(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
医薬品製造施設では、薬局方で定められたバイオクリーンルーム室内環境の清浄度管理基準があり、空気1m
3あたり、安全キャビネット内で1菌(CFU:
Colony-
Forming
Unit)未満、その周辺区域で10 CFU未満に保つことが要求される。ここで、CFUとは生きている菌(生菌)の数を表す単位である。また、医薬品製造施設内の無菌水(製薬用水)にも薬局方で定められた清浄度管理基準があり、注射用水準水では10 CFU/100 mL未満で運営する必要があり、検査には培養法が用いられる。
【0003】
しかし、培養法では、寒天培地を恒温機中にて2〜3日間、菌体の種類によっては10日間以上培養して発生コロニー数を目視で数えるため、結果を得るのに時間がかかる。このような背景から、汚染モニタの迅速測定法の開発が望まれており、生菌が増殖する際の代謝活性を検出する方法、菌体内の物質を利用し光として検出する方法、等がある。
【0004】
菌体内の物質を利用して光検出するAdenosine triphosphate(ATP)生物発光法(ATP法)は、培養工程が不要なため、試料調製にかかる時間を含めても、1時間以内で結果が得られる。微生物汚染状況が1時間以内に把握できるようになれば、製造の作業シフト間にも、ラインや製品(中間体も含む)のチェックと対策が図れ、安全管理体制と出荷体制が著しく向上すると期待される。
【0005】
ATP法はホタルの発光反応を利用して、細胞内のATPの数を光の量に変換して測定する。その原理は、ルシフェラーゼ酵素に基質ルシフェリンとATP分子を取り込ませ、ATPの消費とともに酸化されたルシフェリン(オキシルシフェリン)が励起状態から基底状態に遷移するときの発光量を計測する。
【0006】
このとき、ATP 1分子の消費が1フォトン(光子)生成に対応するため、光子発生数がATPの個数に比例する。生菌中にはエネルギー源として1アトモル(amol=10
-18 mol)相当のATP分子が存在するため、測定試料に含まれていた生菌の総数を推定することができる。さらに、生物発光及び化学発光のうちで最も優れた量子効率(Φ
BL:≒0.5)であることから、細胞1個を数10万個相当のフォトンとして検出できることになり、発光反応で細胞1個相当の光を検出することは原理的に可能な方法である。
【0007】
しかしながら、ATP法の検出下限は計測装置の性能や環境中に存在するATPや菌体の混入の影響を受けることによるデータの揺らぎにより、一般的に10
2 amol(amol=10
-18 mol)程度と報告されている。それらのデータの揺らぎを防ぐ方法として、例えば、特許文献1に開示されるように、近年、外部汚染を防ぐ洗浄機能を具備した分注システムと高感度光検出器を同一装置内の遮光かつ外部からの汚染物質の抑制された空間に配置した生物発光検出システムが報告されており、1 amol相当のATP分子量の計測が可能になってきている。
【0008】
また、計測装置の性能を向上させるには、ランダムノイズ成分や暗電流パルス数の低減を行い、信号成分の揺らぎを抑え、微弱光の信号成分を高い確度で抽出し、検出感度を向上させる手段が採用されており、例えば、特許文献2では、光検出器を冷却装置で覆い、温度制御する方法が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。ただし、本実施例は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明を限定するものではないことに注意すべきである。また、各図において共通の構成については同一の参照番号が付されている。
【0017】
<実施例1>
図1A、
図1B、
図1Cは、実施例1に係る微弱発光計測装置の機構室5内の構成を示す1例である。
図1Aは、微弱発光計測装置本体1と圧縮空気を生成するコンプレッサー2とそれを制御する制御装置3から構成されるシステムの外観図である。
図1Aは、微弱発光計測装置本体1は、遮光された筐体であり、さらに、各種駆動機構を収容した機構室5と各種制御デバイスを収容した制御室6で構成される。
図1Bに示すサンプル容器7をセットする際に開閉する開閉扉4を備えている。その内部の装置構成は、
図1B、
図1Cに示すとおりである。
【0018】
図1Bは分解図を、
図1Cは組み立て済みの断面図を示している。サンプル容器7は、サンプル容器ホルダ8にセットされる。サンプル容器ホルダ8は、第1の板状部材9の貫通孔10部に設置される。第1の板状部材9の材質には、熱伝導率の高い材質が選定される。例えば、アルミニウム、ステンレス、銅、金、銀などである。また、第1の板状部材9で光を蓄積、反射させないように、金属材質の表面は、アルマイト処理等により、黒色表面にコーティングしておくと良い。
【0019】
サンプル容器ホルダ8は、それを第1の板状部材9に載せるだけで位置決めできるようになっている。例えば、定位置に設置できるような枠が第1の板状部材9に取付けられるようにしてもよく、または、サンプル容器ホルダ8の底部が収まるような丸溝や四角溝が第1の板状部材9に彫ってあり、そこにサンプル容器ホルダ8が嵌るようになっていてもよい。
【0020】
図1B、
図1Cに示されるように、サンプル容器ホルダ8は、内部がサンプル容器7の外周を支持するための円柱部と円錐部や半球状部(8a)にくり抜かれた構造で、かつ、サンプル容器ホルダ8の上部と下部は貫通する構造である。
【0021】
サンプル容器7は、上部の径の小さい円柱の開口部から挿入し、その固定は、容器上部の傘構造7aを利用する。それにより、サンプル容器ホルダ8にぶら下がった状態でマウントされる。また、容器上部の傘構造7aを持たないサンプル容器7を使用する場合については、サンプル容器7に取付けられる専用のストッパ等(図示せず)を用意すればよい。また、貫通孔10部に可視光領域、具体的には光の波長が300nmから650nm、または410nmから650nmに対して透過率が90%以上の光透過窓11を第1の板状部材9に設置することで、サンプル容器7の底部を保持しても良い。
【0022】
光透過窓11は、平板形状でも、レンズ形状でも良い。光透過窓11の材質は、石英ガラス、硼硅酸ガラス、UVカットガラス、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、岩塩、ジンクセレン、アクリル、ポリカーボネート、等が好適である。また、レンズ形状を採用する場合は、両凸、平凸、凸メニスカス、シリンドリカル、等が好適である。また、410nm以下の波長の光をカットすることは、静電気ノイズ光をカットするのに有効であり、この場合には光透過窓11に410nm以下をカットする色フィルターを光透過窓11の材質に貼りつけるか、または、光透過窓11に、410nm以上の可視光を通過させるロングパスフィルター、色ガラスフィルター、等を採用すれば良い。もちろん、これらのフィルターを光透過窓11の上面(サンプル容器7側)、もしくは、光透過窓11の下面(光検出器14側)に貼りつけて使用しても良い。
【0023】
第1の板状部材9は遮光部材であり、内部に同じく遮光部材である第2の板状部材12が挿入できる構造になっている。挿入された第2の板状部材12は、第1のアクチュエータ13を使用して、天板内をy軸方向に移動でき、第2の板状部材12の移動により、貫通孔10を開閉するシャッターの役割を果たす。第1のアクチュエータ13は、例えば、電力供給もしくは、空気供給で制御するものを使用することができる。もちろん、第2の板状部材12は、開閉窓4の遮光性が十分であれば必ずしも必要ではないが、光検出器14に高電圧が印加されておらず、光検出器16がオフの状態でも、受光面16に光が当たることで蓄光という現象を引き起こし、これが、しばしば、暗電流や暗電流パルス数のゆらぎを生じさせる。第2の板状部材12はそれを抑制する役割を果たす。
【0024】
光検出器14は、第1の板状部材9の下に、第1の板状部材9、光透過窓11と微小な隙間を持って設置される。微小な隙間は、0.05から10ミリメートルの間が好ましく、隙間が狭いほど、受光面16への光の入射効率が高くなる。
【0025】
図1Cのように、微小な隙間を精度よく再現するために位置制御手段15を用いて、z軸方向の位置を記憶させて制御しても良い。サンプル容器7、サンプル容器ホルダ8、貫通孔10、光透過窓11の中心、光検出器14の受光面16の中心は、z軸方向の同一軸上にあるようにアライメントされている。なお、このアライメントは装置組立時に実行されるのが通常である。また、光検出器14と第1の板状部材9、第1の板状部材9に取り付けられた光透過窓11との間隔は、装置組立時に厳密に位置決めするか、位置制御手段15を用いて、微調整してもよく、これらは、電力供給、空気供給型のアクチュエータを用いて制御するものを使用することができる。
【0026】
電力供給型のアクチュエータを使用した移動制御手段15は、主に、回転モータとモータの回転を直動に変換するボールねじと、光検出器14を設置するステージで構成されるものである。センサで予め定めておいた原点を基準位置として、指定した回転パルス数量の信号を与えられたときにボールねじ上を移動するステージ上の光検出14を、繰り返し±10ミクロン以下の精度で目的の位置に移動できる。
【0027】
空気供給型のアクチュエータでは、0.1kPa以上の圧縮空気を供給することで、ステージ上の光検出器14を移動させ、位置決めは光検出器14と連動する部材の一部に止め板などを設置しておき、その止め板の物理的に強制的に止めて、位置を制御する。圧縮空気の供給をバルブで制御することで、光検出器14を上下に移動させることが可能である。
【0028】
光検出器14は、一般的には光電子増倍管(Photomultiplier Tube: PMT)やイメージインテンシファイア(Image Intensifier: I.I.)を使用するのが感度の面で好適である。しかし、PMTやI.I.ほどの感度に満たなくとも、装置のコスト低減、等を重視する場合には、ホトダイオード等の半導体素子でも良い。ただし、本明細書では、これら光検出器14の一例としてPMTを使用した系のみについて記載する。
【0029】
微弱発光計測装置本体1は、少なくとも1個以上の恒温制御器を備えている。
図1B、
図1Cでは、サンプル容器ホルダ8には第1の恒温制御器17を、第1の板状部材には第2の恒温制御器18を、光検出器14には第3の恒温制御器19を、恒温乾燥空気送風ノズル23には、第4の恒温制御器22を備えている。第1の恒温器制御器17は、容器ホルダ8に挿入または装着される。第1の恒温制御器17は、アルミニウム、ステンレス、銅、等の金属部材である容器ホルダ8に、恒温器と、恒温器で温調された容器ホルダ8の温度を常時モニタし、一定温度に保つために必要な恒温器への供給電力量のフィードバックを行うための温度測定機、具体的には、熱電対、サーミスタが挿入または装着されたものである。これらは、微弱発光計測装置本体1の制御室3に収容してある第1の恒温制御器ドライバ20により制御されるもので、制御装置3を介して任意に温度設定が可能である。第1の恒温制御器17は、第1の恒温制御ドライバ20により、例えば室温から40℃の範囲の一定温度に保つように動作する。
【0030】
第2の恒温制御器18は、第1の板状部材9に挿入または装着される。第2の恒温制御器18は、アルミニウム、ステンレス、銅、等の金属材質部の第1の板状部材9を一定温度に保つ。恒温器で温調された第一の板状部材9の温度を常時モニタし、一定温度に保つために必要な恒温器への供給電力量のフィードバックを行うために必要な温度測定機、具体的には、熱電対、サーミスタが挿入または装着されたものである。これらは、微弱発光計測装置本体1の制御室3に収容してある第2の恒温制御器ドライバ21により制御されるもので、制御装置3を介して任意に温度設定が可能である。第2の恒温制御器18は、例えば0℃から40℃の範囲の一定温度に保つように動作する。
【0031】
第3の恒温制御器19は、光検出器14に装着される。第3の恒温制御器19は、アルミニウム、ステンレス、銅、等の金属部材を介して、光検出器14を一定温度に保つ。恒温器で温調された光検出器14の温度を常時モニタし、一定温度に保つために必要な恒温器への供給電力量のフィードバックを行うために必要な温度測定機、具体的には、熱電対、サーミスタが挿入または装着されたものである。これらは、微弱発光計測装置本体1の制御室3に収容してある第3の恒温制御器ドライバ22により制御されるもので、制御装置3を介して任意に温度設定が可能である。第3の恒温制御器17は、例えば0℃から40℃の範囲の一定温度に保つように動作する。
【0032】
第4の恒温制御器24は、恒温乾燥空気送風ノズル23の温度を一定に保つ手段である。第4の恒温制御器24は、アルミニウム、ステンレス、銅、等の金属部材を介して、恒温乾燥空気送風ノズル23を一定温度に保つ。恒温器で温調された恒温乾燥空気送風ノズル23の温度を常時モニタし、一定温度に保つために必要な恒温器への供給電力量のフィードバックのために必要な温度測定機、具体的には、熱電対、サーミスタが挿入または装着されたものである。これらは、微弱発光計測装置本体1の制御室3に収容してある第4の恒温制御器ドライバ25により制御されるもので、制御装置3を介して任意に温度設定が可能である。第4の恒温制御器24は、例えば0℃から40℃の範囲の一定温度に保つように動作する。
【0033】
図1Cに示すように、恒温乾燥空気送風ノズル23から供給される温度制御された送風(恒温乾燥空気26)は、光検出器14の受光面16に対して平行に流れるよう、受光面16の面方向に対して、平行に設置する。恒温乾燥空気26は、発光計測前も発光計測中も流し続けるのが良い。具体的には、微弱発光計測装置本体1と制御装置3の起動と同時に恒温乾燥空気26の供給が開始される。温度が恒温乾燥空気送風ノズル23の設定温度に達し、一定になるまでの時間、発光計測は開始できないように制御装置3は制御される。もちろん、問題が生じた際の対応として、恒温乾燥空気26の供給を停止したい場合には、制御装置3から供給停止を選択可能である。
【0034】
また、発光計測終了時、つまり装置停止の際には、恒温乾燥空気26は、第1の恒温制御器17、第2の恒温制御器18、第3の恒温制御器19、第4の恒温制御器24が停止した後に、各恒温制御器が装置内の温度と同等になってから停止するように制御される。これにより、結露の発生を防ぐことができる。恒温乾燥空気26の制御に関して、予め乾燥空気を密閉保持して光検出器14の第3の恒温制御器19により温度制御する方法もあるが、微弱発光計測装置1の装置内温度との断熱のためには、恒温乾燥空気層の厚みは、少なくとも数mm以上を必要とする。
【0035】
一方で、本実施例のように開放系で流し続ける形態では、恒温乾燥空気26を常時入れ替えているため、断熱のための空気容量は実効的に大きくなる。よって、光検出器14の受光面16を光透過窓11との隙間が0.1mm程度と非常に狭くても効率よく熱交換が可能である。また、狭い領域へ平行に送風する層流送風を利用することは、空気の混合率が悪い点で好適である。混合率が悪いため、恒温乾燥空気26の供給領域内での空気との置換効率が高く、短時間で空気を置換できる。さらに、平行に送風する構成は、光透過窓11や、受光面16にかかる圧力も緩和できるという利点もある。
【0036】
図3Aは恒温乾燥空気26の供給系を示す図である。この送風供給系は恒温乾燥空気送風ノズル23、第4の恒温制御器24、エアードライヤー27、第1のフィルター28、第2のフィルター29、コンプレッサー2で構成される。コンプレッサー2から供給された空気は、まず、ゴミや油成分等の不純物の除去の手段である第2のフィルター29、第1のフィルター28を通過し、次に、水分を除去する手段のエアードライヤー27を通過する。この乾燥空気は、第4の恒温制御器24の温調により、一定の温度に制御され、光検出器14の受光面16の面に平行に流れるよう供給される。
【0037】
恒温乾燥空気26は、微弱発光計測装置本体1の機構室5の内部温度よりも低い温度で、かつ温度差が大きい場合に発生する受光面16の結露を回避するための手段である。恒温乾燥空気送風ノズル23は、第1の恒温制御器17、第2の恒温制御器18、第3の恒温制御器19のうち、特に第3の恒温制御器19を室温以下に設定する場合に重要で、恒温乾燥空気送風ノズル23から供給される恒温乾燥空気26は、受光面16の表面の結露を防ぎ、受光面16の水滴による光散乱を回避し、入射光量の損失による光の信号のゆらぎを抑えることを可能とする。
【0038】
図1B、
図1Cに示すように、第1の恒温制御器17により温度調整されたサンプル容器ホルダ8は、第1の板状部材9上の断熱部材30の上に設置されることで(
図1C)、サンプル容器ホルダ8の温度と第1の板状部材9の温度を独立に制御できる。断熱部材30は、貫通孔10と等しいか、またはそれ以上の貫通孔を有するもので、サンプル容器ホルダ8の底面部よりも広い板状部材が好適である。また、
図1Cに示すように、第1の板状部材9に断熱部材30を設置する凹みを設けておき、断熱部材30を嵌め込むと良い。
【0039】
一般的に、化学発光、酵素を用いる生物発光では、20℃から40℃で発光反応に寄与する酵素活性が高く、光の発生効率が高い。一方で、光検出器14とその受光面16の冷却は暗電流や暗電流パルス数を低減でき、結果ノイズレベルが下がるため、低温にするのが好適である。よって、第1の恒温制御器17と第2の恒温制御器18と第3の恒温制御器19の温度設定値を各々の用途に合わせて、温度調整する必要があり、サンプル容器ホルダ8と第1の板状部材9の断熱の為に断熱部材30を設けることが有効であり、光検出器14に対する断熱は、サンプル容器ホルダ8と第1の板状部材9の間に介在する空気を用いる空気断熱によって可能となる。
【0040】
断熱部材30の材質は、樹脂系材量または繊維系材量、さらに発砲系であり、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリスチレン樹脂、EPSセルロース繊維、ガラス繊維、炭化コルク、等である。もちろん、断熱部材30を敢えて使用しない形態も、光反応温度が室温以下でも効率が良い場合においては好適で、サンプル容器ホルダ8、第1の板状部材9、光検出器14を同じ温度で恒温制御しても良い。
【0041】
第3の恒温制御器19で光検出器14を冷却する場合、光検出器14の温度と受光面16の温度を同様の温度にすることが、結露防止と、暗電流、暗電流パルス数の低減において重要である。そのため、第4の恒温制御器24の設定温度と第3の恒温制御器19の設定温度を同じ温度にする使い方が本実施例においては好適である。さらに、第2の恒温制御器18による第1の板状部材9の冷却は、恒温乾燥空気送風ノズル23から排出された恒温乾燥空気26の装置内温度差による温度勾配を低減させ、受光面16の冷却効率は向上する。
【0042】
図10は、発光測定の測定手順の一例を説明するためのフローチャートである。まず、微弱発光計測装置本体1の開閉扉4を開き(S1001)、ATP溶液をストックしたサンプル容器7を設置する(S1002)。設置後、開閉扉4を閉める(S1003)。そして、微弱発光計測装置本体1と制御装置3の起動を行い(S1004)、第1の恒温制御器17、第2の恒温制御器18、第3の恒温制御器19、第4の恒温制御器22による恒温制御を開始するとともに、恒温乾燥空気26の供給を開始する(S1005)。次に、光検出器14にHVを印加する(S1006)。そして、恒温乾燥空気26の温度が恒温乾燥空気送風ノズル23の設定温度に達すると、第2の板状部材12を移動させ(S1007)、貫通孔10を開口させることで、光透過窓11を介して受光面16とサンプル容器7を対向させる(S1008)。その後、計測を開始する。恒温乾燥空気26は、発光計測中も流し続ける。
【0043】
分注機から、発光試薬が分注される前から計測を開始し、サンプル容器7内の背景光測定を行う(S1009)。背景光測定をある一定時間行った後、分注機から発光試薬を分注する(S1010)。発光試薬とサンプル容器内のATPが反応し、容器内で発光反応が始まる。ATPの発光測定をある一定時間行った後(S1011)、光検出器14のHVをOFFし(S1012)、第2の板状部材12が計測開始前の位置に移動し(S1013)、貫通孔10は閉じられる(S1014)。次に測定済みのサンプル容器7を取り出すために、微弱発光計測装置本体1の開閉扉4を開き(S1015)、サンプル容器7を取り出す(S1016)。次のサンプルを測定したい場合は、この工程で、新たに設置し、上記説明した測定フローを繰り返す。
【0044】
測定を終了する場合は、サンプル容器7を取り出した後、微弱発光計測装置本体1の開閉扉4を閉める(S1017)。そして、第1の恒温制御器17、第2の恒温制御器18、第3の恒温制御器19、第4の恒温制御器24が停止させ(S1018)、その後に、各恒温制御器が装置内の温度と同等になってから恒温乾燥空気26を停止させる(S1019)。最後に、微弱発光計測装置本体1と制御装置3の停止を行う(S1020)。
【0045】
以上により、試料容器や発光反応を起こす酵素が含まれる試薬類を、活性が高いとされる20℃以上のいわゆる至適温度に保ちつつ、光検出器は、その受光面を発光物質を含む試料容器に近接させ、かつ、受光面の冷却による結露を防ぐことが可能となる。そして、ノイズや試薬の背景信号の温度由来によるばらつきを抑えると同時に、測定試料容器底面の近接効果により、極低濃度分子からの生物発光を高感度かつ定量的に計測することが可能となり、例えば、1細菌中のATP発光の微弱光を高感度かつ高精度に計測し、微生物を1個相当から測定できる。
【0046】
<実施例2>
第2の恒温制御器18、第3の恒温制御器19、第4の恒温制御器24の設定温度を10℃以下に設定するには、第2の恒温制御器18、第3の恒温制御器19、第4の恒温制御器24に電子冷却素子(ペルチェ素子)を用いるのが好適である。
図2Aは第1の電子冷却素子を用いたときの第1の板状部材9の第2の恒温制御器18の構成図を示している。ここで、第2の恒温制御器18は、
図2Aを用いて以下に述べる、第1の電子冷却素子の冷却面31、第1の電子冷却素子の放熱面33、第1の熱排出器34、第1の冷却媒体導入口35、第1の冷却媒体排出口36によって構成される。
【0047】
図2Aに示すように、電子冷却素子では、第1の電子冷却素子の冷却面31の第1の板状部材9と接触しない反対面は、冷却により奪った熱が放出される、いわゆる第1の電子冷却素子の放熱面33となる。微弱発光計測装置本体1の機構室5の温度上昇による恒温制御の不安定化を防ぐために、第1の電子冷却素子の放熱面33の熱は、冷却ガス、または冷却水の供給により、微弱発光計測装置本体1から制御室6や外部へ排出するのが良い。また、第1の熱排出器34は、第1の板状部材9の冷却に用いた第1の電子冷却素子の放熱面33に取り付けた熱排出器であり、第1の冷却媒体導入口35と第1の冷却媒体排出口36を備えている。第1の熱排出器34は熱伝導率の高い板状部材で、アルミニウム、ステンレス、銅、金、銀、等の金属を用いるのが好適である。
【0048】
第1の熱排出器34の内部には第1の冷却媒体導入口35と第1の冷却媒体排出口36を結ぶ流路が形成されており、後述するように、当該経路に冷却媒体が流れる構成となっており、当該経路は、
図2Dの第1の熱排出器34上の点線で示すとおりである。
【0049】
図2Bは第2の電子冷却素子を用いたときの光検出器14の第3の恒温制御器22の構成図を示している。ここで、第3の恒温制御器22は、
図2Bを用いて以下に述べる、第1の金属ブロック38、第2の電子冷却素子の冷却面37、第2の電子冷却素子の放熱面39、第2の熱排出器40、第2の冷却媒体導入口41、第2の冷却媒体排出口42によって構成される。
【0050】
図2Bに示すように、電子冷却素子では、光検出器14を冷やす第1の金属ブロック38と接する第2の電子冷却素子の冷却面37の反対面は、冷却により奪った熱が放出される、いわゆる第2の電子冷却素子の放熱面39となる。微弱発光計測装置本体1の機構室5の温度上昇による恒温制御の不安定化を防ぐために、第2の電子冷却素子の放熱面39の熱は、冷却ガス、または冷却水の供給により、微弱発光計測装置本体1から外部へ排出するのが良い。
【0051】
第2の熱排出器40は、光検出器14の冷却に用いた第2の電子冷却素子の放熱面33に取り付けた熱排出器であり、第2の冷却媒体導入口41と第2の冷却媒体排出口42を備えている。第2の熱排出器40は熱伝導率の高い板状部材で、アルミニウム、ステンレス、銅、金、銀、等の金属を用いるのが好適である。第2の熱排出器40の内部には第2の冷却媒体導入口41と第2の冷却媒体排出口42を結ぶ流路が形成されており、後述するように、当該経路に冷却媒体が流れる構成となっており、当該経路は、
図2Dの第2の熱排出器40上の点線で示すとおりである。
【0052】
図2Cは第3の電子冷却素子を用いたときの恒温乾燥空気送風ノズル23の第4の恒温制御器24の構成図を示している。ここで、第4の恒温制御器24は、
図2Cを用いて以下に述べる、第2の金属ブロック43、第3の電子冷却素子の冷却面44、第3の電子冷却素子の放熱面45、第3の熱排出器46、第3の冷却媒体導入口47、第3の冷却媒体排出口48によって構成される。
図2Bに示すように、電子冷却素子では、恒温乾燥空気送風ノズル23を冷やす第2の金属ブロック43と接する第3の電子冷却素子の冷却面44の反対面は、冷却により奪った熱が放出される、いわゆる第3の電子冷却素子の放熱面45となる。微弱発光計測装置本体1の機構室5の温度上昇による恒温制御の不安定化を防ぐために、第3の電子冷却素子の放熱面45の熱は、冷却ガス、または冷却水の供給により、微弱発光計測装置本体1から外部へ排出するのが良い。
【0053】
第3の熱排出器46は、恒温乾燥空気送風ノズル23の冷却に用いた第3の電子冷却素子の放熱面45に取り付けた熱排出器であり、第3の冷却媒体導入口47と第3の冷却媒体排出口48を備えている。第3の熱排出器46は熱伝導率の高い板状部材で、アルミニウム、ステンレス、銅、金、銀、等の金属を用いるのが好適である。第3の熱排出器46の内部には第3の冷却媒体導入口47と第2の冷却媒体排出口48を結ぶ流路が形成されており、後述するように、当該経路に冷却媒体が流れる構成となっており、当該経路は、
図2Dの第3の熱排出器46上の点線で示すとおりである。
【0054】
図2Dは、
図2A、
図2B、
図2Cの第1の熱排出器34、第2の熱排出器40、第3の熱排出器46に冷却媒体を送液し、循環させる構成のブロック図の典型例を示している。第1の熱排出器34、第2の熱排出器40、第3の熱排出器46の第1の冷却媒体導入口35、第2の冷却媒体導入口41、第3の冷却媒体導入口47に冷却媒体貯蔵槽50から循環型ポンプ49を用いて冷却媒体を誘導し、第1の熱排出器34、第2の熱排出器40、第3の熱排出器46の各々の流路に冷却媒体を送り、熱を奪いながら、第1の冷却媒体排出口36、第2の冷却媒体排出口42、第3の冷却媒体排出口48から冷却媒体貯蔵槽50に戻す。冷却媒体貯蔵槽50が奪った熱で温度上昇するのであれば、冷却器51を用意し、冷却媒体の供給ラインを恒温に保てば良い。
【0055】
循環型ポンプ49はダイヤフラムポンプやペリスタティックポンプを用いるのが好適である。49、50、51は、微弱発光計測装置本体1の機構室5と制御室6で構成されているが、循環型ポンプ49、冷却媒体貯蔵槽50、冷却器51は、制御室6に設置するか、微弱発光計測装置本体1の外に設置するのが良い。上記は冷媒に液体を用いた例であるが、ガスを用いても良い。しかし、熱伝導率の高さの点で、液体、特に水の方が好適である。真水でも良いが、エチレングリコールを含ませた不凍液を使用しても良い。
【0056】
一方で、第2の恒温制御器18、第3の恒温制御器19の冷却に冷却媒体循環のみを手段として用いても良い。冷却媒体貯蔵槽50と冷却器51を用意し、ダイヤフラムポンプやペリスタポンプを用いて、第1の板状部材9に冷却媒体導入口と冷却媒体排出口とそれらを結ぶ流路を、第1の金属ブロック38に冷却媒体導入口と冷却媒体排出口とそれらを結ぶ流路を、第2の金属ブロック43に冷却媒体導入口と冷却媒体排出口とそれらを結ぶ流路を、形成し、
図2Dの実施例のとおり、冷却媒体を循環させれば良い。循環水による冷却を利用する場合には、電子冷却素子が不要になり、構成が単純になるが、温度制御の精度、安定性を重視する場合には、電子冷却素子を使用する方が好ましい。また、冷却用水は真水でも良いが、0℃付近で制御したい場合は、エチレングリコールを含ませた不凍液を使用するのが好適である。
【0057】
これまで、第2の恒温制御器18、第3の恒温制御器19、第4の恒温制御器24について、冷却という観点で記述してきたが、もちろん、恒温という観点から一定温度にする上で、昇温も可能である。温水循環か、または、電子冷却素子の極性を変えることで、昇温すればよい。装置の設置場所が低温である場合に必要な場合もある。また、冷却による結露について、万が一結露が起こってしまった場合には、電子冷却素子の極性を変更し、加温する。結露の有無は漏水センサーを設置しておき、検知すると良い。
【0058】
第1の熱排出器34、第2の熱排出器40、第3の熱排出器46内の冷却媒体が流れる流路の断面形状は丸、四角、三角等、何れの形状でも良く、また、流路長や流路の道筋も特に限定されない。ただし、熱排出器の全体積に対して、内部の流路体積が占める割合は大きい方が良く、具体的には、(内部の流路体積)/(熱排出器の全体積)は、1/3以上が好ましい。
【0059】
<実施例3>
図3B、
図3Cは、恒温乾燥空気26の温調方法の変形実施例を示している。
図3Aと異なり、恒温乾燥空気ノズル23を利用しない形態である。
【0060】
図3Bは、第1の板状部材9の内部に第1の送風流路52を形成し、第2の恒温制御器18で温度調整された第1の板状部材9内に乾燥空気を流すことで、第1の板状部材9と同じ温度に調整し、恒温乾燥空気26を受光面16に平行に流す方法である。つまり、コンプレッサー2から供給された空気が、第2のフィルター29、第1のフィルター28、エアードライヤー27を通過した後、この乾燥空気が第1の板状部材9の送風流路52の中を通過することで温度調整がなされて受光面16に平行に送風される。恒温乾燥空気26の温度調整を第1の板状部材9の第2の恒温制御器18で行うことになるため、制御機構は簡単シンプルになり、恒温乾燥空気送風ノズル23と第4の恒温制御器24が不要となる。
【0061】
図3Cは、第3の恒温制御器19の温度伝達部材を有効活用し、温度伝達部材の中に第2の送風流路53を形成し、第2の送風流路へ乾燥空気を導入して、恒温乾燥空気26を生成する方法である。つまり、コンプレッサー2から供給された空気が、第2のフィルター29、第1のフィルター28、エアードライヤー27を通過した後、この乾燥空気が第2の送風流路53の中を通過することで温度調整がなされて受光面16に平行に送風される。恒温乾燥空気26の温度調整を第1の板状部材9の第3の恒温制御器19で行うことになるため、制御機構は簡単シンプルになり、恒温乾燥空気送風ノズル23と第4の恒温制御器24が不要となる。
【0062】
ここで、冷却に必要な流速V(L/min)は、以下の式1により求められる。
【0063】
V(L/sec) = (P×3600)/(0.278×C×d×Δt) 式(1)
Pは電子冷却素子からの供給電力量(W)、Cは比熱(kJ/(kg・℃))、dは密度(kg/m3)、Δtは温度差である。以下、供給される乾燥空気の温度を25℃から5℃に下げる場合について考える。簡単のために、電子冷却素子の電力供給量P=50Wとし、その他のパラメータ、C=1.007、d=1.2、Δt=20として計算すると、2.1 mL/min以下で流路内を通せば良く、流路断面積が小さいほど、効率よく冷却できる。例えば、1辺10mmの断面100mm
2で、210mmを1分間で通過させれば十分に冷却できる。実施例1の第4の恒温制御器を使用する場合でも同じで、断面が100mm
2であれば、第4の恒温制御器24に210mmの温調部があれば良い。
受光面16の直径が25mmの光検出器14を使用した場合、受光面積が約500mm
2であり、光透過窓11との距離が0.05mmの場合で、受光面16と光透過窓11で形成される空間容積は25mm
3(=25μl)、10mmの場合で、空間容積は5000mm
3(5ml)となる。これらの体積空間全体を5℃に置換するに、0.05mmの時と10mmの時との比較で、供給流速を変える必要があり、200倍の差が生じる。
また、容積が大きいほど、出口付近から離れるに従い温度勾配が生じ、温度差は大きくなる。そこで、この温度勾配をできるかぎり小さくするためには、恒温乾燥空気26の供給量を多くするか、第1の板状部材9の下面を冷やすことが効果的である。また、温度勾配をできるかぎり小さくするために、恒温乾燥空気26を複数の箇所から中心に向かって供給しても良い。
【0064】
また、乾燥空気の温度を30℃から0℃に下げる場合で、電力供給量が低く20Wの場合では、その他のパラメータ、C=1.007、d=1.2、Δt=20として計算すると、0.6 mL/min以下で流路内を通せば良い。
なお、上記の計算結果は光検出器14の受光面16の熱伝導率を考慮していない。可視光領域を測定する光検出器14の受光面16の表面材質に関しては、ガラスが一般的であり、実際には、その熱伝導率は0.55〜0.75W/m・kを考慮する必要がある。しかしながら、受光面16の表面のガラス板は非常に薄いため、光電面材量の冷却において、熱伝導率による熱の伝達速度の材量依存はほぼ無視できる。また、光検出器14は第3の恒温制御器19により恒温乾燥空気26と同じ温度に制御するため、光検出器14の内部からの冷却も加わり、表面の材質の熱伝導率を考慮しなくても良い。
<実施例4>
本実施例では、受光面16と第1の板状部材9、または、第1の板状部材9の貫通孔10に装着される光透過窓11の隙間が狭い場合、積極的に受光面16へ恒温乾燥空気26を供給する手段について述べる。
図4A、
図4B、
図4C、
図Dは、第1の板状部材9の光検出器14が挿入される部分の構造と光検出器14と受光面16の位置関係を示す図である。
図4A、
図4Bは、
図3Bで示した第1の板状部材9に設けられた第1の送風流路52から恒温乾燥空気26を供給する形態に関する1例である。第1の板状部材9にザグリ54を形成し、光検出器14の先端部の外壁と貫通孔10の壁で形成される隙間に対して、光透過窓11と光検出器14の先端の隙間を若干広くしておけば、積極的に、受光面16と第1の板状部材9、または光透過窓11の空間に恒温乾燥空気26を第1の送風流路52から送り込むことができ、受光面16を通り過ぎた恒温乾燥空気26は、ザグリ54へ流出する。
【0065】
なお、
図4Aの矢印で表わした恒温乾燥空気26は、その矢印で示した方向に空気が流れることを示す。
図4Bは、第1の板状部材9の恒温乾燥空気26が流れる第1の送風流路52、貫通孔10、ザグリ54の断面を三次元的に表わしたものである。
【0066】
図4C、
図4Dは、
図3Cで示した第3の恒温制御器19の温度伝達部材中の第2の送風流路53から恒温乾燥空気26を供給する形態に関する1例である。第1の板状部材9にザグリ54を形成し、光検出器14の先端部の外壁と貫通孔10の壁で形成される隙間に対して、光透過窓11と光検出器14の先端の隙間を若干広くしておけば、積極的に、受光面16と第1の板状部材9、または光透過窓11の空間に恒温乾燥空気26を第2の送風流路53から送り込むことができ、受光面16を通り過ぎた恒温乾燥空気26は、ザグリ54へ流出する。
【0067】
なお、
図4Cの矢印で表わした恒温乾燥空気26は、その矢印で示した方向に空気が流れることを示す。
図4Dは、第3の恒温制御器19の温度伝達部材中の第2の送風流路53、貫通孔10、ザグリ54の断面を三次元的に表わしたものである。
図4Bの矢印は、恒温乾燥空気26の流れを模式的に表わしたものである。
<実施例5>
図5は、本発明の微弱発光計測装置を用いて、第1の恒温制御器を25℃に設定し、第2の恒温制御器と第3の恒温制御器の設定温度を5℃に設定し、各設定温度に到達するまでの温度変化と1秒間毎の暗電流パルス数(Nd)の経時的な変化を示す図であり、サンプル容器の温度56、第1の板状部材の温度57、光検出器の温度58、該恒温制御を行った場合のNd値59、恒温制御なしの場合のNd値の典型値55、の経時変化をそれぞれ示している。装置内温度は、22℃から25℃の範囲で変動していた。本発明の微弱発光測定装置は、微弱発光測定装置本体1の筐体内の温度を監視する手段を備えていても良い。暗電流パルス数(Nd値)は、単位はCOUNT PER SECOND(カウント数/秒)であり、1秒間の信号パルス数の積算値を表すものである。ここでは、毎秒毎の信号パルス数の積算値を0〜3600秒まで連続的にプロットしたものである。そのときの温度モニタの結果もグラフに重ね合わせている(右軸)。
【0068】
本実施例においては、恒温乾燥空気26は、光検出器14の第2の送風流路53を介して供給し、流速は1ml/minとした。また、サンプル容器7と光検出器14の間には、石英ガラスを介在させた。石英ガラスは熱伝導率が低いため、サンプル容器7と受光面16の温度を独立に制御しやすく、サンプル容器7の冷却を回避できる。
【0069】
図5から、第1の板状部材9の温度57が500秒後に設定値の5℃に到達し、光検出器の温度58が1800秒後(30分後)に設定値の5℃に到達し、1800〜2160秒の5℃に恒温制御したNd値59は、ゆらぎもなく、ノイズレベルは、恒温制御なしのNd値55のノイズレベルよりも著しく低下した。二乗平均平方根(Root Mean Square (RMS))で、25℃と5℃のノイズレベルを比較すると、恒温制御なしのNd値55では35.3CPS、恒温制御したNd値59は、12.6CPSであった。
図5の2160秒後以降は、第2の恒温制御器と第3の恒温制御器の温度制御を解除しており、装置内温度である25℃に戻っていくにつれて、Nd値が上昇し、ノイズレベルが大きくなっていくのがわかる。本実験において、恒温乾燥空気26は光検出器14と第1の板状部材9の温度とほぼ同じであることは、暗電流パルス数から確認でき、実際に、受光面16と受光面16に結露は生じていなかった。
【0070】
図6は、本発明の微弱発光計測装置を用いて測定した1秒間毎の暗電流パルス数(Nd値)の平均値の温度依存性を示す図である。本実施例で使用した光検出器14の受光面16は、入射窓が硼硅酸ガラス、光電面はバイアルカリ(Sb-Rb-Cs、Sb-K-Cs)で構成されたものであるが、5℃以下でダークカウント値の平均値はほぼ一定になった。もちろん、入射窓は、石英ガラス、UVカットガラスでも良く、光電面の種類は以下のもの、例えば、Sb-Cs、マルチアルカリ(Sb-Na-K-Cs)、GaAs(Cs)、InGaAs(Cs)、InP/InGaAs(Cs)、InP/InGaAsP(Cs)、Ag-O-Csなどでも良い。
【0071】
暗電流パルス数(Nd値)の低減が検出感度の向上に有効である結果を示す例を
図7に示す。
図7は、本発明の微弱発光計測装置を用いて、極微弱光を発する標準光源をパルス的に光らせた時の温度依存性の結果である。
図7Aの温度制御なしにおいて、ここでは25℃の時であるが、50CPSの光信号(71,72)がノイズに埋もれてしまい、明瞭に観察できない。一方、20℃の恒温、つまり、
図7Aの測定時の温度と比較して、約―5℃の恒温制御だけでも、光の信号(73,74)と光検出器ノイズが明瞭に区別できるようになっているのがわかる。
【0072】
図8は、本発明の微弱発光計測装置を用いて、第1の板状部材9と光検出器14と受光面16の温度を一定とし、ATPの生物発光測定を行った結果から、設定温度の違いに対するSN比の変化を示した図である。実験は以下のような手順で行った。分注機を装置内に導入した微弱発光計測装置本体に導入し、まず、空のサンプル容器を設置した状態で暗電流パルス数を30秒間測定する。次に、空のサンプル容器内へATPの発光用試薬を分注機で分注し、試薬の背景光信号パルス数を30秒間測定した後、ATPを1amol含むサンプル溶液をサンプル容器7内へ、分注し、発光反応が終了するまで測定した。暗電流パルス数61、背景光信号パルス数62、発光信号パルス数63の全ての経時変化を示したデータが、
図9の典型的な生物発光であるATP発光経時曲線60である。
図8は、第1の恒温制御器17を25℃に、第2の恒温制御器17と第3の恒温制御器19と第4の恒温制御器24は5℃から40℃に設定して行った結果を整理したものであり、整理するにあたり、式(2)を用いた。実験データをもとにSN比は以下の式で表わされる。
S/N = Ns/(Ns+2(Nb+Nd))
1/2 式(2)
ここで、Ndは暗電流パルス数、Nbは、試薬の背景光パルス数、Ns値はATP発光信号パルス数のピーク値(発光信号パルス数63)である。
【0073】
まず、ATP発光強度はどの条件においても50CPSであり、変化しなかった。しかし、
図8にて示されるように、設定温度により、暗電流パルス数が変化するため、SN比が温度が低いほど向上しているのがわかる。また、試薬の背景光値Nbが0〜200まで変化するとNb値が大きくなるに従い、SN比が低下することがわかる。Nb値の試薬の背景光は試薬によってことなり、ここでは、代表例として、Nb=0、10、20、30、50、100、150、200の例を挙げた。Nb値が何れの場合においても、光検出器14と受光面16の温度が低いほど、SN比が向上することが示された。また、Nb値が低いほど、光検出器と受光面の温度を下げることが有効であることが示された。