特許第5954328号(P5954328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5954328-化学強化用ガラスおよびガラス筺体 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954328
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】化学強化用ガラスおよびガラス筺体
(51)【国際特許分類】
   C03C 4/00 20060101AFI20160707BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20160707BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20160707BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20160707BHJP
   C03C 3/093 20060101ALI20160707BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   C03C4/00
   C03C3/085
   C03C3/087
   C03C3/091
   C03C3/093
   C03C21/00 101
【請求項の数】17
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2013-528024(P2013-528024)
(86)(22)【出願日】2012年8月6日
(86)【国際出願番号】JP2012070014
(87)【国際公開番号】WO2013021975
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2015年3月3日
(31)【優先権主張番号】特願2011-175421(P2011-175421)
(32)【優先日】2011年8月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-178526(P2011-178526)
(32)【優先日】2011年8月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 誠
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−191212(JP,A)
【文献】 特表2010−527892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 − 14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準のモル%表示で、SiOを55〜80%、Alを3〜16%、NOを5〜16%、KOを0〜15%、MgOを0〜15%、ZnOを0〜5%、RO(但し、Rは、Sr、Ba、およびCaから選ばれる少なくとも1種である)を0〜1%、ZrOを0〜5%、Feを0.001〜3%、TiOを0.001〜3%含有し、さらに着色成分としてMpOq(但し、Mは、Co、Cu、V、Cr、Pr、Ce、Bi、Eu、Mn、Er、Ni、Nd、W、Rb、Sn、およびAgから選ばれる少なくとも1種であり、pとqはMとOの原子比である)を0.001〜10%含有し、かつBを含有しない化学強化用ガラスであって、
下式で求められる透過率劣化度ΔTが5%以下であることを特徴とする化学強化用ガラス。
ΔT(%)=[(T0−T1)/T0]×100
(ここで、T1は、両面を鏡面光学研磨した肉厚2mmのガラスの研磨面に離間距離15cmで400W高圧水銀ランプの光を50時間照射した後の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率であり、T0は、前記照射前の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率である)
【請求項2】
酸化物基準のモル%表示で、SiOを55〜80%、Alを0〜5%、NOを5〜20%、KOを0〜8%、CaOを1〜15%、ZnOを0〜5%、RO(但し、Rは、Sr、Ba、およびMgから選ばれる少なくとも1種である)を0〜10%、ZrOを0〜5%、Feを0.001〜3%、TiOを0.001〜3%含有し、さらに着色成分としてMpOq(但し、Mは、Co、Cu、V、Cr、Pr、Ce、Bi、Eu、Mn、Er、Ni、Nd、W、Rb、Sn、およびAgから選ばれる少なくとも1種であり、pとqはMとOの原子比である)を0.001〜10%含有し、かつBを含有しない化学強化用ガラスであって、
下式で求められる透過率劣化度ΔTが5%以下であることを特徴とする化学強化用ガラス。
ΔT(%)=[(T0−T1)/T0]×100
(ここで、T1は、両面を鏡面光学研磨した肉厚2mmのガラスの研磨面に離間距離15cmで400W高圧水銀ランプの光を50時間照射した後の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率であり、T0は、前記照射前の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率である)
【請求項3】
前記着色成分として、Coを0〜3%、CuOを0〜8%含有し、これらの成分の合計含有率が0.01〜8%であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項4】
2mm厚みでC光源を用いて測定される透過色調が、CIE色度座標上の(x、y)値で、下記条件を満たすことを特徴とする請求項に記載の化学強化用ガラス。
0.00≦x≦0.32
0.00≦y≦0.40
【請求項5】
前記着色成分として、Vを0〜5%、Crを0〜5%、CuOを0〜8%、Pr11を0〜3%含有し、これらの成分の合計含有率が0.01〜8%であることを特徴とする請求項1または2に記載の化学強化用ガラス。
【請求項6】
2mm厚みでC光源を用いて測定される透過色調が、CIE色度座標上の(x、y)値で、下記条件を満たすことを特徴とする請求項に記載の化学強化用ガラス。
0.00≦x≦0.42
0.31≦y≦0.78
【請求項7】
前記着色成分として、CeOを0〜3%、Vを0〜5%、Biを0〜10%、Euを0〜3%含有し、これらの成分の合計含有率が0.01〜10%であることを特徴とする請求項1または2に記載の化学強化用ガラス。
【請求項8】
2mm厚みでC光源を用いて測定される透過色調が、CIE色度座標上の(x、y)値で、下記条件を満たすことを特徴とする請求項に記載の化学強化用ガラス。
0.31≦x≦0.66
0.31≦y≦0.58
【請求項9】
前記着色成分として、MnOを0〜10%、Erを0〜3%、NiOを0〜5%、Ndを0〜3%、WOを0〜10%含有し、これらの成分の合計含有率が0.01〜10%であることを特徴とする請求項1または2に記載の化学強化用ガラス。
【請求項10】
2mm厚みでC光源を用いて測定される透過色調が、CIE色度座標上の(x、y)値で、下記条件を満たすことを特徴とする請求項に記載の化学強化用ガラス。
0.26≦x≦0.50
0.04≦y≦0.34
【請求項11】
SnOを0〜3%、Sbを0〜5%、さらに含有するとともに、前記着色成分として、CuOを0〜3%、AgOを0〜6%含有し、SnOおよびSbの合計含有率が0.01〜5%であり、CuOおよびAgOの合計含有率が0.001〜6%であることを特徴とする請求項1または2に記載の化学強化用ガラス。
【請求項12】
2mm厚みでC光源を用いて測定される透過色調が、CIE色度座標上の(x、y)値で、下記条件を満たすことを特徴とする請求項11に記載の化学強化用ガラス。
0.31≦x≦0.73
0.20≦y≦0.35
【請求項13】
ガラス表面に化学強化処理により形成された厚み30μm以上、表面圧縮応力550MPa以上の圧縮応力層を備えた化学強化ガラスを形成するために用いられるガラスであることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の化学強化用ガラスを化学強化処理して得られた化学強化ガラスを含むことを特徴とするガラス筺体。
【請求項15】
前記化学強化ガラスは、0.5mm以上の厚みを有することを特徴とする請求項14に記載のガラス筺体。
【請求項16】
前記化学強化ガラスは、表面に化学強化処理によって形成された深さ30μm以上、表面圧縮応力550MPa以上の圧縮応力層を備えることを特徴とする請求項14または15に記載のガラス筺体。
【請求項17】
電子機器の外装に用いられるガラス筺体であることを特徴とする請求項14乃至16のいずれか1項に記載のガラス筺体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、例えば携帯して使用可能な通信機器や情報機器等の筺体等に使用される化学強化用ガラス、およびそのような化学強化用ガラスを用いたガラス筺体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等の携帯して使用可能な通信機器や情報機器の筺体の材料には、意匠性、耐傷性、加工性、コスト等を考慮して、樹脂または金属が主に使用されてきた。そして、最近では、このような樹脂や金属に加え、これまで使用されてこなかったガラスを筺体材料として使用することが試みられている(例えば、特許文献1参照。)。ガラスを使用することで、透明感のある独特の装飾効果を付与できると考えられる。
【0003】
しかしながら、一般にガラスは脆弱であり、一方、携帯電話等の電子機器に使用される筺体は、その使用形態から、使用時の落下衝撃による破損や長期間の使用による接触傷等にも十分耐え得る高い強度が要求される。このため、携帯電話等の電子機器の筺体に使用可能な高い強度を持ったガラスが求められている。
【0004】
ガラスの強度を高める技術は、種々知られている。その代表的な方法が、軟化点付近まで加熱したガラス板表面を風冷等により急冷することにより、表面に圧縮応力層を形成させる方法(風冷強化法/物理強化法)と、ガラス転移点以下の温度でイオン交換により、ガラス板表面のイオン半径が小さいアルカリ金属イオン(典型的には、Liイオン、Naイオン)をイオン半径のより大きいアルカリ金属イオン(典型的には、Liイオンに対してはNaイオンまたはKイオン、Naイオンに対してはKイオン)に交換することにより、ガラスの表面に圧縮応力層を形成する方法(化学強化法)である。いずれも、ガラスの表面に圧縮応力層を形成させることで、強度を向上させるものである。
【0005】
これらの方法のうち、前者の風冷強化法は、上記筺体用ガラスのようにガラスの厚みが薄い(通常、3mm以下)と、表面と内部の温度差がつきにくいために圧縮応力層を形成することは困難である。しかも、冷却温度のばらつきにより、薄いガラス板の場合、平面性が損なわれるおそれがある。これに対し、後者の化学強化法は、薄いガラス板であっても表面に圧縮応力層を形成させることができ、平面性が損なわれることもない。したがって、上記筺体に用いるガラスは化学強化法によって強化可能な材料であることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本特開2009−61730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
携帯電話等の電子機器の筺体は高い意匠性が求められるため、ガラス自体を着色して用いる、つまり、着色剤を含有したガラスを用いることが考えられる。
ところが、このような着色剤を含有したガラスに上述した化学強化法を適用して強化しようとすると、着色剤を含有しないガラスを化学強化した場合と比較して、化学強化しにくい、つまり、着色剤を含有した化学強化ガラスの強度は、着色剤を含有しない化学強化ガラスに比べて相対的に低くなることが確認された。その要因としては、イオン交換によりイオン半径の大きいアルカリ金属イオンと置換されるイオン半径の小さいアルカリ金属イオンのガラス中の含有量が、着色剤を含有させたことにより、相対的に少なくなり、イオン交換される量が減ることや、着色イオンの存在により、アルカリ金属イオンの移動が阻害されること等が考えられる。
【0008】
また、ガラスの着色は、遷移金属を特定の価数状態でガラス中に存在させることで、所望の発色を呈させるものである。しかしながら、ガラスを筺体等に長期間使用すると、紫外線等の影響により遷移金属の価数状態が変わってガラスの色が変化する、いわゆるソラリゼーションが生ずることがある。したがって、筺体に用いる着色ガラスは、当初の着色状態を長く維持し、色の変化により意匠性が損なわれないことが望まれる。
本発明は、強度が高く、かつ長期間の使用によっても色変化の少ない、耐ソラリゼーション性の高いガラスが得られる化学強化用ガラス、およびそのような化学強化用ガラスを用いた筺体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、酸化物基準のモル%表示で、少なくとも、SiOを55〜80%、NaOを5〜20%、Feを0.001〜3%、TiOを0.001〜3%含有し、さらに着色成分としてMpOq(但し、ここにおいて、Mは、Co、Cu、V、Cr、Pr、Ce、Bi、Eu、Mn、Er、Ni、Nd、W、Rb、Sn、およびAgから選ばれる少なくとも1種であり、pとqはMとOの原子比である)を0.001〜10%含有することを特徴とする化学強化用ガラス(以下、このガラスを本発明の化学強化用ガラスということがある)を提供する。
【0010】
また、本発明は、酸化物基準のモル%表示で、SiOを55〜80%、Alを3〜16%、Bを0〜12%、NaOを5〜16%、KOを0〜5%、MgOを0〜15%、ZnOを0〜5%、RO(但し、Rは、Sr、Ba、およびCaから選ばれる少なくとも1種である)を0〜1%、ZrOを0〜5%、Feを0.001〜3%、TiOを0.001〜3%含有し、さらに着色成分としてMpOq(但し、Mは、Co、Cu、V、Cr、Pr、Ce、Bi、Eu、Mn、Er、Ni、Nd、W、Rb、Sn、およびAgから選ばれる少なくとも1種であり、pとqはMとOの原子比である)を0.001〜10%含有する化学強化用ガラス(以下、本発明の化学強化用ガラス1ということがある)を提供する。
また、本発明は、酸化物基準のモル%表示で、SiOを55〜80%、Alを3〜16%、Bを0〜12%、NaOを5〜16%、KOを0〜15%、MgOを0〜15%、ZnOを0〜5%、RO(但し、Rは、Sr、Ba、およびCaから選ばれる少なくとも1種である)を0〜1%、ZrOを0〜5%、Feを0.001〜3%、TiOを0.001〜3%含有し、さらに着色成分としてMpOq(但し、Mは、Co、Cu、V、Cr、Pr、Ce、Bi、Eu、Mn、Er、Ni、Nd、W、Rb、Sn、およびAgから選ばれる少なくとも1種であり、pとqはMとOの原子比である)を0.001〜10%含有する化学強化用ガラス(以下、本発明の化学強化用ガラス2ということがある)を提供する。
【0011】
また、本発明は、酸化物基準のモル%表示で、SiOを55〜80%、Alを0〜5%、Bを0〜12%、NaOを5〜20%、KOを0〜8%、CaOを1〜15%、ZnOを0〜5%、RO(但し、Rは、Sr、Ba、およびMgから選ばれる少なくとも1種である)を0〜10%、ZrOを0〜5%、Feを0.001〜3%、TiOを0.001〜3%含有し、さらに着色成分としてMpOq(但し、Mは、Co、Cu、V、Cr、Pr、Ce、Bi、Eu、Mn、Er、Ni、Nd、W、Rb、Sn、およびAgから選ばれる少なくとも1種であり、pとqはMとOの原子比である)を0.001〜10%含有する化学強化用ガラス(以下、このガラスを本発明の化学強化用ガラス3ということがある)を提供する。
【0012】
また、本発明の化学強化用ガラス1〜3のいずれかであって、着色成分として、Coを0〜3%、CuOを0〜8%含有し、これらの成分の合計含有率が0.01〜8%であるものを提供する。
この化学強化用ガラスにおいて、2mm厚みでC光源を用いて測定される透過色調が、CIE色度座標上の(x、y)値で、下記条件を満たすものであってもよい。
0.00≦x≦0.32
0.00≦y≦0.40
【0013】
また、本発明の化学強化用ガラス1〜3のいずれかであって、着色成分として、Vを0〜5%、Crを0〜5%、CuOを0〜8%、Pr11を0〜3%含有し、これらの成分の合計含有率が0.01〜8%であるものを提供する。
この化学強化用ガラスにおいて、2mm厚みでC光源を用いて測定される透過色調が、CIE色度座標上の(x、y)値で、下記条件を満たすものであってもよい。
0.00≦x≦0.42
0.31≦y≦0.78
【0014】
また、本発明の化学強化用ガラス1〜3のいずれかであって、着色成分として、CeOを0〜3%、Vを0〜5%、Biを0〜10%、Euを0〜3%含有し、これらの成分の合計含有率が0.01〜10%であるものを提供する。
この化学強化用ガラスにおいて、2mm厚みでC光源を用いて測定される透過色調が、CIE色度座標上の(x、y)値で、下記条件を満たすものであってもよい。
0.31≦x≦0.66
0.31≦y≦0.58
【0015】
また、本発明の化学強化用ガラス1〜3のいずれかであって、着色成分として、MnOを0〜10%、Erを0〜3%、NiOを0〜5%、Ndを0〜3%、WOを0〜10%含有し、これらの成分の合計含有率が0.01〜10%であるものを提供する。
この化学強化用ガラスにおいて、2mm厚みでC光源を用いて測定される透過色調が、CIE色度座標上の(x、y)値で、下記条件を満たすものであってもよい。
0.26≦x≦0.50
0.04≦y≦0.34
【0016】
また、本発明の化学強化用ガラス1〜3のいずれかであって、SnOを0〜3%、Sbを0〜5%、さらに含有するとともに、前記着色成分として、CuOを0〜3%、AgOを0〜6%含有し、SnOおよびSbの合計含有率が0.01〜5%であり、CuOおよびAgOの合計含有率が0.001〜6%であるものを提供する。
この化学強化用ガラスにおいて、所望の条件で熱処理した後の2mm厚みでC光源を用いて測定される透過色調が、CIE色度座標上の(x、y)値で、下記条件を満たすものであってもよい。
0.31≦x≦0.73
0.20≦y≦0.35
【0017】
また、本発明の化学強化用ガラスであって、下式で求められる透過率劣化度ΔTが5%以下であるものを提供する。
ΔT(%)=[(T0−T1)/T0]×100
(ここで、T1は、両面を鏡面光学研磨した肉厚2mmのガラスの研磨面に離間距離15cmで400W高圧水銀ランプの光を50時間照射した後の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率であり、T0は、前記照射前の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率である)
【0018】
また、本発明の化学強化用ガラスであって、ガラス表面に化学強化処理により形成された厚み30μm以上、表面圧縮応力550MPa以上の圧縮応力層を備えた化学強化ガラスを形成するために用いられるガラスを提供する。
【0019】
また、本発明の化学強化用ガラスを化学強化処理して得られた化学強化ガラスを含むガラス筺体(本発明のガラス筺体ということがある)を提供する。
【0020】
また、本発明のガラス筺体であって、化学強化ガラスは、0.5mm以上の厚みを有するものを提供する。
【0021】
また、本発明のガラス筺体であって、化学強化ガラスは、表面に化学強化処理によって形成された厚み30μm以上、表面圧縮応力550MPa以上の圧縮応力層を備えるものを提供する。
【0022】
また、本発明のガラス筺体であって、電子機器の外装に用いられるガラス筺体であるものを提供する。
上記した数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含む意味で使用され、特段の定めがない限り、以下本明細書において「〜」は、同様の意味をもって使用される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、強度が高く、かつ長期間の使用によっても色変化の少ない、耐ソラリゼーション性の高いガラスが得られる化学強化用ガラス、また、そのような化学強化用ガラスからなる筺体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(a)および(b)はそれぞれ本発明の一実施例および一比較例のガラスについて測定された分光透過率曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0026】
(第1の実施形態)
まず、本発明に係る化学強化用ガラス1の第1の実施形態に係る化学強化用ガラスについて説明する。なお、本実施形態およびこれ以降に説明する実施形態においては、ガラス組成の説明は、特に断らない限り、下記酸化物換算のモル%表示含有量を用いて行う。以下、「モル%」を、単に「%」とも表記する。
第1の実施形態の化学強化用ガラスは、SiO、Al、NaO、Fe、TiO、および着色成分であるMpOq(但し、Mは、Co、Cu、V、Cr、Pr、Ce、Bi、Eu、Mn、Er、Ni、Nd、W、Rb、Sn、およびAgから選ばれる少なくとも1種であり、pとqはMとOの原子比である)を必須成分として含有するものである。
この第1の実施形態に係る化学強化用ガラスの組成は以下の通りである。
SiO:55〜80%、
Al:3〜16%、
NaO:5〜16%、
Fe:0.001〜3%、
TiO:0.001〜3%
MpOq:0.001〜10% (但し、Mは、Co、Cu、V、Cr、Pr、Ce、Bi、Eu、Mn、Er、Ni、Nd、W、およびAgから選ばれる少なくとも1種であり、pとqはMとOの原子比である。)、
:0〜12%、
O:0〜5%、
MgO:0〜15%、
ZnO:0〜5%、
ZrO:0〜5%、
RO:0〜1%(但し、Rは、Sr、Ba、およびCaから選ばれる少なくとも1種である。)。
【0027】
本実施形態の化学強化用ガラスの必須成分であるSiOは、ガラスの骨格を構成する成分である。含有量が55%未満ではガラスとしての安定性が低下するか、または耐候性が低下する。したがって、55%以上含有させる。好ましくは58%以上であり、より好ましくは60%以上である。また、含有量が80%超ではガラスの粘性が増大し溶融性が低下する。したがって、含有量は80%以下とする。好ましくは78%以下であり、より好ましくは75%以下である。
【0028】
Alは、ガラスの耐候性を向上させる成分である。含有量が3%未満では耐候性が低下する。したがって、3%以上含有させる。好ましくは4%以上であり、より好ましくは5%以上である。また、含有量が16%超ではガラスの粘性が高くなり均質な溶融が困難になる。したがって、含有量は16%以下とする。好ましくは14%以下であり、より好ましくは12%以下である。
【0029】
NaOは、ガラスの溶融性を向上させる成分であるとともに、イオン交換によりガラス表面に圧縮応力層を形成させるために必要な成分でもある。含有量が5%未満では溶融性が低下し、またイオン交換によりガラス表面に所望の圧縮応力層を形成することが困難になる。したがって、5%以上含有させる。好ましくは6%以上であり、より好ましくは8%以上である。また、含有量が16%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は16%以下とする。好ましくは15%以下であり、より好ましくは14%以下である。
【0030】
Feは、ガラス中のイオンの移動を容易にしてイオン交換を促進させる成分である。含有量が0.001%未満ではイオン交換促進効果が得られない。したがって、0.001%以上含有させる。好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.03%以上である。また、含有量が3%超ではガラスが不安定となり、失透が発生しやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。
【0031】
なお、Feの添加によりイオン交換が促進されるのは、ガラス中に4配位のFe3+が存在することで、ガラス中の非架橋酸素が架橋酸素になり、その結果、負の電荷密度が低くなって、Naイオンが動きやすくなることによると考えられる。
【0032】
FeはFeイオンの価数状態によってはガラスに黄または緑の色を与える。Fe2+の場合には緑〜青緑、Fe3+の場合には黄となる。本発明の大きな特徴である化学強化の促進にはFe3+の状態であることが好ましく、酸化性で溶融することが望ましいが、通常、ガラス中ではFe2+とFe3+は共存しており、全てがFe3+の状態にはなり得ない。したがって、Feの含有量が多い場合には少量存在するFe2+の色が出ることがあり、この場合、緑の呈色を示すため、Feを前述した緑の着色剤と併用することも可能である。Fe3+による黄の呈色は薄いが、同様の考え方でFeを前述した黄色の着色剤と併用することも可能である。
【0033】
TiOは、ガラスの耐ソラリゼーション性を高めるとともに、他の有色イオンによる着色を高める効果がある成分である。含有量が0.001%未満では耐ソラリゼーション性を向上させることができない。したがって、0.001%以上含有させる。好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.02%以上である。また、含有量が3%超ではガラスの結晶化傾向を促進し、失透が発生しやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。
【0034】
着色成分のMpOq(但し、Mは、Co、Cu、V、Cr、Pr、Ce、Bi、Eu、Mn、Er、Ni、Nd、W、Rb、Sn、およびAgから選ばれる少なくとも1種であり、pとqはMとOの原子比である)は、ガラスを所望の色に着色するための成分であり、着色成分を適宜選択することにより、例えば、青色系、緑色系、黄色系、紫〜桃色系、赤色系等の着色ガラスを得ることができる。
【0035】
具体的には、例えば、CoおよびCuOから選ばれる少なくとも1種の使用で、青色系の着色ガラスを得ることができる。V、Cr、CuOおよびPr11から選ばれる少なくとも1種の使用で、緑色系の着色ガラスを得ることができる。CeO、V、BiおよびEuから選ばれる少なくとも1種の使用で、黄色系の着色ガラスを得ることができる。MnO、Er、NiO、NdおよびWOから選ばれる少なくとも1種の使用で、紫〜桃色系の着色ガラスを得ることができる。
また、CuOおよびAgOから選ばれる少なくとも1種の使用で、赤色系の着色ガラスを得ることができる。
【0036】
上記したMpOqの着色成分の含有量が0.001%未満ではガラスの着色が極めて薄くなるため、ガラスを厚くしなければ有色として認識できず、着色筐体として意匠性を持たせるためには肉厚をかなり厚く設計する必要が生じることになる。したがって、0.001%以上含有させる。好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.1%以上である。また、含有量が10%超ではガラスが不安定となる。したがって、含有量は10%以下とする。好ましくは8%以下であり、より好ましくは5%以下である。
【0037】
本実施形態の化学強化用ガラスには、必要に応じて、B、KO、MgO、ZnO、RO(但し、RはSr、BaおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、およびZrOを含有させることができる。
【0038】
を含有させることにより、耐候性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.5%以上であり、特に好ましくは2%以上である。また、含有量が12%超では揮散による脈理が発生し、歩留まりが低下する。したがって、含有量は12%以下とする。好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下である。
【0039】
Oを含有させることにより、溶融性を向上させることができるとともに、化学強化におけるイオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないか、またはイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が5%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4.5%以下であり、より好ましくは4%以下である。
【0040】
MgOを含有させることにより、溶融性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が15%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は15%以下とする。好ましくは14%以下であり、より好ましくは12%以下である。
【0041】
ZnOを含有させることにより、耐候性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.3%以上である。また、含有量が5%超ではガラスが不安定となる。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。
【0042】
RO(但し、RはSr、BaおよびCaから選ばれる少なくとも1種)を含有させることにより、溶融性を向上させることができる。しかしその反面、化学強化特性を悪化させるおそれがあるため、添加は必要最小限度に留めるべきであり、その含有量は合量で1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。
【0043】
ZrOを含有させることにより、イオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.01%未満ではイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.05%以上であり、特に好ましくは0.1%以上である。また、含有量が5%超では溶融性が低下して未溶融物としてガラス中に残存するおそれがある。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。
【0044】
本実施形態の化学強化用ガラスには、さらに、必要に応じて、SO、SnO、Sbを含有させることができる。
【0045】
SOは、清澄剤として作用する成分である。但し、含有量が0.01%未満では所期の清澄作用が得られないおそれがある。したがって、SOを含有させる場合、0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.03%以上であり、特に好ましくは0.05%以上である。また、含有量が1%超では逆に泡の発生源となり、ガラスの溶け落ちが遅くなったり、泡個数が増加するおそれがある。したがって、含有量は1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.8%以下であり、特に好ましくは0.6%以下である。
【0046】
SnOは、赤色系に着色させる場合、後工程の熱処理においてCuOあるいはAgOを還元し、CuまたはAgコロイドを析出させるいわゆる熱還元剤としての作用を有する。但し、含有量が0.05%未満では所期の熱還元剤としての作用が得られないおそれがある。したがって、SnOを含有させる場合、0.05%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.1%以上であり、特に好ましくは0.2%以上である。また、含有量が3%超ではガラスが不安定となり、失透しやすくなるおそれがある。したがって、含有量は3%以下とすることが好ましい。より好ましくは2.8%以下であり、特に好ましくは2.5%以下である。
【0047】
Sbは、赤色系に着色させる場合、SnOと同様に熱還元剤としての作用を有する。但し、含有量が0.05%未満では所期の熱還元剤としての作用が得られないおそれがある。したがって、Sbを含有させる場合、0.05%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.1%以上であり、特に好ましくは0.2%以上である。また、含有量が5%超ではガラスが不安定となり、失透しやすくなるおそれがある。したがって、含有量は5%以下とすることが好ましい。より好ましくは3%以下であり、特に好ましくは1%以下である。Sbは、環境負荷物質であるため、熱還元剤としてはSnOを使用することが好ましい。
なお、本発明に係る化学強化用ガラス1の第1の実施形態に係る化学強化用ガラスについて上述したが、本発明に係る化学強化用ガラス2の第1の実施形態に係る化学強化用ガラスについても、KOの含有割合が0〜15%である点を除き、化学強化用ガラス1の第1の実施形態に係る化学強化用ガラスと同様である。なお、KOを含有させることにより、溶融性を向上させることができるとともに、化学強化におけるイオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないか、またはイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が15%超では、ガラス表面に圧痕が付いた時に圧痕からクラックが発生しやすくなり、ガラスの強度が低下する。したがって、含有量は15%以下とする。好ましくは12%以下であり、より好ましくは10%以下である。
【0048】
本実施形態の化学強化用ガラスは、特にFeおよびTiOを含有させたことによって、優れた耐ソラリゼーション性を備えることができるとともに、化学強化処理を施すことによって、表面に十分な深さと表面圧縮応力を有する圧縮応力層を形成することができ、着色された高い強度の化学強化ガラスを得ることができる。得られた化学強化ガラスは、電子機器の外装を構成するガラス筺体の材料として有用である。
【0049】
なお、本実施形態の化学強化用ガラスの製造方法は特に限定されず、例えば、種々の原料を適量調合し、約1500〜1600℃に加熱し溶融した後、脱泡、撹拌等により均質化し、周知のダウンドロー法、プレス法等によって板状に、またはキャストしてブロック状に成形し、徐冷後所望のサイズに切断、必要に応じ研磨加工を施して製造される。
【0050】
また、本実施形態の化学強化用ガラスを化学強化する方法は、ガラス表層のNaOと溶融塩中のKOとをイオン交換できる方法であれば特に限定されず、例えば、400〜550℃に加熱された硝酸カリウム(KNO)溶融塩にガラス板、またはガラス成形品を2〜20時間浸漬する方法等が用いられる。
【0051】
本実施形態の化学強化用ガラスは、下式で求められる透過率劣化度ΔTが5%以下であることが好ましい。より好ましくは4%以下である。
ΔT(%)=[(T0−T1)/T0]×100
(ここで、T1は、両面を鏡面光学研磨した肉厚2mmの化学強化用ガラスの研磨面に離間距離15cmで400W高圧水銀ランプの光を50時間照射した後の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率であり、T0は、光照射前の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率である)
この透過率劣化度は、化学強化用ガラスの耐ソラリゼーション性を評価する指標である。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る化学強化用ガラスについて説明する。
第2の実施形態の化学強化用ガラスは、青色系に着色されるガラスであり、例えば、CIE色度座標上の(x、y)値で、0.00≦x≦0.32、0.00≦y≦0.40を満たす色調のガラスを得ることができる。
【0053】
本発明に係る化学強化用ガラス1の第2の実施形態の化学強化用ガラスは、SiO、Al、NaO、Fe、TiO、ならびに着色成分としてCoおよび/またはCuO(すなわち、CoおよびCuOからなる群から選ばれる少なくとも1種)を必須成分として含有するものである。
この第2の実施形態に係る化学強化用ガラスの組成は以下の通りである。
SiO:55〜80%、
Al:3〜16%、
NaO:5〜16%、Bを0〜12%、
Fe:0.001〜3%、
TiO:0.001〜3%、
Co:0〜3%、
CuO:0〜8%、
(Co+CuO):0.01〜8%、
:0〜12%、
O:0〜5%、
MgO:0〜15%、
ZnO:0〜5%、
ZrO:0〜5%、
RO:0〜1%(但し、Rは、Sr、Ba、およびCaから選ばれる少なくとも1種である。)。
【0054】
本実施形態の化学強化用ガラスの必須成分であるSiOは、ガラスの骨格を構成する成分である。含有量が55%未満ではガラスとしての安定性が低下するか、または耐候性が低下する。したがって、55%以上含有させる。好ましくは58%以上であり、より好ましくは60%以上である。また、含有量が80%超ではガラスの粘性が増大し溶融性が低下する。したがって、含有量は80%以下とする。好ましくは78%以下であり、より好ましくは75%以下である。
【0055】
Alは、ガラスの耐候性を向上させる成分である。含有量が3%未満では耐候性が低下する。したがって、3%以上含有させる。好ましくは4%以上であり、より好ましくは5%以上である。また、含有量が16%超ではガラスの粘性が高くなり均質な溶融が困難になる。したがって、含有量は16%以下とする。好ましくは14%以下であり、より好ましくは12%以下である。
【0056】
NaOは、ガラスの溶融性を向上させる成分であるとともに、イオン交換によりガラス表面に圧縮応力層を形成させるために必要な成分でもある。含有量が5%未満では溶融性が低下し、またイオン交換によりガラス表面に所望の圧縮応力層を形成することが困難になる。したがって、5%以上含有させる。好ましくは6%以上であり、より好ましくは8%以上である。また、含有量が16%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は16%以下とする。好ましくは15%以下であり、より好ましくは14%以下である。
【0057】
Feは、ガラス中のイオンの移動を容易にしてイオン交換を促進させる成分である。含有量が0.001%未満ではイオン交換促進効果が得られない。したがって、0.001%以上含有させる。好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.03%以上である。また、含有量が3%超ではガラスが不安定となり、失透が発生しやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。
【0058】
なお、Feの添加によりイオン交換が促進されるのは、ガラス中に4配位のFe3+が存在することで、ガラス中の非架橋酸素が架橋酸素になり、その結果、負の電荷密度が低くなって、Naイオンが動きやすくなることによると考えられる。
【0059】
TiOは、ガラスの耐ソラリゼーション性を高めるとともに他の有色イオンによる着色を高める効果がある成分である。含有量が0.001%未満では耐ソラリゼーション性を向上させることができない。したがって、0.001%以上含有させる。好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.02%以上である。また、含有量が3%超ではガラスの結晶化傾向を促進し、失透が発生しやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。
【0060】
着色成分として含まれる、CoおよびCuOからなる群から選ばれる少なくとも1種は、ガラスを青色系の色に着色するために必須の成分である。Co、またはCuO、またはCoおよびCuOの合計の含有量が0.01%未満では所望とする青色のガラスが得られない。したがって、0.01%以上含有させる。好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.1%以上である。また、含有量が8%超ではガラスが不安定となる。したがって、含有量は8%以下とする。好ましくは7%以下であり、より好ましくは6%以下である。
【0061】
但し、Coの含有量が3%超では着色が濃くなりすぎ、意匠性が低下する。したがって、Coの含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。また、CuOの含有量が8%超では着色が濃くなりすぎるとともにガラスが不安定となる。したがって、CuOの含有量は8%以下とする。好ましくは7%以下であり、より好ましくは5%以下である。
【0062】
なお、本実施形態においては、青色系の着色を損なわない範囲であれば、上記着色成分以外の着色成分のMpOq(但し、ここにおいては、Mは、V、Cr、Pr、Ce、Bi、Eu、Mn、Er、Ni、Nd、W、Rb、Sn、およびAgから選ばれる少なくとも1種であり、pとqはMとOの原子比である)から選ばれる少なくとも1種を含有させてもよい。その場合、上記着色成分との合計含有率が10%を超えないようにすることが好ましい。含有量が10%を超えるとガラスが不安定になる。好ましくは9%以下であり、より好ましくは8%以下である。
【0063】
本実施形態の化学強化用ガラスには、必要に応じて、B、KO、MgO、ZnO、RO(但し、RはSr、BaおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、およびZrOを含有させることができる。
【0064】
を含有させることにより、耐候性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.5%以上であり、特に好ましくは2%以上である。また、含有量が12%超では揮散による脈理が発生し、歩留まりが低下する。したがって、含有量は12%以下とする。好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下である。
【0065】
Oを含有させることにより、溶融性を向上させることができるとともに、化学強化におけるイオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないか、またはイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が5%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4.5%以下であり、より好ましくは4%以下である。
【0066】
MgOを含有させることにより、溶融性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が15%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は15%以下とする。好ましくは14%以下であり、より好ましくは12%以下である。
【0067】
ZnOを含有させることにより、耐候性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.3%以上である。また、含有量が5%超ではガラスが不安定となる。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。
【0068】
RO(但し、RはSr、BaおよびCaから選ばれる少なくとも1種)を含有させることにより、溶融性を向上させることができる。しかしその反面、化学強化特性を悪化させるおそれがあるため、添加は必要最小限度に留めるべきであり、その含有量は合量で1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。
【0069】
ZrOを含有させることにより、イオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.01%未満ではイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.05%以上であり、特に好ましくは0.1%以上である。また、含有量が5%超では溶融性が低下して未溶融物としてガラス中に残存するおそれがある。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。
【0070】
本実施形態の化学強化用ガラスには、さらに、必要に応じて、SOを含有させることができる。
【0071】
SOは、清澄剤として作用する成分である。但し、含有量が0.01%未満では所期の清澄作用が得られないおそれがある。したがって、SOを含有させる場合、0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.03%以上であり、特に好ましくは0.05%以上である。また、含有量が1%超では逆に泡の発生源となり、ガラスの溶け落ちが遅くなったり、泡個数が増加するおそれがある。したがって、含有量は1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.8%以下であり、特に好ましくは0.6%以下である。
【0072】
なお、本発明に係る化学強化用ガラス1の第2の実施形態に係る化学強化用ガラスについて上述したが、本発明に係る化学強化用ガラス2の第2の実施形態に係る化学強化用ガラスについても、KOの含有割合が0〜15%である点を除き、化学強化用ガラス1の第2の実施形態に係る化学強化用ガラスと同様である。なお、KOを含有させることにより、溶融性を向上させることができるとともに、化学強化におけるイオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないか、またはイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が15%超では、ガラス表面に圧痕が付いた時に圧痕からクラックが発生しやすくなり、ガラスの強度が低下する。したがって、含有量は15%以下とする。好ましくは12%以下であり、より好ましくは10%以下である。
本実施形態の化学強化用ガラスは、特にFeおよびTiOを含有させたことによって、優れた耐ソラリゼーション性を備えることができるとともに、化学強化処理を施すことによって、表面に十分な深さと表面圧縮応力を有する圧縮応力層を形成することができ、青色系に着色された高い強度の化学強化ガラスを得ることができる。
【0073】
なお、本実施形態の化学強化用ガラスの製造方法は特に限定されず、例えば、種々の原料を適量調合し、約1500〜1600℃に加熱し溶融した後、脱泡、攪拌等により均質化し、周知のダウンドロー法、プレス法等によって板状に、またはキャストしてブロック状に成形し、徐冷後所望のサイズに切断、必要に応じ研磨加工を施して製造される。
【0074】
また、本実施形態の化学強化用ガラスを化学強化する方法は、ガラス表層のNaOと溶融塩中のKOとをイオン交換できる方法であれば特に限定されず、例えば、400〜550℃に加熱された硝酸カリウム(KNO)溶融塩にガラス板、またはガラス成形品を2〜20時間浸漬する方法等が用いられる。
【0075】
本実施形態の化学強化用ガラスは、下式で求められる透過率劣化度ΔTが5%以下であることが好ましい。より好ましくは4%以下である。
ΔT(%)=[(T0−T1)/T0]×100
(ここで、T1は、両面を鏡面光学研磨した肉厚2mmの化学強化用ガラスの研磨面に離間距離15cmで400W高圧水銀ランプの光を50時間照射した後の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率であり、T0は、光照射前の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率である)
【0076】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る化学強化用ガラスについて説明する。
第3の実施形態の化学強化用ガラスは、緑色系に着色されるガラスであり、例えば、CIE色度座標上の(x、y)値で、0.00≦x≦0.42、0.31≦y≦0.78を満たす色調のガラスを得ることができる。
【0077】
本発明に係る化学強化用ガラス1の第3の実施形態の化学強化用ガラスは、SiO、Al、NaO、Fe、TiO、ならびに着色成分としてV、Cr、CuOおよびPr11から選ばれる少なくとも1種を必須成分として含有するものである。
この第3の実施形態に係る化学強化用ガラスの組成は以下の通りである。
SiO:55〜80%、
Al:3〜16%、
NaO:5〜16%、Bを0〜12%、
Fe:0.001〜3%、
TiO:0.001〜3%、
:0〜5%、
Cr:0〜5%、
CuO:0〜8%、
Pr11:0〜3%、
(V+Cr+CuO+Pr11):0.01〜8%、
:0〜12%、
O:0〜5%、
MgO:0〜15%、
ZnO:0〜5%、
ZrO:0〜5%、
RO:0〜1%(但し、Rは、Sr、Ba、およびCaから選ばれる少なくとも1種である。)。
【0078】
本実施形態の化学強化用ガラスの必須成分であるSiOは、ガラスの骨格を構成する成分である。含有量が55%未満ではガラスとしての安定性が低下するか、または耐候性が低下する。したがって、55%以上含有させる。好ましくは58%以上であり、より好ましくは60%以上である。また、含有量が80%超ではガラスの粘性が増大し溶融性が低下する。したがって、含有量は80%以下とする。好ましくは78%以下であり、より好ましくは75%以下である。
【0079】
Alは、ガラスの耐候性を向上させる成分である。含有量が3%未満では耐候性が低下する。したがって、3%以上含有させる。好ましくは4%以上であり、より好ましくは5%以上である。また、含有量が16%超ではガラスの粘性が高くなり均質な溶融が困難になる。したがって、含有量は16%以下とする。好ましくは14%以下であり、より好ましくは12%以下である。
【0080】
NaOは、ガラスの溶融性を向上させる成分であるとともに、イオン交換によりガラス表面に圧縮応力層を形成させるために必要な成分でもある。含有量が5%未満では溶融性が低下し、またイオン交換によりガラス表面に所望の圧縮応力層を形成することが困難になる。したがって、5%以上含有させる。好ましくは6%以上であり、より好ましくは8%以上である。また、含有量が16%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は16%以下とする。好ましくは15%以下であり、より好ましくは14%以下である。
【0081】
Feは、ガラス中のイオンの移動を容易にしてイオン交換を促進させる成分である。含有量が0.001%未満ではイオン交換促進効果が得られない。したがって、0.001%以上含有させる。好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.03%以上である。また、含有量が3%超ではガラスが不安定となり、失透が発生しやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。
なお、Feの添加によりイオン交換が促進されるのは、ガラス中に4配位のFe3+が存在することで、ガラス中の非架橋酸素が架橋酸素になり、その結果、負の電荷密度が低くなって、Naイオンが動きやすくなることによると考えられる。
【0082】
FeはFeイオンの価数状態によってはガラスに黄または緑の色を与える。Fe2+の場合には緑〜青緑、Fe3+の場合には黄となる。本発明の大きな特徴である化学強化の促進にはFe3+の状態であることが好ましく、酸化性で溶融することが望ましいが、通常、ガラス中ではFe2+とFe3+は共存しており、全てがFe3+の状態にはなり得ない。したがって、Feの含有量が多い場合には少量存在するFe2+の色が出ることがあり、この場合、緑の呈色を示すため、Feを前述した緑の着色剤と併用することも可能である。
【0083】
TiOは、ガラスの耐ソラリゼーション性を高めるとともに他の有色イオンによる着色を高める効果がある成分である。含有量が0.001%未満では耐ソラリゼーション性を向上させることができない。したがって、0.001%以上含有させる。好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.02%以上である。また、含有量が3%超ではガラスの結晶化傾向を促進し、失透が発生しやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。
【0084】
着色成分として含まれる、V、Cr、CuOおよびPr11から選ばれる少なくとも1種は、ガラスを緑色系の色に着色するために必須の成分である。この着色成分の含有量が0.01%未満では所望とする緑色のガラスが得られない。したがって、0.01%以上含有させる。好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.1%以上である。また、含有量が8%超ではガラスの着色が濃くなりすぎて色の違いがわかりにくくなる。したがって、含有量は8%以下とする。好ましくは7%以下であり、より好ましくは5%以下である。
【0085】
但し、Vの含有量が5%超では色が濃くなりすぎる。したがって、Vの含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。なお、Vイオンは3価の状態で緑色を呈するため、還元性で溶融することが望ましい。Crの含有量が5%超では色が濃くなりすぎる。したがって、Crの含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。CuOの含有量が8%超ではガラスが不安定となる。したがって、CuOの含有量は8%以下とする。好ましくは7%以下であり、より好ましくは5%以下である。Pr11の含有量が3%超では高価な材料であるため、原料費が高くなる。したがって、Pr11の含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。
【0086】
なお、本実施形態においては、緑色系の着色を損なわない範囲であれば、上記着色成分以外の着色成分のMpOq(但し、ここにおいては、Mは、Co、Ce、Bi、Eu、Mn、Er、Ni、Nd、W、Rb、Sn、およびAgから選ばれる少なくとも1種であり、pとqはMとOの原子比である)から選ばれる少なくとも1種を含有させてもよい。その場合、上記着色成分との合計含有率が10%を超えないようにすることが好ましい。含有量が10%を超えるとガラスが不安定になる。好ましくは9%以下であり、より好ましくは8%以下である。
【0087】
本実施形態の化学強化用ガラスには、必要に応じて、B、KO、MgO、ZnO、RO(但し、RはSr、BaおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、およびZrOを含有させることができる。
【0088】
を含有させることにより、耐候性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.5%以上であり、特に好ましくは2%以上である。また、含有量が12%超では揮散による脈理が発生し、歩留まりが低下する。したがって、含有量は12%以下とする。好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下である。
【0089】
Oを含有させることにより、溶融性を向上させることができるとともに、化学強化におけるイオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないか、またはイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が5%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4.5%以下であり、より好ましくは4%以下である。
【0090】
MgOを含有させることにより、溶融性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が15%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は15%以下とする。好ましくは14%以下であり、より好ましくは12%以下である。
【0091】
ZnOを含有させることにより、耐候性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.3%以上である。また、含有量が5%超ではガラスが不安定となる。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。
【0092】
RO(但し、RはSr、BaおよびCaから選ばれる少なくとも1種)を含有させることにより、溶融性を向上させることができる。しかしその反面、化学強化特性を悪化させるおそれがあるため、添加は必要最小限度に留めるべきであり、その含有量は合量で1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。
【0093】
ZrOを含有させることにより、イオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.01%未満ではイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.05%以上であり、特に好ましくは0.1%以上である。また、含有量が5%超では溶融性が低下して未溶融物としてガラス中に残存するおそれがある。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。
【0094】
本実施形態の化学強化用ガラスには、さらに、必要に応じて、SOを含有させることができる。
【0095】
SOは、清澄剤として作用する成分である。但し、含有量が0.01%未満では所期の清澄作用が得られないおそれがある。したがって、SOを含有させる場合、0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.03%以上であり、特に好ましくは0.05%以上である。また、含有量が1%超では逆に泡の発生源となり、ガラスの溶け落ちが遅くなったり、泡個数が増加するおそれがある。したがって、含有量は1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.8%以下であり、特に好ましくは0.6%以下である。
【0096】
本実施形態の化学強化用ガラスは、特にFeおよびTiOを含有させたことによって、優れた耐ソラリゼーション性を備えることができるとともに、化学強化処理を施すことによって、表面に十分な深さと表面圧縮応力を有する圧縮応力層を形成することができ、緑色系に着色された高い強度の化学強化ガラスを得ることができる。
なお、本発明に係る化学強化用ガラス1の第3の実施形態に係る化学強化用ガラスについて上述したが、本発明に係る化学強化用ガラス2の第3の実施形態に係る化学強化用ガラスについても、KOの含有割合が0〜15%である点を除き、化学強化用ガラス1の第3の実施形態に係る化学強化用ガラスと同様である。なお、KOを含有させることにより、溶融性を向上させることができるとともに、化学強化におけるイオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないか、またはイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が15%超では、ガラス表面に圧痕が付いた時に圧痕からクラックが発生しやすくなり、ガラスの強度が低下する。したがって、含有量は15%以下とする。好ましくは12%以下であり、より好ましくは10%以下である。
【0097】
なお、本実施形態の化学強化用ガラスの製造方法は特に限定されず、例えば、種々の原料を適量調合し、約1500〜1600℃に加熱し溶融した後、脱泡、攪拌等により均質化し、周知のダウンドロー法、プレス法等によって板状に、またはキャストしてブロック状に成形し、徐冷後所望のサイズに切断、必要に応じ研磨加工を施して製造される。
【0098】
また、本実施形態の化学強化用ガラスを化学強化する方法は、ガラス表層のNaOと溶融塩中のKOとをイオン交換できる方法であれば特に限定されず、例えば、400〜550℃に加熱された硝酸カリウム(KNO)溶融塩にガラス板、またはガラス成形品を2〜20時間浸漬する方法等が用いられる。
【0099】
本実施形態の化学強化用ガラスは、下式で求められる透過率劣化度ΔTが5%以下であることが好ましい。より好ましくは4%以下である。
ΔT(%)=[(T0−T1)/T0]×100
(ここで、T1は、両面を鏡面光学研磨した肉厚2mmの化学強化用ガラスの研磨面に離間距離15cmで400W高圧水銀ランプの光を50時間照射した後の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率であり、T0は、光照射前の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率である)
【0100】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る化学強化用ガラスについて説明する。
第4の実施形態の化学強化用ガラスは、黄色系に着色されるガラスであり、例えば、CIE色度座標上の(x、y)値で、0.31≦x≦0.66、0.31≦y≦0.58を満たす色調のガラスを得ることができる。
【0101】
本発明に係る化学強化用ガラス1の第4の実施形態の化学強化用ガラスは、SiO、Al、NaO、Fe、TiO、ならびに着色成分としてCeO、V、BiおよびEuから選ばれる少なくとも1種を必須成分として含有するものである。
この第4の実施形態に係る化学強化用ガラスの組成は以下の通りである。
SiO:55〜80%、
Al:3〜16%、
NaO:5〜16%、Bを0〜12%、
Fe:0.001〜3%、
TiO:0.001〜3%、
CeO:0〜3%、
:0〜5%、
Bi:0〜10%、
Eu:0〜3%、
(CeO+V+Bi+Eu):0.01〜10%、
:0〜12%、
O:0〜5%、
MgO:0〜15%、
ZnO:0〜5%、
ZrO:0〜5%、
RO:0〜1%(但し、Rは、Sr、Ba、およびCaから選ばれる少なくとも1種である。)。
【0102】
本実施形態の化学強化用ガラスの必須成分であるSiOは、ガラスの骨格を構成する成分である。含有量が55%未満ではガラスとしての安定性が低下するか、または耐候性が低下する。したがって、55%以上含有させる。好ましくは58%以上であり、より好ましくは60%以上である。また、含有量が80%超ではガラスの粘性が増大し溶融性が低下する。したがって、含有量は80%以下とする。好ましくは78%以下であり、より好ましくは75%以下である。
【0103】
Alは、ガラスの耐候性を向上させる成分である。含有量が3%未満では耐候性が低下する。したがって、3%以上含有させる。好ましくは4%以上であり、より好ましくは5%以上である。また、含有量が16%超ではガラスの粘性が高くなり均質な溶融が困難になる。したがって、含有量は16%以下とする。好ましくは14%以下であり、より好ましくは12%以下である。
【0104】
NaOは、ガラスの溶融性を向上させる成分であるとともに、イオン交換によりガラス表面に圧縮応力層を形成させるために必要な成分でもある。含有量が5%未満では溶融性が低下し、またイオン交換によりガラス表面に所望の圧縮応力層を形成することが困難になる。したがって、5%以上含有させる。好ましくは6%以上であり、より好ましくは8%以上である。また、含有量が16%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は16%以下とする。好ましくは15%以下であり、より好ましくは14%以下である。
【0105】
Feは、ガラス中のイオンの移動を容易にしてイオン交換を促進させる成分である。含有量が0.001%未満ではイオン交換促進効果が得られない。したがって、0.001%以上含有させる。好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.03%以上である。また、含有量が3%超ではガラスが不安定となり、失透が発生しやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。
【0106】
なお、Feの添加によりイオン交換が促進されるのは、ガラス中に4配位のFe3+が存在することで、ガラス中の非架橋酸素が架橋酸素になり、その結果、負の電荷密度が低くなって、Naイオンが動きやすくなることによると考えられる。
【0107】
FeはFeイオンの価数状態によってはガラスに黄または緑の色を与える。Fe2+の場合には緑〜青緑、Fe3+の場合には黄となる。本発明の大きな特徴である化学強化の促進にはFe3+の状態であることが好ましく、酸化性で溶融することが望ましいが、通常、ガラス中ではFe2+とFe3+は共存しており、全てがFe3+の状態にはなり得ない。Fe3+による黄の呈色は薄いが、Feを前述した黄色の着色剤と併用することも可能である。
【0108】
TiOは、ガラスの耐ソラリゼーション性を高めるとともに他の有色イオンによる着色を高める効果がある成分である。含有量が0.001%未満では耐ソラリゼーション性を向上させることができない。したがって、0.001%以上含有させる。好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.02%以上である。また、含有量が3%超ではガラスの結晶化傾向を促進し、失透が発生しやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。
【0109】
着色成分として含まれる、CeO、V、BiおよびEuから選ばれる少なくとも1種は、ガラスを黄色系の色に着色するために必須の成分である。この着色成分の含有量が0.01%未満では所望とする黄色のガラスが得られない。したがって、0.01%以上含有させる。好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.1%以上である。また、含有量が10%超ではガラスが不安定となる。したがって、含有量は10%以下とする。好ましくは8%以下であり、より好ましくは6%以下である。
【0110】
但し、CeOの含有量が3%超ではガラスが不安定となる。したがって、CeOの含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。なお、Ceイオンは4価で黄色を呈するため、4価の状態で添加し、酸化性で溶融することが好ましい。Vの含有量が5%超ではガラスが不安定となる。したがって、Vの含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。Vイオンは5価で黄色を呈するため、酸化性で溶融することが望ましい。Biの含有量が10%超では溶融時に金属ビスマスのコロイドが析出し、所望の黄色を呈することが難しくなる。したがって、Biの含有量は10%以下とする。好ましくは8%以下であり、より好ましくは5%以下である。Euの含有量が3%超では原料費が高くなる。したがって、Euの含有量は3%以下とする。好ましくは2.5%以下であり、より好ましくは2%以下である。なお、Euを使用する場合には、還元側での溶融が好ましい。
【0111】
なお、本実施形態においては、黄色系の着色を損なわない範囲であれば、上記着色成分以外の着色成分のMpOq(但し、ここにおいては、Mは、Co、Cu、Cr、Pr、Mn、Er、Ni、Nd、W、Rb、Sn、およびAgから選ばれる少なくとも1種であり、pとqはMとOの原子比である)から選ばれる少なくとも1種を含有させてもよい。その場合、上記着色成分との合計含有率が10%を超えないようにすることが好ましい。含有量が10%を超えるとガラスが不安定になる。好ましくは9%以下であり、より好ましくは8%以下である。
【0112】
本実施形態の化学強化用ガラスには、必要に応じて、B、KO、MgO、ZnO、RO(但し、RはSr、BaおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、およびZrOを含有させることができる。
【0113】
を含有させることにより、耐候性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.5%以上であり、特に好ましくは2%以上である。また、含有量が12%超では揮散による脈理が発生し、歩留まりが低下する。したがって、含有量は12%以下とする。好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下である。
【0114】
Oを含有させることにより、溶融性を向上させることができるとともに、化学強化におけるイオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないか、またはイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が5%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4.5%以下であり、より好ましくは4%以下である。
【0115】
MgOを含有させることにより、溶融性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が15%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は15%以下とする。好ましくは14%以下であり、より好ましくは12%以下である。
【0116】
ZnOを含有させることにより、耐候性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.3%以上である。また、含有量が5%超ではガラスが不安定となる。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。
【0117】
RO(但し、RはSr、BaおよびCaから選ばれる少なくとも1種)を含有させることにより、溶融性を向上させることができる。しかしその反面、化学強化特性を悪化させるおそれがあるため、添加は必要最小限度に留めるべきであり、その含有量は合量で1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。
【0118】
ZrOを含有させることにより、イオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.01%未満ではイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.05%以上であり、特に好ましくは0.1%以上である。また、含有量が5%超では溶融性が低下して未溶融物としてガラス中に残存するおそれがある。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。
【0119】
本実施形態の化学強化用ガラスには、さらに、必要に応じて、SOを含有させることができる。
【0120】
SOは、清澄剤として作用する成分である。但し、含有量が0.01%未満では所期の清澄作用が得られないおそれがある。したがって、SOを含有させる場合、0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.03%以上であり、特に好ましくは0.05%以上である。また、含有量が1%超では逆に泡の発生源となり、ガラスの溶け落ちが遅くなったり、泡個数が増加するおそれがある。したがって、含有量は1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.8%以下であり、特に好ましくは0.6%以下である。
【0121】
本実施形態の化学強化用ガラスは、特にFeおよびTiOを含有させたことによって、優れた耐ソラリゼーション性を備えることができるとともに、化学強化処理を施すことによって、表面に十分な深さと表面圧縮応力を有する圧縮応力層を形成することができ、黄色系に着色された高い強度の化学強化ガラスを得ることができる。
なお、本発明に係る化学強化用ガラス1の第4の実施形態に係る化学強化用ガラスについて上述したが、本発明に係る化学強化用ガラス2の第4の実施形態に係る化学強化用ガラスについても、KOの含有割合が0〜15%である点を除き、化学強化用ガラス1の第4の実施形態に係る化学強化用ガラスと同様である。なお、KOを含有させることにより、溶融性を向上させることができるとともに、化学強化におけるイオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないか、またはイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が15%超では、ガラス表面に圧痕が付いた時に圧痕からクラックが発生しやすくなり、ガラスの強度が低下する。したがって、含有量は15%以下とする。好ましくは12%以下であり、より好ましくは10%以下である。
【0122】
なお、本実施形態の化学強化用ガラスの製造方法は特に限定されず、例えば、種々の原料を適量調合し、約1500〜1600℃に加熱し溶融した後、脱泡、攪拌等により均質化し、周知のダウンドロー法、プレス法等によって板状に、またはキャストしてブロック状に成形し、徐冷後所望のサイズに切断、必要に応じ研磨加工を施して製造される。
【0123】
また、本実施形態の化学強化用ガラスを化学強化する方法は、ガラス表層のNaOと溶融塩中のKOとをイオン交換できる方法であれば特に限定されず、例えば、400〜550℃に加熱された硝酸カリウム(KNO)溶融塩にガラス板、またはガラス成形品を2〜20時間浸漬する方法等が用いられる。
【0124】
本実施形態の化学強化用ガラスは、下式で求められる透過率劣化度ΔTが5%以下であることが好ましい。より好ましくは4%以下である。
ΔT(%)=[(T0−T1)/T0]×100
(ここで、T1は、両面を鏡面光学研磨した肉厚2mmの化学強化用ガラスの研磨面に離間距離15cmで400W高圧水銀ランプの光を50時間照射した後の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率であり、T0は、光照射前の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率である)
【0125】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態に係る化学強化用ガラスについて説明する。
第5の実施形態の化学強化用ガラスは、紫乃至桃色系に着色されるガラスであり、例えば、CIE色度座標上の(x、y)値で、0.26≦x≦0.50、0.04≦y≦0.34を満たす色調のガラスを得ることができる。
【0126】
本発明に係る化学強化用ガラス1の第5の実施形態の化学強化用ガラスは、SiO、Al、NaO、Fe、TiO、ならびに着色成分としてMnO、Er、NiO、NdおよびWOから選ばれる少なくとも1種を必須成分として含有するものである。
この第5の実施形態に係る化学強化用ガラスの組成は以下の通りである。
SiO:55〜80%、
Al:3〜16%、
NaO:5〜16%、Bを0〜12%、
Fe:0.001〜3%、
TiO:0.001〜3%、
MnO:0〜10%、
Er:0〜3%、
NiO:0〜5%、
Nd:0〜3%、
WO:0〜10%、
(MnO+Er+NiO+Nd+WO):0.01〜10%、
:0〜12%、
O:0〜5%、
MgO:0〜15%、
ZnO:0〜5%、
ZrO:0〜5%、
RO:0〜1%(但し、Rは、Sr、Ba、およびCaから選ばれる少なくとも1種である。)。
【0127】
本実施形態の化学強化用ガラスの必須成分であるSiOは、ガラスの骨格を構成する成分である。含有量が55%未満ではガラスとしての安定性が低下するか、または耐候性が低下する。したがって、55%以上含有させる。好ましくは58%以上であり、より好ましくは60%以上である。また、含有量が80%超ではガラスの粘性が増大し溶融性が低下する。したがって、含有量は80%以下とする。好ましくは78%以下であり、より好ましくは75%以下である。
【0128】
Alは、ガラスの耐候性を向上させる成分である。含有量が3%未満では耐候性が低下する。したがって、3%以上含有させる。好ましくは4%以上であり、より好ましくは5%以上である。また、含有量が16%超ではガラスの粘性が高くなり均質な溶融が困難になる。したがって、含有量は16%以下とする。好ましくは14%以下であり、より好ましくは12%以下である。
【0129】
NaOは、ガラスの溶融性を向上させる成分であるとともに、イオン交換によりガラス表面に圧縮応力層を形成させるために必要な成分でもある。含有量が5%未満では溶融性が低下し、またイオン交換によりガラス表面に所望の圧縮応力層を形成することが困難になる。したがって、5%以上含有させる。好ましくは6%以上であり、より好ましくは8%以上である。また、含有量が16%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は16%以下とする。好ましくは15%以下であり、より好ましくは14%以下である。
【0130】
Feは、ガラス中のイオンの移動を容易にしてイオン交換を促進させる成分である。含有量が0.001%未満ではイオン交換促進効果が得られない。したがって、0.001%以上含有させる。好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.03%以上である。また、含有量が3%超ではガラスが不安定となり、失透が発生しやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。
【0131】
なお、Feの添加によりイオン交換が促進されるのは、ガラス中に4配位のFe3+が存在することで、ガラス中の非架橋酸素が架橋酸素になり、その結果、負の電荷密度が低くなって、Naイオンが動きやすくなることによると考えられる。
【0132】
TiOは、ガラスの耐ソラリゼーション性を高めるとともに他の有色イオンによる着色を高める効果がある成分である。含有量が0.001%未満では耐ソラリゼーション性を向上させることができない。したがって、0.001%以上含有させる。好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.02%以上である。また、含有量が3%超ではガラスの結晶化傾向を促進し、失透が発生しやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。
【0133】
着色成分として含まれる、MnO、Er、NiO、NdおよびWOから選ばれる少なくとも1種は、ガラスを紫乃至桃色系の色に着色するために必須の成分である。この着色成分の含有量が0.01%未満では所望とする紫乃至桃色のガラスが得られない。したがって、0.01%以上含有させる。好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.1%以上である。また、含有量が10%超では色が濃くなりすぎる。したがって、含有量は10%以下とする。好ましくは8%以下であり、より好ましくは6%以下である。
【0134】
但し、MnOの含有量が10%超では色が濃くなりすぎる。したがって、MnOの含有量は10%以下とする。好ましくは8%以下であり、より好ましくは6%以下である。Erの含有量が3%超では原料費が高くなりすぎる。したがって、Erの含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。NiOの含有量が5%超では色が濃くなりすぎる。したがって、NiOの含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。Ndの含有量が3%超では原料費が高くなる。したがって、Ndの含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。WOの含有量が10%超ではガラスが不安定となる。したがって、WOの含有量は10%以下とする。好ましくは8%以下であり、より好ましくは5%以下である。
【0135】
なお、本実施形態においては、紫乃至桃色系の着色を損なわない範囲であれば、上記着色成分以外の着色成分のMpOq(但し、ここにおいて、Mは、Co、Cu、V、Cr、Pr、Ce、Bi、Eu、Rb、Sn、およびAgから選ばれる少なくとも1種であり、pとqはMとOの原子比である)から選ばれる少なくとも1種を含有させてもよい。その場合、上記着色成分との合計含有率が10%を超えないようにすることが好ましい。含有量が10%を超えるとガラスが不安定になる。好ましくは9%以下であり、より好ましくは8%以下である。
【0136】
本実施形態の化学強化用ガラスには、必要に応じて、B、KO、MgO、ZnO、RO(但し、RはSr、BaおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、およびZrOを含有させることができる。
【0137】
を含有させることにより、耐候性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.5%以上であり、特に好ましくは2%以上である。また、含有量が12%超では揮散による脈理が発生し、歩留まりが低下する。したがって、含有量は12%以下とする。好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下である。
【0138】
Oを含有させることにより、溶融性を向上させることができるとともに、化学強化におけるイオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないか、またはイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が5%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4.5%以下であり、より好ましくは4%以下である。
【0139】
MgOを含有させることにより、溶融性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が15%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は15%以下とする。好ましくは14%以下であり、より好ましくは12%以下である。
【0140】
ZnOを含有させることにより、耐候性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.3%以上である。また、含有量が5%超ではガラスが不安定となる。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。
【0141】
RO(但し、RはSr、BaおよびCaから選ばれる少なくとも1種)を含有させることにより、溶融性を向上させることができる。しかしその反面、化学強化特性を悪化させるおそれがあるため、添加は必要最小限度に留めるべきであり、その含有量は合量で1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。
【0142】
ZrOを含有させることにより、イオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.01%未満ではイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.05%以上であり、特に好ましくは0.1%以上である。また、含有量が5%超では溶融性が低下して未溶融物としてガラス中に残存するおそれがある。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。
【0143】
本実施形態の化学強化用ガラスには、さらに、必要に応じて、SOを含有させることができる。
【0144】
SOは、清澄剤として作用する成分である。但し、含有量が0.01%未満では所期の清澄作用が得られないおそれがある。したがって、SOを含有させる場合、0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.03%以上であり、特に好ましくは0.05%以上である。また、含有量が1%超では逆に泡の発生源となり、ガラスの溶け落ちが遅くなったり、泡個数が増加するおそれがある。したがって、含有量は1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.8%以下であり、特に好ましくは0.6%以下である。
【0145】
本実施形態の化学強化用ガラスは、特にFeおよびTiOを含有させたことによって、優れた耐ソラリゼーション性を備えることができるとともに、化学強化処理を施すことによって、表面に十分な深さと表面圧縮応力を有する圧縮応力層を形成することができ、紫乃至桃色系に着色された高い強度の化学強化ガラスを得ることができる。
なお、本発明に係る化学強化用ガラス1の第5の実施形態に係る化学強化用ガラスについて上述したが、本発明に係る化学強化用ガラス2の第5の実施形態に係る化学強化用ガラスについても、KOの含有割合が0〜15%である点を除き、化学強化用ガラス1の第5の実施形態に係る化学強化用ガラスと同様である。なお、KOを含有させることにより、溶融性を向上させることができるとともに、化学強化におけるイオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないか、またはイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が15%超では、ガラス表面に圧痕が付いた時に圧痕からクラックが発生しやすくなり、ガラスの強度が低下する。したがって、含有量は15%以下とする。好ましくは12%以下であり、より好ましくは10%以下である。
【0146】
なお、本実施形態の化学強化用ガラスの製造方法は特に限定されず、例えば、種々の原料を適量調合し、約1500〜1600℃に加熱し溶融した後、脱泡、攪拌等により均質化し、周知のダウンドロー法、プレス法等によって板状に、またはキャストしてブロック状に成形し、徐冷後所望のサイズに切断、必要に応じ研磨加工を施して製造される。
【0147】
また、本実施形態の化学強化用ガラスを化学強化する方法は、ガラス表層のNaOと溶融塩中のKOとをイオン交換できる方法であれば特に限定されず、例えば、400〜550℃に加熱された硝酸カリウム(KNO)溶融塩にガラス板、またはガラス成形品を2〜20時間浸漬する方法等が用いられる。
【0148】
本実施形態の化学強化用ガラスは、下式で求められる透過率劣化度ΔTが5%以下であることが好ましい。より好ましくは4%以下である。
ΔT(%)=[(T0−T1)/T0]×100
(ここで、T1は、両面を鏡面光学研磨した肉厚2mmの化学強化用ガラスの研磨面に離間距離15cmで400W高圧水銀ランプの光を50時間照射した後の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率であり、T0は、光照射前の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率である。)
【0149】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態に係る化学強化用ガラスについて説明する。
第6の実施形態の化学強化用ガラスは、赤色系に着色されるガラスであり、例えば、CIE色度座標上の(x、y)値で、0.31≦x≦0.73、0.20≦y≦0.35を満たす色調のガラスを得ることができる。なお、本発明の第6の実施形態に係る化学強化用ガラスは、コロイドを析出することで赤色系に着色されるガラスであるため、前記色調は、所望の条件で熱処理を行い赤色が発現したガラスに対するものである。
【0150】
本発明に係る化学強化用ガラス1の第6の実施形態の化学強化用ガラスは、SiO、Al、NaO、Fe、TiOを必須成分として含有し、さらに着色成分として、CuOおよび/またはAgO(すなわち、CuOおよびAgOからなる群から選ばれる少なくとも1種)と、SnOおよび/またはSb(すなわち、SnOおよびSbからなる群から選ばれる少なくとも1種と)を必須成分として含有するものである。
この第6の実施形態に係る化学強化用ガラスの組成は以下の通りである。
SiO:55〜80%、
Al:3〜16%、
NaO:5〜16%、Bを0〜12%、
Fe:0.001〜3%、
TiO:0.001〜3%、
CuO:0〜3%、
AgO:0〜6%、
(CuO+AgO):0.01〜6%、
SnO:0〜3%、
Sb:0〜5%、
(SnO+Sb):0.01〜5%、
:0〜12%、
O:0〜5%、
MgO:0〜15%、
ZnO:0〜5%、
ZrO:0〜5%、
RO:0〜1%(但し、Rは、Sr、Ba、およびCaから選ばれる少なくとも1種である。)。
【0151】
本実施形態の化学強化用ガラスの必須成分であるSiOは、ガラスの骨格を構成する成分である。含有量が55%未満ではガラスとしての安定性が低下するか、または耐候性が低下する。したがって、55%以上含有させる。好ましくは58%以上であり、より好ましくは60%以上である。また、含有量が80%超ではガラスの粘性が増大し溶融性が低下する。したがって、含有量は80%以下とする。好ましくは78%以下であり、より好ましくは75%以下である。
【0152】
Alは、ガラスの耐候性を向上させる成分である。含有量が3%未満では耐候性が低下する。したがって、3%以上含有させる。好ましくは4%以上であり、より好ましくは5%以上である。また、含有量が16%超ではガラスの粘性が高くなり均質な溶融が困難になる。したがって、含有量は16%以下とする。好ましくは14%以下であり、より好ましくは12%以下である。
【0153】
NaOは、ガラスの溶融性を向上させる成分であるとともに、イオン交換によりガラス表面に圧縮応力層を形成させる成分でもある。含有量が5%未満では溶融性が低下し、またイオン交換によりガラス表面に所望の圧縮応力層を形成することが困難になる。したがって、5%以上含有させる。好ましくは6%以上であり、より好ましくは8%以上である。また、含有量が16%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は16%以下とする。好ましくは15%以下であり、より好ましくは14%以下である。
【0154】
Feは、ガラス中のイオンの移動を容易にしてイオン交換を促進させる成分である。含有量が0.001%未満ではイオン交換促進効果が得られない。したがって、0.001%以上含有させる。好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.03%以上である。また、含有量が3%超ではガラスが不安定となり、失透が発生しやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。
【0155】
なお、Feの添加によりイオン交換が促進されるのは、ガラス中に4配位のFe3+が存在することで、ガラス中の非架橋酸素が架橋酸素になり、その結果、負の電荷密度が低くなって、Naイオンが動きやすくなることによると考えられる。
【0156】
TiOは、ガラスの耐ソラリゼーション性を高めるとともに他の有色イオンによる着色を高める効果がある成分である。含有量が0.001%未満では耐ソラリゼーション性を向上させることができない。したがって、0.001%以上含有させる。好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.02%以上である。また、含有量が3%超ではガラスの結晶化傾向を促進し、失透が発生しやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。
【0157】
着色成分としてのCuOおよび/またはAgOは、ガラスを赤色系の色に着色するために必須の成分である。この着色成分の含有量が0.001%未満では所望とする赤色のガラスが得られない。したがって、0.001%以上含有させる。好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.2%以上である。また、含有量が6%超ではガラスが不安定となる。したがって、含有量は6%以下とする。好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下である。
【0158】
但し、CuOの含有量が3%超では安定な着色が得られなくなる。したがって、CuOの含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。また、AgOの含有量が6%超ではガラスが不安定となる。したがって、AgOの含有量は6%以下とする。好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下である。
【0159】
SnOおよび/またはSbは、後工程の熱処理において着色成分であるCuOあるいはAgOを還元し、CuまたはAgコロイドを析出させるいわゆる熱還元剤として作用する成分である。両者の合計含有量が、0.01%未満では、所期の熱還元剤としての作用が得られないおそれがある。したがって、両者の合計含有量は、0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.1%以上であり、特に好ましくは0.3%以上である。また、含有量が5%超ではガラスが不安定となり、失透しやすくなるおそれがある。したがって、含有量は5%以下とすることが好ましい。より好ましくは4%以下であり、特に好ましくは3%以下である。
【0160】
但し、SnOの含有量が0.05%未満では所期の熱還元剤としての作用が得られないおそれがある。したがって、SnOを含有させる場合、0.05%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.1%以上であり、特に好ましくは0.2%以上である。また、含有量が3%超ではガラスが不安定となり、失透しやすくなるおそれがある。したがって、含有量は3%以下とすることが好ましい。より好ましくは2.8%以下であり、特に好ましくは2.5%以下である。
【0161】
また、Sbの含有量が0.05%未満では所期の熱還元剤としての作用が得られないおそれがある。したがって、Sbを含有させる場合、0.05%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.1%以上であり、特に好ましくは0.2%以上である。また、含有量が5%超ではガラスが不安定となり、失透しやすくなるおそれがある。したがって、含有量は5%以下とすることが好ましい。より好ましくは3%以下であり、特に好ましくは1%以下である。なお、Sbは環境負荷物質であるため、熱還元剤としてはSnOの使用が好ましい。
【0162】
なお、本実施形態においては、赤色系の着色を損なわない範囲であれば、上記着色成分以外の着色成分のMpOq(但し、Mは、Co、V、Cr、Pr、Ce、Bi、Eu、Mn、Er、Ni、Nd、Rb、およびWから選ばれる少なくとも1種であり、pとqはMとOの原子比である)から選ばれる少なくとも1種を含有させてもよい。その場合、上記着色成分との合計含有率が10%を超えないようにすることが好ましい。含有量が10%を超えるとガラスが不安定になる。好ましくは9%以下であり、より好ましくは8%以下である。
【0163】
本実施形態の化学強化用ガラスには、必要に応じて、B、KO、MgO、ZnO、RO(但し、RはSr、BaおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、およびZrOを含有させることができる。
【0164】
を含有させることにより、耐候性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.5%以上であり、特に好ましくは2%以上である。また、含有量が12%超では揮散による脈理が発生し、歩留まりが低下する。したがって、含有量は12%以下とする。好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下である。
【0165】
Oを含有させることにより、溶融性を向上させることができるとともに、化学強化におけるイオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないか、またはイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が5%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4.5%以下であり、より好ましくは4%以下である。
【0166】
MgOを含有させることにより、溶融性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が15%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は15%以下とする。好ましくは14%以下であり、より好ましくは12%以下である。
【0167】
ZnOを含有させることにより、耐候性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.3%以上である。また、含有量が5%超ではガラスが不安定となる。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。
【0168】
RO(但し、RはSr、BaおよびCaから選ばれる少なくとも1種)を含有させることにより、溶融性を向上させることができる。しかしその反面、化学強化特性を悪化させるおそれがあるため、添加は必要最小限度に留めるべきであり、その含有量は合量で1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。
【0169】
ZrOを含有させることにより、イオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.01%未満ではイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.05%以上であり、特に好ましくは0.1%以上である。また、含有量が5%超では溶融性が低下して未溶融物としてガラス中に残存するおそれがある。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。
【0170】
本実施形態の化学強化用ガラスには、さらに、必要に応じて、SOを含有させることができる。
【0171】
SOは、清澄剤として作用する成分である。但し、含有量が0.01%未満では所期の清澄作用が得られないおそれがある。したがって、SOを含有させる場合、0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.03%以上であり、特に好ましくは0.05%以上である。また、含有量が1%超では逆に泡の発生源となり、ガラスの溶け落ちが遅くなったり、泡個数が増加するおそれがある。したがって、含有量は1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.8%以下であり、特に好ましくは0.6%以下である。
【0172】
本実施形態の化学強化用ガラスは、特にFeおよびTiOを含有させたことによって、優れた耐ソラリゼーション性を備えることができるとともに、化学強化処理を施すことによって、表面に十分な深さと表面圧縮応力を有する圧縮応力層を形成することができ、赤色系に着色された高い強度の化学強化ガラスを得ることができる。
【0173】
なお、本発明に係る化学強化用ガラス1の第6の実施形態に係る化学強化用ガラスについて上述したが、本発明に係る化学強化用ガラス2の第6の実施形態に係る化学強化用ガラスについても、KOの含有割合が0〜15%である点を除き、化学強化用ガラス1の第6の実施形態に係る化学強化用ガラスと同様である。なお、KOを含有させることにより、溶融性を向上させることができるとともに、化学強化におけるイオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないか、またはイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が15%超では、ガラス表面に圧痕が付いた時に圧痕からクラックが発生しやすくなり、ガラスの強度が低下する。したがって、含有量は15%以下とする。好ましくは12%以下であり、より好ましくは10%以下である。
なお、本実施形態の化学強化用ガラスの製造方法は特に限定されず、例えば、種々の原料を適量調合し、約1500〜1600℃に加熱し溶融した後、脱泡、攪拌等により均質化し、周知のダウンドロー法、プレス法等によって板状に、またはキャストしてブロック状に成形し、徐冷後所望のサイズに切断、必要に応じ研磨加工を施して製造される。
【0174】
また、本実施形態の化学強化用ガラスを化学強化する方法は、ガラス表層のNaOと溶融塩中のKOとをイオン交換できる方法であれば特に限定されず、例えば、400〜550℃に加熱された硝酸カリウム(KNO)溶融塩にガラス板、またはガラス成形品を2〜20時間浸漬する方法等が用いられる。
【0175】
本実施形態の化学強化用ガラスは、下式で求められる透過率劣化度ΔTが5%以下であることが好ましい。より好ましくは4%以下である。
ΔT(%)=[(T0−T1)/T0]×100
(ここで、T1は、両面を鏡面光学研磨した肉厚2mmの化学強化用ガラスの研磨面に離間距離15cmで400W高圧水銀ランプの光を50時間照射した後の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率であり、T0は、光照射前の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率である。)
【0176】
(第7の実施形態)
次に、本発明に係る化学強化用ガラス3の実施形態に係る化学強化用ガラスについて、第7の実施形態として説明する。
第7の実施形態の化学強化用ガラスは、SiO、NaO、CaO、Fe、TiO、および着色成分であるMpOq(但し、Mは、Co、Cu、V、Cr、Pr、Ce、Bi、Eu、Mn、Er、Ni、Nd、W、Rb、Sn、およびAgから選ばれる少なくとも1種であり、pとqはMとOの原子比である)を必須成分として含有するものである。
この第7の実施形態に係る化学強化用ガラスの組成は以下の通りである。
SiO:55〜80%、
NaO:5〜20%、
CaO:1〜15%、
Fe:0.001〜3%、
TiO:0.001〜3%
MpOq:0.001〜10% (但し、Mは、Co、Cu、V、Cr、Pr、Ce、Bi、Eu、Mn、Er、Ni、Nd、W、Rb、Sn、およびAgから選ばれる少なくとも1種であり、pとqはMとOの原子比である。)、
Al:0〜5%、
:0〜12%、
O:0〜8%、
ZnO:0〜5%、
ZrO:0〜5%、
RO:0〜10%(但し、Rは、Sr、Ba、およびMgから選ばれる少なくとも1種である。)。
【0177】
本実施形態の化学強化用ガラスの必須成分であるSiOは、ガラスの骨格を構成する成分である。含有量が55%未満ではガラスとしての安定性が低下するか、または耐候性が低下する。したがって、55%以上含有させる。好ましくは58%以上であり、より好ましくは60%以上である。また、含有量が80%超ではガラスの粘性が増大し溶融性が低下する。したがって、含有量は80%以下とする。好ましくは78%以下であり、より好ましくは75%以下である。
【0178】
NaOは、ガラスの溶融性を向上させる成分であるとともに、イオン交換によりガラス表面に圧縮応力層を形成させるために必要な成分でもある。含有量が5%未満では溶融性が低下し、またイオン交換によりガラス表面に所望の圧縮応力層を形成することが困難になる。したがって、5%以上含有させる。好ましくは6%以上であり、より好ましくは8%以上である。また、含有量が20%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は20%以下とする。好ましくは18%以下であり、より好ましくは16%以下である。
【0179】
Feは、ガラス中のイオンの移動を容易にしてイオン交換を促進させる成分である。含有量が0.001%未満ではイオン交換促進効果が得られない。したがって、0.001%以上含有させる。好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.03%以上である。また、含有量が3%超ではガラスが不安定となり、失透が発生しやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。
【0180】
なお、Feの添加によりイオン交換が促進されるのは、ガラス中に4配位のFe3+が存在することで、ガラス中の非架橋酸素が架橋酸素になり、その結果、負の電荷密度が低くなって、Naイオンが動きやすくなることによると考えられる。
【0181】
FeはFeイオンの価数状態によってはガラスに黄または緑の色を与える。Fe2+の場合には緑〜青緑、Fe3+の場合には黄となる。本発明の大きな特徴である化学強化の促進にはFe3+の状態であることが好ましく、酸化性で溶融することが望ましいが、通常、ガラス中ではFe2+とFe3+は共存しており、全てがFe3+の状態にはなり得ない。したがって、Feの含有量が多い場合には少量存在するFe2+の色が出ることがあり、この場合、緑の呈色を示すため、Feを前述した緑の着色剤と併用することも可能である。Fe3+による黄の呈色は薄いが、同様の考え方でFeを前述した黄色の着色剤と併用することも可能である。
【0182】
TiOは、ガラスの耐ソラリゼーション性を高めるとともに、他の有色イオンによる着色を高める効果がある成分である。含有量が0.001%未満では耐ソラリゼーション性を向上させることができない。したがって、0.001%以上含有させる。好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.02%以上である。また、含有量が3%超ではガラスの結晶化傾向を促進し、失透が発生しやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2.8%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。
【0183】
着色成分のMpOq(但し、Mは、Co、Cu、V、Cr、Pr、Ce、Bi、Eu、Mn、Er、Ni、Nd、W、Rb、Sn、およびAgから選ばれる少なくとも1種であり、pとqはMとOの原子比である)は、ガラスを所望の色に着色するための成分であり、上記した第7の実施形態の化学強化用ガラスに対し、着色成分を適宜選択することにより、例えば、青色系、緑色系、黄色系、紫〜桃色系、赤色系等の着色ガラスを得ることができる。
【0184】
具体的には、例えば、CoおよびCuOから選ばれる少なくとも1種の使用で、青色系の着色ガラスを得ることができる。V、Cr、CuOおよびPr11から選ばれる少なくとも1種の使用で、緑色系の着色ガラスを得ることができる。CeO、V、BiおよびEuから選ばれる少なくとも1種の使用で、黄色系の着色ガラスを得ることができる。MnO、Er、NiO、NdおよびWOから選ばれる少なくとも1種の使用で、紫〜桃色系の着色ガラスを得ることができる。CuOおよびAgOから選ばれる少なくとも1種の使用で、赤色系の着色ガラスを得ることができる。
【0185】
上記したMpOqの着色成分の含有量が0.001%未満ではガラスの着色が極めて薄くなるため、ガラスを厚くしなければ有色として認識できず、着色筐体として意匠性を持たせるためには肉厚をかなり厚く設計する必要が生じることになる。したがって、0.001%以上含有させる。好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.1%以上である。また、含有量が10%超ではガラスが不安定となる。したがって、含有量は10%以下とする。好ましくは8%以下であり、より好ましくは5%以下である。
【0186】
CaOを含有させることにより、溶融性を向上させることができる。但し、含有量が1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは3%以上であり、特に好ましくは4%以上である。また、含有量が15%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は15%以下とする。好ましくは14%以下であり、より好ましくは12%以下である。
【0187】
本実施形態の化学強化用ガラスには、必要に応じて、Al、B、KO、ZnO、RO(但し、RはSr、BaおよびMgから選ばれる少なくとも1種)、およびZrOを含有させることができる。
【0188】
Alを含有させることにより、耐候性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは0.8%以上である。また、含有量が5%超ではガラスの粘性が高くなり均質な溶融が困難になる。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。
【0189】
を含有させることにより、耐候性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.5%以上であり、特に好ましくは2%以上である。また、含有量が12%超では揮散による脈理が発生し、歩留まりが低下する。したがって、含有量は12%以下とする。好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下である。
【0190】
Oを含有させることにより、溶融性を向上させることができるとともに、化学強化におけるイオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないか、またはイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.5%以上である。また、含有量が8%超では耐候性が低下する。したがって、含有量は8%以下とする。好ましくは6%以下であり、より好ましくは4%以下である。
【0191】
ZnOを含有させることにより、耐候性を向上させることができる。但し、含有量が0.1%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上であり、特に好ましくは0.3%以上である。また、含有量が5%超ではガラスが不安定となる。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。
【0192】
RO(但し、RはSr、BaおよびMgから選ばれる少なくとも1種)を含有させることにより、溶融性を向上させることができる。しかしその反面、化学強化特性を悪化させるおそれがあるため、添加は必要最小限度に留めるべきであり、その含有量は合量で1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。
【0193】
ZrOを含有させることにより、イオン交換速度を大きくすることができる。但し、含有量が0.01%未満ではイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。したがって、0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.05%以上であり、特に好ましくは0.1%以上である。また、含有量が5%超では溶融性が低下して未溶融物としてガラス中に残存するおそれがある。したがって、含有量は5%以下とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。
【0194】
本実施形態の化学強化用ガラスには、さらに、必要に応じて、SO、SnO、Sbを含有させることができる。
【0195】
SOは、清澄剤として作用する成分である。但し、含有量が0.01%未満では所期の清澄作用が得られないおそれがある。したがって、SOを含有させる場合、0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.03%以上であり、特に好ましくは0.05%以上である。また、含有量が1%超では逆に泡の発生源となり、ガラスの溶け落ちが遅くなったり、泡個数が増加するおそれがある。したがって、含有量は1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.8%以下であり、特に好ましくは0.6%以下である。
【0196】
SnOは、赤色系に着色させる場合、後工程の熱処理においてCuOあるいはAgOを還元し、CuまたはAgコロイドを析出させるいわゆる熱還元剤としての作用を有する。但し、含有量が0.05%未満では所期の熱還元剤としての作用が得られないおそれがある。したがって、SnOを含有させる場合、0.05%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.1%以上であり、特に好ましくは0.2%以上である。また、含有量が3%超ではガラスが不安定となり、失透しやすくなるおそれがある。したがって、含有量は3%以下とすることが好ましい。より好ましくは2.8%以下であり、特に好ましくは2.5%以下である。
【0197】
Sbは、赤色系に着色させる場合、SnOと同様に熱還元剤としての作用を有する。但し、含有量が0.05%未満では所期の熱還元剤としての作用が得られないおそれがある。したがって、Sbを含有させる場合、0.05%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.1%以上であり、特に好ましくは0.2%以上である。また、含有量が5%超ではガラスが不安定となり、失透しやすくなるおそれがある。したがって、含有量は5%以下とすることが好ましい。より好ましくは3%以下であり、特に好ましくは1%以下である。
なお、Sbは、環境負荷物質であるため、熱還元剤としてはSnOを使用することが好ましい。
【0198】
本実施形態の化学強化用ガラスは、特にFeおよびTiOを含有させたことによって、優れた耐ソラリゼーション性を備えることができるとともに、化学強化処理を施すことによって、表面に十分な深さと表面圧縮応力を有する圧縮応力層を形成することができ、着色された高い強度の化学強化ガラスを得ることができる。得られた化学強化ガラスは、電子機器の外装を構成するガラス筺体の材料として有用である。
【0199】
なお、本実施形態の化学強化用ガラスの製造方法は特に限定されず、例えば、種々の原料を適量調合し、約1500〜1600℃に加熱し溶融した後、脱泡、撹拌等により均質化し、周知のダウンドロー法、プレス法等によって板状に、またはキャストしてブロック状に成形し、徐冷後所望のサイズに切断、必要に応じ研磨加工を施して製造される。
【0200】
また、本実施形態の化学強化用ガラスを化学強化する方法は、ガラス表層のNaOと溶融塩中のKOとをイオン交換できる方法であれば特に限定されず、例えば、400〜550℃に加熱された硝酸カリウム(KNO)溶融塩にガラス板、またはガラス成形品を2〜20時間浸漬する方法等が用いられる。
【0201】
本実施形態の化学強化用ガラスは、下式で求められる透過率劣化度ΔTが5%以下であることが好ましい。より好ましくは4%以下である。
ΔT(%)=[(T0−T1)/T0]×100
(ここで、T1は、両面を鏡面光学研磨した肉厚2mmの化学強化用ガラスの研磨面に離間距離15cmで400W高圧水銀ランプの光を50時間照射した後の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率であり、T0は、光照射前の分光透過率曲線における波長380nm〜780nmの平均透過率である)
この透過率劣化度は、化学強化用ガラスの耐ソラリゼーション性を評価する指標である。
【0202】
(ガラス筺体の実施形態)
次に、本発明のガラス筺体に係る実施形態について説明する。
本実施形態のガラス筺体は、携帯電話等の携帯して使用可能な電子機器の外装に用いられる筺体であり、前述の化学強化用ガラスを化学強化して得られた化学強化ガラスから構成される。
【0203】
化学強化用ガラスの化学強化は、例えば、400〜550℃に加熱された硝酸カリウム(KNO)溶融塩に2〜20時間ガラス板を浸漬することにより行われるが、特にこの方法に限定されるものではなく、ガラス表層のNaOと溶融塩中のKOとをイオン交換できる方法であればよい。
【0204】
このような化学強化処理を施すことによって、化学強化ガラス表面には圧縮応力層が形成されている。本実施形態において、圧縮応力層の深さは、30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましい。深さが30μm未満では携帯電話等の電子機器の筺体に要求される強度を具備できないおそれがある。但し、あまり圧縮応力層が深いと内部引張応力が大きくなり、破壊時の衝撃が大きくなる。すなわち、内部引張応力が大きいとガラスが破壊する際に細片となって粉々に飛散する傾向があり危険性が高まることがわかっている。発明者らによる実験の結果、厚み2mm以下のガラスでは、圧縮応力層の深さが70μmを超えると、破壊時の飛散が顕著となることが判明した。したがって、少なくとも化学強化ガラスの厚みが2mm以下の場合には、圧縮応力層の深さは70μm以下とすることが好ましい。より好ましくは60μm以下であり、特に好ましくは50μm以下である。なお、化学強化ガラスは表面が研磨されていてもよく、この場合には、研磨後において上記要件を満足していることが好ましい。
【0205】
ここで、圧縮応力層の深さとは、イオン交換されたアルカリ金属イオン(カリウムイオンもしくはナトリウムイオン)がガラスに拡散した深さをいい、例えば、光弾性解析法を利用した表面応力計を用いて測定することができる。
【0206】
また、圧縮応力層は、表面圧縮応力が550MPa以上であることが好ましく、700MPa以上であることがより好ましい。表面圧縮応力が550MPa未満では携帯電話等の電子機器の筺体に要求される強度を具備できないおそれがある。表面圧縮応力は、圧縮応力層の深さと同様に、例えば、光弾性解析法を利用した表面応力計を用いて測定することができる。
【0207】
なお、筺体を構成する化学強化ガラスは、少なくとも厚みが0.5mm以上、すなわち、最も薄い部分で厚みが0.5mm以上であることが好ましく、0.8mm以上であることがより好ましい。化学強化ガラスの厚みが0.5mm未満では、化学強化用ガラスを用いた場合でも携帯電話等の電子機器の筺体に要求される強度を具備できないおそれがある。
【0208】
以上、本発明の実施形態を説明してきたが、本発明は上記記載内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【実施例】
【0209】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、例1−1〜例1−14、例2−1〜例2−10、例3−1〜例3―11、例4−1〜例4−11、および例5-1、例5−2は、本発明の化学強化用ガラス1に係る実施例であり、例1−15、例2−9は比較例である。例6−1〜例6−19は、本発明の化学強化用ガラスに係る実施例である。
【0210】
ガラスの組成比が表1〜表5、表8及び表9に示すような組成となるように、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等一般に使用されているガラス原料を適宜選択し、ガラスとして100mlとなるように秤量混合した。なお、表1〜表4、表8及び表9に記載のSOは、ガラス原料にボウ硝(NaSO)を添加し、ボウ硝分解後にガラス中に残る残存SOであり、計算値である。
【0211】
次いで、この原料混合物を白金製るつぼに入れ、1500〜1600℃の抵抗加熱式電気炉に投入し、約0.5時間で原料が溶け落ちた後、1時間溶融し、脱泡した後、およそ300℃に予熱した縦約50mm×横約100mm×高さ約20mmの型材に流し込み、約1℃/分の速度で徐冷し、ガラスブロックを得た。このガラスブロックからサイズが40mm×40mm、厚みが2.0mmになるように切断、研削し、最後に両面を鏡面に研磨加工し、板状の化学強化用ガラスを得た。
なお、表1に示した本発明の化学強化用ガラスの実施例は、本発明の第1の実施形態および第2の実施形態に係るガラス組成の例を示したものである。表2に示した本発明の化学強化用ガラスの実施例は、本発明の第1の実施形態および第3の実施形態に係る化学強化用ガラス組成の例を示したものである。表3に示した本発明の化学強化用ガラスの実施例は、本発明の第1の実施形態および第4の実施形態に係る化学強化用ガラス組成の例を示したものである。表4に示した本発明の化学強化用ガラスの実施例は、本発明の第1の実施形態および第5の実施形態に係る化学強化用ガラス組成の例を示したものである。表5に示した本発明の化学強化用ガラスの実施例は、本発明の第1の実施形態および第6の実施形態に係る化学強化用ガラス組成の例を示したものである。また、表8および9に示した本発明の化学強化用ガラスの実施例は、本発明の第7の実施形態に係る化学強化用ガラス組成の例を示したものである。
【0212】
得られた化学強化用ガラスについて、化学強化処理前の色度、およびソラリゼーションを測定した。また、化学強化処理後のガラスについて、表面に形成された圧縮応力層の深さおよび表面圧縮応力を測定した。測定方法および測定結果を以下に示す。
【0213】
[色度]
各例で得られた板状の化学強化用ガラスを測定試料とした。この測定試料について紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)製、V−570)にて透過率を測定し、そのデータをJIS Z8722:2000(色の測定方法−反射及び透過物体色)に基づきCIE 1931XYZ表色系に換算した。
結果を、表1〜表5に示す。なお、表1〜表5、表8及び表9の測定結果欄中の「−」は、測定が未実施であったことを意味する。
【0214】
[ソラリゼーション]
例1−14(実施例)および例1−15(比較例)で得られた板状の化学強化用ガラスを測定試料とした。これらの各測定試料の研磨面に400W高圧水銀ランプの光を15cm離れた位置から50時間照射した後、波長380nm〜780nmにおける平均透過率T1を測定し、下式より、初期(光照射前)の波長380nm〜780nmにおける平均透過率T0からの劣化度ΔTを算出した。なお、透過率の測定には、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)製、V−570)を用いた。
ΔT(%)=[(T0−T1)/T0]×100
結果を、各試料の光照射前後の波長380nm〜780nmにおける平均透過率T0およびT1とともに表6に示す。また、各試料について測定された光照射前後の分光透過率曲線を図1に示す。なお、図1中、(a)は、例1−14(実施例)の測定結果であり、(b)は、例1−15(比較例)の測定結果である。
【0215】
表6および図1から、ガラスにTiO成分を所定量含有させることで、ガラスの耐ソラリゼーション性が向上することがわかる。したがって、本発明の化学強化用ガラスを筺体材料として用いた場合、当初の着色状態が長く維持され、色の変化により意匠性が損なわることがない。
【0216】
[圧縮応力層の深さ及び表面圧縮応力]
例2−1(実施例)で得られた板状の化学強化用ガラスを425℃のKNO溶融塩(100%)に6時間浸漬して化学強化処理を行い測定試料とした。また、比較のために、例2−9(比較例)で得られた板状の化学強化用ガラスに対し同様の化学強化処理を行い測定試料とした。なお、例2−9のガラスはFe成分が未配合である以外は例2−1と同一組成のガラスである。
これらの化学強化処理後の測定試料について、表面応力計((有)折原製作所製、FSM−6000LE)を用いて、圧縮応力層の深さ(単位:μm)および表面圧縮応力(単位:MPa)を測定した。結果を表7に示す。
【0217】
表7から、ガラスにFe成分を所定量含有させることで、化学強化処理後のガラスの強度が高くなることがわかる。したがって、本発明の化学強化用ガラスは、高い強度が求められる携帯電話等の電子機器の筺体用ガラスとして好適に用いることができる。
【0218】
【表1】
【0219】
【表2】
【0220】
【表3】
【0221】
【表4】
【0222】
【表5】
【0223】
【表6】
【0224】
【表7】
【0225】
【表8】
【0226】
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0227】
本発明の化学強化用ガラスは、携帯電話等の携帯して使用可能な通信機器や情報機器の外装を構成する筺体材料として好適に用いることができる。その他、AV機器・OA機器等の操作パネル、同製品の開閉扉、操作ボタン・つまみ、またはデジタル・フォト・フレームやTV等の画像表示パネルの矩形状の表示面の周囲に配置される装飾パネル等の装飾品等にも利用できる。
なお、2011年8月10日に出願された日本特許出願2011−175421号、および2011年8月17日に出願された日本特許出願2011−178526号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の開示として取り入れるものである。
図1