来の炭素原子数8以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤に比べ、環境及び生体に対する蓄積性の低く、かつ従来の炭素原子数8以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤の同等以上、すなわち高速、高剪断力を伴う塗工方法においても、高度なレベリング性を発現させるコーティング組成物を提供することが可能である。このようなコーティング組成物としては、有用なコーティング組成物として、例えば、各種塗料用組成物や感光性樹脂組成物が挙げられる。
【0087】
上記塗料用組成物としては、例えば、石油樹脂塗料、セラック塗料、ロジン系塗料、セルロース系塗料、ゴム系塗料、漆塗料、カシュー樹脂塗料、油性ビヒクル塗料等の天然樹脂を用いた塗料;フェノール樹脂塗料、アルキッド樹脂塗料、不飽和ポリエステル樹脂塗料、アミノ樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ビニル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料等の合成樹脂を用いた塗料などが挙げられる。
【0088】
また、上記塗料用組成物中には必要に応じて、顔料、染料、カーボン等の着色剤;シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等の無機粉末;高級脂肪酸、ポリアクリル樹脂、ポリエチレン等の有機微粉末;耐光性向上剤、耐候性向上剤、耐熱性向上剤、酸化防止剤、増粘剤、沈降防止剤等の各種添加剤を適宜添加することが可能である。さらに、塗工方法については、公知公用の塗工方法であればいずれの方法も使用でき、例えば、ロールコーター、静電塗装、バーコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、デイッピング塗布、スプレー塗布等の方法が挙げられる。
【0089】
上記感光性樹脂組成物は、可視光、紫外光等の光を照射することにより樹脂の溶解性、粘度、透明度、屈折率、伝導度、イオン透過性等の物性が変化するものである。この感光性樹脂組成物の中でも、レジスト組成物(フォトレジスト組成物、カラーフィルター用のカラーレジスト組成物等)は、高度なレベリング性が要求される。通常、半導体又は液晶に関するフォトリソグラフィーにおいては、レジスト組成物を高剪断力の伴うスピンコーティングによって、厚さが1〜2μm程度になるようにシリコンウェハー又は各種金属を蒸着したガラス基板上に塗布するのが一般的である。この際、塗布膜厚が振れたり、一般にストリエーションといわれる塗布ムラが発生したりすると、パターンの直線性や再現性が低下し、目的とする精度を有するレジストパターンが得られないという問題が生じる。また、最近はそれ以外にも滴下跡、全体ムラ、中心部に比較しエッジ部が膜厚化するビード現象等の様々なレベリングに関与する問題点がクローズアップされている。半導体素子の高集積化に伴うレジストパターンの微細化又はシリコンウェハーの大口径化、液晶用ガラス基板の大型化が進む現在、このような塗布膜厚の振れやストリエーションの発生を抑えることが重要な課題となっている。また近年、半導体、液晶素子の生産性向上、高機能化等の観点から、上記塗布膜厚の振れやストリエーションの発生の抑制を厳密にコントロールする必要がある。
【0090】
ここで、本発明のフッ素系界面活性剤は、この感光性樹脂組成物、特にレジスト組成物の添加剤として用いることで、高度なレベリング性を発揮し、均一な塗膜(硬化物)を形成することができるため、上記のような問題を解決することができる。
【0091】
通常、レジスト組成物の中でもカラーレジスト組成物は、界面活性剤とフォトレジスト剤からなり、このフォトレジスト剤は、(1)アルカリ可溶性樹脂、(2)重合性化合物及び(3)着色剤を含有するものが例示できる。
【0092】
本発明で用いる(1)アルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ現像液に可溶のものであれば特に限定はないが、カルボキシル基、フェノール性水酸基及びスルホン酸基の群から選ばれる少なくとも1つの酸性基又はその塩を有する樹脂が好ましい。
【0093】
前記(1)アルカリ可溶性樹脂について、より具体的に説明すると、酸性基を有する単量体を重合させたものが挙げられる。(1)アルカリ可溶性樹脂の原料となる酸性基としてカルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸又はこれらの塩等が挙げられる。
【0094】
(1)アルカリ可溶性樹脂の原料となる酸性基としてフェノール性水酸基を有する単量体としては、例えば、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン等が挙げられる。また、これらの単量体の芳香環に結合したフェノール性水酸基及びビニル基以外の1個以上の水素原子が、アルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミド基に置換された化合物等も挙げられる。
【0095】
(1)アルカリ可溶性樹脂の原料となる酸性基としてスルホン酸基を有する単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アリルオキシプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸−2−スルホプロピル、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はこれらの塩等が挙げられる。
【0096】
また、上記の酸性基を有する単量体は、単独で重合して(1)アルカリ可溶性樹脂とすることもできるが、他の単量体と共重合させても構わない。このような他の単量体しては、炭化水素系オレフィン類、ビニルエーテル類、イソプロペニルエーテル類、アリルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル化合物、クロロオレフィン類、共役ジエン類等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル類が好ましい。
【0097】
前記(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸3−メチルブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチル−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸5−ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシシクロヘキシル、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−3−オキソブチル、(メタ)アクリル酸2−アセトアセトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
【0098】
(1)アルカリ可溶性樹脂の原料となる酸性基を有する単量体及び前記の他の単量体は、それぞれ単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0099】
前記(2)重合性化合物としては、紫外線等の活性エネルギー線照射により重合又は架橋反応可能な光重合性官能基を有する化合物であれば特に限定されることなく用いることができる。具体的な例としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0100】
また、N,N’−エチレンジマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンジマレイミド、N,N’−ドデカメチレンジマレイミド、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、N,N’−p−フェニレンジマレイミド、N,N’−(オキシジ−p−フェニレン)ジマレイミド、N,N’−(メチレンジ−p−フェニレン)ジマレイミド、N,N’−2,4−トリレンジマレイミド、N,N’−2,6−トリレンジマレイミド、N,N’−ジマレイミド、N,N’−m−キシリレンジマレイミド、N,N’−p−キシリレンジマレイミド、N,N’−オキシジプロピレンジマレイミド、エチレンジオキシ−ビス−N−エチルマレイミド、N,N’−p,p’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’−p,p’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−ジシクロヘキシルメタンビスマレイミド、N,N’−(3,3’−ジクロロ−p,p’−ビスフェニレン)ビスマレイミド、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、エトキシ(3−マレイミドプロピオキシ)エタン、エトキシ(3−マレイミドプロピオキシ)ブタン、ジエチレングリコール(3−マレイミドプロピル)メチルエーテル、Mn=400のポリエチレングリコールのメチル(3−マレイミドプロピル)エーテル、トリメチロールプロパントリ(3−マレイミドプロピルエーテル)、Mn=400のポリエチレングリコールのビス(3−マレイミドプロピル)エーテル、Mn=400のポリエチレングリコールのモノ(3−マレイミドプロピル)ビニルエーテル等のエーテル系化合物;メチルマレイミドアセテート、エチルマレイミドカプロネート、エチレングリコールモノメチルエーテルマレイミドアセテート、Mn=400のポリエチレングリコールのモノメチルエーテルマレイミドアセテート、テトラヒドロフルフリルマレイミドアセテート、ジエチレングリコールビスマレイミドアセテート、ジエチレングリコールモノマレイミドアセテートアクリレート、Mn=400のポリエチレングリコールのビスマレイミドアセテート、Mn=250のポリテトラメチレングリコールのビスマレイミドアセテート、Mn=400のポリエチレングリコールのモノマレイミドカプロネートアクリレート、トリメチロールプロパントリマレイミドアセテート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリマレイミドアセテート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパンジマレイミドアセテートモノアクリレート、ペンタエリスリトールテトラマレイミドアセテート、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトールジマレイミドアセテート、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトールトリマレイミドアセテート、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラマレイミドアセテート、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトールジマレイミドアセテートジアクリレート等のマレイミドエステル化合物;N−エチル−(2−マレイミドエチル)カーバメート;ソホロンジイソシアナートと(ポリ)アルキレンポリオールとの当量混合物を2−マレイミドエタノールと反応させたウレタン化合物;2−マレイミドエチル−エチルカーボネート、2−マレイミドエチル−イソプロピルカーボネート、テトラエチレングリコールビス(3−マレイミドプロピルカーボネート)等のマレイミドカーボネート化合物等のマレイミド誘導体も挙げられる。これらの(2)重合性化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0101】
前記(1)アルカリ可溶性樹脂と(2)重合性化合物との質量比率は、(1):(2)=20:80〜90:10の範囲が好ましく、30:70〜80:20の範囲がより好ましく、40:60〜70:30の範囲がさらに好ましい。
【0102】
本発明で用いる(3)着色剤としては、着色が可能なものであれば、特に制限無く用いることができるが、耐熱性及び耐光性が高い点から顔料が好ましく、有機顔料、無機顔料のいずれであっても用いることができる。
【0103】
前記有機顔料としては、赤(R)、緑(G)、青(B)の各画素の色に応じて用いる。赤(R)の画素では、例えば、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレド216、C.I.ピグメントレッド217、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド223、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド227、C.I.ピグメントレッド228、C.I.グメントレッド240、C.I.グメントレッド254、C.I.ピグメントレッド48:1等の赤色顔料を用いることができる。
【0104】
緑(G)の画素では、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36等の緑色顔料を用いることができる。青(B)画素では、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー64等の青色顔料を用いることができる。
【0105】
また、上記の赤(R)、緑(G)、青(B)の各画素の色再現性を向上する目的で、その他の色の有機顔料を色相調整として用いてもよい。このような色相調整の有機顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット30、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントバイオレット40、C.I.ピグメントバイオレット50等のバイオレット顔料;C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー86、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー125、C.I.ピグメントイエロー137、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー148、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー185等の黄色顔料などが挙げられる。
【0106】
一方、ブラックマトリックス(BM)を形成するのに用いる(3)着色剤としては、黒色であれば特に限定されるものではないが、カーボンブラック、金属酸化物、2種以上の金属酸化物からなる複合金属化合物等の顔料が好ましい。また、赤、青、緑、紫、黄、シアン、マゼンタの色相を有する顔料から選ばれる2種以上の有機顔料を混合し、混色により黒色とした組み合わせでも構わない。
【0107】
前記カーボンブラックとしては、例えば、ランプブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等が挙げられる。前記金属酸化物としては、チタンの酸化又は二酸化チタンの還元により得られるチタンブラックが挙げられる。通常、チタンブラックは、Ti2m−1(mは1以上の数)で表される。また、金属酸化物として、銅、鉄、クロム、マンガン、コバルト等の金属酸化物も挙げられる。さらに、2種以上の金属酸化物からなる複合金属化合物としては、例えば、銅−クロムの酸化物、銅−クロム−マンガンの酸化物、銅−鉄−マンガンの酸化物又はコバルト−鉄−マンガンの酸化物等が挙げられる。
【0108】
一方、有機顔料の例としては、赤の色相を有する顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ピロロ・ピロール系顔料、アントラキノン系顔料等が挙げられ、青の色相を有する顔料としては、フタロシアニン系顔料、インダンスレン系顔料等が挙げられ、緑の色相を有する顔料としては、ハロゲン化フタロシアニン系顔料等が挙げられ、紫の色相を有する顔料としては、ジオキサジンバイオレット、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、インダンスレンブリリアントバイオレット等が挙げられ、黄の色相を有する色相を有する顔料としては、テトラクロロイソインドリノン系顔料、ハンザイエロー系顔料、ベンジジンイエロー系顔料、アゾ系顔料等が挙げられ、シアンの色相を有する顔料としては無金属フタロシアニン、メロシアニン等が挙げられ、マゼンタの色相を有する顔料としては、ジメチルキナクリドン、チオインジゴ等が挙げられる。
【0109】
赤(R)、緑(G)、青(B)の各画素及びブラックマトリックス(BM)を形成するために用いる(3)着色剤は、求められる色相に応じて、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0110】
前記(3)着色剤の配合量は、前記(1)アルカリ可溶性樹脂及び(2)重合性化合物の合計100質量部に対して、質量基準で10〜80質量部の範囲であることが好ましく、15〜65質量部の範囲であることがより好ましい。
【0111】
本発明のレジスト組成物においては、前記(3)着色剤が顔料の場合は、分散剤を用いて有機溶剤中で分散させて調製した顔料分散液を予め調製して用いることが好ましい。前記分散剤としては、例えば、界面活性剤;顔料の中間体もしくは誘導体;染料の中間体もしくは誘導体;ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂型分散剤等が挙げられる。これら顔料分散剤の中でも、特に主鎖又は側鎖にN,N−ジ置換アミノ基及び酸性基を有するアクリル系重合体を含有する樹脂型分散剤が好ましい。このような樹脂型分散剤の市販品としては、例えば、ビックケミー社製の「BYK−160」、「BYK−161」、「BYK−2001」、エフカーケミカルズ社製の「エフカ46」、味の素ファインテクノ株式会社製の「アジスパーPB−814」等が挙げられる。これらの分散剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0112】
また、前記顔料分散液の調製の際に用いられる有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤;エトキシプロピオネート等のプロピオネート系溶剤;トルエン、キシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤;ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン等の窒素化合物系溶剤;γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤;カルバミン酸エステル等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0113】
前記顔料分散液の調製方法としては、(3)着色剤の混練分散工程及び微分散工程を経る方法、微分散工程のみで行う方法等が挙げられる。前記混練分散工程では、(3)着色剤、(1)アルカリ可溶性樹脂の一部、及び必要に応じて前記分散剤を混合し混練する。混練に用いる機械は、二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸もしくは二軸の押出機等が挙げられ、これらの混練機を用いて強い剪断力を加えながら分散することにより着色剤を分散することができる。また、(3)着色剤は、上記の混練を行う前に、ソルトミリング法等によって粒子サイズを微細化しておくことが好ましい。
【0114】
一方、前記微分散工程では、前記混練分散工程で得られた(3)着色剤を含む組成物に溶剤を加えたもの、又は、(3)着色剤、(1)アルカリ可溶性樹脂、溶剤及び必要に応じて前記分散剤を混合したものを、ガラス、ジルコニアやセラミックの微粒の分散用メディアと共に分散機を用いて混合分散することにより、(3)着色剤の粒子を一次粒子に近い微小な状態にまで分散することができる。
【0115】
また、(3)着色剤の一次粒子の平均粒径は、10〜100nmであることが好ましく、10〜60nmであることがより好ましい。なお、この(3)着色剤の平均粒径は、動的光散乱式の粒度分布計で測定したものであり、例えば、日機装株式会社製のナノトラック(Nanotrac)粒度分布測定装置「UPA−EX150」、「UPA−EX250」等で測定することができる。
【0116】
紫外線等の活性エネルギー線を照射して、本発明のレジスト組成物を硬化させる場合には、本発明のレジスト組成物に重合開始剤を配合する。この重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、アゾビスイソブチロニトリル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4’−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4’−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’’−ジエチルイソフタロフェン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾインイソプロピルエーテル、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2−イソプロピルチオキサンソン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられ、単独でも2種以上を併用してもよい。これらの中でも、本発明のカラーフィルター画素形成用組成物中に含まれる(3)着色剤の影響を比較的受けずに、高い硬化性を示すが2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1が好ましい。
【0117】
また、必要に応じてアミン化合物又はリン化合物等の光増感剤を添加し、光重合を促進することもできる。
【0118】
重合開始剤の配合量は、前記(1)アルカリ可溶性樹脂、(2)重合性化合物及び(3)着色剤の合計100質量部に対して、0.01〜15質量部の範囲であることが好ましく、0.3〜7質量部の範囲であることがより好ましい。
【0119】
さらに、本発明のレジスト組成物は、用途、特性等の目的に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、有機溶剤、重合禁止剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤等の添加剤を配合することができる。
【0120】
また、本発明のレジスト組成物に塗布適性を付与するため、有機溶剤を添加して粘度調整を行っても構わない。ここで使用し得る有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤;エトキシプロピオネート等のプロピオネート系溶剤;トルエン、キシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤;ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン等の窒素化合物系溶剤;γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤;カルバミン酸エステル等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0121】
ここで有機溶媒の使用量は、用途や目的とする膜厚や粘度によって異なるが、前記(1)アルカリ可溶性樹脂及び(2)重合性化合物の合計に対して、質量基準で、0.5〜6倍量の範囲であることが好ましい。
【0122】
本発明の本発明のレジスト組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、光、電子線、放射線等の活性エネルギー線が挙げられる。具体的なエネルギー源又は硬化装置としては、例えば殺菌灯、紫外線用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線、又は走査型、カーテン型電子線加速器による電子線等が挙げられる。なお、電子線で硬化させる場合には、本発明のレジスト組成物への前記重合開始剤の配合は不要である。
【0123】
これらの活性エネルギー線の中でも特に紫外線であることが好ましい。また、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射すると塗膜の表面硬化性が向上するため好ましい。また、必要に応じて熱をエネルギー源として併用し、活性エネルギー線にて硬化した後、熱処理を行ってもよい。
【0124】
本発明のレジスト組成物の塗布方法は用途により異なるが、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、カーテンコーター、シャワーコーター、スピンコーター、スリットコーター、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー、アプリケーター、バーコーター等を用いた塗布方法が挙げられる。
【実施例】
【0125】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。例中、断りのない限り、部、%は質量基準である。
【0126】
実施例1(フッ素系界面活性剤の合成)
窒素置換したフラスコに、溶剤として2−プロパノール47.5gと、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート25.6gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら40℃に昇温した。次いで、2,2’−ビピリジル5.3g、塩化第一銅1.9gを仕込み、フラスコ内を40℃に保ちながら30分撹拌した。その後、2−ブロモイソ酪酸エチル3.3gを加え、窒素気流下、40℃で2時間反応させ、橋かけ環炭化水素の骨格を含む重合体セグメントを得た。次いで、該重合体セグメントを含む反応系に2−(トリデカフルオロヘキシル)エチルメタクリレート45.9gを加え、40℃で5時間反応させ、反応物を得た。次いで、得られた反応物に、活性アルミナ30gを加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去して本発明のフッ素系界面活性剤(1)を得た。このフッ素系界面活性剤(1)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)3,100、数平均分子量(Mn)2,700であった。また、フッ素原子含有量は14.5質量%であった。
【0127】
実施例2(同上)
窒素置換したフラスコに、溶剤として2−プロパノール81.7gと、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート40.5gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら40℃に昇温した。次いで、2,2’−ビピリジル7.3g、塩化第一銅1.5gを仕込み、フラスコ内を40℃に保ちながら30分撹拌した。その後、2−ブロモイソ酪酸エチル2.5gを加え、窒素気流下、40℃で2時間反応させ、橋かけ環炭化水素の骨格を含む重合体セグメントを得た。次いで、該重合体セグメントを含む反応系に2−(トリデカフルオロヘキシル)エチルメタクリレート13.7gを加え、40℃で5時間反応させ、反応物を得た。次いで、得られた反応物に、活性アルミナ30gを加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去して本発明のフッ素系界面活性剤(2)を得た。このフッ素系界面活性剤(2)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)3,200、数平均分子量(Mn)2,700であった。また、フッ素原子含有量は37質量%であった。
【0128】
実施例3(同上)
窒素置換したフラスコに、溶剤として2−プロパノール47.5gと、ジシクロペンタニルメタクリレート25.6gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら40℃に昇温した。次いで、2,2’−ビピリジル5.3g、塩化第一銅1.9gを仕込み、フラスコ内を40℃に保ちながら30分撹拌した。その後、2−ブロモイソ酪酸エチル3.3gを加え、窒素気流下、40℃で2時間反応させ、次いでジシクロペンタニルメタクリレート25.6gを仕込み、40℃で2時間反応させることで橋かけ環炭化水素の骨格を含む重合体セグメントを得た。次いで、該重合体セグメントを含む反応系に2−(トリデカフルオロヘキシル)エチルメタクリレート45.9gを加え、40℃で5時間反応させ、反応物を得た。次いで、得られた反応物に、活性アルミナ30gを加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去して本発明のフッ素系界面活性剤(3)を得た。このフッ素系界面活性剤(3)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)3,300、数平均分子量(Mn)2,900であった。また、フッ素原子含有量は14.5質量%であった。
【0129】
実施例4(同上)
窒素置換したフラスコに、溶剤としてメチルエチルケトン65gと、ジシクロペンタニルメタクリレート25.6gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら60℃に昇温した。次いで、2,2’−ビピリジル3.1g、塩化第一銅1.1gを仕込み、フラスコ内を60℃に保ちながら30分撹拌した。その後、2−ブロモイソ酪酸エチル2.0gを加え、窒素気流下、40℃で2時間反応させ、橋かけ環炭化水素の骨格を含む重合体セグメントを得た。次いで、該重合体セグメントを含む反応系に2−(トリデカフルオロヘキシル)エチルメタクリレート10.5gを加え、60℃で8時間反応させ、反応物を得た。次いで、得られた反応物に、活性アルミナ30gを加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去して本発明のフッ素系界面活性剤(4)を得た。このフッ素系界面活性剤(4)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)4,200、数平均分子量(Mn)3,500であった。また、フッ素原子含有量は14.5質量%であった。
【0130】
実施例5(同上)
窒素置換したフラスコに、溶剤としてメチルエチルケトン65gと、1−アダマンチルメタクリレート31gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら60℃に昇温した。次いで、2,2’−ビピリジル3.1g、塩化第一銅1.1gを仕込み、フラスコ内を60℃に保ちながら30分撹拌した。その後、2−ブロモイソ酪酸エチル2.0gを加え、窒素気流下、60℃で3時間反応させ、橋かけ環炭化水素の骨格を含む重合体セグメントを得た。次いで、該重合体セグメントを含む反応系に2−(トリデカフルオロヘキシル)エチルメタクリレート10.5gを加え、60℃で8時間反応させ、反応物を得た。次いで、得られた反応物に、活性アルミナ30gを加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去して本発明のフッ素系界面活性剤(5)を得た。このフッ素系界面活性剤(5)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)4,100、数平均分子量(Mn)3,500であった。また、フッ素原子含有量は14.5質量%であった。
【0131】
実施例5(同上)
窒素置換したフラスコに、溶剤としてメチルエチルケトン65gと、イソボロニルメタクリレート31gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら60℃に昇温した。次いで、2,2’−ビピリジル3.1g、塩化第一銅1.1gを仕込み、フラスコ内を60℃に保ちながら30分撹拌した。その後、2−ブロモイソ酪酸エチル2.0gを加え、窒素気流下、60℃で3時間反応させ、橋かけ環炭化水素の骨格を含む重合体セグメントを得た。次いで、該重合体セグメントを含む反応系に2−(トリデカフルオロヘキシル)エチルメタクリレート10.5gを加え、60℃で8時間反応させ、反応物を得た。次いで、得られた反応物に、活性アルミナ30gを加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去して本発明のフッ素系界面活性剤(5)を得た。このフッ素系界面活性剤(5)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)4,200、数平均分子量(Mn)3,600であった。また、フッ素原子含有量は14.5質量%であった。
【0132】
比較例1
撹拌装置、コンデンサ−、滴下装置、温度計を備えたガラスフラスコに、メチルイソブチルケトン133質量部を入れ、窒素気流中、攪拌しながら90℃に昇温した。次いで、2−(トリデカフルオロヘキシル)エチルメタクリレート32質量部、繰り返し単位数1のオキシプロピレン部位と平均繰り返し単位数6のオキシブチレン部位を有するプロピレングリコール・ポリブチレングリコールモノメタクリレート68質量部をメチルイソブチルケトン80質量部に溶解させたモノマー溶液と、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート6質量部をメチルイソブチルケトン20質量部に溶解させたラジカル重合開始剤溶液の2種類の滴下液をそれぞれ別の滴下装置にセットし、フラスコ内を90℃に保ちながら同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、90℃で10時間攪拌した後、減圧下で溶媒を除去することにより、フッ素系界面活性剤(1’)を得た。このフッ素系界面活性剤(1’)は、数平均分子量3,600、重量平均分子量9,500であった。また、フッ素含有率は19質量%であった。
【0133】
比較例2
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルイソブチルケトン50.4gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら90℃に昇温した。次いで、2−(トリデカフルオロヘキシル)エチルメタクリレート44.1gと、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート59.1gをメチルイソブチルケトン167.4gに溶解したモノマー溶液と、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート6.2gをメチルイソブチルケトン23.2gに溶解した重合開始剤溶液との2種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を90℃に保ちながら同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、90℃で9時間攪拌後、減圧下で溶媒172.0部を留去することによって、重合体(P−1)溶液を得た。
【0134】
次いで、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.1g、ウレタン化触媒としてオクチル酸錫0.03gを仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート34.4gを1時間で滴下した。滴下終了後、60℃で2時間攪拌した後、80℃に昇温して8時間攪拌することにより、IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失を確認し、メチルイソブチルケトンを加え、フッ素系界面活性剤(2’)を40%含有するメチルイソブチルケトン溶液を得た。フッ素系界面活性剤(2’)の分子量をGPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した結果、数平均分子量3,600、重量平均分子量18,000であった。また、原料仕込比から計算したフッ素原子含有量は18%、アダマンタン含有量は24%、ラジカル重合性不飽和基当量は550g/eq.であった。
【0135】
比較例3
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、下記式(X−1)で表される両末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を20質量部、溶媒としてジイソプロピルエーテル20質量部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.02質量部、中和剤としてトリエチルアミン3.1質量部を仕込み、空気気流下にて攪拌を開始し、フラスコ内を10℃に保ちながらアクリル酸クロライド2.7質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、10℃で1時間攪拌し、昇温して30℃で1時間攪拌した後、50℃に昇温して10時間攪拌することにより反応を行い、ガスクロマトグラフィー測定にてアクリル酸クロライドの消失が確認された。次いで、溶媒としてジイソプロピルエーテル40質量部を追加した後、イオン交換水80質量部を混合して攪拌してから静置し水層を分離させて取り除く方法による洗浄を3回繰り返した。次いで、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.02質量部を添加し、脱水剤として硫酸マグネシウム8質量部を添加して1日間静置することで完全に脱水した後、脱水剤を濾別した。次いで、減圧下で溶媒を留去することによって、下記構造式(d1−1−1)で表される単量体を得た。
【0136】
【化15】
(式中、Xはパーフルオロメチレン基及びパーフルオロエチレン基であり、1分子あたり、パーフルオロメチレン基が平均7個、パーフルオロエチレン基が平均8個存在するものであり、フッ素原子の数が平均46である。)
【0137】
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えた別のガラスフラスコに、溶媒としてメチルイソブチルケトン63質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら105℃に昇温した。次いで、上記で得られた単量体(d1−1−1)21.5質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート41.3質量部、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート9.4質量部と溶媒としてメチルイソブチルケトン126質量部を混合した開始剤溶液135.4質量部の3種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を105℃に保ちながら同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、105℃で10時間攪拌した後、減圧下で溶媒を留去することによって、重合体(P1−1)を得た。
【0138】
次いで、溶媒としてメチルエチルケトン74.7質量部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.1質量部、ウレタン化触媒としてジブチル錫ジラウレート0.06質量部を仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート44.8質量部を1時間で滴下した。滴下終了後、60℃で1時間攪拌した後、80℃に昇温して10時間攪拌することにより反応を行った結果、IRスペクトル測定によりイソシアネート基の消失が確認された。次いで、溶媒としてメチルエチルケトン37.4質量部を添加し、濾過によって溶液に不溶な物は濾別して、重合性基を有するフッ素系界面活性剤(3’)50質量%含有のメチルエチルケトン溶液を得た。フッ素系界面活性剤(3’)の分子量をGPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した結果、数平均分子量2,400、重量平均分子量7,100、最大分子量20万であった。
【0139】
実施例7(レジスト組成物の調製)
着色剤としてDIC株式会社製FASTOGENグリーンA110を用いた緑色顔料分散液42gに対し、バインダー樹脂としてDIC株式会社製ユニディックRS20−160を15g、光重合性モノマーとして新中村化学工業株式会社製NKエステルA−200を6g、光重合開始剤としてBASFジャパン株式会社製イルガキュア#369を0.5g、前記本発明のフッ素系界面活性剤(1)を固形分換算で0.06g、PGMEAを37gを混合して、カラーレジスト組成物(1)を調製した。
【0140】
カラーレジスト組成物(1)を用いて硬化塗膜を得た。この硬化塗膜を用いて水しみの評価を行った。硬化塗膜の作成方法、水しみの評価方法を下記に示す。また、評価結果を第1表に示す。
【0141】
<硬化塗膜の作成方法>
カラーレジスト組成物(1)を7cm×7cmのガラス板上に回転数1000rpmで10秒間スピンコーティングした後、高圧水銀灯で200mJ/cmの条件で露光して塗膜を形成した。
【0142】
<水しみの評価方法>
塗膜を形成したガラス板を円筒型の容器に立てかけ、基板の半分程度が浸るまでイオン交換水を加えて、その後5分間静置した後、取り出した。基板の喫水線部分に発生する白線状のシミの程度によって、以下の評価を行った。評価は、下記の通りである。
○:白線状のシミがほとんど見られない
△:白線状のシミが細く見られる
×:白線状のシミが太く見られる
【0143】
実施例8(同上)
フッ素系界面活性剤(1)のかわりにフッ素系界面活性剤(2)を用いた以外は実施例7と同様にしてカラーレジスト組成物(2)を得た。実施例7と同様の評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0144】
実施例9(同上)
フッ素系界面活性剤(1)のかわりにフッ素系界面活性剤(3)を用いた以外は実施例7と同様にしてカラーレジスト組成物(3)を得た。実施例7と同様の評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0145】
実施例10(同上)
フッ素系界面活性剤(1)のかわりにフッ素系界面活性剤(4)を用いた以外は実施例7と同様にしてカラーレジスト組成物(4)を得た。実施例7と同様の評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0146】
実施例11(同上)
フッ素系界面活性剤(1)のかわりにフッ素系界面活性剤(5)を用いた以外は実施例7と同様にしてカラーレジスト組成物(5)を得た。実施例7と同様の評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0147】
実施例12(同上)
フッ素系界面活性剤(1)のかわりにフッ素系界面活性剤(6)を用いた以外は実施例7と同様にしてカラーレジスト組成物(6)を得た。実施例7と同様の評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0148】
比較例1(比較対照用レジスト組成物の調製)
フッ素系界面活性剤(1)のかわりに比較対照用フッ素系界面活性剤(1´)を用いた以外は実施例7と同様にして比較対照用カラーレジスト組成物(1´)を得た。実施例7と同様の評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0149】
比較例2(同上)
フッ素系界面活性剤(1)のかわりに比較対照用フッ素系界面活性剤(2´)を用いた以外は実施例7と同様にして比較対照用カラーレジスト組成物(2´)を得た。実施例7と同様の評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0150】
比較例3(同上)
フッ素系界面活性剤(1)のかわりに比較対照用フッ素系界面活性剤(3´)を用いた以外は実施例7と同様にして比較対照用カラーレジスト組成物(3´)を得た。実施例7と同様の評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0151】
【表1】