特許第5952048号(P5952048)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952048
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】イオンビーム装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/317 20060101AFI20160630BHJP
   H01J 37/30 20060101ALI20160630BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   H01J37/317 D
   H01J37/30 Z
   H01J37/28 Z
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-68016(P2012-68016)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-200986(P2013-200986A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100119552
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 公秀
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】麻畑 達也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 安彦
(72)【発明者】
【氏名】大庭 弘
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−264150(JP,A)
【文献】 特開2008−166137(JP,A)
【文献】 特開2006−004671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/08
H01J 37/26
H01J 37/28
H01J 37/30
H01J 37/317
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを放出するイオン源と、
前記イオンビームを集束させるコンデンサレンズを形成するコンデンサレンズ電極と、
前記コンデンサレンズ電極に電圧を印加するコンデンサレンズ電源と、
試料を観察するための前記イオンビームを照射する観察モードに対応する前記コンデンサレンズ電極に印加する第一の電圧値と、前記観察モードよりも電流量が大きい前記イオンビームを照射する加工モードに対応する前記コンデンサレンズ電極に印加する第二の電圧値と、前記観察モードよりも前記試料上の広い範囲に前記イオンビームを照射する広範囲観察モードに対応する前記コンデンサレンズ電極に印加する第三の電圧値と、前記広範囲観察モードに対応し、前記第三の電圧値よりも前記第二の電圧値に近い値の第四の電圧値と、を記憶する記憶部と、
前記観察モードから前記広範囲観察モードに切替える場合は、前記記憶部から前記第三の電圧値を読出し、前記コンデンサレンズ電源に設定し、前記加工モードから前記広範囲観察モードに切替える場合は、前記記憶部から前記第四の電圧値を読出し、前記コンデンサレンズ電源に設定する制御部と、を有するイオンビーム装置。
【請求項2】
イオンビームを放出するイオン源と、
前記イオンビームを集束させるコンデンサレンズを形成するコンデンサレンズ電極と、
前記コンデンサレンズ電極に電圧を印加するコンデンサレンズ電源と、
試料を観察するための前記イオンビームを照射する観察モードに対応する前記コンデンサレンズ電極に印加する第一の電圧値と、前記観察モードよりも電流量が大きいイオンビームを照射する加工モードに対応する前記コンデンサレンズ電極に印加する第二の電圧値と、前記観察モードよりも前記試料上の広い範囲に前記イオンビームを照射する広範囲観察モードに対応する前記コンデンサレンズ電極に印加する第三の電圧値と、前記広範囲観察モードに対応し、前記加工モードのコンデンサレンズよりもレンズ作用の強いレンズを形成する第四の電圧値と、を記憶する記憶部と、
前記観察モードから前記広範囲観察モードに切替える場合は、前記記憶部から前記第三の電圧値を読出し、前記コンデンサレンズ電源に設定し、前記加工モードから前記広範囲観察モードに切替える場合は、前記記憶部から前記第四の電圧値を読出し、前記コンデンサレンズ電源に設定する制御部と、を有するイオンビーム装置。
【請求項3】
前記第三の電圧値は、前記観察モードのコンデンサレンズよりもレンズ作用が弱いレンズを形成する電圧値である請求項2に記載のイオンビーム装置。
【請求項4】
前記イオンビームを前記試料に集束させる対物レンズを形成する対物レンズ電極と、
前記対物レンズ電極に電圧を印加する対物レンズ電源と、を有し、
前記記憶部は、前記観察モードに対応する前記対物レンズ電極に印加する第一の対物レンズ電圧値と、前記加工モードに対応する前記対物レンズ電極に印加する第二の対物レンズ電圧値と、前記広範囲観察モードに対応する前記対物レンズ電極に印加する第三の対物レンズ電圧値と、を記憶し、
前記制御部は、前記観察モードから前記広範囲観察モードに切替える場合と、前記加工モードから前記広範囲観察モードに切替える場合は、前記記憶部から前記第三の対物レンズ電圧値を読出し、前記対物レンズ電源に設定する請求項1または3に記載のイオンビーム装置。
【請求項5】
前記第三の対物レンズ電圧値は、0kVである請求項4に記載のイオンビーム装置。
【請求項6】
前記観察モードと、前記加工モードと、前記広範囲観察モードとの切替えを行うための信号を入力する入力部を有する請求項1から5のいずれか一つに記載のイオンビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンビームで試料の加工及び観察を行うイオンビーム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エッチング加工や顕微鏡観察を行う集束イオンビーム(FIB)装置が知られている。
集束イオンビーム装置は、一般に、試料を加工する場合は、大きい電流量のイオンビームを試料に照射し、試料をエッチング加工する。また、試料を観察する場合は、試料のエッチング量を小さくし、また、ビーム径をより小さくするために、小さい電流量のイオンビームを照射し、試料から発生する二次荷電粒子を検出し、試料を顕微鏡観察する。
【0003】
また、集束イオンビーム装置は、一般に、加工する速度と精度に応じて照射するイオンビームの電流量を変更する。電流量を変更するためには、イオンビームの光学系の設定を変更する必要がある。例えば、異なる電流量のイオンビームの光学系の条件を記憶し、ビーム切替えの際に、対応する光学系の条件を読み出し、光学系に設定するイオンビーム装置が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
これによれば、異なる電流量のイオンビームの切替えにおいて、光学系の条件をスムーズに切替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−106474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、FIB装置において、微細加工を行う際に照射位置を設定するため、高い倍率で試料を観察する。一方で加工対象の位置を確認するため、試料の広い範囲を観察することも必要であり、低い倍率で観察する場合がある。この場合、イオンビームを試料の広い範囲に走査照射させる広範囲観察モードの光学系の条件を予め装置に記憶させ、ビーム切換えを行う。ビーム切換えのためには、光学系のレンズ電極に印加する電圧を切換えなければならない。
【0007】
しかしながら、光学系のレンズ電極に印加する電圧を切替える際に、急に高い電圧をレンズ電極に印加すると放電が発生してしまう問題があった。そのため、高い電圧を印加するビーム切替えは放電が発生しないようにゆっくりと電圧を上げなければならないため、ビーム切替えに時間がかかるという課題があった。
【0008】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、イオンビームの光学系に放電を発生させることなく、ビーム切換にかかる時間を短縮することができるイオンビーム装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明に係るイオンビーム装置は、イオンビームを放出するイオン源と、イオンビームを集束させるコンデンサレンズを形成するコンデンサレンズ電極と、コンデンサレンズ電極に電圧を印加するコンデンサレンズ電源と、試料を観察するためのイオンビームを照射する観察モードに対応するコンデンサレンズ電極に印加する第一の電圧値と、観察モードよりも電流量が大きいイオンビームを照射する加工モードに対応するコンデンサレンズ電極に印加する第二の電圧値と、観察モードよりも試料上の広い範囲にイオンビームを照射する広範囲観察モードに対応するコンデンサレンズ電極に印加する第三の電圧値と、広範囲観察モードに対応し、第三の電圧値よりも第二の電圧値に近い値の第四の電圧値と、を記憶する記憶部と、観察モードから広範囲観察モードに切替える場合は、記憶部から第三の電圧値を読出し、コンデンサレンズ電源に設定し、加工モードから広範囲観察モードに切替える場合は、記憶部から第四の電圧値を読出し、コンデンサレンズ電源に設定する制御部と、を有する。
【0010】
また、本発明に係るイオンビーム装置における第三の電圧値は観察モードのコンデンサレンズよりもレンズ作用の弱いレンズを形成する電圧値である。また、第四の電圧値は加工モードのコンデンサレンズよりもレンズ作用の強いレンズを形成する電圧である。
これにより、ビーム切替えの際に変更する電圧値の差を小さくすることができる。よって、放電を発生させず、ビーム切換えにかかる時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るイオンビーム装置によれば、イオンビームの光学系に放電を発生させることなく、ビーム切換にかかる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るイオンビーム装置の構成図である。
図2】本発明に係るイオンビーム装置の照射モードの説明図である。
図3】本発明に係るイオンビーム装置の照射モードの説明図である。
図4】本発明に係る荷電粒子ビーム装置の表示画面の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るイオンビーム装置の実施形態について説明する。
本実施形態のイオンビーム装置は、図1に示すように、FIB鏡筒2と、試料室3を備える。試料室3内に収容された試料7にFIB鏡筒2からイオンビーム9を照射する。
【0014】
イオンビーム装置は荷電粒子検出器として二次電子検出器4を備えている。二次電子検出器4は、イオンビーム9の照射により試料7から発生した二次電子を検出することができる。
【0015】
イオンビーム装置は、像形成部14と、表示部17を備える。像形成部14は、イオンビーム9を走査させる信号と、二次電子検出器4で検出した二次電子の信号とからSIM像のデータを形成する。表示部17はSIM像を表示することができる。
【0016】
イオンビーム装置は試料7を載置する試料台6を備える。試料台6は試料7を移動させることができる。また、試料台6を傾斜させることにより試料7へのイオンビーム9の入射角度を変更することができる。
【0017】
FIB鏡筒2は、イオンビーム光学系100を備える。イオンビーム光学系100は、イオン源101と、コンデンサレンズ電極102と、非点補正電極103と、走査電極104と、対物レンズ電極105とを備える。イオン源101は、イオンビーム9を放出する。コンデンサレンズ電極102は、イオン源101で放出されたイオンビーム9を集束させるコンデンサレンズを形成する。非点補正電極103は、イオンビーム9の非点を補正する。走査電極104は、イオンビーム9を走査する。対物レンズ電極105は、イオンビーム9を試料7表面に集束させる対物レンズを形成する。なお、コンデンサレンズ電極102と対物レンズ電極105はイオンビーム9を通過させる穴を有する円板部材からなる。
【0018】
また、イオンビーム装置は、入力部11と、制御部16を備える。オペレータはイオンビーム9の照射条件に関する情報を入力部11に入力する。入力部11は、入力された情報を制御部16に送信する。制御部16は、照射条件に関するデータを記憶している記憶部13から対応する照射条件に関するデータを読み出す。制御部16は、読み出したデータに基づきコンデンサレンズ電源12及び対物レンズ電源15にコンデンサレンズ電極102及び対物レンズ電極105に印加する電圧値を設定する。コンデンサレンズ電源12及び対物レンズ電源15は、設定された電圧をコンデンサレンズ電極102及び対物レンズ電極105に印加し、コンデンサレンズ及び対物レンズを形成する。これにより入力部11で入力した情報に基づく照射条件のイオンビーム9が試料7に照射される。
【0019】
次にイオンビーム9の照射モードについて説明する。図2(a)は観察モードでイオンビーム9を照射する場合のイオンビーム9の軌跡9aを示している。観察モードは、試料7を観察する際に用いる照射モードであり、試料7へのダメージを軽減するために、つまり、試料7をスパッタエッチングする量を少なくするために、ビーム電流量の小さいイオンビーム9を照射する照射条件である。また、観察モードは、高分解能で観察することができるように試料7表面上でビーム径が小さくなるようにイオンビーム9を集束させる。
【0020】
観察モードでは、イオンビーム9を強く曲げるコンデンサレンズ電界112aを形成する。コンデンサレンズ電界112aで強く曲げられたイオンビーム9の軌跡9aは、対物レンズ電界115aにより試料7表面上に集束される。
【0021】
観察モードでは、イオンビーム9を強く曲げるためにコンデンサレンズ電極102に大きい電圧を印加する。ここでは、コンデンサレンズ電極102のイオン源101側の第一電極102aに23kV、第二電極102bに27kV、第三電極102cに0kVを設定する。これにより、イオンビーム9の軌跡9aはコンデンサレンズ電界112aにより強く曲げられFIB鏡筒2内部でクロスオーバーする軌跡になる。
【0022】
図2(b)は加工モードでイオンビーム9を照射する場合のイオンビーム9の軌跡9bを示している。加工モードは、試料7をエッチング加工する際に用いる照射モードであり、試料7を高速でエッチング加工するために、ビーム電流量の大きいイオンビーム9を照射する照射条件である。
【0023】
加工モードでは、イオンビーム9を大量に集めるコンデンサレンズ電界112bを形成する。イオンビーム9の軌跡9bは、対物レンズ電界115bに達するまでほぼ平行である。これにより、ビーム電流量の大きいイオンビーム9を試料7に照射することができる。
【0024】
加工モードでは、観察モードよりも小さい電圧をコンデンサレンズ電極102に設定する。ここでは、コンデンサレンズ電極102の第一電極102aと第三電極102cは観察モードと同じ電圧であり、第二電極102bを0kVに設定する。これにより、イオンビーム9の軌跡9bはコンデンサレンズ電界112bによりFIB鏡筒2内部で平行な軌跡になり、大量のイオンビーム9を集めることができる。
【0025】
以上の通り、試料7を観察する場合には観察モードの照射条件を、加工する場合は加工モードの照射条件を、イオンビーム光学系100に設定することにより、所望のイオンビーム9を試料7に照射することができる。
【0026】
次に広い範囲を観察するための広範囲観察モードについて説明する。図3(a)は広範囲観察モードでイオンビーム9を照射する場合のイオンビーム9の軌跡9cを示している。広範囲観察モードでは、対物レンズを形成することなく試料7表面にイオンビーム9を集束させるコンデンサレンズ電界112cを形成する。これにより対物レンズを用いることなく走査電極104によりイオンビーム9を走査することができるので、広い範囲にイオンビーム9を走査照射することができる。ここで、広い範囲とは、上記の観察モードの走査範囲8aや加工モードの走査範囲8bが1mm程度であることに対し、走査範囲8c、走査範囲8dが5mm程度の広い範囲のことをいう。
【0027】
広範囲観察モードでは、イオンビーム9を試料7表面にコンデンサレンズだけで集束させるために、コンデンサレンズ電極102の第二電極102bに20kVの電圧を印加する。なお、コンデンサレンズ電極102の第一電極102aと第三電極102cは観察モードと同じ電圧である。すなわち、第一電極102aと第二電極102bの電位差が3kV、第二電極102bと第三電極102cの電位差が20kVとなるように電圧を印加する。これにより、第二電極102bと第三電極102cの強いレンズ電界が形成され、イオンビーム9を試料7表面に集束させる。ここで、対物レンズ電極105の電圧は0kVに設定している。
【0028】
また、本実施形態では別の広範囲観察モードを有する。図3(b)は別の広範囲観察モードでイオンビーム9を照射する場合のイオンビーム9の軌跡9dを示している。この広範囲観察モードでは、コンデンサレンズ電極102の第二電極102bに−5kVの電圧を印加する。なお、コンデンサレンズ電極102の第一電極102aと第三電極102cは加工モードと同じ電圧である。すなわち、第一電極102aと第二電極102bの電位差が28kV、第二電極102bと第三電極102cの電位差が−5kVとなるように電圧を印加する。これにより、第一電極102aと第二電極102bの強いレンズ電界が形成され、イオンビーム9を試料7表面に集束させる。ここで、対物レンズ電極105の電圧は0kVに設定している。
【0029】
上記の通り、本実施形態では広範囲観察モードとして、コンデンサレンズ電極102に20kVの電圧を印加させるモードとコンデンサレンズ電極102に−5kVの電圧を印加させるモードの二つのモードを有する。そして、広範囲観察モードを使用する前の照射モードが、観察モードか加工モードかによって、最適な広範囲観察モードを使用する。
【0030】
すなわち、加工モードから広範囲観察モードに切替える場合、加工モードでは、コンデンサレンズ電極102に0kVの電圧を設定しているので、20kVの電圧を印加させる広範囲観察モードに切替えると、大きな電圧を加えることになるので、放電が発生するおそれがある。そこで、−5kVの電圧を印加させる広範囲観察モードに切替える。これにより、加工モードから広範囲観察モードへの切換えにかかる時間を短縮することができる。つまり、印加電圧を0kVから−5kVに切替えるので、0kVから20kVに切替える場合に比べて1/4の時間で切替えることができる。
【0031】
また、観察モードから広範囲観察モードに切替える場合、観察モードでは、コンデンサレンズ電極102に23kVの電圧を設定しているので、20kVの電圧を印加させる広範囲観察モードに切替える。これにより広範囲観察モードから再び観察モードに切替える場合に、電圧を大きく印加することなく切替えることができるので、放電を発生させることなく切替え時間を短縮することができる。
【0032】
次に照射モードの切り替えについて、図4を用いて説明する。図4は表示部17に表示された表示画面40である。表示画面40には、観察モードに切替えるための観察モードボタン43と、小電流のイオンビーム9を照射する加工モードに切替えるための加工モードボタン(小電流)44と、中電流のイオンビーム9を照射する加工モードに切替えるための加工モードボタン(中電流)45と、大電流のイオンビーム9を照射する加工モードに切替えるための加工モードボタン(大電流)46とを有する。
【0033】
オペレータは表示画面に表示されたSIM像41を見ながらイオンビーム9の照射モードを上記のボタンをマウスやキーボードなどの入力部11を用いて切替える。このように照射モード切替えの信号を制御部16に入力する。
【0034】
制御部16は、記憶部13に予め記憶された各照射モードのコンデンサレンズ電極102と対物レンズ電極105の設定電圧値を読み出す。ここで、読み出す設定電圧値は、直前に使用している照射モードに基づく最適な照射モードの設定電圧値である。すなわち、直前に使用している照射モードが加工モードであり、広範囲観察モードに切替える場合、加工モードと電圧差の小さい−5kVの電圧を印加させる広範囲観察モードの設定電圧値を読み出す。また、直前に使用している照射モードが観察モードであり、広範囲観察モードに切替える場合、観察モードと電圧差の小さい20kVの電圧を印加させる広範囲観察モードの設定電圧値を読み出す。
【0035】
そして制御部16は、読み出した設定電圧値をコンデンサレンズ電源12及び端物レンズ電源15に設定し、コンデンサレンズ電源12及び端物レンズ電源15は、コンデンサレンズ電極102及び対物レンズ電極105に電圧を印加する。ここで、設定電圧値が0kVの場合は電圧を印加しない。
【0036】
以上により、広範囲観察モードを用いる場合でも放電を発生させることなくスムーズに照射モードの切換えを行うことができる。
【符号の説明】
【0037】
100…イオンビーム光学系
101…イオン源
102…コンデンサレンズ電極
102a…第一電極
102b…第二電極
102c…第三電極
103…非点補正電極
104…走査電極
105…対物レンズ電極
105a…第一電極
105b…第二電極
105c…第三電極
2…FIB鏡筒
3…試料室
4…二次電子検出器
6…試料台
7…試料
8a、8b、8c、8d…走査範囲
9…イオンビーム
9a、9b、9c、9d…軌跡
11…入力部
12…コンデンサレンズ電源
13…記憶部
14…像形成部
15…対物レンズ電源
16…制御部
17…表示部
112a、112b、112c、112d…コンデンサレンズ電界
115a、115b…対物レンズ電界
40…表示画面
41…SIM像
42…広範囲観察モードボタン
43…観察モードボタン
44…加工モードボタン(小電流)
45…加工モードボタン(中電流)
46…加工モードボタン(大電流)
図1
図2
図3
図4