(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の温度に調温された液体が第1の流体として供給され、前記第1の流体の流量を制御する第1の可変バルブが設けられた第1の流体流路と、前記第1の温度とは異なる第2の温度に調温された液体が第2の流体として供給され、前記第2の流体の流量を制御する第2の可変バルブが設けられた第2の流体流路と、前記第1の流体と前記第2の流体とを合流させ温調対象物へ供給する結合流路と、前記温調対象物へ供給された流体を回収する回収流路と、第3の可変バルブが設けられ、前記回収流路を流れる流体の一部を前記温調対象物へ循環させるバイパス流路と、前記回収流路に設けられた循環ポンプと、前記回収流路において前記循環ポンプの上流側に設けられ、前記流体を貯蔵するタンクと、前記タンクに貯蔵された流体が一定量に到達したことを検出する前記液面センサとを備え、前記温調対象物として半導体製造装置に装備された部材の温度を制御する温度制御システムへの温調流体供給方法であって、
前記第1の可変バルブと前記第3の可変バルブとを所定の弁開度で開き、前記第1の流体を所定時間供給する第1の流体供給ステップと、
前記第1の流体供給ステップの後、前記第2の可変バルブと前記第3の可変バルブとを所定の弁開度で開き、前記第2の流体を所定時間供給する第2の流体供給ステップと、
第2の流体供給ステップの後、前記タンクにおいて前記流体が前記一定量に到達したことを前記液面センサが検出している状態で前記循環ポンプを起動させる起動ステップと、を有することを特徴とする温度制御システムへの温調流体供給方法。
前記第4の流体供給ステップの後に実行される、前記第3の可変バルブのみを開き、前記結合流路、前記回収流路及び前記バイパス流路に流体を循環させる循環ステップを更に有することを特徴とする請求項2に記載の温度制御システムへの温調流体供給方法。
前記循環ステップの後に実行される、前記第1の可変バルブ、前記第2の可変バルブ及び前記第3の可変バルブの弁開度を調整して、前記第1の流体流路への前記第1の流体の供給量、前記第2の流体流路への前記第2の流体の供給量、前記バイパス流路に供給される流体の流量を制御することにより、前記温調対象物の温度を前記温調対象物の設定温度に制御する制御ステップを更に有することを特徴とする請求項3に記載の温度制御システムへの温調流体供給方法。
前記タンクにおいて前記流体が前記一定量に到達したことを前記液面センサが検出したときには、前記タンクから前記循環ポンプへ前記流体が流出していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の温度制御システムへの温調流体供給方法。
第1の温度に調温された液体が第1の流体として供給され、前記第1の流体の流量を制御する第1の可変バルブが設けられた第1の流体流路と、前記第1の温度とは異なる第2の温度に調温された液体が第2の流体として供給され、前記第2の流体の流量を制御する第2の可変バルブが設けられた第2の流体流路と、前記第1の流体と前記第2の流体とを合流させ温調対象物へ供給する結合流路と、前記温調対象物へ供給された流体を回収する回収流路と、第3の可変バルブが設けられ、前記回収流路を流れる流体の一部を前記温調対象物へ循環させるバイパス流路と、前記回収流路に設けられた循環ポンプと、前記回収流路において前記循環ポンプの上流側に設けられ、前記流体を貯蔵するタンクと、前記タンクに貯蔵された流体が一定量に到達したことを検出する前記液面センサとを備え、前記温調対象物として半導体製造装置に装備された部材の温度を制御する温度制御システムへの温調流体供給方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納するコンピュータで読み取り可能な記憶媒体であって、
前記温調流体供給方法は、
前記第1の可変バルブと前記第3の可変バルブとを所定の弁開度で開き、前記第1の流体を所定時間供給する第1の流体供給ステップと、
前記第1の流体供給ステップの後、前記第2の可変バルブと前記第3の可変バルブとを所定の弁開度で開き、前記第2の流体を所定時間供給する第2の流体供給ステップと、
第2の流体供給ステップの後、前記タンクにおいて前記流体が前記一定量に到達したことを前記液面センサが検出している状態で前記循環ポンプを起動させる起動ステップと、を有することを特徴とするコンピュータで読み取り可能な記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。ここでは、本発明に係る温調流体供給方法を、半導体製造装置の一例であるRIE型のプラズマ処理装置と温度制御システムとからなるシステムに適用して説明することとする。
【0019】
図1は、プラズマ処理装置100と温度制御システム1の全体構成を示す図である。
【0020】
プラズマ処理装置100は、RIE型のプラズマ処理装置であり、アルミニウム又はステンレス鋼等の金属製の円筒型の処理容器10(チャンバ)を備えている。なお、処理容器10は接地されている。処理容器10の内部には、半導体ウエハW(以下「ウエハW」と記す)を載置するための載置台11が配置されている。載置台11は、例えば、アルミニウムからなり、絶縁性の筒状保持部(不図示)を介して処理容器10の底部から垂直に上方に延びる筒状支持部16に支持されている。
【0021】
載置台11上の上面には、ウエハWを静電吸着力で保持する静電チャック12が配置されている。静電チャック12は、直流電圧が印加されることによりクーロン力でウエハWを吸着保持する。本実施の形態では、静電チャック12を温度制御システム1による温調対象物とし、静電チャック12を温度制御することによってウエハWの温度を制御する。載置台11の内部には、温度制御システム1から供給される温調流体を循環させるための流路である調温部70が設けられている。
【0022】
処理容器10の底壁には、側壁と筒状支持部16との間において、排気路20が形成されている。排気路20は、真空ポンプ等の排気装置(不図示)に接続され、排気装置を用いて処理容器10内の処理空間を所定の圧力(真空度)まで減圧する。処理容器10の側壁にはウエハWの搬入出口が形成されており、この搬入出口はゲートバルブ30により開閉自在となっている。
【0023】
載置台11には、プラズマ生成用の高周波電源32が整合器34を介して接続されている。高周波電源32は、例えば、60MHzの高周波電力を載置台11に印加する。こうして、載置台11は下部電極としても機能する。なお、処理容器10の天井部には、後述するシャワーヘッド38が設けられており、シャワーヘッド38が上部電極として用いられる。したがって、高周波電源32により印加される高周波電圧は、載置台11とシャワーヘッド38との間に容量的に印加される。
【0024】
処理容器10の天井部に配置されたシャワーヘッド38は、多数のガス通気孔36aを有する電極板36と、電極板36を着脱可能に支持する電極支持体37とを備える。電極支持体37の内部にはバッファ室35が設けられている。バッファ室35のガス導入口35aには、処理容器10内に所定のガスを供給する供給ガス供給源40がガス供給配管42を介して接続されている。
【0025】
処理容器10の周囲には、環状又は同心状に延在する磁石45が配置されている。処理容器10内において、シャワーヘッド38と載置台11との間のプラズマ生成空間には、高周波電源32により鉛直方向の高周波電界(RF電界)が形成され、これにより、シャワーヘッド38から供給されるガスによる高密度プラズマが静電チャック12の表面近傍に生成される。こうして生成させたプラズマの作用により、所定温度に制御されたウエハWに対してエッチング処理が施される。
【0026】
温度制御システム1は、概略、2つの温調ユニットのそれぞれから温度の異なる温調流体の供給を受け、その際に、各温調流体の供給量を調節することによって所望温度の温調流体を生成し、生成させた所望温度の温調流体を載置台11に設けられた調温部70に供給する。その際、温度制御システム1は、調温部70を流れた温調流体の一部又は全部を調温部70に循環供給し、また、調温部70を流れた温調流体の一部又は全部を各温調ユニットに戻すことができる構成となっている。以下、温度制御システム1の詳細な構成について説明する。
【0027】
温度制御システム1には、温調流体として用いられる所定の液体を第1の温度(例えば、10℃)に調整して温度制御システム1へ供給する低温温調ユニット74と、所定の液体を第2の温度(例えば、90℃)に調整して温度制御システム1へ供給す高温温調ユニット75とが接続されている。なお、低温温調ユニット74と高温温調ユニット75とでは、同じ液体が温調流体として用いられる。以下の説明においては、適宜、低温温調ユニット74から温度制御システム1へ供給される温調流体を「低温流体」と称呼し、高温温調ユニット75から温度制御システム1へ供給される温調流体を「高温流体」と称呼することとする。
【0028】
低温温調ユニット74は、低温温調ユニット74内を循環する低温流体及び温度制御システム1から戻された流体を熱交換部により第1の温度に調整し、第1の温度に調整された低温流体を低温タンクに貯蔵し、低温タンクに貯蔵された低温流体をポンプにより温度制御システム1へ送出する(矢印L
1)。温度制御システム1から載置台11に設けられた調温部70へ供給された温調流体は(矢印L
2)、その後、調温部70から温度制御システム1に戻される(矢印L
3)。こうして調温部70から温度制御システム1に戻された流体の一部は、低温循環流路80と配管88を通して低温温調ユニット74に戻される(矢印L
4)。
【0029】
低温流路76を通して低温温調ユニット74から温度制御システム1に供給される低温流体(矢印L
1)の一部は、配管88へと流れ込み(矢印L
5)、温度制御システム1から戻された流体と混合される。これは、温度制御システム1から戻された流体の温度は低温流体の温度よりも高いために、温度制御システム1から戻された流体のみを熱交換により第1の温度にしようとすると、熱交換器の負荷が大きくなってしまうため、温度制御システム1から戻された流体に一定量の低温流体を混ぜることによって熱交換器の負荷を小さくすることを目的としている。なお、配管88に設けられたバルブ85の弁開度の調節により配管圧力が調整されることで、低温温調ユニット74への流体の戻り量を調整することができるようになっている。
【0030】
同様に、高温温調ユニット75は、低温温調ユニット74内を循環する低温流体及び温度制御システム1から戻された流体を熱交換部により第2の温度に調整し、第2の温度に調整された高温流体を高温タンクに貯蔵し、高温タンクに貯蔵された高温流体をポンプにより温度制御システム1へ送出する(矢印L
11)。調温部70から温度制御システム1に戻された温調流体の一部は、高温循環流路81と配管89を通して高温温調ユニット75に戻される(矢印L
12)。
【0031】
高温流路77を通して高温温調ユニット75から温度制御システム1に供給される高温流体(L
11)の一部は、配管89へ流れ込み(矢印L
12)、温度制御システム1から戻された流体と混合される(矢印L
13)。これは、温度制御システム1から戻された流体の温度は高温流体の温度よりも低いために、温度制御システム1から戻された流体のみを熱交換により第2の温度にしようとすると、熱交換器の負荷が大きくなってしまうため、温度制御システム1から戻された流体に一定量の高温流体を混ぜることによって熱交換器の負荷を小さくすることを目的としている。なお、配管89に設けられたバルブ86の弁開度の調節により配管圧力が調整されることで、高温温調ユニット75への流体の戻り量を調整することができるようになっている。
【0032】
なお、低温温調ユニット74の低温タンクと高温温調ユニット75の高温タンクとは、各タンクの液面の高さがほぼ同じとなるように、液面調整用配管65によって接続されている。また、低温温調ユニット74及び高温温調ユニット75には、必要な温調精度を得るために必要とされる量の低温流体と高温流体とを調製し、貯蔵することができるものが用いられる。
【0033】
温度制御システム1は、可変バルブ79a,79b,79cを有するバルブユニット79を備える。低温流路76は可変バルブ79aに接続され、高温流路77は可変バルブ79cに接続されている。温度制御システム1は、調温部70から温度制御システム1へ戻された流体の一部を調温部70へ供給するためのバイパス流路73を備えており、バイパス流路73は可変バルブ79bに接続されている。以下、バイパス流路73を流れる流体を「循環流体」と称呼する。
【0034】
可変バルブ79a,79b,79cを通って調温部70へと送出される低温流体、循環流体、高温流体は、バルブユニット79の下流に設けられた合流部PAに到達し、その後、結合流路71を通して調温部70へ供給される(矢印L
2)。なお、バルブユニット79は、温度制御対象である静電チャック12の近傍に配置されており、これにより温度制御の応答性を高めることができる。
【0035】
ここで、バルブユニット79の構造について説明する。
図2は、バルブユニット79の概略構造を示す断面図である。ここでは、3つの状態を例示することとする。すなわち、
図2(a)は、可変バルブ79aの弁開度Vaが100%の状態を示しており、
図2(b)は、可変バルブ79aの弁開度Vaが50%、可変バルブ79bの弁開度Vbが50%の状態を示しており、
図2(c)は、可変バルブ79bの弁開度Vbが100%の状態を示している。
【0036】
図3は、可変バルブ79a,79b,79cのそれぞれの弁開度Va,Vb,Vcの関係を示す図である。横軸はバルブユニット79の基本操作量MBの範囲を最小〜ゼロ〜最大で示しており、縦軸は弁開度を全閉〜全開で示している。
【0037】
バルブユニット79は、低温流体、循環流体及び高温流体のそれぞれの流入口と流出口とを有する円筒状のシリンダ52内に、軸系の異なる細部と太部とが交互に形成されたスプール51が挿入され、細部周り(隣接する太部の間の空間)が流体流路となった構造を有する。
【0038】
可変バルブ79aの弁開度Vaが全開となり、可変バルブ79b,79cの弁開度Va,Vbが全閉となる
図2(a)の状態は、
図3において基本操作量MBが最小のときに対応する。この状態では、低温流体の流入口と流出口は開いているために低温流体はバルブユニット79を通過することができるが、高温流体と循環流体のそれぞれの流入口はスプール51の太部によって塞がれているため、高温流体と循環流体は流路に流入することができない。
【0039】
図2(a)の状態から、スプール51を矢印G方向に徐々に移動させると、
図2(b)に示されるように、低温流体の流入口が徐々にスプール51の太部によって閉塞されていく一方で、循環流体の流入口を閉塞していた太部が循環流体の流入口から待避することにより、徐々に循環流体の流入口が開かれていく。これは、
図3において基本操作量MBを最小からゼロへ向けて変える操作に相当する。
【0040】
即ち、基本操作量MBを最小からゼロへ向けて大きくすると、可変バルブ79aの弁開度Vaが単調減少する一方で可変バルブ79bの弁開度Vbが単調増加する。こうして、基本操作量MBが最小より大きくゼロ未満である場合、低温流体と循環流体の混合流体が調温部70へ供給されることになる。その間、可変バルブ79cの弁開度Vcは全閉の状態に維持される。そして、基本操作量MBがゼロとなる
図2(c)の状態では、可変バルブ79a,79cの弁開度Va,Vcは全閉となり、可変バルブ79bの弁開度Vbは全開となる。よって、循環流体のみがバルブユニット79を通過することができる。
【0041】
図2(c)の状態からスプール51を更に矢印G方向に徐々に移動させると、不図示であるが、高温流体の流入口を閉塞していたスプール51の太部が高温流体の流入口から待避することにより徐々に高温流体の流入口が開かれていく。このとき、高温流体の流出口は既に開かれているので、高温流体がバルブユニット79を通過するようになる。これと同時に、循環流体の流出口がスプール51の太部によって閉塞されていくため、循環流体は、その流入口からバルブユニット79の内部に流入することはできても、流出することができなくなる。これは、
図3において基本操作量MBをゼロから最大へ向けて変えることに相当する。
【0042】
即ち、基本操作量MBをゼロから最大へ向けて大きくすると、可変バルブ79bの弁開度Vbが単調減少する一方で可変バルブ79cの弁開度Vcが単調増加し、可変バルブ79aの弁開度Vaは全閉の状態が維持されることで、循環流体と高温流体の混合流体が調温部70へ供給されることになる。基本操作量MBが最大になると、可変バルブ79a,79bの弁開度Va,Vbは全閉となり、可変バルブ79cの弁開度Vcは全開となり、高温流体のみがバルブユニット79を通過することができる。
【0043】
このように、温度制御システム1では、低温流体と高温流体とが同時にバルブユニット79を流れて調温部70へ供給されることはなく、基本操作量MBが最小から最大に向かうにしたがって、調温部70へ供給される流体の温度が低温から高温へと変化するようになっている。
【0044】
低温流路76、バイパス流路73、高温流路77にはそれぞれ、可変バルブ79c,79b,79aの近傍において、圧力計P1,P2,P3が設けられている。これらの圧力計P1,P2,P3により検出される配管内圧力(流体圧力)は、後述する装置制御部94による流量制御に用いられる。
【0045】
温度制御システム1は、調温部70へ供給された流体を回収流路72を通して回収し、一定量の流体を貯蔵するタンク78を備える。タンク78には、流体の貯蔵量を検出するセンサの一例として液面センサ78aが設けられており、液面センサ78aは、タンク78内の水位が一定高さよりも低い場合にはOFF信号を、タンク78内の水位が一定高さ以上の場合にON信号を装置制御部94へ送信する。
【0046】
タンク78の下流には、タンク78に貯蔵された流体を更に下流(バイパス流路73、低温循環流路80及び高温循環流路81)へと送出するための循環ポンプ87が設けられている。循環ポンプ87の下流には、流量センサFと圧力計P4とが設けられている。流量センサFと圧力計P4によりそれぞれ検出される流体流量及び流体圧力は、装置制御部94による流量制御に用いられる。
【0047】
温度制御システム1では、流量センサFの下流に設けられた分岐部PBによって、回収流路72を流れる流体は、バイパス流路73、低温循環流路80及び高温循環流路81へ分岐される。このとき、どの流路にどの程度の流体が流れるかは、各流路に掛かる圧力関係に依存する。バイパス流路73、低温循環流路80及び高温循環流路81にはそれぞれ、流体の逆流を防止するための逆止弁82,83,84が設けられている。
【0048】
前述の通り、分岐部PBから低温循環流路80へ送出された流体は、配管88を通して低温温調ユニット74に戻され、分岐部PBから高温循環流路81へ送出された流体は、配管89を通して高温温調ユニット75に戻される。また、分岐部PBからバイパス流路73へ送出された流体(循環流体)は、バルブユニット79の可変バルブ79bを通して、合流部PAへ導かれる。
【0049】
本実施の形態では、プラズマ処理装置100と温度制御システム1の動作制御は、制御装置(コンピュータ)90によって行われる。ここでは、プラズマ処理装置100の動作制御についての説明は、静電チャック12の温度制御に関する部分を除いて、省略することとする。
【0050】
制御装置90は、大略的に、温度制御部92、装置制御部94及び記憶部96を有する。記憶部96は、プラズマ処理装置100と温度制御システム1の動作制御を行うための種々のレシピ(プログラム、パラメータ等)を格納しており、また、プラズマ処理装置100と温度制御システム1において検出される各種の情報をデータとして記憶する。装置制御部94は、プラズマ処理装置100と温度制御システム1を統括的に制御する。
【0051】
温度制御部92は、静電チャック12の温度を制御するために、静電チャック12の温度を検出する温度センサT1の検出温度Ttと、調温部70に供給される流体の温度を検出する温度センサT2による検出温度Tdとに基づいて、調温部70に供給される流体流量及び流体温度を制御する。その際に、温度制御部92は、調温部70に供給される流体流量が一定となるように、圧力計P1〜P3の検出値に基づいて可変バルブ79a、79b、79cの弁開度Va,Vb,Vcを制御し、更に、流量センサFによる検出流量と圧力計P4の検出値に基づいて循環ポンプ87の駆動(例えば、インバータの回転速度数)を制御する。
【0052】
また、温度制御部92は、液面センサ78aの検出信号に基づいて、循環ポンプ87の駆動のON/OFFを制御する。即ち、タンク78内に流体がない状態で循環ポンプ87を駆動(空運転)させてしまうと循環ポンプ87が故障する危険性が高くなるため、液面センサ78aからOFF信号が出されているときには、循環ポンプ87は駆動されないように制御される。
【0053】
なお、温度制御部92及び装置制御部94の機能は、制御装置90が備えるCPU(不図示)が、記憶部96に格納されたプログラムをRAM(不図示)の作業エリアに展開し、実行することにより実現される。
【0054】
以上に説明したように、本実施の形態に係る温度制御システム1では、ヒータを使わずに低温流体、高温流体及び循環流体を用いて所望温度の流体を調整し、調温部70へ供給することにより、静電チャック12の温度制御を実現する。その際、低温温調ユニット74及び高温温調ユニット75のそれぞれにタンクを設け、そこから所定量の流体を供給する構成となっているため、流体を枯渇させることなく連続して供給することができ、これにより、高速で安定した温度制御が可能になる。
【0055】
プラズマ処理装置100に、温度制御システム1、低温温調ユニット74及び高温温調ユニット75を取り付ける組立作業の終了直後は、プラズマ処理装置100及び温度制御システム1において流体が流れる配管内には流体が充填されておらず、タンク78内にも流体は貯蔵されていない。プラズマ処理装置100及び温度制御システム1の電源をONにしたときに、配管内に流体が充填されていないにもかかわらず循環ポンプ87を起動してしまうと、循環ポンプ87が空運転により故障してしまう。そのため、上述の通り、液面センサ78aの検出信号に基づいて循環ポンプ87の起動は制限されている。
【0056】
そこで、プラズマ処理装置100に対する温度制御システム1の組立作業後に温度制御システム1を支障なく稼働させるために、先ず、プラズマ処理装置100と温度制御システム1の配管内に流体を充填させる。以下、この流体充填処理(流体充填シーケンス)について詳細に説明する。
【0057】
図4は、プラズマ処理装置100と温度制御システム1の配管内に流体を充填させる処理の概要を示すフローチャートである。
図4のフローチャートに示される一連の処理は、制御装置90が備えるCPUが、流体充填シーケンスを実行させるためのプログラムを記憶部96から読み出してRAMの作業領域に展開し、実行し、温度制御システム1の各部の動作を制御することによって実現される。
【0058】
流体充填シーケンスの実行前に、オペレータにより、プラズマ処理装置100、温度制御システム1、低温温調ユニット74及び高温温調ユニット75の電源がONにされる。このとき、低温温調ユニット74及び高温温調ユニット75の電源がONになっていない場合には、温度制御システム1の電源がONにならない構成としておいてもよいし、温度制御システム1の電源がONになると、低温温調ユニット74及び高温温調ユニット75が稼働しているか否かがチェックされ、稼働していなければ警報が出される構成としておいてもよい。
【0059】
温度制御システム1の電源がONされると、温度制御部92は、液面センサ78aの検出信号をチェックする。ここでは、液面センサ78aからはOFF信号が発せられているため、温度制御部92は、配管への流体充填シーケンスを起動する(流体充填シーケンス開始)。なお、流体充填シーケンスの開始時には、低温温調ユニット74及び高温温調ユニット75が稼働しているため、
図1に示す矢印L
1→L
5→L
4で示される配管内には低温流体が充填された状態となっており、また、矢印L
11→L
13→L
12で示される配管内には高温流体が充填された状態となっている。
【0060】
流体充填シーケンスが開始されると、先ず、温度制御部92は、可変バルブ79a,79bの弁開度Va,Vbをそれぞれ50%に設定する(ステップS101)。これにより、低温温調ユニット74から低温流体が、
図1に示す矢印L
1→可変バルブ79a→L
2→L
3→タンク78の順に流れることによって、これらの流路に低温流体が充填される。
【0061】
ここで、タンク78内に一定量の流体が貯蔵された状態になると、液面センサ78aがON信号を発信し、且つ、タンク78から下流側へと流体が流れ出るようになっているものとする。その場合、液面センサ78aの検出信号がOFF信号からON信号に変わった時点では、タンク78の下流側へは低温流体は殆ど流れていないために、液面センサ78aの検出信号がON信号に変わってから、所定時間(例えば、30秒)、低温流体の温度制御システム1への供給を続ける。
【0062】
これにより、低温流体は、停止状態にある循環ポンプ87を通って分岐部PBに到達し、その一部がバイパス流路73へと流れ込むことにより、分岐部PBからバイパス流路73及び可変バルブ79bを介して合流部PAに至る流路が低温流体で充填されることになる。また、分岐部PBに到達した低温流体の一部は、低温循環流路80を通して低温温調ユニット74に戻されることで、低温循環流路80にも流体が充填される。
【0063】
なお、ステップS101において低温流体を配管内へ充填するための駆動力は、低温温調ユニット74が備えるポンプによって与えられる。また、ステップS101では、高温温調ユニット75が稼働しており、高温流体が高温流路77と配管89とを循環しているために、分岐部PBに到達した低温流体は、高温循環流路81に掛かる圧力との関係で、高温循環流路81へは殆ど流れ込むことはない。
【0064】
次に、温度制御部92は、液面センサ78aから検出信号がON信号に変わってから所定時間(例えば、30秒)が経過したか否かを判定し(ステップS102)、所定時間が経過するまで待機する(S102でNO)。所定時間が経過すると(S102でYES)、温度制御部92は、可変バルブ79b,79cの弁開度Vb,Vcをそれぞれ50%に切り替える(ステップS103)。
【0065】
ステップS103により、高温温調ユニット75から高温流体が、
図1に示す矢印L
11→可変バルブ79c→L
2→L
3→タンク78の順に流れる。タンク78には既に低温流体が貯蔵されているので、高温流体はタンク78内で低温流体と混ざり、タンク78から下流へと流体が流れ出て分岐部PBに到達し、一部はバイパス流路73へと流れ込み、一部は高温循環流路81を通して高温温調ユニット75に戻される。なお、ステップS103において流体(高温流体、タンク78において生成する低温流体と高温流体の混合流体)配管内へ充填するための駆動力は、高温温調ユニット75が備えるポンプによって与えられる。
【0066】
ステップS103の終了は、処理時間で判定する。すなわち、ステップS103が開始されると、温度制御部92は、予め定められた処理時間(例えば、30秒)が経過したか否かを判定し(ステップS104)、処理時間が経過するまで待機する(S104でNO)。処理時間が経過すると(S104でYES)、温度制御部92は、液面センサ78aがONになっていること確認し(ステップS105)、液面センサ78aがONになっていない場合には、処理をステップS104に戻す。なお、不図示であるが、ステップS105の判定が最初に「NO」となってから一定時間が経過しても液面センサ78aからの検出信号がON信号に変わらない場合には、警報によりオペレータに注意を促すようにしてもよい。
【0067】
温度制御部92は、液面センサ78aがONであることを確認すると(S105でYES)、循環ポンプ87を起動する(ステップS106)。このとき、ステップS105までの処理によって循環ポンプ87内には流体が充填されており、また、タンク78に十分な流体が貯蔵されているので、循環ポンプ87が空運転により破損することはない。
【0068】
その後、温度制御部92は、可変バルブ79aの弁開度を100%に設定して低温流体を流し(ステップS107)、予め定められた時間(例えば、30秒)が経過すると、可変バルブ79cの弁開度を100%に設定して高温流体を流し(ステップS108)、予め定められた時間(例えば、30秒)が経過すると、ステップS107,S108の処理をそれぞれ所定回数(例えば、2回)行ったか否かを判定する(ステップS109)。
【0069】
温度制御部92は、ステップS107,S108の処理をそれぞれ所定回数だけ行っていない場合(S109でNO)、処理をステップS107に戻し、所定回数の処理が終了すると(S109でYES)、流体充填シーケンスを終了する。こうして、温度制御システム1の配管内からのエアー排除と流体充填が完了すると、温度制御部92は、静電チャック12の温度制御が正常に行われるか否かを確認するためのテスト運転を開始する。
【0070】
上記の流体充填シーケンスでは、ステップS107,S108を実行したが、ステップS101,S103において、循環ポンプ87の駆動に支障のないレベルにまで流体充填が可能な条件が設定された場合には、ステップS104の終了をもって、流体充填シーケンスの終了とすることができる。また、上記の流体充填シーケンスでは、温度制御システム1に低温流体を供給した後に高温流体を供給したが、先に高温流体を供給し、続いて,低温流体を供給するようにしてもよい。
【0071】
更に、上記の流体シーケンスにおけるステップS101,S103,S107,S108では、処理時間を30秒としたが、これに限定されるものではない。例えば、低温温調ユニット74と高温温調ユニット75がそれぞれ備えるポンプの能力に応じて、処理時間を適切に設定することが好ましい。そして、ステップS107,108の処理回数を2回としたが、温度制御システム1の配管からエアーを抜いて流体を充填することができる限りにおいて、1回としてもよく、逆に、3回以上行ってもよい。更に、ステップS101,S103での弁開度も、上記の50%ずつに限定されるものではない。例えば、ステップS107,108の実行を考慮して、ステップS101,S103では、循環流体の流量を制御する可変バルブ79bの弁開度を、他よりも大きくする等してもよい。
【0072】
上記の流体充填シーケンスでは、循環流体が流れる可変バルブ79bの弁開度を100%とする処理は行っていない。これは、ステップS101,S103の2ステップにおいてバイパス流路73に流体を流しており、仮に、分岐部PBからバイパス流路73を介して合流部PAに至る流路にエアーが残っていても、そのエアーによってタンク78から循環ポンプ87への流体の供給が長時間にわたって完全に途切れてしまうことはなく、よって、循環ポンプ87が故障する事態には至らないからである。但し、例えば、ステップS109の終了後からテスト運転開始までの間、可変バルブ79bの弁開度を100%に設定してバイパス流路73に流体を流すことにより、分岐部PBからバイパス流路73を介して合流部PAに至る流路のエアー抜きと流体充填とを促進するようにしてもよい。
【0073】
上記の流体充填シーケンスでは、タンク78内に一定量の流体が貯蔵された状態になると、液面センサ78aがONになり、且つ、タンク78から下流側へと流体が流れ出るものとした。そのため、ステップS101では、タンク78の下流に低温流体を流すために、液面センサ78aの検出信号がONになってから所定時間が経過した後に、バルブユニット79の切り替え操作(S103)を行った。これに対して、液面センサ78aの検出信号がONになると、所定時間の経過を待つことなく直ちに、バルブユニット79の切り替え操作(S103)を行うようにしてもよい。
【0074】
これは、次の理由による。即ち、温度制御システム1への高温流体の供給を開始したときには、必ず、タンク78には一定量の低温流体が貯蔵されているために、高温流体がタンク78へ流入すると同時にタンクから高温流体と低温流体とが混合された流体がタンク78の下流に向かって流れ出す。これにより、循環ポンプ87に流体が充填され、また、バイパス流路73と可変バルブ79bとを介して、分岐部PBから合流部PAまでの流路が流体により充填される。一方、低温循環流路80にはステップS107での処理によって流体が充填されることになるが、低温循環流路80にエアーが残っていても、そのエアーは低温温調ユニット74の低温タンクへ送り出されるため、循環ポンプ87まで送られてくることはなく、よって、循環ポンプ87の故障の原因となることはない。
【0075】
更に、タンク78から流体が流出を開始する貯蔵量よりも多い所定の貯蔵量まで流体が貯蔵されたときに液面センサ78aがONする構成としてもよい。この場合、液面センサ78aからの検出信号がON信号に変わった時点で既に一定量の流体がタンク78の下流に向かって流れているため、液面センサ78aがONすると、所定時間の経過を待つことなく直ちに、バルブユニット79の切り替え操作(S103)を行うようにすることができる。
【0076】
以上に説明したように、上記の温度制御システム1への流体充填シーケンスによれば、循環ポンプ87に十分に流体が供給された後に、循環ポンプ87の駆動が開始されるために、空運転されることによる破損(故障)の発生を回避することができる。
【0077】
上述した流体充填シーケンスが完了すると、温度制御部92は、温度制御システム1が正常に作動するか否かを確認するための温度制御テスト運転を行う。但し、この温度制御テスト運転は必須のものではなく、流体充填シーケンスの完了後、直ちにウエハWの処理レシピに従って静電チャック12の温度制御を開始してもよい。
【0078】
温度制御テスト運転では、温度制御部92は、静電チャック12の目標温度を設定し、目標温度に到達するように、温度センサT1,T2及び圧力センサP1,P2,P3をモニターしながら、可変バルブ79a,79b,79cの開閉をフィードバック制御する。このとき、例えば、可変バルブ79a,79b,79cの弁開度にかかわらず一定量の流体が調温部70へ供給されるように、圧力計P1〜P3の圧力値を同じとするためにバルブ85,86の弁開度が調節されると共に、低温温調ユニット74と高温温調ユニット75のそれぞれのポンプの駆動制御(例えば、インバータの回転速度制御)が行われる。
【0079】
温度制御部92は、静電チャック12を昇温させたいときは、高温流路77の可変バルブ79cの弁開度Vcを大きくして主に高温流体を調温部70へ流入させ、降温させたいときには、低温流路76の可変バルブ79aの弁開度Vaを大きくして主に低温流体を調温部70へ流入させる。結合流路71に流れる流体の温度を下げる。そして、設定温度と実際の静電チャック12の温度(温度センサT1の検出温度)との差が大きく変化しないときには、温度制御部92は、バイパス流路73に流体を流しつつ、低温温調ユニット74と高温温調ユニット75の各タンクから供給される低温流体及び高温流体の流量を少なくすることで、エネルギー効率よく静電チャック12の温度を制御する。
【0080】
温度制御システム1が正常に作動することが確認されると、ウエハWの処理レシピに従って、静電チャック12の温度制御が開始される。
【0081】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、半導体製造装置が備える静電チャックに限定されず、上部電極やデポシールド又は処理容器の温度制御に上記温度制御システムが適用された場合に、本発明に係る温調流体供給方法を用いることができる。また、エッチングプロセスを実行するプラズマ処理装置に限られず、アッシングプロセスやスパッタリングプロセス等を実行するプラズマ処理装置に上記温度制御システムが適用された場合にも、本発明に係る温調流体供給方法を用いることができる。更に、平行平板型のエッチング処理装置に限定されず、円筒状のRLSA(Radial Line Slot Antenna)半導体製造装置、ICP(Inductively Coupled Plasma)半導体製造装置、マイクロ波半導体製造装置等に上記温度制御システムが適用された場合に、本発明に係る温調流体供給方法を用いることができる。
【0082】
本発明の目的は、上述した実施の形態の機能を実現するソフトウエアのプログラムを記録した記憶媒体を、コンピュータ(制御装置)等に供給し、コンピュータのCPUが記憶媒体に格納されたプログラムを読み出して実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラム自体が上述した実施の形態の機能を実現することになり、プログラム及びそのプログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0083】
また、プログラムを供給するための記憶媒体としては、例えば、RAM、NV−RAM、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD(DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW)等の光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、他のROM等の上記プログラムを記憶できるものであればよい。或いは、上記プログラムは、インターネット、商用ネットワーク、若しくはローカルエリアネットワーク等に接続される不図示の他のコンピュータやデータベース等からダウンロードすることによりコンピュータに供給され
てもよい。
【0084】
また、コンピュータのCPUが読み出したプログラムを実行することにより、上記各実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、CPU上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。更に、記憶媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。上記プログラムの形態は、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給されるスクリプトデータ等の形態から成ってもよい。