【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記式(1)で表されるジスルホン酸アミド化合物からなることを特徴とする非水電解液用添加剤である。
【0011】
【化1】
【0012】
式(1)中、X
1及びX
2は、それぞれ独立し、炭素数1〜6のアルキレン基、又は、炭素鎖中若しくは鎖端に、酸素原子、置換基を有していてもよい窒素原子、若しくは、硫黄原子を有する炭素数1〜6のアルキレン基を示す。Aは、C
mH
(2m−n)Z
nを示し、mは1〜6の整数であり、nは0〜12の整数であり、Zは置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、シリル基、ホスホン酸エステル基、アシル基、シアノ基、又は、ニトロ基を示す。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明者らは、前記式(1)で表されるジスルホン酸アミド化合物は、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示し、かつ、化学的に安定であることを見出した。そこで本発明者らは、該ジスルホン酸アミド化合物からなる非水電解液用添加剤を非水電解液に用い、更に該非水電解液を非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定なSEIを形成してサイクル特性、充放電容量、内部抵抗等の電池特性を改善することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明にかかる式(1)で表されるジスルホン酸アミド化合物が非水電解液用添加剤として、サイクル特性、充放電容量、内部抵抗等の電池特性を改善する理由は詳らかではないが、次のように考えられる。前記式(1)で表されるジスルホン酸アミド化合物は環状アミノ基を有しており、電気化学的還元を受けた際に、環状アミノ基が開環し、N、S、O等を含む極性基を多数含有するSEIを形成すると考えられる。このようなN、S、O等を含む極性基を多数含有しているSEIは、優れたイオン伝導度を示すことができることから、非常に高性能なSEIであると考えられる。
【0014】
本発明は、前記式(1)で表されるジスルホン酸アミド化合物からなる非水電解液用添加剤である。
【0015】
前記式(1)中、X
1及びX
2は、それぞれ独立し、炭素数1〜6のアルキレン基、又は、炭素鎖中若しくは鎖端に、酸素原子、置換基を有していてもよい窒素原子、若しくは、硫黄原子を有する炭素数1〜6のアルキレン基を示し、Aは、C
mH
(2m−n)Z
nを示し、mは1〜6の整数であり、nは0〜12の整数であり、Zは置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、シリル基、ホスホン酸エステル基、アシル基、シアノ基、又は、ニトロ基を示す。
【0016】
X
1及びX
2における「炭素鎖中若しくは鎖端に、酸素原子、置換基を有していてもよい窒素原子、若しくは、硫黄原子を有する炭素数1〜6のアルキレン基」の、「炭素鎖中若しくは鎖端に、酸素原子、置換基を有していてもよい窒素原子、若しくは、硫黄原子を有する炭素数1〜6のアルキレン基」の部分は、上記「炭素数1〜6のアルキレン基」の炭素鎖中若しくは鎖端に酸素原子、置換基を有していてもよい窒素原子、若しくは、硫黄原子を有する基であり、例えば、−O−CH
2−、−O−(CH
2)
2−、−O−(CH
2)
3−、−O−(CH
2)
4−、−O−(CH
2)
5−、−O−(CH
2)
6−、−CH
2−O−CH
2−、−CH
2−O−(CH
2)
2−、−CH
2−O−(CH
2)
3−、−CH
2−O−(CH
2)
4−、−CH
2−O−(CH
2)
5−、−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−、−(CH
2)
2−O−(CH
2)
3−、−(CH
2)
2−O−(CH
2)
4−、−(CH
2)
3−O−(CH
2)
3−、−N−CH
2−、−N−(CH
2)
2−、−N−(CH
2)
3−、−N−(CH
2)
4−、−N−(CH
2)
5−、−N−(CH
2)
6−、−CH
2−N−CH
2−、−CH
2−N−(CH
2)
2−、−CH
2−N−(CH
2)
3−、−CH
2−N−(CH
2)
4−、−CH
2−N−(CH
2)
5−、−(CH
2)
2−N−(CH
2)
2−、−(CH
2)
2−N−(CH
2)
3−、−(CH
2)
2−N−(CH
2)
4−、−(CH
2)
3−N−(CH
2)
3−、−N(CH
3)−CH
2−、−N(CH
3)−(CH
2)
2−、−N(CH
3)−(CH
2)
3−、−N(CH
3)−(CH
2)
4−、−N(CH
3)−(CH
2)
5−、−N(CH
3)−(CH
2)
6−、−CH
2−N(CH
3)−CH
2−、−CH
2−N(CH
3)−(CH
2)
2−、−CH
2−N(CH
3)−(CH
2)
3−、−CH
2−N(CH
3)−(CH
2)
4−、−CH
2−N(CH
3)−(CH
2)
5−、−(CH
2)
2−N(CH
3)−(CH
2)
2−、−(CH
2)
2−N(CH
3)−(CH
2)
3−、−(CH
2)
2−N(CH
3)−(CH
2)
4−、−(CH
2)
3−N(CH
3)−(CH
2)
3−、−S−CH
2−、−S−(CH
2)
2−、−S−(CH
2)
3−、−S−(CH
2)
4−、−S−(CH
2)
5−、−S−(CH
2)
6−、−CH
2−S−CH
2−、−CH
2−S−(CH
2)
2−、−CH
2−S−(CH
2)
3−、−CH
2−S−(CH
2)
4−、−CH
2−S−(CH
2)
5−、−(CH
2)
2−S−(CH
2)
2−、−(CH
2)
2−S−(CH
2)
3−、−(CH
2)
2−S−(CH
2)
4−、−(CH
2)
3−S−(CH
2)
3−を有する基等が挙げられる。好適には、炭素鎖中若しくは鎖端に酸素原子、置換基を有していてもよい窒素原子、又は、硫黄原子を有する炭素数2〜4のアルキレン基であり、より好適には、−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−、−(CH
2)
2−N−(CH
2)
2−、−(CH
2)
2−N(CH
3)−(CH
2)
2−、−(CH
2)
2−S−(CH
2)
2−を有する基である。
【0017】
前記式(1)中、スルホニル基と結合した窒素原子とX
1とで形成される環構造、及び、スルホニル基と結合した窒素原子とX
2とで形成される環構造は、5員環又は6員環であることが好ましい。前記環構造が4員環以下であると、製造しにくくなるおそれがあり、前記環構造が7員環を超えると、非水溶媒への溶解性が低下するおそれがある。
【0018】
前記式(1)中、Aは、C
mH
(2m−n)Z
nを示し、mは1〜6の整数であり、nは0〜12の整数であり、Zは置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、シリル基、ホスホン酸エステル基、アシル基、シアノ基、又は、ニトロ基を示す。mの好ましい上限は4、より好ましい上限は2であり、Aは、メチレン基又はエチレン基であることが好ましい。Zが置換されたアルキル基である場合、アルキル基の一部又は全部の水素がフッ素原子で置換されていることが好ましい。
【0019】
前記式(1)で表されるジスルホン酸アミド化合物としては、例えば、メタンジスルホン酸ビスピロリジン、メタンジスルホン酸ビスピペリジン、メタンジスルホン酸ビスモルホリン、メタンジスルホン酸ビスチオモルホリン、1,2−エタンジスルホン酸ビスモルホリン、メタンジスルホン酸ビス(1−メチルピペラジン)、1,1−エタンジスルホン酸ビスモルホリン、エタン−1,1−ジスルホン酸ビスピロリジン、エタン−1,1−ジスルホン酸ビスピペリジン、プロパン−1,1−ジスルホン酸ビスピロリジン、プロパン−1,1−ジスルホン酸ビスピペリジン、プロパン−1,1−ジスルホン酸ビスモルホリン、2−オキソプロパン−1,1−ジスルホン酸ビスピロリジン、2−オキソプロパン−1,1−ジスルホン酸ビスモルホリン、2−オキソ−2−フェニル−エタン−1,1−ジスルホン酸ビスピロリジン、2−オキソ−2−フェニル−エタン−1,1−ジスルホン酸ビスモルホリン、ビス(モルホリン−スルホニル)メチルリン酸ジエチル、トリメチルシラニル−メタンジスルホン酸ビスモルホリン等が挙げられる。なかでも、製造が容易であること、保存安定性に優れること等の観点から、メタンジスルホン酸ビスピロリジン、メタンジスルホン酸ビスピペリジン、メタンジスルホン酸ビスモルホリン、メタンジスルホン酸ビスチオモルホリン、1,2−エタンジスルホン酸ビスモルホリン、メタンジスルホン酸ビス(1−メチルピペラジン)が好ましい。
【0020】
前記式(1)で表されるジスルホン酸アミド化合物を製造する方法としては、例えば、X
1とNH基とにより形成される環状第二級アミン、及び、X
2とNH基とにより形成される環状第二級アミン(X
1及びX
2は式(1)と同様のものである)と、2つのクロロスルホニル基の間にAで示される基(Aは式(1)と同様のものである)を有する化合物とを反応させる方法等が挙げられる。
例えば、メタンジスルホン酸ビスピロリジンを製造する場合は、まず、ピロリジンに、メタンジスルホニルクロライドを滴下し、次いで、トリエチルアミンを滴下して撹拌し、反応終了後、有機層に抽出し、晶析操作により析出した結晶をろ過する方法を用いることができる。なお、該化合物を製造する場合、必要に応じて、1,2−ジメトキシエタン等の反応溶媒を用いることもできる。
【0021】
前記式(1)で表されるジスルホン酸アミド化合物は、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示すため、該化合物からなる本発明の非水電解液用添加剤は、非水電解液に含有され非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定なSEIを形成してサイクル特性、充放電容量、内部抵抗等の電池特性を改善することができる。また、前記式(1)で表されるジスルホン酸アミド化合物は、水分や温度変化に対して安定であるため、該化合物からなる本発明の非水電解液用添加剤は、長期間、室温で保存することが可能である。したがって、該非水電解液用添加剤を含有する非水電解液も、長期間の保存及び使用に耐えることができる。
本発明の非水電解液用添加剤、非水溶媒、及び、電解質を含有する非水電解液もまた、本発明の1つである。
【0022】
本発明の非水電解液における本発明の非水電解液用添加剤の含有量(即ち、前記式(1)で表されるジスルホン酸アミド化合物の含有量)は特に限定されないが、好ましい下限は0.005質量%、好ましい上限は10質量%である。本発明の非水電解液用添加剤の含有量が0.005質量%未満であると、非水電解液二次電池等に用いた場合に電極表面での電気化学的還元反応によって安定なSEIを充分に形成できないおそれがある。本発明の非水電解液用添加剤の含有量が10質量%を超えると、溶解しにくくなるだけでなく非水電解液の粘度が上昇し、イオンの移動度を充分に確保できなくなるため、電解液の導電性等を充分に確保することができず、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に充放電特性等に支障をきたすおそれがある。本発明の非水電解液用添加剤の含有量のより好ましい下限は0.01質量%である。なお、本発明の非水電解液用添加剤(即ち、前記式(1)で表されるジスルホン酸アミド化合物)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、該化合物を2種以上併用する場合の含有量は、合わせて、好ましい下限は0.005質量%、好ましい上限は10質量%である。
更に、該非水電解液用添加剤と共に、必要に応じて、非水電解液にビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,3−プロパンスルトン(PS)等の一般的な添加剤を混合してもよい。
【0023】
前記非水溶媒としては、得られる非水電解液の粘度を低く抑える等の観点から、非プロトン性溶媒が好適である。なかでも、環状カーボネート、鎖状カーボネート、脂肪族カルボン酸エステル、ラクトン、ラクタム、環状エーテル、鎖状エーテル、スルホン、及び、これらのハロゲン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。なかでも、環状カーボネート、鎖状カーボネートがより好ましく用いられる。
【0024】
前記環状カーボネートとしては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン等が挙げられる。
前記鎖状カーボネートとしては、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル等が挙げられる。
前記脂肪族カルボン酸エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル等が挙げられる。
前記ラクトンとしては、例えば、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
前記ラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
前記環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
前記鎖状エーテルとしては、例えば、1,2−ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン等が挙げられる。
前記スルホンとしては、例えば、スルホラン等が挙げられる。
前記ハロゲン誘導体としては、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン等が挙げられる。
これらの非水溶媒は、単独で用いてもよいし、複数種を混合してもよい。
これらの非水溶媒は、例えば、リチウムイオン電池等の非水電解液二次電池や、リチウムイオンキャパシタ等の電気二重層キャパシタ等に好ましく用いられる。
【0025】
前記電解質としては、リチウムイオンのイオン源となるリチウム塩が好ましい。なかでも、LiAlCl
4、LiBF
4、LiPF
6、LiClO
4、LiAsF
6、及び、LiSbF
6からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、解離度が高く電解液のイオン伝導度を高めることができ、さらには耐酸化還元特性により長期間の使用による蓄電デバイスの性能劣化を抑制する作用がある等の観点から、LiBF
4、LiPF
6であることがより好ましい。これらの電解質は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明の非水電解液における前記電解質の濃度は特に限定されないが、好ましい下限は0.1mol/L、好ましい上限は2.0mol/Lである。前記電解質の濃度が0.1mol/L未満であると、非水電解液の導電性等を充分に確保することができず、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に放電特性及び充電特性等に支障をきたすおそれがある。前記電解質の濃度が2.0mol/Lを超えると、粘度が上昇し、イオンの移動度を充分に確保できなくなるため、非水電解液の導電性等を充分に確保することができず、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に放電特性及び充電特性等に支障をきたすおそれがある。前記電解質の濃度のより好ましい下限は0.5mol/L、より好ましい上限は1.5mol/Lである。
【0027】
本発明の非水電解液、正極、及び、負極を備えた蓄電デバイスもまた、本発明の1つである。蓄電デバイスとしては、非水電解液二次電池や電気二重層キャパシタ等がある。これらの中でもリチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタが好適である。
【0028】
図1は、本発明の蓄電デバイスにかかる非水電解液二次電池の一例を模式的に示した断面図である。
図1において、非水電解液二次電池1は、正極集電体2の一方面側に正極活物質層3が設けられてなる正極板4、及び、負極集電体5の一方面側に負極活物質層6が設けられてなる負極板7を有する。正極板4と負極板7とは、本発明の非水電解液8と非水電解液8中に設けたセパレータ9を介して対向配置されている。
【0029】
本発明の蓄電デバイスにかかる非水電解液二次電池において、正極集電体2及び負極集電体5としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス等の金属からなる金属箔を用いることができる。
【0030】
本発明の蓄電デバイスにかかる非水電解液二次電池において、正極活物質層3に用いる正極活物質としては、リチウム含有複合酸化物が好ましく用いられ、例えば、LiMnO
2、LiFeO
2、LiCoO
2、LiMn
2O
4、Li
2FeSiO
4、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2、LiFePO
4等のリチウム含有複合酸化物が挙げられる。
【0031】
本発明の蓄電デバイスにかかる非水電解液二次電池において、負極活物質層6に用いる負極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵、放出することができる材料が挙げられる。このような材料としては、黒鉛、非晶質炭素等の炭素材料や、酸化インジウム、酸化シリコン、酸化スズ、酸化亜鉛、及び、酸化リチウム等の酸化物材料等が挙げられる。
また、負極活物質として、リチウム金属、及び、リチウムと合金を形成することができる金属材料を用いることもできる。前記リチウムと合金を形成することができる金属としては、例えば、Cu、Sn、Si、Co、Mn、Fe、Sb、Ag等が挙げられ、これらの金属とリチウムを含む2元又は3元からなる合金を用いることもできる。
これらの負極活物質は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
本発明の蓄電デバイスにかかる非水電解液二次電池において、セパレータ9としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂等からなる多孔質フィルムを用いることができる。