特許第5952040号(P5952040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京応化工業株式会社の特許一覧

特許5952040光インプリント用の膜形成組成物及び光学部材の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952040
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】光インプリント用の膜形成組成物及び光学部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20160630BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20160630BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   H01L21/30 502D
   B29C59/02 ZZNM
   C08F2/44 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-58574(P2012-58574)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-191800(P2013-191800A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】武内 弘明
(72)【発明者】
【氏名】坂本 好謙
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/145061(WO,A1)
【文献】 特開2009−206197(JP,A)
【文献】 特表2008−533249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)親水性基を有する光重合性モノマー、(B)酸化チタン又は酸化ジルコニウムを含む無機ナノ粒子、及び(C)光重合開始剤を含有し、有機溶剤含有量が5〜20質量%でる光インプリント用の膜形成組成物であって、前記(A)成分として粘度が500cP以下であるモノマーを、前記(A)成分と前記(B)成分との合計量に対し30質量%以上含み、前記(B)成分を、前記膜形成組成物の前記有機溶剤以外の成分中、10〜90質量%含み、硬化後の屈折率が1.56以上である光インプリント用の膜形成組成物。
【請求項2】
(A)親水性基を有する光重合性モノマー、(B)無機ナノ粒子、及び(C)光重合開始剤を含有し、有機溶剤含有量が5〜20質量%であり、前記(A)成分として粘度が500cP以下であるモノマーを、前記(A)成分と前記(B)成分との合計量に対し30質量%以上含み、(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上有する化合物を含有せずに、硬化後の屈折率が1.56以上である光インプリント用の膜形成組成物。
【請求項3】
前記(A)成分がアクリルモノマーである請求項1又は2に記載の膜形成組成物。
【請求項4】
光インプリントリソグラフィによる光学部材の製造方法であって、
基板に請求項1から3のいずれかに記載の膜形成組成物を塗布して塗布層を形成し、加熱することなく前記塗布層にモールドを押し付ける工程と、
前記塗布層に前記モールドを押し付けた状態で、前記塗布層に紫外線を照射して硬化させ、樹脂層を形成する工程と、
前記樹脂層から前記モールドを剥離する工程と、を含む光学部材の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂層から前記モールドを剥離した後に前記樹脂層を加熱する工程を更に含む請求項4に記載の光学部材の製造方法。
【請求項6】
前記基板が樹脂基板である請求項4又は5に記載の光学部材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光インプリント用の膜形成組成物及び光学部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ技術は、半導体デバイスプロセスのコアテクノロジーであり、近年の半導体集積回路(IC)の高集積化に伴い、さらなる配線の微細化が進行している。とりわけ、素子の集積度が1000万個を超える超LSIと呼ばれる半導体集積回路(IC)においては、微細加工リソグラフィ技術は必須である。
【0003】
ここで、超LSIを実現するための微細加工リソグラフィ技術としては、これまで、KrFレーザー、ArFレーザー、Fレーザー、X線、遠紫外線等による光露光リソグラフィが用いられてきた。そして、これらの光露光リソグラフィ技術により、数十nmオーダーまでのパターンの形成が可能となった。
【0004】
しかし、光露光リソグラフィ技術に使用される装置は高価であるため、微細化の高度化に伴い、露光装置自身の初期コストが増大していた。また、これら光露光リソグラフィには、光波長と同程度の高解像度を得るためのマスクが必要であり、そのような微細形状を有するマスクは、価格が高価なものであった。更に、高集積化の要求は尽きることなく、更なる微細化が求められている。
【0005】
このような状況のもと開発された技術の1つとして、光ナノインプリントリソグラフィがある。これは、光硬化樹脂を含む塗布層にモールドを押し付け、次いで、紫外線を照射して樹脂を硬化させ、その後、モールドを離すことによりパターンを樹脂層に転写する技術である。
【0006】
通常、塗布層を形成する際には有機溶剤を含んだ液状の樹脂組成物を用いているので、塗布後プレベークを行うことにより、塗布層に含まれる有機溶剤を除去する工程を経ている。しかし、基板として成形性に優れる樹脂基板を用いた場合、塗布後にプレベークを行うと、基板が劣化するという問題があった。
【0007】
そこで、塗布する樹脂組成物が無溶剤又は少量の有機溶剤使用下でも低粘度になるように特定の成分を含有させ、プレベークの工程を経ない方法が提案されている(特許文献1を参照)。特許文献1では、有機溶剤の含有量を全組成物中、3質量%以下にすることが好ましいとされ、実施例では、組成物の各成分を混合した後、塗布前に室温で撹拌し、有機溶剤を揮発させる方法がとられている。ここで用いられていた有機溶剤は、エトキシブタノール、イソプロパノール、メトキシプロパノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−202022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、光ナノインプリントリソグラフィによって光学部材等を製造する場合には、硬化後の樹脂組成物が高屈折率を示すようにするために、無機酸化物微粒子の配合量を少なくすることができない。このため、市販の溶剤分散ゾルを用いて樹脂組成物を調製すると、有機溶媒が相当量含まれることになるが、特許文献1の実施例のように、有機溶剤の含有量が3質量%以下になるまで室温で撹拌して有機溶剤を揮発させるのは、作業時間が長くなり好ましくない。
【0010】
そこで、本発明は、塗布後にプレベークを行って有機溶剤を除去する必要がなく、高屈折率でありながら、良好な形状転写を行うことができる光インプリント用の膜形成組成物及び光学部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、特定の膜形成組成物を用いると、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0012】
本発明の第一の態様は、(A)親水性基を有する光重合性モノマー、(B)無機ナノ粒子、及び(C)光重合開始剤を含有し、有機溶剤含有量が20質量%以下であり、上記(A)成分として粘度が500cP以下であるモノマーを、上記(A)成分と上記(B)成分との合計量に対し30質量%以上含み、硬化後の屈折率が1.56以上である光インプリント用の膜形成組成物である。
【0013】
本発明の第二の態様は、光インプリントリソグラフィによる光学部材の製造方法であって、基板に第一の態様の膜形成組成物を塗布して塗布層を形成し、加熱することなく上記塗布層にモールドを押し付ける工程と、上記塗布層に上記モールドを押し付けた状態で、上記塗布層に紫外線を照射して硬化させ、樹脂層を形成する工程と、上記樹脂層から上記モールドを剥離する工程と、を含む光学部材の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、塗布後にプレベークを行って有機溶剤を除去する必要がなく、高屈折率でありながら、良好な形状転写を行うことができる光インプリント用の膜形成組成物、及びそのような膜形成組成物を用いた光学部材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪光インプリント用の膜形成組成物≫
本発明に係る光インプリント用の膜形成組成物は、(A)親水性基を有する光重合性モノマー、(B)無機ナノ粒子、及び(C)光重合開始剤を少なくとも含有し、有機溶剤含有量が20質量%以下であり、上記(A)成分として粘度が500cP以下であるモノマーを、上記(A)成分と上記(B)成分との合計量に対し30質量%以上含み、硬化後の屈折率が1.56以上であるものである。以下、本発明に係る膜形成組成物に含有される各成分について詳述する。
【0016】
<(A)親水性基を有する光重合性モノマー>
本発明に用いられる(A)親水性基を有する光重合性モノマーは、親水性基として、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基から選ばれる官能基を少なくとも1つ以上モノマー中に有するものである。これらの官能基を有する光重合性モノマーを用いると、分散性と形状転写性に優れた膜形成組成物を得ることができる。
【0017】
上記(A)成分としては、単官能モノマーと多官能モノマーとがある。
【0018】
単官能モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、γーブチロラクトンメタクリレート、アクロイルモルホリン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等が挙げられる。
【0019】
一方、多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN−メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能モノマーや、トリアクリルホルマール等が挙げられる。
【0020】
上記(A)成分として、これらの単官能モノマー及び多官能モノマーを、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
上記(A)成分は、アクリルモノマーであることが好ましい。
【0022】
上記(A)成分は、粘度が500cP以下であるモノマーを、上記(A)成分と上記(B)成分との合計量に対し30質量%以上含む。好ましくは、50質量%以上95質量%未満含み、より好ましくは65%質量以上95質量%未満含む。粘度が500cP以下であるモノマーを上記の範囲で含む膜形成組成物とすることにより、形状転写を良好に行うことができる。
【0023】
上記(A)成分であり粘度が500cP以下であるモノマーには、ジメチルアクリルアミド、γーブチロラクトンメタクリレート、アクロイルモルホリン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、等が挙げられる。
【0024】
本発明で用いられる上記(A)成分の含有量は、上記膜形成組成物の有機溶剤以外の成分中、5〜95質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましい。
【0025】
<(B)無機ナノ粒子>
(B)無機ナノ粒子は、本発明に係る膜形成組成物の硬化物の硬度を高めることができると共に、高屈折率化することができ、耐光性にも優れたものにできる。
【0026】
上記(B)成分は、硬化膜の透明性確保の点から、平均粒子サイズが500nm以下であることが好ましく、更には2〜100nmであることが好ましい。
【0027】
本発明で用いられる上記(B)成分としては、金属酸化物の微粒子であることが好ましい。例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化セリウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化ニオブ、酸化ランタン及び酸化ガドリニウム等が挙げられ、特に、膜形成組成物の硬化後の屈折率を高くするためには、酸化チタン又は酸化ジルコニウムが好ましい。
【0028】
本発明で用いられる上記(B)成分の含有量は、上記膜形成組成物の硬化後の屈折率を1.56以上にするためには、膜形成組成物の有機溶剤以外の成分中、5〜90質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。
【0029】
<(C)光重合開始剤>
本発明に用いられる(C)光重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、膜形成組成物に含まれる樹脂の種類、又は官能基の種類によって、適宜選択することができる。光カチオン開始剤、光ラジカル開始剤、光アニオン開始剤等、膜形成組成物の状況に併せて、必要な光重合開始剤を選択すればよい。
【0030】
上記(C)成分としては、例えば、2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’、5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール(以下、B−CIM(保土ヶ谷化学社製))、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン(以下、ミヒラーズケトン)、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(以下、EAB−F(保土ヶ谷化学社製))、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルエステル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−イソアミルエステル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、p−ジメチルアミノアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシ)スチリル−s−トリアジン等のトリアジン化合物等を挙げることができる。
【0031】
また、上記の他に、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン等のイオウ化合物や、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類や、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物や、2−メルカプトベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物等を用いることもできる。
【0032】
上記(C)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記(C)成分の量は、特に限定されるものではないが、上記膜形成組成物100質量部に対して、0.1〜30質量部含まれることが好ましい。このような範囲で上記(C)成分を使用することにより、光硬化性を向上させ、形成されたパターン表面における平滑性が良好になる傾向がある。
【0033】
<有機溶剤>
本発明に係る膜形成組成物は、有機溶剤を含有することができる。本発明に用いられる有機溶剤としては、上記(A)、(B)、及び(C)成分や、後述する他の成分を分散又は溶解し、且つこれらの成分と反応せず、適度の揮発性を有するものであればよい。
【0034】
このような有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−アミルケトン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、上記多価アルコール類又は上記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル若しくはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体;ジオキサン等の環状エーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
上記有機溶剤の含有量は、上記膜形成組成物の塗布性、モールドの剥離性を共に良好にする量として、上記膜形成組成物の20質量%以下である。より好ましくは5〜15質量%である。
【0036】
<その他の成分>
本発明に係る膜形成組成物には、必要に応じて界面活性剤が含有されていてもよい。界面活性剤としては、特に限定されず、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤等の公知の成分を用いることができる。界面活性剤を含有することにより、モールドの形状の転写性が良好なものとなる。
【0037】
≪光学部材の製造方法≫
本発明に係る光学部材の製造方法は、基板に本発明に係る膜形成組成物を塗布して塗布層を形成し、加熱することなく上記塗布層にモールドを押し付ける工程と、上記塗布層に上記モールドを押し付けた状態で、上記塗布層に紫外線を照射して硬化させ、樹脂層を形成する工程と、上記樹脂層から上記モールドを剥離する工程と、を含むことを特徴とする。
【0038】
先ず、基板上に本発明に係る膜形成組成物をスピンコート法等により塗布し、塗布層を形成する。塗布層の膜厚は、10nm〜5μm程度が好ましい。
【0039】
また、基板としては、透明性を有するものであればよく、ガラス基板、樹脂基板が挙げられるが、特に成形性に優れる材料が好ましく、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン樹脂、及びファンクショナルノルボルネン系樹脂等の透光性樹脂基板が好ましい。
【0040】
次に、基板上に形成された塗布層に所定形状のモールドを押し付け、その状態のまま塗布層に紫外線を照射して硬化させ、樹脂層を形成する。これによって、モールドの形状を樹脂層に転写することができる。
【0041】
その後、樹脂層からモールドを剥離する。この結果、モールドの形状が転写された光学部材が基板上に形成される。モールドの形状を変えることにより、様々な形状の光学部材を製造することができる。
【0042】
なお、上記のモールドの形状が転写された樹脂層を加熱及び/又は焼成し、更に硬化させることも可能である。
【0043】
このようにして、モールドの形状が転写された光学部材を基板上に形成することができる。形成された光学部材は、導光板、光学シート、面状光源装置、CMOSセンサーにおける極小レンズ等として利用し得る。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例になんら制約されるものではない。
【0045】
<実施例1〜10、比較例1〜4>
表1〜3に示す各成分をプロピレングリコールモノメチルエーテルに分散させ、膜形成組成物を調製した。表1中の( )内の数値は、各成分の質量部を表す。調製した膜形成組成物の分散性はいずれも良好であった。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
DMMA:ジメチルアクリルアミド
GBLMA:γ―ブチロラクトンメタクリレート
ACMO:アクリロイルモルホリン
アロニックスM−5700:2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(東亜合成社製)
アロニックスM−305:ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(トリアクリレート=55〜63%、東亜合成社製)
アロニックスM−451:ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(トリアクリレート=25〜40%、東亜合成社製)
アロニックスM−306:ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(トリアクリレート=65〜70%、東亜合成社製)
ライトアクリレートPE−3A:ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学社製)
アロニックスM−215:イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、東亜合成社製)
RTTPGM20WT%−N13:酸化チタン分散液(CIKナノテック社製)
IR−907:光重合開始剤イルガキュア(チバガイギー社製)
カヤラッドDPHA:ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(日本化薬社製)
PF656:フッ素系界面活性剤(OMNOVA社製、フッ素系界面活性剤)
【0050】
<屈折率の測定>
上記実施例1〜10及び比較例1〜4で調製した膜形成組成物を用いてシリコン基板上に500nmの樹脂層を形成した。得られた樹脂層について、分光エリプソメーター(ウーラム社製、VUV−VASE)により波長600nmにおける屈折率を測定した。その結果を表4に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
<インプリント評価>
上記実施例1〜10及び比較例1〜4で調製した膜形成組成物を、スピンコーターを用いて5cm角のポリカーボネート基板又はポリメチルメタクリレート基板の上に塗布し、膜厚10μmの塗布層を得た。次にガラス表面に離型剤を塗布したモールドを塗布層に押し付け、その状態で500mJ/cmで露光した。露光後モールドを離型し、モールドへの充填性、密着性、硬化性について評価した。モールドへの充填性の評価においては、モールドを押し付けた時にモールドパターン内に液が入る場合を○とした。密着性の評価においては、モールド離型時にパターンがしっかり基板に残る場合を○、膜が基板から剥がれてしまう場合を×とした。硬化性の評価においては、UV照射によって膜が硬化しタックが無くなって、パターン転写がしっかりできる場合を○、硬化不足でタックが残っているため、モールドに液が付着したり、パターン倒れが発生する場合を×とした。結果を表5及び表6に示す。
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
表5及び表6からわかるように、実施例の組成物を用いると、樹脂基板上で良好な光インプリント性を示した。しかし、有機溶剤量が多い組成物(比較例1)では硬化がうまくいかず、(A)成分として、粘度が500cP以下であるモノマーを含まない組成物(比較例2〜4)ではモールドのパターン転写が不十分であった。