特許第5951324号(P5951324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951324
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20160630BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   H01L21/302 101B
   H05H1/46 M
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-86180(P2012-86180)
(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-219100(P2013-219100A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(72)【発明者】
【氏名】花岡 秀敏
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−251744(JP,A)
【文献】 特開2008−135739(JP,A)
【文献】 特開2009−212482(JP,A)
【文献】 特開2011−210958(JP,A)
【文献】 特開2005−302848(JP,A)
【文献】 特表2001−509645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内に設けられた上部電極と下部電極との間に高周波電力を印加して処理ガスをプラズマ化し、当該プラズマにより被処理体をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、
前記上部電極に直流電圧を印加する直流電源と、
前記処理容器内に設けられ、前記上部電極に印加された直流電圧に対するグランドとして機能するグランド電極と、
前記グランド電極の外方に設けられた環状の遮蔽部材と、を有し、
前記グランド電極の外周縁部には、第1の縁部を有する下方に凹に窪んだ溝部が形成され、
前記遮蔽部材は、その上端が前記グランド電極の前記第1の縁部の上端より上方に位置するように形成され、
前記遮蔽部材における前記グランド電極より上方に位置する部位には、前記グランド電極の中心方向に向けて突出する突出部が形成されていることを特徴とする、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記突出部は、その先端が、平面視において前記第1の縁部を跨いで前記グランド電極の溝部の鉛直上方に位置するように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記突出部の下端面と前記第1の縁部の上面との間には、所定距離の隙間が設けられていることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記グランド電極には、前記溝部の外側に更に第2の縁部を有する他の溝部が形成されていることを特徴とする、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記突出部の下端面と前記第1の縁部の上面及び前記第2の縁部の上面との間には、所定距離の隙間が設けられていることを特徴とする、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記突出部の下端面と前記第1の縁部の上面との間の前記隙間と前記突出部の下端面と前記第2の縁部の上面との間の隙間の大きさが異なることを特徴とする、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記溝部には、当該溝部の幅を広げた領域が形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記溝部における前記グランド電極の中心側の側面と前記突出部の先端との間の水平方向の距離の長さと、前記溝部の水平方向の幅の長さとの比は1:1〜1:3であることを特徴とする、請求項1〜3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記溝部における前記グランド電極の中心側の側面と前記突出部の先端との間の水平方向の距離は3mm〜5mm、前記溝部の水平方向の幅は3〜9mmであることを特徴とする、請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理体をプラズマ処理するプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマの作用により、例えば半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という)などの被処理体上にエッチングや成膜等の微細加工を施す装置としては、平行平板型(容量結合型)プラズマ処理装置、誘導結合型プラズマ処理装置、マイクロ波プラズマ処理装置等が実用化されている。
【0003】
このうち、平行平板型プラズマ処理装置では、処理容器内に対向して設けられた上部電極及び下部電極の少なくともいずれかに高周波電力を印加し、その電界エネルギーによりガスを励起させてプラズマを生成する。そして、生成された放電プラズマによって被処理体をプラズマ処理、例えばエッチング処理により微細加工を行う。
【0004】
近年、このような平行平板型プラズマ処理装置においては、プラズマ処理の性能を向上させることを目的として、上部電極に直流電源を接続して処理容器内に直流電圧を印加することが提案されている。そのようなプラズマ処理装置においては、上部電極に直流電圧を印加するために、当該上部電極と一対をなす接地された電極(以下、「グランド電極」という)が処理容器内にその表面を露出して設けられる。
【0005】
しかしながら、プラズマ処理による反応生成物がグランド電極の露出した表面に堆積し、上部電極とグランド電極間の直流電流が阻害されることがある。その結果、処理容器内に適切に直流電圧を印加することができなくなり、プラズマが不安定になるという問題が生じる。
【0006】
そのため、このような問題を解消するために、グランド電極の近傍に遮蔽壁を設けることで、プラズマによる反応生成物のグランド電極への付着を抑制することが、例えば特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−251744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、プラズマ処理による反応生成物の付着力が強い場合や、長時間のプラズマ処理を行った場合、上述のような対策を施してもグランド電極への反応生成物の付着が避けられず、経時的にグランド電極の機能が低下してしまっていた。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、処理容器内に設けられたグランド電極へのプラズマ処理による反応生成物の付着を抑制し、長時間にわたって安定的に処理容器内に直流電圧を印加できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、処理容器内に設けられた上部電極と下部電極との間に高周波電力を印加して処理ガスをプラズマ化し、当該プラズマにより被処理体をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、前記上部電極に直流電圧を印加する直流電源と、前記処理容器内に設けられ、前記上部電極に印加された直流電圧に対するグランドとして機能するグランド電極と、前記グランド電極の外方に設けられた環状の遮蔽部材と、を有し、前記グランド電極の外周縁部には、第1の縁部を有する下方に凹に窪んだ溝部が形成され、前記遮蔽部材は、その上端が前記グランド電極の前記第1の縁部の上端より上方に位置するように形成され、前記遮蔽部材における前記グランド電極より上方に位置する部位には、前記グランド電極の中心方向に向けて突出する突出部が形成されていることを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、突出部を有する遮蔽部材によりグランド電極へのプラズマ処理による反応生成物の付着が抑制され、さらに、グランド電極に溝部が形成されることによりグランド電極が処理容器内に露出する部分の表面積が従来のグランド電極と比較して大きいので、グランド電極に反応生成物が付着した際のグランド電極の機能低下の割合を従来よりも小さくすることができる。その結果、長時間にわたって安定的に処理容器内に直流電圧を印加することが可能となる。
【0012】
前記突出部は、その先端が、平面視において前記第1の縁部を跨いで前記グランド電極の溝部の鉛直上方に位置するように形成されていてもよい。
【0013】
前記突出部の下端面と前記第1の縁部の上面との間には、所定距離の隙間が設けられていてもよい。
【0014】
前記グランド電極には、前記溝部の内側に更に第2の縁部を有する他の溝部が形成されていてもよい。
【0015】
前記突出部の下端面と前記第1の縁部の上面及び前記第2の縁部の上面との間には、所定距離の隙間が設けられていてもよい。
【0016】
前記突出部の下端面と前記第1の縁部の上面との間の前記隙間と前記突出部の下端面と前記第2の縁部の上面との間の隙間の大きさが異なっていてもよい。
【0017】
前記溝部には、当該溝部の幅を広げた領域が形成されていてもよい。
【0018】
前記溝部における前記グランド電極の中心側の側面と前記突出部の先端との間の水平方向の距離の長さと、前記溝部の水平方向の幅の長さとの比は1:1〜1:3であってもよい。かかる場合、前記溝部における前記グランド電極の中心側の側面と前記突出部の先端との間の水平方向の距離は3mm〜5mm、前記溝部の水平方向の幅は3〜9mmであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、処理容器内に設けられたグランド電極へのプラズマ処理による反応生成物の付着を抑制し、長時間にわたって安定的に処理容器内に直流電圧を印加できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施の形態にかかるプラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図2】グランド電極及び遮蔽部材近傍の構成の概略を示す縦断面図である。
図3】グランド電極及び遮蔽部材近傍の構成の概略を示す横断面図である。
図4】他の実施の形態にかかるグランド電極及び遮蔽部材近傍の構成の概略を示す縦断面図である。
図5】他の実施の形態にかかるグランド電極及び遮蔽部材近傍の構成の概略を示す縦断面図である。
図6】他の実施の形態にかかるグランド電極及び遮蔽部材近傍の構成の概略を示す横断面図である。
図7】他の実施の形態にかかるグランド電極及び遮蔽部材近傍の構成の概略を示す縦断面図である。
図8】他の実施の形態にかかるグランド電極及び遮蔽部材近傍の構成の概略を示す横断面図である。
図9】他の実施の形態にかかるグランド電極及び遮蔽部材近傍の構成の概略を示す縦断面図である。
図10】他の実施の形態にかかるグランド電極及び遮蔽部材近傍の構成の概略を示す縦断面図である。
図11】他の実施の形態にかかるグランド電極及び遮蔽部材近傍の構成の概略を示す横断面図である。
図12】他の実施の形態にかかるグランド電極及び遮蔽部材近傍の構成の概略を示す縦断面図である。
図13】他の実施の形態にかかるグランド電極及び遮蔽部材近傍の構成の概略を示す横断面図である。
図14】比較例にかかるグランド電極及び遮蔽部材近傍の構成の概略を示す縦断面図である。
図15】比較例にかかるグランド電極及び遮蔽部材近傍の構成の概略を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態の一例について、図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るプラズマ処理装置1の概略の構成を示す縦断面図である。本実施の形態に係るプラズマ処理装置1は、例えば平行平板型のプラズマエッチング処理装置である。
【0022】
プラズマ処理装置1は、シリコン基板であるウェハWを保持するウェハチャック10が設けられた略円筒状の処理容器11を有している。処理容器11は、接地線12により電気的に接続されて接地されている。また、処理容器11の内壁は、表面に耐プラズマ性の材料からなる溶射皮膜が形成されたライナ(図示せず)により覆われている。
【0023】
ウェハチャック10は、その下面を下部電極としてのサセプタ13により支持されている。サセプタ13は、例えばアルミニウム等の金属により略円盤状に形成されている。処理容器11の底部には、絶縁板14を介して支持台15が設けられ、サセプタ13はこの支持台15の上面に支持されている。ウェハチャック10の内部には電極(図示せず)が設けられており、当該電極に直流電圧を印加することにより生じる静電気力でウェハWを吸着保持することができるように構成されている。
【0024】
サセプタ13の上面であってウェハチャック10の外周部には、プラズマ処理の均一性を向上させるための、例えばシリコンからなる導電性の補正リング20が設けられている。サセプタ13、支持台15及び補正リング20は、例えば石英からなる円筒部材21によりその外側面が覆われている。
【0025】
支持台15の内部には、冷媒が流れる冷媒路15aが例えば円環状に設けられており、当該冷媒路15aの供給する冷媒の温度を制御することにより、ウェハチャック10で保持されるウェハWの温度を制御することができる。また、ウェハチャック10と当該ウェハチャック10で保持されたウェハWとの間に、伝熱ガスとして例えばヘリウムガスを供給する伝熱ガス管22が、例えばウェハチャック10、サセプタ13、支持台15及び絶縁板14を貫通して設けられている。
【0026】
サセプタ13には、当該サセプタ13に高周波電力を供給してプラズマを生成するための第1の高周波電源30が、第1の整合器31を介して電気的に接続されている。第1の高周波電源30は、例えば27〜100MHzの周波数、本実施の形態では例えば40MHzの高周波電力を出力するように構成されている。第1の整合器31は、第1の高周波電源30の内部インピーダンスと負荷インピーダンスをマッチングさせるものであり、処理容器11内にプラズマが生成されているときに、第1の高周波電源30の内部インピーダンスと負荷インピーダンとが見かけ上一致するように作用する。
【0027】
また、サセプタ13には、当該サセプタ13に高周波電力を供給してウェハWにバイアスを印加することでウェハWにイオンを引き込むための第2の高周波電源40が、第2の整合器41を介して電気的に接続されている。第2の高周波電源40は、例えば400kHz〜13.56MHzの周波数、本実施の形態では例えば3.2MHzの高周波電力を出力するように構成されている。第2の整合器41は、第1の整合器41と同様に、第2の高周波電源40の内部インピーダンスと負荷インピーダンスをマッチングさせるものである。
【0028】
下部電極であるサセプタ13の上方には、上部電極42がサセプタ13に対向して平行に設けられている。上部電極42は、絶縁性の遮蔽部材50を介して処理容器11の上部に支持されている。これにより上部電極42は、接地電位である処理容器11から電気的に絶縁されている。
【0029】
上部電極42は、ウェハチャック10に保持されたウェハWと対向面を形成する電極板51と、当該電極板51を上方から支持する電極支持体52とにより構成されている。電極板51には、処理容器11の内部に処理ガスを供給する複数のガス供給口53が当該電極板51を貫通して形成されている。電極板51には、例えばジュール熱の少ない低抵抗の導電体または半導体により構成され、本実施の形態においては例えばシリコンが用いられる。また、電極支持板52は導電体により構成され、本実施の形態においては例えばアルミニウムが用いられる。
【0030】
また、上部電極42には、第1の高周波電源30及び第2の高周波電源40からの高周波をトラップするローパスフィルタ60を介して、直流電源61が電気的に接続されている。この直流電源61により、上部電極42には負の直流電圧が印加される。本実施の形態においては、負の直流電圧の電圧は150V〜1200Vである。
【0031】
第1の高周波電源30、第1の整合器31、第2の高周波電源40、第2の整合器41、直流電源61は、後述する制御部150に接続されており、これらの動作は制御部150により制御される。
【0032】
電極支持体52内部の中央部には、略円盤状に形成されたガス拡散室54が設けられている。また、電極支持体52の下部には、ガス拡散室54から下方に伸びるガス孔55が複数形成され、ガス供給口53は当該ガス孔5を介してガス拡散室54に接続されている。
【0033】
ガス拡散室54には、ガス供給管71が接続されている。ガス供給管71には、図1に示すように処理ガス供給源72が接続されており、処理ガス供給源72から供給された処理ガスは、ガス供給管71を介してガス拡散室54に供給される。ガス拡散室54に供給された処理ガスは、ガス孔55とガス供給口53を通じて処理容器11内に導入される。すなわち、上部電極42は、処理容器11内に処理ガスを供給するシャワーヘッドとして機能する。なお、処理ガスとしては、従来のプラズマエッチングに用いられている種々のものを採用することができる。
【0034】
ガス供給管71には、流量調整機構73が設けられており、処理ガス供給源72からガス拡散室55に供給するガスの量を制御することができる。流量調整機構73は、例えばマスフローコントローラとバルブにより構成されている。
【0035】
処理容器11の底部には、処理容器11の内壁と円筒部材21の外側面とによって、処理容器11内の雰囲気を当該処理容器11の外部へ排出するための流路として機能する排気流路80が形成されている。処理容器11の底面には排気口90が設けられている。排気口90の下方には、排気室91が形成されており、当該排気室91には排気管92を介して排気装置93が接続されている。したがって、排気装置93を駆動することにより、排気流路80及び排気口90を介して処理容器11内の雰囲気を排気し、処理容器内を所定の真空度まで減圧することができる。
【0036】
支持台15の外側であって排気流路80の下方には、環状の接地されたグランド電極100が設けられている。グランド電極100は導電性の材料、例えばシリコンなどにより形成されている。このグランド電極100は、負の直流電圧が印加されて負極として機能する上部電極42と対をなす正極(グランド)であり、上部電極42に印加された直流電圧に対するグランドとして機能する。
【0037】
グランド電極100の外方には、当該グランド電極100を排気流路80から遮蔽し、プラズマによる反応生成物のグランド電極100への付着を抑制する、遮蔽部材110が設けられている。遮蔽部材110は絶縁性材料、例えば石英によって環状に形成され、グランド電極100と同心円状に配置されている。
【0038】
次に、このグランド電極100及び遮蔽部材110について詳述する。図2図3に示されるように、環状のグランド電極100は、円筒部材21の下方であって処理容器11の底部の上面に、支持台15の側面を覆うように配置されている。処理容器11の底部上面のグランド電極100と接する部位には溶射皮膜によるライナが形成されておらず、グランド電極100は、処理容器11の底面と電気的に接続された状態となっている。これによりグランド電極100は、処理容器11を介して接地線12により接地されている。また、グランド電極100の支持台15と反対側の表面は排気流路80に露出している。そのため、グランド電極100には、直流電圧を印加した際に上部電極42の電極板51から放出された電子が到達する。
【0039】
グランド電極100の外周縁部は、円筒部材21の外側面よりも外方に突出している。そして、グランド電極100の外周縁部の上面、より具体的には、円筒部材21の外側面よりも外方に突出している部位の上面には、縁部(第1の縁部)Pを有する下方に凹に窪んだ、所定の幅Tの溝部101が形成されている。したがって、グランド電極100を径方向に沿って切断した場合の縦断面の形状は、例えば図2に示すように、略U字状となっている。
【0040】
遮蔽部材110は、内側面がグランド電極100の縁部Pの外側面と接して設けられている。また、遮蔽部材110の下端は、処理容器11の底面と接するように設けられ、これにより、グランド電極100の外周面は、遮蔽部材110により覆われ、排気流路80から遮蔽された状態になっている。
【0041】
遮蔽部材110の上端部110aは、グランド電極100の縁部Pの上端面100aより上方に位置するように形成されている。また、上端部110aには、グランド電極100の中心方向(図2の右方向側)に向けて突出する突出部110bが形成されている。これにより、遮蔽部材110の縦断面の形状は、例えば図2に示すように、L字を上下反転させた形状となっている。
【0042】
突出部110bの下面は、グランド電極100の溝部101より外側の領域、即ち縁部Pの上端面100aと接して設けられている。この突出部110bは、その先端が、平面視において縁部Pを跨いでグランド電極100の溝部101の鉛直上方に位置するように、例えば庇状に形成されている。換言すれば、突出部110bの先端と円筒部材21の外周面との間に形成された隙間Uの間隔Gが、溝部101の幅Tよりも小さくなっている。そのため、グランド電極100は、縁部Pの外周面と、縁部Pの上端面100aとが遮蔽部材110により覆われ、溝部101の上方の一部が、突出部110bにより覆われた状態となっている。したがって、グランド電極100が排気流路80に対して露出しているのは、溝部101の側面及び底面のみとなる。そして、排気流路80においては、上方向から下方向に向かって形成された排気流に乗ってプラズマによる反応生成物が移動するが、遮蔽部材110によりグランド電極100が覆われ、僅かに溝部101上方の隙間Uが開口するのみであるため、当該グランド電極100の露出部分である溝部101にプラズマ処理による反応生成物が侵入しにくい。これにより、グランド電極100への反応生成物の付着が抑制され、プラズマ処理装置1は安定したプラズマを維持することができる。
【0043】
その一方、上部電極42に印加された負の直流電圧により電極板51から放出される電子は、排気流に左右されることなく処理容器11内を自由に移動する。そのため、電極板51から放出される電子は、遮蔽部材110により遮蔽されることなく、遮蔽部材110と円筒部材21との間の隙間Uを通ってグランド電極100に到達する。これにより、処理容器11内に直流電流を流すことができる。なお、隙間Uの間隔Gが、円筒部材21及び処理容器11内のプラズマの存在するプラズマシースの厚みより小さい場合、電極板51から放出される電子が隙間Uの間を通ってグランド電極100に到達することが困難となる。そのため、隙間Uの間隔Gは、プラズマシースの厚みよりも大きくなるように設定される。なお、通常シースの厚みは0.5mm程度であるため、間隔Gは0.5mmより大きくされ、本実施の形態においては、例えば3mmに設定される。
【0044】
なお、図2では、グランド電極100の上端面100aと、グランド電極100における円筒部材21の下端面と接する部位との高さが同じであったが、これらの高さは必ずしも同じである必要はない。例えば図4に示すように、グランド電極100の円筒部材21側の高さを上端面100aよりも低くしてもよい。この場合も、遮蔽部材110によりグランド電極100が覆われるため、当該グランド電極100の溝部101へのプラズマ処理による反応生成物の侵入及び付着を抑制できる。
【0045】
以上のプラズマ処理装置1には、既述のように制御部150が設けられている。制御部150は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、各電源30、40、61や各整合器31、41、及び流量調整機構73などを制御して、プラズマ処理装置1を動作させるためのプログラムも格納されている。
【0046】
なお、上記のプログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御部150にインストールされたものであってもよい。
【0047】
本実施の形態にかかるプラズマ処理装置1は以上のように構成されており、次に、本実施の形態にかかるプラズマ処理装置1におけるプラズマエッチング処理について説明する。
【0048】
プラズマエッチング処理にあたっては、先ず、処理容器11内にウェハWが搬入され、ウェハチャック10上に載置されて保持される。ウェハWには、エッチングマスクとして予めフォトレジストによるエッチングパターンが形成されている。次いで、排気装置93により処理容器11内を排気し、それと共に処理ガス供給源72から処理ガスが所定の流量で処理容器11内に供給される。
【0049】
その後、第1の高周波電源30と第2の高周波電源40により、下部電極であるサセプタ13に高周波電力を連続的に印加し、それと共に、直流電源81により上部電極42に負の直流電圧を連続的に印加する。これにより、処理容器11内に供給された処理ガスは、上部電極42とサセプタ13との間でプラズマ化され、処理容器11内のプラズマにより生成されるイオンやラジカルにより、ウェハWのエッチング処理が行われる。なお、フォトレジストは負に帯電しており、エッチングの初期にはエッチング面において電荷が中和した状態である。そのため、高周波電力の印加のみによりエッチングを行った場合、アスペクト比が高くなると、エッチングホールの底に正イオンが堆積し、エッチング面が正の電荷に帯電するようになる。そのため、エッチングへの寄与が大きい正イオンの軌道が、エッチングホール内で電荷の反発により曲がってしまい、エッチングホールの形状に曲がりや歪みが生じてしまう。また、正イオンがエッチングホールの底部に到達し難くなるため、エッチングレートが低下してしまう。
【0050】
ここで、本実施の形態においては、上部電極42に負の直流電圧を印加するので、より多くの2次電子が生成されると共に大きく加速されてエッチングホール内に入射される。そのため、多くの2次電子及び負イオンをコンタクトホール内に供給することができる。その結果、正の電荷に帯電していたコンタクトホール内の電荷を中和することができるので、高周波電源によりプラズマを生成した際に、正イオンがエッチングホール内で曲がることがなくなり、良好なエッチングを行えるようになる。
【0051】
そして、処理容器11内の雰囲気は排気流路80を通じて処理容器11の底部の排気口90から排気されるが、グランド電極100は遮蔽部材110により覆われているため、グランド電極100へのプラズマの反応生成物の堆積を抑制することができる。その一方で、電極板51から放出される電子は、排気流に左右されることなく処理容器11内を自由に移動する。そのため、電極板51から放出される電子は、遮蔽部材110により遮蔽されることなく、遮蔽部材110と円筒部材21との間の隙間Uを通ってグランド電極100に到達するので、処理容器11内に安定して直流電流を流すことができる。これによって、プラズマ処理装置1は、安定したプラズマを維持することができる。
【0052】
また、グランド電極100の外周縁部には、下方に凹に窪んだ溝部101が形成されているので、グランド電極100の処理容器11内に露出する表面積が従来の溝が無い場合と比較して大きい。そのため、従来の溝が無いグランド電極よりも、グランド電極100に反応生成物が付着した際のグランド電極100の機能低下の割合が小さい。したがって、以上の実施の形態によれば、プラズマ処理による反応生成物が遮蔽部材110と円筒部材21との間の隙間Uを通ってグランド電極に付着した場合であっても、従来のグランド電極100と比較して、長時間にわたって安定的に処理容器内に直流電圧を印加することができる。
【0053】
なお、発明者が後述の比較試験を行って鋭意調査したところ、突出部110bの厚みは、2mm〜6mmが好ましく、突出部110bの先端と円筒部材21の外周面との間に形成された隙間Uの間隔Gは、3mm〜5mmが好ましいことが確認された。また、溝部101の幅Tについては、3mm〜9mmが好ましいことが確認された。さらには、隙間Uの間隔Gと、溝部101の幅Tとの比は、概ね1:1〜1:3とすることが好ましいことが確認された。
【0054】
以上の実施の形態では、遮蔽部材110の突出部110bの下面がグランド電極100の上端面100aと接して設けられていたが、突出部110bとグランド電極100の上端面100aとは必ずしも接している必要は無い。例えば図5に示すように、上端面100aと突出部110bの下面との間に隙間Rが形成されていてもよい。このように隙間Rを形成することで、グランド電極100の上端面100aの分だけ、グランド電極100が処理容器11内に露出する表面積が大きくなる。それにより、プラズマ処理による反応生成物の付着に対して、より多くのマージンを持たせることができる。なお、隙間Rを形成するにあたっては、遮蔽部材110そのものの高さを高くしてもよい。あるいは、例えば図5図6に示すように、突出部110bの下面とグランド電極の上端面100aとの間にスペーサ160を同心円状に所定の間隔で設けてもよく、本実施の形態に限定されることなく様々な手法をとり得る。
【0055】
また、以上の実施の形態では、グランド電極100の外周縁部に溝部101を形成していたが、例えば図7図8に示すように、当該溝部101の外側に更に縁部Q(第2の縁部)を有する他の溝部170を設け、さらに、縁部Pの上端面100aと突出部110bの下面との間に隙間Rを形成するようにしてもよい。かかる場合においても、他の溝部170及び溝部101と他の溝部170との間の領域の上端面、即ち縁部Qの上端面100bの分だけ、グランド電極100が処理容器11内に露出する表面積が大きくなる。これにより、プラズマ処理による反応生成物の付着に対して、より多くのマージンを持たせることができる。この際、例えば図9に示すように、縁部Pと縁部Qとの高さを異なるものとして、突出部110bの下端面と縁部Pの上端面100aとの間の隙間Rと、突出部110bの下端面と縁部Qの上端面100bとの間の隙間Rの大きさが異なるようにしてもよい。なお、他の溝部170を形成した場合においても、遮蔽部材110の突出部110bは、その先端が、平面視において溝部101の鉛直上方に位置するように形成される。
【0056】
なお、他の溝部170を形成した場合における遮蔽部材110の形状は、図7に示される形状に限定されるものではない。例えば図10図11に示すように、遮蔽部材110の突出部110bの先端を他の溝部170の鉛直上方に位置するように形成し、溝部101と他の溝部170との間に、さらに円環状の他の遮蔽部材171をスペーサ160を介して設けるようにしてもよい。また、溝部101及び他の溝部170の側面と底面が処理容器11内に露出する構造となっていれば、任意の構造を適用することができる。
【0057】
なお、グランド電極100の溝部101の内部においてもプラズマが発生するため、このプラズマによりグランド電極100がスパッタされて削れることがある。その場合、グランド電極100の形状が変化し、グランド電極100にプラズマ処理による反応生成物が付着した場合と同様に、経時的にグランド電極100の機能が低下してしまう。そのため、例えば図12図13に示すように、溝部101内部のプラズマが発生する領域に対応する部位を予め削っておいた拡張部101aを設けることで、スパッタによるグランド電極100の機能低下を抑制することができる。なお、この拡張部101aは、溝部101の全周にわたって設ける必要はなく、所定の間隔毎に設ければ足りる。また、図12に示す断面は、図13図のI−I’線の部分の断面図である。
【実施例】
【0058】
実施例として、図2に示すグランド電極100の溝部101の幅T及び遮蔽部材110の突出部110bの長さ(隙間Uの間隔G)を変化させてプラズマ処理を行い、グランド電極100の経時的な機能低下に与える影響について確認試験を行った。この際、突出部110bの鉛直方向の厚みは3mmとし、プラズマ処理の条件は、処理容器11内の圧力が15mTorr、第1の高周波電源30の電力を2700W、第2の高周波電源40の電力を4500W、直流電圧を150Vとし、処理ガスとしてC4F6/Ar/O2を30/600/22sccmで供給した。また、比較例として、図14に示すように、従来のように断面形状が直線状の遮蔽部材180、即ち、突出部110bを有していない遮蔽部材180(比較例1)、及び図15に示すように、突出部110bを備えた遮蔽部材110(比較例2)についても、溝部101が形成されていないグランド電極190を用いて確認試験を行った。
【0059】
確認試験の結果を表1に示す。処理容器11内にプラズマを発生させ、400秒経過後においてもArの発光強度が1000以下に維持されている場合を、グランド電極100の機能が維持されているものとして「○」で、400秒経過後においても100以下に維持されている場合を「◎」で示した。表中の「×」は、400秒未満でArの発光強度が1000を超えた場合である。なお、比較例1及び比較例2のグランド電極190には溝部101が形成されていないが、図14及び図15に示すように、遮蔽部材110、180とグランド電極190との間の幅を、便宜上幅Tとして表1に記載している。また、比較例1においては、突出部110bを有していない遮蔽部材180を用いており隙間Uが形成されないが、表1には便宜上、幅Tの値を隙間Uの間隔Gの値として記載している。
【0060】
【表1】
【0061】
従来技術である比較例1においては、遮蔽部材による遮蔽が充分ではなく、400秒後にはグランド電極100の機能が低下している。また、L字状を上下反転させた形状の遮蔽部材110を用いた比較例2においても、400秒後にはグランド電極100の機能の低下が確認されている。本発明者によれば、遮蔽部材110による遮蔽機能は有効であるものの、溝部が形成されていないグランド電極においては、処理容器11内に露出する部分の表面積が少ない。このため、遮蔽部材110と円筒部材21との隙間を通過する少量のプラズマ処理による反応生成物による影響を受けてしまうものと推察される。
【0062】
これに対して実施例1〜3においては、いずれもグランド電極100の経時的な機能低下を抑制できることが確認された。なお、実施例1においては、隙間Uの間隔Gと溝部101の幅Tとが同じであるが、隙間Uの間隔Gを3mmと設定することで遮蔽部材110による遮蔽効果が得られ、溝部101への反応生成物の付着を抑制できるものと推察される。この結果から、遮蔽部材110の突出部110bは、必ずしも溝部110bの鉛直上方に位置するように形成する必要はなく、隙間Uの間隔Gを所定の長さ以下、例えば3mm以下とすればよいことが確認された。
【0063】
また、実施例2においては、隙間Uの間隔Gを5mmと、実施例1と比較して大きく設定しているため、遮蔽部材110による遮蔽効果は実施例1より低いものと考えられる。しかしながら、溝部101の幅Tを7mmと大きくすることで処理容器11内に露出する部分の表面積を大きくしているので、結果として実施例1と同様にグランド電極100の経時的な機能低下を抑制できているものと推察される。
【0064】
なお、実施例3においては、隙間Uの間隔Gを3mm、溝部101の幅Tを9mmとしている。このため、グランド電極100の露出部の表面積の大きさと、遮蔽部材110による遮蔽効果が相俟って、400秒経過後においてもアルゴンの発光強度が100以下に維持されグランド電極100の経時的な機能低下が効果的に抑制されることが確認された。
【0065】
以上の結果から、突出部110bの先端と円筒部材21の外周面との間に形成された隙間Uの間隔Gは、3mm〜5mmが好ましく、溝部101の幅Tについては、3mm〜9mmが好ましいことが確認された。また、隙間Uの間隔Gと、溝部101の幅Tとの比は、概ね1:1〜1:3とすることが好ましいことが確認された。
【0066】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0067】
1 プラズマ処理装置
2 マイクロ波供給部
10 ウェハチャック
11 処理容器
12 接地線
13 サセプタ
14 絶縁板
15 支持台
20 補正リング
21 円筒部材
22 伝熱ガス管
30 第1の高周波電源
31 第1の整合器
40 第2の高周波電源
41 第2の整合器
42 上部電極
50 遮蔽部材
51 電極板
52 電極支持板
53 ガス供給口
54、55 ガス拡散室
56 ガス孔
60 ローパスフィルタ
61 直流電源
62 ガス流通路
70 ガス導入口
71 ガス供給管
72 処理ガス供給源
73 流量調整機構
80 ローパスフィルタ
81 直流電源
90 排気口
91 排気室
92 排気管
93 排気装置
100 グランド電極
101 溝部
110 遮蔽部材
110b 突出部
150 制御部
160 スペーサ
170 他の溝部
W ウェハ
T 幅
U 隙間
G 間隔
図1
図2
図3
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