(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953129
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20160707BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20160707BHJP
G01N 21/82 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
G01N35/00 F
G01N35/04 G
G01N21/82
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-126668(P2012-126668)
(22)【出願日】2012年6月4日
(65)【公開番号】特開2013-250218(P2013-250218A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】吉川 恵子
(72)【発明者】
【氏名】牧野 彰久
【審査官】
長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−046031(JP,A)
【文献】
特開2001−165937(JP,A)
【文献】
特開平08−114541(JP,A)
【文献】
特開昭63−191962(JP,A)
【文献】
特開2011−099681(JP,A)
【文献】
特開平03−245059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
G01N 21/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と試薬とを反応させる反応容器を搭置する反応容器設置部を設けた、複数の検出部と、
前記反応容器設置部の底面に設けられた、光を照射する光源と、
前記反応容器設置部に設けられ、前記光源から照射された光の前記反応容器からの散乱光を検出する第1検出部と、
前記反応容器を把持して、前記反応容器の搬送及び設置を行う、前記複数の検出部に共通の反応容器搬送機構と、
前記反応容器搬送機構に設けられ、前記光源から照射する光を検出する第2検出器と、を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記第2検出器は、前記反応容器搬送機構が前記反応容器を把持し、あるいは、把持せずに、前記反応容器設置部の上方に位置しているときに、前記光源から照射された光を検出し、当該第2検出器によって検出された光量が予め設定された閾値に満たない場合には、前記光源の光量が不足している旨の、または、前記光源の交換を促すアラームを発信する制御部を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動分析装置において、
前記光源から照射する光を前記第2検出器によって検出でき、かつ、外部からの光を遮蔽する素材および形状の補助具と、を備え、
前記補助具は、前記反応容器搬送機構に把持され、前記光源の上方に搬送され、外部からの光を遮蔽した状態で、前記光源から照射された光を前記第2検出器により検出することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の自動分析装置において、
事前に前記光源に異常がないことが確認された上で、
前記反応容器設置部に、空の反応容器が載置され、
前記空の反応容器を透過した光における前記第2検出器の検出光量が、予め設定された第2閾値に満たない場合には、前記空の反応容器に異常がある旨のアラームを発信することを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の自動分析装置において、
前記第2検出器の検出光量に基づき、前記反応容器搬送機構の水平方向の駆動を停止させることを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の生体サンプル成分を自動で分析する自動分析装置に関わり、特に、血液凝固測定などに用いる散乱光光源の出力光量の確認方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
血液凝固などの散乱光量変化を測定原理とする自動分析装置では、反応液へ光を照射し、測定する。ところが、光源は使用状況及び経時劣化、または汚れ等により光量が減少する場合がある。そこで、装置により様々な光量の確認方法を行っている。また、散乱光測定を原理とするタイプの血液凝固測定では、光源に対し90°程度の角度に検知器を配置し、散乱光を受光する構成となっているものが一般的であり、また、処理能力を上げるため、測定部は複数個所設けられている装置が主流となっている。また、血液凝固項目の中には、反応容器を使い捨てとするものが多く、反応容器を設置及び廃棄するための反応容器搬送機構が設けられている。
【0003】
一方、近年では自動分析装置は小型化、低価格且つ高信頼性、高処理能力である装置が求められている。光源光量変動の確認についても、同様に小型、低価格、高信頼性などが求められている。
【0004】
特許文献1には、光源は反応容器の下に、検出器は側面に2個配置された構成が開示されている。また、光源の側面に光量変動分を補償する検知器を設ける技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、反応容器の横に光源があり、測定光の入射方向と直行する方向に光検出器を設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−28642号公報
【特許文献2】特開2001−165937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術においては、光源毎に光量チェック用の検出器を設ける必要があるが、光源が複数存在する場合には、光源の数だけ光量チェック用の検知器が必要となり、装置構成が複雑化し、高価な装置になるという課題がある。また、引用文献2の技術は、反応容器の側面から光を照射する方式であり、この方式の場合には凝集反応全体を測定できないため、血液凝固等の凝集反応の不均一性に起因して、血液凝集反応測定が不均一となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の代表的なものを挙げると以下のとおりである。
【0009】
(1)本発明は、試料と試薬とを反応させる反応容器を載置する反応容器設置部を備えた、複数の検出部と、反応容器設置部の底部に設けられた、光を照射する光源と、反応容器設置部に設けられ、光源から照射された光の前記反応容器からの散乱光を検出する第1検出器と、反応容器を把持して、反応容器の搬送及び設置を行う、複数の検出部に共通の反応容器搬送機構と、反応容器搬送機構に設けられ、光源から照射する光を検出する第2検出器と、を備える自動分析装置である。
【0010】
(2)前述(1)の自動分析装置において、第2検出器の検出光量が予め設定された閾値に満たない場合には、光源の光量が不足している旨の、または、光源の交換を促すアラームを発信する制御部を備える自動分析装置である。
【0011】
(3)前述(1)又は(2)の自動分析装置において、光源から照射する光を検出でき、かつ、外部からの光を遮蔽する素材および形状の補助具と、を備え、補助具は、反応容器搬送機構に把持され、光源の上方に搬送され、外部からの光を遮蔽した状態で、光源から照射された光を前記第2検出器により検出する自動分析装置である。
【0012】
(4)前述(1)〜(3)のいずれかの自動分析装置において、反応容器設置部に、空の反応容器が載置され、空の反応容器を透過した光における第2検出器の検出光量が、予め設定された第2閾値に満たない場合には、空の反応容器に異常がある旨のアラームを発信する自動分析装置である。
【0013】
(5)前述(1)〜(4)のいずれかの自動分析装置において、第2検出器の検出光量に基づき、反応容器搬送機構の水平方向の駆動を停止させる自動分析装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光源の数だけ光量チェック用の検知器が不要となり、装置構成の複雑化が避けられ、安価な自動分析装置を提供することができる。また、共通の光量チェック用の検出器を用いることで、検出器間のバラツキを抑制することができる。さらに、反応容器設置部の底部に光源を設けることで、凝集反応全体を測定でき、血液凝固等の凝集反応の不均一性に起因して生じる、血液凝集反応測定の不均一性を抑えることができ、精度の高い測定結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一般的な血液凝固自動分析装置の概略図である。
【
図3】光源光量変動検知用の補助具の使用例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は一般的な血液凝固装置構成例の1つである。各部の機能は公知のものであるため、詳細についての記述は省略する。サンプリング機構101のサンプリングアーム102は上下すると共に回転し、サンプリングアーム102に取り付けられたサンプル分注プローブ103を用いて、左右に回転するサンプルディスク104に配置されたサンプル容器105内の試料を吸引し、反応容器106へ吐出するように構成されている。サンプル分注プローブ103は、サンプル用シリンジポンプ107の動作に伴ってサンプルの吸引動作、及び吐出動作を実行する。試薬分注機構108同様に試薬分注アーム109は上下すると共に回転し、試薬分注プローブ110は、試薬ディスク111に配置された試薬容器112内の試料を吸引し、反応容器106へ吐出するように構成されており、内部に試薬昇温機構113が内蔵されている。反応容器106に吐出された試料と試薬とが反応する。試薬分注プローブ110は試薬用シリンジポンプ114の動作に伴って試薬の吸引動作、及び吐出動作を実行する。反応容器106は反応容器供給部115から回転する反応容器搬送機構117の反応容器保持部118にて保持され、回転移動し、検出部119の反応容器設置部120へ設置される。反応容器設置部120は、反応容器106を載置できるように窪みが設けられており、この窪みに反応容器106を挿入することができる。また、図では省略しているが、この反応容器設置部120は複数個あり、本装置は複数の検出部119からなる。反応容器搬送機構117は、反応容器106を把持して、反応容器106の搬送及び設置を行う、複数の検出部に共通の機構である。
【0017】
次に測定の流れを説明する。まず、各サンプルのために分析すべき分析項目は、キーボード121、又はCRT122の画面のような入力装置から入力される。ユニットの動作は、コンピュータ(制御部)123により制御される。サンプリング機構101により、サンプルディスク104に配置されたサンプル容器105内の試料が吸引され、検出部119内の反応容器設置部120へ載置された反応容器106へ分注される。次に試薬も同様に試薬分注機構108により試薬ディスク111に配置された試薬容器112より吸引され、試薬昇温機構113により適温へ昇温され、反応容器106へ分注される。この試薬吐出圧にて血液凝固反応が即時に開始される。光源124からの光を反応容器106へ照射し、反応容器内の反応溶液で散乱された散乱光をフォトダイオードなどの検出器125にて検出し、測光信号は、A/D変換器126を経由しインターフェイス127を介してコンピュータ(制御部)123に入り、凝固反応時間が計算される。結果は、インターフェイス127を介してプリンタ128に印字出力するか、又はCRT122に画面出力すると共に、メモリ129としてのハードディスクに格納される。測光が終了した反応容器106は反応容器搬送機構117により保持され、反応容器廃棄部116へ廃棄される。
【0018】
図2は本発明に関わる反応容器搬送機構及び光源光量チェックに関わる機構について説明した図である。反応容器設置部120の底部に光源124が設けられ、また、光源124から照射された光のうち、反応容器からの散乱光を検出する検出器125が設けられている。例えば、検出器125は、図示するように反応容器設置部120の窪み内の側面側に設けられている。なお、
図2では2つの検出器を設けている例である。反応容器搬送機構117は反応容器106を把持し、下降しながら、反応容器106を反応容器設置部120の窪みに挿入し、設置する。反応容器搬送機構117に設けられ、光源124から照射する光を検出する光源光量チェック用検出器130は、反応容器搬送機構117に設けられている。
図2では光を検出できるよう反応容器搬送機構117の反応容器106を把持する2つの把持アームの根元に設けられているが、光源124から照射する光を検出できるのであれば検出器130はこの位置でなくても良い。
【0019】
光源光量チェック時は、反応容器搬送機構117は反応容器供給時の動作と同様に、反応容器を把持するか、または、把持せずに、検出部119の反応容器設置部120上面へ移動し光源124からの光を、光源光量チェック用検知器130にて検知する。このとき、検出器130の検出光量が予め設定された閾値に満たない場合には、コンピュータ(制御部)123は、光源が不足している旨のアラームをインターフェイス127を介して発信する。若しくは、コンピュータ(制御部)123は、インターフェイス127を介して光量値異常を示すアラーム等の注意を発信し、光源の交換を促す、または光源の確認を促すアラームを発信する。これにより、操作者は、光源異常や光量異常など、を認識することができる。
【0020】
また、この光源光量チェック用の検出器130は、光源光量をチェックする目的の他、反応容器搬送機構117の水平方向の位置決めに用いることができる。コンピュータ(制御部)123が、検出器130の検出光量に基づき、反応容器搬送機構117の水平方向の駆動を停止するように制御することで、光源からの光量を毎回ほぼ同じ位置で検知できる。例えば、光量チェック用の閾値よりも低い閾値で反応容器搬送機構117を停止するように制御することで、出力が劣化した光源であっても、劣化状態に関わらず、ほぼ同じ位置で停止させることができる。これにより、反応容器搬送機構117が反応容器設置部120の直上に到着したことをコンピュータ(制御部)123が認識することができ、正確な反応容器の窪みへの挿入、反応容器の把持、ほぼ同じ位置での光量チェックを行うことができる。
【0021】
図3は光源124の光量のチェック時に補助具131を用いた例である。光量チェック時には、光を透過しない素材でできた光量チェックの補助具131を反応容器搬送機構117が把持して反応容器設置部120に設置し、補助具131を通して受光する。つまり、補助具131は、光源124から照射する光を
光源光量チェック用の検出器130によって検出でき、かつ、外部からの光を遮蔽する素材および形状であればよい。例えば、円筒の形状の黒い樹脂からなる。図に示した補助具131はあくまで一例であり、光源光を効率よく取り入れられる形であれば円筒でなくともよい。この補助具により外部の光によるノイズ検出が防げ、正確な光量のチェックを行うことができる。この補助具131は、反応容器供給部115に常備しておき、光量のチェック依頼に応じて、反応容器搬送機構117が反応容器供給部115から、反応容器設置部120に搬送するような構成にしても良い。
【0022】
次に、反応容器に傷や汚れ等がある場合の確認方法例を説明する(
図1参照)。事前に光源光量チェック用の検知器130などにより、光源124の光量を確認し、光源に異常が無いことを確認しておく。反応容器設置時は、光源光量チェック用の検知器130は空の反応容器を通過した光源光を検知し、予め設定された閾値に満たない場合には、空の反応容器に異常がある旨のアラームの発信、または、反応容器交換指示等のアラームを発信する。このように、事前に光源に異常が無いことを確認した上で、空の反応容器を反応容器設置部120に設置し、この反応容器を透過した光を検出器130で検出することで、反応容器の傷や汚れ等の異常を検出することができる。
【0023】
以上、本発明について説明した。本発明では、複数の検出部119で共通の光源光量チェック用検出器130を用いることで、装置構成の複雑化が避けられ、安価な自動分析装置を提供することができる。また、検出器間のバラツキを抑制することができる。さらに、反応容器設置部の底部に光源を設けることで、凝集反応全体を測定でき、血液凝固等の凝集反応の不均一性に起因して生じる、血液凝集反応測定の不均一性を抑えることができ、精度の高い測定結果が得られる。
【符号の説明】
【0024】
101 サンプリング機構
102 サンプリングアーム
103 サンプル分注プローブ
104 サンプルディスク
105 サンプル容器
106 反応容器
107 サンプル用シリンジポンプ
108 試薬分注機構
109 試薬分注アーム
110 試薬分注プローブ
111 試薬ディスク
112 試薬容器
113 試薬昇温機構
114 試薬用シリンジポンプ
115 反応容器供給部
116 反応容器廃棄部
117 反応容器搬送機構
118 反応容器保持部
119 検出部
120 反応容器設置部
121 キーボード
122 CRT
123 コンピュータ(制御部)
124 光源
125 検出器
126 A/D変換器
127 インターフェイス
128 プリンタ
129 メモリ
130 光源光量チェック用検知器
131 補助具