(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、この種の真空ポンプ装置は、半導体製造装置が配置される真空チャンバ内のプロセスガスを排気するために使用されている。このような半導体の製造工程には、たとえば化学気相成長(CVD)のように真空チャンバの内部にウェハを配置し、ウェハの面をプロセスガスに暴露させる工程がある。プロセスガスは、薄膜構成元素を含んでおり、ウエハの面上で反応して膜物質が形成される。均一な膜形成のためには、ウェハに対してプロセスガスのより安定した均一な供給が求められることになる。一方、このようなCVD工程ではプロセスガスを供給しつつ真空ポンプ装置による排気が行われている。
【0003】
この真空チャンバ内は清浄雰囲気であることが要求されるために、真空チャンバ内のプロセスガス排気に使用される真空ポンプ装置は、ポンプ内部のガス流路に油を使用しないドライポンプであることが必要とされる。このようなドライ真空ポンプとして、例えばルーツ型2軸容積式ドライ真空ポンプなどが知られている。
【0004】
このルーツ型2軸容積式ドライ真空ポンプは、対向する一対のルーツ型のロータをケーシング内に備え、これらのロータ間およびロータとケーシングとの隙間が微少になるようにクリアランスを設けて構成されている。そして、この一対のロータが同期反転することにより、ロータとケーシングとの間に形成された空間にプロセスガスが閉じ込められて吐出口側に移送され、この移送が連続して行われることによりプロセスガスの排気が行われている。
【0005】
上述のように構成された容積式のドライ真空ポンプにおいては、排気対象となるガスが、上述したようにプロセスガスの場合、当該プロセスガス中に昇華温度の高い反応副生成物が含まれていることがある。このような場合、真空ポンプの温度が所定の温度にまで達しないと、この反応副生成物が固体化し、真空ポンプ内部に生成物として析出してしまうといった問題がある。そして、このような生成物がロータ間やロータとケーシングとの間に堆積すると、ロータの回転に摩擦が生じてモータの負荷を増加させ、極端な場合にはポンプの回転が停止して、再起動できなくなる場合がある。
【0006】
この生成物の析出を防ぐ方法として、ヒータを真空ポンプ内部に配置したり、ラバーヒータ等をポンプのケーシングに巻くなどによって真空ポンプを加温していた。
図1は、従来技術における真空ポンプ装置の概略図を示している。この真空ポンプ装置は、真空チャンバ側に配置されるブースターポンプ2と、外気側に配置されるメインポンプ4とを備えており、ブースターポンプ2とメインポンプ4は直列に接続されている。ブースターポンプ2は、メインポンプよりも高い排気速度を有しており、真空ポンプ装置全体として、メインポンプ単体のものと比較して、真空チャンバ内のプロセスをより迅速に排気できるようになっている。
【0007】
ブースターポンプ2は、対向する一対の2個のロータ6をケーシング8内に備え、ケーシングの一方の端部に設けた電動モータ10により駆動されるようになっている。そして、ケーシング8内でロータ6の両側にヒータ12を配置して、このヒータ12から発生する熱によってケーシングを加温している。また、ケーシングの周囲に、ラバーヒータ14を巻いたり、あるいは、保温カバーを巻いたりして、加温効果を高めている。
【0008】
一方、メインポンプ4は、対向する一対のロータ16をケーシング18内に備えて構成されている。メインポンプ4は、ケーシング内でロータ16の一方側にヒータ20を配置して、このヒータ20から発生する熱によってケーシングを加温している。また、同様に、ケーシング18の周囲に、ラバーヒータ22を巻いてケーシングを加温したり、あるいは、保温カバーを巻いたりしている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態に係る真空ポンプ装置を
図2乃至
図4に基づいて説明する。
本発明の第1実施形態に係る真空ポンプ装置は、真空チャンバ(図示せず)からプロセスガスを排気するためのドライ真空ポンプ(ガス排出用のポンプ部)30と、ドライ真空ポンプを駆動するための電動モータ(モータ部)32と、電動モータ32で発生した熱を真空ポンプに伝達するための熱伝達装置36とを備えている。本実施形態においては、ドライ真空ポンプは、ルーツ型となっているが、スクリュー型など他の構造のものであっても良い。
【0018】
ドライ真空ポンプ30は、ポンプケーシング38内に一対のルーツロータ(
図2では一方のルーツロータのみ示す)40が収容されている。一対のルーツロータ40は、ポンプケーシング38の内面との間に、また、ルーツロータ40同士の間にわずかな隙間を保持してポンプケーシング38内に配置されている。ポンプケーシング38には、プロセスガスの吸込口42と吐出口44が設けられている。
【0019】
各ルーツロータ40は、シャフト46と、該シャフト46に固定されロータ48とを備えており、両端部近傍で軸受50によって回転自在に支承されている。
ドライ真空ポンプは、多段型ポンプとすることができ、本実施形態実施においては、3段のロータ48がシャフト46に固定されている。そして、3段のロータ48の径方向外側に圧縮ガス通路52が形成されており、吸込口42から導入されたプロセスガスは、3段のロータの各により圧縮され、圧縮ガス通路52を介して後段のロータ48に移送されるようになっている。
【0020】
各段のロータ48は、上流から下流側になるほど、各段での圧力差が大きくなり、最終段で最も圧力差が大きくなる。つまり、最終段が最もプロセスガスを圧縮している部分であり、圧縮熱が一番大きくなっている。
【0021】
シャフト46の一方の側には、電動モータ(例えば、ブラシレス直流モータM)32が設けられており、この電動モータ32によって、シャフト46及びロータ48が回転駆動されるようになっている。
【0022】
各ルーツロータ40の反モータ側の軸端には、互いに噛み合う一対のタイミングギヤ56(
図2では一方のギヤのみ示す)が固定されており、一対のルーツロータ40の同期を保つようになっている。
【0023】
電動モータ32を駆動すると、一対のルーツロータ40は、ポンプケーシング38の内面及びロータ48同士の間にわずかな隙間が保持された状態で、非接触で回転する。一対のルーツロータ40の回転につれて、吸込側のプロセスガスはロータ48とポンプケーシング38との間に形成された空間に閉じこめられて吐出側に移送される。このように、吸込口42から導入されたプロセスガスが3段のロータ48により圧縮移送されて吐出口44から排出され、この移送が連続して行われることによりプロセスガスの排気が行われる。
【0024】
電動モータ32は、モータケーシング(ステータフレーム)60と、シャフト46の端
部に取り付けられたモータロータ62と、モータケーシング60の内周面に設けられたステータ64とを備えている。また、本実施形態においては、モータロータ62とステータ64との間にそのステータとロータとを隔離するキャン66が配置されて、キャン構造モータとなっている。シャフト46は、このモータロータ62が固定されたシャフト46の端部が片持ち構造となるように軸受50によって支持されている。
【0025】
ステータ64は、一端部を閉鎖した円筒状のモータケーシング(ステータフレーム)60の内周部に嵌入されたステータコア68を備えている。モータケーシング60の開口部61には、外方に突出するフランジ部63が形成されており、モータケーシング60は、このフランジ部63により、ポンプケーシング38に連結されている。
【0026】
ステータコア68には、その内周部側に開口する多数のスロット70が画定され、これらスロット70の間にティース72が形成されている。これらのスロット70内を通して、コイル74がティース72に巻装されている。
【0027】
熱伝達装置36は、少なくとも一部がモータケーシング60とポンプケーシング38とに設けられた循環通路80と、循環通路を通して熱媒体としての液体(例えば、冷却水)を圧送するための圧送ポンプ82とを備えることが好ましく、圧送ポンプ82により液体を循環通路80で循環できるようになっている。
【0028】
本実施形態において、循環通路80は、液体を貯蔵したタンク(図示せず)から圧送ポンプ82を介してモータケーシング60に液体を供給する上流側通路84と、モータケーシング60に設けられたモータ側循環通路86と、ポンプケーシング38に設けられたポンプ側循環通路88と、モータ側循環通路86とポンプ側循環通路88との間を接続する接続通路90と、ポンプ側循環通路88を出た液体を圧送ポンプ82及びタンクに戻す下流側通路92とを備えている。循環通路80を構成する各通路84、86、88、90、92は、腐食防止のためステンレス管(ステンレスパイプ)で構成することが好ましい。
【0029】
また、本実施形態においては、モータ側循環通路86とポンプ側循環通路88との間にある接続通路90の部分に、液体を冷却するための冷却装置100が設けられている。
モータ側循環通路86は、配管としての循環パイプを備えており、循環パイプは、モータケーシング60に埋設されている。ポンプ側循環通路88も配管としての循環パイプを備えており、この循環パイプは、ポンプケーシング38に埋設されている。
【0030】
循環通路80の上流側通路84は、一端が電磁弁81を介して図示しないタンクに接続され、他端がモータケーシング60に埋設されたモータ側循環通路86の入口85に接続されている。この上流側通路84は、また、電磁弁83を介して圧送ポンプ82の出口に接続されている。
【0031】
下流側通路92は、一端がポンプ側循環通路88の出口89に接続され、他端が電磁弁85を介して図示しないタンクに接続されていると共に、圧送ポンプ82の入口に接続されている。電磁弁81及び85は常時閉となっており、電磁弁83は常時開となっている。このため、ポンプ側循環通路88の出口を出た液体は、圧送ポンプ83に入り、圧送ポンプ82で圧送されて、電磁弁83を介して、モータ側循環通路86とポンプ側循環通路88とを通って循環するようになっている。液体が不足した場合は、電磁弁81が開かれて液体が追加され、液体が余分な場合は電磁弁85が開かれてタンクに戻されるようになっている。これら電磁弁の開閉は、後述する制御装置で制御されるようになっている。
【0032】
循環通路80のモータ側循環通路86は、モータケーシング60内を、
図2において、
左側から右側に向けて螺旋状に配管されている。モータケーシング60に埋設されたモータ側循環通路86は、ステータコア64にできるだけ隣接して配置されている。電動モータ32で発生する熱は、主に、ステータコア64で発生する鉄損と、ティース72に巻かれたコイル74で発生する銅損とからなっている。そのため、銅損で発生する熱をより効率的に吸収できるように、モータ側循環通路86を構成する循環パイプは、ステータコア64やティース72に隣接するようにモータケーシングに埋め込むことが好ましい。また、モータ側循環通路86は、循環パイプをモータケーシング60に鋳包んでモータケーシング60に埋設することが好ましい。
【0033】
また、ポンプ側循環通路88は、ポンプケーシング38において、
図2において、左側から右側に向けて螺旋状に配管されている。もっとも、ポンプケーシング38を一体ではなく別体に形成して、別体のケーシングを組み合わせてポンプケーシングを構成する場合、循環通路を螺旋状に形成する必要はない。例えば、断面半円形状の半円筒形ケーシングを2つ成形し、これら2つの半円筒形ケーシングを組み合わせて、円筒形状のポンプケーシングを構成する場合、半円筒形のケーシングのそれぞれに循環パイプを半螺旋状に配置し、片側において循環パイプを連結することにより、循環通路を構成することもできる。
【0034】
ポンプ側循環通路88も、循環パイプをポンプケーシング38に鋳包んで製造することにより、ポンプケーシング38に埋設することが好ましい。ポンプ側循環通路88は、ロータ48の径方向外側に形成された圧縮ガス通路の径方向外側に配置されると共に、ロータ48間に配置されている。ポンプ側循環通路88が、部分的にロータの径方向外側に配管されているため、ロータ48とポンプケーシング38との間が加温され、ロータ48とポンプケーシング38との間における生成物の堆積が防止される。また、ポンプ側循環通路88が、ロータ48間に配管されているため、ロータ48間が加温され、ロータ間における生成物の堆積が防止される。本実施形態においては、ポンプの軸受け50を、別の冷却経路111で冷却している。
【0035】
モータ側循環通路86とポンプ側循環通路と88の間を接続する接続通路90は、モータ側循環通路86の出口93と、ポンプ側循環通路88の入口95との間を接続している。接続通路90は、モータケーシング60とポンプケーシング38との外側に設けられている。
【0036】
接続通路90は、モータ側循環通路86の出口93よりモータケーシングの外方に延在する出口部分94と、ポンプケーシング38の外側からポンプ側循環通路の入口95に延在する入口部96と、出口部と入口部とを連通する連通部98とを備えている。
【0037】
本実施形態においては、真空ポンプ装置は、また、冷却装置100と、モータ側循環通路86及びポンプ側循環通路88との間を液体連通可能に遮断する弁装置102と、ポンプケーシング38に設けられ該ポンプケーシングの温度を検出するための温度センサ104と、温度センサ104で検出されたポンプケーシング38の温度に基づいて弁装置102を制御する制御装置106とを備えている。
【0038】
本実施形態において、冷却装置100は、ラジエータ108を備えており、ラジエータ108を通る液体の熱を大気中に放熱させることにより液体を冷却している。ラジエータ108には、入口通路110と出口通路112とが接続されている。ラジエータの入口通路110は、一端が接続通路の出口部94に接続され、他端がラジエータ108の入口に接続されて、モータ側循環通路86を出た液体をラジエータ内に取り込むことができるようになっている。一方、ラジエータの出口通路112は、一端がラジエータの出口に接続され、他端が接続通路90の入口部96に接続され、ラジエータで冷却された液体を、接
続通路90の入口部96を介して、ポンプ側循環通路88に供給できるようになっている。
【0039】
この実施形態においては、ラジエータ108の入口通路110が、接続通路90の出口部94と連通部98との間に接続されることにより、T字形状の第1の交差部が構成されている。同様に、ラジエータの出口通路112が、接続通路の連通部98と入口部96との間に接続されることにより、T字形状の第2の交差部が構成されている。そして、本実施形態においては、接続通路の連通部98が、第1の交差部と第2の交差部とを直接的に連通してラジエータをバイパスするためのバイパス通路を構成している。
【0040】
弁装置102は、ラジエータ108の入口通路110に設けられた入口側電磁弁114と、ラジエータの出口通路112に設けられた出口側電磁弁116と、接続通路90の連通部98に設けられたバイパス側電磁弁118とを備えており、これら電磁弁は、制御装置106により開閉制御されるようになっている。
【0041】
温度センサ104は、ポンプケーシング温度との相関関係が確認できる部位であれば、どこに設けても良い。
制御装置106は、温度センサ104で検出されたポンプケーシング38の温度を検知している。そして、ポンプケーシング38の温度が所定温度以上になったとき、制御装置106は、入口側電磁弁114と出口側電磁弁116とを開くとともに、バイパス側電磁弁118を閉じる。これにより、液体がラジエータ108を通って放熱され、液体の温度を下げることができる。温度センサ104で検出されたポンプケーシング38の温度が所定温度以下の場合、制御装置106は、入口側電磁弁114と出口側電磁弁116とを閉じるとともに、バイパス側電磁弁118を開ける。これにより、液体は、連通部98を通ってラジエータ108をバイパスし、液体の温度を下げることがなく、ポンプケーシング38の温度を迅速に上げることができる。
【0042】
本実施形態において、さらに、電動モータを32制御するためのインバータ120を備えることができる。この場合、制御装置106は、温度センサ104からのポンプケーシング38の温度に基づいて、インバータ120を制御して電動モータ32の力率を制御する。真空ポンプの始動時などポンプケーシング32やポンプロータ48の温度が低い場合、力率を悪くすることにより、界磁コイル74に流れる電流を増大させて、界磁コイル部分の銅損を増大させて電動モータをより迅速に加温することができる。ポンプケーシング38やポンプロータ48が十分に暖められたとき、力率を改善することにより、真空ポンプを効率良く稼働させることができる。このように、電動モータに電力を供給するインバータを備えることにより、電動モータの力率を制御でき、力率を低くするように制御して、ポンプケーシング温度を所定の温度まで短時間で温めることができる。
【0043】
本実施形態においては、真空ポンプ装置の運転前までに液体を循環通路80の配管内に注入し、真空ポンプ装置運転と同時に圧送ポンプを稼働して、液体を循環させる。
電動モータ32の温度が上がってきた場合、モータ側循環通路内を流れる液体の温度も上がり、この温度が上がった液体が、ポンプケーシング38に埋設されたポンプ側循環通路88を流れため、ポンプケーシング38やポンプロータ48が暖められる。このようにして、電動モータ32の温度が十分に上がった場合、制御装置106はインバータ120タを制御して力率を改善し、電動モータ32の電流を抑え、効率的な運転を行う。一方、制御装置106は、温度センサ104で検出されたポンプケーシング38の温度が所定温度以上になったとき、入口側電磁弁114と出口側電磁弁116とを開くとともに、バイパス側電磁弁118を閉じ、液体をラジエータ108で冷却して、液体の温度を下げるよう液体の温度を調節する。
【0044】
以上のように、上記実施形態においては、電動モータ32で発生した熱をポンプケーシング38やポンプロータ48に供給でき、これにより、ヒータを用いることなく、真空ポンプ装置のポンプ部の内部の温度を上昇させることが可能となり、ポンプ部が排気するプロセスガスに含まれる反応副生成物の固体化を防ぎ、生成物の析出を効果的に防止することができる。
【0045】
次ぎに、本願発明の第2の実施形態を
図5に基づいて説明する。なお、第1の実施形態と同様な構成は同符号を用いてその説明を省略する。
第2の実施形態は、
図5に示されているように、ラジエータ108の位置が第1の実施形態と異なっている。第2の実施形態においては、ラジエータ108は、ポンプ側循環通路88を出た液体を圧送ポンプ82及び図示しないタンクに供給する、循環通路80のうちの下流側通路92に配置されている。ラジエータ108の入口通路110は、一端が、下流側通路92のうちポンプ側循環通路の出口側に接続され、他端がラジエータの入口に接続されて、ポンプ側循環通路を出た液体をラジエータ内に取り込むことができるようになっている。一方、ラジエータの出口通路112は、一端がラジエータの出口に接続され、他端が、下流側通路92のうち圧送ポンプ側に接続されている。第2の実施形態においては、ラジエータ108で冷却された液体を、圧送ポンプ82を介して、まず、電動モータ側に供給できる。このため、モータ温度異常時等にモータ温度を効果的に下げることができるという特徴をもっている。
【0046】
なお、温度センサを電動モータ側にも設け、電動モータの温度に基づいて、電磁弁114、116、118を制御することもできる。この場合、ポンプ側に温度センサを設けてポンプ側の温度を制御しても良いし、ポンプ側に温度センサを設けなくても良い。
【0047】
以上のように、第2の実施形態によれば、ポンプ部からモータ部へ接続された配管に電磁弁を介してラジエータを接続したので、モータ温度異常時等にモータ温度を効果的に下げることができる。
【0048】
次ぎに、本発明の第3実施形態に係る真空ポンプ装置を
図6及び
図7に基づいて、説明する。なお、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様な構成は同符号を用いてその説明を省略する。
【0049】
図6に示す真空ポンプ装置は、ポンプ部としての、真空側に配置されるブースターポンプ200と、外気側に配置されるメインポンプ300とを備え、ブースターポンプ200とメインポンプ300は直列に接続されている。ブースターポンプ200は、メインポンプ300よりも高い排気速度を有しており、真空ポンプ装置全体として、メインポンプ単体のものと比較して、真空チャンバ内のプロセスガスをより迅速に排気できるようになっている。ブースターポンプ200は、吸込口202と吐出口204を有しており、吸込口202が、図示しない真空チャンバ内に接続されるようになっている。ブースターポンプ200の吐出口204は、接続管400を介して、メインポンプ300の吸込口302に接続されている。
【0050】
ブースターポンプ200は、上記第1の実施形態と第2の実施形態に係る真空ポンプ装置と同じように、電動モータ32で発生した熱を、熱伝達装置によりポンプケーシング238に伝達して、ポンプケーシング238及びポンプロータ248(ポンプ部)を加温するようになっている。ブースターポンプ200は、対向する一対のロータ248をポンプケーシング238内に備え、ポンプケーシング238の一方の端部に設けた電動モータ32により駆動されるようになっている。対向する一対のロータ248は、その軸端に設けたタイミングギア56により互いに反対方向に同期回転する。
【0051】
メインポンプ300は、上記第1の実施形態と第2の実施形態と同様に、ポンプ部としてルーツ型ドライ真空ポンプが用いられているが、電動モータ32で発生した熱を用いておらず、メインポンプ300の吐出口302側で発生した圧縮熱を利用して該メインポンプのほぼ全体を加温するようなっている。
【0052】
第3実施形態に係る真空ポンプ装置においては、ブースターポンプ200の軸受け50と、メインポンプ300の軸受け50とを効率的に冷却するために、軸受け用の冷却経路500を備えている。
【0053】
ブースターポンプ200の電動モータ32も、メインポンプ300の電動モータ32も、例えば、ブラシレス直流モータとすることができ、これら電動モータによって、ブースターポンプのシャフト及びロータと、メインポンプのシャフト及びロータが、回転駆動されるようになっている。ブースターポンプ及びメインポンプのシャフトの電動モータと反対側には、それぞれ、互いに噛み合う一対のタイミングギヤ56が固定されており、それぞれのポンプのロータ同期を保つようになっている。
【0054】
ブースターポンプ200の熱伝達装置は、
図5に示した第2実施形態の熱伝達装置とほぼ同様の構成となっている。ブースターポンプ200は、排気速度が高くなるように、長尺状のロータ248により一段で圧縮する構造となっている。このため、長尺状のロータ248を収容するケーシング238は、ロータ248が配置された部分においてシャフト246の軸線方向に沿った厚みが同一となっており、このケーシング238にポンプ側循環通路288が螺旋状に配置されている。したがって、ポンプ側循環通路288は、シャフト246の軸線方向に対し交差する径方向において、シャフト246からほぼ同一距離に配置されて、ブースターポンプ内をほぼ一様に加温できるようになっている。そして、ポンプケーシング238の温度を検出するための温度センサ104が設けられており、温度センサで検出されたポンプケーシング238の温度に基づいて、制御装置106が、電磁弁114、116、118の開閉を制御してラジエータ108に流れる液体の量を制御して、ポンプケーシングの温度を調節できるようになっている。
【0055】
一方、メインポンプ300は、プロセスガスを排気するためのポンプケーシング338及びポンプロータ348(ガス排出用のポンプ部)と、ポンプ部を駆動するための電動モータ(モータ部)32と、ポンプ部の排気側で発生した圧縮熱を、メインポンプのほぼ全体に伝達するための熱伝達装置336とを備えている。メインポンプ300は、上記第1及び第2の実施形態と同様に、多段型ポンプとなっており、ロータ348がシャフト346に固定されて、ケーシング338に設けられている。上述したように、最終段で圧縮されて大気中に放出されるプロセスガスは、ポンプケーシング338の吐出口304の箇所で温度が一番高くなっている。メインポンプ用熱伝達装置は、この排気側すなわち吐出口側の圧縮熱をポンプケーシング338のほぼ全体に伝えるようになっている。
【0056】
ポンプケーシング338は、一対の別体で成形された第1のポンプケーシング338aと第2のポンプケーシング338bを組み合わせて構成されている。第1と第2のケーシングは、それぞれ、断面半円で半円筒形状となっており、これら2つの半円形のケーシングを組み合わせて、円筒形状のポンプケーシング338を形成している。
【0057】
メインポンプ用の熱伝達装置336は、少なくとも一部がポンプケーシング338に設けられた循環通路380と、循環通路380を通して液体を圧送するための圧送ポンプ382とを備え、圧送ポンプ382により液体を循環通路380で循環できるようになっている。循環通路380は、電動モータ32のモータケーシング60に配置されておらず、ポンプケーシング338とその周辺にだけ配置されている。
【0058】
循環通路380は、液体を貯蔵したタンク(図示せず)から圧送ポンプを介してポンプケーシング338に液体を供給する上流側通路384と、第1のポンプケーシング338aに埋設された第1のポンプ側循環通路388aと、第2のポンプケーシング338bに設けられた第2のポンプ側循環通路388bと、第1のポンプ側循環通路388aと第2のポンプ側循環通路388bとの間を接続する接続通路390と、第2のポンプ側循環通路388bを出た冷却水を圧送ポンプタ及びタンクに供給する下流側通路392とを備え、下流側通路392に液体を冷却するためのラジエータ108が設けられている。
【0059】
第1のポンプ側循環通路388aも、第2のポンプ側循環通路388bも、それぞれ、循環パイプを半螺旋状に配置してそれぞれのポンプケーシングに埋め込まれて構成されている。例えば、第1のポンプ側循環通路388aは、第1のポンプケーシング338aの形状に沿って、軸線方向に対して交差するよう半円弧を描くように延在し、第1のポンプケーシングの端部で折り返し、その反対方向に、軸線方向に対して交差するよう半円弧状方向に延在し、これが繰り返されて、全体として半螺旋形状となるように配置されている。第1及び第2のポンプ側循環通路は、吐出口304付近を通してポンプケーシングに埋設されており、真空ポンプの吐出口304の周囲に配置された第1及び第2のポンプ側循環通路388a、388bに流れる液体が、吐出口304の箇所で発生する圧縮熱を吸収し、第1及び第2のポンプ側循環通路を介してポンプケーシング全体を加温できるようになっている。そして、ポンプケーシング338の温度を検出するための温度センサ304が設けられており、温度センサ304で検出されたポンプケーシング338の温度に基づいて、制御装置106が、メインポンプ300の電磁弁114、116、118を制御してラジエータ108に流れる液体の量を制御して、ポンプケーシング338の温度を調節できるようになっている。
【0060】
軸受け用の冷却経路500は、一系統で、ブースターポンプ200の軸受け50とメインポンプ300の軸受け350を冷却できるようになっており、図示しない冷却経路のポンプと接続されている。
【0061】
冷却経路500は、この図示しないポンプと接続された第1の経路部502と、第1の経路部502に接続されモータケーシング60に埋設された第2の経路部504と、第2の経路部504の出口に接続されメインポンプ300のシャフトの一方の軸受けを冷却する第3の経路部506と、第3の経路部506を出た冷却水を、メインポンプ300のシャフトの他方の軸受けに案内して冷却する第4の経路部508と、第4の経路部508を出た冷却水をブースターポンプ200のシャフトの一方の軸受けに案内して冷却する第5の経路部510と、第5の経路部510を出た冷却水をブースターポンプ200のシャフトの他方の軸受けに案内して冷却する第6の経路部512と、第6の経路部512を出た冷却水をポンプ(図示せず)の入口に接続するための第7の経路部514とを備えている。このように、第3の実施形態においては、冷却経路500の一部を利用して、メインポンプ300の電動モータ32のモータケーシング60を冷却できるようにしている。
【0062】
第3の実施形態においても、真空ポンプ装置の始動時、真空ポンプ装置の運転前までに液体を循環通路380に、冷却水を冷却経路500に注入し、真空ポンプ装置の運転と同時に、循環用の圧送ポンプ82、382と、冷却経路のポンプ(図示せず)を稼働する。真空ポンプ装置の始動時、ブースターポンプ200の電動モータ32が暖められていないため、ポンプケーシング238もポンプロータ248も温度が低くなっており、生成物の堆積が生じやすくなっている。また、メインポンプ300の吐出口304周辺の温度も低くなっている。その際、制御装置106は、インバータ120を制御して、ブースターポンプ200の電動モータ32の力率を悪くすることにより、電動モータ32に流れる電流を増大させる。また、制御装置104は、ブースターポンプ側とメインポンプ側において、入口側電磁弁114と出口側電磁弁116とを閉じるとともに、バイパス側電磁弁11
8を開けて、冷却水をラジエータ108を通ることなくバイパスさせ、ブースターポンプとメインポンプのポンプケーシングの温度を迅速に上げることができる。
【0063】
ブースターポンプ200の電動モータ32の温度が上がってきた場合、モータ側循環通路86内を流れる液体の温度も上がり、この温度が上がった液体が、ポンプケーシング238に埋設されたポンプ側循環通路288を流れため、ポンプケーシング238やポンプロータ248が暖められる。このようにして、ポンプケーシング238の温度が十分に上がった場合、制御装置106はインバータ120を制御して力率を改善し、ブースターポンプ200の電動モータ32の電流を抑え、効率的な運転を行う。
【0064】
一方、制御装置106は、ブースターポンプ200の温度センサ104やメインポンプ300の温度センサ304で検出されたそれぞれのポンプケーシングの温度が所定温度以上になったとき、入口側電磁弁114と出口側電磁弁116を開くとともに、バイパス側電磁弁118を閉じ、液体をラジエータ108で冷却して、液体の温度を下げ、液体の温度を所定温度になるように調節している。
【0065】
以上のように、上記実施形態においては、ブースターポンプにおいては、電動モータで発生した熱をポンプケーシングやポンプロータに供給でき、これにより、ヒータを用いることなく、真空ポンプ内部の温度を上昇させることが可能となり、真空ポンプ゜が排気するプロセスガスに含まれる反応副生成物の固体化を防ぎ、生成物の析出を効果的に防止することができる。
【0066】
一方、メインポンプにおいては、ポンプケーシングの吐出口付近における排気ガスの圧縮熱をポンプケーシングやポンプロータに供給でき、これにより、ヒータを用いることなく、真空ポンプ内部の温度を上昇させることができる。
【0067】
また、上記実施形態において、真空ポンプのロータの形状としてマユ型や三つ葉形状のものを示したが、本願発明はこれに限定されるものではなく他の型や形状のロータであってもよい。