特許第5953624号(P5953624)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953624
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】Si/C複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/023 20060101AFI20160707BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20160707BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   C01B33/023
   H01M4/38 Z
   H01M4/36 A
   H01M4/36 C
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-523034(P2015-523034)
(86)(22)【出願日】2014年1月17日
(65)【公表番号】特表2015-527969(P2015-527969A)
(43)【公表日】2015年9月24日
(86)【国際出願番号】KR2014000500
(87)【国際公開番号】WO2014129749
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2015年1月20日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0017319
(32)【優先日】2013年2月19日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リュ、ジ フーン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ホン キュ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ワン モ
(72)【発明者】
【氏名】カン、スン ジューン
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、チ ホ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ギ ベオム
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−032693(JP,A)
【文献】 特表2013−539016(JP,A)
【文献】 特表2012−523069(JP,A)
【文献】 特表2010−501970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 − 33/193
H01M 4/36
H01M 4/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)下記化学式(1)で表される芳香族含有シリコンアルコキシド化合物を有機溶媒と共に混合してSiO/C複合体を形成する段階;
ii)前記段階i)から得たSiO/C複合体をアルカリ金属またはアルカリ土金属と混合した後、これを非活性雰囲気で熱処理してシリカを還元させる段階;及び
iii)前記段階ii)から得た熱処理結果物を酸処理して酸化物を除去する段階を含むSi/C複合体の製造方法;
【化1】
前記化学式(1)で、
は、フェニル基であり、
は、CからCのアルコキシ基であり、
nは、1から3である。
【請求項2】
前記Si/C複合体でSiに対するCのモル比(C/Si ratio)は、0超過18未満の範囲である請求項1に記載のSi/C複合体の製造方法
【請求項3】
前記炭素の含量は、Si/C複合体の全体重量に対し1から50重量%である請求項1または請求項2に記載のSi/C複合体の製造方法
【請求項4】
前記Si/C複合体の粒径は、10nmから100μmである請求項1から請求項3の何れか一項に記載のSi/C複合体の製造方法
【請求項5】
前記Si/C複合体の粒子の表面上に炭素コーティング層がさらに形成されている請求項1から請求項4の何れか一項に記載のSi/C複合体の製造方法
【請求項6】
前記芳香族含有シリコンアルコキシド化合物は、フェニルトリエトキシシラン(Phenyl Tri Ethoxy Silane; PTES)、フェニルトリメトキシシラン(Phenyl Tri Methoxy Silane; PTMS)及びジフェニルジエトキシシラン(Di Phenyl Di Ethoxy Silane;DDES)からなる群から選ばれるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物である請求項1から請求項5の何れか一項に記載のSi/C複合体の製造方法。
【請求項7】
前記芳香族含有シリコンアルコキシド化合物は、フェニルトリエトキシシラン(Phenyl Tri Ethoxy Silane;PTES)である請求項に記載のSi/C複合体の製造方法。
【請求項8】
前記芳香族含有シリコンアルコキシド化合物の含量は、有機溶媒に対して0.1重量部から20重量部である請求項から請求項の何れか一項に記載のSi/C複合体の製造方法。
【請求項9】
前記段階i)で線形シリコンアルコキシド化合物をさらに添加する請求項から請求項の何れか一項に記載のSi/C複合体の製造方法。
【請求項10】
前記線形シリコンアルコキシド化合物は、テトラエチルオルトシリケート(Tetra Ethyl Ortho Silicate;TEOS)、テトラメチルオルトシリケート(Tetra Methyl Ortho Silicate;TMOS)、テトラプロピルオルトシリケート(Tetra Propyl Ortho Silicate;TPOS)及びテトラブチルオルトシリケート(Tetra Butyl Ortho Silicate;TBOS)からなる群から選ばれるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物である請求項に記載のSi/C複合体の製造方法。
【請求項11】
前記線形シリコンアルコキシド化合物は、テトラエチルオルトシリケート(Tetra Ethyl Ortho Silicate;TEOS)またはテトラメチルオルトシリケート(Tetra Methyl Ortho Silicate;TMOS)である請求項10に記載のSi/C複合体の製造方法。
【請求項12】
前記芳香族含有シリコンアルコキシド化合物と線形シリコンアルコキシド化合物との混合比は、モル比で1:0.3から60である請求項から請求項11の何れか一項に記載のSi/C複合体の製造方法。
【請求項13】
前記アルカリ金属がリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムまたはフランシウムである請求項から請求項12の何れか一項に記載のSi/C複合体の製造方法。
【請求項14】
前記アルカリ土金属がベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムまたはラジウムである請求項から請求項13の何れか一項に記載のSi/C複合体の製造方法。
【請求項15】
前記段階ii)の熱処理は、350℃から1400℃の温度範囲で行われることを特徴とする請求項から請求項14の何れか一項に記載のSi/C複合体の製造方法。
【請求項16】
前記段階iii)の後、Si/C複合体を炭素前駆体と混合してSi/C複合体の表面を炭素でコーティングする段階をさらに含む請求項から請求項15の何れか一項に記載のSi/C複合体の製造方法。
【請求項17】
前記コーティングは、300℃から1400℃の温度範囲で行われる請求項16に記載のSi/C複合体の製造方法。
【請求項18】
前記炭素前駆体は、ピッチまたは炭化水素系物質であることを特徴とする請求項16または請求項17に記載のSi/C複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Si/C複合体、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池用負極活物質に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯用小型電子機器の電源として脚光を浴びているリチウム二次電池は、有機電解液を用いて既存のアルカリ水溶液を用いた電池より2倍以上の高い放電電圧を示すことにより高いエネルギー密度を表す電池である。
【0003】
リチウム二次電池の負極材料としては黒鉛が主に利用されているが、黒鉛は単位質量当たりの容量が372mAh/gで少なく、リチウム二次電池の高容量化が難しい。
【0004】
黒鉛よりも高容量を表す負極材としては、例えばシリコン、錫及びこれらの酸化物などのリチウムと金属間化合物を形成する材料が有望である。しかし、これらの材料は、リチウムを吸収貯蔵する時に結晶構造の変化を惹起して体積が膨張するとの問題点がある。シリコンの場合、リチウムを最大量吸収貯蔵すれば、Li4.4Siに切り換えられ、充電による体積の膨張が行われ、この場合、充電による体積の増加率は体積膨張前のシリコンの体積に比べて約4.12倍まで膨張することができる。
【0005】
また、シリコン粒子としてナノ大きさ水準の粒子を用いるか、シリコンが多孔性を有するようにして体積の変化に対する緩衝効果を持たせる研究が進められていた。ナノ粒子においては、金属ナノ粒子を炭素でコーティングする方法が研究された。
【0006】
しかし、ナノ粒子はその製造費用が高価であり、炭素の割れやすい性質のため充電時に金属の膨張と同時に炭素に割れ目が発生し、放電時に再び収縮する過程で炭素と金属との間に空いた空間が生成されることによって寿命改善の効果が大きくないとの問題がある。
【0007】
また、シリコンなどの負極材の高容量化のための研究として、シリコンの合金化などを介した体積膨張率の減少のための研究が行われてきた。しかし、充放電の際、Si、SnまたはAlなどの金属がリチウムと合金化して体積の膨張及び収縮が発生して電池のサイクル特性が低下されるとの問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決しようとする第1技術的課題は、電気伝導度が向上し、体積の膨張を最小化することによりリチウム二次電池の寿命特性を向上させることができる負極活物質用Si/C複合体を提供することにある。
【0009】
本発明が達成しようとする第2技術的課題は、前記Si/C複合体の製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明が達成しようとする第3技術的課題は、前記Si/C複合体を含む負極活物質及び負極を提供することにある。
【0011】
本発明が達成しようとする第4技術的課題は、前記負極を含むリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明は
i)下記化学式(1)で表される芳香族含有シリコンアルコキシド化合物を有機溶媒と共に混合し、SiO2/C複合体を形成する段階;
ii)前記段階i)から得たSiO2/C複合体をアルカリ金属またはアルカリ土金属と混合した後、これを非活性雰囲気で熱処理して前記シリカを還元させる段階;及び
iii)前記段階ii)から得た熱処理結果物を酸処理して酸化物を除去する段階を含むSi/C複合体の製造方法を提供する:
【0014】
【化1】
前記化学式(1)において、
は、フェニル基であり、
は、CからCのアルコキシ基であり、
nは、1から3である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、シリコン粒子の内部に炭素が原子状態で分散されているSi/C複合体をコスト面で経済的に製造することができ、このように製造されたSi/C複合体を負極活物質として用いることにより、電気伝導度をさらに向上させることができ、体積膨張を最小化することによりリチウム二次電池の寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本明細書に添付される次の図等は、本発明の好ましい実施形態を例示するものであり、前述の発明の内容と共に本発明の技術思想をさらに理解させる役割を果たすものなので、本発明はそのような図に記載された事項にのみ限定されて解釈されてはならない。
【0019】
図1】本発明の一実施形態に基づき、芳香族含有シリコンアルコキシド化合物を用いたSi/C複合体の製造方法を示したフローチャートである。
図2】本発明の一実施形態に基づき、芳香族含有シリコンアルコキシド化合物及び線形シリコンアルコキシド化合物を共に用いたSi/C複合体の製造方法を示したフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係るSi/C複合体の反応メカニズム及びSi/C複合体の模式図である。
図4】本発明の製造例1から7に係る還元前のSiO/C複合体のSEM写真、SiO/C複合体の粒径、及びSiO/C複合体に存在する炭素の含量を示した図である。
図5】本発明の実施例3に係る還元後のSi/C複合体のSEM写真、Si/C複合体の粒径、及びSi/C複合体に存在する炭素の含量を示した図である。
図6】本発明の実施例5及び6に基づき製造されたコイン型半電池のサイクル数に伴う容量特性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に対する理解を助けるため、本発明の実施形態を用いてさらに詳しく説明する。
【0021】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるとの原則に即して本発明の技術的思想に符合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0022】
本発明の一実施形態に係るSi/C複合体(composite)は、シリコン粒子の内部に炭素が原子状態で分散されている。
【0023】
負極活物質としてSiのみを用いる場合、充放電時の収縮/膨張によって寿命の劣化が発生することがあり、酸化シリコンのみを用いる場合、リチウム二次電池の高容量化を達成することができないとの問題がある。
【0024】
本発明の一実施形態に係るSi/C複合体は、充放電容量が大きく容量維持率が優秀なだけでなく、Si粒子の内部に伝導性に優れた炭素が原子状態で分散されて存在することにより、電気伝導度をさらに向上させることができ、体積膨張を最小化することによりリチウム二次電池の寿命特性を向上させることができる。
【0025】
本明細書で用いられている用語「複合体(composite)」とは、二種類以上の材料が組み合わせられて物理的・化学的に相違する相(phase)を形成しながら、より有効な機能を発現する物質を意味する。
【0026】
具体的に、本発明の一実施形態に係るSi/C複合体は、単にSiと炭素(C)が単純凝集物または混合物を意味するのではなく、Si粒子の内部に炭素が埋め込まれた(embedding)状態を意味する。
【0027】
一般に、Siと炭素が化学的に結合されている場合、SiC相が形成され、これは非可逆性があるため二次電池の負極材料として用いるには困難がある。
【0028】
しかし、本発明の一実施形態に基づき炭素がSiと化学的結合なく形成されるので、非可逆性の問題を解決することができ、さらにSi粒子の内部に炭素が塊のまま凝集して分散されているのではなく、原子状態でSi粒子内に均等に分散されて存在することにより電気伝導度をさらに向上させることができ、体積膨張を最小化することができる。
【0029】
前記Si/C複合体でSiに対するCのモル比(C/Siの比(ratio))は、0超過18未満の範囲であり得る。
【0030】
本発明の一実施形態に係るSi/C複合体における炭素の含量は、前記Si/C複合体の全体重量に対して1重量%から50重量%で存在することができ、好ましくは1重量%から20重量%である。前記炭素の含量が1重量%未満であれば、前記複合体の電気伝導度の改善効果が微々であり、50重量%を超過すればシリコンの含量が減少し高容量化を達成しにくい。
【0031】
本発明の一実施例に係る前記Si/C複合体の製造方法は図1及び図2にフローチャートで示しており、これを具体的に説明する。
【0032】
図1を参照しつつ検討してみれば、本発明の一実施形態に係るSi/C複合体は、i)下記化学式(1)で表される芳香族含有シリコンアルコキシド化合物を有機溶媒と共に混合してSiO/C複合体を形成する段階;ii)前記段階i)から得たSiO/C複合体をアルカリ金属またはアルカリ土金属と混合した後、これを非活性雰囲気で熱処理して前記シリカを還元させる段階;及びiii)前記段階ii)から得た熱処理結果物を酸処理して酸化物を除去する段階を含むことができる:
【0033】
【化1】
前記化学式(1)で、
は、フェニル基であり、
は、CからCのアルコキシ基であり、
nは、1から3である。
【0034】
前記段階i)はSiO/C複合体を形成する段階であって、前記式(1)で表される芳香族含有シリコンアルコキシド化合物を有機溶媒に添加し、10分から72時間の間撹拌し乾燥してSiO/C複合体を得ることができる。前記撹拌において、撹拌温度は特に限られるものではなく、前記式(1)の化合物からSiOと炭素とへの充分な変換を引き起こすため常温で行われるのが好ましい。前記撹拌は大気雰囲気下で、または水素或いはアルゴンなどの非活性雰囲気で行われてよく、これに限られるものではない。
【0035】
前記段階i)で用いられる有機溶媒は、例えばアルコールまたはテトラヒドロフラン(THF)などを用いることができる。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、前記撹拌後前記有機溶媒にSiO/Cが沈澱状態で現れ、これを洗浄及び乾燥すれば炭素原子が含有されたSiOナノ粒子に炭素が含有された複合体を得ることができる。
【0037】
また、本発明の一実施形態によれば、前記段階i)で線形シリコンアルコキシド化合物をさらに添加し、芳香族含有シリコンアルコキシド化合物と線形シリコンアルコキシド化合物とを縮合重合反応させてSiO/C複合体を得ることができる。
【0038】
本発明の一実施形態に基づき、線形シリコンアルコキシド化合物を用いて製造したSi/C複合体の製造フローチャートは図2に示した。
【0039】
図1及び図2の段階i)で製造されたSiO/C複合体における炭素(C)は、芳香族含有シリコンアルコキシド化合物から生成されるものであり、よって、芳香族含有シリコンアルコキシド化合物の量に従いSiO/C複合体またはSi/C複合体で炭素の量を調節することができる。
【0040】
図1に示す通り、段階i)で芳香族含有シリコンアルコキシド化合物のみを用いる場合、前記芳香族含有シリコンアルコキシド化合物は、有機溶媒に対し0.1重量部から20重量部、好ましくは0.5重量部から10重量部を用いることができる。前記芳香族含有シリコンアルコキシド化合物の使用量が20重量部を超過する場合、複合体の粒子の大きさが不均一となる可能性があるので好ましくなく、0.1重量部未満の場合、加水分解反応が進められないので、所望のSiO/C複合体を得にくいことがある。
【0041】
また、図2の段階i)でのように線形シリコンアルコキシド化合物を添加する場合、前記芳香族含有シリコンアルコキシド化合物と線形シリコンアルコキシド化合物との混合比は、モル比で1:0.3から60であり得る。線形シリコンアルコキシド化合物を前記混合比より多く用いる場合、Si/C複合体で所望の炭素含量を得難く、これにより体積膨張の問題を改善しにくいので、電池の寿命特性が低下し得る。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、前記縮合重合反応は20℃から60℃で10分から72時間の間行われてよい。
【0043】
前記芳香族含有シリコンアルコキシド化合物は、好ましくはフェニルトリエトキシシラン(Phenyl Tri Ethoxy Silane;PTES)、フェニルトリメトキシシラン(Phenyl Tri Methoxy Silane;PTMS)及びジフェニルジエトキシシラン(Di Phenyl Di Ethoxy Silane;DDES)からなる群から選ばれるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物であってよく、さらに好ましくはフェニルトリエトキシシラン(PTES)が良い。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、前記芳香族含有シリコンアルコキシド化合物は、無定形(amorphous)シリコンを含有し、これを用いることによりSi/C複合体から無定形シリコンが生成可能なので体積膨張を最小化することができ、これにより二次電池の寿命特性を改善することができる。また、Si粒子の内部に炭素が塊のまま凝集して分散されず、原子状態でSi粒子内に均等に分散させることができる。
【0045】
本発明の一実施形態に係る前記線形シリコンアルコキシド化合物は、テトラエチルオルトシリケート(Tetra Ethyl Ortho Silicate;TEOS)、テトラメチルオルトシリケート(Tetra Methyl Ortho Silicate;TMOS)、テトラプロピルオルトシリケート(Tetra Propyl Ortho Silicate;TPOS)及びテトラブチルオルトシリケート(Tetra Butyl Ortho Silicate;TBOS)からなる群から選ばれるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物であってよく、好ましくはテトラエチルオルトシリケート(Tetra Ethyl Ortho Silicate;TEOS)またはテトラメチルオルトシリケート(Tetra Methyl Ortho Silicate;TMOS)であってよい。
【0046】
前記段階i)で製造されたSiO/C複合体の粒径は10nmから5μmであってよい。
【0047】
前記段階ii)はシリカ還元段階であって、前記段階i)から得たSiO/C複合体をアルカリ金属またはアルカリ土金属と混合した後、これを非活性雰囲気で熱処理してシリカ(SiO)を還元させる段階である。前記還元は、例えばアルゴンなどの非活性雰囲気で行われるのが好ましく、熱処理温度は350から1400℃、好ましくは500から1000℃の温度範囲で1分から100時間の間行われてよい。前記熱処理条件を外れる場合、シリカの充分な還元が行われないか、超過する温度または時間による経済的利益がないので好ましくない。
【0048】
本発明の一実施形態に基づき、前記アルカリ金属またはアルカリ土金属は還元剤として用いられるものであり、前記アルカリ金属はリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムまたはフランシウムであってよく、アルカリ土金属はベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムまたはラジウムであってよい。
【0049】
前記段階iii)は還元剤の酸化物を除去する段階であって、前記段階ii)から得た熱処理結果物を酸処理し、前記還元剤の酸化物を除去してSi/Cの複合体を得る段階である。このような酸処理は、塩酸水溶液、硫酸水溶液または硝酸水溶液などの酸水溶液を利用することができる。
【0050】
本発明の一実施形態に係るSi/C複合体は、残りのSiO/C複合体が存在することがあり、ナノドメイン単位のSi−Cが結合されたSiCも微量で発生し得る。
【0051】
本発明の一実施形態に基づき製造されたSi/C複合体の反応メカニズムを図3に示した。図3の反応メカニズムは例えば、線形シリコンアルコキシド化合物としてTEOSを用いた場合であって、TEOSを芳香族含有シリコンアルコキシド化合物(図3で、RはC1からC4のアルコキシ基であってよい)と混合し、縮合重合反応してSiO/C複合体を形成し、これを還元してSi/C複合体が得られることを示す。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、前記製造方法で製造されたSi/C複合体を含む。前記Si/C複合体の模式図を図3に示した。図3を参照しつつ検討してみれば、Si/C複合体はSi粒子の内部に伝導性に優れたCが、化学的結合なく原子状態で均等に分散されて存在することができる。よって、Si粒子によって充放電容量が大きく容量維持率に優れ、Si粒子の内部に伝導性に優れた炭素が原子状態で分散されて存在することにより電気伝導度をさらに向上させることができ、体積膨張を最小化することによりリチウム二次電池の寿命特性を向上させることができる。
【0053】
本発明の一実施形態に基づき製造されたSi/C複合体の粒径は、10nmから100μm、好ましくは20nmから5μm、さらに好ましくは50nmから1μmであってよい。前記Si/C複合体の粒径が10nm未満の場合、表面積が広いので、副反応が発生し工程上に困難があり得、100μmを超過する場合、電池の体積膨張を引き起こし得る。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、前記Si/C複合体はそのまま負極活物質に使用可能であるが、前記段階iii)の後、Si/C複合体を炭素前駆体と混合してSi/C複合体の表面を炭素でコーティングする段階をさらに含むことにより、Si/C複合体粒子の表面上に炭素コーティング層をさらに形成することができる。
【0055】
すなわち、Si/C複合体はSi内部に炭素が埋め込まれた状態でSi/C複合体の表面に炭素をコーティングして炭素をさらに含有することにより、シリコン粒子間の電気伝導度をさらに改善させることができる。
【0056】
本発明の一実施形態に係る炭素コーティング層は、炭素前駆体を溶媒に分散させ、これを前記Si/C複合体と混合した後、乾燥及び熱処理することにより達成可能である。
【0057】
前記炭素前駆体は、熱処理によって炭素を生成するものであればいずれも制限なく用いることができ、例えばピッチ(pitch)または炭化水素系物質などを用いることができる。前記炭化水素系物質には、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)やフェノール系樹脂などを例に挙げることができる。
【0058】
また、炭素コーティング層を形成する溶媒は、例えばテトラヒドロフラン(THF)、アルコールなどを用いることができ、熱処理温度は、例えば300℃から1400℃の温度範囲で焼成してコーティングすることができる。
【0059】
前記Si/C複合体は、それ自体で負極活物質として用いることができるが、これに炭素;及び/またはリチウムと合金化が可能な物質と混合させ、これを負極活物質として用いることも可能である。前記リチウムと合金化が可能な物質としては、Si、SiO、Sn、SnO、Ge、GeO、Pb、PbO、Ag、Mg、Zn、ZnO、Ga、In、Sb及びBiからなる群から選ばれる一つ以上を用いることができる。
【0060】
また、本発明の一実施形態に係る負極は、前記負極活物質を含む。
【0061】
本発明の一実施形態に係る負極は、当分野に周知の通常的な方法で製造することができる。例えば、前記Si/C複合体を含む負極活物質に溶媒、必要に応じてバインダー及び導電剤を混合及び撹拌してスラリーを製造した後、これを金属材料の集電体に塗布(コーティング)し圧縮した後、乾燥して負極を製造することができる。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、前記バインダーは負極活物質粒子等を結着させて成形体を維持するために用いられるものであって、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、スチレン−ブタジエンゴム(styrene−butadiene rubber;SBR)などのようなバインダーが用いられる。バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)に代表される溶剤系バインダー(すなわち、有機溶剤を溶媒にするバインダー)と、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(styrene−butadiene rubber;SBR)及びアクリルゴムからなる群から選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物である水系バインダー(すなわち、水を溶媒にするバインダー)とに分けられる。水系バインダーは、溶剤系バインダーと異なって経済的で環境に優しく、作業者の健康にも無害であり、溶剤系バインダーに比べて結着効果も大きいので、同一体積当りの活物質の割合を高めることができて高容量化が可能である。水系バインダーにはSBRであるのが好ましい。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、リチウム二次電池の負極には粘度調節のために増粘剤をさらに含むことができる。前記増粘剤はセルロース系化合物であってよく、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物であってよい。本発明の一実施例によれば、前記増粘剤にはカルボキシメチルセルロース(CMC)が好ましく、前記負極活物質及びバインダーをカルボキシメチルセルロースと共に水に分散させて負極に適用することができる。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、前記導電剤は天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素ナノチューブ、フラーレン、炭素繊維、金属繊維、フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化チタン及びポリフェニレン誘導体からなる群から選ばれるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物であってよく、好ましくはカーボンブラックであってよい。
【0065】
本発明の一実施形態に係る負極集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケルまたは銅合金またはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがある。
【0066】
また、本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池は前記負極を利用し、正極、負極、前記正極と負極との間に介在されたセパレーター及びリチウム塩が溶解されている電解質を含む。
【0067】
本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池またはリチウムイオンポリマー二次電池など、通常のリチウム二次電池を全て含むことができる。
【0068】
本発明に係るリチウム二次電池は、当技術分野に周知の通常的な方法によって製造することができる。例えば、正極と負極との間に多孔性のセパレーターを入れ、リチウム塩が溶解されている電解質を投入して製造することができる。
【0069】
本発明の一実施形態に係る正極は、当分野に周知の通常的な方法で製造することができる。例えば、正極活物質に溶媒、必要に応じてバインダー、導電剤、分散剤を混合及び撹拌してスラリーを製造した後、これを金属材料の集電体に塗布(コーティング)し圧縮した後、乾燥して正極を製造することができる。
【0070】
前記正極は、正極活物質を正極集電体上に塗布した後、乾燥する段階により製造される。このとき、前記正極活物質はリチウム含有遷移金属酸化物が好ましく用いられてよく、例えばLiCoO(0.5<x<1.3)、LiNiO(0.5<x<1.3)、LiMnO(0.5<x<1.3)、LiMn(0.5<x<1.3)、Li(NiCoMn)O(0.5<x<1.3、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1−yCo(0.5<x<1.3、0<y<1)、LiCo1−yMn(0.5<x<1.3、0≦y<1)、LiNi1−yMn(0.5<x<1.3、O≦y<1)、Li(NiCoMn)O(0.5<x<1.3、0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2−zNi(0.5<x<1.3、0<z<2)、LiMn2−zCo(0.5<x<1.3、0<z<2)、LiCoPO(0.5<x<1.3)及びLiFePO(0.5<x<1.3)からなる群から選ばれるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物を用いることができ、前記リチウム含有遷移金属酸化物はアルミニウム(Al)などの金属や金属酸化物でコーティングされてもよい。また、前記リチウム含有遷移金属酸化物(oxide)の外に硫化物(sulfide)、セレン化物(selenide)及びハロゲン化物(halide)なども用いられてよい。
【0071】
金属材料の集電体は伝導性の高い金属であって、前記電極活物質のスラリーが容易に粘着することができる金属で、電池の電圧範囲で反応性のないものであればいずれも用いることができる。正極集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがある。
【0072】
前記正極を形成するための溶媒としては、NMP(N−メチルピロリドン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、アセトン、ジメチルアセトアミドなどの有機溶媒または水などがあり、これらの溶媒は単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。溶媒の使用量は、スラリーの塗布の厚さ、製造収率を考慮して前記電極活物質、バインダー、導電剤を溶解及び分散させることができる程度であれば充分である。
【0073】
また、セパレーターとしては従来にセパレーターに用いられていた通常の多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して用いることができ、または通常の多孔性不織布、例えば高融点の硝子繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いることができるが、これに限られるものではない。
【0074】
本発明の一実施形態で用いられる電解質として含まれ得るリチウム塩は、リチウム二次電池用電解質に通常用いられるものが制限なく用いられてよく、例えば前記リチウム塩の陰イオンとしてはF、Cl、Br、I、NO、N(CN)、BF、ClO、PF、(CFPF、(CFPF、(CFPF、(CFPF、(CF、CFSO、CFCFSO、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO、CFCO、CHCO、SCN及び(CFCFSOからなる群から選ばれるいずれか一つであってよい。
【0075】
本発明の一実施形態で用いられる電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などを挙げることができ、これらに限られるものではない。
【0076】
本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の外形は特に制限がないが、缶を用いた円筒型、角型、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などとなり得る。
【0077】
本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池は、各種の電子製品の電源として用いられ得る。例えば、携帯用電話機、携帯電話、ゲーム機、携帯用テレビ、ノートパソコン、計算機などに用いることができ、これに限られるものではない。
【0078】
以下、本発明を具体的に説明するため、実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明に係る実施例は幾多の多様な形態に変形可能であり、本発明の範囲が下記で詳述する実施例に限られるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例】
【0079】
製造例1
<段階(i):SiO/C複合体の製造>
3000mlのフラスコにフェニルトリエトキシシラン(PTES)(0.82g):テトラエチルオルトシリケート(TEOS)(41.81g)を1:59モル比で混合してエタノール1400gと共に混合した。この混合物を大気雰囲気下、常温で5分間撹拌した後、34%のアンモニア水と超純水蒸留水(deionized water:DIW)の混合物をゆっくり滴加した後、3時間の間撹拌した後、ゲル化が起こるまで常温で反応させる。このゲル化物を乾燥してC/SiOの割合が0.1であるSiO/C複合体を製造した。
製造例2
【0080】
前記製造例1でPTES:TEOSをモル比1:11で用いたことを除いては、製造例1と同一に行ってC/SiOの割合が0.5であるSiO/C複合体を得た。
製造例3
【0081】
前記製造例1でPTES:TEOSをモル比1:5で用いたことを除いては、製造例1と同一に行ってC/SiOの割合が1であるSiO/C複合体を得た。
製造例4
【0082】
前記製造例1でPTES:TEOSをモル比1:2で用いたことを除いては、製造例1と同一に行ってC/SiOの割合が2であるSiO/C複合体を得た。
製造例5
【0083】
前記製造例1でPTES:TEOSをモル比1:1で用いたことを除いては、製造例1と同一に行ってC/SiOの割合が3であるSiO/C複合体を得た。
製造例6
【0084】
前記製造例1でPTES:TEOSをモル比1:0.5で用いたことを除いては、製造例1と同一に行ってC/SiOの割合が4であるSiO/C複合体を得た。
製造例7
【0085】
前記製造例1でPTES:TEOSをモル比1:0で用いたことを除いては、製造例1と同一に行ってC/SiOの割合が6であるSiO/C複合体を得た。
実施例1:C/Siの割合が0.1であるSi/C複合体の製造
【0086】
<段階(ii)>
前記製造例1で製造されたSiO/C複合体0.1gとマグネシウム粒子0.085gを混合し、アルゴン雰囲気下、約650℃で約2時間30分間熱処理してSi/C+MgOを得た。
【0087】
<段階(iii)>
前記段階(ii)から得たSi/C+MgOを0.1Mの塩酸水溶液で24時間撹拌した後、これを濾過紙で濾過してMgOを除去し、これを80℃のオーブンで乾燥してC/Siの割合が0.1であるSi/Cを得た。
実施例2:C/Siの割合が1であるSi/C複合体の製造
【0088】
前記製造例3から得たSiO/C複合体を用いたことを除いては、実施例1と同一に行ってC/Siの割合が1であるSi/Cを得た。
実施例3:C/Siの割合が2であるSi/C複合体の製造
【0089】
前記製造例4から得たSiO/C複合体を用いたことを除いては、実施例1と同一に行ってC/Siの割合が2であるSi/Cを得た。
【0090】
実施例4から6:負極及びリチウム二次電池の製造
【0091】
負極の製造
実施例1から3で製造されたSi/C及び黒鉛を、14:86の重量比で混合して負極活物質として用いた。前記負極活物質、導電剤としてアセチレンブラック、バインダーとしてスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を96:1:2:1の重量比で混合した後、これらを溶媒である水(HO)と共に混合して均一な負極活物質スラリーを製造した。
【0092】
前記製造された負極活物質スラリーを銅集電体の一面に65μmの厚さにコーティングし、乾燥及び圧延した後、一定の大きさでパンチング(pouching)して負極を製造した。
リチウム二次電池の製造(コイン型半電池)
【0093】
また、対(counter)電極としてLi金属を用い、前記負極とLi金属との間にポリオレフィンセパレーターを介在させた後、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)を30:70の体積比で混合した溶媒に1MのLiPFが溶解された電解質を注入してコイン型半電池を製造した。
比較例1
【0094】
負極活物質として炭素を含まないSiを用いたことを除いては、実施例4と同一に行ってコイン型半電池を製造した。
比較例2
【0095】
負極活物質として表面に炭素がコーティングされたSi(Shin Etsu社、KSC1064)を用いたことを除いては、実施例4と同一に行ってコイン型半電池を製造した。
実験例1
【0096】
<SEM顕微鏡写真>
前記製造例1から7及び実施例で製造された複合体をそれぞれSEM顕微鏡写真で確認し、その結果を図4及び図5に示した。
【0097】
図4は、製造例1から7で製造された還元前のSiO/C複合体のSEM写真を示した図であって、SEM X 50k及びSEM X 20kのイメージをそれぞれ示した。
【0098】
図4で分かるところのように、C:SiOの割合が増加するほど複合体の粒子サイズが増加することが分かる。
【0099】
また、図5は、実施例3で製造された還元後のSi/C複合体のSEM X 50kイメージを示した図である。
【0100】
図5で分かるところのように、還元前のSEM写真である図4の製造例4のSEM写真と比べてみる時、複合体の粒径には変化がなく、還元後にも粒子の構造はよく維持され、炭素分析を介して内在された炭素もまた依然と粒子に内在していることを確認することができる。
実験例2
【0101】
<SiO/C複合体及びSi/C複合体の炭素含量の測定>
前記製造例1から7及び実施例3で製造された複合体をそれぞれ(炭素/硫黄含量分析器、CS analyzer)を利用して炭素の含量を測定し、その結果を図4及び図5に示した。
【0102】
図4及び図5で分かるところのように、PTES使用量の増加時にSiOまたはSiに内在された炭素量が増加したことが分かり、C/Siの割合が6である時、SiOまたはSiに内在された炭素の含量が50重量%以上であった。また、図5の還元後の複合体の炭素含量と、図4の還元前の製造例4の炭素含量とを比べると、還元及び不純物の除去に伴い炭素の含量が減少されたことが分かる。
実験例3
【0103】
<電極伝導度の測定>
実施例4と6、及び比較例1で製造された負極の電極伝導度を、面抵抗測定器を利用して測定した。その結果を下記表1に示した。
【0104】
【表1】
【0105】
前記表1で分かるところのように、実施例4及び6の負極の伝導度は、炭素が含まれていない比較例1の負極に比べて電極伝導度の値が8倍から10倍以上優れることが分かる。
【0106】
また、実施例4及び実施例6を比べてみれば、Si/C複合体で炭素の含量が増加するほど電極伝導度の値も増加することを確認することができる。
実験例4
【0107】
<充放電サイクルに伴う容量の測定>
前記実施例5と6、及び比較例2で製造されたコイン型半電池の充放電サイクルに伴う容量を調べるため、実施例5と6、及び比較例2で製造されたコイン型半電池を23℃で定電流/定電圧(CC/CV)条件で4.2V、1/41Cまで0.5Cで充電した後、定電流(CC)条件で1.5Vまで0.5Cで放電し、容量を測定した。これを1から50サイクルで繰り返して行った。その結果を図6に示し、1回目のサイクルに比べた50回目のサイクルの相対容量を下記表2に示した。
【0108】
【表2】
【0109】
前記表2及び図5に示したように、本発明の実施例5及び6のコイン型半電池は、表面に炭素コーティングされた負極活物質を用いた比較例2のコイン型半電池に比べ、サイクル1回目から20回目までは容量が低かったが、20回目以後からサイクル回数が増加するほど比較例2は著しく減少した反面、実施例5及び6は容量減少率が緩慢であり、サイクル45回目以後には実施例5及び6は比較例2に比べて電池の容量に優れた。
【0110】
また、負極活物質にSiを用いる場合、サイクル特性に最も大きい影響を与える因子が体積膨張なので、前記表2及び図6の結果を介して間接的に体積膨張に対する問題が改善したことを予測することができる。
【0111】
前記表2及び図6は、たとえ50回目のサイクルの結果であるが、本発明の実施例の傾きを比較例2と比べて検討してみれば、サイクル回数の増加に伴い比較例2に比べてさらに大きい容量特性を発揮するはずであることを予測することができる。
【0112】
また、前記実施例5及び6は、コイン型半電池の結果であるが、大きいセルでさらに大きい性能を期待することができる。
図1
図2
図6
図3
図4
図5