(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上型と下型の間に光学素材が置かれた成形型を、チャンバー内に設けた加熱、プレス及び冷却の各ステージへ順次搬送して光学素子を成形する光学素子の成形装置であって、
前記加熱、プレス及び冷却の各ステージにおいて前記成形型を搭載し、搭載された前記成形型に対して、それぞれ加熱、プレス及び冷却の各プロセスを行う上下一対の加熱プレート、プレスプレート及び冷却プレートの複数組のプレートと、前記各組における一対のプレートを接近又は離間させて前記加熱、プレス及び冷却のプロセスを行わせる駆動手段と、前記各プロセス及び前記成形型の搬送を制御する制御手段と、を備えるとともに、
前記冷却プレートの側面全周に、放射率が0.3以下の材質で形成された熱遮蔽板を設け、前記成形型の搬送方向に設けられた熱遮蔽板よりも、前記成形型の搬送方向に直交する左右方向に設けられた熱遮蔽板を厚くしたことを特徴とする光学素子の成形装置。
【背景技術】
【0002】
近年、光学素子用の成形型内に光学素材を収容し、加熱軟化させてプレス成形するという、光学素子を高精度に成形する方法が一般化してきた。そのような状況の中、製造コストを低減するために、成形型を各処理ステージに搬送し、複数の光学素子を連続的に製造する光学素子の成形装置が提案されている。
【0003】
これら光学素子の成形装置において、光学素材の加熱軟化時には、光学素材を加工するのに十分な高温条件まで加熱し、プレス時にはその加熱状態を維持しながらプレスし、プレス後は、光学素材を冷却して固化させ光学素子を得る。そのため、成形装置における各処理ステージでは、個々のステージが所定の温度に管理されている。
【0004】
各処理ステージは、一般に、内部にカートリッジヒータを設けた上下一対のプレートで構成されており、これら上下一対のプレートは、通常、四角い平板状のプレート内部に複数本の棒状のカートリッジヒータを水平方向に所定の間隔に配置して構成されている。ところが、このように配置したときのプレート温度は、プレート周辺部では温度が低下しやすく、プレート中央部はヒータに囲まれて温度が上昇しやすい。したがって、プレートでは場所により異なる温度分布が生じてしまう。このようにプレート内で温度分布が生じると、そのプレート上にある成形型、ひいては光学素材を成形する成形面の温度にまで影響を与えてしまう。
【0005】
そこで、プレート上の温度分布を改善するために、超硬合金の表面を所定の合金薄膜で被覆した特定の大きさからなる均熱板をプレート上に設けたり(特許文献1参照)、プレート表面の成形に対応する周辺部分と内側部分との温度差を所定範囲に保持するために内側と外側のカートリッジヒータの出力を制御する温度制御手段を設けたり(特許文献2参照)、する技術が提案されている。
【0006】
しかしながら、上記の成形型を搬送移動させながら順次処理を行っていく成形装置においては、まず、成形型が装置内に取入れられ、初めの加熱ステージでは徐々に光学素材を昇温させていき、加熱の最終部分で最高温度に到達させる。次に、この最高温度を維持しながらプレス成形を行って光学素材に光学素子形状を付与する。そして、最後に、冷却ステージで光学素材の温度を徐々に下げて光学素材を冷却、固化させる。
【0007】
このような成形操作を行うにあたっては、装置全体の温度勾配は、成形型の取入れ口側から徐々に高くなり、プレス成形処理を行うプレスステージを頂点として、成形型の取出し口側に向かって徐々に低くなっている。
【0008】
したがって、各ステージは隣接するステージの温度に影響されて、所定の温度よりも高温あるいは低温になってしまい、同一プレート内で温度差が生じてしまう。このような場合には、特許文献1及び2のようにプレート単独で考えただけでは足りず、隣接するプレートの影響等も考慮に入れなければ、温度分布を効果的に抑制できない。
【0009】
例えば、冷却ステージにおいて、隣接するステージとの温度差が大きい場合、その冷却ステージの片面側の温度が高く、その逆側の温度が低くなってしまうため、冷却プレート上にある成形型内部に温度分布が発生し光学素材の冷却を一様に行えず、場所によって冷却速度が変わってしまう。そのため、所望の形状を得られなくなり歩留まりを低下させるという問題があった。このような問題は特に、製造する光学素子の直径が大きくなり、隣接するプレートとの距離が短くなると顕在化してくる。
【0010】
そこで、本出願人は、プレート間に熱遮蔽板を設け、冷却プレートが隣接するプレートの温度から受ける影響を抑制した成形装置の出願を既に行っている(特許文献3参照)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態である光学素子の成形装置の概略構成図である(チャンバー2のみ断面で示している)。
【0021】
本発明の光学素子の成形装置1は、光学素子を成形するための成形室となるチャンバー2と、該チャンバー2の内部に設けた光学素材を収容した成形型を加熱して光学素材を軟化させる加熱ステージ3と、加熱軟化した光学素材をプレスするプレスステージ4と、プレスにより光学素子形状が付与された光学素材を冷却する冷却ステージ5と、を有する。
【0022】
ここで、成形室であるチャンバー2は、その内部において、光学素子の成形操作を行う場を提供する。このチャンバー2には、光学素子の成形型50を内部に取り入れる取入れ口と、光学素子の成形が終了した後、成形型50を取り出す取出し口が設けられ、この取入れ口及び取出し口には、それぞれ取入れシャッター6及び取出しシャッター7が設けられる。必要に応じて、これらシャッターを開閉して、成形型50をチャンバー2から出し入れでき、チャンバー2内の雰囲気が維持される。また、この取入れ口及び取出し口には、そのチャンバー2外部にそれぞれ成形型50を載置できる成形型載置台8及び9が設けられている。
【0023】
このチャンバー2の内部には、光学素子を成形するための加熱ステージ3、プレスステージ4及び冷却ステージ5が設けられており、これらの各ステージにより成形操作を行う。実際には、光学素材を収容した成形型50が、取入れ口からチャンバー2内に取り入れられ、上記の各ステージに順番に移動しながら所定の処理を施され、一連の処理が終了したところで成形型50は、取出し口からチャンバー2の外部に取出される。
【0024】
このチャンバー2の内部において、光学素材のプレス成形時には成形型50は高温に加熱されるため、この成形型50が酸化されないように、チャンバー内雰囲気は窒素等の不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気とするには、チャンバー2を密閉構造として内部雰囲気を置換して達成できるが、半密閉構造とし、不活性ガスを常時チャンバー2内に供給しチャンバー内を陽圧にして、外部の空気が流入しないようにして不活性ガス雰囲気を維持してもよい。上記した取入れシャッター6及び取出しシャッター7は、チャンバー2内部を簡便な構成で半密閉状態とするのに効果的である。なお、これらチャンバー2及びシャッター6,7は、ステンレス、合金鋼等の高温下におけるガス、不純物が析出しない素材とするのが好ましい。
【0025】
次に、本発明の成形操作を行う各ステージについて説明する。なお、各ステージの説明にあたって用いる成形型50は、一般に、光学素子の上側の光学面を形成する上型と、下側の光学面を形成する下型とで構成される一組の成形型であり、さらに上型及び下型の位置合わせを行う胴型を有する。胴型は、プレス時に、上型及び下型の光軸を同軸上に規制する中空円筒形状の内胴と、内胴の外周に設けられ上型及び下型間の距離を規制する中空円筒形状の外胴と、で構成したものが好ましい。
【0026】
また、この成形型50は、超硬合金やセラミックス等の素材からなり、上型及び下型は、成形する光学素子の面形状を転写するための成形面をそれぞれ有しているが、ここで形成される光学素子形状は、両凸、両凹、平凸、平凹、凸メニスカス、凹メニスカス形状のいずれのレンズ形状を成形する成形型であってもよい。なお、外胴を用いる場合には、高温での耐久性、耐食性、高い機械的強度を持つ材質が好ましく、さらには高い熱膨張係数を持つ材質が好ましく、具体的にはSUS等のステンレスが好ましい。
【0027】
本発明の加熱ステージ3は、成形型50に収容された光学素材を軟化させ、その内部にカートリッジヒータ3aが埋め込まれた上下一対の加熱プレート3bから構成される。この加熱プレート3bは、上下一対の加熱プレート3bを成形型の上型、下型にそれぞれ接触させ、上型及び下型を加熱する手段であり、熱伝導によりさらに成形型内部に収容されている光学素材をも加熱できる。
【0028】
より具体的には、加熱ステージ3において、下側の加熱プレート3bはチャンバー2の底板に、断熱板3c、加熱プレート3bがこの順番に積層して固定されており、下側の加熱プレート3bの熱をチャンバー2に伝達しない。
【0029】
上側の加熱プレート3bは上下移動が可能となっており、こちらも上側の加熱プレート3b自体の熱をそのまま伝えないように断熱板3cを介してシャフト3dと接続され、このシャフト3dは図示しないシリンダーによって加熱プレート3bを上下移動可能としている。このように、加熱プレート3bを上下移動可能とすれば、上側の加熱プレート3bの成形型50の上型への接触・非接触を制御でき、所望のタイミングで成形型50と光学素材を加熱できる。
【0030】
本発明のプレスステージ4は、上下のプレスプレート4b間の距離を狭めて成形型50の上型と下型との距離も狭め、成形型50内に収容された光学素材を軟化状態のまま押圧して変形させ、上型及び下型の成形面形状を光学素材に付与して光学素子を所望の形状に成形する。その内部にカートリッジヒータ4aが埋め込まれた上下一対のプレスプレート4bから構成される。このプレスプレート4bを用いたプレスは前段階の加熱温度を維持して行われる。
【0031】
より具体的には、このプレスステージ4において、下側のプレスプレート4bはチャンバー2の底板に、断熱板4c、プレスプレート4bがこの順番に積層して固定されており、下側のプレスプレート4bの熱をチャンバー2に伝達しない。
【0032】
上側のプレスプレート4bは上下移動が可能となっており、こちらも上側のプレスプレート4b自体の熱をそのまま伝えないように断熱板4cを介してシャフト4dと接続され、このシャフト4dは図示しないシリンダーによってプレスプレート4bを上下移動可能としている。このように、プレスプレート4bを上下移動可能とすれば、この上側のプレスプレート4bを下降させ、下側のプレスプレート4bに載置された成形型50を用いたプレス成形ができる。このときプレスプレート4bはプレスを所定の圧力で行えるよう動作し、光学素材に高精度に光学素子形状を付与できる。
【0033】
本発明の冷却ステージ5は、成形型50を冷却して光学素子形状が付与された光学素材を冷却し、固化させるため、その内部に、カートリッジヒータ5aが埋め込まれた上下一対の冷却プレート5bから構成される。この冷却プレート5bは、上下一対の冷却プレート5bを成形型の上型、下型にそれぞれ接触させて、上型及び下型を冷却でき、さらに成形型内部に収容されている光学素材をも冷却できる。
【0034】
より具体的には、この冷却ステージ5において、下側の冷却プレート5bはチャンバー2の底板に、断熱板5c、冷却プレート5bがこの順番に積層されて固定されており、下側の冷却プレート5bの熱をチャンバー2に伝達しないように構成されている。
【0035】
上側の冷却プレート5bは上下移動が可能となっており、こちらも上側の冷却プレート5b自体の熱をそのまま伝えないように断熱板5cを介してシャフト5dと接続され、このシャフト5dは図示しないシリンダーによって冷却プレート5bを上下移動可能としている。このように、冷却プレート5bを上下移動可能とすれば、この上側の冷却プレート5bの成形型50の上型への接触・非接触を制御でき、所望のタイミングで成形型50と光学素材を冷却できる。
【0036】
なお、ここでの光学素材の固化は、その素材のガラス転移点以下、より好ましくは歪点以下に冷却すればよく、十分に冷却されると光学素材の光学素子形状は安定し、変形が抑制される。ここでの冷却は、光学素子形状を安定して付与するように光学素材が固化する温度まで下げる意味であり、その温度は、プレスプレートよりも50〜150℃程度低いだけで、依然として高温であるため、この冷却プレート5bにもその内部にヒータ5aが埋め込まれている。
【0037】
上記説明したとおり、各ステージの上側の加熱プレート3b、プレスプレート4b及び冷却プレート5bは断熱板を介してシャフトに固定されており、このシャフトがシリンダーに接続されている。ここでシリンダーは、各プレートの上下動を可能とできればよく、例えば、エアシリンダー、電動サーボシリンダー、油圧シリンダー、電動油圧シリンダー等のシリンダーが挙げられる。
【0038】
上記した、加熱プレート3b、プレスプレート4b、冷却プレート5bは、その成形型との接触面が水平面となっており、特に、プレスプレート4bにおいては、プレスプレート4bの成形型との接触面が傾いていた場合、成形型50の上型及び下型の中心軸が一致しなくなり、このとき製造される光学素子が、その光軸が一致せず不良品となってしまう場合がある。したがって、これら各ステージにおけるプレートの平行度や平面度の管理は厳密に行われる。
【0039】
これらの各ステージにおける、プレートはステンレス、超硬合金、合金鋼等の素材の内部にカートリッジヒータを挿入し、固定し、カートリッジヒータの加熱によりプレートの温度を上昇させ、所望の温度に維持する。
【0040】
なお、各ステージのプレートの成形型の搭載面表面には、プレート温度をなるべく均質化するために、均熱板を設けてもよい。均熱板は、超硬合金、ステンレス等の公知の耐熱性があり、硬度が高く熱伝導が良い材料で構成できる。さらに、均熱板表面に酸化防止膜のコーティングを施すことが好ましく、このコーティングとしては、具体的にはCrN、TiN、TiAlNなどのコーティング処理が挙げられる。
【0041】
また、各ステージの断熱板3c,4c,5cは、セラミックス、ステンレス、ダイス鋼、ハイス鋼等の公知の断熱板を用いればよく、硬度が高くプレス成形時の圧力等によっても変形しにくく、ずれを生じるおそれが少ないセラミックスが好ましい。
【0042】
さらに、本発明においては、冷却プレートの側面全周を囲うように熱遮蔽板を有する点に特徴があり、この熱遮蔽板により、周囲の熱的影響、特に隣接するプレスプレートやその他の熱的影響を受け難く、かつ、冷却プレート自身の周囲の熱的安定性を高め、プレート上の温度差を抑制できる。
【0043】
具体的には、
図2A〜Cに示したように、熱遮蔽板5eが冷却プレート5bの側面全周に設けられ、隣接するプレートからの熱的影響を受け難くなっている。
図2A〜Cは、
図1の下側の冷却プレートの構成を抜き出し、熱遮蔽板5eについて説明する図であり、
図2Aは冷却プレート5bの正面透視図、
図2Bは冷却プレート5bの側面透視図、
図2Cは冷却プレート5bの平面透視図である。
【0044】
これらの図に示したように、冷却プレート5bの側面には、各側面に沿って熱遮蔽板5eが設けられており、これら熱遮蔽板5eによって冷却プレート5bの側面全周が囲われている。このとき、熱遮蔽板5e同士は接触しないようにしてもよいが、互いに接触、固定させ完全に囲うと、より好ましい。
【0045】
このような構成の光学素子の製造装置は、隣接するプレートからの熱が間接的に伝達するのを抑制でき、さらに、自身のプレートの側面全周が囲まれるとプレートの熱的状態を安定に保てる。
【0046】
このとき、熱遮蔽板5eの厚さは、各ステージのプレート同士の間隔は不必要に広く設けないため、プレート間(搬送方向の側面)には厚さ0.5〜5mm程度の板状体を配置する。熱遮蔽板の上部は、金型が通過する際に邪魔にならないように、その上端は、プレートの上面と同じ高さとすればよく、また、上端部の形状は、より好ましくは平面部を設けプレートと熱遮蔽板との隙間をできる限り小さくし、成形型が落下したり傾いたりするのを防止する形状を採用する。また、搬送方向と直交する左右方向の側面は、厚みの制限が厳しくないため厚さ0.5〜10mm程度の板状体を配置すればよい。
【0047】
左右方向の板状体の厚みを厚くすると熱遮蔽板5eの熱容量を大きくでき、冷却プレート5b自身から放射される熱によるエネルギーを吸収し、保持させて、冷却プレート5bの熱的環境を安定させるのに効果的なものである。
【0048】
また熱遮蔽板はスペース的に余裕があるのであれば2重、3重と複数設置したほうが好ましい。各熱遮蔽板間で輻射の影響を薄め、より外部の熱の影響を排除し均熱性を高めることができる。例えば、650℃のプレスプレート(放射率0.8)、600℃の冷却プレート(放射率0.8)、200℃の水冷プレート(放射率0.8)が並んだ装置において、プレスプレートから冷却プレートへ最終的に伝達する熱量をQ1、冷却プレートから水冷プレートへ最終的に伝達する熱量をQ2としたとき、プレート間(搬送方向側)に熱遮蔽板を設けない場合はQ1が5.4kW/m
2、Q2が20.0kW/m
2であるのが、放射率0.2の熱遮蔽板を各プレート間に1枚設けた場合には、Q1が0.78kW/m
2、Q2が2.85kW/m
2となり、放射率0.2の熱遮蔽板を各プレート間に2枚設けた場合には、Q1が0.50kW/m
2、Q2が1.89kW/m
2と効果的に熱伝達量を抑制し、各プレートの温度を周囲の環境に影響されずに安定できると考えられる。
【0049】
なお、上記のQ1,Q2は定常状態での平行2平面間におけるプレート1からプレート2への放射計算を単純化し、次の式(1)〜(3)のように算出した。
【0050】
まず、熱遮蔽板の無い場合は次式(1)
【数1】
を用いて算出した。ここで、T1、ε1は、プレート1の表面における温度(℃)と放射率、T2、ε2は、プレート2の表面における温度(℃)と放射率である。また、伝達熱量Qの単位は[W/m
2]である。
【0051】
次に、熱遮蔽板を1枚設けた場合は、熱遮蔽板で区切られた空間ごとに分けて考え、次式(2)及び(3)
【数2】
【数3】
を用いて算出した。ここで、プレート1から熱遮蔽板までの伝達熱量Qa、熱遮蔽板からプレート2までの伝達熱量Qbを定常状態として(Qa=Qb)、上記式(2)と(3)の連立方程式を解くことで、プレート2への伝達熱量が得られる。T1、T2、ε1、ε2は上記と同じであり、T3、ε3は、熱遮蔽板の表面における温度(℃)と放射率である。
【0052】
また、熱遮蔽板がさらに増えても、上記と同様の考え方にしたがって、プレート間の熱遮蔽板で区切られた空間ごとにそれぞれ伝達熱量を算出する関係式を立てて、連立方程式を解くことで最終的なプレートへの熱移動量が算出できる。
【0053】
ここで、
図1及び
図2では、熱遮蔽板5eを断熱板5cに固定して設けているが、これをチャンバー2や他の部材に固定して設けてもよい。また、熱遮蔽板5eは、上記したようにプレート間の熱的干渉等を防ぐために設けるため、隣接するプレートの間に設けるが、その際、成形型50の搬送を妨げないように設ける。
【0054】
なお、上側の冷却プレート5bにも、同様の熱遮蔽板5eを設ける。ただし、上側の冷却プレート5bは、駆動手段により上下動するため、熱遮蔽板を設ける際には、これらプレートと一体に上下動するように、例えば、
図1に示したように断熱板5cへの固定が好ましい。
【0055】
このとき、熱遮蔽板としては、その400℃以上から700℃における放射率が0.3以下の材質を用いる。このような放射率の材質で熱遮蔽板を形成すると、ヒータブロックの輻射熱を跳ね返し外部に熱が逃げるのを防止し、逆に外部からの輻射熱は外部に跳ね返すのでヒータブロックは外部の影響を受けにくくなる。放射率が小さいほど前述の効果は大きくなるため、放射率はできるだけ小さい方が好ましく、例えば、放射率は0.1未満が好ましい。なお、本明細書において放射率とは、物体からの放射発散度(又は放射輝度)と、その物体と同じ温度にある黒体の放射発散度(又は放射輝度)との比をいう。放射率は吸収率と同義である。
【0056】
熱遮蔽板の素材は、成形の温度に耐える材料であればよく、例えば、ステンレス、超硬合金等の素材が用いられる。また、放射率はその素材の表面状態にも影響を受け、表面粗さが小さい平滑な面となるほど放射率が小さくなるため、使用する材質とその表面形状によって、バフ研磨、鏡面加工するなどして調整すればよい。なお、上記のような材質で形成した熱遮蔽板に、金、白金、イリジウムなどの貴金属膜、TiN、Al−Cr系コートのOS−A(商品名:株式会社オンワード技研)等の皮膜を形成して、放射率を調整してもよい。膜の材質、成膜方法はスパッタ成膜、真空蒸着、イオンプレーティング、メッキ等から適宜、材料の特性やコストで選択できる。
【0057】
以上説明した加熱ステージ3、プレスステージ4、冷却ステージ5は、それぞれ所定の処理が行われる場(ステージ)を形成し、各ステージによる処理を順次円滑に行えるように、成形型50は、搬送手段(図示せず)により所定のタイミングで各ステージに移送し搭載されるように制御手段によって制御されている。
【0058】
より具体的には、加熱プレート3b、プレスプレート4b、冷却プレート5bによる処理は、成形型50を順次上記の順序で各プレート上へと搬送移動させながら所定の処理を行う。そして、成形型50が次のステージに移動すると、処理の終わったステージは空くため、さらに、そこに別の光学素材を収容した成形型50を搬送し、複数個の光学素子の成形操作を連続的に行うのが効率的である。
【0059】
この処理を行うための上記搬送手段は、図示していないが、例えば、ロボットアーム等が挙げられ、これにより、成形型載置台8から加熱プレート3bへ、加熱プレート3bからプレスプレート4bへ、プレスプレート4bから冷却プレート5bへ、冷却プレート5bから成形型載置台9へ、と移動させる。
【0060】
なお、この制御手段は、成形型の移動、加熱・プレス・冷却の各ステージにおける上下一対のプレートの温度や、上下移動のタイミング等も制御し、一連の成形操作を円滑に、かつ、連続的に行うように制御している。このとき、取入れシャッター及び取出しシャッターの開閉も制御する。さらに、チャンバー2内の雰囲気が不活性ガスで満たされるように窒素の供給量やタイミング等を制御するのが好ましい。
【0061】
すなわち、この光学素子の成形装置1は、1以上のポジションで温度の上げ下げを行いながら所定の処理を行う、成形型の搬送による光学素子の成形装置である。
【0062】
次に、この光学素子の成形装置1を用いた光学素子の成形方法について説明する。
まず、取入れ口側の成形型載置台8に成形型50を載置し、この成形型50の内部に光学素材を収容する。取入れシャッター6を開けて取入れ口を開口させ、この成形型50を搬送手段により加熱プレート3b上に搬送する。搬送されると、成形型50の下型は下側の加熱プレート3bに接触するため加熱プレート3bと同じ温度まで昇温される。これと同時に、上型には上方向から上側の加熱プレート3bを接触させて同様に加熱する。
【0063】
このように上型及び下型が加熱されると、その内部に収容されている光学素材も加熱され、この光学素材は屈伏点以上に加熱されると変形が容易となる。一般に、加熱温度は、軟化点まで温度を上げるとレンズ表面が白濁するので屈伏点(At)から軟化点の間の温度に設定する。このとき、昇温速度は0.5〜2.5℃/sec程度が好ましい。
【0064】
このようにして加熱ステージ3で十分に加熱された成形型50及び光学素材は、搬送手段により、下側のプレスプレート4b上に搬送され載置される。
【0065】
プレスプレート4bも加熱プレート3bと同程度の温度に加熱されており、光学素材を軟化状態に維持する。さらに、上側のプレスプレート4bを下降させてプレスプレート4b間の距離を狭め、上型と下型との距離をも狭めて、成形型50の内部に収容された光学素材に圧力をかけ、光学素材を変形させる。
【0066】
このプレス工程では、上記したように成形型50の上から圧力をかけて光学素材のプレス成形を行い、これにより光学素材には上型及び下型の光学形成面が転写され、光学素子形状が付与される。
【0067】
また、このプレス工程におけるプレスは、加熱温度が前段の加熱ステージで加熱した温度と同程度の温度であり、プレス時の圧力はレンズ成形体の単位面積当たり2.5〜37.5N/mm
2が好ましく、さらには10〜20N/mm
2が特に好ましい。
【0068】
そして、このようなプレス工程を経て、押切りが完了した成形型50は、搬送手段によりプレスプレート4bから冷却プレート5bへと搬送される。
【0069】
次に、冷却プレート5bにより成形型50を冷却するが、これは、上記加熱工程と同様に、下型は下側の冷却プレート5bと接触させ、上型は上側の冷却プレート5bを下降させ接触させて冷却する。これにより光学素材を冷却して、固化させる。この冷却は、光学素材のガラス転移点(Tg)以下の温度にまで冷却させるのが好ましく、光学素材の歪点以下の温度にまで冷却させるのがより好ましい。このとき、降温速度は0.1〜2.5℃/secが好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.0℃/secである。
【0070】
なお、上記した加熱工程及び冷却工程は、それぞれ段階的に温度を変化させ緩やかに上昇又は降温させるのが好ましく、この場合、加熱工程として1以上の加熱ステージを設け、段階的に光学素材の温度を上昇させて、プレスステージの直前の加熱ステージにおいて、成形温度とする。また、冷却工程においても1以上の冷却ステージを設け、段階的に光学素材の温度を下降させて、200℃以下の温度にまで冷却するのが好ましい。このように、段階的に加熱及び冷却をすると、光学素材の急激な温度変化を抑制し、歪が生じたり、面ワレ等が生じたりする等の光学素子の特性を悪化させないようにできる。ここで面ワレとは、光学素子が成形型から離型する際に、一部だけが先に離型し、その後に残りが離型した場合に、曲率が不連続な光学面が形成されて非球面形状精度が悪化する不良を生じる離型異常のことをいう。
【0071】
このような、加熱工程及び冷却工程を実施するために、それぞれ複数の加熱ステージ及び冷却ステージを有する光学素子の成形装置の一例を
図3に示した。この
図3に示した光学素子の成形装置11は、チャンバー12、第1の加熱ステージ13、第2の加熱ステージ14、第3の加熱ステージ15、プレス成形ステージ16、第1の冷却ステージ17、第2の冷却ステージ18、第3の冷却ステージ19を有する装置構成となっており、チャンバー12には光学素子の成形装置1と同様に、成形型50の取入れ口とそれを開閉可能とする取入れシャッター20、取出し口とそれを開閉可能とする取出しシャッター21、それら取入れ口及び取出し口の外側には成形型載置台22及び23が設けられている。
【0072】
この光学素子の成形装置11は、加熱ステージを3つ、冷却ステージを3つ設けて、段階的に加熱及び冷却を可能とした以外は、
図1の光学素子の成形装置1の構成と同様である。
【0073】
例えば、第1の加熱ステージ13では、光学素材をガラス転移点以下、200〜400℃程度低い温度に一旦加熱する予備加熱を行い、第2の加熱ステージ14ではガラス転移点付近の温度にまで、第3の加熱ステージ15では屈伏点+10〜30℃の温度にまで加熱する。また、プレスステージ16では成形温度を維持しながら、成形型による成形操作により光学素子形状を付与し、第1の冷却ステージ17では光学素材のガラス転移点+20℃程度まで冷却し、第2の冷却ステージ18では、さらに歪点以下にまで冷却し、第3の冷却ステージ19では、成形型が酸化されない200℃以下の温度にまで冷却すればよい。
【0074】
ここで、第3の冷却ステージは、用いるプレートを、他のステージにおけるヒータの代わりに冷却水が循環するように配管19aを設けた水冷プレートとすると、効率的に冷却できる。
【0075】
この光学素子の成形装置11において、そのプレート間の温度差が大きくなると、隣接するプレートから受ける影響が大きくなり、光学素子の一部の冷却が遅くなってしまう場合がある。このように冷却が不均一になると、その冷却速度の差から光学素子内部に歪が生じたり、離型がうまくできなくなったりして、得られる光学素子の特性に悪影響を及ぼす。特に、第2の冷却プレート18bでは、隣接する第3の冷却プレート19bが水冷のため影響が大きいので熱遮蔽板の設置が好ましい。また、第1の冷却プレート17bも、プレスプレート16bが高温であるため光学素子の形状精度に悪影響を及ぼすおそれがあり、第1の冷却プレート17bにおいても、その周囲への熱遮蔽板の設置が好ましい。
【0076】
また、加熱ステージ間及び加熱ステージとプレスステージ間でも、冷却ステージよりも不具合が生じる影響は小さいが、所定の処理を均一な温度で処理できるように、同様にプレート側面全周への熱遮蔽板の設置が好ましい。
【0077】
さらに、熱遮蔽板を設けた冷却プレートにおいて、冷却プレートの内部に設けられるカートリッジヒータの本数を3本以上の複数本とし、プレート端部側に配置されたカートリッジヒータの出力よりも、プレート内側に配置されたカートリッジヒータの出力を大きくすると、プレートの熱的安定性を向上でき好ましい。このとき、プレートの内側に設けられたカートリッジヒータの出力は、プレートの端部側に設けられたカートリッジヒータの1.2〜3倍が好ましい。より好ましくは1.5〜2.5倍である。
【0078】
上記のように冷却して得られた光学素子は、その後、光学素子形状とするために、余肉部を芯取り加工して光学素子形状としたり、アニール工程に付して歪みを除去したりする等の後処理を施して最終的な製品とされる。
【0079】
このように、プレートの側面全周に熱遮蔽板を設け、隣接するプレート温度や周囲の環境に影響されて生じる温度差を小さくでき、プレート内での温度分布を改善できる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明する。なお、例1,4,5は実施例、例2〜3は比較例である。
【0081】
(例1)
図3の光学素子の成形装置11を用いて、光学素子の成形を以下の通り行った。
ここで用いた光学素子の成形装置11は、加熱プレート、プレスプレート及び冷却プレートとして、ステンレス製の100×78×18mmの直方体で内部に500Wのカートリッジヒータを3本有するプレートを用い、断熱板として、SUS304製の100×78×9mmの板状体とジルコニア製の100×78×9mmの板状体を重ね合わせたものを用い、各プレートの成形型の搭載面表面には均熱板としてタングステンカーバイドからなる超硬合金製の100×78×5mmの板を設けた。
【0082】
また、上側のプレートを上下移動させるシリンダーは、エアシリンダーを用い、シャフト径40mmのシャフトが上側のプレートと接続、固定されている。チャンバーはSS400製の440×592×240mmの箱状で、このチャンバーの下板としては440×592×20mmのものを用いた。
【0083】
第1〜第3の冷却プレート間の隙間はそれぞれ8mmとなるように配置して、それらプレート間に熱遮蔽板17eとして、第2の冷却プレート18bの側面から5mm離れた位置に熱遮蔽板17eを配置した。なお、搬送方向に設ける熱遮蔽板(第1の冷却プレート16bと、第3の冷却プレート18bとの間の熱遮蔽板)は、厚さ2mmのSUS304製の板状体を、左右方向に設ける熱遮蔽板は厚さ9mmのSUS304製の板状体を用いた。これら4枚の熱遮蔽板18eは、互いに隣接する熱遮蔽板と接触、固定し、第2の冷却プレートの水平方向は、熱遮蔽板18eで囲うようにした。
【0084】
また、成形型50は、上型、下型並びに内胴及び外胴を有する胴型で構成され、上型、下型及び内胴はタングステンカーバイドからなる超硬合金製で、外胴はSUSからなり、プレス成形により、直径φ40mm、中心厚さ7.5mm、周辺厚さ3mm、非球面の近似曲率半径がそれぞれ100mmと85mmの両凸形状の成形品が得られ、後加工の芯取り加工をして直径35mmの光学素子が得られるものを用いた。
【0085】
まず、上記した成形型50の下型の成形面にホウケイ酸ガラスからなる研削研磨により作製した直径φ 36mm、中心厚み 8.83mm、周辺厚さ4.3mm、曲率半径がそれぞれ90mmと60mmの両凸球面レンズの光学素材を載置した。なお、この光学素材の歪点は495℃、ガラス転移点(Tg)は532℃、屈伏点(At)は573℃である。
【0086】
光学素材を収容した成形型50を、搬送手段により第1の加熱プレート13b上に搬送し載置すると同時に上側の第1の加熱プレート13bを下降させて上型に接触させ、成形型50及び光学素材を100秒間加熱し、次いで、第2の加熱プレート14b上に搬送し載置すると同時に上側の第2の加熱プレート14bを下降させて上型に接触させ、成形型50及び光学素材を100秒間加熱し、さらに、第3の加熱プレート上に搬送し載置すると同時に上型の第3の加熱プレート15bを下降させて上型に接触させ、成形型50及び光学素材を100秒間加熱して光学素材を軟化状態とした。なお、第1の加熱プレート13bは350℃、第2の加熱プレート14bは500℃、第3の加熱プレート15bは600℃に設定した。
【0087】
次に、成形型50をプレスプレート16b上に搬送し載置して、上側のプレスプレート16bを下降させ、この成形時のプレス圧力は5N/mm
2、プレス時間は90秒とした。このとき、プレスプレート16bの温度は600℃であった。
【0088】
プレス後、成形型を第1の冷却プレート17b上に搬送し載置すると同時に上側の冷却プレート17bを下降させて上型に接触させ、100秒間冷却し、次いで、成形型を第2の冷却プレート18b上に搬送し裁置すると同時に上側の第2の冷却プレート18bを下降させて上型に接触させ、100秒間冷却し、さらに、成形型を第3の冷却プレート19b上に搬送し載置すると同時に上側の第3の冷却プレート19bを下降させて上型に接触させ、100秒間冷却した。このとき、第1の冷却プレート17bは550℃、第2の冷却プレート18bは 450℃、第3の冷却プレート19bは20℃(冷却水温度)に設定した。
【0089】
光学素材を室温になるまで冷却し、十分に冷却したところで、成形型から取り出し、光学素子を得た。
【0090】
(例2)
第2の冷却プレートにおいて、熱遮蔽板を設けず、各プレート間の間隔を同一にした以外は例1と同一の操作により光学素子を得た。
【0091】
(例3)
第2の冷却プレート18bにおいて、搬送方向にのみ熱遮蔽板を設けた装置を用いた以外は、例1と同様の操作により光学素子を製造した。
【0092】
(試験例)
上記の例1〜3において、第2の冷却プレートの表面温度を測定した。表面温度は、
図4に示した、熱電対30a中央部と、その中央部を中心とした半径15mmの円周上に等間隔に4箇所熱電対30bを設けた温度測定手段30を用い、これを第2の冷却プレートの表面に押しつけて接触させ各位置での温度を測定した。このとき、外周部の熱電対30bは、成形型の搬送方向の入口側、出口側と、さらに、搬送方向に対して左側、右側の4箇所になるように測定した。なお、この温度測定手段30は、超硬合金製で、厚さは40mm、熱電対は表面から深さ0.1mmの位置に設けている。
【0093】
この熱電対を有する温度測定手段30において、測定した結果を
図5及び
図6に示した。
図5は、第2の冷却プレート(上)の温度を測定した結果であり、
図5(a)は搬送方向の温度を、
図5(b)は左右方向の温度を表している。また、
図6は、第2の冷却プレート(下)の温度を測定した結果であり、
図6(a)は搬送方向の温度を、
図6(b)は左右方向の温度を表している。ここで、位置も温度も中心の熱電対を起点(0)とし、それぞれを相対的に表した。なお、位置について、搬送方向においては出口側を正の値とし、搬送方向の入口側を負の値とし、左右方向においては入口側から出口側を見て、右側を正の値とし、左側を負の値とした。
【0094】
図5及び
図6から明らかなように、第2の冷却プレートにおいて、搬送方向においては、第1の冷却プレートと第3の冷却プレートという温度差の大きいプレートとそれぞれ隣接しているため、例2においては温度差が大きくなっているが、例1によればその差を大幅に改善できている。また、左右方向においては、上側のプレートでは有意に、また、下側では微々たるものであるが、それぞれ温度差を改善できており、光学素子の製造における歩留まり向上に有用である。
【0095】
また、例3は、搬送方向の側面に熱遮蔽板を設けており、これによっても何も設けない従来のものよりは改善されているが、本願発明の例1はさらに温度分布の改善が認められる。
【0096】
(例4)
熱遮蔽板18eの素材をSUSから、SUSに金メッキを施した素材とした以外は、例1と同様の操作により光学素子を製造した。このときの、上記試験例と同一の試験による第2の冷却プレートの温度分布は、例1では、搬送方向での温度差が(上)2.0℃、(下)3.7℃、左右方向での温度差が(上)1.7℃、(下)1.2℃であったのが、本例では搬送方向での温度差が(上)1.1℃、(下)1.1℃、左右方向での温度差が(上)1.7℃、(下)1.1℃と、有意に改善されていた。
【0097】
(例5)
例1とは、冷却プレート18bに埋め込まれた3本のカートリッジヒータの両端の出力を落とし、真ん中の出力が大きくなるようにした。すなわち、例1では全て1kWの出力としていたのを、本例では、中央を1kW、両端を500Wとした以外は、例1と同様の操作により光学素子を得た。
【0098】
このとき、温度分布は、搬送方向の両端の温度差が0.8℃(例1では1.7℃)、最大の温度差が3.3℃(例1では3.0℃)であり、出力調製した本例は中央に対して対称に近い形で温度差が生じていた。これは、左右の温度差の傾向に非常に近く、光学素子のプレス成形時の方向による不均質な状態が生じるのを抑制でき好ましい。
【0099】
以上に示したように、本発明の光学素子の成形装置及び成形方法により、光学素子の製造における成形型の温度を不安定にする要因を排除し、成形型内の温度分布を抑制して光学素子形状を安定化し、歩留まりを向上できる。