特許第5951377号(P5951377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951377
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】液処理装置及び液処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20160630BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   H01L21/304 643A
   H01L21/304 651M
   H01L21/304 647Z
   H01L21/30 572B
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-155625(P2012-155625)
(22)【出願日】2012年7月11日
(65)【公開番号】特開2013-65823(P2013-65823A)
(43)【公開日】2013年4月11日
【審査請求日】2014年7月29日
(31)【優先権主張番号】特願2011-185245(P2011-185245)
(32)【優先日】2011年8月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(74)【代理人】
【識別番号】100096895
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 淳平
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】相 浦 一 博
(72)【発明者】
【氏名】伊 藤 規 宏
(72)【発明者】
【氏名】永 井 高 志
【審査官】 小堺 行彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−161674(JP,A)
【文献】 特開2009−076705(JP,A)
【文献】 特開2006−332198(JP,A)
【文献】 特開平11−251289(JP,A)
【文献】 特開2003−197591(JP,A)
【文献】 特開2003−151941(JP,A)
【文献】 特開2010−123884(JP,A)
【文献】 特開2000−223394(JP,A)
【文献】 特開2007−173120(JP,A)
【文献】 特開平10−125648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持する基板保持部材と、
前記基板保持部材を回転させる回転機構と、
前記基板保持部材に保持された基板に加熱された薬液を供給する薬液ノズルと、
前記基板保持部に保持された基板の上方を覆うトッププレートと、
前記トッププレートを鉛直軸線回りに回転させる回転駆動機構と、
前記トッププレートの上方から、回転している前記トッププレートを透過させて、所定の波長の光を前記基板保持部材に保持された基板に照射することにより薬液処理中に基板を加熱する少なくとも1つのLEDランプと、
を備え、
前記LEDランプは前記トッププレートが回転しているときに回転しない液処理装置。
【請求項2】
前記LEDランプは前記トッププレートの上方でランプ支持体に支持されており、前記ランプ支持体は前記トッププレートを移動させる移動アームに固定されている、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
前記薬液供給ノズルに薬液を供給する薬液供給配管が前記移動アームの外部に設けられている、請求項に記載の液処理装置。
【請求項4】
前記LEDランプは複数設けられており、これら複数のLEDランプは、前記基板保持部材に保持された基板の半径方向に関して異なる領域にそれぞれ対面するように設けられており、各LEDランプへの給電を独立して制御可能である、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項5】
前記LEDランプは、前記基板保持部材に保持された基板の半径方向に関して異なる領域に対面することができるように、移動可能である、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項6】
前記トッププレートは、石英またはポリテトラフルオロエチレンにより形成されている、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項7】
前記薬液がSPM(硫酸と過酸化水素水の混合物)である、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項8】
前記基板保持部材は、前記トッププレートに対し基板を挟んで配置される保持プレートに設けられ、前記回転機構は、前記保持プレートに接続されている、請求項1からのうちのいずれかに記載の液処理装置。
【請求項9】
前記基板保持部材は、前記トッププレートに設けられ、前記回転機構は、前記トッププレートに接続されている、請求項1からのうちのいずれかに記載の液処理装置。
【請求項10】
基板の周囲を囲む処理カップをさらに有し、前記トッププレートと前記処理カップは処理空間を形成し、前記LEDランプは前記処理空間の外に配置される、請求項1からのうちのいずれかに記載の液処理装置。
【請求項11】
基板の上方をトッププレートにより覆うことと、
前記基板を水平に保持して鉛直軸線周りに回転させることと、
回転している前記基板に加熱された薬液を供給することと、
前記トッププレートを回転させることと、
薬液処理中に、回転していない少なくとも1つのLEDランプにより、回転している前記トッププレートの上方から、前記トッププレートを透過させて、所定の波長の光を基板保持部材に保持された基板に照射して基板を加熱することと、
を備えた液処理方法。
【請求項12】
前記トッププレートを移動させる移動アームに固定されたランプ支持体により前記LEDランプを支持することを備えた、請求項11に記載の液処理方法。
【請求項13】
前記薬液がSPM(硫酸と過酸化水素水の混合物)である、請求項11または12に記載の液処理方法。
【請求項14】
前記基板を水平に保持する際に、前記LEDランプの光が前記基板の処理対象面に照射されるように前記基板の処理対象面が上を向くように保持し、前記薬液を供給する際に、前記薬液を前記基板の上方から前記基板の処理対象面に供給する、請求項11から13のうちのいずれか一項に記載の液処理方法。
【請求項15】
前記基板を水平に保持する際に、前記LEDランプの光が前記基板の処理対象面の反対側の面に照射されるように前記基板の処理対象面が下を向くように保持し、前記薬液を供給する際に、前記薬液を前記基板の下方から前記基板の処理対象面に供給する、請求項11から13のうちのいずれか一項に記載の液処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を回転させながら基板に加熱された処理液を供給することにより基板に所定の薬液処理を行う液処理装置及び液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、基板例えば半導体ウエハ(以下単に「ウエハ」と称する)に形成された処理対象膜の上に所定のパターンでレジスト膜が形成され、このレジスト膜をマスクとしてエッチング、イオン注入等の処理が前記処理対象膜に施される。処理後、不要となったレジスト膜はウエハ上から除去される。
【0003】
最近では、レジスト膜の除去方法として、SPM処理がよく用いられている。SPM処理は、硫酸と過酸化水素水とを混合して得た高温のSPM(Sulfuric Acid Hydrogen Peroxide Mixture)をレジスト膜に供給することにより行われる。
【0004】
上記のSPM処理を行うためのレジスト除去装置の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の装置は、ウエハを保持して回転させるスピンチャックと、スピンチャックに保持されたウエハの周囲を囲むスプラッシュガード(処理カップとも呼ばれる)と、スピンチャックに保持されたウエハの表面(レジストが形成されている面)にSPMを供給するノズルとを有している。ウエハの表面に高温のSPMが供給されるとレジストと反応してヒューム(fume)が発生する。ヒュームとはSPM及びレジスト由来のガスまたはミストであり、このヒュームはレジスト除去装置のチャンバ内の広範囲に拡散して、ウエハ汚染の原因物質を発生させうる。このようなヒュームの拡散を防止するため、特許文献1の装置は、スプラッシュガードの上端開口及びスピンチャックに保持されたウエハの上方を覆う円板上の遮蔽板(トッププレートないし天板などとも呼ばれる)を備えている。
【0005】
SPM処理は、高温のSPMによりウエハを処理する。しかし、ウエハWがSPMから熱を奪うのでSPMの吐出ポイントから遠い部位ではSPMの温度が下がりやすく、また、ウエハWの回転によりウエハW周縁部が冷却されやすい。そのため、ウエハ面内の温度分布に不均一が生じやすく、ひいては処理結果に不均一が生じやすい。特許文献1のノズルはウエハ中心にSPMを供給するので、ウエハ周縁部においてSPMの温度が低下する傾向にあると考えられるが、それについての対策は特許文献1には何ら記載されていない。
【0006】
特許文献2には、ウエハの裏面(レジストが形成されていない面)を吸着保持して回転するプレート(吸着式のスピンチャック)と、このプレートにより保持されたウエハの表面(レジストが形成されている上向きに保持されている面)にSPMを供給するSPMノズルと、プレートにより保持されたウエハの表面にSPMと窒素ガスとの混合流体を供給する混合流体ノズルと、を備えたレジスト除去装置が開示されている。プレートにはウエハの全領域を加熱することができるヒータが内蔵されており、このヒータによりウエハの表面が200〜250℃程度になるようにウエハが裏面側から加熱される。この状態で、混合流体ノズルを移動(スキャン)させながらSPMと窒素ガスとの混合流体をウエハに吹き付けることにより、レジストの剥離が行われる。特許文献2の装置のように、回転するプレートにヒータを設けると構造が複雑となり、また、プレートには薬液が触れるのでヒータが薬液に曝されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−35866号公報
【特許文献2】特開2008−4878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、薬液処理時における薬液雰囲気の拡散を防止しつつ、簡単な構造で薬液に曝されずに、基板の温度調整を効率良く行うことができる液処理技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点によれば、基板を水平に保持する基板保持部材と、前記基板保持部材を回転させる回転機構と、前記基板保持部材に保持された基板に加熱された薬液を供給する薬液ノズルと、前記基板保持部材に保持された基板の上方を覆うトッププレートと、前記トッププレートの上方から、前記トッププレートを透過させて、所定の波長の光を前記基板保持部材に保持された基板に照射することにより薬液処理中に基板を加熱する少なくとも1つのLEDランプと、を備えた液処理装置が提供される。
【0010】
また、本発明の第2の観点によれば、基板の上方をトッププレートにより覆うことと、前記基板を水平に保持して鉛直軸線周りに回転させることと、回転している前記基板に加熱された薬液を供給することと、薬液処理中に、少なくとも1つのLEDランプにより、前記トッププレートの上方から、前記トッププレートを透過させて、所定の波長の光を前記基板保持部材に保持された基板に照射して基板を加熱することと、を備えた液処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板を上方から天板により覆うことにより、天板より下方で発生した薬液及び被処理物体由来のガスまたはミストが拡散することを防止することができる。また、天板の上方にLEDランプを設け、基板を加熱するのに適した波長のLEDランプ光を天板を透過させて基板に照射することにより、簡単な構造で、薬液及び被処理物体由来のガスまたはミストにLEDランプが曝されることなく、基板の表面を直接的に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】液処理装置としての基板洗浄装置を含む液処理システムを上方から見た上方平面図である。
図2】前記基板洗浄装置の構成を示す縦断面図である。
図3】前記基板洗浄装置の構成を示す横断面図である。
図4】LEDランプの別の配置の例を示すLEDランプユニットのみの平面図である。
図5】LEDランプ移動機構を備えた変形例を示す平面図である。
図6】基板洗浄装置の別の実施形態を示す縦断面図である。
図7】基板洗浄装置のさらに別の実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。まず、図1を用いて、本発明による液処理装置の実施形態に係る基板洗浄装置を含む処理システムについて説明する。図1に示すように、液処理システムは、外部から被処理基板としての半導体ウエハW(以下、簡単に「ウエハW」とも呼ぶ)を収容したキャリアを載置するための載置台101と、キャリアに収容されたウエハWを取り出すための搬送アーム102と、搬送アーム102によって取り出されたウエハWを載置するための受け渡しユニット103と、受け渡しユニット103に載置されたウエハWを受け取り、当該ウエハWを液処理装置10内に搬送する搬送アーム104と、を備えている。図1に示すように、液処理システムには、複数(図1に示す態様では4個)の基板洗浄装置10が組み込まれている。
【0014】
次に、基板洗浄装置10の構成について図2及び図3を用いて説明する。基板洗浄装置10は、筐体11(図3参照)により画成される処理チャンバ12内に、ウエハWを保持する保持プレート20と、保持プレート20と同軸に設けられたリフトピンプレート30と、保持プレート20に保持されたウエハWの周囲を囲む処理カップ40と、保持プレート20に保持されたウエハWの上方を覆うトッププレート(天板)50と、トッププレート50の上方に設けられたLEDランプユニット60と、を有している。
【0015】
図2に示すように、処理チャンバ12の天井には、処理チャンバ12内に清浄空気のダウンフローを形成するファンフィルタユニット(FFU)14が設けられている。図3に示すように、処理チャンバ12の側壁には、シャッタ部材15(これは図1には図示されていない)が設けられたウエハWの搬出入口16が形成されており、この搬出入口を通ってウエハWを保持した搬送アーム104が処理チャンバ12内に侵入することができる。
【0016】
図2に示すように、保持プレート(「スピンチャック」とも呼ばれる)20は、円板状の保持プレート本体21と、保持プレート本体21の周縁部において円周を等分した角度位置にそれぞれ設けられた複数(例えば3つ)の保持部材22とを有している。保持部材22は軸23を中心として揺動することができ、図示されたウエハWの周縁を保持する保持位置と、ウエハWの周縁から離れる解放位置とをとることができる。保持プレート本体21の下面中心部から回転軸24が下方に延びている。回転軸24は、図2中に概略的に示す回転昇降機構25内の回転モータ(図示せず)により回転駆動され、これにより保持プレート20及び保持部材22によって水平に保持されたウエハWの中心を通る鉛直軸線周りにウエハWを回転させることができる。
【0017】
リフトピンプレート30は、円板状のリフトピンプレート本体31と、リフトピンプレート本体31の周縁部において円周を等分した角度位置にそれぞれ設けられた複数(例えば3つ)のリフトピン32とを有している。リフトピンプレート本体31は、下降位置にあるときに、保持プレート本体21の上面の中央部に形成された凹所に収容される。リフトピンプレート本体31下面中心部からは、昇降軸34が回転軸24の空洞内を下方に延びている。昇降軸34は図2中に概略的に示す回転昇降機構25内の昇降駆動機構例えばエアシリンダ(図示せず)により昇降し、これにより保持プレート20を昇降させることなく、リフトピンプレート30のみを昇降させることができる。なお、リフトピンプレート本体31は、保持プレート本体21の上面の凹所に収容されたときには、適当な係合手段35により保持プレート本体21と相対回転不能に係合するので、リフトピンプレート30は、保持プレート20を回転させることにより保持プレート20と一緒に回転する。係合手段35は、例えば、保持プレート20及びリフトピンプレート30の一方に形成された凸部、他方に形成された凹部から構成することができる。
【0018】
処理カップ40は、前述したように、保持プレート20に保持されたウエハWの周囲を囲んで設けられ、遠心力によりウエハWから外方に飛散する処理液を受け止める役割を果たす。処理カップ40の底部には、図2に概略的に示すように、排出口41が設けられており、排出口41には排出ライン42が接続されている。排出ライン42にはミストセパレータ43と、イジェクタ若しくはポンプからなる適当な排気装置44とが介設されている。ミストセパレータ43で分離された液体は、工場廃液系(DR)に廃棄され、気体は工場排気系(EXH)に廃棄される。
【0019】
トッププレート50は、図2及び図3に実線で示す処理位置にあるとき、保持プレート20に保持されたウエハWの近傍に位置してウエハWの上方を覆うとともに、処理カップ40の上部開口をほぼ閉塞する。トッププレート50の直径は、ウエハWの直径よりもやや大きいことが好ましい。トッププレート50の上面中央部から中空の回転軸51が上方に延びている。回転軸51は移動アーム52の先端部に、ベアリングを介して鉛直軸線周りに回転可能に取り付けられている。移動アーム52の基端部には回転モータ53が設けられている。回転モータ53を回転駆動すると、その回転は適当な伝動手段54(図示例では、回転軸51及び回転モータ53の出力軸にそれぞれ取り付けられたプーリ及びこれらのプーリ間に掛け渡されたベルトからなる)により回転軸51に伝達され、これによりトッププレート50を回転させることができる。移動アーム52は回転モータ55を駆動することにより鉛直軸線周りに旋回させることができ、この移動アーム52の旋回に伴い、トッププレート50はウエハWの真上に位置する処理位置またはウエハWの真上から退避した退避位置(図3の2点鎖線で示す位置)に位置することができる。なお、退避位置に、トッププレート50を洗浄する装置を設けることも好ましい。
【0020】
回転軸51内に形成された空洞51aは、トッププレート50の下面まで延びてそこでウエハWに向けて開口している。空洞51a内には、薬液供給管56が設置されている。薬液供給管56は回転軸51から離れており、従って回転軸51を回転させても薬液供給管56は回転しない。薬液ノズルとしての役割を持つ薬液供給管56の下端開口56aから保持プレート20により保持されたウエハWに向けて薬液が供給される。すなわち、薬液供給管56はウエハWの処理対象面に薬液を供給する薬液供給ノズルとしての役割を果たす。薬液供給管56の上端には、薬液供給配管56bが接続されており、この薬液供給配管56bは(配管56bの詳細な図示は省略している)移動アーム52の外部で移動アーム52に沿って延び、概略的に示すSPM供給機構(薬液供給機構)57に接続されている。移動アーム52の外部に薬液供給配管56bを設けることで、配管で不具合が発生しても、トッププレート50の駆動系が薬液の影響を受けることはない。SPM供給機構57は、加熱硫酸供給源、過酸化水素水供給源、硫酸と過酸化水素水を所定比率で混合する混合装置例えばミキシングバルブ、流量調整弁、開閉弁等(いずれも図示せず)から構成することができる。
【0021】
図2及び図3に示すように、LEDランプユニット60は、移動アーム52に支持された円板状のランプ支持体61と、ランプ支持体61に支持された1または複数(本例では4つ)のLEDランプ62を有している。各1つのLEDランプ62は、1つの発光素子または複数の発光素子列(発光素子アレイ)により構成することができる。LEDランプ支持体61は移動アーム52に固定されているため、トッププレート50を回転させてもLEDランプユニット60は回転しない。一方で、移動アーム52の旋回に伴い、LEDランプユニット60はトッププレート50と一緒に移動し、トッププレート50と同様に、ウエハWの真上に位置する処理位置と、ウエハWの真上から退避した退避位置をとることができる。なお、ランプ支持体61の形状は任意であり、例えば移動アーム52から外方に延びる複数の平板状部材であってもよい。
【0022】
LEDランプ62として、ウエハWを加熱するために適した波長、具体的には例えば880nmの波長の光を照射するものが用いられている。従って、トッププレート50は、880nmの波長の光を良く透過する材料であってSPMによる腐食に耐えうる材料、例えば、石英またはテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成することができる。LEDランプ62は移動アーム52に沿って延びる給電線63(給電線63の詳細な図示は省略している)を介して電源装置(PS)64から給電される。なお、LEDランプ62を冷却して保護するために、LEDランプ冷却用の冷媒通路をランプ支持体61に設けてもよく、或いは放熱フィンをLEDランプ62に設けてもよい。
【0023】
図示された実施形態においては、LEDランプ62は、薬液温度またはウエハ温度が低下する傾向にあるウエハWの周縁部を加熱することができるように、保持プレート20に保持されたウエハWの周縁部に対向する位置にある。なお、処理時にはウエハWが回転するため、LEDランプ62を円周方向に1つだけ設けても構わないが、LEDランプ62は円周を等分した位置に複数個設けることが好ましい。
【0024】
基板洗浄装置10は、さらに、保持プレート20に保持されたウエハWに、リンス液として、高温DIW(加熱された純水)を供給するリンスノズル70aと、常温DIW(常温の純水)を供給するリンスノズル70bとを有している。リンスノズル70a,70bは鉛直方向軸線を中心として旋回可能な(図3中の矢印を参照)旋回アーム73に保持されており、リンスノズル70a,70bはウエハWの中心の真上の処理位置(図示せず)と、ウエハWの上方から退避した退避位置(図3に示す位置)との間を移動することができる。リンスノズル70a,70bには、高温DIW供給機構72a及び常温DIW供給機構72bから、旋回アーム73に沿って設けられた配管71a,71bを介して、高温DIW及び常温DIWをそれぞれ供給することができる。高温DIW供給機構72a及び常温DIW供給機構72bは各々、DIW供給源、流量制御弁、開閉弁等(いずれも図示せず)から構成することができる。
【0025】
図2に概略的に示すように、基板洗浄装置10は、その全体の動作を統括制御するコントローラ90を有している。コントローラ90は、基板洗浄装置10の全ての機能部品(例えば回転昇降機構25、トッププレート50の回転モータ53、移動アーム52を旋回させる回転モータ55、SPM供給機構57のバルブ類、LEDランプ62用の電源装置64など)の動作を制御する。コントローラ90は、ハードウエアとして例えば汎用コンピュータと、ソフトウエアとして当該コンピュータを動作させるためのプログラム(装置制御プログラム及び処理レシピ等)とにより実現することができる。ソフトウエアは、コンピュータに固定的に設けられたハードディスクドライブ等の記憶媒体に格納されるか、或いはCDROM、DVD、フラッシュメモリ等の着脱可能にコンピュータにセットされる記憶媒体に格納される。このような記憶媒体が参照符号91で示されている。プロセッサ92は必要に応じて図示しないユーザーインターフェースからの指示等に基づいて所定の処理レシピを記憶媒体91から呼び出して実行させ、これによってコントローラ90の制御の下で基板洗浄装置10の各機能部品が動作して所定の処理が行われる。コントローラ90は、図1に示す液処理システム全体を制御するシステムコントローラであってもよい。
【0026】
次に、上述した基板洗浄装置10を用いて、ウエハW表面にある不要なレジスト膜を除去する洗浄処理の一連の工程について説明する。
【0027】
<ウエハ搬入及び設置工程>
トッププレート50及びLEDランプユニット60は退避位置(図3の二点鎖線で示す位置)にある。この状態から、リフトピンプレート30を上昇させて上昇位置に位置させる。次いで、ウエハWを保持した搬送アーム104(図1参照)が、搬出入口16を通って基板洗浄装置10内に侵入し、リフトピンプレート30のリフトピン32上にウエハWを置き、基板洗浄装置10から退出する。次いでリフトピンプレート30が下降し、保持プレート20の保持部材22がウエハWを保持することができる高さまで、ウエハWを下降させる。保持部材22がウエハWを保持したらリフトピンプレート30はさらに下降して、保持プレート20内に収まる(図2に示された状態)。なお、ウエハWは、その「表面」(レジストパターンが形成されている面)が「上面」となり、その「裏面」(レジストパターンが形成されていない面)が「下面」となるように、保持プレート20により保持される。
【0028】
<SPM洗浄工程>
次に、移動アーム52が旋回して、トッププレート50及びLEDランプユニット60がウエハWの真上の処理位置(図2に示す位置、図3の実線で示す位置)に位置する。この状態で、次いで、回転昇降機構25の回転モータ(図示せず)により保持プレート20を回転させる。また、回転モータ53によりトッププレート50も回転させる。ウエハWの回転開始と同時またはその後に、LEDランプ62を点灯させてウエハWの表面を加熱する。このとき例えばウエハWは200℃程度に加熱される。ウエハWが所定温度まで昇温したら、SPM供給機構57からSPMを薬液供給管56に供給し、薬液供給管56の下端開口56aからウエハWの表面の中心に向けてSPMを吐出させる。なお、SPM供給機構57は、加熱硫酸供給源から150℃程度の加熱硫酸と、過酸化水素水供給源から常温の過酸化水素水を供給し、これらが混合された後に薬液供給配管56bに流入するように構成されている。硫酸と過酸化水素水とが混合されると発熱し、混合液(すなわちSPM)は概ね180℃〜200℃で下端開口56aからウエハWの表面の中心に向けて吐出される。SPMは遠心力によりウエハWの中心部から周縁部に広がってゆき、ウエハW表面はSPMの液膜に覆われ、ウエハ表面の付着している不要なレジスト膜は、SPMによりリフトオフ(剥離)されて除去される。除去されたレジスト膜及び反応生成物は、SPMと一緒に遠心力によりウエハWの表面上を半径方向外側に流れ、ウエハWの外側に流出し、処理カップ40により受け止められて、排出口41から排出される。
【0029】
SPMがウエハ表面上を広がってゆくときに、SPMはウエハWにより熱を奪われ、温度が低下する。また、ウエハ周縁部の周速はウエハ中心部の周速よりも高いため、ウエハ周縁部の方がウエハ近傍の空気の流れによってもより冷却され、SPMの温度が低下しやすい傾向にある。従って、ウエハ周縁部において反応速度が低下し、レジストの剥離が不十分になるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、ウエハWの周縁部がLEDランプ62により加熱されている。そのため、周縁部においてウエハWに奪われる熱が少なくなり、ウエハW表面の中心部から周縁部に至るまで、SPMの温度が低下することを抑制することができ、比較的均一な温度分布が得られる。このため、レジストを均等に剥離することができる。なお、LEDランプ62は、ウエハWの厚さ方向に関して表面(照射面)の近傍のみを加熱することができるため、ウエハW全体が必要以上に加熱されることなく、必要な領域(表面近傍)のみを加熱することができる。さらに、LEDランプ62は、ウエハWを加熱するために適した波長を有しているため、処理チャンバ12内にあるウエハW以外の部材を加熱しない。また、ウエハWを加熱するために適した波長のLED光によりウエハWを加熱することにより、ウエハWを短時間で昇温することができる。
【0030】
また、ウエハWの上方にはトッププレート50が設けられており、処理カップ40の内部空間は排出口41を介して排気装置44により吸引されているため、処理カップ40とトッププレート50との間の隙間を通って、ファンフィルタユニット14からのダウンフローが引き込まれようになっている。そのため、SPM処理時にウエハWの表面の上方空間に発生したヒュームが、処理カップ40とトッププレート50との間の隙間から漏れることが防止される。また、トッププレート50の下面にヒュームの凝縮物(液滴)が生じるが、トッププレート50が回転しているため凝縮物は遠心力によりトッププレート50の周縁部まで流れてゆく。そのため、ヒュームの凝縮物からなる液滴がウエハWの表面に落下してパーティクルが発生することが防止される。なお、トッププレート50の周縁まで流れた液滴は半径方向外側に飛散するが、この液滴は処理カップ40とトッププレート50との間の隙間を通って処理カップ40内に引き込まれるダウンフローに乗って処理カップ40内に導かれるため、処理カップ40の外側に飛散することは無い。より完全に液滴の飛散を防止するために、トッププレート50を昇降させる機構(図2に示すシリンダ58を参照)、または処理カップ40を昇降させる機構を設けて、SPM洗浄工程時にトッププレート50の下面を処理カップ40の上端よりも下方に位置されるようにしてもよい。
【0031】
<高温DIWリンス工程>
SPM洗浄工程を所定時間実行した後、薬液供給管56からのSPMの吐出を停止し、また、LEDランプ62によるウエハWの加熱を停止し、移動アーム52を旋回させて、トッププレート50及びLEDランプユニット60を退避位置(図3の二点鎖線で示す位置)に移動させる。その後、旋回アーム73を駆動して、高温DIWノズル70aをウエハWの中心の真上に位置させる。引き続きウエハWを回転させたまま、高温DIWノズル70aから60℃〜80℃の純水(高温DIW)をウエハの中心に吐出する。高温DIWは遠心力によりウエハWの表面上を半径方向外側に流れ、ウエハWの外側に流出し、処理カップ40により受け止められて排出口41から排出される。これによりウエハWの表面上に残っているSPMやレジストの残渣などが、ウエハWの表面上を半径方向外側に流れる高温DIWにより洗い流される。高温DIWによりリンスを行うことにより、SPM洗浄工程において生じた残渣を効率良く迅速に除去することができる。なお、SPM洗浄工程の終了後高温DIWリンス工程の開始前にウエハWの表面が乾燥することを防止するために、処理カップ40の上端開口縁にノズルを設けて、当該ノズルから高温DIWノズル70aが処理位置に移動するまでの間に、放物線状にウエハWの中心にDIWを供給してもよい。
【0032】
<常温DIWリンス工程>
高温DIWリンス工程を所定時間実行した後、高温DIWノズル70aからの高温DIWの吐出を停止させるとともに常温DIWノズル70bをウエハWの中心の真上に位置させて、引き続きウエハWを回転させたまま、常温DIWノズル70bから常温DIW(常温の純水)をウエハの中心に吐出する。常温DIWは遠心力によりウエハWの表面上を半径方向外側に流れ、ウエハWの外側に流出し、処理カップ40により受け止められて排出口41から排出される。これによりウエハWの表面上に残っているSPMやレジストの残渣などが常温DIWの流れによってさらに除去されるとともに、ウエハWの温度を常温に戻すことができる。なお、常温DIWの吐出が開始されるまで、高温DIWの吐出を継続することも好ましい。
【0033】
<スピン乾燥工程>
常温DIWリンス工程を所定時間実行した後、常温DIWノズル70bからのDIWの吐出を停止する。次いで、ウエハWの回転速度を増大させて、ウエハ表面上にあるDIWを遠心力によって振り切ることにより乾燥させる。
【0034】
<ウエハ搬出工程>
スピン乾燥工程が終了したら、リフトピンプレート30を上昇させてウエハWの下面をリフトピン32で支持し、保持プレート20の保持部材22によるウエハWの保持を解放する。リフトピンプレート30をさらに上昇させて上昇位置に位置させ、搬送アーム104(図1参照)が、基板洗浄装置10内に侵入し、リフトピンプレート30からウエハWを受け取り、基板洗浄装置10から退出する。以上により1枚のウエハWに対する一連の処理が終了する。
【0035】
上記実施形態によれば、下記の有利な効果を得ることができる。
(1)回転するトッププレート50の上方に回転しないLEDランプユニット60を設けることにより、簡単な構成で、ウエハを加熱することができる。トッププレート50がLEDランプ光を透過する材質により形成されていることにより、LEDランプユニット60とトッププレート50とを互いに分離独立した部材として設け、LEDランプユニット60を回転させずにトッププレート50だけを回転させることが可能となる。LEDランプユニット60を回転させないことによりLEDランプ62への給電ラインの簡略化が達成される。また、トッププレート50を回転させることにより、前述したようにトッププレート50の下面に付着するヒュームの凝縮物がウエハW上に落下することを防止することができる。
(2)トッププレート50によりヒュームの飛散が防止されるため、LEDランプ62がヒュームに曝されることがない。
(3)LEDランプ62によりウエハWの半径方向に関する所定の領域のみ、具体的には冷えやすいウエハ周縁部領域のみを局所的に短時間で加熱することにより、ウエハ表面の温度分布を均一化して、ウエハ面内の反応速度を均一化することができる。しかも、ヒュームの飛散を防止するためにウエハ上方に配置されるトッププレート50はLEDランプ光を透過する材質により形成されているため、ウエハWの処理対象面(パターンが形成されている面)を上に向けて処理を行う際に、LEDランプ光によりウエハWの処理対象面を直接加熱することができる。詳細に述べると、LEDランプ光はウエハWの最表面から深さ100μmまでの範囲内で全吸収されて熱に変わる。SPM洗浄工程時にレジストとSPMとが接する部分すなわちレジスト最表面及びその近傍部分が加熱されることが効果的であるため、LEDランプ光はウエハWの厚さ方向に関しても必要な領域のみ(ウエハ全厚さ(12インチウエハの場合約775μm)の1/8程度)を局所的に効率良く加熱することができるということがいえる。すなわち、ウエハWへの過剰入熱によってウエハW上に形成されるデバイスの特性に悪影響を与える可能性が低減される。
【0036】
上記の実施形態は例えば下記のように改変することができる。
【0037】
LEDランプ62の配置は、図3に示したものに限定されるものではなく、例えば図4に示すように、異なる半径方向位置にLEDランプを配置することができる。図4には、点O(平面視において保持プレート20により保持されているウエハWの中心と一致する)を中心とする第1半径raの円周上に4つの第1LEDランプ62aが、第2半径rbの円周上に4つの第2LEDランプ62bが、第3半径rcの円周上に4つの第3LEDランプ62cが配置されている例が示されている。この場合、第1LEDランプ62a、第2LEDランプ62b及び第3LEDランプ62cはそれぞれ独立した電源装置(図示せず)に接続され、独立して制御することができる。このように、異なる半径方向位置(ra,rb,rc)にそれぞれLEDランプを配置することにより、ウエハWの異なる半径方向領域毎に独立して温度制御(いわゆるゾーン制御)を行うことも可能である。
【0038】
また、図5に示すように、ランプ支持体を、LEDランプ62を移動させるLEDランプ移動機構を含むように構成してもよい。図5には複数(2つ)のLEDランプ移動機構を設けた例を示しており、各LEDランプ移動機構は、移動アーム52の先端部に固定されて半径方向外側に延びるガイドレール65と、ガイドレール65に沿って移動する駆動機構を内蔵した可動子66と、可動子66に取り付けられたLEDランプ62mを有している。これによれば、LEDランプ62mを保持プレート20に保持されたウエハWの半径方向に関する任意の領域に対面させることができ、また、SPM処理中にLEDランプ62mを移動(スキャン)させることもできる。このため、より緻密なウエハW表面の温度分布の制御が可能となる。なお、ガイドレール65は3つ以上設けてもよいし、一つのガイドレール65に複数の可動子66及びLEDランプ62mを設けることもできる。
【0039】
基板洗浄装置10により行う薬液処理は、上述したSPM処理に限定されるものでなく、常温(クリーンルーム内の温度である23〜25℃程度)より加熱された液を使う処理であってもよい。また、薬液はメッキ処理用の薬液であってもよい。加熱された薬液を用いる任意の薬液処理において、LEDランプ62によりウエハWを加熱することにより、ウエハWの温度分布を均一化することができ、処理の面内均一性を高めることができる。
【0040】
前述したように薬液処理中にトッププレート50を回転させるのが好ましいのではあるが、トッププレート50下面からの凝縮物の落下が生じないような条件で薬液処理を行う場合、あるいは落下が生じても問題とならないような薬液処理を行う場合には、トッププレート50を回転させなくてもよい。トッププレート50を回転させない場合には、トッププレート50をランプ支持体61により保持してもよいし、あるいはトッププレート50の上面にLEDランプ62を乗せて設置してもよい。また、トッププレート50を回転させない場合には、トッププレート50処理位置に位置させたときに、処理カップ40とトッププレート50との間がシールされるようにしてもよい。
【0041】
上記実施形態では、ウエハWの「表面」が「上面」となり、「裏面」が「下面」となるようにウエハWを保持プレート20により保持し、ウエハWの上面に処理液を供給して液処理を行った。しかしながら、ウエハWの「表面」が「下面」となり、「裏面」が「上面」となるようにウエハWを保持プレート20により保持し、ウエハWの下面に処理液を供給して液処理を行うことも可能である。この場合に用いられる基板洗浄装置の構成の一例が図6に示されており、以下に図6に示す構成のうち図2の構成との相違点について説明する。
【0042】
図6の構成においては、図2の構成において中空であったトッププレート50の回転軸51の中を通る薬液供給管56が取り除かれ、また、リンスノズル70a、70bおよびこれらを支持する旋回アーム73が取り除かれている。その代わりに、リフトピンプレート30の昇降軸34が中空に構成され、昇降軸34の空洞内に薬液ノズルとしての役割を持つ処理液供給管80が通されている。処理液供給管80内を、SPM流路(薬液流路)80aおよびDIW流路(リンス液流路)80bが延びており、これらの流路は処理液供給管80の上端でウエハWの下面中央部に向けて開口している(図6中の矢印を参照)。従って、処理液供給管80は、ウエハWの処理対象面に薬液およびDIW(リンス液)をそれぞれ供給する薬液ノズルおよびリンス液ノズルとしての役割を果たす。SPM流路80aはSPM供給機構57’に接続されており、DIW流路80bは、高温DIW供給機構72a及び常温DIW供給機構72bに接続されている。処理液供給管80は、リフトピンプレート30の昇降軸34がウエハWの液処理時に保持プレート20の回転とともに回転した場合、並びに、ウエハWの受け渡しのためリフトピンプレート30の昇降軸34が昇降した場合も、静止した状態(回転も昇降もしない)を維持できるように設けられている。保持プレート20、リフトピンプレート30および処理液供給管80の構成の詳細として、例えば本件出願人による国際特許出願に係る国際公開WO2009/101853A1に開示されたものを採用することができる。
【0043】
図6に示す基板洗浄装置を用いた処理について簡単に説明する。前述したウエハ搬入及び設置工程と同じ手順で、ウエハWが保持プレート20により保持される。但し、ウエハWは処理対象面である表面(デバイス形成面、レジスト膜形成面)が下面となるように保持プレート20に保持される。なお、ウエハWの表面が下向きになるようにウエハWを裏返すために、図1に示す液処理システムにはリバーサ(ウエハ裏返し装置)を追加して設けることが好ましい。その後、ウエハWが回転させられるとともにウエハWがLEDランプユニット60により加熱される。但し、このときは、ウエハWの表面が下面となっているため、ウエハWは裏面側から熱伝導により加熱されることになる。この状態で、処理液供給管80からSPMがウエハの下面中央部に向かって吐出されてSPMによりレジストが除去される。この場合も、ウエハWの面内の所望の領域がLEDランプユニット60により加熱されることにより、ウエハWの面内で均一なSPM処理を行うことができる。SPM処理が終了したら、ウエハを回転させ続けながら、処理液供給管80から高温DIWをウエハの下面の中央部に向けて吐出する高温DIW処理を所定時間実行し、その後、処理液供給管80から常温DIWをウエハの下面の中央部に向けて吐出する常温DIW処理を所定時間実行する。なお、SPM処理工程、高温および常温DIWリンス工程においてウエハWの下面中央部に供給された処理液(SPM、DIW)はウエハの下面に沿って遠心力により半径方向外側に流れてウエハの周縁から外方に飛散し、処理カップ40により受け止められて、排出口41から排出される。常温DIWリンス工程を所定時間実行した後、常温DIWの吐出を止め、ウエハWの回転速度を増し、スピン乾燥工程を実行する。その後、前述したウエハ搬出工程と同様にして、ウエハを基板洗浄装置から搬出する。
【0044】
図6に示す基板洗浄装置においても、図2に示す基板洗浄装置と同じ有利な効果を得ることができる。すなわち、回転するトッププレート50の上方に回転しないLEDランプユニット60を設けることにより、簡単な構成で、ウエハを加熱することができ、LEDランプユニット60がトッププレート50により保護されるのでヒュームに曝されることがなく、また、ウエハWの半径方向の特定の領域を局所的に加熱することができる。なお、図6に示す基板洗浄装置においては裏面(上面)側からウエハWが加熱されることになるため、ウエハWの表面(パターン形成面である下面)は、裏面側からの熱伝導により加熱されることになる。従って、図2に示す実施形態と異なりウエハWの表面の加熱効率はやや低下するが、その一方で、被加熱領域に照射されるLEDランプ光の強度分布(微視的なレベルでのばらつき)がそのままウエハWの表面の温度分布として反映されることが防止され、面内で加熱ムラが発生することを防止できる。
【0045】
また、図7に示すように、ウエハWを保持する保持部材22をトッププレート50に設けてもよい。以下に図7に示す構成について図6に示す構成との相違点を中心に説明する。図7に示す基板処理装置では、保持部材22が、軸23を中心として揺動可能なようにトッププレート50に取り付けられている。トッププレート50に保持部材22を設けたことに伴い、保持プレート20は廃止されている。保持プレート20が廃止されたので、処理液供給管80は処理カップ40の底壁に直接固定されている。
【0046】
図7に示す基板洗浄装置を用いた処理について簡単に説明する。ウエハ保持部材22が処理カップ40の上端よりも十分に上方に位置するように、トッププレート50を上昇させ、保持部材22を揺動させて解放位置(保持部材22下端が外側に変位した状態)に位置させる。搬送アーム104(図1参照)が、処理対象面であるウエハWの表面が下向きになるように保持した状態で基板洗浄装置内に進入し、トッププレート50の真下であって保持部材22の下端より低い位置にウエハWを移動させる。次いで、搬送アーム104によりウエハWをやや上昇させた後に、保持部材22を揺動させて保持位置に位置させることによりウエハWを保持部材22により保持する。その後、搬送アーム104は、やや下降した後、基板洗浄装置から退出する。その後、トッププレート50を図7に示す位置まで下降する。
【0047】
次に、トッププレート50を回転させ、保持部材22に保持されたウエハWも一緒に回転させる。その後は、図6の基板処理装置による処理と同様にして、LEDランプユニット60によりウエハWを裏面側(上面側)から加熱しながら処理液供給管80からSPM液をウエハ表面(下面)に供給することによりSPM処理が行われる。その後、処理液供給管80から必要に応じて処理流体を供給しながら、高温DIW処理、常温DIW処理およびスピン乾燥処理が順次実行される。図7に示す基板処理装置も図6に示す基板処理装置と同様の効果を達成することができる。さらに、保持プレート20およびその駆動機構、並びにリフトピンプレート30およびその駆動機構を廃止することができるので、装置構成の簡略化および低コスト化を達成することができる。
【0048】
なお、図7に示した基板処理装置では、処理カップ40の底壁、または当該底壁の下方にLEDランプ62’(一点鎖線で示す)を設けて、ウエハWの下面側からウエハWを加熱することもできる。この場合、処理カップ40は、LED光(例えば波長が880nmのLED光)を透過する材料であってSPMによる腐食に耐えうる材料、例えば、テトラフルオロエチレン(PTFE)により構成すればよい。図7の構成では保持プレート20が廃止されているので、LEDランプ62’により効率よくウエハWを加熱することが可能である。
【0049】
また、図7に示した基板処理装置において、図2に示した形態と同様の形態で、処理液供給管(薬液供給管)をトッププレート50の回転軸51の内部に設けてもよい。図7では、符号56’を付けた処理液供給管および符号57’を付けた処理液供給機構が一点鎖線で概略的に記載されている。この場合、具体的には、図2の構成とは異なり、回転軸51の中には、SPM液および高温DIWを供給するための第1の供給管と、常温DIWを供給するための第2の供給管とが設けられる。また、この場合、ウエハWは処理対象面である表面が上向きとなるように、基板保持部材22により保持される。
【符号の説明】
【0050】
20 保持プレート
22 基板保持部材
25 回転機構(回転昇降機構の回転モータ)
50 トッププレート
52 移動アーム
53,54 回転機構(トッププレート用の回転モータ)
56 薬液供給管
80 処理液供給管
56b 薬液供給配管
61;65,66 ランプ支持体
62 LEDランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7