(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カバー部材の前記下面の内周縁は、前記基板保持部に保持された基板の外周端よりも内側に位置し、前記カバー部材の前記下面の外周縁は、前記基板保持部に保持された基板の外周縁よりも外側に位置する、請求項1または2記載の基板処理装置。
前記カップ体は、前記カバー部材の下部が挿入される上部開口部を有しており、前記カップ体の前記上部開口部を形成する壁体に、下方に延びる返し部が設けられている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による基板処理装置の一実施形態として、半導体装置が形成される円形の基板であるウエハWの表に薬液であるHF(Hydro Fluoric acid)溶液を供給し、当該ウエハWの周縁部に形成された不要な膜を除去する液処理装置について説明する。
【0012】
図1及び
図2に示すように、液処理装置1は、ウエハWを水平姿勢で鉛直軸周りに回転可能に保持するウエハ保持部3と、ウエハ保持部3に保持されたウエハWの周囲を囲みウエハWから飛散した処理液を受けるカップ体2と、ウエハ保持部3に保持されたウエハWの上面の周縁部を覆うリング状のカバー部材5と、カバー部材5を昇降させる昇降機構(移動機構)6と、ウエハ保持部3に保持されたウエハWに処理流体を供給する処理流体供給部7と、を備えている。
【0013】
上述した液処理装置の構成部材である、カップ体2、ウエハ保持部3、カバー部材5などは1つのハウジング11内に収容されている。ハウジング11の天井部付近には外部から清浄空気を取り込む清浄空気導入ユニット14が設けられている。また、ハウジング11の床面近傍にはハウジング11内の雰囲気を排気する排気口15が設けられている。これにより、ハウジング11内にハウジング11の上部から下部に向けて流れる清浄空気のダウンフローが形成される。ハウジング11の一つの側壁には、シャッター12により開閉される搬入出口13が設けられている。ハウジング11の外部に設けられた図示しないウエハ搬送機構の搬送アームが、ウエハWを保持した状態で、搬入出口13を通過することができる。
【0014】
ウエハ保持部3は、円板形状のバキュームチャックとして構成されており、その上面がウエハ吸着面31となっている。ウエハ吸着面31の中央部には吸引口32が開口している。ウエハ保持部3の下面中央部には、中空円筒形状の回転軸44が鉛直方向に延びている。回転軸44の内部空間には、吸引口32に接続された吸引管路(図示せず)が通っている。この吸引管路は、ハウジング11の外側において、真空ポンプ42に接続されている。真空ポンプ42を駆動することにより、ウエハ保持部3によりウエハWを吸着することができる。
【0015】
回転軸44は、軸受け451を内蔵した軸受ケーシング45に支持されており、軸受ケーシング45は、ハウジング11の床面に支持されている。回転軸44は、回転軸44上の被動プーリー461、駆動モータ463の回転軸上の駆動プーリー462、被動プーリー461及び駆動プーリー462間に掛け渡された駆動ベルト464からなる回転駆動機構46により、所望の速度で回転させることができる。
【0016】
図3に示すように、カップ体2は、ウエハ保持部3の外周を取り囲むように設けられた、有底円環形状の部材である。カップ体2は、ウエハWに供給された後にウエハWの外方に飛散する薬液を受け止めて回収し、外部に排出する役割を有する。
【0017】
ウエハ保持部3により保持されたウエハWの下面と、このウエハWの下面に対向するカップ体2の内周側部分21の上面211との間には、比較的小さな(例えば2〜3mm程度の高さの)隙間が形成される。ウエハWに対向する上面211には、2つのガス吐出口212、213が開口している。これら2つのガス吐出口212、213は、同心の大径の円周および小径の円周に沿ってそれぞれ連続的に延びており、半径方向外向きに、かつ、斜め上方向に、ウエハWの下面に向けてホットN
2ガス(加熱された窒素ガス)を吐出する。
【0018】
カップ体2の内周側部分21内に形成された1つまたは複数の(図では1つのみ示す)ガス導入ライン214から円環状のガス拡散空間215にN
2ガスが供給され、N
2ガスはガス拡散空間215内を円周方向に拡がりながら流れ、ガス吐出口212、213から吐出される。ガス拡散空間215に隣接してヒーター216が設けられており、N
2ガスはガス拡散空間215内を流れているときに加熱され、その後、ガス吐出口212、213から吐出される。半径方向外側にあるガス吐出口213から吐出されるN
2ガスは、ウエハWの被処理部位であるウエハWの周縁部を加熱することにより、薬液による反応を促進し、また、ウエハWの表面(上面)に向けて吐出された後に飛散する処理液のミストがウエハの裏面(下面)に周り込むことを防止する。半径方向内側にあるガス吐出口212から吐出されるN
2ガスは、ガス吐出口212が無い場合にウエハWの周縁部のみが温められること並びにウエハW中心側においてウエハWの下面近傍に負圧が生じることに起因して生じ得るウエハWの歪みを防止する。
【0019】
カップ体2の外周側部分24には、上部が開放した2本の円環状の凹部241,242がカップ体2の周方向に沿って形成されている。凹部241,242の間は、円環状の分離壁243により仕切られている。外側の凹部241の底部に排液路244が接続されている。また内側の凹部242の底部には排気口247が設けられており、この排気口247に排気路245が接続されている。排気路245には、エジェクタあるいは真空ポンプ等の排気装置246が接続されており、この液処理装置1の動作中には、排気路245を介してカップ体2の内部空間が常時吸引され、内側の凹部242内の圧力がカップ体2外部のハウジング11内の圧力よりも低く維持されている。
【0020】
カップ体2の内周側部分21の外周部(ウエハWの周縁の下方の位置)から半径方向外側に向けて環状の案内板25が延びている。案内板25は半径方向外側にゆくにしたがって低くなるように傾斜している。案内板25は内側の凹部242の全体および外側の凹部241の内周側部分の上方を覆い、かつ、案内板25の先端部251(半径方向外側周縁部)は、下方に向けて屈曲して外側の凹部241内に突入している。
【0021】
また、カップ体2の外周側部分24の外周部には、外側の凹部241の外側の壁面と連続する外周壁26が設けられている。外周壁26は、その内周面により、ウエハWから外方に飛散する流体(液滴、ガスおよびこれらの混合物など)を受け止め、外側の凹部241に向けて案内する。外周壁26は、水平面に対して25〜30度の角度を成して半径方向外側に向かうほど低くなるように傾斜する内側の流体受け面261と、流体受け面261の上端部から下方に延びる返し部262を有している。図示例では、傾斜面として形成された流体受け面261に水平面263を介して返し部262が接続されているが、水平面263を設ける代わりに湾曲面を設けてもよいし、水平面263を設けることなく流体受け面261の上端部に直接返し部262を接続してもよい。案内板25の上面252と流体受け面261との間に、ガス(空気、N
2ガス等)とウエハWから飛散した液滴とが流れる排気流路27が形成される。なお、返し部262の内周面によりカップ体2の上部開口が画定されるが、この上部開口の開口径はウエハWの直径よりもやや大きい。
【0022】
排気流路27を通って外側の凹部241に流入したガスおよび液滴の混合流体は、案内板25と分離壁243との間を流れて内側の凹部242に流入する。案内板25と分離壁243との間を通過するときに、混合流体の流れ方向が急激に転向され、混合流体に含まれる液体(液滴)は、案内板25の先端部251または分離壁243に衝突して、流体から分離され、案内板25の下面あるいは分離壁243の表面を伝わって外側の凹部241に流入し、排液路244から排出される。液滴が取り除かれて内側の凹部242に流入した流体は排気路245から排出される。
【0023】
カバー部材5は、処理が実行されるときに、ウエハ保持部3に保持されたウエハWの上面周縁部と対向するように配置されるリング形状の部材である。カバー部材5は、後に詳述するように、ウエハWの上面周縁部の近傍を流れてカップ体2内に引き込まれる気体を整流するとともに気体の流速を増大させ、ウエハWの上面にウエハWから飛散した処理液がウエハWに再度付着することを防止する。
【0024】
図3に示すように、カバー部材5は、内周面51と、ウエハWに対向する水平な下面52とを有している。内周面51は、鉛直方向に延びる上側面部分511と、ウエハWに近づくに従って半径方向外側に向かうように傾斜する下側面部分512とを有している。下側面部分512とウエハWの上面との間に、鉛直方向の隙間Gが形成されている。カバー部材5の外周縁521はウエハWの外周端Weよりも半径方向外側に位置している。また、カバー部材5の下面52の内周縁53はウエハWの周縁部Wpの内周縁Wiよりも半径方向内側に位置している。これにより、隙間Gを通過する気流が、少なくともウエハWの周縁部Wpにおいて、水平にウエハWの外側に向けて流れる。なお、ここで「ウエハWの周縁部Wp」とは、デバイスが形成されていない円環状の領域を意味している。「ウエハWの周縁部Wpの内周縁Wi」とは、ウエハWの中心を中心とするデバイス形成領域の外接円、すなわち、ウエハWの中心を中心とする円であって、当該円より外側にデバイス形成領域が全く含まれないように決定された最小半径を有する円である。ウエハWの周縁部Wpの半径方向幅、すなわちウエハWの外周端WeからウエハWの周縁部Wpの内周縁Wiまでの半径方向距離は、例えば約3mmである。
【0025】
ウエハ保持部3にウエハWが保持され、かつ、カバー部材5が処理位置に位置したときの状態が平面図である
図2に示されている。
図2において、カバー部材5に覆われて隠れているウエハWの外周端(エッジ)Weが一点鎖線で示されている。また、カバー部材5の内周縁は符号5eで示されている。このようにカバー部材5の中央部が開放されていることにより、従来のウエハのほぼ全面を覆う円板形状のカバー部材と比較して、カバー部材の下面とウエハWとの間に形成される流路の流路抵抗が小さくなるため、カップ体2の内部空間を吸引する排気能力が低くても、十分な吸引を行うことができる。また、ウエハWの上面は、周縁部を除くその大部分がカバー部材5に覆われておらず、例えばハウジング11内にカメラを設置することにより、処理中のウエハWの表面を監視することが可能である。また、ハウジング11に透明窓を設けることにより、処理中のウエハWの表面を目視可能とすることもできる。
【0026】
図1及び
図2に示すように、カバー部材5を昇降させる昇降機構6は、カバー部材5を支持する支持体58に取り付けられた複数(本例では4つ)のスライダー61と、各スライダー61を貫通して鉛直方向に延びるガイド支柱62とを有している。各スライダー61には、リニアアクチュエータ例えばシリンダモータ63のロッド631が連結されている。シリンダモータ63を駆動することにより、スライダー61がガイド支柱62に沿って上下動し、これによりカバー部材5を昇降させることができる。カップ体2はカップ昇降機構(詳細は図示せず)の一部を成すリフタ65に支持されており、リフタ65を
図1に示す状態から下降させると、カップ体2が下降し、ウエハ搬送機構の搬送アーム(図示せず)とウエハ保持部3との間でのウエハWの受け渡しが可能となる。
【0027】
次に、
図1、
図2及び
図4を参照して、処理流体供給部7について説明する。特に
図2に明瞭に示すように、処理流体供給部7は、薬液(本例ではHF)を吐出する薬液ノズル71と、リンス液(本例ではDIW(純水))を吐出するリンスノズル72と、乾燥用ガス(本例ではN2ガス)を吐出するガスノズル73とを有している。薬液ノズル71、リンスノズル72およびガスノズル73は共通のノズルホルダ74に取り付けられている。ノズルホルダ74は、カバー部材5を支持する支持体58に取り付けられたリニアアクチュエータ例えばシリンダモータ75のロッド751に取り付けられている。シリンダモータ75を駆動することにより、ノズル71〜73からウエハW上への処理流体の供給位置をウエハW半径方向に移動させることができる。
【0028】
図2及び
図4(a)に示すように、ノズル71〜73は、カバー部材5の内周面に形成された凹所56に収容されている。各ノズル(71〜73)は、
図4(b)において矢印Aで示すように、斜め下方に向けて、かつ、矢印Aで示す吐出方向がウエハの回転方向Rwの成分を持つように処理流体を吐出する。これにより、処理流体が液体である場合に生じうるミスト(処理液がウエハWに衝突することに起因して生じる液滴)の発生を抑制することができる。各ノズル(71〜73)には、
図2に概略的に示す処理流体供給機構711,721,731から上記の処理流体が供給される。各処理流体供給機構711,721,731はそれぞれ、タンク等の処理流体の供給源と、処理流体供給源からノズルに処理流体を供給する管路と、管路に設けられ開閉弁、流量調整弁等の流れ制御デバイスにより構成することができる。
【0029】
また、
図3に示すように、カップ体2の内周側部分21において、ガス吐出口213のさらに外側には、複数の(図では1つだけ表示されている)処理液吐出口22が円周方向に関して異なる位置に形成されている。各処理液吐出口22は、ウエハWの下面周縁部に向けて、ウエハWの外方に向けてかつ斜め上向きに処理液を吐出する。少なくとも1つの処理液吐出口22からは、薬液ノズル71から吐出される薬液と同じ薬液を吐出することができる。また、少なくとも他の一つの処理液吐出口22からは、リンスノズル72から吐出されるリンス液と同じリンス液を吐出することができる。各処理液吐出口22には、
図3に示すように、前述したノズル71〜73と同様の構成を有する処理流体供給機構221が接続されている。
【0030】
図1に概略的に示すように、液処理装置1は、その全体の動作を統括制御するコントローラ(制御部)8を有している。コントローラ8は、液処理装置1の全ての機能部品(例えば、回転駆動機構46、昇降機構6、真空ポンプ42、各種処理流体供給機構等)の動作を制御する。コントローラ8は、ハードウエアとして例えば汎用コンピュータと、ソフトウエアとして当該コンピュータを動作させるためのプログラム(装置制御プログラムおよび処理レシピ等)とにより実現することができる。ソフトウエアは、コンピュータに固定的に設けられたハードディスクドライブ等の記憶媒体に格納されるか、あるいはCD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の着脱可能にコンピュータにセットされる記憶媒体に格納される。このような記憶媒体が
図1において参照符号81で示されている。プロセッサ82は必要に応じて図示しないユーザーインターフェースからの指示等に基づいて所定の処理レシピを記憶媒体81から呼び出して実行させ、これによってコントローラ8制御の下で液処理装置1の各機能部品が動作して所定の処理が行われる。
【0031】
次に、上記コントローラ8の制御の下で行われる液処理装置1の動作について説明する。
【0032】
[ウエハ搬入]
まず、昇降機構6によりカバー部材5を退避位置(
図1より上方の位置)に位置させるとともに、カップ昇降機構のリフタ65によりカップ体2を下降させる。次いで、ハウジング11のシャッター12を開いて図示しない外部のウエハ搬送機構の搬送アーム(図示せず)をハウジング11内に進入させ、搬送アームにより保持されたウエハWをウエハ保持体3の真上に位置させる。次いで、搬送アームをウエハ保持体3の上面より低い位置まで降下させて、ウエハWをウエハ保持体3の上面に載置する。次いで、ウエハ保持体3によりウエハを吸着する。その後、空の搬送アームをハウジング11内から退出させる。次いで、カップ体2を上昇させ
図1に示す位置に戻すとともに、カバー部材5を
図1に示す処理位置まで降下させる。以上の手順により、ウエハの搬入が完了し、
図1に示す状態となる。
【0033】
[薬液処理]
次に、ウエハに対する薬液処理が行われる。ウエハWを所定速度(例えば2000rpm)で回転させ、また、カップ体2のガス吐出口212、213からホットN
2ガスを吐出させて、ウエハW、特に被処理領域であるウエハW周縁部を薬液処理に適した温度(例えば60℃程度)まで加熱する。なお、ウエハWの加熱を必要としない薬液処理を行う場合には、ヒーター216を動作させずに常温のN
2ガスを吐出してもよい。ウエハWが十分に加熱されたら、ウエハWを回転させたままで薬液ノズル71から薬液(HF)をウエハWの上面(デバイス形成面)の周縁部に供給し、ウエハ上面周縁部にある不要な膜を除去する。同時に、薬液用の処理液吐出口22から薬液をウエハWの下面周縁部に供給し、ウエハ下面周縁部にある不要な膜を除去する。ウエハWの上下面に供給された薬液は遠心力により外方に拡がりながら流れ、除去された物質と一緒にウエハWの外方に流出し、カップ体2により回収される。なお、薬液処理を行っている際に、必要に応じてシリンダモータ75を駆動して薬液を吐出している薬液ノズル71をウエハW半径方向に往復移動させることにより、処理の均一性を向上させることができる。
【0034】
[リンス処理]
所定時間薬液処理を行った後、引き続きウエハWの回転およびガス吐出口212、213からのN
2ガスの吐出を継続し、薬液ノズル71および薬液用の処理液吐出口22からの薬液の吐出を停止して、リンスノズル72およびリンス液用の処理液吐出口22からリンス液(DIW)をウエハWの周縁部に供給し、リンス処理を行う。このリンス処理により、ウエハWの上下面に残存する薬液および反応生成物等が洗い流される。
【0035】
[乾燥処理]
所定時間リンス処理を行った後、引き続きウエハWの回転およびガス吐出口212、213からのN
2ガスの吐出を継続し、リンスノズル72およびリンス液用の処理液吐出口22からのリンス液の吐出を停止して、ガスノズル73から乾燥用ガス(N
2ガス)をウエハWの周縁部に供給し、乾燥処理を行う。以上によりウエハWに対する一連の処理が終了する。
【0036】
[ウエハ搬出]
その後、カバー部材5を上昇させて退避位置に位置させるとともにカップ体2を下降させる。次いで、ハウジング11のシャッター12を開いて図示しない外部のウエハ搬送機構の搬送アーム(図示せず)をハウジング11内に進入させ、空の搬送アームをウエハ保持体3に保持されたウエハWの下方に位置させた後に上昇させ、ウエハWの吸着を停止した状態のウエハ保持体3から搬送アームがウエハWを受け取る。その後、ウエハを保持した搬送アームがハウジング11内から退出する。以上により、1枚のウエハに対する液処理装置における一連の手順が終了する。
【0037】
次に、薬液処理時における、ウエハ周縁部近傍の流体の流れ、並びにこの流体の流れに関連するカップ体2及びカバー部材5の構成について、
図3〜
図5を参照して詳細に説明する。
【0038】
カップ体2の内部空間は排気路245を介して吸引されて負圧となっているため、ウエハWの上面の上方にある気体(ハウジング11内でダウンフローを形成する清浄空気)が、隙間Gを介してカップ体2内の排気流路27に引き込まれる。また、ガス吐出口212,213から吐出されたN
2ガスは、ウエハWの回転の影響によりカップ体2の内周側部分21の上面211とウエハWの下面との間の空間から外方に流出し、排気流路27に流入する。このような気体の流れが
図5(b)に示されている。
【0039】
カバー部材5の内周面51の下側面部分512がウエハWに近づくに従って半径方向外側に向かうように傾斜している(すなわち、カバー部材5の内周面51の下部の内径が下方にゆくに従って大きくなるように形成している)ため、内周面51が単一の鉛直面である場合に比較して、気体が隙間Gに円滑に流入し、隙間G内でも気流の乱れが生じ難くなる。なお、カバー部材5の内周面51と下面52との接続部をエッジ(
図3において符号53で示す内周縁53)にするのではなく、内周面51と下面52とを曲面(
図5(b)の符号Rを付けた矢印を参照)にしてもよく、このようなR形状も気体を隙間Gに円滑に流入させる上で好適である。
【0040】
一方、薬液ノズル71からウエハWの上面周縁部に供給された薬液、並びに薬液用の処理液吐出口22からウエハWの下面周縁部に供給された薬液は、遠心力によりウエハ周縁に向けて拡散するとともにウエハWの外方に飛散する。ウエハWの上面の薬液の大半は、
図5(a)において上側の2つの矢印A
1、A
2により挟まれた領域A
Rに向けて飛散する。薬液は水平方向(矢印A
1の方向)に最も多くかつ強く飛散し、飛散方向が矢印A
2で示す方向に近づくに従って、飛散する薬液の量および勢いは小さくなる。ウエハの下面の薬液の大半は、
図6において下側の2つの矢印B
1、B
2により挟まれた領域B
Rに向けて飛散する。薬液は水平方向(矢印B
1の方向)に最も多くかつ強く飛散し、飛散方向が矢印B
2で示す方向に近づくに従って、飛散する薬液の量および勢いは小さくなる。このように薬液が飛散するのは、薬液が遠心力を受けていることに加えて、カバー部材5とウエハWとの間の隙間Gを通過する際に増速されて水平方向に流出するガス(清浄空気)の流れの影響を受けるからである。なお、ウエハWの上面に供給された液(薬液、リンス液)はカバー部材5の下面52には接触しない。
【0041】
ウエハWから飛散した薬液は、流体受け面261及び案内板25の上面252に沿って、カップ体2の外側の凹部241に向けて流下してゆくか、或いは、微細な液滴(ミスト)となり
図5(b)に示す排気流路27内の気流に乗って流れる。
図5(b)において、破線で示す矢印が気流を示しており、排気流路27内におけるミストの流れは、排気流路27内における気流とほぼ一致する。なお、排気流路27内にある液滴がカバー部材5の下面52とウエハWの上面との間の隙間Gを通ってウエハW中央部に進もうとしても、そのような液滴の動きは、隙間GをウエハW外方に向かって流れる前述した気流により妨げられる。このため、ウエハWから飛散した薬液が再度付着することによるウエハWの汚染を防止することができる。
【0042】
本実施形態に係るカップ体2及びカバー部材5は、ウエハWから飛散した薬液が再度付着することによるウエハWの汚染を防止するために、上述した構成に加えて、下記の有利な構成を更に有している。
【0043】
強い勢いでカップ体2の流体受け面261に入射する薬液の跳ね返りを防止するために、カップ体2の流体受け面261が水平面に対して成す角度(これは矢印A
1、B
1で示す薬液の流れが流体受け面261に入射する入射角θと同じである)は、は比較的小さい値、例えば30度に設定されている。これにより、薬液が流体受け面261に衝突することに起因する薬液の飛散が低減される。
【0044】
カバー部材5の下面52とウエハWの上面との間の隙間Gが、当該隙間Gの開口面積(カバー部材5の中心軸線から下面52の内周縁53までの距離に等しい半径と高さG
1(隙間Gの高さ)とを有する円筒面の面積を意味する)が、排気口247の面積と比較して等しいか若しくは大きく設定されている。これにより、ウエハWの上面の上方にある気体の引き込みを円滑に行うことができる。隙間Gを狭くしすぎると、当該隙間Gの流路抵抗が大きくなり、小さい排気力で十分な吸引を行うことができない。隙間Gの高さG
1は、例えば4〜5mmとすることができる。
【0045】
また、隙間Gの半径方向幅G
2(カバー部材5の下面とウエハWとが半径方向において重なる長さ)は、4〜6mm、例えば5mm程度とされている。隙間Gの幅G
2を大きくしすぎると、当該隙間Gの流路抵抗が大きくなり、小さい排気力で十分な吸引を行うことができない。一方、幅G
2を小さくし過ぎると、隙間G内での気体の流れが乱れるので好ましくない(隙間G内では気体は半径方向外側に向けて水平に流れることが望ましい)。なお、幅G
2の最適値は、高さG
1との関係で変化する。
【0046】
流体受け面261及び案内板25の上面252との間の距離D
1が下流側にゆくに従って(カップ体2の外側の凹部241に近づくに従って)徐々に小さくなっている。このようにすることにより、逆流する気流の発生を抑制することができる。
【0047】
カップ体2に返し部262が設けられているため、仮に
図6中において矢印F
R1で示すような気流の逆流が生じたとしても、その逆流は返し部262により矢印F
R2で示すように排気路245の下流側に転向されるので、矢印F
R1で示すような気流に乗った薬液のミストがウエハWに向かうことが防止される。
【0048】
また、カップ体2の返し部262の先端(下端)の高さは、カバー部材5の下面52の高さと同じとなってことが好ましい。こうすれば、隙間Gを通過する気体の流れに乱れが生じ難いからである。両者に若干の高さの差があることは許容されるが、もし返し部262の先端があまり低い位置にあると、ウエハWの表面から飛散する薬液のミスト(
図5の矢印A
2を参照)が返し部262に衝突して、ウエハWに向けて跳ね返るおそれがある。一方、もし返し部262の先端があまり高い位置にあると、
図6で矢印F
R1で示すような気流に乗った薬液のミストがウエハWに向かうことを十分に防止することができない。なお、カバー部材5の下面52の周縁521と返し部262との間の距離(ウエハ半径方向に測定した距離)は、カバー部材5の昇降時に前記周縁521がカップ体2に衝突しないことが保証できる限りにおいて、可能な限り小さくすることが好ましい。これにより、隙間Gを通過した気体が、周縁521と返し部262との間の空間に渦流を形成することが防止される。
【0049】
カバー部材5が処理位置に位置するときには、
図3に示すように、カバー部材5と外周壁25の上面との間がシール部材59により密封されることが好ましい。これによれば、ハウジング11内の気体が専ら隙間Gを介して排気流路27に導入されるようになるため、ウエハWの外周縁近傍における気流の乱れが生じ難くなり、また、排気装置246の負担をより軽減することができる。
【0050】
なお、薬液処理時を例にとって気流及びミストの流れについて説明したが、リンス処理時においても同様の気流及びミストの流れが生じることは明らかである。
【0051】
この液処理装置に1により実施される液処理は、上記のものに限定されるものではない。例えば、薬液はHFに限らず、SC−1あるいはSC−2であってもよく、また、複数の薬液処理を行ってもよい。また、処理対象の基板は、半導体ウエハに限らず、周縁部の洗浄が必要な各種の円形基板、例えばガラス基板、セラミック基板等であってもよい。