(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
室温で硬化してシリコーンゴムとなる組成物は従来から知られており、産業界で広く使用されてきた。室温で硬化する機構には、ヒドロシリル化反応によって硬化する機構、紫外線によって硬化する機構、ケイ素原子に結合する加水分解性基と水酸基との縮合反応によって硬化する機構などが知られている。中でも、縮合反応により硬化するオルガノポリシロキサン組成物は室温にて容易に硬化することができ、また、ヒドロシリル化反応などで起こる、不純物による硬化阻害を起しにくいという利点を有する。そのため、建築用シーリング材などの用途で好適に用いられている。
【0003】
建築用シーリング材に要求される代表的な性能として、年間または日間を通して起きる温度変化や、地震や風圧により起きる環境変化の際に、施工される目地周囲の部材の伸縮に伴い変形追従性を有することが挙げられる。また、目地周囲の部材として代表的なガラスや塗装アルミに対する接着性に優れる事なども挙げられる。建築用シーリング材は、変成シリコーン(シリル化ポリエーテル)系、ポリサルファイド系、ポリウレタン系など、原料に使用される主ポリマーの種類で分類される。その中で、シリコーン系に分類される建築用シーリング材は、ポリマーが安定性を有することからガラス越しの耐光接着性が良好である。その為、該シーリング材は、窓の開口部におけるガラスグレイジング用の防水シール材として好適に使用されている。また、火災時に延焼する恐れのある窓の開口部は防火設備とすることが建築基準法で定められている。その為、防火設備用のガラスグレイジングのために使用されるシーリング材には高い難燃性が求められる。
【0004】
従来からシリコーン系のシーリング材に難燃性を付与するために多くの技術が開発されている。例えば、難燃性を付与するために添加する材料として、水酸化アルミニウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、二酸化ケイ素(シリカ)のような充填材、白金化合物のような貴金属化合物、及びトリアゾール系の化合物が提案されている。
【0005】
中でも、水酸化アルミニウムは経済性及び難燃性付与の点で有用であることが知られている。特許文献1及び2には、水酸化アルミニウムを炭酸カルシウムと併用することにより、良好な作業性を有し、かつ自己消炎性に優れた硬化物を与える室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供できることが記載されている。
【0006】
また、炭酸亜鉛も経済性及び難燃性付与の点で有用な充填材として知られている。特許文献3及び4には、特定の炭酸亜鉛を使用することで、硬化性、難燃性、及び貯蔵安定性に優れた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供できることが記載されている。
【0007】
しかし、上記のようにシーリング材に充填材を配合して難燃性を得るためには、難燃性付与効果のある充填材を組成物中に多量に配合する必要がある。充填材を多量に配合すると、該組成物を硬化して得られるゴムの伸び率が低下して変形追従性が失われるという問題や、組成物の被着材に対する接着性が不十分となり、硬化物と被着材との接着界面において剥離が生じやすいという問題があった。
【0008】
また、近年、シーリング材の難燃性や変形追従性に対する要求が益々高くなってきている。例えば、消防法は、JIS K 7201に定める酸素指数法に基づき、酸素指数が26以上のものを不燃性または難燃性を有するものとして取扱うと規定している。また、防火設備用ガラスグレイジングに使用するシーリング材には、変形追従性が、JIS A5758でタイプGに規定されるクラスのいずれかに適合することが必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(a)ジオルガノポリシロキサン
(a)成分は下記一般式(1)で表されるジオルガノポリシロキサンであり、本発明のオルガノポリシロキサン組成物の主剤となるものである。
【化2】
【0016】
上記式(1)において、Rは、互いに独立に、非置換もしくは置換の、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の1価炭化水素基である。該1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、及びヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、及びプロペニル基等のアルケニル基、及びフェニル基等のアリール基が挙げられる。あるいは、これらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えば、クロロメチル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基、およびシアノエチル基を挙げることができる。中でもメチル基が好ましく、特には、分子鎖の両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサンが好ましい。
【0017】
上記式(1)において、nは、ジオルガノポリシロキサンの23℃における粘度が100〜1,000,000mPa・sとなる数であり、好ましくは500〜200,000mPa・sとなる数である。なお、粘度は回転粘度計により測定した値である。特には、nは10以上の整数、更には20〜10,000の整数であるのがよい。
【0018】
(b)炭酸カルシウム
(b)成分は、従来公知の炭酸カルシウムから選択されればよく、特に制限されるものでない。例えば、炭酸カルシウムには、天然炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム)及び合成炭酸カルシウム(軽質(コロイダル)炭酸カルシウム)がある。本発明において、炭酸カルシウムは、平均粒子径10nm以上、好ましくは20〜20,000nm、さらに好ましくは30〜10,000nmを有するのがよい。炭酸カルシウムの平均粒子径が上記下限値未満であると粒子の擬凝集が起こる場合がある。
【0019】
また、炭酸カルシウムは、表面を処理剤で処理されたものであってもよい。炭酸カルシウムの表面処理剤としては、例えば、脂肪酸、不飽和脂肪酸、樹脂酸、又はそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、脂肪酸エステル、又は第四級アンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されるものでない。樹脂酸としては、ロジン酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、デキストロピマール酸、レボピマール酸、パルストリン酸、及びサンダラコピマール酸等が挙げられる。脂肪酸としては、炭素数12以上のものが好ましく、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、及びラウリン酸等が挙げられる。中でも、脂肪酸や不飽和脂肪酸、及び、ロジン酸が好ましい。尚、本発明において、炭酸カルシウムの「平均粒子径」とは、重質炭酸カルシウムの場合は、表面処理の有無に関わらず、空気透過法により測定して算出された比表面積からの計算値である。また、コロイダル炭酸カルシウムの場合は、表面処理の有無に関わらず、電子顕微鏡観察により測定した平均一次粒子径を意味する。
【0020】
処理される炭酸カルシウムとしては、平均一次粒子径が0.1μm以下、好ましくは0.03〜0.1μmを有するコロイダル炭酸カルシウム、及び0.1μmより大きい平均粒子径を有する重質炭酸カルシウムが好ましい。表面処理された炭酸カルシウムは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、炭酸カルシウムの表面処理量は、炭酸カルシウムに対して3.0質量%以下、好ましくは0.5〜2.5質量%であるのがよい。炭酸カルシウムの表面処理量が上記上限値より多いと、得られる組成物の接着性が損なわれるおそれがあるため好ましくない。表面処理量は、例えば、示差熱分析装置(SSC5200、セイコー電子工業株式会社)によって測定することができる。
【0021】
無処理の炭酸カルシウム及び表面処理された炭酸カルシウムは市販されており、本発明ではそれらを用いることができる。無処理の炭酸カルシウムの市販品としては、ソフトン3200、ソフトン1000、BF−100、BF−300(白石カルシウム社製商品名)等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。表面処理された炭酸カルシウムの市販品としては、Viscolite−OS、白艶華T−DD(白石カルシウム社製商品名)等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。無処理の炭酸カルシウム及び表面処理された炭酸カルシウムは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、表面処理された炭酸カルシウムを無処理の重質炭酸カルシウムと併用することにより、より優れた強靭性付与効果及びより高い作業性が発現されるため好ましい。
【0022】
(b)成分の量は、(a)成分100質量部に対して10〜300質量部、好ましくは30〜200質量部であるのがよい。炭酸カルシウムの量が上記下限値未満では、目的とする、硬化物の補強性が得られない。また、上記上限値を超えると、組成物を調製する時の混練が困難となるのに加え、硬化物のゴム弾性が硬くなり、目的とするゴム弾性を有する硬化物を得ることができないおそれがあるため好ましくない。
【0023】
(c)オルガノシラン及び/又はその部分加水分解物
(c)成分は、下記に記載する(c−1)成分と(c−2)成分の組合せである。本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、(c−1)成分と(c−2)成分を3:1〜10:1、好ましくは4:1〜8:1の質量比で含有することを特徴とする。(c−1)成分または(c−2)成分の少なくとも一方を有さないと、難燃性、変形追従性、及び接着性の全てに優れた硬化物は得られない。また、(c−1)成分の比率が上記下限値よりも少ないと、得られる硬化物の難燃性、変形追従性が悪くなり、また硬化物の被着材に対する接着性が低下する。また、組成物の硬化速度が遅くなるおそれや、製造後に経時で組成物の物性の低下が起こるおそれがある。(c−1)成分の比率が上記上限値より多いと、硬化物の被着材に対する接着性が低下する。
【0024】
(c−1)成分は、一分子中に1つのビニル基又はフェニル基を有し、且つ3つのケトオキシム基を有するオルガノシラン及び/又はその部分加水分解物である。該オルガノシランは、下記式(3)で表すことができる。
R
3SiX
3 (3)
式中、R
3はビニル基又はフェニル基であり、Xは炭素数1〜8、好ましくは1〜6の有機基を有するケトオキシム基である。該ケトオキシム基としては、例えばメチルエチルケトオキシム基、メチルイソブチルケトオキシム基、及びジイソプロピルケトオキシム基等が挙げられる。該オルガノシランの部分加水分解物とは、ケトオキシム基(X)の少なくとも1つが加水分解され、水酸基となっている化合物を意味する。また、本発明において、オルガノシランの部分加水分解物とは、該部分加水分解物が有する−SiOHの一部または全部が縮合してシロキサン結合を形成しているものを含んでもよい。本発明において(c−1)は、上記式(3)で表されるオルガノシランとその部分加水分解物の混合物であってよいし、上記式(3)で表されるオルガノシラン又は部分加水分解物単独であってもよい。
【0025】
上記式(3)で表されるオルガノシランとしては、例えば、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、フェニルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(ジイソプロピルケトオキシムシラン)、及びフェニルトリス(ジイソプロピルケトオキシム)シランなどのケトオキシムシランが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよいが、単独で用いられることが好ましい。
【0026】
(c−2)成分は、一分子中に少なくとも1つのエポキシ基を有し、且つ少なくとも2つのアルコキシ基を有し、且つアミノ基を有さない、オルガノシラン及び/又はその部分加水分解物である。該オルガノシランは、下記式(4)で表すことができる。
Y
bR
4(4−a−b)SiZ
a (4)
式中、Yはエポキシ基を有する1価の有機基であり、炭素原子に結合する水素原子の一部が3,4−エポキシシクロヘキシル基やグリシドキシ基で置換された、炭素数1〜10、好ましくは炭素数2〜6のアルキル基が挙げられる。例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、及び3−グリシドキシプロピル基等が挙げられる。Zは炭素数1〜6、好ましくは1〜4のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロペノキシ基、及びブトキシ等が挙げられる。R
4は炭素数1〜10、好ましくは1〜6の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、及びドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、及びプロペニル基等のアルケニル基、及びフェニル基等のアリール基が挙げられる。aは2または3の整数であり、bは1または2の整数であり、但し、a+b=3または4である。該オルガノシランの部分加水分解物とは、アルコキシ基(Z)の少なくとも1つが加水分解され、水酸基となっている化合物を意味する。また、本発明において、オルガノシランの部分加水分解物とは、該部分加水分解物が有する−SiOHの一部または全部が縮合してシロキサン結合を形成しているものを含んでもよい。本発明において(c−2)は、上記式(4)で表されるオルガノシランとその部分加水分解物の混合物であってよいし、部分加水分解物単独であってもよい。
【0027】
上記式(4)で表されるオルガノシランとしては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリイソプロペノキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等が例示される。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよいが、単独で用いられることが好ましい。
【0028】
(c)成分の量は、(a)成分100質量部に対して10〜30質量部、好ましくは12〜25質量部であるのがよい。(c)成分の量が上記下限値未満では十分な架橋が得られず、目的とするゴム弾性を有する組成物が得難い。また、上記上限値を超えると、硬化後のゴム弾性が硬くなると共に、深部硬化遅延が起こり、さらに価格的に不利となる。
【0029】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、上記(c−1)及び(c−2)に加えて、(c−3)一分子中に少なくとも1つのアミノ基を有し、且つ少なくとも1つのアルコキシ基を有するオルガノシラン及び/又はその部分加水分解物を含むことができるが、(c−3)成分の量は(a)成分100質量部に対して0.1質量部未満であることが好ましい。(c−3)成分を上記上限値以上含有すると、組成物の難燃性が失われてしまい、さらに被着材に対する硬化物の接着性、変形追従性も悪化する。特に(c−3)成分が1級または2級のアミノ基を含む場合には、貯蔵時に組成物内で(c−1)成分、(c−2)成分、及び(c−3)成分が互いに反応してしまい、経時で組成物の粘度が増加して作業性が失われる。従来公知の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物においては、(c−3)成分のようなアミノシランカップリング剤の含有量が多いほど硬化物の接着性が向上するため好ましいとされているが、本発明の組成物においては(c−3)成分を全く含有しないことが最も好ましい。
【0030】
上記(c−3)成分のオルガノシランとしては、所謂アミノシランカップリング剤と呼ばれる公知のものが挙げられる。例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、N,N−ビス[(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(メチルジメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(メチルジエトキシシリル)プロピル]アミン、及び3−(N−アミノメチルベンジルアミノ)プロピルトリメトキシシランなどのアミノシランカップリング剤、並びにこれらが部分的に加水分解され縮合した化合物が挙げられる。
【0031】
(d)硬化触媒
(d)硬化触媒は本発明の組成物の硬化を促進するために作用する。該硬化触媒としては、縮合硬化型オルガノポリシロキサンの硬化促進剤として公知のものを使用することができ、特に制限されるものでない。例えば、ジブチルスズジメトキサイド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビス(アセチルアセトナート)、ジブチルスズビス(ベンジルマレート)、ジメチルスズジメトキサイド、ジメチルスズジアセテート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジラウレート、スズジオクテート、及びスズジラウレート等の有機スズ化合物、並びに、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラノルマルプロピルチタネート、テトラ−2−エチルヘキシルチタネート、ジイソプロピルジターシャリーブチルチタネート、ジメトキシチタンビスアセチルアセトナート、ジイソプロポキシチタンビスエチルアセトアセテート、ジターシャーリーブトキシチタンビスエチルアセトアセテート、及びジターシャリーブトキシチタンビスメチルアセトアセテート等の有機チタン化合物などの金属ルイス酸等を、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
硬化触媒の量は、(a)成分100質量部に対して0.01〜10質量部、好ましくは0.02〜5質量部が好適である。硬化触媒の量が上記上限値より多いと耐久性試験後に硬化物に亀裂、破損が起き易くなる場合がある。また、硬化触媒の量が上記下限値より少ないと硬化までの時間が長くなり実用的に好ましくない。
【0033】
(e)チクソ性付与剤
(e)チクソ性付与剤は、組成物のチクソ性を向上すると共に、スランプを抑制するための成分である。チクソ性付与剤としては、(a)ジオルガノポリシロキサンと相溶しない化合物であり、常温で液体であることが好ましい。このようなチクソ性付与剤としては、組成物にチクソ性を付与できるものなら特に制限されず従来公知のチクソ性付与剤を使用すればよいが、中でも、ポリエーテル類が好ましい。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の両末端に水酸基を有するポリエーテル類が挙げられる。また、前記ポリエーテル類の末端基を加水分解性シリル基で封鎖したポリエーテル類等が挙げられ、例えば、トリメトキシシリル基やメチルジイソプロポキシシリル基で末端を封鎖したポリエーテル類を使用することができる。加水分解性シリル基で封鎖したポリエーテル類は、アリル基を末端基として有するポリエーテル類と加水分解性基を有するハイドロシランとをヒドロシリル化反応させることによって得られる。ポリエーテル類は、重量平均分子量500〜1,000,000、特に1,000〜50,000を有することが好ましい。
【0034】
(e)成分の量は、(a)成分100質量部に対して0.1〜5質量部、好ましくは0.2〜2質量部であるのがよい。(e)成分の量が上記上限値より多いと、組成物の硬化性または接着性が悪くなったり、(e)成分自体が硬化物表面にブリードしてしまう。また、(e)成分の量が上記下限値より少ないとチクソ性が低下し、スランプが生じやすくなる。
【0035】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、上記(a)〜(e)成分に加えて、さらに(f)下記一般式(2)で表されるジオルガノポリシロキサンを含有してもよい。
【化3】
【0036】
上記式(2)中、R
1は、互いに独立に、非置換もしくは置換の、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の1価炭化水素基である。該1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、及びヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、及びプロペニル基等のアルケニル基、及びフェニル基等のアリール基が挙げられる。あるいは、これらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えば、クロロメチル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基、およびシアノエチル基を挙げることができる。中でもメチル基が好ましい。
【0037】
R
2は、互いに独立に、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の1価炭化水素基である。該1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、及びヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。中でもメチル基が好ましい。mは該ジオルガノポリシロキサンの23℃における粘度が1.5〜1,000,000mPa・s、好ましくは30〜100,000mPa・sとなる数であり、特には、mは2以上の整数、さらには20〜2,000の整数であるのがよい。特には、R
1及びR
2は、共にメチル基であることが好ましく、分子鎖の両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサンが好ましい。
【0038】
(f)成分の量は、(a)成分100質量部に対して5〜100質量部、好ましくは10〜80質量部であるのがよい。(f)成分の量が上記範囲内にあると本発明の組成物の機械特性や難燃性を損なうことなく、施工上取り扱いやすい粘度に調整することができるため好ましい。
【0039】
(g)水酸化アルミニウム
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、上記(a)〜(e)成分に加えて、さらに(g)水酸化アルミニウムを含有してもよい。本発明の組成物に水酸化アルミニウムを加える事で、組成物の硬化後の酸素指数をさらに高めることができる。水酸化アルミニウムは、平均粒子径が50μm以下、好ましくは1〜30μmを有する微粉末であるのがよい。水酸化アルミニウムの平均粒子径が上記上限値を超えると、得られる硬化物の自己消炎性が悪くなったり、硬化後のゴム物性が低下するおそれがあるため好ましくない。水酸化アルミニウムの量は(a)成分100質量部に対して、10〜300質量部であり、好ましくは20〜200質量部である。水酸化アルミニウムの量が上記上限値を超えると、硬化後のゴム物性に悪影響を与えるため、硬化物の伸びが低下し、また、耐久性が低下する。
【0040】
(h)白金系添加剤
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、さらに(h)白金系添加剤を含有してもよい。但し、微量の白金系添加剤の添加は、硬化物の酸素指数を低下する。一方、白金系添加剤の添加量を増量する事で、白金系添加剤を添加しない場合と同等の酸素指数を得ることもできる。しかし、白金系添加剤は高価であるため、添加量の増量は商業的観点からは好ましくない。その為、高酸素指数の硬化物を目的とする場合は白金系添加剤を含有しない方が望ましい。白金系添加剤の好ましい添加量は(a)成分100質量部に対して、白金族金属換算量で0.005〜1.0質量部であり、さらに好ましくは0.01〜0.5質量部である。
【0041】
白金系添加剤としては従来公知の白金または白金化合物が挙げられ、例えば、白金微粉末、又は、アルミナ、シリカゲル、及びアスベストなどの担体に白金粉末を担持させたもの、又は、塩化白金酸あるいは塩化白金酸とアルコール、エーテル、アルデヒドあるいはビニルシロキサンなどとの錯体が挙げられる。上記白金または白金化合物は、組成物中への分散を良くするためにイソプロパノール、エタノール、2−エチルヘキサノール、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの有機溶媒あるいはオルガノポリシロキサンオイルに溶解ないし分散させて使用しても良い。
【0042】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、上記(a)〜(h)成分以外に、必要に応じてその他各種の添加剤、例えばカーボンブラックや酸化鉄、酸化チタンなどの顔料、煙霧質シリカ、結晶性シリカ、染料、接着付与剤、防腐剤、炭酸亜鉛等のその他の難燃性付与剤、防カビ剤などを添加してもよい。これらその他の添加剤は、本発明の効果を妨げない範囲の量で添加すればよい。
【0043】
また、本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、必要に応じて有機溶剤を用いてもよい。有機溶剤としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、イソドデカンなどの脂肪族炭化水素系化合物、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系化合物、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、2−(トリメチルシロキシ)−1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチルトリシロキサンなどの鎖状シロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどの環状シロキサンなどが挙げられる。有機溶剤の量は本発明の効果を妨げない範囲で適宜調製すればよい。
【0044】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、上記(a)〜(e)成分、及び必要に応じて(f)〜(h)成分並びにその他各種の添加剤を、湿気を遮断した状態下で、あるいは減圧下で気泡を取り除きながら均一に混合することにより調製される。混合の装置としては、特に限定されるものではないが、真空ポンプに接続された万能混合攪拌機(ダルトン社製)、プラネタリーミキサー(井上製作所社製)等を用いることができる。
【0045】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、水分の非存在下、即ち湿気を遮断した密閉容器中で保存し、使用時に空気中の水分に晒すことによって室温(23℃±5℃)で容易に硬化する。本発明のオルガノポリシロキサン組成物は硬化すると、難燃性に優れ、ガラス、塗装アルミに対してプライマー無しで良好な接着性を有し、且つ変形追従性に優れた硬化物となる。また、得られる硬化物は良好なゴム弾性を有する。それゆえ、建築用シーリング材、特には防火設備用ガラスグレイジングのために使用されるシーリング材として有用である。本発明のオルガノポリシロキサン組成物を防火設備用ガラスグレイジングのためのシーリング材として使用する方法は、従来公知のガラスグレイジング用シーリング材の使用方法に従えばよく、特に制限されるものでない。
【実施例】
【0046】
以下、実施例と比較例をあげて本発明を更に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。以下において、粘度は回転粘度計により測定した値である。重質炭酸カルシウムの平均粒子径は空気透過法により測定して算出された比表面積からの計算値である。また、コロイダル炭酸カルシウムの平均一次粒子径は電子顕微鏡観察により測定した値である。
【0047】
[実施例1]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(23℃における粘度50,000mPa・s)100質量部、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(23℃における粘度100mPa・s)70質量部、チクソ性付与剤(日油株式会社製、ユニルーブ(登録商標)C、ポリエーテル、重量平均分子量2000)1質量部、ロジン酸表面処理コロイダル炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、白艶華T−DD、平均一次粒子径80nm)120質量部、及び塩化白金酸の2−エチルヘキサノール溶液(50質量%)0.2質量部を均一に混合した後、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン15質量部、ジオクチルスズジラウレート0.1質量部、及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3質量部を加え、減圧下で気泡を取り除きながら均一に混合してオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0048】
[比較例1]
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3質量部を1質量部に変えた以外は実施例1と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0049】
[比較例2]
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3質量部を3−アミノプロピルトリエトキシシラン3質量部に変えた以外は実施例1と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0050】
[比較例3]
ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン15質量部をメチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン15質量部に変えた以外は比較例2と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0051】
[比較例4]
ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン15質量部をビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン5質量部とメチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン10質量部に変えた以外は比較例2と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0052】
[比較例5]
ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン15質量部をビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン5質量部とメチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン10質量部に変えた以外は実施例1と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0053】
[比較例6]
ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン15質量部をメチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン15質量部に変えた以外は実施例1と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0054】
[実施例2]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(23℃における粘度50,000mPa・s)100質量部、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(23℃における粘度100mPa・s)30質量部、チクソ性付与剤(日油株式会社製、ユニルーブ(登録商標)C、ポリエーテル、重量平均分子量 2000)1質量部、無処理重質炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、ソフトン3200、平均粒子径0.7μm)80質量部、水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、ハイジライト(登録商標)H320I−LS、平均粒子径20μm)80質量部、煙霧質シリカ(日本アエロジル株式会社製、アエロジル(登録商標)R972)3質量部、及び塩化白金酸の2−エチルヘキサノール溶液(50質量%)0.2質量部を均一に混合した後、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン15質量部、ジオクチルスズジラウレート0.1質量部、及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3質量部を加え、減圧下で気泡を取り除きながら均一に混合してオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0055】
[比較例7]
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3質量部を3−(N−アミノメチルベンジルアミノ)プロピルトリメトキシシラン3質量部に変えた以外は実施例2と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0056】
[実施例3]
ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン15質量部をフェニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン15質量部に変えた以外は実施例2と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0057】
[比較例8]
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3質量部を3−(N−アミノメチルベンジルアミノ)プロピルトリメトキシシラン3質量部に変えた以外は実施例3と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0058】
[比較例9]
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3質量部を、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタアクリレートと2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランのマイケル付加反応生成物(等モル比)3質量部に変えた以外は実施例3と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0059】
[比較例10]
炭酸カルシウム80質量部を炭酸亜鉛(東邦亜鉛株式会社製、炭酸亜鉛S)80質量部に変えた以外は実施例3と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0060】
[実施例4]
水酸化アルミニウム80質量部を炭酸亜鉛(東邦亜鉛株式会社製、炭酸亜鉛S)80質量部に変えた以外は実施例3と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0061】
[実施例5]
無処理重質炭酸カルシウム80質量部を、脂肪酸表面処理コロイダル炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、Viscolite−OS、平均一次粒子径80nm)80質量部に変えた以外は実施例3と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0062】
[実施例6]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(23℃における粘度50,000mPa・s)100質量部、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(23℃における粘度100mPa・s)30質量部、チクソ性付与剤(日油株式会社製、ユニルーブ(登録商標)C、ポリエーテル、重量平均分子量2000)1質量部、脂肪酸表面処理コロイダル炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、Viscolite−OS)50質量部、水酸化アルミニウム(昭和電工製、ハイジライト(登録商標)H320I−LS、平均粒子径20μm)130質量部、煙霧質シリカ(日本アエロジル株式会社製、アエロジル(登録商標)R972)3質量部、及び塩化白金酸の2―エチルヘキサノール溶液(50質量%)0.2質量部を均一に混合した後、フェニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン15質量部、ジオクチルスズジラウレート0.1質量部、及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3質量部を加え、減圧下で気泡を取り除きながら均一に混合してオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0063】
[実施例7]
塩化白金酸の2−エチルヘキサノール溶液(50質量%)0.2質量部を加えなかったこと以外は実施例6と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0064】
[比較例11]
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3質量部を6質量部に変えた以外は実施例6と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0065】
[比較例12]
3−アミノプロピルトリエトキシシラン1質量部を加えたこと以外は実施例6と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0066】
[実施例8]
水酸化アルミニウム130質量部を無処理重質炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、ソフトン3200)100質量部に変えたこと以外は実施例6と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0067】
[実施例9]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(23℃における粘度50,000mPa・s)100質量部、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(23℃における粘度100mPa・s)10質量部、チクソ性付与剤(日油株式会社製、ユニルーブ(登録商標)C、ポリエーテル、重量平均分子量2000)1質量部、脂肪酸表面処理コロイダル炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、Viscolite−OS)40質量部、及び、無処理重質炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、ソフトン3200)100質量部を均一に混合した後、フェニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン15質量部、ジオクチルスズジラウレート0.1質量部、及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2.5質量部を加え、減圧下で気泡を取り除きながら均一に混合してオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0068】
[実施例10]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(23℃における粘度50,000mPa・s)100質量部、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(23℃における粘度100mPa・s)10質量部、チクソ性付与剤(日油株式会社製、ユニルーブ(登録商標)C、ポリエーテル、重量平均分子量2000)1質量部、脂肪酸表面処理コロイダル炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、Viscolite−OS)40質量部、無処理重質炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、ソフトン3200)100質量部、及び塩化白金酸の2エチルヘキサノール溶液(50質量%)0.2質量部を均一に混合した後、フェニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン15質量部、ジオクチルスズジラウレート0.1質量部、及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2.5質量部を加え、減圧下で気泡を取り除きながら均一に混合してオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0069】
[実施例11]
塩化白金酸の2−エチルヘキサノール溶液(50質量%)を0.4質量部にした以外は実施例10と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0070】
[実施例12]
塩化白金酸の2−エチルヘキサノール溶液(50質量%)を0.6質量部にした以外は実施例10と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0071】
[実施例13]
塩化白金酸の2−エチルヘキサノール溶液(50質量%)を0.8質量部にした以外は実施例10と同じ組成及び方法でオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0072】
実施例1〜13、比較例1〜12で調製したオルガノポリシロキサン組成物の各種性能を評価した結果を表1及び表2に示す。各評価方法と判定基準は下記の通りである。
【0073】
スランプ性
各組成物を23℃、50%RHの雰囲気下にて、JIS A 1439に準拠した垂直懸垂法による評価を実施した。得られたスランプの測定値(mm)を表1及び表2に示す。スランプの測定値が2mm以下であれば建築用シーリング材に必要とされるチクソ性を有すると判断される。
【0074】
タックフリータイム
各組成物を23℃、50%RHの雰囲気下にて、JIS A 1439に準拠したタックフリー試験を実施した。得られたタックフリータイム(分)の値を表1及び表2に示す。タックフリータイムが60分以内であれば建築用シーリング材に必要とされる十分な硬化性を有すると判断される。
【0075】
シート物性
各組成物を23℃、50%RHの雰囲気下に押出し、縦20mm×横20mm×厚さ2mmのシート状に成型後、7日間かけて硬化した。該シートについて、JIS K 6249に準拠して、硬さ(Type−A)、切断時伸び、及び引張強さの測定を実施した。得られた各測定値を表1及び表2に示す。硬さ10以上、切断時伸び350%以上、引張強さ1.0MPa以上である硬化物であれば建築用シーリング材として適した機械物性を有すると判断される。
【0076】
簡易接着性試験
各硬化物の接着性をJASS8(建築工事標準仕様書・同解説)に記載の簡易接着性試験に準拠して評価した。被着材には、フロートガラス、アルマイト(JIS H 4100 A6063S)、フッ素樹脂塗装したアルミニウム(大日本塗料株式会社製「デュフロンK500」)、ポリエステル粉体塗装したアルミニウム(大日本塗料株式会社製「V−PET#4000」)、及びアクリル電着塗装したアルミニウム(ハニー化成株式会社製「ハニーヒルLS−100」)を使用した。各被着材に対して、組成物をビード状に施工し、23℃、50%RHで7日間養生した後、得られた硬化物を手で180°方向に引張ることで各被着材に対する硬化物の接着性を評価した。引張後の破壊状態が硬化物の凝集破壊または薄層凝集破壊の場合を「○」、界面剥離(接着破壊)の場合を「×」と記録した。「○」の場合を接着性良好とし、「×」の場合を接着性不良と判定する。尚、全ての条件でプライマーは使用しなかった。
【0077】
変形追従性
JIS A5758に準拠した全項目試験を実施した。グレイジングに使用するシーリング材の区分であるタイプGの中で適合するクラスを表1及び表2に記載する。いずれのクラスにも適合しなかった場合には「不適合」とした。いずれかのクラスに適合すれば変形追従性が良好であると判定される。尚、全ての試験でプライマーは使用しなかった。
【0078】
酸素指数測定
各組成物を23℃、50%RHの雰囲気下に押出して硬化し、JIS K7201−2に規定されたIV型試験体における酸素指数測定を実施した。得られた酸素指数の値を表1及び表2に示す。酸素指数が30以上であれば、防火設備用ガラスグレイジングの為に使用するシーリング材として十分な難燃性を有していると判断される。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
表2に示す通り、オルガノポリシロキサン組成物が(c−1)と(c−2)の組合せを有さない組成物(比較例2〜4及び6〜9)、及び(c−1)と(c−2)の配合比が本発明の範囲を満たさない組成物(比較例1、5、及び11)は、良好な難燃性、接着性、及び変形追従性を全て有する硬化物を与えることができない。また、炭酸カルシウムを含有しない組成物(比較例10)及び(c−3)を(a)成分100質量部に対して1.0質量部含有する組成物(比較例12)も、良好な難燃性、接着性、及び変形追従性を全て有する硬化物を与えることができない。これに対し、表1に示す通り、本発明のオルガノポリシロキサン組成物から得られた硬化物は、難燃性に優れ、ガラスや各種塗装により表面処理されたアルミ材に対しプライマーの使用なしで良好に接着し、かつ、変形追従性も良好である。