特許第5952832号(P5952832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952832
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】呈味改善剤及びそれを含有する飲食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/10 20160101AFI20160630BHJP
【FI】
   A23L27/10 C
【請求項の数】17
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2013-548303(P2013-548303)
(86)(22)【出願日】2012年12月6日
(86)【国際出願番号】JP2012081712
(87)【国際公開番号】WO2013085014
(87)【国際公開日】20130613
【審査請求日】2014年7月2日
(31)【優先権主張番号】特願2011-267380(P2011-267380)
(32)【優先日】2011年12月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004189
【氏名又は名称】日本水産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】土屋 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】下野 将司
(72)【発明者】
【氏名】市川 明子
(72)【発明者】
【氏名】杉山 公教
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−130669(JP,A)
【文献】 特開2010−004767(JP,A)
【文献】 特開2006−296357(JP,A)
【文献】 特開平10−146165(JP,A)
【文献】 特開2008−061511(JP,A)
【文献】 特開平11−103823(JP,A)
【文献】 特開2006−029481(JP,A)
【文献】 特開2001−103930(JP,A)
【文献】 特開2008−291002(JP,A)
【文献】 特開平05−316964(JP,A)
【文献】 特開2011−072307(JP,A)
【文献】 J. Agric. Food Chem.,1997年,45, 12,4505-4515
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともアピゲニン、ダイジン又はアピゲニンの配糖体のいずれかを含有する野菜抽出物を有効成分とする、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、又はアンモニウム塩を含有する食品の呈味改善剤。
【請求項2】
有効成分としてさらにリン脂質を含有する請求項1の呈味改善剤。
【請求項3】
野菜抽出物が、アピゲニン及び/又はアピゲニンの配糖体を含有するものである請求項1に記載の呈味改善剤。
【請求項4】
野菜抽出物が、パプリカ、アスパラガス、ごぼう、トマト、にがうり、パセリ、枝豆、アヤムラサキ、にんじん、春菊、ほうれん草、大麦若葉、明日葉、桑葉、大根、モロヘイヤ、ケール、やまいも、ブロッコリー、ピーマン、セロリのいずれかの抽出物である請求項1ないし3のいずれかに記載の呈味改善剤。
【請求項5】
野菜抽出物が、水及び/又はエタノールにより抽出されたものである請求項1ないし4いずれかの呈味改善剤。
【請求項6】
リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、及び/又はそれらのリゾ体である請求項の呈味改善剤。
【請求項7】
リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルイノシトールのいずれか、及び、それらのリゾ体のいずれかを含有するものである請求項6の呈味改善剤。
【請求項8】
リン脂質が、植物、動物及び/又は菌類の抽出物である請求項6又は7の呈味改善剤。
【請求項9】
さらに塩基性アミノ酸を添加した、請求項1ないし8いずれかに記載の呈味改善剤。
【請求項10】
塩基性アミノ酸が、アルギニンである請求項9に記載の呈味改善剤。
【請求項11】
さらに糖類を添加した、請求項1ないし10いずれかに記載の呈味改善剤。
【請求項12】
糖類が、トレハロース及び/又は還元水飴である請求項11に記載の呈味改善剤。
【請求項13】
請求項1ないし12に記載のいずれかの呈味改善剤を添加することを特徴とする、所定量以上のカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、又はアンモニウム塩を含有する食品の呈味改善方法。
【請求項14】
呈味改善剤を食品に添加する際に、呈味改善剤中の野菜抽出物の固形物量換算で食品中の濃度が0.001〜1重量%になるように、あるいは、リン脂質換算で0.001〜1重量%になるように、食品に呈味改善剤を添加することを特徴とする請求項13の方法。
【請求項15】
呈味改善剤として野菜抽出物及び/又はリン脂質と共に、糖類及び/又は塩基性アミノ酸を食品に添加する場合に、糖類及び/又は塩基性アミノ酸の添加量が、それぞれ、野菜抽出物及び/又はリン脂質の添加量1重量部に対して、2〜100重量部、0.1〜10重量部である請求項14の方法。
【請求項16】
請求項1ないし12に記載のいずれかの呈味改善剤が添加された、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、又はアンモニウム塩1重量部に対して、呈味改善剤を野菜抽出物の固形分として0.001〜1重量部含有する食塩の代替品
【請求項17】
さらに、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、又はアンモニウム塩1重量部に対して、リン脂質を0.001〜1重量部、及び/又は、アルギニンを0.02〜2.5重量部含有する請求項16の食塩の代替品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩に起因する不快な苦味、渋味、えぐ味、収斂味等を選択的に改善又は低減するための呈味改善剤、それを用いたカリウム塩の呈味改善方法、及びそれらを含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
食塩(塩化ナトリウム)は、人間にとって必要不可欠な栄養成分である。例えば、体内の水分やpH、浸透圧の調整、食べ物の消化、栄養素の吸収、神経伝達、筋肉の収縮弛緩等が挙げられ、その機能において重要な役割を果たす。食品における食塩の役割は多岐にわたる。例えば、旨味や風味の強化、テクスチャーの付与、色調の保持等が挙げられる。特に食品の味への影響は大きく、食塩の添加は甘味、旨味を強化し、不快な苦味を減少させる。しかし、食塩の過剰摂取は高血圧、腎臓病、心臓病、癌などの生活習慣病を引き起こすリスクを高めると考えられている。食塩の過剰摂取による生活習慣病のリスク上昇を予防する観点から、厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2010年度版)」において、成人における食塩の摂取目標量を男性で9.0g/日未満、女性で7.5g/日未満と設定している。平成21年度国民栄養・健康調査によれば成人の食塩摂取量は、男性で11.6g/日、女性で9.9g/日であり、年々低下しているものの目標量には達していない。WHOや国際高血圧学会ガイドラインでは、食塩摂取量6.0g/日未満を勧めている。
【0003】
食塩摂取量を低減させるためには、単に飲食品の調味や加工において食塩の使用量を減らす方法が考えられる。しかし、上記に論じたように、食塩は食品の品質を左右する重要な役割を担っていることから、調味や加工において単純に食塩の使用量を減らした飲食品は、風味を損ない、味気ないものとなる。減塩食品を開発するにあたり最も重要なのが、食塩を低減してもしっかりとした塩味と美味しさを両立させることであり、これを実現できる技術開発が強く求められている。
食塩以外の塩味を呈する物質を添加することで食塩を低減したときの塩味の物足りなさを補うことが出来る。塩味を呈する物質として塩化カリウム等のカリウム塩、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩、塩化カルシウム等のカルシウム塩、塩化アンモニウム等のアンモニウム塩が知られている。これらの物質は、塩化ナトリウムに比べて塩味が弱く、不快な苦味、渋味、えぐ味、収斂味等を呈することが特徴である。また、味の受容に関する分子レベルでの研究が盛んに行われているが、これらの塩味代替物質が、塩味や苦味、渋味、えぐ味、収斂味等を発現する詳細な受容メカニズムは解明されていない。これらの塩味代替物質を用いて食塩を低減し、塩味以外の不快な呈味を抑制する技術として、塩化カリウム、塩化アンモニウム、乳酸カルシウム、L−アスパラギン酸ナトリウム、L−グルタミン酸塩及び/又は核酸系呈味物質を特定の割合で混合してなる調味料組成物(特許文献1)、有機酸のカルシウム塩やマグネシウム塩を組み合わせた塩化カリウムの苦味抑制方法(特許文献2)、塩基性アミノ酸(ヒスチジン、アルギニン、リジン)及び/又は塩基性ペプチド(アンセリン、カルノシン、バレニン)を有効成分とする塩化カリウム含有飲食品の呈味改善剤(特許文献3)、ポリ−ガンマ−グルタミン酸またはその塩を含有するカリウム塩の呈味改善剤(特許文献4)、糖リン酸エステルからなるミネラル呈味改善剤(特許文献5)、カラギナンを併用使用することによる塩化カリウムの脱苦味方法(特許文献6)、塩化カリウムにグルコン酸ナトリウム及び/又はグルコン酸カリウムと乳清ミネラルを特定の割合で配合した食塩代替物(特許文献7)、ナトリウム、ナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属、フラボノイド類を特定の割合で含有する粉末調味料(特許文献8)、トレハロースによる塩化カリウムの苦味及び/又は金属味フレーバーの抑制(特許文献9)、キナ酸又はキナ酸を含有する組成物、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油、アリウム属植物抽出物によるカリウム塩又はカリウム塩含有飲食品の呈味改善剤(特許文献10)等が知られている。しかし、塩味以外の不快な呈味を十分に抑制できない、呈味改善素材由来の不快な風味等の理由で消費者のニーズにあった技術には到達していない。
【0004】
一方、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩以外に不快な苦味、渋味、えぐ味、収斂味等を呈する物質として、キニーネ、カフェイン等のアルカロイド類、カテキン、タンニン等のポリフェノール類、蛋白加水分解物から生じるペプチド、アミノ酸等、甘味料として使用されているアスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ネオテーム等が挙げられる。これらの不快な呈味を抑制する技術として、ホスファチジン酸及びホスファチジルイノシトールを含有する苦味抑制剤(特許文献11)では、グレープフルーツ果汁、コーヒー、塩酸キニーネの苦味抑制が例示されている。酸性リン脂質もしくはそのリゾ体を苦味低減成分として含む苦味低減化剤(特許文献12)では、塩酸キニーネ、硫酸キニーネの苦味低減が例示されている。その他に、苦味を呈するアミノ酸及び苦味を呈するペプチドからなる群より選ばれる呈苦味物質と、酸性リン脂質及びそのリゾ体からなる群より選ばれるリン脂質とを含有する食品用組成物(特許文献13)、焙煎コーヒーの溶媒抽出物からなる高甘味度甘味料の呈味改善剤(特許文献14)、ビセニン−2からなる高甘味度甘味料の呈味改善剤(特許文献15)、野菜汁(トマト、ニンジン、セロリ)と、アルコールとを含有し高甘味度甘味料の呈味が改善された飲料(特許文献16)、ショウガ抽出物と、さらにキャラウェイ精油、ペパーミントテイル精油、カルダモン精油、ナツメグ抽出物及びホップ精油から選択される1種以上を含有する高甘味度甘味料の呈味改善剤(特許文献17)、平均分子量が500〜4500であり、かつ哺乳類由来のコラーゲンペプチドを有効成分とする硫酸キニーネ苦味抑制剤(特許文献18)、天然物由来の中性リン脂質によるウコン抽出物又は担子菌類抽出物の苦味低減化方法(特許文献19)等が知られている。しかし、上述した特許文献11〜19に記載の技術は、いずれも、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩の呈味を改善するという観点でなされたものではない。溶媒に対する親和性が異なることから不快な苦味、渋味、えぐ味、収斂味等を受容するメカニズムは異なると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−187841号公報
【特許文献2】特開平4−108358号公報
【特許文献3】WO2006/114918
【特許文献4】特開2009−136266号公報
【特許文献5】特開2003−79337号公報
【特許文献6】特開平4−262758号公報
【特許文献7】特開2008−289426号公報
【特許文献8】特開2007−267724号公報
【特許文献9】特表2008−510469号公報
【特許文献10】特開2010−4767号公報
【特許文献11】特開2007−129936号公報
【特許文献12】特開平8−9897号公報
【特許文献13】特開平8−173093号公報
【特許文献14】特開2006−81544号公報
【特許文献15】特開2006−238828号公報
【特許文献16】特開2009−254247号公報
【特許文献17】特開2011−30535号公報
【特許文献18】特開2011−15632号公報
【特許文献19】特許第4634886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩に起因する不快な苦味、渋味、えぐ味、収斂味等を選択的に改善又は低減するための呈味改善剤、それを用いたカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩の呈味改善方法、及びそれらを含有する飲食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下(1)〜(17)の呈味改善剤、呈味改善方法及び呈味が改善された飲食品を要旨とする。
(1)野菜抽出物及び/又はリン脂質を有効成分とする、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩を含有する食品の呈味改善剤。
(2)野菜抽出物が、野菜由来の配糖体及び/又はその配糖体のアグリコンを含有するものである(1)の呈味改善剤。
(3)野菜抽出物が、アピゲニン、ダイジン、ルチン及び/又はそれらの配糖体を含有するものである(1)に記載の呈味改善剤。
(4)野菜抽出物が、パプリカ、アスパラガス、ごぼう、ガーリック、トマト、にがうり、パセリ、枝豆、アヤムラサキ、にんじん、春菊、ほうれん草、大麦若葉、明日葉、桑葉、大根、玉葱、モロヘイヤ、ねぎ、ケール、やまいも、ブロッコリー、ピーマン、セロリのいずれかの抽出物である(1)又は(2)に記載の呈味改善剤。
(5)野菜抽出物が、水及び/又はエタノールにより抽出されたものである(1)ないし(4)いずれかの呈味改善剤。
(6)リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、及び/又はそれらのリゾ体である(1)の呈味改善剤。
(7)リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルイノシトールのいずれか、及び、それらのリゾ体のいずれかを含有するものである(6)の呈味改善剤。
(8)リン脂質が、植物、動物及び/又は菌類の抽出物である(6)又は(7)の呈味改善剤。
(9)さらに塩基性アミノ酸を添加した、(1)ないし(8)いずれかに記載の呈味改善剤。
(10)塩基性アミノ酸が、アルギニンである(9)に記載の呈味改善剤。
(11)さらに糖類を添加した、(1)ないし(10)いずれかに記載の呈味改善剤。
(12)糖類が、トレハロース及び/又は還元水飴である(11)に記載の呈味改善剤。
(13)(1)ないし(12)いずれかの呈味改善剤を添加することを特徴とする所定量以上のカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩を含有する食品の呈味改善方法。
(14)呈味改善剤を食品に添加する際に、呈味改善剤中の野菜抽出物の固形物量換算で食品中の濃度が0.001〜1重量%になるように、あるいは、リン脂質換算で0.001〜1重量%になるように、食品に呈味改善剤を添加することを特徴とする(13)の方法。
(15)呈味改善剤として野菜抽出物及び/又はリン脂質と共に、糖類及び/又は塩基性アミノ酸を食品に添加する場合に、糖類及び/又は塩基性アミノ酸の添加量が、それぞれ、野菜抽出物及び/又はリン脂質の添加量1重量部に対して、2〜100重量部、0.1〜10重量部である(14)の方法。
(16)(1)ないし(12)に記載のいずれかの呈味改善剤が添加された、所定量以上のカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩を含有する飲食品。
(17)飲食品中のカリウム濃度が0.4〜10.0重量%であって、野菜抽出物(固形物量)及び/又はリン脂質を0.01〜0.5重量%含有する(16)の飲食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明の呈味改善剤は、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩に起因する不快な苦味、渋味、えぐ味、収斂味等を改善又は低減する作用を有する。したがって、本発明の呈味改善剤を用いることにより、飲食品中のナトリウム塩、特に塩化ナトリウムの一部をカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩で置き換えたにも関わらず、置き換える前と同等の良好な塩味を感じさせることができるので、ナトリウム塩の使用量を減量することができる。更に、飲食品そのものにカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩が所定量以上含まれている場合においても風味が良好な飲食品を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1における、アスパラガス、ごぼう及び小松菜の抽出物の塩化カリウム呈味改善効果
図2】実施例1における、ガーリック、トマト、にがうり及び生姜の抽出物の塩化カリウム呈味改善効果
図3】実施例1における、パセリ、枝豆、アヤムラサキ及びゆずの抽出物の塩化カリウム呈味改善効果
図4】実施例1における、パプリカ、にんじん及び春菊の抽出物の塩化カリウム呈味改善効果
図5】実施例1における、ほうれん草、大麦若葉、明日葉及びよもぎの抽出物の塩化カリウム呈味改善効果
図6】実施例1における、桑葉、大根、玉葱及びさつまいもの抽出物の塩化カリウム呈味改善効果
図7】実施例1における、モロヘイヤ、ねぎ、ケール及びやまいもの抽出物の塩化カリウム呈味改善効果
図8】実施例1における、ブロッコリー、赤ピーマン、セロリ及びキャベツの抽出物の塩化カリウム呈味改善効果
図9】実施例1における、パプリカ、パセリ、桑葉、大麦若葉、ほうれん草、モロヘイヤ、ブロッコリーの抽出物の塩化カリウム呈味改善効果
図10】実施例2における、パセリ抽出物添加量と塩化カリウム呈味改善効果
図11】実施例2における、パセリ抽出物の塩化カリウム呈味改善力価
図12】実施例3における、合成吸着剤処理により分画した成分の呈味改善効果
図13】実施例3における、弱塩基性陰イオン交換樹脂カラム処理により分画した成分の呈味改善効果
図14】実施例3における、ODSカラム(25ml)処理により分画した成分の呈味改善効果
図15】実施例3における、ODSカラム(75ml)処理により分画した成分の呈味改善効果
図16】実施例3における、画分13の添加量と塩化カリウムの呈味改善効果
図17】実施例4における、各種配糖体及びアグリコンの塩化カリウム呈味改善効果
図18】実施例5における、抽出温度の異なるパセリ抽出物の塩化カリウムの呈味改善効果
図19】実施例5における、抽出エタノール濃度の異なるパセリ抽出物の塩化カリウムの呈味改善効果
図20】実施例5における、抽出pHの異なるパセリ抽出物の塩化カリウムの呈味改善効果
図21】実施例6における、リン脂質の塩化カリウム呈味改善効果
図22】実施例6における、ホスファチジルコリン及びリゾホスファチジルコリンの混合比率と塩化カリウム不快味改善効果
図23】実施例7における、鶏肝臓、鮭精巣、豚肝臓、大豆、カタクチイワシ由来ホスファチジルコリンの塩化カリウム呈味改善効果
図24】実施例7における、卵黄、イカ、牛肉、スケソウダラ卵巣由来ホスファチジルコリンの塩化カリウム呈味改善効果
図25】実施例7における、栗、オキアミ、米、ビール酵母由来ホスファチジルコリンの塩化カリウム呈味改善効果
図26】実施例7における、大豆レシチンの添加量と塩化カリウム呈味改善効果
図27】実施例7における、ホスファチジルコリン及び大豆レシチンの塩化カリウム呈味改善力価
図28】実施例8における、一般的な塩化カリウム不快味識別濃度
図29】実施例8における、トレハロース、パセリ抽出物、大豆レシチンのうち、2種あるいは3種の混合による塩化カリウム呈味改善効果
図30】実施例8における、パセリ抽出物及び大豆レシチンと共に添加する糖の種類と塩化カリウム呈味改善効果
図31】実施例8における、トレハロース、パセリ抽出物、大豆レシチン3種混合による塩化カリウム呈味改善力価
図32】比較例における、既存の呈味改善剤及び本発明呈味改善剤の塩化カリウム呈味改善効果
図33】実施例9における、トレハロース、パセリ抽出物、大豆レシチン及びアルギニンの混合による塩化カリウム呈味改善効果
図34】実施例10における、本発明呈味改善剤のトマトスープにおける塩化カリウム呈味改善効果
図35】実施例11における、本発明呈味改善剤の鮭フレークにおける塩化カリウム呈味改善効果
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩に起因する不快な苦味、渋味、えぐ味、収斂味等を選択的に改善又は低減する呈味改善剤であって、野菜抽出物、リン脂質のうち少なくとも一種含有することを特徴とする。以下、「不快な苦味、渋味、えぐ味、収斂味等」を「不快味」とも記す。
本発明においてカリウム塩は、食用に適したものであれば特に制限はない。例えば、無機酸塩、有機酸塩、核酸塩、アミノ酸塩のいずれであってもよく、カリウムイオン数は1価であっても2価以上であってもよい。具体的には、塩化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、ポリリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、酢酸カリウム、乳酸カリウム、グルコン酸カリウム、ソルビン酸カリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸水素カリウム、コハク酸カリウム、コハク酸水素カリウム、クエン酸カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸二水素カリウム、酒石酸カリウム、酒石酸水素カリウム、フマル酸カリウム、フマル酸水素カリウム、グルタミン酸カリウム、アスパラギン酸カリウム、イノシン酸カリウム、グアニル酸カリウム、リジル酸カリウム、シチジル酸カリウム、リボヌクレオチドカリウム、アルギン酸カリウムなどを使用することができる。なお、本発明呈味改善剤は、一種類のカリウム塩に対して用いられてもよいし、二種類以上のカリウム塩に対して用いられてもよい。また、カリウム塩は、後述する飲食品中に単独又は数種含まれていてもよい。比較的食塩の塩味に近いことから、塩化カリウムが特に好ましい。塩化カリウムは市販の物あるいは塩化カリウムを含有するにがりを用いれば良い。
【0011】
本発明においてマグネシウム塩は、食用に適したものであれば特に制限はない。例えば、無機酸塩、有機酸塩、核酸塩、アミノ酸塩のいずれであってもよい。具体的には、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、グルタミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどを使用することができる。なお、本発明呈味改善剤は、一種類のマグネシウム塩に対して用いられてもよいし、二種類以上のマグネシウム塩に対して用いられてもよい。また、マグネシウム塩は、後述する飲食品中に単独又は数種含まれていてもよい。比較的食塩の塩味に近いことから、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムが特に好ましい。塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムは市販の物あるいは塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムを含有するにがりを用いれば良い。
本発明においてカルシウム塩は、食用に適したものであれば特に制限はない。例えば、無機酸塩、有機酸塩、核酸塩、アミノ酸塩のいずれであってもよい。具体的には、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸三カルシウム、硫酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、リボヌクレオチドカルシウムなどを使用することが出来る。なお、本発明呈味改善剤は、一種類のカルシウム塩に対して用いられてもよいし、二種類以上のカルシウム塩に対して用いられてもよい。また、カルシウム塩は、後述する飲食品中に単独又は数種含まれていてもよい。比較的食塩の塩味に近いことから、塩化カルシウム、乳酸カルシウムが特に好ましい。塩化カルシウム、乳酸カルシウムは市販の物を用いれば良い。
【0012】
本発明においてアンモニウム塩は、食用に適したものであれば特に制限はない。例えば、無機酸塩、有機酸塩、核酸塩、アミノ酸塩のいずれであってもよい。具体的には、塩化アンモニウム、アルギン酸アンモニウム、クエン酸鉄アンモニウム、グルタミン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム リン酸二水素アンモニウムなどを使用することが出来る。なお、本発明呈味改善剤は、一種類のアンモニウム塩に対して用いられてもよいし、二種類以上のアンモニウム塩に対して用いられてもよい。また、アンモニウム塩は、後述する飲食品中に単独又は数種含まれていてもよい。比較的食塩の塩味に近いことから、塩化アンモニウムが特に好ましい。塩化アンモニウムは市販の物を用いれば良い。
【0013】
本発明の呈味改善剤に用いられる野菜抽出物とは、野菜を適当な溶剤を用いて抽出して得られ、野菜由来の配糖体及び/又は配糖体のアグリコンを含有することを特徴とする。配糖体を含む野菜としては、果菜類(穀物類、マメ類、発芽野菜、果実的野菜)、根菜類(いも類)、葉茎類(茎菜類、葉菜類、花菜類)、菌茸類のいずれであっても良く、具体的にはパプリカ、ガーリック、玉葱、パセリ、アヤムラサキ、あしたば、よもぎ、桑葉、大麦若葉、ほうれん草、モロヘイヤ、ケール、ねぎ、キャベツ、小松菜、春菊、ブロッコリー、セロリ、アスパラガス、生姜、大根、人参、ごぼう、枝豆、トマト、ゆず、にがうり、赤ピーマン、やまいも、さつまいもが挙げられる。好ましくは、パプリカ、アスパラガス、ごぼう、ガーリック、トマト、にがうり、パセリ、枝豆、アヤムラサキ、にんじん、春菊、ほうれん草、大麦若葉、明日葉、桑葉、大根、玉葱、モロヘイヤ、ねぎ、ケール、やまいも、ブロッコリー、ピーマン、セロリが挙げられる。不快味を選択的に改善又は低減する効果が高く、添加された飲食品の風味を大きく変化させない点から、パセリ、ほうれん草、ブロッコリー、モロヘイヤ、桑葉、大麦若葉、パプリカが好ましい。それぞれの野菜の使用部位は、通常の可食部が好ましい。
【0014】
本発明において配糖体とは、糖類と非糖質化合物がグリコシド結合してできる化合物を指し、アグリコンとは、前記の非糖質化合物を指す。配糖体は、アグリコンの構造によって、フェノール配糖体、クマリン配糖体、フラボノイド配糖体、カルコン配糖体、アントシアニジン配糖体、アントラキノン配糖体、インドール配糖体、青酸配糖体、ステロイド系配糖体、アルカロイド配糖体に分類される。呈味改善効果の点から、フラボノイド配糖体が好ましい。フラボノイド配糖体は、さらにフラボン配糖体、フラバン配糖体、フラバノン配糖体、フラバノール配糖体、フラバノノール配糖体、フラボノール配糖体、イソフラボン配糖体、イソフラバノン配糖体に分類され、具体的にはアピイン、ダイジン、ヘスペリジン、ネオヘスペリジン、エリオシトリン、ネオエリオシトリン、ナリンギン、ラリルチン、プルニン、ジディミン、ポンシリン、アストラガリン、イソケルシトリン、ケルシトリン、ルチン、ハイペリン、ケルシメリトリン、ミリシトリン、グリシチン、ゲニスチン、カリステフィン、クリサンテミン、シアニン、ケラシアニン、イデイン、メコシアニン、ペオニン、デルフィン、ナスニン、ペツニン、マルビン、エニン、ナリルチン、ロイフォリン、リナロシド、ブラッシジン、ナルシッシンが挙げられる。不快味を選択的に改善又は低減する効果が高い点、飲食品の風味を大きく変化させない点からフラボン配糖体、イソフラボン配糖体、フラボノール配糖体が特に好ましい。
【0015】
本発明において抽出とは、溶剤を用いて野菜中に含まれる溶剤に可溶な成分、特に配糖体あるいはそのアグリコンを分離する操作を指す。溶剤は、食品に適したものであれば特に制限はなく、水、エタノール、酢酸エチル、プロパノール、アセトン、ヘキサン等が挙げられるが、安価で入手しやすいことから水および/又はエタノールが好ましい。野菜の形態は、生、フレーク状、粉末状のいずれでも良い。抽出における温度は、操作が簡便なことから、0〜100℃が好ましく、10〜80℃がより好ましく、40〜60℃が特に好ましい。抽出におけるpHは、他の食材を変性させにくいことから2〜12が好ましく、4〜8がより好ましく、飲食品の風味を大きく変化させない点から5〜7が特に好ましい。抽出におけるpHを調整する場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、アルギニン、リジン、ヒスチジン、塩酸、クエン酸、酢酸、乳酸、コハク酸、フマル酸、リン酸、リンゴ酸、グルタミン酸、アスパラギン酸が挙げられる。また、抽出効率を高める場合や配糖体をアグリコンとしたい場合、糖付加物としたい場合は市販の酵素製剤を用いることができる。具体的には、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、アラバナーゼ、ペクチナーゼ、グリコシダーゼ、ベータグリコシダーゼ、ナリンギナーゼ、ヘスペリジナーゼ等が挙げられる。
野菜抽出物の添加する量としては、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩1重量部に対して、野菜抽出物の固形分として0.001〜1重量部、特に0.01〜0.5重量部で添加するのが飲食品の風味、色調を大きく変化させない点から好ましい。
【0016】
特に不快味の抑制作用が強いのはアピインである。アピインを含有する野菜としては、パセリ、セロリ、セロリシードが例示される。パセリはセリ科の植物で、葉の縮れたカーリーパセリ(学名Petroselinum crispum)や葉が開いているイタリアンパセリ(学名Petroselinum neapolitanum)などの種類がある。本発明の目的には、いずれのタイプのパセリでもよい。セロリもセリ科の植物であり、学名 Apium graveolens var. dulceのほか、各種の改良品種がある。本発明の目的にはいずれのタイプのセロリを用いることもできる。セロリシードにもアピインが含まれることが知られており本発明の原料とすることができる。
本発明の抽出物を得るには、これら野菜からアピインを含む成分を抽出すればよい。どのような方法でも良いが、水及び/又はエタノールによる抽出が好ましい。野菜は生のまま、乾燥、凍結乾燥など、どのような処理をしたものでも構わないが、抽出効率を考えれば乾燥したものを原料とするのが好ましい。各野菜の可食部を乾燥したものを原料とする。乾燥は、熱風乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、スプレードライ、ドラムドライ等が挙げられるが、いずれの方法でも良い。乾燥後、過熱水蒸気等の殺菌処理を施した原料でも良い。
乾燥したパセリ等に水及び/又はエタノールを5〜100倍量(重量比)、好ましくは10〜50倍量(重量比)加え、0〜100℃、好ましくは10〜80℃、さらに好ましくは40〜60℃で0.5〜24時間程度で可溶性成分を抽出する。可溶性成分の収量を高める為にペクチナーゼやセルラーゼ等の酵素を用いてもよい。可溶性成分をそのまま用いることもできるが、濃縮あるいは乾燥して用いるのが適する。
また、抽出物中のアピインを濃縮するための精製工程に付して、成分を濃縮して用いることもできる。実施例にて示したような、合成吸着剤カラム(スチレン−ジビニルベンゼン系が好ましい)、弱塩基性陰イオン交換樹脂カラム、ODSカラムなどによりアピインを濃縮することができる。
また、使用目的によっては、野菜抽出物の色を除去するために、有機酸や塩酸等でpH5.0以下、好ましくはpH3.0以下とする酸処理、ポリフェノールオキシダーゼやペルオキシダーゼによる酵素処理などを行ってもよい。特に、ペルオキシダーゼ処理は過酸化水素と組み合わせてもよい。また、臭いを除去するために蒸留、活性炭等の樹脂を用いてもよい。
パセリ抽出物の場合、乾燥パセリ原料100重量部から、固形分として40〜80重量部の可溶性成分を得ることができる。
カリウム等の不快味を抑制するには、食品中の本願発明の呈味改善剤の濃度を固形分として0.001〜1重量%程度、好ましくは0.01〜0.5重量%程度含有させるのが適当である。食品中のカリウム等は食塩の代替品として用いる以上、食品ごとに自ずと一定の範囲になる。カリウム等の濃度が変化しても、本発明の呈味改善剤を0.01〜0.5重量%程度含有させれば、不快味の低減効果がある。
パセリ等の抽出物そのままではなく、アピイン等を濃縮した場合は、濃縮度に応じて、上記添加量を調整すればよいが、食品中にアピインの濃度で10ppm〜150ppm含有させるのがよい。
【0017】
野菜抽出物の呈味改善効果をより高めるためには、下述するリン脂質と併用するのが好ましい。野菜抽出物の効果は一定濃度以上添加しても頭打ちになり、単独ではそれ以上効果を高めることは難しい。リン脂質を野菜抽出物と組み合わせると頭打ちになった野菜抽出物の効果をさらに高めることができる。それによりカリウム等をより多く食品に添加することができ、ひいては食品全体の食塩量を低下させることができ、減塩効果を高めることができる。
野菜抽出物とリン脂質の添加量は、重量比で10:1〜1:10が適当である。
【0018】
本発明の呈味改善剤に用いられるリン脂質は、植物、動物、菌類等の組織あるいは内臓等の天然物から定法により抽出、分離、精製して得られる。具体的には、大豆、米、栗、牛、鶏、豚、卵黄、イワシ、オキアミ、鮭白子、たらこ、酵母等から抽出、分離、精製されたものが挙げられる。なお、リン脂質の中でも、特にホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール及びそれらのリゾ体に不快味を選択的に改善又は低減する効果が高いことが認められている。それらを単独又は混合物として用いても良い。またリン脂質構造中の脂肪酸の種類に特に制限はない。具体的には、酪酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、デセン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、ペンタデセン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ヘキサデカトリエン酸、ヘクサデカトリエン酸、ヘプタデカン酸、ペプタデセン酸、ヘプタデカジエン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、γリノレン酸、オクタデカテトラエン酸、アラキジン酸、イコセン酸、イコサジエン酸、イコサトリエン酸、イコサテトラエン酸、イコサペンタエン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、ドコセン酸、ドコサジエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、テトラコセン酸が挙げられる。また、本発明におけるリン脂質は、所定の酵素で処理したもの、あるいはこれらの水素添加物を用いることもできる。さらにその純度としては、20%以上含有することが好ましく、50%以上がより好ましく、特に好ましいのは80%以上である。リン脂質の添加する量としては、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩1重量部に対して、0.001〜1重量部、特に0.01〜0.5重量部で添加するのが飲食品の風味、物性、色調を大きく変化させない点から好ましい。野菜抽出物1重量部に対して0.1〜10重量部、特に0.2〜5重量部で添加するのが好ましい。
実施例に示したようにリン脂質はリゾ体と併用することにより相乗効果が得られる。リン脂質とリゾ体のリン脂質を1:3〜3:1の比率用いるのが好ましい。特に好ましいのは1:2〜2:1である。
また、本発明呈味改善剤に糖類を添加しても良い。糖類は、風味の点から甘味度の低いものが好ましい。具体的には、トレハロース、還元水飴が挙げられる。糖類の添加する量としては、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩1重量部に対して、0.05〜10重量部、特に0.1〜2重量部で添加するのが飲食品の風味、物性を大きく変化させない点から好ましい。野菜抽出物1重量部に対して2〜100重量部、特に10〜50重量部で添加するのが好ましい。
【0019】
さらに本発明呈味改善剤にアルギニンを添加しても良い。アルギニンは市販のもの、あるいは定法により精製されたものを用いることができる。アルギニンの添加する量としては、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩1重量部に対して、0.02〜2.5重量部、特に0.1〜1.5重量部で添加するのが飲食品の風味を大きく変化させない点から好ましい。野菜抽出物1重量部に対して0.1〜10重量部、特に0.2〜5重量部で添加するのが好ましい。
本発明の呈味改善剤は、そのままのpHで用いても良いが、塩基性アミノ酸であるアルギニンなどを添加した場合pHがアルカリに傾くため、pHの調節をするのがよく、弱酸性〜中性、具体的にはpH5〜8程度に調整することが好ましい。pHは適当な無機酸、有機酸、酸性アミノ酸で調整すればよく、飲食品の風味を大きく変化させない点からクエン酸、酢酸、乳酸、コハク酸、フマル酸、リン酸、リンゴ酸が好ましい。調整時期は喫食するまでに調節すればよく、原料段階、製造の途中段階、あるいは最終物が得られた後などに行うことができる。食品の多くは中性付近のpHを有するため、特別な対応をすることなく本発明の呈味改善剤を用いることができる。
【0020】
また本発明は、本発明呈味改善剤を用いたカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩に起因する不快味の改善又は低減方法に関する。上記に説明した本発明呈味改善剤を、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩を所定量以上、即ち食品中のナトリウム塩1重量部に対して0.1重量部以上含有する飲食品に添加することにより、その食品のカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩に起因する不快味を改善する。添加する目安としては、添加する食品によるが、飲食品全体に対し、野菜抽出物0.001〜1重量%程度、好ましくは0.01〜0.5重量%、リン脂質0.001〜1重量%程度、好ましくは0.01〜0.5重量%、アルギニン0.05〜10重量%、糖類0.1〜10重量%程度添加するのが飲食品の風味、色調、物性を大きく変化させない点から好ましい。このように本発明呈味改善剤を添加することにより、飲食品の不快味を改善することが可能となる。
本発明の呈味改善剤を減塩目的で使用する場合、単一の成分による効果には限界があるが、複数の成分を組み合わせることにより、減塩率をより高めることができる。
呈味改善剤の配合例としては、野菜抽出物1重量部に対して、リン脂質を0.2〜5重量部、糖類を2〜100重量部及び/又はアルギニンを0.1〜10重量部配合したもの、好ましくは2種以上、最も好ましくは3種すべてを配合したものが好ましい。具体的にはパセリ抽出物固形分:大豆由来リン脂質:アルギニン:トレハロースをおよそ1:1:4:20の比率で配合した製剤等が例示される。
【0021】
また、このようにして得られた本発明の呈味改善剤を、減塩(ナトリウムの減量)を目的としてナトリウム塩の一部をカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩で置き換えた各種飲食品に添加することにより、不快味の無い減塩された飲食品を製造することができる。本発明の呈味改善剤それ自体には、食品への使用を大きく制限するような特殊な味はないので、広い範囲の飲食品に使用できる。飲食品としては、例えば鮭フレーク、辛子明太子、塩たらこ、焼魚、干物、塩辛、魚肉ソーセージ、煮魚、佃煮、缶詰等の水産加工食品、ポテトチップス、煎餅、クッキー等のスナック菓子、うどんつゆ、そばつゆ、そうめんつゆ、ラーメンスープ、ちゃんぽんスープ、パスタソース等の麺類のつゆ、おにぎり、ピラフ、チャーハン、混ぜご飯、雑炊、お茶漬け等の米飯調理品、春巻き、シュウマイ、餃子、カレー、煮物、揚げ物等の調理食品、ハンバーグ、ソーセージ、ハム、チーズ等の畜産加工品、キムチ、漬物等の野菜加工品、醤油、ソース、ドレッシング、味噌、マヨネーズ、トマトケチャップ等の調味料、コンソメスープ、お吸い物、味噌汁、ポタージュスープ等のスープ類が挙げられる。
また、本発明の呈味改善剤は、その他公知、市販されている減塩を目的とするための各種添加剤と組み合わせて用いても良い。
【0022】
以下、本発明の具体的説明のために実施例を記載するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
実施例中、%と記載されているものは特記されているものを除き、重量%である。
[実施例で用いられる分析及び解析方法]
(1) 塩化ナトリウム含量及び塩化カリウム含量の測定
塩化ナトリウム及び塩化カリウム含量の測定は以下の方法に従って行った。即ち、試料約5gに1%HClを加えて全量を100gとした希釈液を30分間振とうし、ナトリウムイオンあるいはカリウムイオンを抽出した後、抽出試料を任意の量の1%HClにて希釈し、原子吸光光度計(日立ハイテクノロジーズ製、Z-2000)によりナトリウム含量及びカリウム含量を測定した。塩化ナトリウム量は分子量に基づき、得られたナトリウム含量に2.54を乗じ、同様に塩化カリウム量は得られたカリウム含量に1.91を乗じて算出した。
【0023】
(2)塩化カリウム不快味改善効果評価のための標準液の調整
顆粒状中華だし(商品名:丸鶏がらスープ、味の素(株)製;顆粒状中華だし2.5gの標準栄養成分を表1に示す)1.32gを70gの蒸留水に溶解させ、濾紙濾過(No.2濾紙、アドバンテック東洋(株))を行った後、NaClを0.63g添加し、加水して全量を100gとした食塩相当量1.26%の鶏がらスープを作製した(表2、標準液1)。標準液1の組成から段階的に塩化ナトリウム濃度を減らし、塩化カリウムを加えた鶏がらスープを作製した(表2、標準液2〜8)。標準液1〜8において塩化ナトリウム及び塩化カリウムの比率〔(塩化カリウム濃度/塩化ナトリウム濃度)×100 (%)、以下「K/Na比」と記す〕が変化するが、この数値が増加するほど塩化カリウム特有の不快味(苦味、渋味、えぐ味、収斂味)強度が強まる。標準液1〜8は段階的に不快味強度が強まっている。その不快味の強度と味の内容については、専門パネルによる官能評価により、先味・中味・後味の3段階に分けて評価した結果を、表3に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
(3) 塩化カリウムの不快味改善効果の確認方法(以下、評価方法1と記す。)
試験試料を任意の濃度で含み、塩化ナトリウム及び塩化カリウム濃度を標準液8の実測値と同じに調整して試料評価液を作製した。表2の標準液1、標準液8及び作製した試料評価液(最大6種)について試料名を伏せて専門パネル(n=8)に呈示し、塩化カリウムの不快味強度について順位付けを行った。順位付けにより得られた順序尺度は正規化順位法を用いて距離尺度(正規スコア)へ変換した。これらのスコアに対して試料とパネルを要因とする二元配置分散分析を行い、有意差検定を行った。有意差が認められた場合は、さらにt分布を用いて最小有意差(有意差があるといえる差の最小値;least
significant difference ; 以下l.s.d.と記す)を求めて有意差検定を行い、どの試料とどの試料の間に有意差があるかを確認した。
結果の表示:図中、縦軸、あるいは各試料に記された数値はそれぞれの試料の距離尺度(正規スコア)を表す。2つの異なる試料の正規スコアの差がl.s.d.の値(図中、右上に記載の数値)より大きい場合、それら2つの試料間には有意差がある(p<0.05)、即ち、両者の順位が入れ替わることがないほど効果として離れていることを意味する。
【0028】
(4) 塩化カリウムの不快味改善効果の力価確認方法(以下、評価方法2と記す。)
表2のいずれかの標準液に試験試料を任意の濃度になるよう添加して評価液を作製した。この際、塩化ナトリウム、或は塩化カリウムを含有する試験試料については、評価液の総塩化ナトリウム、或は総塩化カリウム濃度が、それぞれ標準液と等しくなるよう調整した。表2の標準液1〜8を塩化カリウム濃度順に並べて呈示し、前記評価液をこれらの標準液と比較評価し、相当する塩化カリウム
の不快味の強度をK/Na比にて表した。評価により得られたK/Na比の値が実際のK/Na比の値より低いほど改善効果が高いことを表す。
【実施例1】
【0029】
野菜抽出物の塩化カリウムの不快味改善効果
(1) 野菜抽出物の製造
乾燥野菜粉末30種、パプリカ、ガーリック、玉葱(以上エスビー食品(株)製)、パセリ、アヤムラサキ、あしたば、よもぎ、桑葉、大麦若葉、ほうれん草、モロヘイヤ、ケール、ねぎ、キャベツ、小松菜、春菊、ブロッコリー、セロリ、アスパラガス、生姜、大根、人参、ごぼう、枝豆、トマト、ゆず、にがうり、赤ピーマン、やまいも、さつまいも(以上こだま食品(株)製;いずれも可食部全体の乾燥物)について、各5gに蒸留水を加え200gとしたものを30℃の水浴中にて2時間加熱した後、遠心分離(7000rpm×15min)、濾紙濾過(No.2濾紙、アドバンテック東洋(株))を行った。得られた濾液を減圧下にて濃縮乾固した後、蒸留水を加えて固形分10%の野菜抽出物溶液とした。表4に抽出物固形分の収率を示す。
【0030】
【表4】
【0031】
(2) 野菜抽出物の塩化カリウムの不快味改善効果
標準液8に表4の各種野菜抽出物溶液を固形分0.1%(終濃度)となるよう添加して評価液を作製し、評価方法1にて評価した。評価結果である各サンプルの距離尺度を図1ないし8に示す。縦軸は距離尺度を、横軸は測定に用いた各サンプルを示す。本測定における、l.s.d.は図中右上に数値として示す。
この結果、標準液8の塩化カリウムの不快味強度を低下させる素材は、アスパラガス、ごぼう、ガーリック、トマト、にがうり、パセリ、枝豆、アヤムラサキ、パプリカ、にんじん、春菊、ほうれん草、大麦若葉、明日葉、桑葉、大根、玉葱、モロヘイヤ、ねぎ、ケール、やまいも、ブロッコリー、ピーマン、セロリであった。中でも不快味改善効果が高い素材はパプリカ、パセリ、桑葉、大麦若葉、ほうれん草、モロヘイヤ、ブロッコリーであった。また、これら7種の素材の改善効果を比較したところ、図9に示されるようにパセリで最も高い改善効果が確認された。
【実施例2】
【0032】
(1) パセリ抽出物濃度と塩化カリウムの不快味改善効果
前記パセリ抽出物溶液を終濃度0.025、0.050、0.075、0.10、0.125%にて添加し、評価方法1により評価を行った。評価結果である各サンプルの距離尺度を図10に示す。
図10に示されるように、0.025〜0.125%のいずれの濃度においても塩化カリウム不快味改善効果が認められたが、0.05%以上の濃度では濃度依存的に効果が上がる傾向は見られなかった。
【0033】
(2)パセリ抽出物の塩化カリウム不快味改善力価
前記パセリ抽出物溶液を終濃度0.05%にて標準液4、6及び8に添加し、評価方法2により評価を行った。評価結果である各サンプルの距離尺度を図11に示す。
この結果、図11に示されるようにK/Na比116%の強いレベルの塩化カリウムによる不快味を75%に、74%を49%に、42%を22%にまで改善する効果が認められた。
【実施例3】
【0034】
パセリ抽出物中の塩化カリウムの不快味改善成分の特定
実施例1で得たパセリ抽出物について、塩化カリウムの不快味改善効果が維持されることを指標に、以下の(1)ないし(4)の順に分画処理を行い、塩化カリウムの不快味改善成分の特定を行った。
【0035】
(1)合成吸着剤カラム処理
実施例1で得たパセリ抽出物の1重量%水溶液100gを合成吸着剤(HP-20、三菱化学製)が充填されたカラム(50ml)に負荷し、カラム容量の20倍量の蒸留水、15容量%エタノール水、50容量%エタノール水、エタノールにて順次溶出させた。得られた溶出液は、真空中で蒸発乾固させ、画分2〜5を得た。得られた乾燥物の収量を表5に示す。乾燥物は、蒸留水を加えて100gとし、十分に溶解させて画分2〜5水溶液を得た。パセリ抽出物の1重量%水溶液、及び画分2〜5水溶液を15重量%となるように標準液8のスープに添加し、評価液1〜5を得た。評価は、評価方法1により行った。
【0036】
【表5】
【0037】
評価結果である各サンプルの距離尺度を図12に示す。図12のとおり、合成吸着剤カラム処理により分画された画分を含有する評価液4(50容量%エタノール水による溶出物)は、評価液1(パセリ抽出物水溶液)と不快味改善効果が等しいことが確認され、呈味改善成分が分画された。
【0038】
(2)弱塩基性陰イオン交換樹脂カラム処理
(1)で得られた画分4水溶液 100gを弱塩基性陰イオン交換樹脂(WA-30、三菱化学製)が充填されたカラム(50ml)に負荷し、カラム容量の20倍量の25%容量エタノール水、50容量%エタノール水、エタノールにて順次溶出させた。得られた溶出液は、真空中で蒸発乾固させ、画分6〜8を得た。得られた乾燥物の収量を表6に示す。乾燥物は、蒸留水を加えて100gとし、十分に溶解させて画分6〜8水溶液を得た。画分6〜8水溶液は、15重量%となるように標準液8に添加し、評価液6〜8を得た。評価は、評価方法1により行った。
【0039】
【表6】
【0040】
評価結果である各サンプルの距離尺度を図13に示す。図13のとおり、弱塩基性陰イオン交換樹脂カラム処理により分画された画分を含有する評価液7(50容量%エタノール水溶出液)は、評価液4と不快味改善効果が等しいことが確認され、不快味改善成分が分画された。
【0041】
(3)ODSカラム処理
(2)で得られた画分7水溶液 100gを蒸発乾固させ、1mlの20容量%エタノール水に溶解させ、ODS(Cosmosil 75 C18−OPN、ナカライテスク製)が充填されたカラム(25ml)に負荷し、カラム容量の20倍量の20容量%エタノール水、50容量%エタノール水、エタノールにて順次溶出させた。得られた溶出液は、真空中で蒸発乾固させ、画分9〜11を得た。得られた乾燥物の収量を表7に示す。乾燥物は、蒸留水を加えて100gとし、十分に溶解させて画分9〜11水溶液を得た。画分9〜11水溶液は、15重量%となるように標準液8に添加し、評価液9〜11を得た。評価は、評価方法1により行った。
【0042】
【表7】
【0043】
評価結果である各サンプルの距離尺度を図14に示す。図14のとおり、ODSカラム処理により分画された画分を含有する評価液9は、評価液7と不快味改善効果が等しいことが確認され、呈味改善成分が分画された。
【0044】
(4)ODSカラム処理
(3)で得られた画分9水溶液 100gを蒸発乾固させ、1mlの20容量%エタノール水に溶解させ、ODS(Cosmosil 75 C18−OPN、ナカライテスク製)が充填されたカラム(75ml)に負荷し、カラム容量の5倍量の20容量%エタノール水、カラム容量の15倍量の20容量%エタノール水、カラム容量の20倍量の50容量%エタノール水にて順次溶出させた。得られた溶出液は、真空中で蒸発乾固させ、画分12〜14を得た。得られた乾燥物の収量を表8に示す。乾燥物は、蒸留水を加えて100gとし、十分に溶解させて画分12〜14水溶液を得た。画分12〜14水溶液は、15重量%となるように標準液8に添加し、評価液12〜14を得た。評価は、評価方法1により行った
【0045】
【表8】
【0046】
評価結果である各サンプルの距離尺度を図15に示す。図15のとおり、ODSカラム処理により分画された画分を含有する評価液13は、評価液9と不快味改善効果が等しいことが確認され、呈味改善成分が分画された。
【0047】
(5)活性成分の解析
前記画分13についてプロトン及びカーボン13核磁気共鳴スペクトルを測定し解析した結果、パセリ抽出物に含まれる塩化カリウムの不快味を改善する物質は、アピゲニンの7位にアピオグルコシドが結合した配糖体であるアピインであることが確認された。
【0048】
(6)前記画分13の塩化カリウムの呈味改善効果
前記画分13を25、50、125、又は250ppmの濃度で標準液8に添加した試料溶液について、塩化カリウムの不快味改善効果を評価した。評価は、評価方法2により行った。各試料溶液の相当するK/Na(%)を図16に示す。図16に示されたとおり、画分13の添加量が増加するとともに不快味改善効果が高まり、125ppm以上でほぼ最大となった。
【実施例4】
【0049】
各種配糖体およびアグリコンの塩化カリウムの不快味改善効果の比較
表9に示す、実施例3の画分13(アピイン画分)及びその他の純度95%以上の配糖体及びそのアグリコン14種について、終濃度25ppmにて標準液8に添加して評価液を調製し、塩化カリウムの不快味の改善効果について、評価方法2による評価を行った。
【0050】
【表9】
【0051】
図17に示されるように、実施例3の画分13のアピインは他の14種の配糖体及びアグリコンと比較して特に効果が高かった。また、アピインのアグリコンであるアピゲニン、アピインの類縁体であるアピゲニン7−グルコシドにおいても高い効果が認められた。他にも、フラボノール配糖体であるルチン、イソフラボン配糖体であるダイジンにおいても高い効果が認められた。一方、フラバノン配糖体であるナリンギンには、改善効果は認められなかった。
【実施例5】
【0052】
パセリ抽出物の製造法
(1)抽出温度
パセリ乾燥粉末5gに蒸留水を加え200gとしたものを30、60、80℃の水浴中にて2時間加熱抽出した後、遠心分離、濾紙濾過を行った。得られた濾液を真空中で蒸発乾固させ、抽出物粉末5-1〜5-3を得た。得られた抽出物粉末の収量を表10に示す。各抽出物粉末を0.1重量%となるように標準液8に添加し、実施例サンプル5-1〜5-3を得た。評価は、評価方法1により行った。各サンプルの距離尺度を図18に示す。図18のとおり、抽出温度による改善効果の差は認められなかった。
【0053】
【表10】
【0054】
(2)抽出エタノール濃度
パセリ乾燥粉末5gに20容量%エタノール水、50容量%エタノール水、80容量%エタノール水をそれぞれ200ml加え、30℃の水浴中にて2時間加熱抽出した後、遠心分離、濾紙濾過を行った。得られた濾液を真空中で蒸発乾固させ、抽出物粉末5-4〜5-6を得た。得られた抽出物粉末の収量を表11に示す。抽出物粉末は、0.1重量%となるように標準液8に添加し、実施例サンプル5-4〜5-6を得た。評価は、評価方法1により行った。
図19のとおり、0〜50容量%エタノール水抽出物では改善効果に差は認められなかったが、80容量%エタノール水抽出物では改善効果が低かった。
【0055】
【表11】
【0056】
(3)抽出pH
パセリ乾燥粉末5gに蒸留水を加え200gとし、更に1規定塩酸、或は水酸化ナトリウムを用いてpH4.0或はpH8.0に調整し、30℃の水浴中にて2時間加熱抽出した後、遠心分離、濾紙濾過を行った。得られた濾液を真空中で蒸発乾固させ、抽出物粉末5-7〜5-8を得た。得られた抽出物粉末の収量を表12に示す。抽出物粉末は、0.1重量%となるように標準液8に添加し、実施例サンプル5-7〜5-8を得た。評価は、評価方法1にて行った。各サンプルの距離尺度を図20に示す。抽出pHによって改善効果に有意な差は認められなかった。しかし、pH4.0抽出物では改善効果がやや弱まる傾向が認められた。
【0057】
【表12】
【実施例6】
【0058】
リン脂質による塩化カリウムの不快味改善効果
(1) リン脂質による塩化カリウムの不快味改善効果の確認
表13に示した、純度98%以上のホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)(以上ジオレオイル)、ホスファチジン酸(PA)(ジステアロイル)、ホスファチジルイノシトール(PI)(大豆由来)を0.02%にて標準液8に添加し、評価方法1により評価した。
【0059】
【表13】
【0060】
各サンプルの距離尺度を図21に示す。図21のとおり、いずれのリン脂質においても塩化カリウムの不快味改善効果が確認されたが、中でもPC、PS、PI、PEにおいて高い効果が認められた。一方で、PAの呈味改善効果は低いことが確認された。
【0061】
(2) ホスファチジルコリン及びリゾホスファチジルコリンの混合による塩化カリウムの不快味改善効果
実施例6-1及び純度98%以上のリゾホスファチジルコリン(LPC)を合計終濃度が0.02%となるよう表14に示す混合比率にて標準液8に添加して評価液を調製し、評価方法1により評価した。各サンプルの距離尺度を図22に示す。図22に示されるとおり実施例6-9の混合比50:50の場合に最大の改善効果が得られた。リン脂質を単独で用いるよりも、リゾ体を併用することにより相乗効果があることがわかった。
【0062】
【表14】
【実施例7】
【0063】
各種素材由来ホスファチジルコリンの塩化カリウム不快味改善効果
(1) 全脂質の抽出
表15に示した各種原料を凍結乾燥後、粉砕し、粉末試料を得た。各粉末試料からBligh-Dyer法にて全脂質を抽出した。即ち、各粉末試料50gに0.1M塩化カリウム溶液100ml、エタノール250ml、クロロホルム125mlを加え、2分間撹拌した。10分間室温にて静置した後、クロロホルムを125ml加え30秒間撹拌し、さらに0.1M塩化カリウムを125ml加えて30秒間撹拌した。これを濾紙濾過(No.2、アドバンテック東洋(株))して固体残渣を除去した後、2時間以上静置した。下層を回収し、等容量の0.1M KCl:エタノール:クロロホルム=47:48:3の混合溶液を加え、30分間振とうした後、一晩静置した。翌日下層を回収、濾紙濾過後、減圧下にて濃縮乾固し、全脂質試料を得た。
【0064】
【表15】
【0065】
(2) ホスファチジルコリンの分画
(1)で得た全脂質試料約5gを10mlのクロロホルムに溶解させ、40mlのシリカゲルカラムに付した。カラム容量の20倍量のクロロホルム、次いで20倍量のアセトン、さらに7.5倍量の87容量%エタノールにて洗浄した後、カラム容量の30倍量の87容量%エタノールにて吸着画分を溶出させ、回収した。得られた吸着画分は減圧下にて濃縮乾固した後、薄層クロマトグラフィー(シリカゲルプレート、展開溶媒−クロロホルム:メタノール:酢酸:水=70:25:1:2)にてホスファチジルコリン(PC)であることを確認し、PC画分とした。
【0066】
(3) ホスファチジルコリン含量の測定
(2)で得られたホスファチジルコリン試料を20〜50mg/mlとなるよう蒸留水に分散させた試料溶液について、そのホスファチジルコリン濃度をリン脂質濃度測定キット(商品名:リン脂質C‐テストワコー、和光純薬工業(株)製)を用いて測定した。
【0067】
(4) 各種素材由来ホスファチジルコリンの塩化カリウムの不快味改善効果
(1)〜(2)の方法により得られたホスファチジルコリン画分について、
(3)の方法によりその濃度を確認後、各サンプルをホスファチジルコリンの終濃度が0.02%となるよう標準液8に添加して評価液を調製し、評価方法1により評価した。
【0068】
各サンプルの距離尺度を図23〜25に示す。図23〜25のとおり、実施例7-1〜7-13のいずれの試料においても改善効果が認められた。また各試料間での効果に有意差は認められず、いずれの試料も同程度の効果であった。
【0069】
(5) 大豆レシチン濃度と塩化カリウム不快味改善効果
実施例7-1〜7-13の中で、風味、収率、コスト等を考慮して製剤化に現実的であると考えられる素材として、以降の試験では大豆由来レシチン(和光純薬工業(株)製)及び大豆由来高純度レシチン(商品名:SLP-ホワイト、辻製油(株)製)を使用した。サンプル番号及びリン脂質純度について表16に記す。
【0070】
【表16】
【0071】
実施例7-14を標準液8に0.01、0.025、0.05、0.075、0.1%にて添加した評価液を作製し、評価方法1の評価に供した。評価結果である各サンプルの距離尺度を図26に示す。図26に示されるように0.075%までは濃度依存的に効果が高まるが、それ以上濃度を上げても効果が上がる傾向は見られなかった。
【0072】
(6) ホスファチジルコリン及び大豆レシチンの塩化カリウム不快味改善効果力価
実施例6-1を0.02%、実施例7-14を0.1%、実施例7-15を0.05%標準液4、6及び8に添加した評価液を作製し、評価方法2により評価した。これらの結果を、標準液4、6及び8の値と並べて図27に示す。
図27に示されるように大豆レシチンはその純度に関わらず不快味改善に有効であった。
【実施例8】
【0073】
(1) 塩化カリウムの不快味識別濃度
標準液1〜7(標準液2は除く)をその組成を伏せてパネル(n=11)に呈示し、塩化カリウム不快味強度順に並べ替える評価を実施した。その結果、図28に示されるように標準液1(K/Na比6%)〜標準液5(同57%)の間では有意差は見られず、鶏がらスープモデルにおいては、一般的にK/Na比57%以下の塩化カリウム量は不快味として認識されないことが示された。
【0074】
(2) 糖類、野菜抽出物、リン脂質3種混合による塩化カリウム不快味改善効果
標準液8に表17に示す添加濃度で、トレハロース、及び実施例1のパセリ抽出物、実施例7-14の大豆由来レシチンを各々添加して、評価液を調製し、評価方法1による評価を行った。
【0075】
【表17】
【0076】
各サンプルの距離尺度を図29に示す。図29に示されるように2種混合と比較して、3種混合で最も高い効果が示された。塩化カリウム不快味改善効果をさらに高めるために各素材単独で添加濃度を高めると、各素材の特徴的な呈味・風味が添加したスープの呈味・風味に大きく影響を与えるため、食品応用には困難であると考えられるが、3種混合により添加した食品の風味に影響を与えることなく十分な不快味改善効果を実現できる。
【0077】
(3) 野菜抽出物、リン脂質に対する糖類組合せ
標準液8に実施例1のパセリ抽出物、実施例7-14の大豆由来レシチン及び糖類各種を表18に示すとおり添加して評価液を調製し、評価方法1に準じて評価を行った。糖類は単糖のグルコース(和光純薬工業(株)製)、二糖のマルトース(和光純薬工業(株)製)及びトレハロース((株)林原商事製)、還元水飴のエスイー100(物産フードサイエンス(株)製)、HS-500((株)林原商事製)、NT-1(三菱商事フードテック(株)製)の6種を用いた。
【0078】
【表18】
【0079】
この結果、図30に示されるように糖類添加による効果は種類によらず同程度であった。ただし、甘味の強い糖類は添加する食品の味への影響が大きいため、味の点からは甘味の少ない還元水飴がより好ましい。
【0080】
(4)糖類、野菜抽出物、リン脂質3種混合による塩化カリウム不快味改善効果の力価
標準液4、6及び8に実施例8-11の配合にて添加物を添加して評価液を調製し、評価方法2により評価を実施した。その結果を図31に示す。
図31に示されるようにK/Na比116%の強いレベルの不快味を65%に、74%を40%に、42%を20%にまで改善する効果が認められた。
【0081】
[比較例]
既存技術との塩化カリウム不快味改善効果の比較
標準液8に対して、グルコース6‐リン酸一ナトリウム(和光純薬工業(株)製)、トレハロース(商品名:トレハ、(株)林原商事製)、塩味増強香料(商品名:ソルトテーストフレーバー、小川香料(株)製)、及びガンマ−ポリグルタミン酸(日本ポリグル(株)製)を評価スープの呈味・風味に大きく影響を与えない濃度(表19)にて添加し、評価方法2により評価を実施した。なお、ナトリウムを含有する試料については、試料由来分をスープ作製時の食塩から減じ、評価液の総塩化ナトリウム濃度がすべての試料において等しくなるよう調整した。上記に加え、実施例8-11の結果も合わせて、各サンプルの K/Na比(%)を図32に示した。
【0082】
【表19】
【0083】
この結果、図32に示されるように既存の呈味改善技術と比較しても実施例8-11は塩化カリウム不快味改善効果が高いことが示された。
【実施例9】
【0084】
糖類、野菜抽出物、リン脂質及びアルギニンの混合による塩化カリウム不快味改善効果
糖類、実施例1のパセリ抽出物、実施例7-14の大豆由来レシチン及びアルギニンの混合による塩化カリウム不快味改善効果を比較例9-1を標準品として評価方法2に準じた方法により評価した。配合を表20に記す。塩基性アミノ酸であるアルギニンを添加した分、pH調整のためにリンゴ酸を添加しているが、添加量が微量であるためリンゴ酸添加による不快味改善効果への影響はほとんどないことは確認されている。
この結果、図33に示されるように実施例9-2で最も高い改善効果が示され、実施例8−(1)で示された一般的に不快味として感知できないレベル(K/Na比で57%以下)にまで塩化カリウムの不快味を改善する効果が認められた。
【0085】
【表20】
【実施例10】
【0086】
トマトスープにおける本発明呈味改善剤の塩化カリウム不快味改善効果の評価
(1)トマトスープの作製
カゴメ完熟ホールトマト缶詰(カゴメ(株)製)とカゴメ完熟カットトマト缶詰(カゴメ(株)製)をジューサーミキサーで均一化した後、両者を1:3で混ぜ合わせ、トマトペーストとした。みじん切りにした玉葱1kgをキャノーラ油(昭和産業(株)製)50g、刻みにんにく20gと混合し、合計0.95kgになるまで加熱した後、フードプロセッサーで均一化し、玉葱ペーストとした。トマトペーストと玉葱ペーストを2:1で混合し、トマトスープベースとした。トマトスープベース300g、顆粒状コンソメ(味の素(株)製)12g、塩適宜量を混合し、加水して全量を1kgとした。これを密閉状態で80℃30分間の加熱を行い、トマトスープとした。なお、トマトスープの塩化ナトリウム含量及び塩化カリウム含量は、前述の[実施例で用いられる分析及び解析方法](1)の方法により確認した。
(2)塩化カリウム不快味改善効果を評価するための標準トマトスープの製造
表21に示すように、トマトスープベースに顆粒状コンソメ、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを添加してトマトスープの標準品1〜5を作製した。なお、標準品1〜5は段階的に塩化カリウム不快味強度が段階的に強まっている。
【0087】
【表21】
【0088】
(3)トマトスープにおける塩化カリウムの不快味改善効果
トレハロース、実施例1のパセリ抽出物、実施例7-15の大豆由来高純度レシチン及びアルギニンのトマトスープにおける効果を確認するため、表22に示す配合のトマトスープを作製し、上記のトマトスープの標準品と比較することにより、評価方法2に準じた方法で、それぞれのスープの相当する不快味強度をK/Na比にて表した。
【0089】
【表22】
【0090】
この結果、図34に示されるように、トマトスープにおいても本発明不快味改善剤はスープの味・風味に遜色を与えることなく塩化カリウム不快味(苦味、渋味、えぐ味、収斂味)を改善でき、特に実施例10-2では高い効果が示された。
【実施例11】
【0091】
鮭フレークにおける本発明呈味改善剤の塩化カリウム不快味改善効果の評価
(1)鮭フレークの作製
加熱済み鮭ほぐし身94.52gに対して植物油を7.56g、グルタミン酸ナトリウムを0.45g、イノシン酸ナトリウムを0.02g添加し、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを表23に示すように添加し、加水、混合した。これを全量が100gになるまで加熱混合し、鮭フレークの標準品1〜6を作製した。なお、標準品1〜6は塩化カリウム不快味強度が段階的に強まっている。これらを標準品として用い、評価方法2に準じた不快味改善効果の評価を行った。
【0092】
【表23】
【0093】
加熱済み鮭ほぐし身94.52gに対して植物油を7.56g、グルタミン酸ナトリウムを0.45g、イノシン酸ナトリウムを0.02g添加し、塩化ナトリウム、塩化カリウム、トレハロース、実施例1のパセリ抽出物、実施例7-15の大豆由来高純度レシチン及びアルギニンを表24に示すように添加し、加水、混合した。これを全量が100gになるまで加熱混合し、比較品11-1、実施例11-1、11-2を作製した。これら3種の鮭フレークの塩化カリウム不快味強度を標準品1〜6と比較し、相当する塩化カリウム強度をK/Na比にて表した。なお、標準品1〜6、比較品11-1、実施例11-1及び11-2の塩化ナトリウム含量及び塩化カリウム含量は前述の[実施例で用いられる分析及び解析方法](1)の方法により確認した。
【0094】
【表24】
【0095】
この結果、図35に示されるように、固形食品である鮭フレークにおいても本発明呈味改善剤は鮭フレークの味・風味に遜色を与えることなく塩化カリウムの不快味を改善できた。特に実施例11-2では高い効果が示された。
【実施例12】
【0096】
塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アンモニウムの呈味改善効果
(1)塩化カルシウムの呈味改善効果
等濃度の塩化ナトリウムに対して、塩化カルシウム添加量を徐々に増やし、段階的に不快味の強度が強まる水溶液を作製した。詳細な配合を表25に示す。実施例12-5に対して実施例1のパセリ抽出物、実施例7-15の大豆由来高純度レシチン、トレハロース、アルギニン及びリンゴ酸を表26の配合で添加して、評価液を調製した。評価方法2に準じた方法で、この評価液の不快味強度を実施例12-1〜12-5を標準液として比較評価した(専門パネルn=8)。
評価結果である不快味強度を表27に示す。表27に示されるように本発明呈味改善剤は塩化カルシウムの不快味に対しても、塩化カリウムの不快味と同様に改善効果が認められた。
【0097】
【表25】
【0098】
【表26】
【0099】
【表27】
【0100】
(2)塩化マグネシウムの呈味改善効果
等濃度の塩化ナトリウムに対して、塩化マグネシウム添加量を徐々に増やし、段階的に不快味の強度が強まる水溶液を作製した。詳細な配合を表28に示す。実施例12-15に対して実施例1のパセリ抽出物、実施例7-15の大豆由来高純度レシチン、トレハロース、アルギニン及びリンゴ酸を表29の配合で添加して、評価液を調製した。評価方法2に準じた方法で、この評価液の不快味強度を実施例12-11〜12-15を標準液として比較評価した(専門パネルn=8)。
評価結果である不快味強度を表30に示す。表30に示されるように本発明呈味改善剤は塩化マグネシウムの不快味に対しても、塩化カリウムの不快味と同様に改善効果が認められた。
【0101】
【表28】
【0102】
【表29】
【0103】
【表30】
(3)塩化アンモニウムの呈味改善効果
等濃度の塩化ナトリウムに対して、塩化アンモニウム添加量を徐々に増やし、段階的に不快味の強度が強まる水溶液を作製した。詳細な配合を表31に示す。実施例12-25に対して実施例1のパセリ抽出物、実施例7-15の大豆由来高純度レシチン、トレハロース、アルギニン及びリンゴ酸を表32の配合で添加して、評価液を調製した。評価方法2に準じた方法で、この評価液の不快味強度を実施例12-21〜12-25を標準液として比較評価した(専門パネルn=8)。
評価結果である不快味強度を表33に示す。表33に示されるように本発明呈味改善剤は塩化アンモニウムの不快味に対しても、塩化カリウムの不快味と同様に改善効果が認められた。
【0104】
【表31】
【0105】
【表32】
【0106】
【表33】
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明により、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩の不快な苦味、渋味、えぐ味、収斂味等を改善又は低減することを可能とする優れた呈味改善剤が提供され、飲食品中のナトリウム塩をカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩に置き換えた場合において良好な塩味、風味の優れた各種減塩飲食品を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図22
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図33
図34
図35