(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1および第2の反射要素のそれぞれは、前記第1回転軸又は前記第1回転軸と平行な軸に関して前記第1反射部と対称な形状で、それぞれの前記第1反射部と一体的に前記第1回転軸の回りに回転可能に支持されている第3反射部を有し、
前記第3の反射要素は、前記第2回転軸又は前記第2回転軸と平行な軸に関して前記第2反射部と対称な形状で、前記第2反射部と一体的に前記第2回転軸の回りに回転可能に支持されている第4反射部を有することを特徴とする請求項1に記載の空間光変調器。
前記所定の段差は、前記第1反射部の前記第1回転軸に最も近い部分で反射される光の位相の変化量と、前記第3反射部の前記第1回転軸に最も近い部分で反射される光の位相の変化量とが、180°の位相差を持つように設定されることを特徴とする請求項3に記載の空間光変調器。
前記第1および第2の反射要素の前記第1反射部は、前記第1回転軸に近い部分に一つの頂点を有し、前記第1回転軸から離れた部分に前記第1回転軸に平行な一つの辺を持つ三角形の形状を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の空間光変調器。
前記第1および第2の反射要素の前記第1反射部は、前記第1回転軸に近い部分が前記第1回転軸に垂直な線状で、前記第1回転軸から離れた部分が前記第1回転軸に平行な線状のT字型の形状を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の空間光変調器。
前記第1および第2の反射要素の前記第1反射部は、前記第1回転軸に近い部分の反射率が前記第1回転軸から離れた部分の反射率よりも小さいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の空間光変調器。
前記第1および第2の反射要素の前記第1反射部は、前記第1回転軸の回りに時計回りに第1の角度回転した第1の状態と、前記第1回転軸の回りに反時計回りに前記第1の角度と同じ角度回転した第2の状態とに交互に設定されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の空間光変調器。
前記複数の反射要素は、前記第1回転軸に対して0°より大きく90°より小さい交差角で交差する方向に偏光した照明光が照射される位置に設置されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の空間光変調器。
前記基板に露光すべきパターンに応じて、前記空間光変調器の前記複数の反射要素を、互いに独立にそれぞれ前記回転軸の回りに時計回りに第1の角度回転した第1の状態と、前記回転軸の回りに反時計回りに前記第1の角度と同じ角度回転した第2の状態とに交互する制御装置と、
前記基板を前記投影光学系に対して移動するステージと、を備えることを特徴とする請求項12又は13に記載の露光装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態につき
図1〜
図13を参照して説明する。
図1は、本実施形態のマスクレス方式の露光装置EXの概略構成を示す。
図1において、露光装置EXは、パルス発光を行う露光用の光源2と、光源2からの露光用の照明光(露光光)ILで被照射面を照明する照明光学系ILSと、ほぼその被照射面又はその近傍の面上に二次元のアレイ状に配列されたそれぞれ回転角(傾斜角)が可変で所定の高さの段差部31C(
図3(A)参照)を持つ所定形状の微小ミラーである多数のミラー要素30を備えたマスクパターン生成用の空間光変調器28と、空間光変調器28を駆動する変調制御部48とを備えている。さらに、露光装置EXは、多数のミラー要素30によって生成された反射型の可変の凹凸パターン(可変の位相分布を持つマスクパターン)で反射された照明光ILを受光して、その凹凸パターン(位相分布)に対応して形成される空間像(デバイスパターン)をウエハW(基板)の表面に投影する投影光学系PLと、ウエハWの位置決め及び移動を行うウエハステージWSTと、装置全体の動作を統括制御するコンピュータよりなる主制御系40と、各種制御系等とを備えている。
【0012】
以下、
図1において、ウエハステージWSTの底面(不図示のガイド面に平行な面)に垂直にZ軸を設定し、Z軸に垂直な平面内において
図1の紙面に平行な方向にY軸を、
図1の紙面に垂直な方向にX軸を設定して説明する。また、X軸、Y軸、Z軸の回りの角度をそれぞれθx方向、θy方向、θz方向の角度とも呼ぶ。本実施形態では、投影光学系PLの光軸AXはZ軸に平行であり、露光時にウエハWはY方向(走査方向)に走査される。
【0013】
光源2としては、波長193nmでパルス幅50ns程度のほぼ直線偏光のレーザ光を4〜6kHz程度の周波数でパルス発光するArFエキシマレーザ光源が使用されている。なお、光源2として、波長248nmのKrFエキシマレーザ光源、パルス点灯される発光ダイオード、又はYAGレーザ若しくは固体レーザ(半導体レーザ等)から出力されるレーザ光の高調波を生成する固体パルスレーザ光源等も使用できる。固体パルスレーザ光源は、例えば波長193nm(これ以外の種々の波長が可能)でパルス幅1ns程度のレーザ光を1〜2MHz程度の周波数でパルス発光可能である。
【0014】
本実施形態においては、光源2には電源部42が連結されている。主制御系40が、パルス発光のタイミング及び光量(パルスエネルギー)を指示する発光トリガパルスTPを電源部42に供給する。その発光トリガパルスTPに同期して電源部42は、指示されたタイミング及び光量で光源2にパルス発光を行わせる。
光源2から射出された断面形状が矩形でほぼ平行光束のパルスレーザ光よりなる照明光ILは、1対のレンズよりなるビームエキスパンダ4、照明光ILの偏光状態を制御する偏光制御光学系6及びミラー8Aを介して、照明系用の空間光変調器10の多数の微小なミラー要素11のアレイに入射する。偏光制御光学系6は、例えば照明光ILの偏光方向を回転する1/2波長板、照明光ILを円偏光に変換するための1/4波長板、及び照明光ILをランダム偏光(非偏光)に変換するための楔型の複屈折性プリズム等を交換可能に設置可能な光学系である。
【0015】
空間光変調器10の多数のミラー要素11は、XY平面に対してθx方向に傾斜した平面上に二次元のアレイ状に配列され、それぞれ直交する2軸の回りの回転角(傾斜角)が可変である。空間光変調器10は、各ミラー要素11を駆動する駆動部12を備え、主制御系40は、変調制御部49及び駆動部12を介して多数のミラー要素11の回転角を制御する。この場合、多数のミラー要素11の2軸の回りの回転角を制御することによって、照明光ILの角度分布、ひいては、照明光学系ILSの瞳面における光量分布を、通常照明用の円形、輪帯照明用の輪帯状、複数極照明用の2極又は4極状の形状等の任意の分布に制御できる。
【0016】
空間光変調器10としては、例えば米国特許第6,900,915号明細書、米国特許第7,095,546号明細書、又は米国特許公開第2005/0095749号明細書等に開示される空間光変調器を用いることができる。なお、照明系用の空間光変調器10の代わりに、交換可能な複数の回折光学素子(DOE:diffractive optical element)を使用してもよい。
【0017】
空間光変調器10で反射された照明光ILは、レンズ14a,14bよりなるリレー光学系14及びミラー8Bを介してY軸(光軸AXI)に沿ってマイクロレンズアレイ16の入射面に導かれる。マイクロレンズアレイ16に入射した照明光ILは、マイクロレンズアレイ16を構成する多数の微小なレンズエレメントによって二次元的に分割(波面分割)され、各レンズエレメントの後側焦点面である照明光学系ILSの瞳面(以下、照明瞳面IPPという)には二次光源(面光源)が形成される。なお、マイクロレンズアレイ16の代わりにフライアイレンズ等も使用可能である。
【0018】
照明瞳面IPPに形成された二次光源からの照明光ILは、第1リレーレンズ18A、視野絞り20、第2リレーレンズ18B、及びコンデンサ光学系22を介してハーフミラー24に入射し、ハーフミラー24で+Z方向に反射された照明光ILが、XY平面に平行な被照射面(設計上の転写用のパターンが配置される面)に入射する。その被照射面又はその近傍の面に、空間光変調器28の2次元のアレイ状に配列された多数のミラー要素30の反射面が配置される。ビームエキスパンダ4からコンデンサ光学系24までの光学部材を含んで照明光学系ILSが構成されている。一例として、照明光学系ILSからの照明光ILは、空間光変調器28の多数のミラー要素30のアレイ上のX方向に細長い長方形状の照明領域26Aをほぼ均一な照度分布で照明する。多数のミラー要素30は、空間光変調器28のベース部材32の表面において、照明領域26Aを含む長方形の領域にX方向及びY方向に所定ピッチで配列されている。照明光学系ILS、ハーフミラー24、及び空間光変調器28は、不図示のフレームに支持されている。
【0019】
図2(A)は、
図1中の空間光変調器28の反射面の一部を示す拡大底面図、
図2(B)は
図2(A)中の一つの反射面がXY面に平行な状態(本実施形態では、回転可能範囲の中央にある状態)のミラー要素30を示す拡大図である。
図2(B)において、ミラー要素30は、X軸及びY軸に対して45°で交差するV方向に平行な回転軸RCの回りに回転可能である。V方向に直交する方向をU方向とする。また、ミラー要素30は、ほぼX軸及びY軸に平行な2つの辺を持ち回転軸RC側に一つの頂点を持つ三角形の平板状の第1反射部31Aと、回転軸RCに関して第1反射部31Aと対称な形状の平板状の第2反射部31Bとを有し、第1反射部31Aと第2反射部31Bとの間には、回転軸RCを含む平面内にある段差部31Cが形成されている。本実施形態では、第1反射部31Aの高さが第2反射部31Bの高さよりも高く設定されている。
図2(A)等では、高さが低い第2反射部31Bに斜線を施している。また、ミラー要素30のV方向の幅とU方向の長さとはほぼ同じであり、段差部31CはV方向に平行である。ミラー要素30のV方向の幅及びU方向の長さは、例えば1〜10μm程度である。
【0020】
本実施形態において、ウエハWの表面には、X軸に平行なラインパターンを含むパターン、例えばこのパターンをY方向に周期的に配列したY方向のライン・アンド・スペースパターン(以下、L&Sパターンという。)、又はY軸に平行なラインパターンを含むパターン、例えばこのパターンをX方向に周期的に配列したX方向のL&Sパターンが形成されることが多い。このようにウエハWの表面に、X軸又はY軸に平行なラインパターンを含むパターン(レジストパターン)を形成する場合、一例として、照明光ILはそれぞれX軸に平行な偏光方向PX又はY軸に平行な偏光方向PYを持つ直線偏光に設定される。この場合、本実施形態では、ミラー要素30の段差部31Cの方向(V方向)は、偏光方向PX及びPYに45°で交差している。
【0021】
図2(A)に示すように、多数のミラー要素30は、全体としてほぼ隙間がないように、X方向及びY方向に近接して配列されている。従って、個々のミラー要素30の反射部31A,31Bが三角形状であっても、照明光ILの利用効率は高くなっている。
また、
図3(A)は、
図2(A)中の空間光変調器28の3つのミラー要素30を示し、
図3(B)及び(C)は
図3(A)のU方向に平行なBB線に沿って視た一つのミラー要素30を示す。
図3(A)において、各ミラー要素30は、それぞれ支持駆動部34によってベース部材32の表面に支持されている。支持駆動部34は、一例として、ベース部材32の表面にV方向に離れて配置された2つの支持部36A,36Bと支持部36A,36Bの上部にV方向に平行に設けられた可撓性を持つヒンジ部35Bと、ヒンジ部35Bの中央に設けられてミラー要素30の中央を支持する連結部35Aとを有する。この場合、ヒンジ部35Bの中心がほぼ回転軸RCとなっている。
【0022】
図3(B)において、ベース部材32は、例えばシリコンよりなる平板状の基材32Aと、基材32Aの表面に形成された窒化ケイ素(例えばSi3N4)等の絶縁層32Bとから構成されている。また、ミラー要素30及び支持駆動部34は、例えばポリシリコンから一体的に形成されている。ミラー要素30の反射面(表面)には、反射率を高めるために金属(例えばアルミニウム等)の薄膜よりなる反射膜(不図示)が形成されている。
【0023】
また、照明光の波長をλとすると、ミラー要素30の段差部31Cの段差d1は、次のようにλ/4に設定されている。
d1=λ/4 …(1)
従って、ミラー要素30の反射面がXY面に平行である場合、第1反射部31Aに垂直に入射して反射される照明光IL1の位相の変化量を第1の位相差として、第2反射部31Bに垂直に入射して反射される照明光IL2の位相の変化量を第2の位相差とすると、この第2の位相差はその第1の位相差と180°(π(rad))異なっている。
【0024】
また、ミラー要素30の反射部31A,31Bの底面にそれぞれ電極37A,37Bが形成され、電極37A,37Bに対向するようにベース部材32の表面にそれぞれ電極37C,37Dが形成されている。ベース部材32の表面及び支持駆動部34には、ミラー要素30毎に対応する電極37A,37C間及び電極37B,37D間に所定の電圧を印加するための信号ライン(不図示)がマトリクス状に設けられている。本実施形態のミラー要素30は、
図3(C)において、回転軸RCの回りに時計回りに所定の角度αだけ回転した点線で示す第1の状態、又は回転軸RCの回りに反時計回りに角度α(時計回りに−α)だけ回転した実線で示す第2の状態のいずれかに設定される。このような微小な立体構造の空間光変調器28は、例えばMEMS(Microelectromechanical Systems:微小電気機械システム)技術を用いて製造することが可能である。空間光変調器28の各ミラー要素30は、一つの回転軸RCの回りの回転によって第1の状態又は第2の状態に設定できればよいだけであるため、ミラー要素30の小型化及びミラー要素30の配列数の増大が容易である。
【0025】
ここで、段差付きのミラー要素30を回転した場合の反射光の状態につき説明する。
図4(A)及び(C)はそれぞれミラー要素30を時計回り及び反時計回りに回転した状態を概念的に示している。簡単のため、
図3(B)の段差部31Cの中心に回転軸RCがあり、回転軸RC上にU方向の位置の原点があるとする。また、
図4(A)及び(C)において、第1反射部31Aの原点での反射光の位相の変化量をπ/2、第2反射部31Bの原点での反射光の位相の変化量をπ/2とする。この場合、
図4(A)の反射部31A及び31Bでの反射光の複素振幅は、それぞれ
図4(B)の第1象限の領域BA1及び第4象限の領域BB1に実数軸Reに関して対称に分布する。従って、
図4(A)のミラー要素30全体からの反射光の平均的な複素振幅は、虚数軸Imの値が左右(反射部31A及び31B)で打ち消し合うために、
図4(B)の実数軸Re上の正の値A1aとなる。この正の値A1aは、反射光の平均的な位相の変化量が0であることを意味する。
【0026】
一方、
図4(C)の反射部31A及び31Bでの反射光の複素振幅は、それぞれ
図4(D)の第2象限の領域BA2及び第3象限の領域BB2に実数軸Reに関して対称に分布する。従って、
図4(C)のミラー要素30全体からの反射光の平均的な複素振幅は、虚数部が左右で打ち消し合うために、
図4(D)の実数軸Re上の負の値A2aとなる。この負の値A2aは、反射光の平均的な位相の変化量がπ(180°)であることを意味する。言い換えると、段差付きのミラー要素30は、時計回り又は反時計回りに回転することによって、高さをλ/4だけ変化させることが可能な平面ミラーと同様に、実質的に入射する光の位相を0又はπだけ変化させて反射することができる。そこで、以下では、
図4(A)の第1の状態のミラー要素30を反射光の位相を0にするミラー要素30(0)とも呼び、
図4(C)の第2の状態のミラー要素30を反射光の位相をπにするミラー要素30(π)とも呼ぶこととする。空間光変調器28の多数のミラー要素30を個別にミラー要素30(0)又は30(π)に設定することによって、反射光の位相分布を位相シフトマスクと同様に任意の分布に設定可能である。
【0027】
なお、例えば
図5(A)に示すように、通常の平板状のミラー要素80を時計回りに回転したときに、ミラー要素80の左右の反射部81A,81Bでの反射光の複素振幅は、それぞれ
図5(B)の第4象限の領域BB3及び第1象限の領域BA3に実数軸Reに関して対称に分布する。従って、
図5(A)のミラー要素80全体からの反射光の平均的な複素振幅は、実数軸Re上の正の値A3aとなる。一方、
図5(C)に示すように、ミラー要素80を反時計回りに回転したときに、反射部81A,81Bでの反射光の複素振幅は、それぞれ
図5(D)の第1象限の領域BA4及び第4象限の領域BB4に実数軸Reに関して対称に分布する。従って、
図5(C)のミラー要素80全体からの反射光の平均的な複素振幅も、虚数部が左右で打ち消し合うために、
図5(D)の実数軸Re上の正の値A4aとなる。従って、通常の平板状のミラー要素80は回転方向が時計周りでも反時計まわりでも、反射光の位相は同じままである。
【0028】
さらに、本実施形態のミラー要素30を構成する第1反射部31Aは、
図3(A)に示すように、回転軸RCからXY面上での距離がa1でV方向の幅b1の部分31Aaと、回転軸RCからの距離a2がa1より大きいとともに、幅b1より広い幅b2を持つ部分31Abとを有する。さらに、ミラー要素30を構成する反射部31A,31Bは、ほぼそれぞれ回転軸RCから離れるほど面積が広くなっている。このような形状のミラー要素30が
図4(A)の第1の状態30(0)に回転したときの反射光の平均的な複素振幅を
図4(B)を用いて考える。まず、回転軸RCから離れた面の反射光は、
図4(B)の実数軸Re軸上の正の極限に近い領域BC1にあり、反対に回転軸RCに近い面の反射光は実部が0に近い領域BC2にある。回転軸RCから離れたところに面積が多く、回転軸RCに近いところ面積が狭いことは、反射光束の中で、領域BC1の光線が多く、領域BC2の光線が少ないことを意味している。つまり、ミラー要素30の反射光の平均的な複素振幅は、反射面積が回転軸RCからの距離に依存せず一定のミラー形状の場合よりも、正の方向に大きくなる。同様に、そのような形状のミラー要素30を
図4(C)の第2の状態30(π)に回転すると、反射光束の中で、
図4(D)の実数軸Re軸上の負の極限に近い領域にある光線が多くなり、反射光の平均的な複素振幅は負の方向に大きくなる。従って、回転軸RCから離れるほど面積が広くなっている形状のミラー要素30を用いて反射光の位相分布を制御する場合には、回転軸RCからの距離によらずに面積がほぼ一定の形状のミラー要素、例えば回転軸RCに平行な辺を持つほぼ正方形の段付きのミラー要素を用いる場合に比べて、反射光の強度を大きくすることが可能である。
【0029】
図1に戻り、一例として、所定パルス数の照明光ILの発光毎に、主制御系40が変調制御部48に、空間光変調器28によって設定される照明光ILの位相分布(凹凸パターン)の情報を供給する。これに応じて変調制御部48が空間光変調器28の各ミラー要素30を第1の状態(位相0)又は第2の状態(位相π)に制御する。ウエハWの表面にはその位相分布に応じた空間像が形成される。
【0030】
空間光変調器28の照明領域26A内の多数のミラー要素30のアレイで反射された照明光ILは、ハーフミラー24を介して投影光学系PLに入射する。不図示のコラムに支持された光軸AXを持つ投影光学系PLは、両側テレセントリックの縮小投影光学系である。投影光学系PLは、空間光変調器28によって設定される照明光ILの位相分布に応じた空間像の縮小像を、ウエハWの1つのショット領域内の露光領域26B(照明領域26Aと光学的に共役な領域)に形成する。投影光学系PLの投影倍率βは例えば1/10〜1/100程度であり、その解像度(ハーフピッチ又は線幅)は、例えば空間光変調器28のミラー要素30の像の幅程度である。言い換えると、投影光学系PLの物体面において、1つのミラー要素30の幅よりも小さい構造は解像されない。例えば、ミラー要素30の幅が数μm程度、投影光学系PLの投影倍率βが1/100程度であれば、投影光学系PLの解像度は数10nm程度である。
【0031】
ウエハW(基板)は、例えばシリコン又はSOI(silicon on insulator)等の円形の平板状の基材の表面に、フォトレジスト(感光材料)を数10nm〜200nm程度の厚さで塗布したものを含む。また、露光装置EXが液浸型である場合には、例えば米国特許出願公開第2007/242247号明細書に開示されているように、投影光学系PLの先端の光学部材とウエハWとの間に照明光ILを透過する液体(例えば純水)を供給して回収する局所液浸装置が設けられる。液浸型の場合には解像度をさらに高めることができる。
【0032】
図1において、ウエハWはウエハホルダ(不図示)を介してウエハステージWSTの上面に吸着保持され、ウエハステージWSTは、不図示のガイド面上でX方向、Y方向にステップ移動を行うとともに、Y方向に一定速度で移動する。ウエハステージWSTのX方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角等はレーザ干渉計45によって形成され、この計測情報がステージ制御系44に供給されている。ステージ制御系44は、主制御系40からの制御情報及びレーザ干渉計45からの計測情報に基づいて、リニアモータ等の駆動系46を介してウエハステージWSTの位置及び速度を制御する。なお、ウエハWのアライメントを行うために、ウエハWのアライメントマークの位置を検出するアライメント系(不図示)等も備えられている。
【0033】
ウエハWの露光時には、ウエハWのアライメントを行った後、照明光学系ILSの照明条件を設定する。そして、例えば
図6(A)に示すウエハWの表面でY方向に一列に配列されたショット領域SA21,SA22,…に露光を行うために、ウエハWを走査開始位置に位置決めする。その後、ウエハWの+Y方向への一定速度での走査を開始する。なお、
図6(A)のショット領域SA21等の中の矢印は、ウエハWに対する露光領域26Bの相対的な移動方向を示している。
【0034】
次に、主制御系40は、ウエハWの露光領域26Bのショット領域SA21に対する相対位置に応じて、変調制御部48に露光領域26Bに形成される空間像に対応する空間光変調器28の反射面における照明光ILの位相分布の情報を供給するとともに、電源部42に発光トリガパルスTPを供給する。これによって、露光領域26Bには、Y方向の位置に応じて目標とする空間像が逐次露光される。この動作をショット領域SA21が露光領域26Bを横切るまで繰り返すことで、ショット領域SA21に全体の空間像(回路パターン)が露光される。
【0035】
その後、ウエハWのショット領域SA21に隣接するショット領域SA22に露光するために、ウエハWを同じ方向に走査したまま、主制御系40は、変調制御部48に照明光ILの位相分布の情報を供給するとともに、電源部42に発光トリガパルスTPを供給する。このようにして、ショット領域SA21からSA22にかけて連続的に露光を行うことができる。そして、
図6(A)のウエハWのX方向に隣接するショット領域SA31,SA32を含む列の露光に移行する場合には、ウエハステージWSTを駆動してウエハWをX方向(走査方向に直交する非走査方向)にステップ移動する。そして、点線で示す露光領域26Bに対するウエハWの走査方向を逆の−Y方向に設定し、主制御系40から変調制御部48に逆の順序で照明光ILの位相分布の情報を供給し、電源部42に発光トリガパルスTPを供給することで、ショット領域SA32からSA31にかけて連続的に露光を行うことができる。この露光に際して、ショット領域SA21,SA22等に互いに異なる空間像を露光することも可能である。なお、各ショット領域を複数回の走査で露光してもよい。その後、ウエハWのフォトレジストの現像を行うことで、ウエハWの各ショット領域にレジストパターンが形成される。
【0036】
次に、本実施形態の空間光変調器28のミラー要素30からの反射光の強度及び反射率について定量的に説明する。ここでは、比較例として、
図7に示すように、X軸及びY軸に平行な辺を持つ正方形の段付きのミラー要素73を想定する。ミラー要素73は、X軸に平行な回転軸RCの回りに回転可能に支持されており、回転軸RCに対して対称な+Y方向の第1反射部74Aと−Y方向の第2反射部74Bとを有し、反射部74A,74B間に段差d1(=λ/4)の段差部74Cが設けられている。従って、段差部74Bは、偏光方向PXに平行である。ミラー要素73のX方向(Y方向)の幅は、
図3(A)のミラー要素30のV方向(U方向)の幅と等しい。
【0037】
ここで、ミラー要素30及び比較例のミラー要素73の回転角αを
図4(C)に示すように、第1反射部31A(74A)の先端のエッジ部における反射光の位相の変化量φに換算して表し、回転角φ(deg)の関数としてミラー要素30及び73からの反射光の電場振幅EAをスカラー値として計算した結果が、
図8(A)の曲線C10及びC40である。なお、曲線C20,C30については後述する(以下、同様)。
【0038】
また、比較例(通常)のミラー要素73及び本実施形態の三角形型の第1反射部31Aを持つミラー要素30からの反射光の電場振幅のスカラー計算式は、それぞれ次の式(2A)及び(2B)で表すことができる。これらの式は反射部の電場振幅の面積平均値であり、非特許文献1の記述と同じ方法で求めた。
【0040】
また、
図8(A)の曲線C40及びC10に対応する反射光の強度Iは、回転角φの関数として
図8(B)の曲線C4及びC1となる。曲線C1の最大値0.76は曲線C4の最大値0.53のほぼ1.43倍であるため、本実施形態のミラー要素30を用いることによって、比較例のミラー要素73を用いる場合に比べて反射光の強度がほぼ1.43倍になることが分かる。
【0041】
また、
図3(B)におけるミラー要素30の第1及び第2の状態における回転角±αは、反射光の位相に換算した回転角φが、
図8(B)の反射光の強度Iが最大になるときの値(ほぼ−120°及び+120°)になるように設定してもよい。これによって、反射光の強度が最も大きくなる。
また、本実施形態のミラー要素30及び比較例のミラー要素73に関して、入射光がランダム偏光、X方向への直線偏光(X偏光)、及びY方向への直線偏光(Y偏光)である場合について、ミラー要素の回転角φ(deg)と反射率との関係を計算した結果が、それぞれ
図9(A)、(B)、及び(C)の曲線CD1及びCD5である。ここで、
図9におけるミラー要素30の寸法は、
図3Aに示すU方向の幅を1414nm、V方向の幅を(1414−140)nm、段差部31Cを含む幅が一定の部分のU方向及びV方向の幅を140nmとした。また、
図9におけるミラー要素73の寸法は、
図7に示すX方向、Y方向どちらの幅も1000nmとしている。すなわち、ミラー要素30とミラー要素73はどちらもX方向、Y方向のピッチが1000nmになるようになっている。なお、これらの計算にはFDTD法(有限差分時間領域法)による電磁場解析ソフトウエアを用いている。さらに、
図9(D)の曲線CD1及びCD5は、ミラー要素30及び73に関して、スカラー計算式に基づいて計算した回転角φと反射率との関係を示す。なお、これらの計算に際しては、投影光学系PLが物体側に非テレセントリックであるとして、ミラー要素30,73に対する照明光ILの入射角をθx方向に6°であるとした。
図9(A)〜(D)において、回転角φが負の範囲では、ミラー要素30,73は第1の状態(反射光の位相が0)、回転角φが正の範囲では、ミラー要素30,73は第2の状態(反射光の位相がπ)となっている。
図9(A)〜(D)においては、回転角φがほぼ−150°〜+150°の範囲内では、いずれも比較例(通常)の反射率(曲線CD5)に対して本実施形態のミラー要素30の反射率(曲線CD1)が大きいため、本実施形態のミラー要素30を使用することによって、入射光がどのような偏光状態であっても、反射率が向上することが分かる。
図9のどの曲線でも、反射光の位相が0とπそれぞれで、強度の極大値を取っているが、その極大値がミラー要素で得られる最大の反射率である。
図9(B)と(C)の曲線CD5で、最大の反射率を比べると、反射光の位相が0のときは、
図9(B)のX偏光では0.46であるのに対し、
図9(C)のY偏光では0.60であり、約1.3倍も異なっている。同様に反射光の位相がπのときは、
図9(B)のX偏光では0.36であるのに対し、
図9(C)のY偏光では0.48であり、こちらも約1.3倍も異なっている。このようにミラー要素73では、偏光状態によって反射率が異なっていることが分かる。ところが、
図9(B)と(C)の曲線CD1に着目すると、反射光の位相が0のときは、
図9(B)のX偏光では0.69であるのに対し、
図9(C)のY偏光では0.70でほぼ同等、さらに反射光の位相がπのときは、
図9(B)のX偏光と
図9(C)のY偏光ではどちらも0.53である。このように、ミラー要素30ではミラーの回転軸RCがX軸及びY軸に対して45°で交差するV方向に向くことで、偏光方向による差が生じにくくなっている。
【0042】
次に、本実施形態においてウエハの表面に孤立的なパターン(レジストパターン)を形成する場合のシミュレーション結果の一例につき説明する。ここでは、ウエハWの表面に現像後に形成すべきレジストパターンを、一例として
図10(B)及び(D)に示すように、ほぼX方向の幅40nm及びY方向の長さが48nmでX方向の間隔が40nmで配置された1対の左右対称なほぼ正方形のターゲット76A,76Bであるとする。
図10(B)等において、横軸及び縦軸はそれぞれ投影光学系PLの像面におけるX軸(nm)及びY軸(nm)である。
【0043】
図10(A)及び(C)は、ターゲット76A,76Bにできるだけ近いレジストパターンを形成するために、それぞれ本実施形態のミラー要素30のアレイ及び
図7の比較例のミラー要素73のアレイによって形成される照明光ILの位相分布50A及び50B(第1及び第2の状態のミラー要素の分布)の一例を示す透視図である。なお、説明の便宜上、投影光学系PLは正立像を形成するものとする。さらに、ミラー要素30,73のうちで第1の状態(反射光の位相0)のミラー要素を白抜きのパターンで表し、第2の状態(反射光の位相π)のミラー要素を灰色のパターンで表す。
【0044】
図10(A)及び
図10(C)において、ターゲット76A,76Bと光学的に共役なパターン75A,75Bが仮想的に点線で表されている。また、個々のミラー要素30,73の配列のX方向、Y方向のピッチは、投影像の段階で20nmとなるように設定されている。位相分布50A(50B)の周辺部は、第1の状態のミラー要素30(73)と第2の状態のミラー要素30(73)とを市松模様(Checkerboard Pattern)に配列したものである。
【0045】
その位相分布50A,50Bを用いて、照明瞳面IPPにおける照明光ILの光量分布を高い解像度が得られるように最適化し、Y方向に直線偏光した照明光ILを用いるという照明条件のもとで、シミュレーションによって投影光学系PLのベストフォーカス位置、及び±40nmデフォーカスした位置にある像面における空間像の強度分布を求めた。さらにそれらの空間像を所定の閾値(例えばX方向の幅の最大値が目標値になる値)でスライスして求めた理論的なレジストパターンが、
図10(B)の楕円状のパターン77A,77B、及び
図10(D)の楕円状のパターンである。
図10(B)と
図10(D)との比較から、本実施形態のミラー要素30のアレイを用いても、比較例のミラー要素73のアレイを用いた場合とほぼ同じレジストパターンが得られるため、ミラー要素30は実際のパターンを形成するために使用できることが分かる。
【0046】
さらに、
図11(A)は、
図10(B)及び
図10(D)に対応するレジストパターンを示し、
図11(B)は、
図11(A)のY座標が−20nmの直線上(位置X)における像面の強度Iの分布を示す。
図11(B)の曲線CA1,CA4,CA5は、それぞれ本実施形態のミラー要素30のアレイ、比較例のミラー要素73のアレイ、及び高さが可変の平面ミラーのアレイを用いた場合の強度分布を示す。これらの強度分布は高さが可変の平面ミラーのアレイを用いた場合の強度分布の最大値が1になるように正規化したものである。ここで、各ミラー要素の単体の反射率は、ミラー要素30で0.76、ミラー要素73で0.53、高さが可変の平面ミラーで1.0とスカラー計算の値を用いている。
図11(B)からわかるとおり、曲線CA1の最大強度0.71は曲線CA4の最大強度0.53よりも高くなっている。ミラー要素30単体の反射率0.76に比べると、曲線CA1では最大強度が0.71とわずかに低下しているものの、曲線CA4の最大強度と比べると、依然高い数値で、ミラー要素30を用いた方が、ミラー要素73を用いるより高い強度が得られることが分かる。なお、ミラー単体の反射率に比べてパターンの最大強度がわずかに低下している原因は、位相分布50Aのほうが50Bと比べると強度が落ちてしまうことによる。すなわち、位相分布50Aでは、第1の状態と第2の状態のエッジ部が小刻みに入り組んでいることで光量損失があるためである。
【0047】
次に、入射光がX偏光又はY偏光である場合、本実施形態のミラー要素30からの反射光の強度Iは、ミラー要素30の回転角φに対して、それぞれ
図12の曲線CB1及びCB2で示すように、わずかに非対称になる。ここで、
図12で用いたミラー寸法は前述の
図9の計算に用いた寸法とは異なる。即ち、第1の状態(φが負で反射光の位相が0)での最大の強度Iが、第2の状態(φが正で反射光の位相がπ)での最大の強度Iよりもわずかに大きくなっている。この非対称性を補正するためには、後述の
図14(B)の第2変形例のミラー要素71で示すように、反射部31A,31Bの間に高さの異なる連結部72を設け、連結部72の高さを反射光の位相の変化量がπになるように設定してもよい。なお、第1反射部31Aでの反射光の位相の変化量をπ/2としている。
【0048】
このように連結部72の反射光の位相の変化量をπに設定したとき、入射光がX偏光又はY偏光である場合、ミラー要素71からの反射光の強度Iは、それぞれ
図12の曲線CB3及びCB4で示すようになる。すなわち、位相πの領域では曲線CB3及びCB4はそれぞれ曲線CB1及びCB2よりも高い強度を示し、逆に位相0の領域では、曲線CB3及びCB4はそれぞれ曲線CB1及びCB2よりも低い強度を示している。したがって、さらに、連結部72の面積を最適化することによって、位相0とπの反射光の強度を同程度にすることができる。
【0049】
次に、本実施形態及び比較例の段付きのミラー要素30,73を用いる場合、入射光が偏光していると、
図9(A)〜(C)の曲線CD2,CD5から分かるように、第1の状態(φが負で反射光の位相が0)での最大の反射率が、第2の状態(φが正で反射光の位相がπ)での最大の反射率よりも大きくなっている。この場合、例えばY偏光した照明光を用いてミラー要素30のアレイの位相分布を
図13(A)の位相分布50Aに設定すると(位相0の反射率が0.60、位相πの反射率が0.48とする)、ベストフォーカス位置及び±40nmデフォーカスした位置で得られるレジストパターンは、
図13(B)に示すように右のパターンが小さくなる。
【0050】
この場合、ミラー要素30のアレイの位相分布を位相分布50Aを反転した
図13(C)の位相分布51Aに設定すると、ベストフォーカス位置及び±40nmデフォーカスした位置で得られるレジストパターンは、
図13(D)に示すように、
図13(B)とは逆に右のパターンが大きくなる。そこで、ミラー要素30の第1の状態での反射率と、第2の状態での最大の反射率とが異なる場合には、
図13(A)の位相分布50Aによる露光と、
図13(C)の反転した位相分布51Aによる露光との二重露光を行うようにしてもよい。この二重露光によって得られるレジストパターンは、
図13(E)に示すように左右のパターンの大きさが等しくなり、強度分布も左右対称となる。上述のように、位相0とπの連結部の面積の最適化で2つの位相の強度を揃えることも可能であるが、仮に2つの位相の強度が揃わなかったとしても、0とπを反転した位相分布で二重露光することで、反射率の異なる問題点も解消できる。
【0051】
本実施形態の効果等は以下の通りである。
(1)本実施形態の露光装置EXは、空間光変調器28を備えている。また、空間光変調器28は、それぞれ照明光ILが照射される複数のミラー要素30のアレイを有し、ミラー要素30は、回転軸RCの回りに回転可能に支持される。さらに、ミラー要素30は、回転軸RCから距離a1にあり回転軸RCに平行な方向に幅b1を持つ部分31Aaと、回転軸RCから距離a1よりも離れた距離a2にあり回転軸RCに平行な方向にその幅b1よりも広い幅b2を持つ部分31Abとを含む第1反射部31Aを有する。第1反射部31Aは、回転軸RC側に一つの頂点を向けて配置された三角形状である。
【0052】
本実施形態によれば、ミラー要素30の第1反射部31Aは、回転軸RCからの距離が離れるほど幅(面積)が広くなる部分を含むため、ミラー要素30の回転角φ(回転角α)を制御して反射光の位相を制御するときに、反射光の強度(反射率)が大きくなる。また、ミラー要素30のアレイからの反射光によって形成される空間像の強度も大きくなる。
【0053】
(2)また、ミラー要素30は、回転軸RCに関して第1反射部31Aと対称な形状の第2反射部31Bを有し、反射部31A,31B間には反射光の位相の変化量が180°(π)となる段差d1を持つ段差部31Cがある。従って、ミラー要素30を回転軸RCの回りに時計回り及び反時計回りに回転した状態で、ミラー要素30からの反射光の位相の変化量が180°異なるため、ミラー要素30のアレイを用いて、ミラー要素30を単位として反射光の任意の位相分布を生成できる。
【0054】
なお、例えば空間光変調器28の電源オフの状態で、ミラー要素30の反射面がベース部材32に平行であるときには、ミラー要素30は、その電源オフの状態を第1の状態(反射光の位相が0)として、ミラー要素30を回転軸RCの回りに時計回り又は反時計回りに所定角度回転した状態を第2の状態(反射光の位相がπ)として使用することも可能である。
【0055】
(3)また、ミラー要素30の段差部31CとX軸及びY軸との交差角は45°である。従って、ウエハW上に通常のパターンを形成する場合のように、照明光ILの偏光方向をX方向又はY方向に設定したときに、反射率の相違がなくなるため、ウエハW上に種々のパターンを忠実に形成できる。なお、その交差角は0°より大きく90°より小さい角度であってもよく、これによって偏光方向による反射率の相違が小さくなる。
【0056】
ただし、本実施形態では、ミラー要素30は、段差部31CがX方向又はY方向に平行になるように配置してもよい。この配置でも、ミラー要素30の面積は回転軸RCから離れるほど大きくなるため、反射光の強度(反射率)が大きくなる。
(4)また、空間光変調器28のミラー要素30は2次元のアレイであるため、一度の露光で大面積のパターンをウエハWに露光できる。なお、空間光変調器28において、ミラー要素30を例えばX方向(ウエハWの非走査方向に対応する方向)に一次元のアレイ状に配列してもよい。
【0057】
(5)また、露光装置EXは、照明光IL(露光光)でウエハW(基板)を露光する露光装置において、空間光変調器28と、空間光変調器28の複数のミラー要素30のアレイに照明光ILを照射する照明光学系ILSと、複数のミラー要素30からの反射光をウエハW上に導いてウエハW上にパターンを投影する投影光学系PLと、ウエハWに露光されるパターンを制御するために、空間光変調器28の複数のミラー要素30を個別にその第1の状態又は第2の状態に制御する変調制御部48(制御装置)と、を備えている。
【0058】
露光装置EXによれば、ミラー要素30での照明光ILの反射光の強度が大きいため、照明光ILの利用効率が高くなり、空間像の強度が大きくなるため、ウエハWの表面に高いスループットで高精度に目標とするパターンを形成できる。
なお、空間光変調器28の各ミラー要素30は、その第1の状態及びその第2の状態以外の第3の状態等を含む複数の状態に設定可能としてもよい。
【0059】
(6)また、ミラー要素30は、X方向を長手方向とする長方形の領域に設けられ、ウエハWを投影光学系PLの像面でX方向と直交するY方向に対応する走査方向に移動するウエハステージWST(基板ステージ)を備え、変調制御部48は、ウエハステージWSTによるウエハWの移動に応じて、複数のミラー要素30によって形成されるパターン(位相分布)をY方向に移動する。これによって、ウエハWの全面を効率的に露光できる。
【0060】
なお、上記の実施形態では以下のような変形が可能である。
まず、上記の実施形態のミラー要素30は回転軸RCに関して対称である。これに対して、
図14(A)の第1変形例のミラーユニット70で示すように、
図3(A)の支持駆動部34と同じ構成の第1及び第2の支持駆動部34A,34Bでそれぞれ対称な三角形状の第1反射部31A及び第2反射部31Bを支持してもよい。この変形例では、反射部31A,31Bの底面にそれぞれ電極37A,37Bが設けられ、これに対向するようにベース部材32上に電極37C,37Dが設けられる。そして、一例として、反射部31A,31Bがベース部材32に平行であるときに、照明光ILが平均的に傾斜して反射部31A,31Bに入射するようにして(この状態を第1の状態とする)、第1反射部31Aを支持駆動部34Aによって時計回りに回転するときに、第2反射部31Bを支持駆動部34Bによって反時計回りに回転することによって、反射光の位相がπの第2の状態を設定できる。ミラーユニット70も、X方向、Y方向に所定ピッチでほぼ隙間なく配置される。このミラーユニット70も、回転軸RCからの距離が離れるほど面積が広くなる反射部を含むため、反射光の強度が高くなる。
【0061】
なお、ミラーユニット70を用いる場合、回転軸RCの方向はX方向、Y方向に45°で交差する方向でもよいが、回転軸RCの方向をX方向又はY方向に平行に設定してもよい。
次に、
図14(B)の第2変形例のミラー要素71で示すように、反射部31A,31B間に反射部31A,31Bとは高さが異なる連結部72を設けてもよい。
図14(B)の例では、連結部72の表面は、第2反射部31Bの表面に比べて段差d2だけ高く、第1反射部31Aの表面に比べても高く設定されている。この場合でも、反射部31A,31B間の段差は、
図3(A)の段差d1(反射光の位相差がπ)と等しく設定されている。段差d2は、位相差に換算して例えば3π/2である。その他の構成は
図3(A)と同様であり、このミラー要素71を用いても反射光の強度が高くなる。この際に、ミラー要素71を第1の状態及び第2の状態に設定した場合の反射率の相違を補正するために、連結部72の面積を調整してもよい。
【0062】
なお、連結部72の表面の高さを、第1表面部31Aの表面と、第2表面部31Bの表面との中央の高さに設定してもよい。このように、連結部72の高さが反射部31A,31Bの高さの中央であるときには、反射部31A,31Bでの反射光の位相の変化量を±π/2とすると、連結部72での反射光の位相の変化量は0となる。また、連結部72の面積を調整することによって、ミラー要素71を第1の状態及び第2の状態に設定した場合の反射率の相違を補正できることがある。
【0063】
また、連結部72の反射率を反射部31A,31Bの反射率よりも低くしてもよい。
次に、
図15(A)は、第3変形例の空間光変調器28Aの反射面の一部を示す拡大底面図、
図15(B)は
図15(A)中の一つのミラー要素30Aを示す拡大図である。また、
図16(A)は、
図15(A)中の3つのミラー要素30Aを示し、
図16(B)は
図16(A)のU方向に平行なBB線に沿って視た一つのミラー要素30Aを示す。なお、
図15(A)〜
図16(B)において、
図2(A)〜
図3(C)に対応する部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0064】
図15(B)において、ミラー要素30Aは、X軸及びY軸に対して45°で交差するV方向に平行な回転軸RCの回りに回転可能である。また、ミラー要素30Aは、回転軸RCに平行な線状の平板状の第1部分31Daと、回転軸RCに垂直な線状の平板状の第2部分31Dbとを連結したT字型の第1反射部31Dと、回転軸RCに関して第1反射部31Dと対称なT字型の平板状の第2反射部31Eとを有し、第1反射部31Dと第2反射部31Eとの間には、回転軸RCを含む平面内にある段差部31Fが形成されている。
【0065】
V方向に平行な段差部31Fの段差は
図2(B)の段差部31Cと同じd1(反射光の位相差でπ)である(
図16(B)参照)。また、第1部分31DaのV方向の長さをdとして、所定のパターンR(0<R<1)を用いて、第2部分31DbのV方向の幅をR・dとする。第1部分31DaのU方向の幅は、第2部分31DbのU方向の長さとほぼ同じである。また、ミラー要素30AのV方向の幅とU方向の長さとはほぼ同じである。ミラー要素30AのV方向の幅及びU方向の長さは、例えば1〜10μm程度である。
【0066】
図15(A)に示すように、多数のミラー要素30Aは、全体としてほぼ隙間がないように、X方向及びY方向に近接して配列されている。従って、個々のミラー要素30Aの反射部31D,31EがT字型であっても、照明光ILの利用効率は高くなっている。
また、
図16(A)において、各ミラー要素30Aは、それぞれ支持駆動部34によってベース部材32の表面に支持されている。ミラー要素30Aの反射部31D,31Eの底面にそれぞれ電極37A,37Bが形成され、電極37A,37Bに対向するようにベース部材32の表面にそれぞれ電極37C,37Dが形成されている。この変形例のミラー要素30Aも、
図16(B)において、回転軸RCの回りに時計回りに所定角度だけ回転した点線で示す第1の状態(30A(0))、又は回転軸RCの回りに反時計回りに所定角度だけ回転した実線で示す第2の状態(30A(π))のいずれかに設定される。段差付きのミラー要素30Aも、時計回り又は反時計回りに回転して第1の状態又は第2の状態に設定することによって、実質的に入射する光の位相を0又はπだけ変化させて反射することができる。
【0067】
さらに、本変形例のミラー要素30Aを構成する第1反射部31Dは、
図16(A)に示すように、回転軸RCからXY面上での平均距離がa3でV方向の幅R・dの第2部分31Dbと、回転軸RCからの平均距離a4がa3より大きいとともに、幅R・dより広い幅dを持つ第1部分31Daとを有する。従って、ミラー要素30Aを構成する反射部31D,31Eは、ほぼそれぞれ回転軸RCから離れるほど面積が広くなっている。このような形状のミラー要素30Aを用いることによって、
図3(A)のミラー要素30を用いる場合と同様に、例えば回転軸RCに平行な辺を持つほぼ正方形の段付きのミラー要素を用いる場合に比べて、反射光の強度を大きくすることが可能である。
【0068】
また、ミラー要素30Aは、段差部31Fが方向Vに平行であるため、X偏光又はY偏光の照明光ILを用いる場合に反射率の相違を低減できる。
次に、本変形例の空間光変調器28Aのミラー要素30Aからの反射光の強度及び反射率について定量的に説明する。ミラー要素30Aからの反射光の電場振幅のスカラー計算式は、次の式(2C)で表すことができる。
【0069】
図17(A)は、ミラー要素30Aの第2部分31Dbの幅R・dを規定するパラメータRの値を0.1〜0.5まで変化させて、ミラー要素30Aの回転角φ(反射部31D,31Eのエッジ部での反射光の位相の変化量に換算した値)とミラー要素30からの反射光の強度Iとの関係をシミュレーションで求めた結果を示す。また、
図17(B)は、
図17(A)のパラメータRの値と反射光の強度Iの最大値Imaxとの関係を示す。
図17(B)からパラメータRの値が小さいほど、すなわち、ミラー要素30Aの回転軸RCから離れた部分の面積の割合が大きいほど、反射光の強度が大きくなることが分かる。
【0070】
図8(A)の曲線C20はパラメータRが0.1のときの電場振幅EAである。
また、
図8(A)の曲線C20に対応する反射光の強度Iは、回転角φの関数として
図8(B)の曲線C2となる。曲線C2の最大値0.82は曲線C1の最大値0.76よりも大きいため、ミラー要素30Aを用いることによって、上記の実施形態のミラー要素30を用いる場合に比べてさらに反射光の強度を大きくできることが分かる。
【0071】
また、一例として、段差付きのT字型のミラー要素30AのU方向の幅を1414nm、V方向の幅を(1414−140)nm、ミラー要素30Aの第2部分31DbのV方向の幅を140nm(即ち、パラメータR=0.1)として、入射光がランダム偏光、X偏光、及びY偏光である場合について、上記の実施形態と同様に、ミラー要素の回転角φ(deg)と反射率との関係を計算した結果が、それぞれ
図9(A)、(B)、及び(C)の曲線CD2である。さらに、
図9(D)の曲線CD2は、ミラー要素30Aに関して、スカラー計算式に基づいて計算した回転角φと反射率との関係を示す。
図9(A)〜(D)においては、回転角φのほぼ全範囲で、上記の実施形態のミラー要素30の反射率(曲線CD1)に対して本変形例のミラー要素30Aの反射率(曲線CD2)が大きいため、ミラー要素30Aを使用することによって、入射光がどのような偏光状態であっても、反射率がさらに向上することが分かる。また、ミラー要素30と同様に、ミラーの回転軸RCがX軸及びY軸に対して45°で交差するV方向に向くことで、X偏光とY偏光の差が生じにくくなっていることもわかる。
【0072】
次に、本実施形態においてウエハの表面に孤立的なパターン(レジストパターン)を形成する場合のシミュレーション結果の一例につき説明する。ここでは、ウエハWの表面に現像後に形成すべきレジストパターンを、一例として
図18(B)に示すように、1対の左右対称なほぼ正方形のターゲット76A,76Bであるとする。
図18(A)は、ターゲット76A,76Bにできるだけ近いレジストパターンを形成するために、それぞれミラー要素30Aのアレイによって形成される照明光ILの位相分布50C(第1及び第2の状態のミラー要素の分布)の一例を示す透視図である。
【0073】
上記の実施形態と同じ条件で、その位相分布50Cを用いて、シミュレーションによって投影光学系PLのベストフォーカス位置、及び±40nmデフォーカスした位置にある像面における空間像の強度分布を求めた。さらにその空間像を所定の閾値でスライスして求めた理論的なレジストパターンが、
図18(B)の楕円状のパターン77C,77Dである。
図18(B)と
図10(D)との比較から、ミラー要素30Aのアレイを用いても、比較例のミラー要素73のアレイを用いた場合とほぼ同じレジストパターンが得られるため、ミラー要素30Aは実際のパターンを形成するために使用できることが分かる。また、
図18(B)のY座標が−20nmの直線上の強度分布が
図11(B)の曲線CA2である。曲線CA2の最大強度0.75は曲線CA4の最大強度0.53よりも高く、さらに曲線CA1の最大強度0.71よりも高くなっている。このことから、ミラー要素30AでパラメータRを0.1とした場合、反射強度がさらに上がっていることが分かる。
【0074】
なお、本変形例においても、ミラー要素30Aを第1の状態又は第2の状態に設定したときの反射率の相違の影響を補正するために、位相分布50Cの露光と位相分布50Cを反転した位相分布の露光とを二重に行うようにしてもよい。
また、ミラー要素30Aの段差部31Fを中心とする領域に、高さが反射部31D,31Eと異なる連結部を設けてもよい。
さらに、ミラー要素30Aの第2部分31Dbの反射率を第1部分31Daの反射率よりも小さくしてもよい。
さらに、ミラー要素30Aの段差部31FをX軸又はY軸に平行に配置することも可能である。
【0075】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態につき
図19(A)〜
図20(B)を参照して説明する。
図19(A)は、第2の実施形態の空間光変調器28Bの反射面の一部を示す拡大底面図、
図19(B)は
図19(A)中の一つのミラー要素30Bを示す拡大図である。また、
図20(A)は、
図19(A)中の一つのミラー要素30Bを示し、
図20(B)は
図20(A)のミラー要素30BをU方向に平行なBB線に沿って視た図である。なお、
図19(A)〜
図20(B)において、
図2(A)〜
図3(C)に対応する部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0076】
図19(B)において、ミラー要素30Bは、X軸及びY軸に対して45°で交差するV方向に平行な回転軸RCの回りに回転可能である。また、ミラー要素30Bは、全体としてX方向及びY方向に平行な辺で囲まれた正方形であり、回転軸RCと平行な段差部31Iによって、対称な三角形状の第1反射部31G及び第2反射部31Hに分かれている。
【0077】
V方向に平行な段差部31Iの段差は
図2(B)の段差部31Cと同じd1(反射光の位相差でπ)である(
図20(A)参照)。また、ミラー要素30BのX方向の幅とY方向の幅とはほぼ同じである。ミラー要素30BのX方向及びY方向の幅は、例えば1〜10μm程度である。
図19(A)に示すように、多数のミラー要素30Bは、全体としてほぼ隙間がないように、X方向及びY方向に近接して配列されている。従って、照明光ILの利用効率は高くなっている。
【0078】
また、
図20(A)において、ミラー要素30Bは、支持駆動部34によってベース部材32の表面に支持されている。ミラー要素30Bの反射部31G,31Hの底面にそれぞれ電極37A,37Bが形成され(
図21(B)参照)、電極37A,37Bに対向するようにベース部材32の表面にそれぞれ電極37C,37Dが形成されている。この実施形態のミラー要素30Bも、
図20(B)において、回転軸RCの回りに時計回りに所定角度だけ回転した点線で示す第1の状態(30B(0))、又は回転軸RCの回りに反時計回りに所定角度だけ回転した実線で示す第2の状態(30B(π))のいずれかに設定される。斜め段差付きのミラー要素30Bも、時計回り又は反時計回りに回転して第1の状態又は第2の状態に設定することによって、実質的に入射する光の位相を0又はπだけ変化させて反射することができる。
【0079】
さらに、本実施形態のミラー要素30Bは、段差部31Iが方向Vに平行であるため、X偏光又はY偏光の照明光ILを用いる場合に反射率の相違を低減できる。
次に、本実施形態の空間光変調器28Bのミラー要素30Bからの反射光の強度及び反射率について定量的に説明する。回転角φ(deg)の関数としてミラー要素30Bからの反射光の電場振幅EAをスカラー値として計算した結果が、
図8(A)の曲線C30である。ミラー要素30Bからの反射光の電場振幅のスカラー計算式は、次の式(2D)で表すことができる。
【0080】
また、
図8(A)の曲線C30に対応する反射光の強度Iは、回転角φの関数として
図8(B)の曲線C3となる。しかし、
図8(B)の曲線C3の最大値は0.41となり、ミラー要素73に対応する曲線C4の最大値0.53よりも低く反射率を高める効果は期待できない。前述のとおり、ミラーの回転軸RCから離れたところにある反射面積が広いほど反射率は高くなるが、ミラー要素30Bではむしろミラーの回転軸RCから離れるほど反射面積が狭くなっている。そのため、ミラー要素30Bでは反射率が落ちている。ただし、上述のように、本実施形態の空間光変調器28Bは、ミラー要素30Bの段差部31Iが照明光ILの偏光方向PX又はPY(X方向又はY方向)に対して45°で交差する交差角となるように配置されるため、照明光ILの偏光方向による反射率の相違が小さくなる利点はある。
【0081】
なお、その交差角は0°より大きく90°より小さくともよい。この場合でも、照明光ILの偏光方向による反射率の相違が小さくなる。
なお、ミラー要素30Bの形状は全体として正方形以外の任意の形状が可能である。
次に、上記の各実施形態では、次のような変形が可能である。まず、上記の実施形態では、ウエハWを連続的に移動してウエハWを走査露光している。その他に、
図6(B)に示すように、ウエハWの各ショット領域(例えばSA21)をY方向に複数の部分領域SB1〜SB5等に分割し、投影光学系PLの露光領域26Bに部分領域SB1等が達したときに、照明光ILを所定パルス数だけ発光させて、空間光変調器28〜28Bのミラー要素30〜30Bのアレイからの反射光で部分領域SB1等を露光してもよい。この後、ウエハWをY方向にステップ移動させて、次の部分領域SB2等が露光領域26Bに達してから、同様に部分領域SB2等に露光が行われる。この方式は実質的にステップ・アンド・リピート方式であるが、部分領域SB1〜SB5等には互いに異なるパターンが露光される。
【0082】
また、上記の各実施形態では、物体側及び像面側にテレセントリックの投影光学系PLを用いている。それ以外に、
図21の他の例の露光装置EXAで示すように、物体側に非テレセントリックの投影光学系PLAを用いることも可能である。
図21において、露光装置EXAの照明光学系ILSAは、
図1の光源2から第1リレーレンズ18Aまでの光学部材を含む本体部ILSBと、本体部ILSBからの照明光ILが順次照射される視野絞り20、ミラー8C、第2リレーレンズ18B、コンデンサ光学系22、及びミラー8Dを備えている。照明光学系ILSAは、投影光学系PLAの物体面に配置された空間光変調器28のミラー要素30のアレイを、θx方向に入射角βで照明光ILを照射する。投影光学系PLAは、ミラー要素30のアレイから斜めに反射される照明光ILによりウエハWの表面に所定の空間像を形成する。入射角βは例えば数deg(°)から数10degである。
【0083】
なお、この場合には、ミラー要素30のアレイに入射する照明光ILが傾斜しているため、ミラー要素30の段差部31Cの段差は、入射角βを考慮して、反射部31A,31Bの回転軸RCの近傍での反射光の位相差がπになるように設定される。この他の構成及び動作は、上記の実施形態と同様である。
また、
図1の波面分割型のインテグレータであるマイクロレンズアレイ16に代えて、内面反射型のオプティカル・インテグレータとしてのロッド型インテグレータを用いることもできる。この場合、
図1において、リレー光学系14よりも空間光変調器11側に集光光学系を追加して空間光変調器11の反射面の共役面を形成し、この共役面近傍に入射端が位置決めされるようにロッド型インテグレータを配置する。
【0084】
また、このロッド型インテグレータの射出端面又は射出端面近傍に配置される照明視野絞りの像を空間光変調器28の反射面上に形成するためのリレー光学系を配置する。この構成の場合、二次光源はリレー光学系14及び集光光学系の瞳面に形成される(二次光源の虚像はロッド型インテグレータの入射端近傍に形成される)。
また、電子デバイス(又はマイクロデバイス)を製造する場合、電子デバイスは、
図22に示すように、電子デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたマスクのパターンデータを実施形態の露光装置EX,EXAの主制御系に記憶するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造してレジストを塗布するステップ223、前述した露光装置EX,EXA(又は露光方法)により空間光変調器28,28A,28Bで生成される位相分布の空間像を基板(感応基板)に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
【0085】
このデバイスの製造方法は、上記の実施形態の露光装置を用いてウエハWを露光する工程と、露光されたウエハWを処理する工程(ステップ224)とを含んでいる。従って、電子デバイスを高精度に製造できる。
また、本発明は、半導体デバイスの製造プロセスへの適用に限定されることなく、例えば、液晶表示素子、プラズマディスプレイ等の製造プロセスや、撮像素子(CMOS型、CCD等)、マイクロマシーン、MEMS(Microelectromechanical Systems:微小電気機械システム)、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイス(電子デバイス)の製造プロセスにも広く適用できる。
【0086】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。