特許第5952972号(P5952972)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5952972-フォトマスクブランクス基板収納容器 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952972
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】フォトマスクブランクス基板収納容器
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/66 20120101AFI20160630BHJP
   H01L 21/673 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   G03F1/66
   H01L21/68 T
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-536432(P2015-536432)
(86)(22)【出願日】2014年7月24日
(86)【国際出願番号】JP2014003912
(87)【国際公開番号】WO2015037176
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2015年11月13日
(31)【優先権主張番号】特願2013-188177(P2013-188177)
(32)【優先日】2013年9月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勤
(72)【発明者】
【氏名】大堀 伸一
(72)【発明者】
【氏名】小板橋 龍二
(72)【発明者】
【氏名】中川 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】高坂 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】木下 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】福田 洋
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−245868(JP,A)
【文献】 特開2006−330421(JP,A)
【文献】 特開2010−072420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/86
H01L 21/673
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学増幅型フォトレジスト塗布済みのフォトマスクブランクス基板を収納、搬送あるいは保管するフォトマスクブランクス基板収納容器であって、
その構成部品の少なくとも1つが、40℃で60分保持の下でダイナミックヘッドスペース法により測定されるアウトガス中のカプロラクタム量がn−デカン換算で樹脂重量あたり0.01ppm以下となる熱可塑性樹脂からなり、かつ、その熱可塑性樹脂材料からなる構成部品の表面抵抗値が1.0E+13オーム以下であることを特徴とするフォトマスクブランクス基板収納容器。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂中にカーボンフィラーが添加されていることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクブランクス基板収納容器。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂を持続性帯電防止樹脂とすることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクブランクス基板収納容器。
【請求項4】
前記フォトマスクブランクス基板を収納する空間を形成する上蓋とそれと係合する下箱とを備え、少なくとも当該上蓋および当該下箱を前記熱可塑性樹脂材料にて構成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクス基板収納容器。
【請求項5】
構成部品の少なくとも1つが、40℃で60分保持の下でダイナミックヘッドスペース法により測定されるアウトガス中のカプロラクタム量がn−デカン換算で樹脂重量あたり0.01ppm以下となる熱可塑性樹脂からなり、かつ、その熱可塑性樹脂材料からなる構成部品の表面抵抗値が1.0E+13オーム以下であるフォトマスクブランクス基板収納容器に、化学増幅型フォトレジスト塗布済みのフォトマスクブランクス基板を保管する保管方法。
【請求項6】
40℃で60分保持の下でダイナミックヘッドスペース法により測定されるアウトガス中のカプロラクタム量がn−デカン換算で樹脂重量あたり0.01ppm以下となり、かつ、表面抵抗値が1.0E+13オーム以下となる熱可塑性樹脂から成る構成部品を用いて、化学増幅型フォトレジスト塗布済みのフォトマスクブランクス基板を収納、搬送あるいは保管するフォトマスクブランクス基板収納容器を製造するフォトマスクブランクス基板収納容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【クロスレファレンス】
【0001】
本願は、2013年9月11日に日本国特許庁に対して出願された、特願2013−188177号からの優先権を主張するものである。特願2013−188177号に記載の内容は全て参照によりそのまま本願に組み込まれる。また、本願全体を通して引用される全文献は参照によりそのまま本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、半導体や液晶などの製造工程のフォトリソグラフィープロセスで使用される化学増幅型フォトレジストを表面に塗布したフォトマスクブランクス基板を収納する容器に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体をはじめとする設計回路のデザインルールは、年々、回路のさらなる微細化を進めるものとなっている。これに伴い、回路を形成するためのフォトマスクについても、その線幅、形状、ピッチといった回路パターンに要求される条件が益々厳しくなっている。回路の形成方法としては、これまでフォトリソグラフィー法が用いられてきたが、こうした微細化に対応するためのレジスト材料として、より短波長、より高解像度に適した化学増幅型レジストが多用されている。化学増幅型レジストを用いるフォトリソグラフィー法は、エキシマレーザーといった光照射、あるいは電子ビームの照射により、当該レジスト材料中の触媒物質が生成し、次工程で熱処理を行うことにより、当該触媒物質と高分子が反応し、光または電子照射部分が可溶(ポジ型)、または不溶化(ネガ型)することにより、所望の回路パターンを得る方法である。これまで、このレジスト材料を塗布した基板を光または電子照射するまでに保管、搬送する収納容器については、輸送、搬送が容易であるため軽量であることが望ましく、また安価で大量に製造できるなどの点から、種々のプラスチックを基材とし、射出成型などにより製造した収納容器が用いられている。
【0004】
しかし、これらプラスチックを材料としたプラスチック製収納容器から発生する種々の揮発性有機物成分が、フォトマスクブランクスを保管および搬送中に、フォトマスクブランクス上に塗布されたフォトレジスト材料の触媒作用、その可溶化作用あるいは不溶化作用に何らかの影響を及ぼし、光あるいは電子線照射および熱処理、現像によって形成したフォトマスクブランクス上のレジストパターンに、例えば、線幅の拡大・縮小などの寸法変化あるいはパターンの変形、若しくは倒れなどが生じ、その結果、設計どおりのパターンが得られないという不具合を生ずる恐れがあった。このようなプラスチック材料に起因する問題に対して、窒素化合物に着目し、窒素原子を含まない高分子材料から成る収納容器、あるいはアウトガス成分としての窒素含有化合物総量が所定量以下である収納容器が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−140324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の収納容器は、窒素原子を含まないモノマーから得られる高分子材料(プラスチック材料)に限定されるか、本用途に好適なプラスチック材料の選定をするため、アウトガス成分中の窒素含有化合物総量を測定しなければならず、時間とコストがかかるという問題がある。そこで、本用途に好適なプラスチック材料の選定をより簡略化し、選定された材料を使用して成形したプラスチック製収納容器でフォトマスクブランクスを保管、搬送、あるいは収納容器の開閉操作中に収納容器自体の摩擦等によって発生しうる微小なパーティクルや、雰囲気中に存在するパーティクルが静電気によりフォトマスクブランクスや収納容器自体に付着する汚染について、さらなる改善を要する。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、レジストパターンへの影響を抑えながら、保管、搬送あるいは容器操作中に発生しうる塵埃やパーティクルの付着によるフォトマスクブランクスの汚染を低減し、フォトマスクブランクスの品質および歩留まりを向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討してきた結果、化学増幅型レジストを塗布したフォトマスクブランクスを保管および搬送する収納容器として、収納容器を構成するプラスチック材料から発生するカプロラクタムが一定量以下で、その表面抵抗値が1.0E+13オーム以下のプラスチック材料を使用することで、フォトマスクブランクスの保管後、露光、感光および現像して形成されたレジストパターンの線幅および形状などに生ずる不具合を防止し、高精細のレジストパターンが得られるとともに、フォトマスクブランクスを保管、搬送する過程で生じうる微小な塵埃およびパーティクルの他、雰囲気中に存在するパーティクルからフォトマスクブランクスや収納容器自体を保護することを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明の一形態は、フォトマスクブランクス基板を収納、搬送あるいは保管に用いるフォトマスクブランクス基板収納容器であって、その構成部品の少なくとも1つが、40℃で60分保持の下でダイナミックヘッドスペース法により測定されるアウトガス中のカプロラクタム量がn−デカン換算で樹脂重量あたり0.01ppm以下となる熱可塑性樹脂からなり、かつ、その熱可塑性樹脂材料からなる構成部品の表面抵抗値が1.0E+13オーム以下のフォトマスクブランクス基板収納容器である。
【0010】
また、本発明の別の形態は、とくに、熱可塑性樹脂中にカーボンフィラーが添加されているフォトマスクブランクス基板収納容器である。
【0011】
また、本発明の別の形態は、とくに、熱可塑性樹脂を持続性帯電防止樹脂とするフォトマスクブランクス基板収納容器である。
【0012】
また、本発明の別の形態は、フォトマスクブランクス基板を収納する空間を形成する上蓋とそれと係合する下箱とを備え、少なくとも上蓋および下箱を上述の熱可塑性樹脂材料にて構成するフォトマスクブランクス基板収納容器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容器から発生する揮発性有機物成分によるレジストパターンへの影響を抑えながら、フォトマスクブランクス基板を保管、搬送、あるいは容器操作中に発生しうる塵埃やパーティクルの付着によるフォトマスクブランクスの汚染をより確実に低減し、フォトマスクブランクスの品質および歩留まりを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るフォトマスクブランクス基板収納容器の分解斜視図を示す
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るフォトマスクブランクス基板収納容器の実施の形態について説明する。ただし、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係るフォトマスクブランクス基板収納容器の分解斜視図を示す。
【0017】
この実施の形態に係るフォトマスクブランクス基板収納容器1は、図1に示すように、フォトマスクブランクス基板2を垂直方向に林立させ一定間隔で整列させて収納可能なカセット3と、カセット3を収納する下箱4と、下箱4の上方から係止する上蓋5と、フォトマスクブランクス基板2をその上方から押さえる押さえ部材6とを主に備える。
【0018】
下箱4は、その上方を開口する有底箱型に形成されている。上方の開口部の周縁には、リム部が形成されている。外周部の向き合う各一対のリム部には、それぞれ一対の係止用の係止凹部が形成されている。カセット3は、一対の端壁と、これらの端壁を連結する別の一対の側壁とを有し、側壁の内側には、フォトマスクブランクス基板2を収納する収納溝が相対向するように、一定間隔で形成されている。上蓋5は、下箱4の開口を覆って閉鎖するように、下向きの開口を有する箱型に形成されている。上蓋5の開口部には、リム部が形成されている。互いに向き合う各一対のリム部には、それぞれ一対の係止爪が下方に延出するように形成されている。係止爪は、それぞれ下箱4の係止凹部と嵌合し、下箱4と上蓋5とを固定する。
【0019】
上蓋5は、その内面に、フォトマスクブランクス基板2を個別に接触して押さえる部材であって、保持溝を備えた押さえ部材6が下向きに取り付けられている。この実施の形態では、上述のフォトマスクブランクス基板収納容器1の構成の内、少なくとも下箱4と上蓋5とを、40℃にて60分保持する条件の下、ダイナミックヘッドスペース法により測定されるカプロラクタム量がn−デカン換算で樹脂重量あたり0.01ppm以下、より好ましくは0.01ppm未満となる熱可塑性樹脂から形成する。
【0020】
下箱4と上蓋5は、パーティクルの付着を低減するために、表面抵抗値が1.0E+13オーム以下となるように、帯電防止材料や導電性材料から形成されている。また、好ましくは、カセット3および押さえ部材6の少なくとも一方を、上記のように、40℃にて60分保持する条件の下、ダイナミックヘッドスペース法により測定されるカプロラクタム量がn−デカン換算で樹脂重量あたり0.01ppm以下、より好ましくは0.01ppm未満となる熱可塑性樹脂から形成する。なお、カプロラクタムがパターンの特性に与えるスキームは明らかではないが、40℃で60分保持の下でダイナミックヘッドスペース法により検出されるアウトガス中のフリーのカプロラクタムに含まれるアミド結合が、フォトマスクブランクス基板の保管および搬送の過程で化学増幅型レジストに移行して、露光、感光、現像時の触媒作用に何らかの悪影響を及ぼすものと思われる。
【0021】
さらに、熱可塑性樹脂を、持続性帯電防止樹脂とするのが好ましい。ここで、持続性帯電性防止樹脂とは、カーボン等のフィラーではなく、親水性ポリマーをベース樹脂中に分散させて、帯電防止機能を持続させるようにした樹脂をいう。持続性帯電防止樹脂は、カーボン等のフィラーをベース樹脂中に分散させたものに比べて、低発塵性であるという長所を持つ。持続性帯電防止樹脂に用いられるベース樹脂としては、好適には、ABS樹脂、アクリル樹脂あるいはポリプロピレン樹脂を用いることができる。また、親水性ポリマーとしては、高分子固体電解質、とくに、ポリエチレングリコール成分を有するポリマーを例示でき、さらに具体的には、ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、ポリ(エチレンオキシド・プロピレンオキシド)共重合体、ポリエチレングリコール系ポリエステルアミド、ポリ(エピクロルヒドリン・エチレンオキシド)共重合体などを例示できる。
【0022】
また、熱可塑性樹脂にカーボン等のフィラーを添加するようにしても良い。このように、熱可塑性樹脂にカーボン等のフィラーを添加する場合は、持続性帯電防止樹脂とする場合に比べて、表面抵抗値を1.0E+10オーム以下と低くすることができる。なお、持続性帯電防止樹脂では、1.0E+10オーム以下とすることは困難である。この結果、静電気等による収納容器やフォトマスクブランクスへのパーティクルの付着を低減できる。ここで、熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ABS樹脂などが挙げられる。また、カーボンフィラーとしては、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボン繊維、カーボンナノチューブなどを使用することができる。
【0023】
なお、本発明の実施の形態に係るフォトマスクブランクス基板収納容器は、上述のような複数のフォトマスクブランクス基板を収納する容器に限らず、フォトマスクブランクスを1枚毎に収納する枚葉式容器でもよい。また、外気を遮断する密閉型容器でも、ケミカルフィルタを介して外気と通じている収納容器などとしてもよい。
【実施例】
【0024】
次に、本発明の実施例について、比較例と共に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
以下、実施例1〜6について説明し、評価結果を表1に示す。
【0026】
(実施例1)
市販のアクリル系持続性帯電防止樹脂Aを用いて、図1に示すような152mm角のフォトマスクブランクス基板を複数枚林立可能なカセットを収納できる上蓋および下箱の2点を射出成形により製造した。製造した上蓋の天面の平坦部において、表面高抵抗測定器(シシド静電気株式会社製)を使用して表面抵抗値を測定した結果、表面抵抗値は1.0E+11Ωであった。また、上蓋の一部から0.1gを切削し、精秤後にサンプルセル内に入れ、高純度ヘリウム雰囲気下で40℃×60minの加熱脱離を行い、発生したガス成分をガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)により分析し、カプロラクタム成分に相当するピーク面積値をn−Decaneにて作成した検量線により換算し、更に試料重量で除して、(ppm)として求めた。その結果、カプロラクタムは、0.01ppm未満であった。ここで、カプロラクタム成分は、該当するMSスペクトルをデータベース(NIST)により照合し、特定した。
【0027】
また、市販のポリブチレンテレフタレート樹脂を用いて、図1に示すような152mm角のフォトマスクブランクス基板を複数枚林立可能なカセットと、上蓋の内側に嵌合可能であって上蓋を下箱に嵌合した際にカセットに収納したそれぞれの基板を上方から固定する押さえ部材とを、射出成形により製造した。製造したカセットおよび押さえ部材のそれぞれから、上述と同様に、サンプリング後、40℃×60minの条件下で求めたカプロラクタム量は0.01ppm未満であった。
【0028】
一方、化学増幅型フォトレジストを塗布したフォトマスクブランクス基板1枚を、前記カセットの中央スロットに収納し、これを下箱に載置した後、上蓋をかぶせ、この状態で3ヶ月間、常温にて保管した。次に、保管後のフォトマスクブランクス基板にEB描画、ベーク、現像処理を順次行い、線幅400nmのL/S(ライン&スペース)のレジストパターンを形成し、所定の寸法からのスペース幅のずれをCD値として定義し、線幅を測定した。その結果、CD値の変化はほとんどなく(合格基準: ≦±5nm)、また、断面をSEM観察したところ、形状の変化もほとんど認められなかった。さらに、この収納容器に、あらかじめフォトマスクブランクス欠陥検査装置(MAGICS: M2351/レーザーテック社製)により開閉試験前の欠陥数を測定した化学増幅型フォトレジスト塗布済みフォトマスクブランクスを3枚収納し、作業員が上蓋の開閉を10回繰り返した後に再度欠陥数を測定した(合格基準: <1)。これを複数回行い上蓋の開閉動作前後の各欠陥数の差分を欠陥増加数として算出した結果、上蓋開閉一回フォトマスクブランクス1枚当たりの増加欠陥数は0.25個であり、欠陥の増加はほとんど認められなかった。
【0029】
(実施例2)
上蓋および下箱の材料に市販のアクリル系持続性帯電防止樹脂Bを使用した以外、実施例1と同条件にて収納容器を製造した。製造した上蓋の表面抵抗値は、1.5E+12Ωであり、また、アウトガス中のカプロラクタム量は、0.01ppm未満であった。また、実施例1と同様、この収納容器に3ヶ月収納したフォトマスクブランクス基板を描画、ベーク、現像して得られたパターンの線幅に関するCD値の変化もほとんどなく、また、パターンの断面形状の変化についてもほとんど認められなかった。さらに、実施例1と同様に収納容器の開閉試験を行った結果、上蓋開閉一回フォトマスクブランクス1枚当たりのフォトマスクブランクス基板の欠陥増加数は、0.67個であり、欠陥の増加はほとんど認められなかった。
【0030】
(実施例3)
上蓋および下箱の材料に市販のABS系持続性帯電防止樹脂Cを使用した以外、実施例1と同条件にて収納容器を製造した。製造した上蓋の表面抵抗値は、7.0E+11Ωであり、また、アウトガス中のカプロラクタム量は、0.01ppmであった。また、実施例1と同様、この収納容器に3ヶ月収納したフォトマスクブランクス基板を描画、ベーク、現像して得られたパターンの線幅に関するCD値の変化もほとんどなく、また、パターンの断面形状の変化についてもほとんど認められなかった。さらに、実施例1と同様に収納容器の開閉試験を行った結果、上蓋開閉一回フォトマスクブランクス1枚当たりのフォトマスクブランクス基板の欠陥増加数は、0.17個であり、欠陥の増加はほとんど認められなかった。
【0031】
(実施例4)
上蓋および下箱の材料に市販のポリプロピレン系カーボンブラック配合帯電防止樹脂Dを使用した以外、実施例1と同条件にて収納容器を製造した。製造した上蓋の表面抵抗値は、3.6E+03Ωであり、また、アウトガス中のカプロラクタム量は、0.01ppm未満であった。また、実施例1と同様、この収納容器に3ヶ月収納したフォトマスクブランクス基板を描画、ベーク、現像して得られたパターンの線幅に関するCD値の変化もほとんどなく、また、パターンの断面形状の変化についてもほとんど認められなかった。さらに、実施例1と同様に収納容器の開閉試験を行った結果、上蓋開閉一回フォトマスクブランクス1枚当たりのフォトマスクブランクス基板の欠陥増加数は、0.11個であり、欠陥の増加はほとんど認められなかった。
【0032】
(実施例5)
上蓋および下箱の材料に市販のポリカーボネート系カーボンブラック配合帯電防止樹脂Eを使用した以外、実施例1と同条件にて収納容器を製造した。製造した上蓋の表面抵抗値は、3.6E+3Ωであり、また、アウトガス中のカプロラクタム量は、0.01ppm未満であった。また、実施例1と同様、この収納容器に3ヶ月収納したフォトマスクブランクス基板を描画、ベーク、現像して得られたパターンの線幅に関するCD値の変化もほとんどなく、また、パターンの断面形状の変化についてもほとんど認められなかった。さらに、実施例1と同様に収納容器の開閉試験を行った結果、上蓋開閉一回フォトマスクブランクス1枚当たりのフォトマスクブランクス基板の欠陥増加数は、0.14個であり、欠陥の増加はほとんど認められなかった。
【0033】
(実施例6)
上蓋および下箱の材料に市販のポリブチレンテレフタレート系カーボンブラック配合帯電防止樹脂Jを使用した以外、実施例1と同条件にて収納容器を製造した。製造した上蓋の表面抵抗値は、2.0E+06Ωであり、また、アウトガス中のカプロラクタム量は、0.01ppm未満であった。また、実施例1と同様、この収納容器に3ヶ月収納したフォトマスクブランクス基板を描画、ベーク、現像して得られたパターンの線幅に関するCD値の変化もほとんどなく、また、パターンの断面形状の変化についてもほとんど認められなかった。さらに、実施例1と同様に収納容器の開閉試験を行った結果、上蓋開閉一回フォトマスクブランクス1枚当たりのフォトマスクブランクス基板の欠陥増加数は、0.15個であり、欠陥の増加はほとんど認められなかった。
【0034】
次に、比較例1〜4について説明し、評価結果を表2に示す。
【0035】
(比較例1)
上蓋および下箱の材料に市販のABS系持続性帯電防止樹脂Fを使用した以外、実施例1と同条件にて収納容器を製造した。製造した上蓋の表面抵抗値は3.0E+11Ωであり、また、アウトガス中のカプロラクタム量は、0.57ppmと多かった。また、実施例1と同様、この収納容器に3ヶ月収納したフォトマスクブランクス基板を描画、ベーク、現像して得られたパターンの線幅に関するCD値は、設定よりも約10nm狭小方向に変化した。ただし、実施例1と同様に収納容器の開閉試験を行った結果、上蓋開閉一回フォトマスクブランクス1枚当たりのフォトマスクブランクス基板の欠陥増加数は、0.20個であり、欠陥の増加はほとんど認められなかった。
【0036】
(比較例2)
上蓋および下箱の材料に市販のポリプロピレン系持続性帯電防止樹脂Gを使用した以外、実施例1と同条件にて収納容器を製造した。製造した上蓋の表面抵抗値は1.0E+10Ωであり、また、アウトガス中のカプロラクタム量は、2.00ppmであった。また、実施例1と同様、この収納容器に3ヶ月収納したフォトマスクブランクス基板を描画、ベーク、現像して得られたパターンの線幅に関するCD値は、設定より約40nmも極度に狭小方向に変化した。ただし、実施例1と同様に収納容器の開閉試験を行った結果、上蓋開閉一回フォトマスクブランクス1枚当たりのフォトマスクブランクス基板の欠陥増加数は、0.44個であり、欠陥の増加はほとんど認められなかった。
【0037】
(比較例3)
上蓋および下箱の材料に市販のアクリル樹脂Hを使用した以外、実施例1と同条件にて収納容器を製造した。製造した上蓋の表面抵抗値は1.0E+16Ωを超えており、また、アウトガスからカプロラクタムは検出されなかった。また、実施例1と同様、この収納容器に3ヶ月収納したフォトマスクブランクス基板を描画、ベーク、現像して得られたパターンの線幅に関するCD値の変化はほとんど認められず、また、パターンの断面形状の変化についてもほとんど認められなかった。しかし、実施例1と同様に収納容器の開閉試験を行った結果、上蓋開閉一回フォトマスクブランクス1枚当たりのフォトマスクブランクス基板の欠陥増加数は、2.13個と多かった。
【0038】
(比較例4)
上蓋および下箱の材料に市販のABS系持続性帯電防止樹脂Iを使用した以外、実施例1と同条件にて収納容器を製造した。製造した上蓋の表面抵抗値は5.0E+11Ωであり、また、アウトガス中のカプロラクタム量は、0.92ppmであった。また、実施例1と同様、この収納容器に3ヶ月収納したフォトマスクブランクス基板を描画、ベーク、現像して得られたパターンの線幅に関するCD値は、設定よりも約10nm狭小方向に変化した。ただし、実施例1と同様に収納容器の開閉試験を行った結果、上蓋開閉一回フォトマスクブランクス1枚当たりのフォトマスクブランクス基板の欠陥増加数は、0.56個であり、欠陥の増加はほとんど認められなかった。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、例えば、フォトマスクブランクス基板を収納、搬送あるいは保管する容器として利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 フォトマスクブランクス基板収納容器
2 フォトマスクブランクス基板
4 下箱
5 上蓋
図1