特許第5952402号(P5952402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5952402製造工程性の向上したジェリーロール及びこれを備えた電池セル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952402
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】製造工程性の向上したジェリーロール及びこれを備えた電池セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/26 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
   H01M2/26 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-525919(P2014-525919)
(86)(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公表番号】特表2014-529165(P2014-529165A)
(43)【公表日】2014年10月30日
(86)【国際出願番号】KR2012006076
(87)【国際公開番号】WO2013024984
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2014年2月24日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0080477
(32)【優先日】2011年8月12日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジユン・オ
(72)【発明者】
【氏名】キ・ゴン・キム
(72)【発明者】
【氏名】デ・ヒュン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】チュンボ・ソ
【審査官】 大畑 通隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−149921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シート/分離膜/負極シートを巻き取って構成され、電極シートにおいて電極活物質が塗布されていない無地部には超音波溶接方式で電極タブが取り付けられており、前記電極タブには、溶接性が向上するように、無地部に対面する方向に突出したエンボス構造が形成されている二次電池用ジェリーロールの製造方法であって、
前記方法が、
(a)分離膜が挟持された状態で正極シート及び負極シートを積層して巻き取る過程と、
(b)表面にエンボス構造が形成されている電極タブを、正極シート及び負極シートの無地部上にエンボス構造の突出部位が対面するように配置する過程と、
(c)前記電極タブのエンボス構造の湾入部位に溶接機のホーンチップを配置して超音波を印加する過程と、
を含み、
前記超音波溶接が、エンボス構造の微細突起に対応する間隔で設けられたホーンチップを有する溶接機により行われ、
前記超音波溶接が、前記ホーンチップが微細突起の湾入部内に導かれた状態で超音波が印加されて行われることを特徴とする、二次電池用ジェリーロールの製造方法。
【請求項2】
前記電極タブは、アルミニウム又はニッケルからなることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記エンボス構造は、無地部に対面する面に形成された突出部と、前記突出部に対応して対向面に形成された湾入部とを含む微細突起からなることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記微細突起の突出高さは、50μm乃至500μmであることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記微細突起の突出高さは、100μm乃至150μmであることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造工程性の向上したジェリーロール及びこれを備えた電池セルに係り、特に、正極シート/分離膜/負極シートを巻き取って構成された二次電池用ジェリーロールであって、電極シートにおいて電極活物質が塗布されていない無地部には溶接方式で電極タブが取り付けられており、該電極タブには、溶接性が向上するように、無地部に対面する方向に突出したエンボス構造が形成されているジェリーロールに関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器の技術開発と需要の増加に伴い、二次電池の需要も急増しつつある。二次電池の中でも、エネルギー密度及び作動電圧が高く、保存及び寿命特性に優れたリチウム二次電池は、各種のモバイル機器を含め様々な電子製品のエネルギー源として広く使用されている。
【0003】
二次電池は、電池ケースの形状によって、電極組立体が円筒形又は角形の金属缶に内蔵されている円筒型電池及び角型電池と、電極組立体がアルミニウムラミネートシートのパウチ形ケースに内蔵されているパウチ型電池とに分類される。特に、円筒型電池は、相対的に容量が大きく、構造的に安定しているという特長がある。
【0004】
電池ケースに内蔵される前記電極組立体は、正極/分離膜/負極の積層構造を有する充放電可能な発電素子であって、活物質が塗布された長いシート状の正極と負極との間に分離膜を挟んで巻き取ったジェリーロール型、所定大きさの多数の正極と負極を、分離膜が挟持された状態で順次に積層したスタック型、及びジェリーロール型とスタック型との複合構造であるスタック/フォルディング型に分類される。特に、ジェリーロール型の電極組立体は、製造が容易であり、重量当たりのエネルギー密度が高いという特長がある。
【0005】
かかる従来の円筒形二次電池の構造が図1に示されている。
【0006】
図1を参照すると、円筒形二次電池100は、ジェリーロール型(巻取り型)電極組立体120を電池ケース130に収納し、電池ケース130内に電解液を注入した後、ケース130の開放上端に電極端子(例えば、正極端子;図示せず)が設けられているキャップアセンブリー140を結合して作製する。
【0007】
電極組立体120は、正極シート121、負極シート122、及びこれらの間に挟持した分離膜123を丸く巻いた構造になっており、その巻心(ジェリーロールの中心部)には円筒形のセンターピン150が挿入されている。センターピン150は、一般に、所定の強度を有するように金属素材からなり、板材を丸く曲げた中空型の円筒形構造になっている。このようなセンターピン150は、電極組立体を固定及び支持する機能を担うとともに、充放電及び作動時に内部反応により発生するガスを放出する通路として機能する。
【0008】
電極組立体120の上端面には板状の絶縁部材160が取り付けられており、該絶縁部材160は、ガスが排出され、且つ電極組立体120の正極タブ142がキャップアセンブリー140のキャッププレート145に連結されるように、中央に、センターピン150の貫通口151と連通する開口161が形成されている。
【0009】
また、円筒型二次電池100の下端に設けられた絶縁部材170は、電極組立体120の下端とケース130との間に配置されており、中央に開口171が穿設されているため、負極シート122に取り付けられた負極タブ(図示せず)がケース130の下端に貫通して接続される。
【0010】
一般に、正極タブ及び負極タブは、超音波溶接により正極シート及び負極シートの無地部(金属集電体である電極シートにおいて電極活物質が塗布されていない部位)にそれぞれ溶接される。
【0011】
図2は、負極シートと負極タブとの超音波溶接を模式的に示す断面図である。
【0012】
図2を参照すると、負極シートの無地部121a上に負極タブ142が接触し、多数のホーンチップ310を有する超音波溶接機300により加圧される。この時、超音波振動が負極タブ142に伝達され、このような振動エネルギーにより発生する摩擦熱で負極タブ142が無地部121aに溶接される。
【0013】
しかしながら、負極タブと負極シートはなめらかな平面になっているため、負極タブにホーンチップが接触して超音波溶接がなされる間に負極タブが摩耗する問題があった。また、負極タブと負極シート間には強い結合力が要求されるため、強い超音波の印加による溶接過程で電極活物質が脱離する現象が起こる問題もあった。
【0014】
したがって、このような問題点を根本的に解決できる技術が強く要望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記のような従来技術の問題点、及び過去から要請されてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【0016】
本発明の目的は、電極タブにエンボス構造を形成することによって、超音波溶接時に電極タブの摩耗を防止し、溶接性を向上させることができるジェリーロールを提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、上記ジェリーロールを採用することによって製造工程性及び安全性の向上を図った二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このような目的を達成するための本発明に係るジェリーロールは、正極シート/分離膜/負極シートを巻き取って構成された二次電池用ジェリーロールであって、電極シートにおいて電極活物質が塗布されていない無地部には溶接方式で電極タブが取り付けられており、前記電極タブには、溶接性が向上するように、無地部に対面する方向に突出したエンボス構造が形成されている。
【0019】
すなわち、本発明に係るジェリーロールには、上記のような特定の構造のエンボス構造が形成されているため、平面の電極タブに溶接を施す従来の構造に比べて、溶接時に振動エネルギーレベルを緩和しても、電極タブ(正確には、エンボス構造部位)と電極シートの無地部間に強い摩擦力が誘発され、電極タブと無地部間の溶接性を向上させることができる。
【0020】
前記電極タブの素材は、例えば、正極タブにはアルミニウム、又は負極タブにはニッケルを使用すればよいが、これに限定されるものではない。
【0021】
一好適例において、前記エンボス構造は、無地部に対面する面に形成された突出部と、該突出部に対応して対向面に形成された湾入部とを含む微細突起からなるとよい。
【0022】
突出部と湾入部の形状は、特に制限されるものではないが、好ましくは、半球形であってよい。
【0023】
微細突起の突出高さは、好ましくは、50μm乃至500μmである。突出高さが高すぎると、電極タブと無地部との融着が困難となり、逆に、低すぎると、エンボス構造の効果を得難くなるわけである。より好ましくは、100μm乃至150μmである。
【0024】
一方、前記無地部への電極タブの溶接は、溶接部の変形を最小化し、薄い無地部への使用を容易にするべく、好ましくは超音波溶接にすればよい。
【0025】
具体的に、前記超音波溶接は、エンボス構造の微細突起に対応する間隔で設けられたホーンチップを有する溶接機により行われるとよい。
【0026】
それら微細突起に対応する多数のホーンチップにより溶接を行うと、電極タブと無地部間の溶接性を極大化させることができる。
【0027】
また、前記超音波溶接は、前記ホーンチップが微細突起の湾入部内に導かれた状態で超音波が印加されて行われるとよい。
【0028】
これと関連して、従来の超音波溶接では、ホーンチップから発生した振動エネルギーが、電極タブに接触している電極タブの対応面に效果的に伝達されるように、電極タブに接触するホーンチップの高さを略350μmとする必要があった。このように相対的に高さの高いホーンチップは損傷しやすくなる他、電極タブを摩耗させる場合も多かった。
【0029】
これに対し、本発明によれば、ホーンチップが導入される電極タブの湾入部に対応する電極タブの部位、すなわち、無地部に対面する電極タブの部位に突出部が形成されているため、ホーンチップの高さを減らすだけでも高い溶接性を提供することができる。したがって、電極タブの摩耗などの問題点を解決できる。
【0030】
具体的に、前記ホーンチップの高さは50乃至300μmが好ましく、より好ましくは、約100μmである。
【0031】
一方、前記ホーンチップの角度は60°乃至120°であってよく、好ましくは、90°のピラミッド状であればよい。
【0032】
また、本発明は、上記のジェリーロールを製造する方法を提供する。具体的に、本発明の方法は、
(a)分離膜が挟持された状態で正極シート及び負極シートを積層して巻き取る過程と、
(b)表面にエンボス構造が形成されている電極タブを、正極シート及び負極シートの無地部上にエンボス構造の突出部位が対面するように配置する過程と、
(c)前記電極タブのエンボス構造の湾入部位に溶接機のホーンチップを配置して超音波を印加する過程と、
を含む。
【0033】
すなわち、前記エンボス構造に対応して多数のホーンチップを用いて超音波溶接を行うことによって、電極タブの摩耗を最小化するとともに、電極タブと無地部間の溶接性を向上させることができる。
【0034】
本発明はまた、上記のジェリーロールを備える電池セルであって、電池ケースの内部に前記ジェリーロールが含まれた電池セルを提供する。
【0035】
前記電池セルは、連続した充放電が可能な二次電池であって、角型電池セル、円筒型電池セルなどの様々な形態で構成可能であり、好ましくは、円筒型電池セルであればよい。
【0036】
また、前記電池セルは、優れた溶接性により、多数個の単位電池を備える高出力大容量の中大型電池モジュールに好適に適用可能である。
【0037】
中大型電池モジュールの構造及びその製造方法は、当業界では公知であるため、その詳細な説明を本明細書では省略する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】従来技術に係る単位セルと接続部材の模式断面図である。
図2図1の正極シート及び正極タブの溶接を示す部分断面図である。
図3】本発明の一実施例に係る正極シート及び正極タブの溶接を示す部分断面図である。
図4】本発明に係る溶接機の正面図及び部分側面図である。
図5図3の電極タブの部分写真である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、本発明の実施例に係る図面を参照して説明するが、これは、本発明のより容易な理解を助けるためのもので、本発明の範ちゅうを限定するものではない。
【0040】
図3は、本発明の一実施例に係る正極シート及び正極タブの溶接を示す部分断面図であり、図4は、図3の溶接機の正面図及び部分側面図であり、図5は、図3における電極タブの部分写真である。
【0041】
図3乃至図5図1と共に参照すると、正極シート121、分離膜123、負極シート122を巻き取って構成された二次電池用ジェリーロール120は、負極シート121において電極活物質が塗布されていない無地部121aに超音波溶接方式によりニッケル素材の負極タブ200が取り付けられ、負極タブ200には溶接性が向上するように、無地部121aに対面する方向に突出したエンボス構造が形成されている。
【0042】
エンボス構造は、無地部121aに対面する面に形成された突出部212と突出部212に対応して対向面に形成された湾入部214とを含む微細突起210で構成されている。
【0043】
微細突起210の突出高さHは略120μmである。
【0044】
一方、超音波溶接は、エンボス構造の微細突起210に対応する間隔で設けられたホーンチップ320を有する溶接機300により行われる。
【0045】
溶接機300は、3行9列のホーンチップ320を有しており、ホーンチップ320の高さLは略100μmであり、それぞれは90°角度Rのピラミッド状をしている。
【0046】
このとき、超音波溶接は、ホーンチップ320が微細突起210の湾入部214内に導かれた状態で超音波が印加されて行われるため、低い高さのホーンチップ320を用いても電極タブの摩耗を最小化できる。
【0047】
このような超音波溶接は、アルミニウム素材の正極タブにも同様に適用可能である。
【0048】
本発明が属する分野における通常の知識を有する者にとっては上記の内容に基づいて本発明の範ちゅう内で様々な応用及び変形を実施することが可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上説明した通り、本発明に係るジェリーロールは、無地部に対面する方向に突出したエンボス構造が形成されているため、電極タブの摩耗を最小化し、溶接性を向上させることによって電池セルの安全性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0050】
100 円筒形二次電池
120 電極組立体、ジェリーロール
121 正極シート
121a 無地部
122 負極シート
123 分離膜
130 電池ケース
140 キャップアセンブリー
142 正極タブ
145 キャッププレート
150 センターピン
151 貫通口
160 絶縁部材
161 開口
170 絶縁部材
171 開口
200 負極タブ
212 突出部
214 湾入部
210 微細突起
300 溶接機
310、320 ホーンチップ
H 突出高さ
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図5