特許第5950933号(P5950933)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5950933ポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液の製法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950933
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】ポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液の製法
(51)【国際特許分類】
   C08F 285/00 20060101AFI20160630BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20160630BHJP
   C09D 133/06 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   C08F285/00
   C09D175/04
   C09D133/06
【請求項の数】15
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2013-545204(P2013-545204)
(86)(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公表番号】特表2014-501824(P2014-501824A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】EP2011072848
(87)【国際公開番号】WO2012084668
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年12月12日
(31)【優先権主張番号】61/424,705
(32)【優先日】2010年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10195967.4
(32)【優先日】2010年12月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ハーティヒ
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート ダーガッツ
(72)【発明者】
【氏名】マリア テレーザ エチャバリア フォンセカ
(72)【発明者】
【氏名】バス ローメイヤー
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06362273(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 285/00
C08F 283/00
C09D 133/04−133/16
C09D 175/04−175/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリウレタン(P1)の存在下で、エチレン性不飽和化合物の2工程のラジカル重合により、ポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液を製造する方法であって
− 第一の工程では、少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物(e)を、
− 少なくとも1つのポリウレタン(P1)、
− 少なくとも1つのレドックス開始剤系(I)及び
− 少なくとも1つの鉄化合物(F)の存在下で、少なくとも部分的にラジカル重合し、かつ引き続き、
− 第二の工程では、少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物(f)ラジカル重合し、
その際、
− 少なくとも1つのポリウレタン(P1)は、
− イソシアネート基含有の構成成分として、脂肪族及び/又は脂環式イソシアネートのみから構成され、かつ
− ポリウレタン1kg当たり500mmol未満の少なくとも部分的に中和された酸基の含有量を有し、
− 第一の工程の少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物(e)は、少なくとも50℃のガラス転移温度を有し、
− 第二の工程の少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物(f)は、20℃までのガラス転移温度を有し、
− ポリウレタン(P1)の、第一と第二の工程のエチレン性不飽和化合物(e)と(f)の合計に対する質量比は、50:50〜10:90であり、かつ
− ラジカル重合の間の温度は85℃以下である、
少なくとも1つのポリウレタン(P1)の存在下で、エチレン性不飽和化合物の2工程のラジカル重合により、ポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液を製造する方法
【請求項2】
ポリウレタン(P1)は、
I)次のもの:
a)4〜30個の炭素原子を有する少なくとも1つの多価イソシアネート、
b)ジオール、そのうち
b1)ジオール(b)の全体量に対して、10〜100mol%は、500g/mol〜5000g/molの分子量を有する、及び
b2)ジオール(b)の全体量に対して、0〜90mol%は、60g/mol〜500g/mol未満の分子量を有する、
c)場合により、ジオール(b)とは異なる、アルコール性ヒドロキシル基又は第一級アミノ基もしくは第二級アミノ基である反応性基を有する更なる多価化合物、及び
d)モノマー(a)、(b)及び(c)とは異なる、少なくとも1つのイソシアネート基又はイソシアネート基に対して反応性である少なくとも1つの基を有し、ポリウレタンの水分散性に作用する更に少なくとも1つの親水基又は潜在的な親水基を有するモノマー、
を溶剤の存在下で反応させることにより、ポリウレタンを製造し、及び
II)引き続き、前記ポリウレタンを水中で分散させ、
III)その際、工程IIの前、間及び/又は後に、場合によりポリアミンを加えることができること、
により得られる、請求項1に記載のポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液の製造方法
【請求項3】
a)は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとイソホロンジイソシアネートから成る群から選択される、請求項2に記載のポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液の製造方法
【請求項4】
ジオールb1)は、少なくとも部分的にポリエステルであり、これは構成成分として少なくとも部分的に1,2−又は1,3−二置換された環状ジカルボン酸を組み込まれた形で有する、請求項2又は3に記載のポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液の製造方法
【請求項5】
モノマー混合物(e)は、以下のように構成される:
e1)少なくとも1つの(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートを少なくとも60質量%
e2)少なくとも1つの官能基を有する少なくとも1つの(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドを0〜40質量%
e3)正確に1個のラジカル重合可能な二重結合を有する、少なくとも1つの芳香族環系を含むラジカル重合可能なモノマーを0〜15質量%
e4)場合により、α,β−不飽和カルボン酸を、上記の酸基の含有量を超えない量で及び
e5)少なくとも2つのラジカル重合可能な二重結合を有する少なくとも1つの化合物を0〜3質量%
但し、前記合計は常に100質量%であり、かつこのモノマー混合物には、請求項1で記載したガラス転移温度ならびに酸基の含有量が保持されることを条件とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液の製造方法
【請求項6】
モノマー混合物(e)は、以下のように構成される:
e1)少なくとも1つの(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートを60〜95質量%、
e2)少なくとも1つの官能基を有する少なくとも1つの(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドを5〜30質量%、
e3)正確に1個のラジカル重合可能な二重結合を有する、少なくとも1つの芳香族環系を含むラジカル重合可能なモノマーを0〜15質量%、
e4)場合により、α,β−不飽和カルボン酸を、上記の酸基の含有量を超えない量で、及び
e5)少なくとも2つのラジカル重合可能な二重結合を有する少なくとも1つの化合物を0〜3質量%、
但し、前記合計は常に100質量%であり、かつこのモノマー混合物には、請求項1で記載したガラス転移温度ならびに酸基の含有量が保持されることを条件とする、請求項5に記載のポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液の製造方法
【請求項7】
モノマー混合物(f)は、以下のように構成される:
f1)少なくとも1つの(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートを少なくとも60質量%
f2)少なくとも1つの官能基を有する、少なくとも1つの(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドを0〜40質量%
f3)正確に1個のラジカル重合可能な二重結合を有する、少なくとも1つの芳香族環系を含むラジカル重合可能なモノマーを0〜5質量%
f4)場合により、α,β−不飽和カルボン酸を、上記の酸基の含有量を超えないような量で、及び
f5)少なくとも2個のラジカル重合可能な二重結合を有する少なくとも1つの化合物を0〜3質量%
但し、前記合計は常に100質量%であり、かつこのモノマー混合物には、請求項1で記載したガラス転移温度ならびに酸基の含有量が保持されることを条件とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載のポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液の製造方法
【請求項8】
モノマー(e1)は、少なくとも部分的にメチルメタクリレートである、請求項5又は6に記載のポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液の製造方法
【請求項9】
モノマー(f)は、少なくとも部分的にn−ブチルアクリレート及び/又は2−エチルヘキシルアクリレートである、請求項に記載のポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液の製造方法
【請求項10】
モノマー(e2)は、アクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチルエステル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステル、ウレイドエチルメタクリレート及びジアセトンアクリルアミドから成る群から選択される、請求項5又は6に記載のポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液の製造方法
【請求項11】
モノマー(f2)は、グリシジルメタクリレート、ウレイドエチルメタクリレート又はジアセトンアクリルアミドである、請求項7に記載のポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液の製造方法
【請求項12】
基材を被覆及び含浸するための、請求項1から11までのいずれか1項に記載のポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液の使用。
【請求項13】
基材は、木材、ベニヤ板、紙、厚紙、ボール紙、繊維、革、不織布、プラスチック表面、ガラス、セラミック、鉱物建築材料、金属ならびに被覆金属から成る群から選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
基材は、外部用途又は内部用途における木材である、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
ポリウレタン(P1)ならびに開始剤(I1)の少なくとも一部を装入し、かつ開始剤(I2)とモノマー(e)の添加により重合を開始し、かつモノマー(e)が完全に又は部分的に反応した後に、モノマー混合物(f)を供給し、かつ完全に変換するまで重合を行う、請求項1から11までのいずれか1項に記載のポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液の製法、このように得られる分散液及びその使用に関する。
【0002】
US3705164からは、一般的な形のポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液の製造が公知である。このために、ラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーは、重合触媒、例えば、ペルオキシド又はアゾ化合物を用いてポリウレタン分散液の存在下でラジカル重合される。重合触媒は、有利には還元作用を有する化合物の存在下で使用される。詳細な説明及び例示的に実施される実施例では、反応は重合触媒及び還元作用を有する化合物を用いてそれぞれの反応温度で開始される。
【0003】
EP1228113B2からは、ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液の製造が公知であり、その際、まずポリウレタン分散液、モノマー及び開始剤成分が15〜35℃の温度で混合され、かつこの混合物は引き続く反応工程で80+/−10℃の温度で反応させられる。
【0004】
この利点としては、ポリウレタン分散液が既に安定化するように作用し、かつ更に他の乳化剤を添加する必要がないということが挙げられる。
【0005】
開始剤成分として、種々のペルオキシド及びアゾ化合物が開示されている。還元作用を有する化合物の存在は開示されていない。
【0006】
ポリウレタンの存在又は不在でのオレフィン性不飽和モノマー重合の欠点は、反応の間に凝固物が形成されることである。これは、EP1228113B2による方法では、例えば、反応の終了後に100μmの篩いを通す濾過の必要性から明らかである(その中の段落[0073]参照)。
【0007】
EP1173491B1には、レドックス開始剤系を用いた、ポリエステルポリオール、ポリウレタン又はポリアクリレートの存在下での、一官能性と二官能性エチレン性飽和化合物の混合物の重合、及び塗料としてのその使用が記載されている。
【0008】
EP1185568B1には、同じ反応の原理が記載されていて、その際、重合は2工程で実施することができる。
【0009】
後者の2つの文献の欠点は、そこに記載された塗料系では、その都度高分子の架橋剤、例えば、メラミン−ホルムアルデヒド−樹脂が被覆の形成に必要であり、かつ調合剤を添加しなくてはならないことである。この事が間違った供給の危険性及びそれにより反応挙動の不適格さをもたらす。
【0010】
本発明の課題は、調合の際に架橋剤を供給する必要がなく、優れた特性を有する被覆、特に高い弾性、耐ブロック性及び耐水性を有する被覆を生じる新規ポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液を開発することであり、これは通常のポリアクリレート分散液に匹敵する引っ張り強さを有する。更に、該分散液は低い黄変を示すのがよく、それにより外部用途に使用可能である。
【0011】
この課題は、少なくとも1つのポリウレタン(P1)の存在下で、エチレン性不飽和化合物の2工程のラジカル重合により得られるポリウレタン−ポリアクリレート−ハイブリッド分散液により達成され、その際、
第一の工程では、少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物(e)を、
少なくとも1つのポリウレタン(P1)、
少なくとも1つのレドックス開始剤系(I)及び
少なくとも1つの鉄化合物(F)の存在下で、少なくとも部分的にラジカル重合し、かつ引き続き、
第二の工程では、少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物(f)をラジカル重合し、その際、少なくとも1つのポリウレタン(P1)は、イソシアネート基含有構成成分として、脂肪族及び/又は脂環式イソシアネートのみから構成され、かつポリウレタン1kg当たり500mmol未満の少なくとも部分的に中和された酸基の含有量を有し、
第一の工程の少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物(e)は、少なくとも50℃のガラス転移温度を有し、
第二の工程の少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物(f)は、20℃までのガラス転移温度を有し、
ポリウレタン(P1):第一と第二の工程のエチレン性不飽和化合物(e)と(f)の合計は、50:50〜10:90であり、かつラジカル重合の間の温度は85℃以下である。
【0012】
本発明による分散液は、被覆において使用するために高分子量の架橋剤の添加を必要とせず、かつ内部及び外部用途の両方にとって等しく適切である。これらは、特に木材及び木材基材の被覆として、例えば、膜形成、耐ブロック性及び水白化において優れた適性を示し、ならびに有利な実施態様では、乾燥透明度において優れた適性を示す。モノマーのジアセトンアクリルアミド(DAAM)を成分(e2)又は(f2)(下記参照)として使用する場合には、本発明の有利な1実施態様では、分散液に低分子量架橋剤としてアジピン酸ジヒドラジド(ADDH)が添加される。ADDHは、主に分散液の水相に存在するので、水相の除去により架橋は乾燥の際に漸く行われる。従って、ADDHは分散液が製造された後に既に添加でき、このように利用者にとって更なる架橋剤を添加する必要がない。
【0013】
更に、本発明による分散液を製造する方法において、更なる乳化剤、分散助剤及び/又は保護コロイドを更に使用する必要が無いのが有利である。
【0014】
ポリウレタン(P1)は、脂肪族及び/又は脂環式イソシアネートのみから構成される任意のポリウレタンであることができ、本明細書内では、総括して(シクロ)脂肪族イソシアネートと称され、イソシアネート基含有の構成成分として形成され、及びポリウレタン(P1)1kg当たり500mmol未満、有利には400mmol未満、特に有利には350mmol未満、及び極めて有利には300mmol未満の少なくとも部分的に中和された酸基の含有量を有する。
【0015】
この場合に、酸基とはカルボキシル基、硫黄含有の又はリン含有の酸であると解釈され、有利にはカルボキシル基又はスルホネート基、及び極めて有利にはカルボキシル基である。
【0016】
この酸基は、完全に又は部分的に中和されていてもよい。すなわち、そのアニオン性の形で存在できる。これらのアニオン性基に対する対イオンとして、アンモニウム、ナトリウム及び/又はカリウムが有利である。
【0017】
ポリウレタンの構成成分としての(シクロ)脂肪族イソシアネートの使用は、芳香族イソシアネートを使用する場合に生じるような結果として得られる被覆中でのポリウレタンの黄変を減少させる。被覆の黄変が重要な役割を担わない場合には、芳香族イソシアネートの使用が考えられる。
【0018】
所定の酸基の含有量により、ポリウレタン(P1)は水中に分散可能であり、従って、ポリウレタン(P1)は、ポリウレタン水性分散液の形で使用され、かつエチレン性不飽和化合物(e)と(f)は、エマルション重合の形で反応する。
【0019】
ポリウレタンのより高い酸基含有量は、通常は水へのより高い感受性に作用し、これが高い水の吸収及び/又はより強い水白化を生じる。
【0020】
本発明による1つの特徴は、第一及び第二の工程でのポリウレタン(P1)の、エチレン性不飽和化合物(e)と(f)の合計に対する質量比が50:50〜10:90、有利には20:80まで、特に有利には30:70までであることである。
【0021】
本発明によれば、ポリウレタン分散液がin situでラジカル重合の前に製造されるか、又はそれとは別個に製造されるかについては違いがない。有利には、これらは別個に製造される。
【0022】
しばしばポリウレタン分散液は、いわゆる"プレポリマー混合法"により製造される。この方法では、ポリウレタンは初めに、有機溶剤、頻繁にはN−メチルピロリドン(NMP)中で製造され、かつこのように得られたポリウレタンの溶液は引き続き水中に分散される。水中でのその分散の間及び/又は後に、鎖延長によりポリウレタンのモル質量は更に高くなる。
【0023】
使用される溶剤の沸点に応じて、留去の場合でさえも、溶剤は多少なりとも分散液中に残ったまま存在し、かつそこでポリウレタン分散液の特性に影響を与える。
【0024】
全ての溶剤は毒学的に問題がないわけでは無いので、使用される溶剤はできるだけ非毒性であるべきである。NMPの代わりに、今では他の溶剤も公知であり、かつ本発明により特に有利に使用される。このような溶剤は、次のようなものである:
− N−(シクロ)アルキルピロリドン、有利にはN−エチルピロリドン(WO2005/090430から公知のもの)、
− N−(シクロ)アルキルピロリドン/ジアルキレングリコールジアルキルエーテルからなる混合物、有利にはN−エチルピロリドン/ジプロピレングリコールジメチルエーテルから成る混合物、又はN−アルキルカプロラクタム(DE102007028890から公知のもの)、ならびに
− 環置換されたN−アルキルピロリドン(例えば、参考文献PCT/EP2010/057868、提出日2010年6月7日の国際特許明細書から公知のようなもの)、及び毒性のNMPの代用品として本発明により使用される。
【0025】
有利なポリウレタン水性分散液は、次のように得られる;
I)次のもの:
a)4〜30個の炭素原子を有する少なくとも1つの多価イソシアネート、
b)ジオール、そのうち
b1)ジオール(b)の全体量に対して、10〜100mol%は、500〜5000の分子量を有する、及び
b2)ジオール(b)の全体量に対して、0〜90mol%は、60〜500g/molの分子量を有する、
c)場合によりジオール(b)とは異なる、アルコール性ヒドロキシル基又は第一級アミノ基もしくは第二級アミノ基である反応性基を有する更なる多価化合物、
d)モノマー(a)、(b)及び(c)とは異なる、少なくとも1つのイソシアネート基又はイソシアネート基に対して反応性である少なくとも1つの基を有し、ポリウレタンの水分散性に作用する更に少なくとも1つの親水基又は潜在的な親水基を有するモノマー
を溶剤の存在下で反応させることにより、ポリウレタンを製造し、及び
II)引き続き、前記ポリウレタンを水中で分散させ、
III)工程IIの前、間及び/又は後に、場合によりポリアミンを加えることができる。
【0026】
(a)のモノマーとして、ポリウレタン化学で通常使用されるようなポリイソシアネートが考慮され、例としては脂肪族及び脂環式ジイソシアネート及びポリイソシアネートであり、その際、例えば4〜12個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基及び例えば6〜15個の炭素原子を有し、少なくとも1.8、有利には1.8〜5及び特に有利には2〜4のNCO官能価を有する脂環式炭化水素基、ならびにそれらのイソシアヌレート、ビウレット、アロファネート及びウレットジオンが挙げられる。
【0027】
ジイソシアネートは、有利には4〜20個の炭素原子を有するイソシアネートである。通常のジイソシアネートの例は、脂肪族ジイソシアネート、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(1,6−ジイソシアナトヘキサン)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートのエステル、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート又はテトラメチルヘキサンジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、例えば、1,4−、1,3−又は1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、4,4’−又は2,4’−ジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタンのトランス/トランス−、シス/シス−及びシス/トランス−異性体、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、2,2−ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、1,3−又は1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン又は2,4−又は2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサンである。
【0028】
前記ジイソシアネートの混合物が存在してもよい。
【0029】
脂肪族及び脂環式ジイシソアネートが有利であり、特にイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及び4,4’−ジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)が有利であり、イソホロンジイソシアネート及び/又はヘキサメチレンジイソシアネートがとりわけ有利である。
【0030】
ポリイソシアネートとして、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネート、ウレットジオンジイソシアネート、ビウレット基を有するポリイソシアネート、ウレタン基又はアロファネート基を有するポリイソシアネート、オキサジアジントリオン基を含有するポリイソシアネート、線状又は分枝状のC4〜C20−アルキレンジイソシアネートのウレトニミン変性ポリイソシアネート又は全部で6〜20個の炭素原子を有する脂環式ジイソシアネート又はそれらの混合物が考慮される。
【0031】
使用されるジイソシアネート及びポリイソシアネートは、ジイソシアネートとポリイソシアネート(混合物)に対して、10〜60質量%のイソシアネート基の含有量(NCOとして計算して、分子量=42)、有利には15〜60質量%及び特に有利には20〜55質量%のイソシアネート基の含有量を有するのが有利である。
【0032】
脂肪族又は脂環式ジイソシアネート及びポリイソシアネートは、例えば前記の脂肪族又は脂環式ジイソシアネート又はそれらの混合物であるのが有利である。
【0033】
更に次のものが有利である:
1)イソシアヌレート基を有する脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネートからのポリイソシアネート。この場合に特に有利であるのは、相応の脂肪族及び/又は脂環式イソシアナト−イソシアヌレート、及び特にヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートをベースとするものが挙げられる。この場合に存在するイソシアヌレートは、特にトリス−イソシアナトアルキル又はトリス−イソシアナトシクロアルキル−イソシアヌレートであり、これはジイソシアネートの環状トリマーであるか、又は1つよりも多いイソシアヌレート環を有するそれらのより高分子の同族体との混合物である。イソシアナト−イソシアヌレートは、一般に10質量%〜30質量%、特に15質量%〜25質量%のNCO−含有量、及び3〜4.5のNCO−平均官能価を有する。
2)脂肪族及び/又は脂環式により結合したイソシアナト基を有するウレットジオンジイソシアネート、有利には脂肪族及び/又は脂環式により結合した、及び特にヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートから誘導されるものを有するウレットジオンジイソシアネート。ウレットジオンジイソシアネートは、ジイソシアネートの環状二量体生成物である。調製物中では、ウレットジオンジイソシアネートは単独の成分として、又は他のポリイソシアネートとの混合物の形で、特に1)で記載したものを使用できる。
3)脂環式又は脂肪族により結合した、有利には脂環式又は脂肪族により結合したイソシアネート基を有するビウレット基を有するポリイソシアネート、特にトリス(6−イソシアナトヘキシル)ビウレット又はその高分子同族体との混合物を有するビウレット基を有するポリイソシアネート。ビウレット基を有するポリイソシアネートは、一般に18質量%〜22質量%のNCO含有量及び3〜4.5のNCO−平均官能価を有する。
4)脂肪族又は脂環式により結合した、有利には脂肪族又は脂環式により結合したイソシアネート基を有するウレタン基及び/又はアロファネート基を有するポリイソシアネート、これらは例えば過剰量のヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートと、多価アルコール、例えば、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリトール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、1,2−ジヒドロキシプロパン又はこれらの混合物の反応により得ることができる。ウレタン基及び/又はアロファネート基を有するこれらのポリイソシアネートは、一般に12質量%〜20質量%のNCO−含有量及び2.5〜3のNCO−平均官能価を有する。
5)オキサジアジントリオン基を含有するポリイソシアネート、有利にはヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートから誘導されるもの。オキサジアジントリオンを含有するこのようなポリイソシアネートは、ジイソシアネートと二酸化炭素から製造可能である。
6)ウレトンイミン−変性ポリイソシアネート。
【0034】
ポリイソシアネート(1)〜(6)は、混合物の形で、場合によりジイソシアネートとの混合物の形で使用できる。
【0035】
化合物(a)として、遊離イソシアネート基の他に、更なるブロックトイソシアネート基、例えば、ウレットジオン基又はウレタン基を有するイソシアネートを使用することもできる。
【0036】
場合により、1つだけのイソシアネート基を有するイソシアネートも併用できる。一般に、その割合はモノマーの全体のモル量に対して最大で10mol%である。モノイソシアネートは、通常は、例えば、オレフィン基又はカルボニル基のような他の官能基を有し、かつポリウレタン中に官能基を導入するために役立ち、これはポリウレタンを分散及び/又は架橋するか、又は更なるポリマー類似反応を可能にする。このために考慮されるモノマーは、イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(TMI)のようなものである。
【0037】
ジオール(b)として、約500〜5000、有利には約1000〜4000g/molの分子量を有する特に高分子ジオール(b1)が考慮される。
【0038】
ジオール(b1)は、特にポリエステルポリオールであり、これは例えば、Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie、第4版、第19巻、62〜65頁から公知である。二価アルコールと二価カルボン酸の反応により得られるポリエステルポリオールを使用するのが有利である。遊離ポリカルボン酸の代わりに、低級アルコールの相応するポリカルボン酸無水物又は相応するポリカルボン酸エステル、又はその混合物をポリエステルポリオールの製造に使用できる。ポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族又は複素環式であることもでき、かつ場合により例えばハロゲン原子で置換されている、及び/又は不飽和であることもできる。この例としては次のものが挙げられる:スベリン酸、アゼライン酸、フタル酸及びイソフタル酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラクロロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水グルタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸及び二量体脂肪酸である。一般式HOOC−(CH2y−COOH(式中、yは1〜20の数、有利には2〜20の偶数である)のジカルボン酸が有利であり、例えばコハク酸、アジピン酸、ドデカンジカルボン酸及びセバシン酸である。
【0039】
多価アルコールとして、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタンジ−1,3−オール、ブテン−1,4−ジオール、ブチン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ネオペンチルグリコール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、例えば、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2−メチル−プロパン1,3−ジオールならびにジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール及びポリブチレングリコールが考慮される。ネオペンチルグリコール、及び一般式HO−(CH2x−OH(式中、xは1〜20の数、有利には2〜20の偶数である)のアルコールが有利である。この例は、エチレングリコール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール及びドデカン−1,12−ジオールである。
【0040】
更に、例えばホスゲンと、ポリエステルポリオール用の構成成分として挙げたような過剰の低分子アルコールとの反応により得ることができるポリカーボネートジオールも考慮される。
【0041】
ラクトンベースのポリエステルジオールも適切であり、その際、これはラクトンのホモポリマー又は混合ポリマーであり、有利にはラクトンと、適切な二官能性出発分子との末端ヒドロキシ基を有する付加物である。ラクトンとして、有利には一般式HO−(CH2z−COOH(式中、zは1〜20、有利には3〜19の奇数である)のヒドロキシカルボン酸から誘導されるものが考慮され、例としては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン及び/又はメチル−ε−カプロラクトンならびにこれらの混合物である。適切な開始成分は、例えばポリエステルポリオールの構成成分として先に挙げた低分子量の二価アルコールである。ε−カプロラクトンの相応するポリマーも特に有利である。より低分子量のポリエステルジオール又はポリエーテルジオールをラクトンポリマーを製造する出発成分として使用することもできる。ラクトンのポリマーの代わりに、ラクトンに相応するヒドロキシカルボン酸の化学的に当量の重縮合物を使用することもできる。
【0042】
更にモノマー(b1)として、ポリエーテルジオールが考慮される。これらは、特に、BF3の存在下で、特にエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド又はエピクロロヒドリンとそれ自体の付加重合により得られるか、又は場合によりこれらの化合物が混合物の形で又は連続して、反応性水素原子を有するアルコール又はアミンのような出発成分(例えば、水、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシジフェニル)プロパン又はアニリン)へ付加して得られる。特に500〜5000g/mol、特に1000〜4500g/molの分子量を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラヒドロフランが有利であり、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールが極めて有利である。
【0043】
ポリエステルジオールとポリエーテルジオールは、0.1:1〜1:9の割合の混合物として使用することもできる。
【0044】
本発明の有利な1実施態様では、ジオールb1)が少なくとも部分的にポリエステルであるポリウレタン(P1)が使用され、これは構成成分として少なくとも部分的に1,2−二置換又は1,3−二置換された環状ジカルボン酸、有利には1,3−二置換された環状ジカルボン酸、特に有利には1,3−二置換された芳香族ジカルボン酸を組み込まれた形で含有する。
【0045】
ポリエステルの製造は、原則的にUllmanns Encyklopaedie der technischen Chemie、第4版、第19巻、62〜65頁から公知である。有利な実施態様では、二価アルコールb1a)と二価のカルボン酸b1b)の反応により得られるポリエステルポリオールが使用される。遊離ポリカルボン酸の代わりに、低級アルコールの相応するポリカルボン酸無水物又は相応するポリカルボン酸エステル、又はこれらの混合物をポリエステルポリオールの製造に使用することができる。
【0046】
本発明により少なくとも部分的に使用されるポリエステルは、使用される二価のカルボン酸又はそれらの誘導体として、少なくとも部分的に1,2−二置換又は1,3−二置換された環状ジカルボン酸b1b1)、有利には1,3−二置換されたジカルボン酸を組み込まれた形で含有する。環の1,2−位又は1,3−位の2つのカルボキシル基の他に、ジカルボン酸は場合により更なる置換基を有していてもよいが、これらは更なる置換基を有さないのが有利である。
【0047】
環は脂環式、又は有利には芳香族であってもよい。
【0048】
有利な1,2−又は1,3−二置換された環状ジカルボン酸b1b1)は、フタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラクロロフタル酸及び無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸であり、イソフタル酸が特に有利である。
【0049】
更に、ポリエステルは上記のジカルボン酸b1b1)とは異なる他のジカルボン酸b1b2)を有していてもよい。
【0050】
これらのポリカルボン酸b1b2)は、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族又は複素環であってもよく、かつ場合により、ハロゲン原子により置換されている及び/又は不飽和であってもよい。このような例には、次のものが含まれる:セバシン酸、アゼライン酸、無水グルタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、二量体脂肪酸。
【0051】
一般式HOOC−(CH2y−COOH(式中、yは1〜20の数、有利には2〜20の偶数である)のジカルボン酸が有利である。例としては、コハク酸、アジピン酸、ドデカンジカルボン酸及びセバシン酸である。
【0052】
1,2−二置換又は1,3−二置換された環状ジカルボン酸b1b1)の、他のジカルボン酸b1b2)に対する比は、ポリエステルb1)中のジカルボン酸とポリカルボン酸の全体量に対して、有利には20〜90mol%:80〜10mol%、特に有利には30〜70mol%:70〜30mol%、及び極めて有利には30〜50mol%:70〜50mol%であってもよい。
【0053】
多価アルコールb1a)として、例えばエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブテン−1,4−ジオール、ブチン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ネオペンチルグリコール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、例えば、1,1−、1,2−、1,3−又は1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2−メチル−プロパン−1,3−ジオールならびにジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール及びポリブチレングリコールが考慮される。ネオペンチルグリコールならびに一般式HO−(CH2x−OH(式中、xは1〜20の数、有利には2〜20の偶数である)のアルコールが有利である。このアルコールの例は、エチレングリコール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール及びドデカン−1,12−ジオールである。
【0054】
ジオール(b)として、ジオール(b1)の他に、約50〜500、有利には60〜200g/molの分子量を有する低分子量のジオール(b2)を用いることもできる。
【0055】
モノマー(b2)として、特にポリエステルポリオールの製造で記載した短鎖アルカンジオールの構成成分が使用される。例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,1−ジメチルエタン−1,2−ジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、1,2−、1,3−又は1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキサン)イソプロピリデン、テトラメチルシクロブタンジオール、1,2−、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジオール、シクロオクタンジオール、ノルボルナンジオール、ピナンジオール、デカリンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジエチルオクタン−1,3−ジオール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールS、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−、1,2−、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジオールであり、その際、2〜12個の炭素原子、及び偶数の炭素原子数を有する非分枝のジオールならびに1,5−ペンタンジオール及びネオペンチルグリコールが有利である。
【0056】
ジオール(b)の全体量に対するジオール(b1)の割合は、有利には10〜100mol%であり、かつジオール(b)の全体量に対するジオール(b2)の割合は、0〜90mol%であるのが有利である。特に有利には、ジオール(b1)の、ジオール(b2)に対する比は、0.2:1〜5:1、特に有利には0.5:1〜2:1である。
【0057】
ジオール(b)とは異なるモノマー(c)は、一般に架橋反応又は鎖延長にはたらく。これらは、一般に2個よりも多い非芳香族アルコール、2個よりも多い第一級及び/又は第二級アミノ基を有するアミン、及び1個又は複数のアルコール性ヒドロキシル基の他に1個又は複数の第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有する化合物である。
【0058】
所望の架橋度又は分枝度に調節するために役立つ2よりも多い官能価を有するアルコールは、例えば、トリメチロールブタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、グリセロール、糖アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、ジグリセロール、トレイトール、エリスリトール、アドニトール(リビトール)、アラビトール(リキシトール)、キシリトール、ダルシトール(ガラクチトール)、又はマルチトール、又はイソマルチトール又は糖類である。
【0059】
更に、ヒドロキシル基の他に、もう1つのイソシアネートに対して反応性の基を有するモノアルコール、例えば、1個又は複数の第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有するモノアルコール、モノエタノールアミンが考慮される。
【0060】
特に鎖延長及び/又は架橋反応を水の存在下で実施すべき場合(工程III)には、2個よりも多い第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有するポリアミンをプレポリマー混合法で使用できる。それというのも、アミンは一般にアルコール又は水よりも迅速にイソシアネートと反応するからである。これは、架橋したポリウレタンの水性分散液、又はより高いモル質量のポリウレタンが望ましい場合にしばしば必要である。このような場合には、イソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、これらを水中に迅速に分散させ、かつ次に2個以上のイソシアネートに対して反応性のアミノ基を有する化合物の添加によりこれらを鎖延長又は架橋反応させる手法が採られる。
【0061】
例えばWO02/98939に教示されているように、水中で分散させる前に、2個の第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有するポリアミンとの鎖延長を行うこともできる。
【0062】
このために適切なアミンは、一般に32〜500g/mol、有利には60〜300g/molの範囲内のモル質量を有する多価アミンであり、これは少なくとも2個の第一級アミノ基、2個の第二級アミノ基、又は1個の第一級アミノ基と1個の第二級アミノ基を有する。このような例は、ジアミン、例えば、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノヘキサン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン、IPDA)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ヒドラジンハイドレート、又はトリアミン、例えば、ジエチレントリアミン又は1,8−ジアミノ−4−アミノメチルオクタン又はより高分子量のアミン、例えば、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン又はポリアミン、例えば、ポリエチレンアミン、水素化ポリアクリロニトリル、又は少なくとも部分的に加水分解されたポリ−N−ビニルホルムアミド、それぞれ2000g/molまで、有利には1000g/molまでのモル分子量を有する。
【0063】
アミンは、ブロックされた形で、例えば、相応するケチミンの形(例えば、CA−1129128参照)、ケタジン(例えば、US−A4269748参照)又はアミン塩(US−A4292226参照)の形で使用することもできる。US−A4192937で使用されているようなオキサゾリジンは、プレポリマーを鎖延長するポリウレタンの製造に使用できるブロックドポリアミンである。このようなブロックドポリアミンを使用する場合には、水の不在で一般にプレポリマーと混合し、かつこの混合物は引き続き分散水又は分散水の一部と混合され、このように相応するポリアミンは加水分解により遊離される。
【0064】
ジアミンとトリアミンの混合物を使用するのが有利であり、イソホロンジアミンとジエチレントリアミンの混合物が特に有利である。
【0065】
ポリアミンの割合は、成分(b)と(c)の全体量に対して、10mol%まで、有利には8mol%まで、特に有利には5mol%までであることができる。
【0066】
工程Iで製造されたポリウレタンは、一般に未反応のNCO基を10質量%まで、有利には5質量%まで有することができる。
【0067】
工程Iで製造されたポリウレタン中のNCO基の、ポリアミン中の第一級アミノ基と第二級アミノ基の合計に対するモル比は、一般に工程IIIでは、3:1〜1:3の間、有利には2:1〜1:2の間、特に有利には1.5:1〜1:1.5の間、及び極めて有利には1:1の間であるように選択される。
【0068】
更に鎖延長の中止には、少量のモノアルコール、すなわち成分(b)と(c)に対して、10mol%未満の量のモノアルコールを使用することができる。これらは、主にポリウレタンのモル量を制限するために使用される。例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1,3−プロパンジオールモノメチルエーテル、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−デカノール、n−ドデカノール(ラウリルアルコール)及び2−エチルヘキサノールである。
【0069】
ポリウレタンの水分散性を達成するために、ポリウレタンは成分(a)、(b)及び(c)の他に、成分(a)、(b)及び(c)とは異なり、かつ少なくとも1つのイソシアネート基、又はイソシアネート基に対して反応性の少なくとも1つの基ならびに更に、少なくとも1つの親水基又は親水基に変換できる基を有するモノマー(d)からも構成される。以下の文章では、"親水基又は潜在的な親水基"という用語を"(潜在的な)親水基"と省略することにする。(潜在的な)親水基は、ポリマー主鎖を構成するために使用されるモノマーの官能基よりも、はるかにゆっくりイソシアネートと反応する。(潜在的な)親水基は、非イオン性又は有利にはイオン性、すなわちカチオン性又はアニオン性の親水基であるか、又は潜在的なイオン性の親水基であることができ、及び特に有利には、アニオン性の親水基又は潜在的なアニオン性の親水基であることができる。
【0070】
成分(a)、(b)、(c)及び(d)の全体量における(潜在的な)親水基を有する成分の割合は、一般にポリウレタン(P1)の上記の酸基含有量が達成されるように測定される。
【0071】
非イオン性親水基として、例えば有利には5〜100、特に有利には10〜80個のエチレンオキシド繰り返し単位から成る混合された又は単なるポリエチレングリコールエーテルが考慮される。ポリエチレングリコールエーテルは、プロピレンオキシド単位を含んでいてもよい。このような場合には、プロピレンオキシド単位の含有量は、混合ポリエチレングリコールエーテルに対して、50質量%、有利には30質量%を超えないようにすべきである。
【0072】
ポリエチレンオキシド単位の含有量は、一般に、全てのモノマー(a)〜(d)の質量に対して、一般に0質量%〜10質量%、有利には0質量%〜6質量%である。
【0073】
非イオン性親水基を有する有利なモノマーは、ポリエチレングリコール及び末端がエーテル化されたポリエチレングリコール基を有するジイソシアネートである。この種のジイソシアネート及びそれらの製法は、特許明細書US3905929及びUS3920598に記載されている。
【0074】
イオン性親水基は、特にアニオン基、例えば、それらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の形のスルホネート基、カルボキシレート基及びホスホネート基ならびにカチオン基、例えば、アンモニウム基、特にプロトン化された第三級アミノ基又は第四級アンモニウム基である。
【0075】
潜在的アニオン基を有する適切なモノマーとして、通常は、少なくとも1つのアルコール性ヒドロキシル基又は1つの第一級アミノ基又は第二級アミノ基を有する脂肪族、脂環式、芳香脂肪族又は芳香族モノヒドロキシカルボン酸及びジヒドロキシカルボン酸である。
【0076】
このような化合物は、例えば一般式
RG−R4−DG
(式中、
RGは、少なくとも1つのイソシアネートに対して反応性の基であり、
DGは、少なくとも1つの反応性分散基、及び
4は、1〜20個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式又は芳香族基である)
により表される。
【0077】
RGの例は、−OH、−SH、−NH2又は−NHR5(式中、R5はメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルである)である。
【0078】
このような成分は、有利には例えば、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオ乳酸、メルカプトコハク酸、グリシン、イミノ二酢酸、サルコシン、アラニン、β−アラニン、ロイシン、イソロイシン、アミノ酪酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシピバリン酸、乳酸、ヒドロキシコハク酸、ヒドロキシデカン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、エチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシドデカン酸、ヒドロキシヘキサデカン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、アミノナフタレンカルボン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ヒドロキシプロパンスルホン酸、メルカプトエタンスルホン酸、メルカプトプロパンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、タウリン、アミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシルアミノエタンスルホン酸ならびにそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、特に有利には、上記のモノヒドロキシカルボン酸及びモノヒドロキシスルホン酸ならびにモノアミノカルボン酸及びモノアミノスルホン酸である。
【0079】
極めて特に有利には、ジヒドロキシアルキルカルボン酸、特に3〜10個の炭素原子を有するもの(US−A3412054に記載されている)である。特に、一般式
HO−R1−CR3(COOH)−R2−OH
(式中、R1とR2は、それぞれC1〜C4−アルカンジイル単位であり、かつR3は、C1〜C4−アルキル単位である)の化合物が有利である。特にジメチロール酪酸及び特にジメチロールプロピオン酸(DMPA)が有利である。
【0080】
また、相応するジヒドロキシスルホン酸及びジヒドロキシホスホン酸、例えば、2,3−ジヒドロキシプロパンホスホン酸ならびに少なくとも1つのヒドロキシル基がアミノ基により置換された相応する酸も適切であり、その例は、式
2N−R1−CR3(COOH)−R2−NH2
(式中、R1、R2及びR3は、上記のものと同じ意味を有する)
である。
【0081】
その他の適切なものは、500を上回り10000g/molまでの分子量及び少なくとも2個のカルボキシレート基を有するジヒドロキシ化合物であり、これはDE−A4140486から公知である。これらは、重付加反応において、2:1〜1.05:1のモル比で、ジヒドロキシル化合物とテトラカルボン酸二無水物、例えば、ピロメリット酸無水物又はシクロペンタンテトラカルボン酸二無水物を反応させることにより得られる。ジヒドロキシ化合物として、鎖延長物として列挙されているモノマー(b2)及びジオール(b1)が適切である。
【0082】
潜在的なイオン性親水基は、特に簡単な中和、加水分解又は四級化反応により、上記イオン性親水基に変換できるものであり、その例は、酸基、無水物基又は第四級アミノ基である。
【0083】
イオン性モノマー(d)又は潜在的なイオン性モノマー(d)は、例えば、Ullmanns Encyclopaedie der technischen Chemie、第4版、第19巻、311〜313頁ならびに例えば、DE−A1495745に記載されている。
【0084】
潜在的なカチオン性モノマー(d)として、とりわけ第三級アミノ基を有するモノマーが実際に重要であり、例は以下のものである:トリス(ヒドロキシアルキル)アミン、N,N’−ビス(ヒドロキシアルキル)アルキルアミン、N−ヒドロキシアルキルジアルキルアミン、トリス(アミノアルキル)アミン、N,N’−ビス(アミノアルキル)アルキルアミン、N−アミノアルキル−ジアルキルアミン、その際、これらの第三級アミンのアルキル基及びアルカンジイル単位は、互いに独立に2〜6個の炭素原子から成る。また、第三級窒素原子を有し、有利には2個の末端ヒドロキシル基を有するポリエーテルが考慮され、これは通常の方法で、例えばアミン窒素に結合した2個の水素原子を有するアミンのアルコキシル化により得られ、例えばメチルアミン、アニリン及びN,N’−ジメチルヒドラジンである。この種のポリエーテルは、一般に500〜6000g/molの間にあるモル質量を有する。
【0085】
この第三級アミンは、酸で、有利には強い無機酸(リン酸、硫酸又はハロゲン化水素酸)で、又は強い有機酸(例えば、ギ酸、酢酸又は乳酸)で変換されるか、又はC1〜C6−アルキルハロゲン化物、例えば、ブロミド又はクロリド、又はジ−C1〜C6−アルキルスルフェート、又はジ−C1〜C6−アルキルカーボネートのような適切な四級化剤との反応により変換される。
【0086】
イソシアネートに対して反応性のアミノ基を有する適切なモノマー(d)として、アミノカルボン酸、例えば、リジン、β−アラニン、DE−A2034479に挙げられているような脂肪族第二級ジアミンとα,β−不飽和カルボン酸との付加物、例えば、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンカルボン酸ならびに相応するN−アミノアルキル−アミノアルキルカルボン酸が考慮され、その際、アルカンジイル単位は、2〜6個の炭素原子から成る。
【0087】
潜在的なイオン性基を有するモノマーが使用される限りは、イオンの形へのその変換は、イソシアネート重付加の前、又は間、有利には後に行うことができる。それというのも、イオン性モノマーはしばしば反応混合物中で極めて溶けにくいからである。特に有利には、アニオン性親水基は、対イオンとしてのアルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンとのそれらの塩の形で存在する。
【0088】
これらの記載した化合物のうち、ヒドロキシカルボン酸が有利であり、特に有利にはジヒドロキシアルキルカルボン酸が挙げられ、特に有利にはα,α−ビス(ヒドロキシメチル)カルボン酸、特にジメチロール酪酸及びジメチロールプロピオン酸及び特にジメチロールプロピオン酸である。
【0089】
二者択一的な実施態様では、ポリウレタンは非イオン性親水基及びイオン性親水基、有利には非イオン性親水基とアニオン性親水基を同時に有していてもよい。
【0090】
ポリウレタン化学の分野では、共反応性モノマーのフラクションの選択及び分子当たりの反応性官能基の数の数平均の選択により、どのようにポリウレタンの分子量を調節できるかは一般常識である。
【0091】
通常、成分(a)、(b)、(c)及び(d)ならびにそれらの個々のモル量は、A:Bの比が、0.5:1〜2:1、有利には0.8:1〜1.5、特に有利には0.9:1〜1.2:1であるように選択される。極めて有利には、A:Bの比は出来るだけ1:1であるように選択される。その際、A)は、イソシアネート基のモル量であり、かつB)はヒドロキシル基のモル量と付加反応においてイソシアネートと反応できる官能基のモル量の合計である。
【0092】
成分(a)、(b)、(c)及び(d)の他に、1つの反応性基だけを有するモノマーを、成分(a)、(b)、(c)及び(d)の全体量に対して、一般に15mol%まで、有利には8mol%までの量で使用できる。
【0093】
成分(a)から(d)までの重付加は、一般に大気圧下に、20〜180℃、有利には50〜150℃の反応温度で行われる。
【0094】
必要な反応時間は、数分から数時間まで延長してもよい。ポリウレタン化学の分野では、どのように反応時間が、温度、モノマー濃度及びモノマーの反応性のような多数のパラメーターにより影響を受けるのが公知である。
【0095】
ジイソシアネートの反応を促進するために、通常の触媒を併用できる。このために、ポリウレタン化学で通常使用されている全ての触媒が原則として考慮される。
【0096】
これらは例えば有機アミン、特に第三級脂肪族、脂環式又は芳香族アミン、及び/又はルイス酸有機金属化合物である。ルイス酸有機金属化合物として、例えば錫化合物が挙げられ、その例は、有機カルボン酸の錫(II)塩、例えば、錫(II)アセテート、錫(II)オクテート、錫(II)エチルヘキサノエート及び錫(II)ラウレート、ならびに有機カルボン酸のジアルキル錫(IV)塩、例えば、ジメチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫−ジラウレート、ジメチル錫−ビス(2−エチルヘキサノエート)、ジメチル錫−ジラウレート、ジメチル錫−マレエート、ジオクチル錫−ジラウレート及びジオクチル錫−ジアセテートである。鉄、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、マンガン、ニッケル及びコバルトのアセチルアセトネートのような金属錯体も可能である。更なる金属触媒は、Blank等により、Progress in Organic Coatings、1999、第35巻、19〜29頁に記載されている。
【0097】
有利なルイス酸有機金属化合物は、ジメチル錫−ジアセテート、ジブチル錫−ジブチレート、ジブチル錫−ビス(2−エチルヘキサノエート)、ジブチル錫−ジラウレート、ジオクチル錫−ジラウレート、ジルコニウム−アセチルアセトネート及びジルコニウム−2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートである。
【0098】
また、ビスマス触媒及びコバルト触媒ならびにセシウム塩も触媒として使用できる。この場合に、セシウム塩として以下のアニオンが使用されている化合物が考慮される:F、Cl、ClO、ClO、ClO、Br、I、IO、CN、OCN、NO、NO、HCO、CO2−、S2−、SH、HSO、SO2−、HSO、SO2−、S2−、S2−、S2−、S2−、S2−、S2−、HPO、HPO、HPO2−、PO43−、P4−、(OC2n+1、(C2n−1、(C2n−3及び(Cn+12n−22−(式中、nは1〜20の数から成る)。
【0099】
この場合に、アニオンが式(C2n−1ならびに(Cn+12n−22−を構成する(式中、nは1〜20である)セシウムカルボキシレートが有利である。特に、有利なセシウム塩は一般式(C2n−1(式中、nは1〜20の数字から成る)のモノカルボキシレートを有する。ここで、特にホルメート、アセテート、プロピオネート、ヘキサノエート及び2−エチルヘキサノエートが挙げられる。
【0100】
重合装置として、特に溶剤の併用により低粘性及び優れた熱の除去を保証する場合には撹拌タンクが考慮される。反応を塊状で実施する場合には、大抵の高い粘度及び大抵の短い反応時間に基づき、特に押出し機、特に自己洗浄型マルチスクリュー押出し機が適切である。
【0101】
いわゆる"プレポリマー混合法"では、まずイソシアネート基を有するプレポリマーが製造される。この場合に、成分(a)〜(d)は、前記の定義による比A:Bが1.0よりも多く3まで、有利には1.05〜1.5であるように選択される。プレポリマーを、まず初めに水中で分散させ、かつ同時に及び/又は引き続きイソシアネート基と、2個よりも多いイソシアネートに対して反応性のアミノ基を有するアミンとの反応により架橋させるか、又は2個のイソシアネートに対して反応性のアミノ基を有するアミンと鎖延長させる。鎖延長は、アミンを添加しない場合にも行われる。この場合には、イソシアネート基は、加水分解されてアミン基になり、これは鎖延長しながらプレポリマーの残りのイソシアネート基と反応する。
【0102】
動的光散乱により、Malvern(登録商標)Autosizer2Cを用いて測定される、このように製造されたポリウレタン分散液の平均粒子サイズ(z−平均)は発明にとって重要ではなく、かつ通常は<1000nm、有利には<500nm、特に有利には<200nm、及び極めて有利には20〜200nm未満の間である。
【0103】
ポリウレタン分散液は、一般に10質量%〜75質量%、有利には20質量%〜65質量%の固形分ならびに10〜500mPasの粘度を有する(ASTM規格D4287に従い、測定ヘッドCを用いてICIコーン型/プレート型粘度計で、20℃の温度及び250秒−1のせん断速度で測定)。
【0104】
本発明によれば、ラジカル重合は上記のように製造したポリウレタン分散液の存在下で、2つの異なるモノマー混合物が重合されて、少なくとも2つの異なる相から成るポリマー粒子を生じるように実施され、その際、初めに重合されたモノマー混合物(e)は、少なくとも50℃、有利には少なくとも60℃、特に有利には少なくとも70℃のガラス転移温度(Tg)、ならびに5mgKOH/gを下回る酸価を有し、かつ最後に重合されたモノマー混合物(f)は、20℃を上回らない、有利には10℃を上回らない、特に有利には0℃を上回らないガラス転移温度(Tg)を有する。
【0105】
公知の方法によるガラス転移温度の計算は、特定のモノマーに関して作表した値に基づき例えば、Fox式により行われ、例えば、架橋剤がモノマーとして使用される場合には、必ずしも領域の異なるガラス転移温度を生じず、ガラス転移温度に対するその影響を算術的に説明できない。しかし、架橋剤無しのモノマー混合物に関しては、Fox式によるガラス転移温度の計算が優れた近似値を生じる。
【0106】
ガラス転移温度Tgは、本明細書中ではASTM規格のD3418−03による示差走査熱量計(DSC)により特に有利には10℃/分の加熱速度で有利に測定される。
【0107】
ここで挙げたガラス転移温度は、それぞれのモノマー混合物(e)又は(f)から得られるポリマーに関し、かつ本発明によるコア−シェルポリマーには無関係である。
【0108】
第一のモノマー混合物(e)は、有利には以下のように構成できる:
e1)少なくとも1つの(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートを少なくとも60質量%、有利には少なくとも70質量%、特に有利には少なくとも80質量%、及び100質量%まで、更に有利には95質量%まで、特に有利には90質量%まで、
e2)少なくとも1つの官能基を有する少なくとも1つの(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドを0質量%、有利には少なくとも5質量%、及び特に有利には少なくとも10質量%及び40質量%まで、有利には30質量%まで、及び特に有利には20質量%まで、
e3)正確に1個のラジカル重合可能な二重結合を有する少なくとも1個の芳香族環系を含むラジカル重合可能なモノマーを0〜15質量%、有利には0〜10質量%、及び特に有利には0〜5質量%、
e4)場合により、α,β−不飽和カルボン酸を、上記の酸基の含有量を超えない量で、有利には0質量%、及び
e5)少なくとも2つのラジカル重合可能な二重結合を有する少なくとも1つの化合物を0〜3質量%、有利には0〜1質量%、特に有利には少なくとも0〜0.5質量%、
但し、前記合計は常に100質量%であり、かつこのモノマー混合物に記載したガラス転移温度ならびに本発明による酸基の含有量が保持されることを条件とする。
【0109】
第二のモノマー混合物(f)は、有利には以下のように構成できる:
f1)少なくとも1つの(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートを少なくとも60質量%、有利には少なくとも70質量%、及び特に有利には少なくとも80質量%、及び100質量%まで、更に有利には95質量%まで、及び特に有利には90質量%まで、
f2)少なくとも1つの官能基を有する、少なくとも1つの(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドを0質量%、有利には少なくとも5質量%、及び特に有利には少なくとも10質量%、及び40質量%まで、有利には30質量%まで、及び特に有利には20質量%まで、
f3)正確に1個のラジカル重合可能な二重結合を有する、少なくとも1つの芳香族環系を含むラジカル重合可能なモノマーを0〜5質量%、有利には0〜3質量%、及び特に有利には0質量%、
f4)場合により、α,β−不飽和カルボン酸を、上記の酸基の含有量を超えないような量で、及び
f5)少なくとも2個のラジカル重合可能な二重結合を有する少なくとも1つの化合物を0〜3質量%、有利には0〜1質量%、特に有利には少なくとも0〜0.5質量%、
但し、前記合計は常に100質量%であり、かつこのモノマー混合物に記載したガラス転移温度ならびに本発明による酸基の含有量が保持されることを条件とする。
【0110】
(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート(e1)と(f1)は、互いに独立に、有利にはC1〜C20−アルキル(メタ)アクリレート又はC5〜C12−シクロアルキル(メタ)アクリレートである。
【0111】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例として、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸−n−プロピルエステル、(メタ)アクリル酸−n−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸−イソブチルエステル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸−イソペンチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−メチルブチルエステル、(メタ)アクリル酸アミルエステル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エチルブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸−n−オクチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸−2−プロピルヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸−n−デシルエステル、(メタ)アクリル酸−ウンデシルエステル及び(メタ)アクリル酸−n−ドデシルエステルが挙げられる。
【0112】
シクロアルキル(メタ)アクリレートとして、シクロペンチル(メタ)アクリレート及びシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0113】
1〜C10−アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが有利であり、特に有利にはメチルメタクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、エチルアクリレート、(メタ)アクリル酸−tert−ブチルエステル及び2−エチルヘキシルアクリレートである。
【0114】
また、特に(メタ)アクリル酸アルキルエステルの混合物;例えば、2個から4個の、有利には2個から3個の、及び特に有利には2個の混合物も適切である。
【0115】
モノマー(e1)のうち、特に前記ガラス転移温度が達成されるような量で、少なくとも部分的にメチルメタクリレートを生じるものが有利である。
【0116】
モノマー(f1)のうち、特に前記ガラス転移温度が達成されるような量で少なくとも部分的にn−ブチルアクリレート及び/又は2−エチルヘキシルアクリレートを生じるものが有利である。
【0117】
モノマー(e2)と(f2)は、互いに独立に、少なくとも1つの、有利には1個から3個、特に有利には1個から2個、及び極めて有利には正確に1つの官能基を有する少なくとも1つの(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドである。
【0118】
官能基は、有利にはC1〜C10−アルコキシ基、ヒドロキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、カルバメート基、ウレイド基、カルボニル基、及びエポキシ基から成る群から、特に有利にはヒドロキシル基、ウレイド基、カルボニル基、及びエポキシ基から成る群から選択される。
【0119】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートの例は、例えば、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸−4−メトキシブチルエステル及び(メタ)アクリル酸−2−(2’−メトキシエトキシ−)エチルエステルである。
【0120】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、例えば、(メタ)アクリル酸ホルマル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピルエステル及び(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチルエステル、有利には、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピルエステル及び(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチルエステル、特に有利には(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステル及び(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチルエステルである。
【0121】
エポキシ基を有する(メタ)アクリレートは、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル及びクロトン酸グリシジルエステルである。
【0122】
カルボニル基を有する(メタ)アクリレートは、例えば、2’−(アセチルアセトキシ)エチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシブチルメタクリレート、メタクリル酸2’−(2’’−オキソ−イミダゾリジン−1’’−イル)エチルエステル(ウレイドエチルメタクリレート)、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)及びジアセトンメタクリルアミド、有利には2’−(アセチルアセトキシ)エチルメタクリレート、ウレイドエチルメタクリレート及びジアセトンアクリルアミドである。
【0123】
有利なモノマー(e2)は、アクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチルエステル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステル、ウレイドエチルメタクリレート及びジアセトンアクリルアミドである。
【0124】
有利なモノマー(f2)は、グリシジルメタクリレート、ウレイドエチルメタクリレート及びジアセトンアクリルアミドである。
【0125】
モノマー(e3)と(f3)は、少なくとも1つの芳香族環系を含有するラジカル重合可能なモノマーである。
【0126】
ビニル芳香族化合物として、スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、α−及びp−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン及び有利にはスチレンが考慮される。
【0127】
α,β−不飽和カルボン酸(e4)と(f4)は、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸又はフマル酸である。酸は、場合によりアンモニウム、カリウム及び/又はナトリウムで少なくとも部分的に中和されていてもよい。
【0128】
本明細書内では、(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸とアクリル酸を意味する。
【0129】
架橋剤(e5)と(f5)は、少なくとも2個の、有利には2〜6個の、及び特に有利には2〜4個の、とりわけ有利には2〜3個の、特に正確に2個のラジカル重合可能な二重結合を有するものである。
【0130】
ラジカル重合可能な二重結合は、アクリレート、メタクリレート、アリルエーテル及びアリルエステルから成る群から選択されるのが有利である。
【0131】
有利なモノマー(e5)と(f5)は、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、メタリルアクリレート、メタルメタクリレート、ジ−及びポリ(メタ)アクリレート1,2−、1,3−及び1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,2−及び1,3−プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ−及びテトラ(メタ)アクリレートならびにジビニルベンゼンである。
【0132】
特に有利なモノマー(e5)と(f5)は、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びジビニルベンゼンである。
【0133】
モノマー(e)の合計の、モノマー(f)の合計に対する質量比は、10:90〜90:10、有利には20:80〜80:20、特に有利には30:70〜70:30、とりわけ有利には40:60〜60:40及び特に約50:50であることができる。
【0134】
最後の工程から得られる生成物は、通常は50〜300nm、有利には60〜250nm、特に有利には70〜200nmの粒子サイズを有する。この生成物の粒子サイズとは、(Malvern社製の高性能パーティクルサイザー(HPPS)を用いて、22℃及び633nmの波長でISO13321により測定した)分散液中のポリマー粒子の質量平均直径であると解釈される。
【0135】
本発明の利点は、更なる乳化剤、分散助剤及び保護コロイドの存在が無くても良いことである。
【0136】
乳化剤として、有機相と水相の間の界面応力の減少により相の分散を安定化させることができる化合物が挙げられる。
【0137】
本発明の範囲内での重合開始剤として、酸化成分(I1)と還元成分(I2)から成るレドックス系(I)が考慮され、これは水性媒体中でラジカル乳化重合を開始する能力がある。これらは、一般にモノマーに対して0.1〜10質量%、有利には0.2〜4質量%の量で使用される。
【0138】
通常の化合物(I1)は、無機過酸化物、例えば、ペルオキソ二硫酸ナトリウム及びアンモニウム及び過酸化水素、有機過酸化水素、例えば、ジベンゾイルペルオキシド又はt−ブチルヒドロペルオキシドならびにアゾ化合物、例えば、アゾイソ酪酸ジニトリロである。
【0139】
更なる例として、ペルオキソ二硫酸塩が挙げられ、例としては、ペルオキソ二硫酸カリウム、ナトリウム又はアンモニウム、ペルオキシド、例えば、過酸化ナトリウム又は過酸化カリウム、過ホウ酸塩、例えば、過ホウ酸アンモニウム、ナトリウム又はカリウム、モノ過硫酸塩、例えば、モノ過硫酸アンモニウム、モノ過硫酸ナトリウム又はモノ過硫酸水素カリウム、ならびにペルオキシカルボン酸の塩、例えば、モノペルオキシフタル酸アンモニウム、ナトリウム、カリウム又はマグネシウム、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、過酢酸、過安息香酸、モノペルフタル酸又はメタ−クロロ安息香酸ならびにケトンペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド又は混合−アシルアルキルペルオキシドである。
【0140】
ジアシルペルオキシドの例は、ジベンゾイルペルオキシド及びジアセチルペルオキシドである。
【0141】
ジアルキルペルオキシドの例は、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ビス(α,α−ジメチルベンジル)ペルオキシド、及びジエチルペルオキシドである。
【0142】
混合アシル−アルキルペルオキシドの例は、t−ブチルペルベンゾエートである。
【0143】
ケトンペルオキシドは、例えば、アセトンペルオキシド、ブタノンペルオキシド及び1,1’−ペルオキシビス−シクロヘキサノールである。
【0144】
更に、例えば、1,2,4−トリオキソラン又は9,10−ジヒドロ−9,10−エピジオキシドアントラセンを挙げることができる。
【0145】
還元性共開始剤(I2)は、有利にはヒドロキシメタンスルフィン酸、イソアスコルビン酸、アスコルビン酸ならびにこれらの誘導体及び塩、有利にはナトリウム塩であり、特に有利にはアスコルビン酸及びヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩の使用が挙げられる。後者は、例えば、BASF社のRongalit(登録商標)Cとして又はBrueggemann社のBruggolit(登録商標)FF6Mとして得られる。
【0146】
少なくとも1つの鉄化合物(F)は、有利には鉄(II)塩、特に有利には複合鉄(II)塩であり、その際、前記錯体形成剤は、例えばエチレンジアミンテトラアセテート又はニトリロトリアセテート及びそのナトリウム、カリウム又はアンモニウム塩であることができる。
【0147】
ラジラカルエマルション重合の方法によるポリマー水性分散液の製造は、自体公知である(Houben−Weyl、Methoden der Organischen Chemie、第XIV版、Macromolekulare Stoffe、I.c、133頁及びそれ以降を参照のこと)。
【0148】
ポリウレタン(P1)ならびに開始剤(I1)の少なくとも一部を装入し、かつ開始剤(I2)とモノマー(e)の添加により重合を開始する供給法が有利であるとこが判明した。モノマー(e)の完全な又は部分的な反応の後に、次にモノマー混合物(f)が供給され、かつ実質的に完全な変換を生じるまで重合が行われる。
【0149】
もう1つの実施態様では、ポリウレタン(P1)を装入し、かつモノマー混合物(e)と開始剤(I1)の一部を開始と同時に供給する。モノマー(e)の完全な又は部分的な反応の後に、モノマー混合物(f)が供給され、かつ実質的に完全な変換を生じるまで重合が行われる。
【0150】
開始剤(I)の還元成分(I2)は、一般に成分(I1)の添加開始直後に添加されるが、しかし成分(I1)と同時に添加されてもよい。
【0151】
モノマー(e)と(f)の順番は、個々のシェルの間に、徐々に特性の遷移を達成するかどうか、その際、既にモノマー混合物(e)が部分的に変換されている場合には、モノマー混合物(f)の供給が始まる、又は初めにモノマー混合物(e)を殆ど反応させ、かつ引き続き初めてモノマー混合物(f)を供給するかによる。
【0152】
その際に、モノマーは複数の供給物に分けることができ、かつ1つ又は複数のモノマーの様々な供給速度及び/又は様々な含有量を予定することができる。
【0153】
場合により、分子量調剤が存在していてもよい。重合における調整剤の存在により、連鎖終了及び新たな鎖の開始により、このように形成される新たなラジカルが得られるポリマーの分子量を減らし、かつ架橋剤が存在する場合には、架橋箇所の数(架橋密度)を減らす。重合の過程で調整剤の濃度が増大する場合には、重合の過程で架橋密度が更に減る。
【0154】
この種の分子量調整剤は公知であり、かつ例えば、メルカプト化合物、例えば有利には第三級ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、イソオクチルメルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸、二量体α−メチルスチレン、2−エチルヘシキルチオグリコール酸エステル(EHTG)、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン(MTMO)又はテルピノールであることができる。分子量調整剤は公知であり、かつ例えば、Houben−Weyl、Methoden der Organischen Chemie、第XIV/1巻、297頁及びそれ以降(1961、Stuttgart)に記載されている。
【0155】
重合は、本発明によれば85℃以下、有利には50〜85℃、特に有利には60〜85℃の温度で実施される。
【0156】
このように得られるポリマー水性分散液は、有利には30〜65質量%、特に有利には35〜55質量%の固形分を有する。
【0157】
分散液には所望の場合には製造後に物理的臭気除去に課すことができる。
【0158】
物理的臭気除去は、DE−AS1248943に記載されているような撹拌容器中で、又はDE−A19621027に記載されているような逆流カラム中での水蒸気、酸素含有ガス、有利には空気、窒素又は超臨界二酸化炭素を使用して分散液がストリッピングされることから成る。
【0159】
本発明による分散液は、基材を被覆及び含浸するために有利に適切である。適切な基材は、木材、ベニヤ板、紙、厚紙、ボール紙、繊維、革、不織布、プラスチック表面、ガラス、セラミック、鉱物建築材料、金属又は被覆金属である。
【0160】
有利な1実施態様では、本発明による分散液は木材及びベニヤ板、特に有利には木材を被覆するために使用される。
【0161】
可能性としては、外部用途又は内部用途での木材の使用、有利には外部用途で木材が使用される。
【0162】
外部用途での木材の例は、例えば、ドア及び窓である。
【0163】
内部用途での木材の例は、例えば、建築材フローリング及び家具ならびに木工及び大工用途である。
【0164】
木材基材の例は、オーク材、トウヒ材、パイン材、ブナ材、メープル材、クリ材、スズカケノキ、ハリエンジュ材、トネリコ材、カバノキ、オウシュウアカマツ材、メランティ材及びエルム材ならびにコーク材である。
【0165】
本発明により製造される分散液は、記載される用途に通常の他の成分、例としては、界面活性剤、洗剤、染料、顔料、充填剤又は光安定剤と混合される。
【0166】
本発明のもう1つの対象は、少なくとも1つの本発明によるポリマー分散剤を含有する被覆組成物ならびにそれで被覆された物品である。
【0167】
本発明の結合剤組成物は、有利には水性被覆材料で使用される。これらの被覆剤は、例えば、非着色系(クリアラッカー)又は着色系の形で存在する。顔料の割合は、顔料体積濃度(PVK)により記載することができる。PVKは、全体積(乾燥被覆膜の結合材(VB)、顔料及び充填剤の体積から成る)に対する顔料の体積(Vp)と充填剤の体積(VF)の割合(%)を表す:PVK=(Vp+VF)×100/(Vp+VF+VB)。被覆材料は、PVKにより、例えば以下のように分けることができる:
高充填された内部塗料、洗い耐性、白/マット 約85
内部塗料、耐摩耗性、白/マット 約80
半光沢塗料、シルキーマット 約35
半光沢塗料、シルキーグロス 約25
高光沢塗料 約15〜25
外部−石工塗料、白 約45〜55
クリアラッカー <5。
【0168】
これらの分散系は有利にはPVK<50、特に有利にはPVK<35及び特に有利には低充填系(PVK<25)で、及びクリアラッカー(PVK<5)で使用される。
【0169】
クリアラッカー系における適切な充填剤は、例えば、マット化剤であり、これは望ましくは、光沢を著しく減じる。マット化剤は、一般に透明であり、かつ有機及び無機の両方であることができる。シリカをベースとする無機充填剤は、最も適切であり、かつ広く市販されている。例としては、W.R.Grace&Company社のSyloid(登録商標)商品及びEvonik GmbH社のAcematt(登録商標)商品である。有機マット化剤は、例えば、BYK−Chemie GmbH社から、Ceraflour(登録商標)及びCeramat(登録商標)の商品名で、及びDeuteron GmbH社からDeuteron MK(登録商標)の商品名で得られる。分散液塗料用の他の適切な充填剤は、例えば、アルミノシリケート、例えば、長石、シリケート、例えば、カオリン、タルク、マイカ、マグネサイト、アルカリ土類金属カーボネート、例えば、炭酸カルシウム、例えば、カルサイト又はチョークの形、炭酸マグネシウム、ドロマイト、アルカリ土類金属スルフェート、例えば、硫酸カルシウム、二酸化ケイ素などである。被覆剤において微分散した充填剤は、当然ながら有利である。充填剤は、個々の成分として使用できる。しかし、実際には充填剤混合物、例えば、炭酸カルシウム/カオリン、炭酸カルシウム/タルクが特に有利であることが判明した。艶のある被覆剤は、一般に少量だけの微分散充填剤だけを含むか、又は充填剤を含有しない。
【0170】
微細な充填剤は、隠ぺい力を増すために及び/又は白色顔料を倹約するために使用してもよい。色調の隠ぺい力及び色の深さを調節するために、着色顔料と充填剤の配合物を使用するのが有利である。
【0171】
適切な顔料は、例えば、無機白色顔料、例えば、二酸化チタン、有利にはルチルの形、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、塩基性重炭酸塩、三酸化アンチモン、リトポン(硫化亜鉛+硫酸バリウム)又は着色顔料、例えば、酸化鉄、カーボンブラック、グラファイト、亜鉛黄、亜鉛緑、ウルトラマリン、マンガン黒、アンチモン黒、マグネシウム紫、パリスブルー又はシュヴァインフルトグリーンである。無機顔料の他に、本発明による分散液塗料は、有機着色顔料、例えば、セピア、ガンボージ、カッセルブラウン、トルイジンレッド、パラレッド、ハンサーイエロー、インディゴ、アゾ染料、アントラキノイド及びインジゴイド染料ならびにジオキサジン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリノン及び金属錯体顔料を含有することもできる。また、光拡散を増大させるための空気内包物を有する適切な合成白色顔料は、例えばRopaque(登録商標)及びAQACell(登録商標)分散液である。更に、BASF SE社のLuconyl(登録商標)商品、例えば、Lyconyl(登録商標)yellow、Luconyl(登録商標)Brown及びLuconyl(登録商標)Red、特に透明な物が適切である。
【0172】
本発明による被覆剤(水性被覆剤)は、ポリマー分散液の他に、場合により更なる膜形成ポリマー、顔料及び更なる助剤を含有していてもよい。
【0173】
通常の助剤には、湿潤剤、分散剤、例えば、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムポリホスフェート、アクリル酸コポリマー又は無水マレイン酸コポリマーのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、ポリホスホネート、例えば、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホネートナトリウム及びナフタレンスルホン酸塩、特にそのナトリウム塩が含まれる。
【0174】
より重要であるのは、膜形成助剤、増粘剤及び消泡剤である。適切な膜形成助剤は、例えばEastman Chemicals社のTexanol(登録商標)及びグリコールエーテル及びグリコールエステルであり、例えば、Solvenon(登録商標)及びLusolvan(登録商標)の商品名でBASF SE社から、及びDow社からDowanol(登録商標)の商品名で市販されている。有利には、量は全調製物に対して<10質量%であり、及び特に有利には<5質量%である。完全に溶剤を用いずに調製することもできる。
【0175】
更に適切な助剤は、流動助剤、消泡剤、殺虫剤及び増粘剤である。適切な増粘剤は、例えば、会合性増粘剤、例えば、ポリウレタン増粘剤である。増粘剤の量は、固形含有量に対して、有利には2.5質量%未満、特に有利には1.5質量%未満である。木材被覆用の更なる調製法は、著者M.Schwartz及びR.Baumstarkにより、"water−based acrylates for decorative coatings"、ISBN 3−87870−726−6に包括的に記載されている。
【0176】
本発明による被覆剤の製造は、公知の方法で、このために通常の混合装置中で成分を混合することにより行われる。顔料、水及び場合により助剤から水性ペースト又は分散液を製造し、かつ引き続きポリマー結合剤、すなわち通常はポリマーの水性分散液と顔料ペースト又は顔料分散液を混合するだけで良いことが証明された。
【0177】
本発明による被覆剤は、通常の方法で、例えば、はけ塗り、噴霧、浸漬、ローラーコーティング、ナイフコーティングにより基材に塗布することができる。
【0178】
本明細書で使用されるppm及びパーセントの数字は、特記されない限り、質量ppm及び質量パーセントに関する。
【0179】
実施例
ポリウレタンPU−Iを次のように製造した:
アジピン酸、イソフタル酸及びヘキサンジオール−1,6の当量混合物から製造されたOH数56のポリステロール392g(0.196mol)、ジメチロールプロピオン酸39.4g(0.294mol)、1,4−ブタンジオール70.6g(0.784mol)及びアセトン98gを圧力装置に装入し、かつ45℃まで加熱した。これにイソホロンジイソシアネート339.2g(1.526mol)を添加し、かつ90℃で4時間撹拌した。次に、アセトン800gで希釈し、大気圧まで圧放し、かつ35℃まで冷却した。測定された溶液のNCO含有量は1.4質量%であった。
【0180】
イソホロンジアミン3.9g(0.0229mol)とジエチルエタノールアミン31.0g(0.2646mol)を添加した後に、水1260gを10分以内に分散させた。直後に、ジエチレントリアミン10.5g(0.1022mol)、水98g及び水250gを添加し、かつその後にアセトンを留去した。これにより固形分38%を有するポリウレタン水性分散液が得られた。
【0181】
ポリウレタンPU−IIとして、BASF SE社(ルードヴィヒスハーフェン)の商品を使用した。PU−IIは、イソホロンジイソシアネートと4000g/molの平均モル質量及び70nmの粒子サイズ(光散乱により測定)を有するポリアルキレングリコールをベースとするポリエーテルベースの脂肪族ポリウレタン分散液である(光散乱により測定して70nmの粒子サイズを有するBASF社製)。
【0182】
ポリアクリレート分散液PA−Iを以下のように製造した:
計量装置及び温度調節装置を備えた重合容器に、窒素雰囲気下に脱イオン水200.8g及び15質量%濃度ラウリル硫酸ナトリウムの水溶液35.0gを20〜25℃(室温)で装入し、かつ撹拌しながら87℃まで加熱した。この温度に達した際に、29.8gの供給物1及び引き続き温度を保持しながら2.0gの供給物3を添加し、かつ5分間重合した。その後に、供給物1の残量を120分以内に同時に開始し、かつそれと平行して供給物3の残量を165分間以内に一定のマスフローで連続的に供給した。供給物1の終わりに、供給物2を開始し、かつ45分間以内に一定のマスフローで連続的に供給した。
【0183】
供給物1(均一な混合物):
脱イオン水 329.1g
ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%濃度水溶液 23.3g
アクリルアミドの50質量%濃度水溶液 5.7g
アクリル酸 5.1g
メチルメタクリレート中のウレイドメタクリレートの25質量%濃度の溶液
(Roehm GmbH社のPlex(登録商標)6844−O) 27.0g
メチルメタクリレート 199.2g
2−エチルヘキシルアクリレート 285.5g
供給物2(均一な混合物):
脱イオン水 174.4g
ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%濃度水溶液 8.9g
アクリル酸 5.1g
メチルメタクリレート中のウレイドメタクリレートの25質量%濃度の溶液
(Roehm GmbH社のPlex(登録商標)6844−O) 27.0g
メチルメタクリレート 148.2g
供給物3(均一な混合物):
脱イオン水 13.0g
ペルオキソ二硫酸ナトリウム 1.0g
供給物2と3が終わった後に、重合混合物を87℃で更に30分間後反応させた。これに引き続き、重合混合物に同時に別々の供給管を介して、5質量%濃度の過酸化水素水溶液22.4g及びアスコルビン酸1.0gと脱イオン水26.5gから成る溶液を60分間にわたり一定のマスフローで連続的に供給した。
【0184】
引き続き、得られたポリマー水性分散液を室温まで冷却し、25質量%濃度のアンモニア水溶液5.9gで中和し、かつ125μmフィルターを介して濾過した。
【0185】
得られたポリマー水性分散液1544gは、44.7質量%の固形分を有した。MFTは13℃であった。脱イオン水で希釈したポリマー水性分散液は、ダイナミック光拡散により測定して95nmの粒子直径を有した。ガラス転移温度は、第一の工程では、DSCにより測定して−5℃であり、第二の工程のものは105℃であった。
【0186】
比較例1:
計量装置及び温度調節装置を備えた重合容器に、窒素雰囲気下に20〜25℃(室温)で脱イオン水105.7gと上記のように製造したPU−I209.3gを装入し、かつ撹拌しながら85℃まで加熱した。この温度に達した際に、t−ブチルヒドロペルオキシドの10質量%濃度水溶液24.0gと水40.0gを添加した。引き続き、この温度を保持しながら、RongalitC(ヒドロキシメタンスルホン酸のナトリウム塩、BASF)の2.87%濃度水溶液63.6gを140分間以内に一定のマスフローで連続的に供給した。RongalitCの供給開始から5分後に、平行して重合混合物にスチレン89.6gを40分間以内に一定のマスフローで連続的に供給した。スチレン供給物を供給した10分後に、供給物2を一定のマスフローで連続的に供給した。
【0187】
供給物2が終わった後に、重合混合物を更に85℃で30分間以内に後反応させた。
【0188】
引き続き得られたポリマー水性分散液混合物を室温まで冷却し、かつ125μmフィルターを介して濾過した。
【0189】
供給物2(均一な混合物):
グリシジルメタクリレート 3.36g
ヒドロキシエチルアクリレート 3.36g
メチルメタクリレート 43.10g
ブチルアクリレート 28.56g
得られたポリマー水性分散液は、40.1質量%の固形分を有した。合成の際に、ガラス壁及び撹拌機に2gよりも多い脆い凝固物が形成された。
【0190】
例1:
計量装置及び温度調節装置を備えた重合容器に、窒素雰囲気下に20〜25℃(室温)で脱イオン水206.3g及び上記のように製造されたPU−I194.6g及びDissolvine(登録商標)E−FE6(鉄−カリウム−エチレンジアミンテトラアセテート錯体Akzo)の0.5質量%水溶液4.8gを装入し、かつ撹拌しながら60℃まで加熱した。この温度に達した際に、t−ブチルヒドロペルオキシドの10質量%濃度水溶液3.0gと水5.0gを添加した。引き続き、この温度を保持しながら、RongalitC(BASF)の2.87%濃度水溶液7.9gを140分間以内に一定のマスフローで連続的に供給した。RongalitCの供給開始から5分後に、平行して重合混合物に4供給物1を0分間以内に一定のマスフローで連続的に供給した。供給物1の供給から10分後に、供給物2を40分間以内に一定のマスフローで連続的に供給した。
【0191】
供給物2が終わった後に、重合混合物を更に60℃で30分間以内に後反応させた。
【0192】
引き続き得られたポリマー水性分散液を室温まで冷却し、水14.8g中のアジピン酸ジヒドラジド2.02gを添加し、かつ125μmフィルターを介して濾過した。
【0193】
供給物1(均一な混合物):
ジアセトンアクリルアミド 4.03g
ブタンジオールモノアクリレート 4.03g
ブチルアクリレート 5.04g
スチレン 5.04g
メチルメタクリレート 32.26g
供給物2(均一な混合物):
ブチルアクリレート 81.31g
メチルメタクリレート 36.29g
得られたポリマー水性分散液は、40.6質量%の固形分を有し、133nm(高性能パーティクルサイザー、HPPSにより測定)の粒子サイズ及び10℃の最小膜形成温度を有した。この種の反応の方法では、分散液中に0.1gよりも少ない凝固物が形成された。
【0194】
比較例2:
計量装置及び温度調節装置を備えた重合容器に、窒素雰囲気下に20〜25℃(室温)で脱イオン水127.5g及び上記のように製造されたPU−I324.3gを装入し、かつ撹拌しながら(1分当たり150回転、アンカー撹拌機)85℃まで加熱した。この温度に達した際に、ナトリウムペルオキソジスルフェートの7質量%濃度水溶液17.1gを添加した。
【0195】
この添加の2分後に、温度を保持しながら重合混合物にメチルメタクリレート60.0gを70分間以内に一定のマスフローで連続的に添加した(供給物1)。引き続き、供給物2を70分間以内に一定のマスフローで連続的に供給した。
【0196】
供給物2の終了後に、重合混合物を更に85℃で更に90分間後反応させた。
【0197】
引き続き、得られたポリマー水性分散液を室温まで冷却し、脱イオン水17.6g中のアジピン酸ジヒドラジド2.4gと混合し、かつ125μmフィルターを介して濾過した。
【0198】
供給物2(均一な混合物):
ジアセトンアクリルアミド 4.80g
メチルメタクリレート 37.20g
n−ブチルメタクリレート 18.0g
得られたポリマー水性分散液は、39.1質量%の固形分を有した。合成の際に、ガラス壁、撹拌機及び分散液中に全部で8gよりも多い脆い凝固物が生じた。
【0199】
比較例3:
計量装置及び温度調節装置を備えた重合容器に、窒素雰囲気下に20〜25℃(室温)で脱イオン水0.17g及び上記のように製造されたPU−I348.8gを装入し、かつ撹拌しながら(1分当たり150回転、アンカー撹拌機)85℃まで加熱した。この温度に達した際に、t−ブチルヒドロペルオキシドの3.75質量%濃度水溶液64.0gを添加した。この添加後に、温度を保持しながらポリマー混合物に、RongalitCの2.87質量%濃度の水溶液63.55gを140分間以内に一定のマスフローで連続的に供給し、かつブタンジオールジアクリレート12.0gとスチレン72.0gの混合物を40分間以内に一定に供給した(供給物1)。供給物1の終了後に、供給物2を40分間以内に一定のマスフローで連続的に供給した。
【0200】
供給物2の終了後に、ポリマー混合物を85℃で更に90分間後反応させた。
【0201】
引き続き、得られたポリマー水性分散液を室温まで冷却し、脱イオン水17.6g中のアジピン酸ジヒドラジド2.4gと混合し、かつ125μmフィルターを介して濾過した。
【0202】
供給物2(均一な混合物):
ジアセトンアクリルアミド 4.80g
エチルアクリレート 31.20g
得られたポリマー水性分散液は、40.0質量%の固形分を有した。合成の際に、ガラス壁、撹拌機及び分散液中に全部で6gよりも多い脆い凝固物が形成された。
【0203】
例2:
計量装置及び温度調節装置を備えた重合容器に、窒素雰囲気下に20〜25℃(室温)で脱イオン水138.7g及び上記のように製造されたPU−I324.3g及びDissolvine E−FE6(Akzo)の1%濃度水溶液2.4gを装入し、かつ撹拌しながら60℃まで加熱した。この温度に達した際に、t−ブチルヒドロペルオキシド溶液の10質量%濃度水溶液3.0g及び水5.0gを添加した。引き続き、温度を保持しながら、RongalitC(BASF)の2.87%濃度の水溶液7.9gを140分間以内に一定のマスフローで連続的に供給した。RongalitCの供給開始から5分後に、平行して重合混合物に供給物1を40分間以内に一定のマスフローで連続的に供給した。供給物1の供給から10分後に、供給物2を40分間以内に一定のマスフローで連続的に供給した。
【0204】
供給物2の終了後に、重合混合物を60℃で更に後反応させた。
【0205】
引き続き、得られたポリマー水性分散系を室温まで冷却し、かつ125μmフィルターを介して濾過した。
【0206】
供給物1:メチルメタクリレート 47.4g
供給物2(均一な混合物):
グリシジルメタクリレート 4.8g
n−ブチルアクリレート 67.8g
得られたポリマー水性分散液は、40.5質量%の固形分、151nm(HPPS)の粒子サイズ及び16℃の最小膜形成温度を有した。この種の反応の方法では、分散液中に0.1gより少ない凝固物が形成された。
【0207】
例3:
計量装置及び温度調節装置を備えた重合容器に、窒素雰囲気下に20〜25℃(室温)で脱イオン水218.0g及び上記のように製造されたPU−I194.6g及びDissolvine E−FE6(Akzo)の0.5%濃度水溶液4.8gを装入し、かつ撹拌しながら60℃まで加熱した。この温度に達した際に、t−ブチルヒドロペルオキシドの10質量%濃度水溶液3.0g及び水5.0gを添加した。引き続き、温度を保持しながら、RongalitC(BASF)の2.87%濃度の水溶液7.9gを140分間以内に一定のマスフローで連続的に供給した。RongalitCの供給開始から5分後に、平行して重合混合物に供給物1を一定のマスフローで40分間以内に連続的に供給した。供給物1の添加から10分後に、供給物2を40分間以内に一定のマスフローで連続的に供給した。
【0208】
供給物2の終了後に、ポリマー混合物を60℃で更に30分間後反応させた。
【0209】
引き続き、得られたポリマー水性分散液を室温まで冷却し、かつ125μmフィルターを介して濾過した。
【0210】
供給物1(均一な混合物):
アリルメタクリレート 0.72g
ブタンジオールモノアクリレート 4.03g
ブチルアクリレート 4.32g
スチレン 5.04g
メチルメタクリレート 32.29g
供給物2(均一な混合物):
ブチルアクリレート 81.31g
メチルメタクリレート 36.29g
得られたポリマー水性分散液は、40.7質量%の固形分、135nm(HPPS)の粒子サイズ及び4℃の最小膜形成温度を有した。この種の反応の方法では、分散液中に0.1gより少ない凝固物を形成した。
【0211】
例4:PU−II上のポリウレタン/ポリアクリレート−ハイブリッド分散液
計量装置及び温度調節装置を備えた重合容器に、窒素雰囲気下に20〜25℃(室温)で脱イオン水296.9g及び上記のように製造されたPU−II387.1g及びDissolvine(登録商標) E−FE6(鉄−カリウムエチレンジアミンテトラアセテート錯体Akzo)の0.5%濃度水溶液9.6gを装入し、かつ撹拌しながら70℃まで加熱した。この温度に達した際に、t−ブチルヒドロペルオキシドの10質量%濃度水溶液9.6gを添加した。引き続き、温度を保持しながら、水21.0g中のLutavit C(アスコルビン酸、BASF)とアンモニアの25質量%濃度水溶液0.25gの混合物を180分間以内に一定のマスフローで連続的に供給した。アンモニアアルカリ性Lutavit C溶液の供給開始から5分後に、平行して重合混合物に一定のマスフローで供給物1を40分間以内に連続的に供給した。供給物1の供給から10分後に、一定のマスフローで供給物2を80分間以内に連続的に供給した。
【0212】
供給物2の終了後に、脱イオン水20.6gを添加し、かつ重合混合物を70℃で更に30分間後反応させた。
【0213】
引き続き、得られたポリマー水性分散液を室温まで冷却し、水29.6g中のアジピン酸ジヒドラジド4.03gを添加し、かつ125μmのフィルターを介して濾過した。
【0214】
供給物1(均一な混合物):
ジアセトンアクリルアミド 8.06g
ブタンジオールモノアクリレート 8.06g
ブチルアクリレート 10.08g
スチレン 10.08g
メチルメタクリレート 64.51g
供給物2(均一な混合物):
ブチルアクリレート 162.60g
メチルメタクリレート 72.58g
脱イオン水 41.13g
得られたポリマー水性分散液は、42.3質量%の固形分、91nm(高性能パーティクルサイザー、HPPSにより測定)の粒子サイズ及び0℃の最小膜形成温度を有した。この種の反応方法では、分散液中に0.8gより少ない凝固物が形成された。
【0215】
使用性能試験:
a)耐ブロック試験
試験体を製造するために、EN927−6、段落5に倣って、松林から成る6個の木材片(150×50×5mm)を互いに並べ、かつエリクセン塗布器を用いて左から右へ試験染料を300μmのウェット膜厚で被覆した。2〜5個の木材片だけが必要であった。室温で24時間乾燥した後に、それぞれ2個の木材片を、被覆した側を向い合せに重なるように置いた。引き続き、試験片を特定の10kgの秤(約400g/cm2の負荷に相当)で重さを計り、かつこの条件下に50℃で24時間貯蔵した。冷却後に、試験片を互いに別々にした。評価は、以下の判断基準に従って行った(曲げ、ブロッキング、フィルム剥離):
0=損傷なく、互いに被覆面が僅かに剥がれる(ゆるやかな隣接)。
1=僅かな粘着;損傷なく被覆の剥離が可能性としてある。
2=中程度の粘着;被覆フィルムの剥離が可能性としてある;僅かな粘着の痕跡と凹みの痕跡が存在する。
3=ブロッキング:塗布の際に応力白化があるが、しかしフィルム裂けは無い。
4=ブロッキング:応力白化及び僅かなフィルム裂けあり。
5=ブロッキング:完全なブロッキング、重大なフィルム裂けあり。
【0216】
b)水白化試験
エリクセン塗布器を用いて、300μmのウェット膜厚で試験体をガラスに設けた。室温で24時間乾燥させた後に、ガラス板を脱イオン水の入ったビーカーに浸した。ビーカーの背後には黒いホイルを貼り、コントラストを最小化させた。時間の経過により、着色剤の曇りを視覚的にモニターし、かつ水と接触させた2時間後に0〜5の点数で評価を行った:ここで0=白化が目視できない。5=完全に白化した着色剤、もはや透明ではない。
【0217】
c)低温弾性
試験すべき着色剤又は染料を、エリクセン塗布器を用いて1000μmのウェット膜厚でテフロン加工した平らなアルミニウム板に塗布した。室温で乾燥させた7日後に、遊離したフィルムをプレートから剥がし、かつ更に21日間垂直に吊るして乾燥させた。この期間の後に、DIN ISO 1184によりフィルムから試験体を片抜きした。これらの試験片を0℃で24時間貯蔵し、かつツヴィック(Zwick)装置に圧入し、破断伸びを試験するために、これを50%の湿度及び0℃で調整容器に入れた。引っ張り速度を200mm/分に設定した。遊離したフィルム当たり5個の試験体の破断伸びの平均値を測定した。
【0218】
PEビーカー中、分散機を用いて着色剤を以下の調製に従って製造した。水分量を結合剤の固形分に合わせることにより着色剤の固形分を一定に保持した。
【0219】
【表1】
【0220】
この調製物では、PA−Iの代わりに、以下の表中に挙げられている成分を同様に使用し、かつ試験法a)とb)により試験した。本発明による例2の分散液の耐ブロック性と水白化に対する耐性の同時の改善は明らかである。
【0221】
【表2】
【0222】
ブロック挙動と低温弾性に関しても分散液をPVK=18を有する塗料調製物において試験した。塗料調製物を以下のように製造した。
【0223】
【表3】
【0224】
以下の分散液をこの調製物において使用した:PA−I、PU−II、例2と例4。これらを試験法a)とc)により試験した。ここでは、本発明による実施例に関して、耐ブロック性と低温弾性の同時の改善が明らかであり、その際、例4は最善の妥協点を提供している。
【0225】
【表4】